駆逐棲姫が鎮守府にスパイとして潜入した話   作:カマタマーレ讃岐

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食堂にて

私達は軽く会話を交わした後、持ち無沙汰になってしまったため、とりあえず近くの手頃な空いている席に腰掛けることにした。

 

「はぁ…夕食前なのに気分が駄々下がりです」

 

夕食前に姉二人に弄ばれるという、姉ハラスメントを受けた私は椅子の上で深くため息をついた。

 

「…これは流石に夕立たちも悪かったっぽい…ごめんっぽい」

 

申し訳なさそうにしゅんとする夕立姉さんに続いて時雨姉さんも「ごめん、流石にちょっとおちょくり過ぎたね」と反省面。

 

 

__いやいやこの二番艦、絶対またやらかすって。目が謝ってないよこれ…。

 

「はぁ…まぁいいです。…今回で姉の妹に対する扱いが分かった様な気がします」

 

「聞こえてるよ、春雨」

 

夕立姉さんが苦笑いを浮かべてるのに対し、時雨姉さんの黒い顔。そういうところですよ時雨姉さん…。

 

「そういや白露、遅いっぽい」

 

夕立姉さんがふと思い出した様子で口にした。

 

「…たしかに。さっき白露と別れてから十分位は経ってるはず何だけど…」

 

確かに、時雨姉さんの言う通りやけに終わるのが遅いような気がした。

まず料理を注文するだけだし、そんなに時間がかかるモノではない筈なのに…

 

 

「___私が探しに行きます」

 

「えっ、いいのかい?正直いってこれは僕が白露を野放しにした…っていうのも原因だと思うんだけどな」

 

野放し。少し語弊がないですかとツッコミたくなるが我慢我慢。

白露姉さん、一応長女、一番艦なのに

次女からの扱いが…。

 

「たぶん、ここは妹の私の頑張り時なんです。私が__」

 

「__春雨、待つっぽい!」

 

「夕立姉さん…?」

話を傍観していた夕立姉さんが、いきなり間に割って入ってきた。

 

「ここは夕立に任せるっぽい!」

 

「えっ、夕立姉さんが…?」

 

ここでシミュレーションをしてみよう。夕立姉さんの行動パターンを考えると仮に探しに行ったところで、途中で「あ、おいしそうなのあるっぽい…」と道草していく結末しか見えない。

 

「姉妹艦の勘で見つけ出すっぽい!」

 

「うーん…もう一人迷子を探す手間が増えそうなので夕立姉さんはちょっと」

 

私の答えを聞いた瞬間、夕立姉さんががくっと項垂れそうになるが、めげずに立ち直る。

 

「夕立、戦闘以外も出来るから…」

 

「例えば?」

と、時雨姉さん。

 

「えっと…実は夕立、犬並みにハナが利くから、匂いで人を探すことも出来るっぽい!」

衝撃の新事実!?これは艦隊新聞に載ってもいいレベルなのでは?

 

「夕立姉さん、やっぱり犬だったんですね!」

 

「違うっぽい!夕立犬じゃないっぽい!っていうか春雨、なんで嬉しそうな顔してるっぽい!?」

 

くわっと口を開く夕立姉さん。どうみても犬の類いにしか見えないんだけどなぁ。時雨姉さんも「夕立、それ初耳」とにやにやとしていた。

 

「あっ、あとさっきのはジョークだから。ホントにハナが利く訳じゃないっぽい…」

「そんな神妙そうな顔で言われても」

 

「でも姉妹艦の勘はホントっぽい!」

 

あーだこーだと争い合う夕立姉さんと私。これが普通の女の子同士なら微笑ましいのだが...

艦娘同士の喧嘩は何の因果か、大抵高確率で殴り合いに発展してしまうので注意!艤装とか関係なしに肉弾戦かますので一般人からしたら震えものである。

 

 

 

「...だったら二人で行けばいいんじゃないかな」

 

どっちが行くか行かないかの私と夕立姉さんの争いを見ていた時雨姉さんが、ふと呟いた。

 

「時雨姉さん!?」

何故だ。どう考えても夕立姉さんを行かせるべきではないというのに。私は疑心暗鬼になって問いただした。

 

「だって…春雨。君、夕立を“一人で”行かせるのが心配なんだよね?」

 

「それはそうですけど…」

 

それは勿論である。目を離せばすぐどこかに行ってしまう人だ。あのソロモンの時も、そうだった。心配しない訳がない。

 

「だから春雨。君が夕立に着いていってあげればいい。__“二人”で行くんだ」

時雨姉さんの優しい、だけれどどこか鋭さも感じられる眼差し。

 

「“二人”で…」

冷静になって考えればすぐ思い付いたことだろうけど、何故か時雨姉さんの“二人で行くんだ”という言葉が胸にやけに響いた。

 

「…」

ふと隣を見ると、何だか落ち着かない様子の夕立姉さん。

 

「…よし、じゃあ夕立姉さん、行きますよ」

 

「夕立も、着いていっていい?」

 

私は一回固く息を飲んで、こう言った。

 

 

「違います。“私が”夕立姉さんに着いていくんです」

「…ぽ、ぽい?」

「ほら、急がないと食べる時間無くなっちゃいますから」

 

やっぱり、この人には着いていくという形が一番合っているなと思った。

私がこの人を先導していく…だなんて考えられない。それだけだ。

 

「夕立ー、くれぐれも春雨を置いていかない様に。春雨は夕立を見失わない様にね」

テーブルの方に居る時雨姉さんがかなり離れたのに、きつく針を刺してくる。分かってますって…

 

「まずはあっちから探すっぽい!」

 

特にどこかを指さして言ったわけでもないため"あっち"って具体的にどこだよなんて思うかもしれないけど、これが"夕立姉さんクオリティー"なのである。

 

「いやまずは近いとこから探しましょうよ。…“灯台下暗し”っていいますし」

 

 

 

___忘れてるかもしれないのでもう一度言う。私はこの鎮守府に送り込まれたスパイである。だけど…

 

(今は…春雨として過ごすのも悪くないかな)

 

ひとまず私達は二人で、歩き出した。




ここの鎮守府の時雨ちゃんはけっこう黒いです!!!
春雨曰く「清々しい黒さ」
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