超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第六十八話 貫く誇り

 巨大な建造物なだけあって、黄金の塔は硬い。硬いというか、わたし達女神の攻撃でも一発二発では破壊し切れない。…まあ勿論、出し惜しみなしの全力全開、某超巨大ビームサーベルみたいなエクスブレイドでも使えば一刀両断する事も出来るけど、ここでそんな事をすれば一発でガス欠になるし、万が一の事を考えればそれは愚策。

 即破壊出来ないという事はつまり、迎撃や自爆システムがあった場合、それが稼働する前に始末するのは難しいという事。加えてこの場には裂けた空、ここではない別の場所と繋がっている…いつ次の敵が現れてもおかしくない穴が存在している以上、戦闘になる事を想定して動かなきゃいけない。

 

「…各員、準備は万端かしら?」

『はっ』

「なら……」

 

 塔を囲う形で展開した軍からの返答を受けて、わたしは前に。ちらりと上を見れば、ネプギアもこっちを見ていて…一つ頷いた後、ネプギアも上昇を開始する。

 わたしは塔へ、ネプギアは穴へ。その目的は、こちらが手を出す事で何か起こるかどうかの確認。

 

(…今のところ、反応はなし…だったら次は……)

 

 慎重に進んで塔のすぐ側まで到達したわたしは、右手を伸ばして塔に触れる。触れて、一周回って、それからゆっくりと飛翔。螺旋を描くように、手を当てたまま少しずつ高度を上げていく。

 

「ネプギア、そっちはどう?何かおかしな事はない?」

「ないよ。ないけど……」

「…けど?」

「…やっぱりこの穴、別次元…というか、神次元じゃない場所に繋がってる気がする……」

 

 インカムから聞こえてくるネプギアの声からは、緊張が感じられる。でもそれは警戒してるからというより、得体の知れない穴とその先の空間に対する直感的なものなんじゃないかと思う。

 あの穴の先にある空間も、気にはなる。けど今すべきは可能な限りの安全確認と破壊であって……

 

「…え……?」

 

 次の瞬間、わたしは振り返った。何かが来たとか、聞こえたとかじゃなくて、感覚的に。

 振り返った先には、何もない。だけどそれは見えないだけ。わたしが見つめる先では、セイツ達が猛争モンスター、それに初めからダークメガミと一体化した状態で現れたマジェコンヌと戦っていて……わたしが感じたのは、わたしの力。わたしの、シェアエナジー。

 

(…あれを使ったのね、マジェコンヌ)

 

 感じ取ると同時に、わたしは思い出す。マジェコンヌの中に残った力の事を知って、色々話して、考えて……わたし達は、決めた。マジェコンヌは、本来の自分を取り戻したマジェコンヌなら、信用出来るって。そのマジェコンヌが、この力を必要とするなら…何かを守る為、自分を貫く為に今の自分を超えなきゃいけない時が来たとしたら、その時はわたし達の力を使ってほしいって。

 それがきっと、今なんだ。あのマジェコンヌが、それを間違える筈がないんだから。そして、マジェコンヌ自身がその選択をしたのなら……わたしはそれを、応援するわ。

 

「ネプギア。もしかしたらこっちは、なんの危険もなく終わるかもしれないけど…今も皆は、きっと自分達の戦いに全力を尽くしているわ。だからわたし達も、完遂するまで油断せずにいくわよ」

「お姉ちゃん…?…うん、そうだね。わたし達も、頑張ろう」

 

 感慨深いとでも言うべき思いに感化されて、言われなくても十分分かっているだろう事をつい言ってしまったわたし。でもネプギアは素直に言葉を返してくれて、わたしも視線を塔へ戻す。

 何もなく終わるか、戦いになるかは分からない。でも何があろうと、わたし達は塔の破壊を完遂してみせる。ただ、それだけよ。

 

 

 

 

「吠えろッ!」

「駆けろッ!」

「蹂躙セヨッ!」

 

 戦場の空を縦横無尽に駆け巡る、羽根の姿をした端末。遠隔操作により、私達の意思により大小何十もの端末が飛翔し、ダークメガミの端末は私達を、私達の端末は奴の端末を狙って光線を放つ。

 

「チィッ、チョコマカト…ッ!」

「はははッ、何だそれは負け惜しみか?確かに貴様の図体では、機敏に動くなど不可能だからなぁッ!」

 

 遠隔操作端末が乱舞する中で、私も神次元の私も絶え間無く迫り来るエネルギー刃を避けつつ隙あらば反撃。

 奴の様に端末を攻撃には向かわせない。ただ攻撃を当てるだけならそちらで行う方が簡単だが、一点への集中砲火でもかけない限りは装甲を貫く事など出来ず、かといって関節部を狙うにしても、迎撃のエネルギー刃がある以上有効射程で精密射撃を行うのは困難。

 だが、何ら問題はない。極論ダメージを通せる攻撃など一種類あれば良く、それを保持したまま最も厄介な奴の遠隔操作端末による攻撃を妨害出来るのなら、それで十分。

 

(奴の動きはもう十分に分かった。何を、どこまで出来るかも大凡把握した。…ここから、切り崩すッ!)

 

 真正面から飛んできたエネルギー刃を、杖の頭に出力した魔力の刃で両断し、真っ直ぐに突進。次なる刃群は身体を逸らし、ロールを繰り返す事で速度を維持したまま全て避け、十分近付いたところで大きく左側へと旋回。私を叩き落とそうと伸びてきた右腕の外側へと滑り込み、膝付近の突起を掴む。

 

「…さて、この位置を見えるかな?」

「……ッ!ソンナ姑息ナ策ナド…ッ!」

 

 膝。当然そこは、人体の構造上見るのが難しい場所。加えて関節故にエネルギー刃の発射部位もない、セーフティポイント。

 とはいえ無論、奴には遠隔操作端末がある。撃ち方にさえ注意すれば、自分の関節を撃ち抜いてしまう事もない。…だが、そんなのは…あまりにも、ありきたりな対応。

 

「…戦い慣れしている者なら、この程度相手にも読まれる事を踏まえて手を打つのだが、な……」

 

 予想通りに、いっそ拍子抜けでもしてしまいそうな程に、私を引き剥がすべく飛び込んできた三基の端末。

 そう、たった三基。数を増やせば自分を撃つ危険も増えると考えたのだろうが…今の私を落とすには少な過ぎる。

 電撃一閃。来る事が分かっていた私はそれだけで三基を纏めて破壊し、続けざまに今の位置から狙えるエネルギー刃の発射部位を次々と狙い撃っていく。

 

「グ……ッ!…貴、様ァァァァァァッ!」

「ほぅ…小細工だが悪くない。お膳立てには感謝するぞ信次元の私よ。そして…この私を放置とは、随分と余裕じゃあないか木偶の坊がッ!」

「ナッ……ガァアァァァァッ!?」

 

 歯噛みするような声が聞こえた次の瞬間、十基以上の端末が飛来。うち数基は腹を見せたところで神次元の私の端末によって撃ち落とされるも、そのまま私の元へと殺到。射撃はせず、質量弾として複数の方位から突っ込んでくる。

 これは先程よりも対応し辛い。だが同時にこれは頭に血の上った行動であり、一対複数の戦いにおいて一人に躍起となるのは愚の骨頂。実際私からは見えないが、神次元の私は自由に動ける状態となっていたようで……私が右腕部から離れた瞬間、上方から爆音が轟いた。

 

「クッ、ゥゥゥ…ソノ、程度デェエエエエッ!」

「はっ、この程度で済ませるなどと思うなよッ!」

 

 再充填の為一度端末を帰還させつつ、背後へと回り込む私。神次元の私は奴の頭部へ攻撃を集中しており、爆発が上がる。

 甘い、あまりにも甘い。頭部への集中攻撃を受けても尚エネルギー刃の発射に殆ど支障が生じていない辺り、そのタフさには舌を巻くが……今度は私への対応を疎かにするなど、同じ私にしては粗末過ぎる…ッ!

 

「貰った…ッ!」

 

 翼を大きく広げ、障壁展開。それを盾にしながら杖に魔力、それにシェアエナジーを収束させ、迎撃で障壁を破られると同時に収束させたエネルギーを照射。魔力とシェアエナジーの織り混ざった光芒は一直線にダークメガミへと伸び、背後から奴の首を撃ち抜く。

 普通、頭と首の両方を撃たれて無事な生物はいない。原始的な生命ではない、複雑な構造を持つ知的生命体ならば、それは致命傷となる筈の事。…だが、まだ動く。ダークメガミは…崩れ落ちない。

 

「オ、オォォ……舐メルナ、舐メルナ舐メルナ舐メルナアアアアッ!コノ力ハ我ガ主ヨリ賜ッタ物!即チ負ケル筈ノナイ、絶対ノ力ァ!ソレガ、貴様等ニ…貴様等ナゾニィィィィッ!」

 

 奴は咆哮する。この現実は受け入れられない、こんな結果などあってはならないと言わんばかりに。

 その感情の強さは、確かに通ずるものがある。私とて、頭と首を撃たれようと(継戦出来るかどうかは別として)負けを認める事などしない。…だが、それでもやはり……

 

『…哀れだな』

 

 殆ど同時に私達は呟き、先程の攻撃で迎撃能力が落ちた奴の右腕側を中心に攻撃を重ねる。そこまで縋るかと、ここまで戦っても尚借り物の力しか見えないのかと、ある種失望のようなものを感じながら。

 だが、奴は敵だ。戦う理由が増えていただけで、奴を倒すという目的は最初から変わらない。そしてそれは、気に食わない相手を排除するという、神次元の私にとっても同じ。

 故に、なんであろうと容赦はしない。変わるのは、精々トドメを刺す時にどんな心境でいるか…そんな程度。

 

「行けッ!」

「何度も言うが…私にッ、命令をッ、するなぁぁッ!」

 

 滑り込んでくる奴の端末を自身の左右に展開した端末で撃ち落とし、別の端末で牽制しながら突撃。掌底部の砲が放たれる直前だった左腕の前腕部内側へと爆裂魔法を撃ち込み、その衝撃で僅かながらも射線をずらす。

 奴の腕一本分逸れたかどうかも怪しい程度の爆発。だが何十倍ものサイズ差は腕一本分足らずでも十分な意味を持ち、当たれば一発で蒸発するような光芒は私の…そして私の後方にいた神次元の私の身体には当たる事なく、その横を駆け抜けていく。

 私が離脱すると同時に、恐らくは最大速度で奴の懐へと突っ込む神次元の私。取る回避行動は必要最低限、身体を迎撃の刃が掠めていくのも厭わず彼女はそのまま肉薄し、全速力のまま装甲と装甲の隙間を刺突。即座に引き抜き、その傷口へと左手に集中させていた魔力の塊を叩き込み…撃ち込まれた魔力は、内外へ衝撃波を放ちながら爆ぜる。

 

「カッ…ギ……ッ!?」

「そら、こいつも持っていけッ!」

 

 離れると共に神次元の私は双刃刀を振るい、飛翔する斬撃で駄目押し。私も魔力弾を頭部へと放ち……そこで遂に、ダークメガミが膝を突く。

 

「ア…グァッ…アァ……ッ!」

「…観念する事だな。言ったところで無駄だろうが…最早勝敗は見えている」

 

 積み重なったダメージがいよいよ限界を超えたのか、ダークメガミは苦しげな声を上げる。その姿を見やりながら、私は再び端末を回収。

 

(…負担もそうだが、やはり消耗が激しいな…あまり、長くは持たんか……)

 

 ここまでエネルギー刃や端末の攻撃で何度か軽傷こそ負ったものの、深い傷を負うような事にはなっていない。疲労もしているが、それは戦っているのだから当然の事。

 それよりも気にするべきは、シェアエナジーの損耗。女神化の為に四つのシェアクリスタルを纏めて使った私だが、四人の力…それに負のシェアの女神としての能力すらも内包する今の私は、状態が煩雑過ぎて恐らく本来の女神よりも燃費が悪い。それに何より、教会のシェアクリスタルから供給を受けられる女神と違って、私はシェアクリスタルに頼り切り。継戦能力は間違いなくこの中で一番劣っている以上、攻め時を見誤れば簡単に敗北へと繋がってしまう。

 だからこそ、私は見定める。今がチャンスなのか、それとも真のチャンスはまだ先なのか。

 

「…何故ダ…何故、何故勝テン…!何故奴等が空ニ立チ、コノ私ガ膝ヲ突イテイルノダ…ッ!アリ得ン、ソンナ筈ハナイ、コンナ事ガアッテハナラナイッ!」

「そんなのは考えるまでもなかろうに。…貴様が私よりも弱かった。ただそれだけだ」

「私達よりも、な。…これで分かっただろう。それがそんな物に頼った貴様の、限界だ」

「フザケルナッ!私ガ貴様等ヨリモ弱イ筈ナドナイッ!我ガ主ヨリ賜ッタ力ガ、敗因ニナド……グァアァァッ!」

 

 悔しさを滲ませるダークメガミを、冷ややかに見下ろす。喚きながら奴が右腕をこちらへ向けようとした瞬間、私は溜めておいた魔力による斬撃を、神次元の私は電撃をその膝関節へと撃ち込み、発動させる事なく攻撃を挫く。そしてぶつけるのは…言の葉。

 

「まだ分からないのか。貴様は初めからその姿で、貴様の言う賜った力で戦場へと出た。人の力を借りる行為は何一つ恥じるような事ではないが、最初から借り物の力に頼り、それが全てであると思い込む貴様に……何よりも自分を、自分の道を信じる私や彼女が、負ける道理など何一つない」

「はっ、よくもまあ歯の浮くような事を言えるものだ。残念だが、私は貴様を潰せればそれでいいだけだからな。だから…認められないと言うなら、その下らない鎧を脱ぎ捨て、生身の貴様でかかってこい。そうすればはっきりするだろう。真に強いのは、真の強者は…一体誰なのかがな」

「……ッ…騙サレンゾ…私ハ知ッテイル、コノ力ノ強サヲ…我ガ主ノ偉大サヲ…真ニ強ク、勝者トナルベキハ……」

『なら何故跳ね除けない。立てないのではなく、立たない…それこそが、答えだろう』

 

 私と彼女は言い放つ。薄々感じていた、奴の残された力を突き付けるように。

 説き伏せるつもりはない。倒す意思は変わらない。だが…私として、マジェコンヌとして言わねばならない事があり、それを言わない限りこの戦いは終われない。…ただ、それだけの事。個人的で、されど譲る事の出来ない、私と彼女の決意。

 

「ワ、私ハ…私、ハ……」

 

 声を震わせ、持ち上げた左腕の掌を見つめるダークメガミ。今なら簡単に倒せる。間違いなく無防備なのだから。されど…まだ、奴からの答えを聞いていない。

 私達の言葉に背を向けるのなら、このまま借り物の力諸共沈めるだけ。もしもその力と決別し、マジェコンヌとして決着を付けようとしてくるのなら、誇りと全力を持ってこの戦いを終わらせる。

 信じるなどではない。期待もしていない。しかしそれでも、奴がマジェコンヌとしての在り方を取り戻すのなら…彼女のように、悪しくも天へと伸びる光の様に気高い心を一欠片でも輝かせるのなら、私はそれを……

 

 

 

 

──そう、思っていた…そんな思いの下、奴を見つめていた時だった。

 

「──惑わされてはいけないよ、マジェコンヌ」

『……ッ!?』

 

 不意に、空から聞こえた穏やかな声。聞き覚えのないその声に、反射的に見上げる私達。そこにいたのは……藍色の髪をした少女。

 

「ア、アァ…アアアアァ……!」

 

 一見穏やかな、されど得体の知れない表情と声音。私達が驚く中、ダークメガミは歓喜の声を上げ…その声で、私も神次元の私も理解する。あの少女こそが、奴の主であるのだと。……っ…そうだ、イリゼが撮った写真に写っていた赤髪の女神…確かに彼女と、瓜二つだ…。

 

「…子飼いの手下がやられて、親玉登場か…はんっ、手下思いじゃないか」

「そりゃ、何であろうとやられてしまえば損失になるからね。さて、大丈夫かい?…というのは今の君を見えていないにも程があるね、すまない」

「…申シ訳アリマセン、ウズメ様…コノヨウナ無様ヲ、貴女様ノ前デ晒シテシマイ……」

「気にする事はないよ。こんな戦いになるなんて、オレも予想していなかったからね。君はオレの為にしっかりと戦った。…そうだろう?」

「ハ、ハイ…勿論デスウズメ様!私ハ、貴女ノ命ヲ……!」

「あぁ、分かっているよマジェコンヌ。君はオレの命令へ忠実に従った。大丈夫、オレはその忠誠心をきちんと評価しているよ」

 

 自分は戦う気がないのか、すぐに私達から目を逸らした少女は、奴を労うような言葉をかける。初めは失意を露わにしていた奴も、その言葉を聞いて敬服の意思を少女へと返す。

 一見すれば、それは良い主従関係。だが気に食わない…あぁ、あぁ気に食わない…ッ!

 

(……落ち着け、私…自分の状態を思い出せ…)

 

 湧き上がる感情を何とか理性で押し留め、私は奴等を注視する。そしてその中で、少女は奴へとはっきり告げる。

 

「アリガトウゴザイマスウズメ様…見テイテ下サイ、直チニ私ガ奴等ヲ……」

「いいや、その必要はないよマジェコンヌ」

「……!?デ、デスガ…私ハ、マダ……!」

「うん、でも君はもう十分に戦った。だから…後は、代わりに任せるといい」

『……ッ!』

 

 優しげな声音のまま、そう言い放った少女。ダークメガミ含めその言葉に私達が絶句する中、彼女は続ける。

 

「ほら、君も分かっているだろう?このまま戦っても結果は見えているけれど、オレの言う通りにすれば先にジリ貧になるのは向こうの方だ。何も君一人で勝つ必要はない。代わりだってオレが用意するんだから」

「…代ワ、リ…?…私、一人デ…勝ツ、必要ハ……」

「あぁ。心配は要らないよ。さっき言った通り、オレは君の忠誠を評価しているし…その忠誠、嘘ではないんだろう?」

「……ッ…ハ、イ…」

「なら、やるべき事はもう分かるね?」

 

 一方的に、気遣いはすれども相手の意思は殆ど訊かずに少女は話を進める。奴も狼狽えこそするものの、心底忠誠しているのか…それともそれ以外に縋るものがないのか、その指示に従うような素振りを見せる。

 実際、それは的確な判断ではある。戦術的には正しく、少女にどうこう言う気はない。…だが……

 

「……っ…そうじゃない…そうじゃないだろうッ!分からないのか!?それで勝ったとしても、それはお前の力ではない!そいつが勝ったというだけの事、お前はその下でただ働いていただけという事になるのだぞ!?」

「ウ…五月蝿イッ!ウズメ様ガソウ言ウノダ…!ナラバ、私ハ……」

「い、いい加減に……」

「いい加減にしろ大馬鹿者がッ!ならば名乗るなッ!ただの一介の駒に、命令に従うだけの雑兵に、私と同じ名前を名乗られるような筋合いはないッ!」

「……お前…」

 

 もう我慢ならない。これ以上奴の…私ではない私の情けない姿は一瞬たりとも見ていられない。そんな思いで私が声を荒げる中、その私を押し退ける勢いで怒号を上げた神次元の私。ここまで奴の在り様を気に食わないとしつつも冷笑を浮かべるばかりだった彼女は、その後も奴へと言葉をぶつける。

 

「ここまで貴様は何を見ていたッ!貴様の猛攻を捌き、動きを読み、幾度となく攻撃を当てたのは、貴様をここまで追い詰めたのは、私だろうがッ!女神の対極に立ち続け、一度たりとも自分を疑う事などなかったこの私であり、女神と敵対し、次元を終わりへ誘おうとまでしたにも関わらず、今や四人の女神の力と共にある、功罪全てを背負って己が道を進み続ける信次元の私だろうがッ!どうしても分からんというのなら、言ってやる!私こそが最強だ!マジェコンヌこそが、森羅万象全てを凌駕し握り潰せる存在なのだッ!そして…貴様とてそうだろうッ!マジェコンヌ!」

「…チ、違ウ…私ハ…私、ハ……?」

「彼女等の戯言を聞く必要はないよ。君は、オレの……」

「私達の話に入ってこないでもらおうか…!…お前の望みはなんだ、どこの誰とも知れぬ私よ。力を誇示する事か?主に服従する事か?それとも…誰一人として追随する事のない、自分だけの道を進み、切り開く事か?」

「…ア…アア…アアァァ……」

「これで最後だッ!選べ三下ッ!そんな下らない物で強くなったと勘違いする馬鹿かッ!従属している自分に満足する大馬鹿かッ!自らの力で次元を、世界を震撼させるマジェコンヌかッ!答えを聞かせろぉおおおおおおッ!!」

「…ゥ、ァアアアアアアアアアアッ!!」

 

 思いの奔流。それ以外の表現などないと思う程に言葉へと感情を乗せて、神次元の私は言葉を叩き付ける。その最中、私をも評価するような文言が差し込まれた事には驚いたが…その思いは、私が抱いていたものと全く同じ。だから私も口を挟もうとした少女を言葉で制し、私と神次元の私、二人で問う。お前は何者なのかと。お前の心は、何を求めているのかと。お前は、どこへ進むのかと。

 苦しむように、唸るように、叫びを上げるダークメガミ。それは狂うようでも、何かに抗うようでもあり、彼女の絶叫が戦場に響く。

 そして絶叫の果て、天高く振り上げられる右腕の杖。その先は私達の立つ空へと向かい、少女は深く笑みを浮かべ……

 

 

 

 

 

 

──次の瞬間、その杖は貫いた。ダークメガミの…それを持つ、奴自身の胸を。

 

「……何を、しているんだい…?」

「…ウッ、グッ…フ、フフ…フ……」

「…答えろマジェコンヌ。君は何を……」

「私ニ命令ヲ…スルナァアアアアッ!!」

 

 深々と胸部を貫き、貫通し切った奴の杖。誰一人として予想出来なかったその行為に、訪れる数秒の沈黙。その中で少女は一度訊き、返答のない奴へともう一度その理由を訊こうとしたが……その直後にダークメガミは吠え、引き抜いた杖から電撃を放つ。

 それは、先程神次元の私が私へと放ったのと、同じ言葉。なんとも私らしい言葉。

 

「……っ…」

「…ハ、ハハ…ハーッハッハッハ!ドウダ、ドウダ我ガ『元』主!コレハ思イモシナカッタダロウ!コウスレバ、ドウニモナラナイダロウッ!」

「…そうか…それが君の選択か、マジェコンヌ。…オレは本当に、良い忠誠心だと思っていたんだけどね……」

「貴様ニクレテヤル忠誠ナド最早ナイ!ソモソモコノ私ガ、私以外ヲ頼リニナドスルモノカッ!」

 

 駆け上る電撃は、少女の身体を貫き穿つ。だが少女は揺らぐだけ、その身体が空へと溶け始めるだけで、何らダメージを負った様子はない。…幻影、か……?

 

「…残念だよ、もう少し賢明な選択をしてくれれば良かったのに…」

「ハッ、イイゾ残念ガレ!判断ミスヲ後悔シロ!ソシテ予言シテヤロウ!貴様ナゾ…コノ私ヲ、マジェコンヌヲ弄ンダ貴様ノ野望ナゾ、叶ウ事ナク惨メニ哀レニ地ヲ這イ蹲ル事ニナロウトナ!コノ……女神崩レノ、偽者風情ガ」

「……ッ!お前…!……ふん、ならこのままここでやられるがいいさ。さようなら、愚かな人形」

 

 消え去る直前、それまで苛烈だった声音がトーンダウンし、冷ややかに言い放たれた最後の一言。それを聞いた瞬間、初めて少女はその表情が怒りで歪み…されどその数秒後、鼻を鳴らして別れの言葉と共に消滅。それを至極愉快そうに見送ったダークメガミは、その視線をこちらへと向ける。

 

「…感謝シヨウ。ココマデヤラレナカッタ事、アレダケ言ッテノケタ事。ダガ…舐メルナヨ、傲ルナヨ。我ハマジェコンヌ!次元ニ終焉ヲ齎ス、最凶ニシテ最悪ノ存在!サァ、二人ノ私ヨ、見セテミロッ!アンナ奴ノ力ナド比ベ物ニナラナイ程ニ、マジェコンヌハ強イトイウ事ヲッ!」

 

 翼を広げたダークメガミは、堂々とした言葉と共に青空へと飛翔。一気に私達と同じ高度にまで上昇し、次の瞬間端末を全て射出。各部位からのエネルギー刃も、掌底部の砲も、手にした杖も全て使用し、全方位へと攻撃を放つ。

 

「……ッ、相変わらずの闇雲な…いや、そうか…ハハハハハッ!そうかそうか、貴様が狙っているのは私達ではなく、この次元そのものか!力技で、強引に、無理矢理破壊してやろうという事かッ!良いじゃないか、随分とマシな面構えになったじゃないか!だが甘い、その程度の悪ではまだ美学が足りないなぁッ!」

「御託ハイイッ!超エラレルノダロウッ!?見セテクレルノダロウッ!?ナラバ……」

「あぁ、良いだろう見せてやる!今すぐ見せてやろうじゃないかッ!…おい、手を貸せ信次元の私。奴に、この次元に……」

「我が力を、全身全霊を持ってマジェコンヌの強さを証明する…そうだろう?」

 

 次元を相手取らんとする奴の勢いに喜ぶような声を上げ、神次元の私は言う。それに私は、最後まで言い切らせる事なく応える。そして私達は、にやりと口角を吊り上げ……最後の攻撃を、開始する。

 

「ハーッハッハッハ!ハーッハッハッハッハ!!」

 

 高笑いを轟かせ続けながら、端末が、エネルギー刃が空を乱舞。暴走も同然の攻撃の中を私達は縫うように飛び回り、奴との距離を詰めていく。

 その最中にも、崩れていくダークメガミの身体。既に奴は、奴自身が胸を貫いた時点で、致命傷となっていたのだろう。放っておいても、力尽きるだろう。されどそれを待つ私達ではない。奴がマジェコンヌとしてその在り方を貫くのなら、私達もまたマジェコンヌとしての意思を貫く。自滅ではなく…私達の手で、終わらせる…ッ!

 

(そうだ、ここに…この瞬間に、力の全てを注ぎ込む……ッ!)

 

 無差別故に読む事の出来ない砲火の中を直感だけで進み、多少の傷は無視し、指の先まで力を充填。端末の弾幕を抜けると同時に端末全基を射出し、奴へと最大速度で向かわせる。そして……

 

「決めるぞ神次元の私ッ!」

「終わらせるぞ信次元の私ッ!」

 

 迎撃のエネルギー刃諸共吹き飛ばすように、翼の基部から魔力とシェアエナジーの光芒を発射。一対二条、合わせて四条の光を胴体へ叩き付けると同時に、全身を囲った全ての端末を一斉掃射。私達の端末による全方位攻撃が最早装甲もかなりの数が欠落した奴の身体を焼き、私は横へ、彼女は更に上へ。

 こちらの最後の一撃だ。そう言わんばかりにダークメガミは右腕の杖を上げる。だがそれが攻撃を放つよりも早く、私は杖に、神次元の私は双刃刀に収束させた力を巨大な剣として出力し……斬り裂くッ!

 

「終焉と求道の……」

「灰十字ッ!!」

 

 振り抜いた。駆け抜けた。力の限り、思いの限り。私は真横に。彼女は空から地へ。一度たりとも止まる事なく、斬り裂いて……終止符を打つ。

 

「……フ、ハハッ…ヤハリ、コンナ力ナドニ…我ガ力ヲ引キ出ス事ナド、不可能ダッタヨウダナ……」

「…焉焉の闇に帰せ、偽りの私(マジェコンヌ)。貴様が最後に守り抜いたその誇り、しかと見届けたぞ」

「そしてその誇りは、私達が生涯覚えておくと約束しよう」

 

 刻まれた十字架と共に、崩れ行くダークメガミ。その姿をしっかりと見届けながら、私達は言葉を送る。そして彼女もまた、憑き物が取れたような笑い声を上げ……もう一人のマジェコンヌは、誇り高き意思と共に──散った。




今回のパロディ解説

・某超巨大ビームサーベル
機動戦士ガンダム00における、ダブルオー系列機が使う攻撃、ライザーソードの事。或いは機動戦士ガンダムSEEDシリーズに登場する装備、ミーティアの武装も有りですね。

・「〜〜悪ではまだ美学が足りないなぁッ!」
とあるシリーズの主人公の一人、一方通行(アクセラレータ)の台詞の一つのパロディ。マジェコンヌに美学があるかどうかは謎ですが、きっと誇りはあると思ってます。

・ 「…焉焉の闇に帰せ、偽りの私(マジェコンヌ)〜〜」
炎炎の消防隊における、鎮魂時の祈りの一部のパロディ。シスターマジェコンヌ…うーん、ちょっと勘弁願いたいですね。綺麗な方なら別ですが…。
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