駆逐棲姫が鎮守府にスパイとして潜入した話   作:カマタマーレ讃岐

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妹達

「って…いざ意気込んで探してみたはいいですけど、いく宛がないですねこれ!」

「ですよねー、っぽい」

探しはじめてから、たぶん一分。白露姉さん捜索隊はあえなく撃沈。食堂の端で座り込んでいた。

 

「もう食堂には居ないのかもしれませんねー」

「ぽいー」

こういう人探しのイベントに難題は付き物である。

世の中、そう簡単に探し人や物が見つかってしまったら困るのである。何かヒントがあれば…

 

「うーん、夕立姉さん...。白露姉さん、今日大事な予定があるとか...言ってませんでした?」

「え、今日…?」

 

「なんでもいいんです!なにか些細な事でも…!」

「え、えぇ~。何か、何かって言われても…」

 

顎に手を当ててうんうんと考え込む夕立姉さん。思い出したことがどんなに小さなことでも、それがきっかけになるかもしれない。だから、ガンバレ夕立姉さん!(丸投げ)

 

「…なにか思い出しました?」

もう一度夕立姉さんに問いかける。

 

「__あ、思い出した!『一番艦の会』!白露、今朝そんなこと言ってたっぽい!」

「そう、それです!…って一番艦の…会?なんですかそれ…」

 

『一番艦の会』?私もここに来てから約一ヶ月経つけど、耳にしない単語だった。

 

「あ、そういや春雨はまだ知らなかったっけ?確か毎月1日に開かれる各駆逐艦の一番艦の集会…っぽい」

 

各駆逐艦のネームシップの集会...?一体何を話すんだ?

「ず、ずいぶんと珍気な会ですね」

 

「あ、それ、白露の前で言ったら一番艦パワーで刺されるから気を付けるっぽい」

「なにそれこわい」

そんなこんなで私たちが茶番を繰り広げていると、誰かが近づいてくる足音がした。

 

「お、姉貴たちじゃん。何してンだ?」

「...何、してるの、二人とも...」

 

「その声は...江風に山風っぽい?」

 

声のする方を向くと、不審そうに此方を伺う人物が二人。

照りつける様な赤髪を持つ少女は、白露型9番艦の江風。

まるで江戸の時代に生まれたかのようなべらんめえ口調に、私も初日は戸惑ったが...話してみると、あら意外と話しやすい。豪快活発が売りィ!な少女である。

 

そしてもう一人、目に優しい感じのミントみたいな色(説明しづらい!!!)の髪を持つ少女、山風。特徴は後髪に付けた黒いリボン、なんだけど....

なんというか、見てるだけでどんな人間でも保護欲が湧いてしまう様な子である。

心無しか江風ちゃんよりも身長がちっちゃいけど、彼女は白露型8番艦。

改白露型の海風ちゃんのすぐ下の妹で、れっきとした涼風ちゃん、江風ちゃんの姉なのだ!バンザーイ!

 

「食堂の端なンか座り込ンで...どうしたンだ?」

 

江風ちゃんが怪訝そうな顔でそんなことを言う。

うんうん、不審に思われてもしょうがないよね。ここは私が説明しよう。

 

「実は...迷子の白露姉さんを探してるんだけど、どうもここにはもういないみたいで。江風ちゃんたち、見てないかな?」

 

「白露の姉貴か?てか迷子扱いなのかよ...」

 

若干困惑したような江風ちゃん。あまり認めたくないけど、時雨姉さんのせいでそんなイメージがついちゃったなぁ...

 

「ン、そういやさっき第三会議室の前で見たような__」

「__それっぽい!ありがとう江風!春雨早速向かうっぽい...」

しかし、江風ちゃんがもたらした情報は夕立姉さんを動かすには十分過ぎた!

 

「ちょちょちょ、夕立姉さん。待ってください気が早いです」

その名前の如く、まるで夕立のような速さでその場を後にしようとする夕立姉さん。私の右手をガッチリ握り、今にも駆け出しそう。いや、ホント気が早いって。この人ぉ、もぉ〜!

 

「あの、白露姉さんは"何事も一番"をモットーにしてる人ですよ?今行ってそこにいるかどうか確証が...」

「確証ならあるっぽい!それは江風の言葉が確かっぽい!」

夕立姉さんが高々と声を上げる。

「そうだぜ夕立の姉貴!それに江風たちが白露の姉貴を見たのって...」

 

えーっちょっとなに江風ちゃんも参戦してるんですかー。だから、白露姉さんはありえないくらい行動が早いって...

 

「うん...ついさっき、ちゃんと見た...もん」

 

言っ...て

___うわぁっ、山風ちゃんがなんか上目遣いでこっち見てきた...!

 

「じー...」

「じー..ポイッ」

 

江風ちゃんもジトーっとこちらを見つめてくる。

なんだか妹たちに混ざって夕立姉さんもそんな事私にやってきてますけど、あんまり効果ないですからね!私には!

 

「ぐ、ぬぬ...わ、分かりました、行きましょう夕立姉さん」

「決まりっぽい!じゃあ早速向かうっぽい!」

 

夕立姉さんに手を引っ張られながら、去り際に妹たちに軽く手を振った。

...多分、あの子たちから見ても、夕立姉さんは嵐のような人なんだろうな。

そんな事を考えながら、第三会議室へと足を進める。

 

「一番艦の会...一体何が目的の会なんだろう」

「大丈夫大丈夫!パッと見なんかアヤシイけど、ヤバいことには手ェ染めてないから大丈夫っぽい!」

「ヤバいことしてたら大問題なんですがそれは!?」

 

 

白露姉さん...今頃どんな奇行をしているのだろうか。考えるだけで胃がちょっとキリキリしてくる。

でも...心の奥では実はまんざらでもないのだろうか、ちょっとだけわくわくしてしまっている自分がいた。

 

 

「...やっぱり私、毒されてるのかもしれませんね」

「ん、春雨なんか言ったっぽい?」

「別にー、なんでもないですよ。ふふっ」

 




難聴系ヒロイン夕立と、案外ちょろイン春雨
"表の"物語はこの2人が主軸かも
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