超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
第一話 別次元…ではなく別世界
出会いと別れは一つのもの。出会いがあれば別れがあるし、別れが出会いに繋がる事もある。それは誰もが知っている、普通の事。人であっても、女神であっても、モンスターであったとしても、等しく有する当たり前の事実。
だけど、出会いの次は、必ず別れになる訳じゃない。出会いが別の出会いを呼んで、その出会いが更に出会いを呼び寄せて、連鎖的に繋がりが増えていく、広がっていく事だってある。訪れた出会いを拒絶しなければ、手や心を結んでいけば、自然と繋がりは大きく大きく変わっていく。
いつも、切っ掛けは突然来る。意図しなくたって、望んでいなくたって、向こうからやってくる。だけど何か起きた時、そこにはいつも出会いがあって……私はもう、知っている。出会いは次元も、世界も関係なく……無限に広がるものなんだって。
*
原初の女神ではない自分、複製体であってそのものではない自分、信次元の皆と歩んできた…わたしの知る自分を取り戻した、イリゼを見送る。その雰囲気は完全に元通りで、強く温かな心の輝きを抱いて、信次元へと帰っていく。
正直に言えば、名残惜しさもある。イリゼとはもっと色んな所に行きたかったし、もっと多くの話をしたかったし、もっと沢山の事をしたかった。だけど、イリゼもわたしもするべき事がある。女神として、それは後回しになんて出来ない事で…それに、これが今生の別れって事でもない。まだ信次元側の次元の壁が不安定なままとはいえ、何かあればまたこうして……って、え?これは第百一話だったのかって?違うわよ?…なら、コラボ第一話?えぇ、そうよ?じゃあこれは何なのかって?…もう、慌てないの。作品は逃げないんだから、このまま読んでいて頂戴。
(イリゼ。貴女は、わたしが貴女にしてあげた…って思ってるかもしれないけど、わたしも貴女に今日、沢山のものを貰ったのよ?)
今日一日、本当に楽しかった。信次元のイストワールから頼まれていた事を忘れてしまいそうになる程楽しかったし…最後にイリゼと交わしたやり取りでは、わたしの心も癒された。心の奥底で、ずっとずっと埋まらなかった寂しさのような思いが、イリゼと心を交わす事で救われたような…そんな気が、今もしてる。
だから、感謝してる。イリゼが来てくれた事も、皆がそのお膳立てをしてくれた事も、一杯の感謝がわたしにはある。そして次は、わたしが信次元に行きたい。信次元に行って、約束通りもう一度デートをして、もっともっとイリゼと……
「……え…?」
──そう思っていた、次元の扉の中へと向かうイリゼの姿が完全に見えなくなった、その時だった。…不意に、こちらのイストワールが不穏な声を上げたのは。
「…イストワール……?」
「…なん、でしょう…今、何か…これまでに観測した事のない、これまでとは全く違う…揺らぎのようなものが……( ゚д゚)」
「え…?ちょっ、それって……」
その声に一抹の不安を抱いたわたしが問い掛けると、イストワールは呟く。そこに籠っている感情は、困惑と動揺。
わたしは、次元同士の繋がりについてはよく分からない。だけど、そんなわたしでも…いや、誰だって分かる。次元の扉を開けるイストワールにとって想定外の事が起きて、しかもそれがイリゼが扉の中へ完全に入った瞬間に起こったとなれば、それは間違いなく『只ならぬ何か』なんだって。
一抹の不安は、はっきりとした不安へ。恐怖にも似た感情が走り、わたしは視線を次元の扉へ…イリゼが消えていった場所へと戻す。そして…………
*
セイツに大切な思いを貰って、大切な気持ちを思い出させてもらって、私は戻った。私の戦いを続ける為に。私が守るべきものを守る為に。そして、もう一人の私へ…現れた原初の女神へと、その意思を確かめる為に。
確かに私は、間違いなく私は、二人のイストワールさんが開いてくれた次元の扉を潜って、信次元へと戻った。戻る、筈だった。なのに、なのに……
「なんでまた、知らない次元に来てるのさぁぁぁぁああああああッ!!」
……気が付いたら、私は向かう先であった信次元のプラネタワー内ではなく、どこか謎の林道の中にいるのだった。
「うぅ、どうしよう…いやどうしようも何も、やらなきゃいけない事は分かるんだけど……」
やり切れない思いを叫びに変えて空へと放った十数秒後、私はがっくりと肩を落とす。
取り敢えず見回してみた限りじゃ、恐らくここは次元の狭間だとか、あの迷宮だとかではなく、信次元ではない別の次元。シェアエナジーの配給が感じられない事からして、私が知らない信次元のどこか…って訳でもないと思う。
となれば…というかここがどこであれ、まずやらなきゃいけないのは情報収集。とにかく動いてみなきゃ、何も始まらない。…と、すぐに冷静な思考が始められてる辺り、ほんと私はこういう目に遭い過ぎでしょ……。
(…あ、でも…あの時みたいに、知ってる人がいる次元って可能性もまだ残ってるよね…?それにもしかすると、次元移動じゃなくて空間移動しただけで、ここは神次元なのかもしれないし…)
ここがどこか分からないという事は即ち、全く知らない次元とも言い切れないって事。そう都合良く関わりのある次元に飛べるとは限らないけど、関わりのある次元と無関係の次元なら、前者の方が引っ張られ易い……んじゃないかと思う。いや、そんな気がするってだけだけど。
まあ何にせよ、気持ちは前向きに持っていた方が良い。だから無根拠であろうとも私は希望的観測を捨てず…歩き出す。
「取り敢えず…こっち、かな」
一本道の林道を、気が付いた時向いていた方向へと進む。街かどこかに出られれば御の字だけど、そうでなくても丘とか高台とか、周囲を見渡せる場所に辿り着ければそれで十分。逆に森とか迷いそうな場所に出てしまったら引き返せば良いし、道なんだからどっちかは開けた場所や人の生活圏に繋がってる……筈。
という訳で、歩く事数十分。若干木々の密度は減った気がするけど、今のところ景色は殆ど変わっていなくて……そこでふと視界の端、木と木の間の所に、明らかに人工物らしき物を発見した。
「……?何だろう、あれ…」
気になって近付いてみると、それはボール。半面が赤、半面が白の、結構綺麗な球形をしていて、ぱっと見はカプセル。不法投棄…?それか、何かの目印…?前者だったら見て見ぬ振りはしたくないけど、後者だったらむしろ持ってっちゃ不味いよね…。
(何なのか確かめてみれば、それも分かるかな…?)
カプセルらしき何かの前にしゃがみ込む私。危険物だった場合の事も考えて警戒しつつ、私はそっとそれに触れ……
【イリゼ は カロポケメイト を 手に入れた!】
「えぇぇッ!?なんかいきなり出てきた!?そしてこれ……またもやメイトぉおおおおおおぉぉッ!?」
……た瞬間、謎のテキストウィンドウが表れた。そしてカプセルらしき物体は姿を変え……別次元に行く度結構な頻度で口にする事になる、別次元における私の活動について回る存在と言っても過言ではない食品、メイトさんとなった事により…私は叫んでしまった。…なんかもう…ホラー過ぎる。このまま別次元に行く時の私には、一生メイトさんが這い寄るんじゃないかな…。這い寄れ、メイトさん…はは……。
「…そして、どうしようこれ……」
道端に落ちていた(?)食べ物というのは無視するにしても、これをどうするかという問題は消えていない。ほんと、見なかった事にするのが一番楽ではあるけれど、きっと私を信仰してくれてる人達は面倒だからって見て見ぬ振りをするような私なんて望みはしない。そして、それはある意味信仰者の皆に対する裏切り行為で……
「あのー……君、大丈夫?」
「え?」
そう、考えている時だった。突然後ろ…より正確に言えば左斜め後ろから、男の人らしき声を掛けられたのは。
驚いて振り向く私。すると素早く私が立ち上がった事に向こうも驚いたのか、うぉっ…という声が聞こえて……振り向いた私が目にしたのは、私を見る二人の男の人だった。
*
これまで旅してきた地方と同じように、オーレ地方の旅も刺激的なものだった。スナッチ団やシャドーの件もあったし、ダークポケモンの事を思えば良い事ばかりの旅ではなかったが……それでも楽しい旅が出来たと、俺は思う。
…と、いう訳でオーレ地方を去った俺と愛月が今いるのは、シンオウ地方。より正確に言えば、シンオウ地方の外れにある島で…現在は林道を歩いている真っ最中。そして何故、シンオウ地方にいるかと言えば……
「…あれ?」
とか何とか思っていたところで、不意に隣の愛月が上げたのは不思議そうな声。急に何だと思った俺だが…その理由は、すぐに分かった。
前方の少し離れた所。左手側の林へと顔を向ける形で、少女がしゃがみ込んでいたのだ。こんな特筆する点もない林道でしゃがみ込んでいる少女がいれば、そりゃ気になる。
「…何してんだ?ディグダでもいたのか?」
「さぁ?…あ、いや…もしかして、体調が悪いとかじゃない…?」
どうも下を見てるっぽい事からポケモンがいるのかと思った俺だが、愛月は別の可能性を口に。確かにポーズ的には、気分が悪くて座り込んでいるように見えなくもない。
(うーん…まぁ、別に話し掛けて困るような事もないか)
体調が悪いなら放っておく訳にはいかないし、何でもないならそこで会話を止めて通り過ぎれば良い。逃げ足の速いポケモンを捕まえようとしてるなら、話し掛けた拍子に逃げられてしまうかもしれないが…その時はお詫びに捕獲の手伝いをすれば良いだけ。そう思った俺は同じような事を考えていた愛月と頷き合い、そのまま歩いて少女の近くへ。
そうしてある程度の距離まで行ったところで、愛月が少女へ声を掛ける。
「うぉっ……」
え?…と言った直後に立ち上がりつつ振り向く少女。愛月は体調不良の可能性を一番に考えていたらしく、その素早い動きに軽く驚く。…この軽やかさ…普段から鍛えてるのかもな…。
「あ、えと…ごめんなさい、驚かせちゃいました…?」
「あぁいや、大丈夫。…まぁ、確かにちょっとびっくりはしたけど……」
「そ、そうですか…えっと……」
「や、こんな所でしゃがんでるから、どうかしたのかなと思ってさ」
びっくりした、と素直に返すのは少し恥ずかしかったのか頬を掻く愛月に変わって、俺が話し掛けた理由を伝える。
白っぽくもある黄色の髪に、碧色の瞳。少女…だと思ったけど、こうして正対するとこの女性は俺達よりも背が高く、年も多分上。
「あー…ちょっと、不思議な出来事とある種の呪いと言っても過言じゃない宿命に遭遇しまして……」
『……?』
「い、今のは気にしないで……っと、そうだ。あの…この先に、町とか周りを見渡せる場所とかあるかな?」
「町?町ならむしろ、逆側だぞ?」
「おおぅ、逆だったのか…。…うん、教えてくれてありがとね」
ちょっとよく分からない事を口にした女性だが、どうやら町に行きたかった様子。という訳で俺達が歩いてきた方を指し示すと、女性は肩を落とした後にこりと笑って歩き出す。
結局何故しゃがみ込んでいたかは分からなかったものの、女性は元気そう。なら、一先ず解決だな。
「(……とは、いかないよなぁ…)…なあ愛月、今の人…変だと思わないか?」
「だよね。ここは一本道で、向こうを知らないって事は町から来てる筈なのに、その町について訊くなんて…」
怪しい…感じはないが質問としてはおかしいし、「見渡せる場所」というのも少し気になる。もしかしたらだが、あの女性は何か困った状態に陥っているんじゃないだろうか。
今は別に急いでいない。正直変な質問の理由も気になりだしている。だから俺は愛月と再び頷き合って、去ろうとする女性を呼び止める。
「おーい。もしかしてあんた、道に迷ってたりするのか?」
「うっ……わ、分かる…?」
「って事は、グレイ…もとい、彼の言う通りなんだ」
「あー……はは、実はそうなんだよね…。…より正確に言うと、道どころか次元に迷ってる状態だけど…」
『次元…?』
「あっ…う、ううん気にしないで。今のはちょっと大きくなり過ぎただけの独り言だから」
びくっと肩を震わせた後振り返った女性は、それからしょぼくれた感じに首肯。…と、同時にまた気になる発言をぽつりと呟く。
次元に迷う?…何か、前にもそんな感じの事があったような気がするな…。それに、次元ってのが『世界』の事なら……
「…もしや、ウルトラホールを通じてこの世界に?」
「う、ウルトラ?……そして輝く…?」
「いやそっちじゃなくて…つまりは、別の世界から来たのかって事だよ」
「……!…別世界の存在を、知ってるの…?」
「まぁ、知ってるっていうか…」
「ある時幾つかの異世界を回った事があって、ね」
思い出すのは、アローラ地方であった出来事。そして今のやり取りではっきりした。この女性はウルトラホールの事は知らないものの、違う世界から来たんだと。
ウルトラホール以外の手段…かどうかはまだ分からない。ウルトラホールって名前を知らないだけとか、別の名前で呼んでるって可能性もあるからな。
「じゃ、じゃあ…!……っと、焦るな焦るな私…物事には順序ってものがあるんだから…」
「…お姉さん?」
「…こほん。自己紹介が遅れてごめんね。私はイリゼ。説明されても分からないかもしれないけど…私は信次元に住む──原初の女神の複製体、だよ」
愛月の声に対して咳払いをした女性…いや、イリゼからの自己紹介。それを聞いて、俺が思った事は三つ。
まずは、信次元なんて知らないなという事。次に、女神といえば確か…という事。そして……『原初の女神の複製体』。その言葉には、鋼の様に強く、炎の様に熱い意思の響きが籠っていたって事。
「イリゼ…そっか。なら、俺達も返さないとだよな。俺は愛月、ガラル出身のポケモントレーナーだ」
「俺はグレイブ。同じくポケモントレーナーで、愛月とは二人で旅をしてるんだ。ここには地下の探索に、な」
「ポケモントレーナー…?」
「うん?知らないの?」
一度こちらを見てから言った愛月に続いて、俺も名前とここに来た理由を口に。だがそれに対して…というかポケモントレーナーという言葉に対して、何故かイリゼは首を傾げる。
多分殆どの人が知らないウルトラホールはともかくとして、ポケモンを知らない人間…じゃなくて、女神?…なんているんだろうか。そう俺が思っていると、愛月はひょいっとピカチュウのボールを宙に放り……
「ぴっか〜!」
「うぇええぇぇッ!?モンスター!?えっ、ちょっ…君達何者!?」
ボールから出てきて愛月の肩へと乗ったピカチュウを見て、イリゼはこっちがびっくりする程に驚くのだった。
*
道端でしゃがみ込んでいる私を不思議に思って、或いは心配して声を掛けてくれたのは、二人の男の人…というか、男の子。一人はベージュ色をした髪と眼鏡が目を引く堂々とした子で、もう一人は黒色の髪をセミロング位に伸ばした、眼鏡の子よりは落ち着いた印象を抱かせる子。
グレイブ君に、愛月君。そう名乗った二人はポケモントレーナー?…らしくて、しかも別次元…別の世界の存在について知っているどころか、実際に行き来した事もあるんだとか。
ちょこちょこ別次元に飛ばされる私は、酷い運命の持ち主なのかもしれないけど、考えてみればいつも頼りになりそうな人と出会えているし、そういう意味では幸運の持ち主でもあるのかもしれない。…そんな思いを抱いていた時、不意に愛月君がさっき見つけたカプセルっぽい物と似たボールを放り投げて……次の瞬間、モンスターらしき見た事ない存在が現れた。何とも愛らしい、可愛いと思える鳴き声と共に。
「び、びっくりしたぁ……」
「こっちもびっくりだ。まさかポケモンを知らない…ってか、存在しない世界があるなんてな」
「俺達が行った事ある世界は、どこもポケモンがいたもんね。ウルトラビーストはかなり特殊なポケモンだけど…」
「いたもんって…それはギャグのつもりか…?」
「えっ?…あ、た、偶々だから!偶々だからなっ!?」
ポケットモンスター、縮めてポケモン。昔からこの次元…もとい存在している生命で、数多くの種類が様々な環境で生きていて、人や他の生物に害を成す事もあるけど、逆に家族や友達として生活を共にする個体も沢山いる。そしてそのポケモンを捕獲する道具兼、捕獲に応じてくれたポケモンの家…というか、持ち運び出来る個室的な物である『モンスターボール』を使って捕獲したり、育てたり、仲間として戦ったりする人達の総称(職業…?)を、ポケモントレーナーと言うんだとか。
(ポケモン…モンスターって付くけど、多分私の知るモンスターとは全然違う存在だよね…。…いや勿論、将来的には信次元だってもっとモンスターとの共存が進むかもしれないし、この世界で両者が友好的な関係になっているのも、昔の人達やポケモンがその道を選んだからなんだろうけど…)
先端が黒くなっている耳をぴこぴこと動かしながら、愛月君に頬ずりをするポケモン…ピカチュウを見やりながら、私は思う。
共存か、排他か。これには色々な要素が絡んでくるから一概には言えないけど、間違いなく重要な要素の一つであると言えるのは、相手側を受け入れられるか、共に在ろうという心を持てるか。楽なようで難しいのが、この心の部分で…だけど少なくとも、この二人にはその相手を大切に思う心がある。ピカチュウとのやり取りを見るだけで、それはよく分かった。
「…可愛いね、その子。ポケモンって、皆こんな感じなの?」
「いや、そんな事はないぞ。確かに可愛いやつも多いけど……」
「わっ!?」
こっちを見たピカチュウに微笑みながら手を振り、他のポケモンについて聞いてみると、グレイブ君が二つのボールを軽く宙へ。すると出てきたのは棘やヒレが特徴的で、何だか見るからに強そうな藍色のポケモンと、かなり人に近い体型で、白のドレスを纏った女性の様な緑のポケモン。それぞれガブリアス、サーナイトというらしいけど…確かにポケモンはモンスターと同じ位、それかひょっとしたらモンスター以上の多様性を持っているのかもしれない。
……え?さっきから何を知らないフリしてるのかって?これまで何度か、明らかに知ってる体の発言をしてきたろって?…あ、あれはパロネタだし…あくまで普通の知識とは別のカテゴリというか、その辺りはかなり複雑な設定があるというか……ほ、ほら!某軍曹さんだってクロスオーバーの時は自重してたでしょ!?あれと同じだよあれと!……いや違うけど!正確には違うけど、とにかくそんな感じなのっ!
「イリゼー?おーい、イリゼー?」
「…はっ…ご、ごめんねグレイブ君。何かな?」
「あぁいや、急に上の空になったからどうかしたのかと…」
「そ、そっか。…えぇと、それでその…もしかして二人は、別の世界へ移動する手段を知っていたり、その技術があったりするの…?」
二人から変な目で見られてしまった私は意識を切り替え、さっき訊こうとした事を改めて尋ねる。
さっき会ったばかりの子、しかも両方しっかりしてそうとはいえ、ぱっと見は間違いなく子供の二人を頼りにする…というのは些か情けない気がしなくもないけど、そういう経験は既に複数回(しかも今回と同じく別次元やそれに準じる場所で)経験してるし、この世界の理については間違いなく二人の方が理解してる。だからこの場においては二人に教えを請うというのは、何もおかしな事じゃない。…と、思う。
「移動する手段、か…まぁ、あるにはあるけど……」
「流石にいつでもどこでも、って訳にはいかないよね…」
「だ、だよね…因みに、具体的な話過去にはどうやって別世界に…?」
『え?…作者をふん縛って、無理矢理に』
「過激!?そんな何もかもを無視した手段で移動したの!?……流石にそれは気が引けるし、出来れば他の手段を知りたいな…」
顔を見合わせた二人の、最初の回答は芳しくないもの。まぁそう都合良くはいかないよねと思いつつ見たら、今度は予想外にも程がある回答が返ってきて、思わず全力で突っ込んでしまった私。…う、うん…斜め上というか、今のは遥か上空を駆け抜けていくような答えだったよ……。
「…ま、そうなるとやっぱりパルキアだろうな」
「パルキア…?」
「空間を司る神と呼ばれている、伝説のポケモンの一体だよ。伝説のポケモンっていうのは……」
「凄いポケモンだ」
「安直!物凄くざっくりした纏め方するなよグレイブ!」
「けど実際、伝説のポケモンの定義なんてないだろ?それこそせいぜい、伝説だったり神話だったりで語られてる…って位で」
「う…それはまぁ、そうだけど……」
さらりと返したグレイブ君の言葉に、ぐぬぬ…と愛月君は口籠る。私はパルキア…?…の事も伝説のポケモンの事もさっぱりだから、何とも言えないけど…ちょっと気になる部分もあった。神とか神話とか、そういう部分がね。
「えー、っと…それでパルキアには、どこへ行けば会えるの?行って会える存在かどうかは置いておくとして」
『さぁ?』
「さ、さぁって……あ、でもそうか…伝説の存在になってるなら、そりゃどこにいるのかも分からないよね…」
「いいや、確かに分からないが…まだ諦めるには早いぜ?」
「…どういう事?」
「そのパルキアを祀る遺跡…っていうか、昔の神殿?…が、この島にはあるんだよ。そういう事だよな?グレイブ」
同意を求めた愛月君に、グレイブ君はそうだと首肯。そこに行ってみれば何か分かるかもしれない、とグレイブ君は続けて、意味が分かっているのか謎だけどピカチュウ達もうんうんと首を振る。
空間を司る神とされているポケモンの存在。そのポケモンを祀る遺跡。まだ目標である「帰還手段の確保」には遠いけれど、それに繋がる可能性のある存在と場所が分かっただけでも大きな進歩。教えてくれた二人には感謝しなきゃいけないし、何らかの形でお礼もしたい。旅をしてるって言ってたから、また会えるかどうかは分からないけど、もしも帰るまでにまた会えたらその時は……
「よっし。じゃ、早速行ってみるとしようぜ」
「……えっ?」
「え?」
そう、私がこれからの事に思いを馳せていたその時、グレイブ君が見せた一つの行動。ガブリアスとサーナイトをボールに戻しながら言ったその言葉に、私は一瞬反応が遅れ…驚いた私の反応が意外だったのか、グレイブ君もきょとんとした顔で訊き返してくる。
「…案内、してくれるの…?」
「勿論。だって、面白そうだからな」
「グレイブ君……って、うん…?…面白そう…?」
「うん、面白そう」
「…あ、あー……」
あっけらかんと発される「面白そう」という言葉に、感動しかけていた私の心はがくんと転倒。と、同時にその答えが決定打となり、私は一つ理解した。ここまでのやり取りでも何となく感じていたけど…グレイブ君は、ゴーイングマイウェイな性格なんだって。
「…り、理由はどうあれ案内してくれるなら大助かりだよ…ありがとね、グレイブ君」
「気にしなくていいって。ほら、行こうぜ?」
振り返り歩き出すグレイブ君。その背中には妙に自信が…経験不足からではなく、むしろ豊富な経験からくる自信のようなものを感じられて…追おうとした私へとかけられる、もう一人の声。
「…ああは言ってるけど、結構優しいというか、困ってる人やポケモンを放って置けないタイプなんだよ、グレイブって」
「…ふふっ、そうなんだ」
「あ、けど面白そうってのは本気で思ってると思うな。だってグレイブだし」
「…はは、そうなんだ…」
前半は柔らかな表情を浮かべて、後半は肩を竦めて、それから愛月君も後を追う。その言葉を聞いて、もう一つ私は理解した。愛月君は、グレイブ君より良識的な感じだけど…二人とポケモンの様に、二人同士も仲が良いんだと。
(…うん。折角二人が案内してくれようとしてるんだもん。ここは変に遠慮がちになったりせず、二人が案内して良かったと思えるような道のりにしないと、ね)
とても自分より小さい男の子とは思えない、意思のしっかりとした二人を追う形で歩き出しながら、私は小さく笑みを浮かべる。
順風満帆な道のりになるとは限らない。想定外の事が何度も起きるかもしれない。だけど先を歩く二人の思いに応えられるよう、今回も私は頑張る事を心に決めて──
「ちるぅううううぅぅぅぅぅぅっ!?」
「……っ!?」
次の瞬間、突如聞こえた枝葉が激しく擦れる音。続くようにして響く、鳥の様な甲高い声。先を行く二人が足を止める中、私は反射的に音のした方へと振り向き……そんな私の眼前へと、鮮やかな黄色…或いは金色にも近いような体色に、綿毛の様な翼を持つ、鳥らしき何かが飛び込んでくるのだった。
今回のパロディ解説
・這い寄れ、メイトさん
這いよれ! ニャル子さんのパロディ。ニャルラトホテプならぬ、ニャルラトメイト…という辺りでしょうか。メイトさん、に合わせるならメイラトホテプ辺りですが。
・「う、ウルトラ?……そして輝く…?」
B'zの楽曲の一つ、ultra soulのフレーズの一部の事。まあ、確かにウルトラホールも輝いてはいそうですね。出てくるのは「ヘイッ!」…ではなくUBですが。
・某軍曹
ケロロ軍曹の主人公、ケロロの事。クロスオーバー、というのはスパロボの事です。…何気に重要な説明部分でもあるんですよね。勿論ギャグとして書いた訳ですが。