超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第六十九話 完全勝利の決着

 集中する火力、叩き込む弾丸と光芒。狙い撃つは、圧倒的な存在感を放つ塔。

 

「まだまだ、もっと…ッ!」

 

 M.P.B.Lにシェアエナジーを充填し、大出力のビームとして照射。黄金の塔の外壁を溶かし、その内部を焼く。負担の面を考えて長時間撃ち続ける事はせず、照射と休止を繰り返す。

 

「目標は巨大な上に動きもしない建造物だ、一発たりとも外すなよッ!」

 

 爆音、轟音の合間で聞こえる指揮官の声。軍の兵器による砲撃も塔へと叩き込まれ、輝く金の破片が絶え間なく飛び散る。

 更にそこへと飛び込んでくる、水色の刀身を持つ巨大な剣。それと同等の剣を周囲に展開し、放っているのはお姉ちゃん。

 

「このまま火力を集中させるわよッ!全員、気を抜かないでッ!」

『了解ッ!』

 

 説明するまでもなく、今行われているのは黄金の塔の破砕作戦。具体的な戦術なんて必要ない、とにかく高威力の攻撃を叩き込んで壊すという単純な…でも油断だけはしちゃいけない戦い。

 今のところは順調で、これといって想定外の事も起きていない。こういう火力を必要とする作戦においては、軍の皆さんの存在も大助かりで……

 

「女神様!例の増援、到着したとの事です!」

「あ、はい!分かりまし──」

 

 次の瞬間、指揮官さんからの声が届いたその直後、後方から塔へと向かって駆け抜けた膨大な光の奔流。ここまでわたしがしていた射撃とはスケールの違うビームが塔へと突き刺さり、これまでで一番な轟音が響く。

 

「……あれ、って…」

 

 思わず振り向いたわたしの目に飛び込んできたのは、堂々と空を飛翔する巨大な鉄塊。一目見るだけで、今のはそれによる攻撃だった事が分かる。

 この場に来る前に、塔の破壊をするならばと、セブンスジーニアから協力の申し出が来たって言うのは聞いていた。ただの、ではないにしろあくまで民間企業である筈のセブンスジーニア社が何を?…と一度は思ったわたしだけど、考えてみればセブンスジーニアは重機械…言ってしまえば軍事関連の製品も扱っている企業。だから、ひょっとしたら試作の新兵器か何かかもと思っていたんだけど……まさかそれが、空中艦だったなんて…ッ!

 

「わ、わっ、わぁぁ……っ!」

「また予想外の物が出てきたわね、まさか空中艦を保有してたなんて…って、ネプギア?」

「凄い…こんな場面で、神次元の戦闘艦を見られるなんて…!今のはあそこからの砲撃だよね…外観からしてあれはハッチで、機銃が……」

「…ネプギア、TPOって知ってる?」

「え?なんで急に両方苗字が木から始まるお笑いコンビ……あ…」

 

 予想を遥かに超えてきた増援、わたしにとってはサプライズも同然の展開に、胸の高鳴りを抑えられないわたし。我を忘れて見入っている中、近くに来たらしいお姉ちゃんから何やら声が聞こえてきたけど、それはこの場とは全く関係のない事で……とそこまで思考したところで、気付く。それはお姉ちゃんがどうこうではなく、わたしの聞き間違いであると。聞き間違いを起こすレベルで、わたしは現れた空中艦に夢中になってしまっていたのだと。

 

「…ごめんなさい……」

「全く…今ので更に大きなダメージを与えられたと思うし、後はわたし達で一気に決めるわよ」

「う、うん!」

 

 弁明のしようがない暴走についてわたしが謝罪すると、呆れた顔をした後お姉ちゃんは真剣そのものな表情を浮かべる。

 その顔で発された言葉に対し、わたしも気持ちを引き締めて首肯。そしてわたし達は事前に話していた通り、二人並んで武器を空へと向けて構える。

 

「…チャンスは一度きり、なんて事はないけど……」

「一発で決めるに越した事はないもんね」

 

 塔を見据えてM.P.B.Lを掲げたわたしは、その刀身にビームを出力。普段の何倍、何十倍ものシェアエナジーを展開して、纏う形から発振する形、巨大なビーム刃を形成する形へと変えていく。

 お姉ちゃんもまた、大太刀を基部にエクスブレイドを展開。大きく、更に大きく作り上げていき、大空に二つの超巨大剣が並び立つ。

 

「…エクスブレイドならぬ、EXブレイド…いや、二人だしパープルハートハイパービームブレイドとかハイメガブレイドでも……」

「え…さっきわたしにTPOを説いたお姉ちゃんはどこに……?」

「…こほん。カウントゼロで総員攻撃を止めて頂戴!わたし達が両断するわ!」

 

 巨大化させた事で難しくなった制御に集中する中、お姉ちゃんは何やらぶつぶつと独り言を口に。明らかに不必要なその発言にわたしが「えっ…?」と思って振り向くと、お姉ちゃんは咳払いの後澄まし顔をして…何事もなかったかのように、皆さんへと指示。…うん、まぁ…これもお姉ちゃんらしいといえばお姉ちゃんらしいかな……こほん。

 10から始まるカウントダウン。数字が減る毎に緊張感も増していって、だけど神経は研ぎ澄まされていく。そしてゼロの瞬間、発砲音が消え……わたし達は、刃を振り抜く。

 

『はぁああああああああッ!!』

 

 空から地へ、天から塔へ。シェアエナジーで編まれた二振りの巨大剣を黄金の塔へと叩き付け、そのまま二人で斬り裂いていく。

 これは、ここまでの集中砲火で大きく損傷していた塔に対するトドメの一撃。弱らせて、防御を崩したところへ叩き込む、本命の斬撃。それは相手がモンスターであろうと、建物だろうと、関係ない。

 干渉し合わない、でも同じ位置を斬り裂いていけるギリギリの距離で剣を並べて食い込ませる。食い破る。一瞬たりとも阻まれる事なく……打ち、壊す…ッ!

 

「…………」

「…………」

 

 振り切ったわたし達は、刃が塔を離れると同時に収束させていたエネルギーを解放し、宙にシェアエナジーを霧散させる。何を言うでもなく、血糊を払うように得物を振るう。そして、ふぅ…と吐息を吐いた瞬間……斬り裂かれた黄金の塔は、崩れ落ちる。

 巨大だからこそ、始まった崩壊は連鎖的に続いて一気に形が無くなっていく。崩れて、倒れて、バラバラになって……最後は、消滅。光の粒子となって消えていき…破砕作戦は、完了した。

 

「お疲れ様、皆。ネプギアもこっちに来てくれて助かったわ」

「お姉ちゃんこそお疲れ様。これで……って、見て…!」

 

 お姉ちゃんからかけられた言葉に、微笑みながら答えるわたし。そこから一安心したわたしは無意識に空を見上げて……次の瞬間、空の穴の変化に気付く。

 

(……っ…閉じて…いや、消えていってる…?)

 

 信次元でも見た、空が破れたような穴。観測データから導き出された推測の通り、塔が破壊された事で穴も閉じ始めているようだけど…やっぱりその光景は、開いたものが閉じるというよりも、消えるというか直るというか…とにかくそんな感じ。…まあ、だからなんだ、って話だけど。

 

「…どうする?お姉ちゃん。今ならまだ、消える前に飛び込む事も出来そうだけど……」

「流石にどこに繋がってるかも分からない、戻れる保証もない空間に飛び込む気はないわ。帰ってこられなくなったら、またネプギア泣いちゃうでしょ?」

「う…ま、真面目に言ってるんだから茶化さないでよ…」

「ふふっ、ごめんなさいね。…でも実際、今はそんな危険な真似をするような状況じゃないし、あれと塔が完全消滅するまでは警戒を続けておきましょ」

 

 軽く笑って肩を竦めるお姉ちゃんに口を尖らせつつも、わたしは頷いて周辺警戒。でもおかしな事は何も起こらず、塔も穴もそのまま消滅。それを確認した事で、軍の皆さんにも安堵の雰囲気が広がっていき、わたし達も警戒を解く。

 これで、わたし達がこの次元にやってきた目的は達成。三番目…恐らくは最後となる黄金の塔の破壊が完了。これで万事解決…って訳じゃないけど、目下の目標を達成出来た事でわたしの心の中にも安堵が広がって……信次元の皆に向けて、わたしは呟いた。やったよ、皆って。

 

 

 

 

 崩壊しながらもその威圧感を、堂々とした形相を失う事なく崩れ落ちるダークメガミ。入ってきた、突破した二体のノンアクティブ級猛争モンスター撃破の連絡。そして…消えていく、空の穴。

 

「ああ、あぁ、ああぁぁ……!」

 

 どれも嬉しい。当然嬉しい。この場で最も危険な敵が倒れた事も、無事に街を守れた事も、その中でプルルートの完全復活が証明された事も、ネプテューヌ達の元々の目的が達成され、増援を断ち切る事が出来た事も、全部が嬉しいに決まってる。

 でも違う。この興奮は、高揚は、結果に対するものじゃない。激戦を繰り広げ、思いの丈を言葉に乗せ、三者それぞれが自分を貫いたマジェコンヌ。立ち上がり、前を向き、もう一度進み始めたプルルート。その姿を遠目に見るだけで、勇姿を想像するだけで、心が躍る。その強い思いに、心の輝きに、わたしの心も昂り猛る。火照って、疼いて、身体が熱くて仕方ない。

 

(あぁ…駄目、ただでさえ女神化して気分が高揚してるのに、そんな中でこんなにも素敵な姿を見せられたら…想像させられたら…わたし、わたし……っ!)

 

 沸き立つような熱。弾けるような高揚感。熱くて熱くて、今すぐにでもこの思いに浸りたい。身を任せたい。

…だけど、今はまだ戦いの最中。穴が消える事で増援は絶たれたとはいえ、今いる猛争モンスターを殲滅し切らない限り戦いは終わらないし、皆の安全も確保出来ない。だからわたしはこの熱を、この感情を言葉に変える。

 

「既に大地を、空を砕きし巨像は討たれたッ!街にはこの国を守りし女神がいるッ!先のもう一方も、じきに掃討されるだろうッ!後はこの場、この戦場、未だ人々の平穏を脅かさんとする、心の淀んだ魔なるものを討つだけだ!故に、これよりこの戦いは防衛戦ではない!これより先は……我等が正義を証明せし、殲滅戦だッ!」

 

 飛翔し、両手に持つ連結剣をもう一対の翼が如く広げ、わたしは高らかに声を響かせる。わたしの感情を、熱を皆へと広げ、急加速から両刃一閃。出し惜しみなしの全力全開で、猛争モンスターを薙ぎ払う。

 

「…ノリノリですわねぇ、セイツ」

「ふふっ、当然じゃない。こんなに昂ってるのに何もしないでいたら、わたしどうにかなっちゃうもの…ッ!」

「……ほんと、変態ですわね…」

 

 真っ直ぐ突っ込むわたしを後ろから襲おうとした猛争モンスターを、逆にベールが突進で強襲。その流れで背中合わせとなり言葉を交わしたわたし達は、左右に分かれて更に猛争モンスター群を切り崩していく。

 そのわたし達を後押しする、軍の部隊からの火力支援。わたしの声に応えてくれた皆の思いもわたしの中の熱となり、昂りのままにわたしはモンスターを倒し続ける。

 最早、負ける理由なんてない。これだけの熱に、ベールという頼もしい仲間に、共に退く事なく戦ってくれる軍の人達。そしてこの思いを、わたしが響かせた言葉の正しさを示すように……十数分後、この戦いはわたし達の完全勝利で終結した。

 

 

 

 

「……っ、ぅ…!」

 

 ダークメガミが、最後に自分を貫いた私とは別の私が消えゆく姿を目と記憶に納めながら、ゆっくりと地に降り立った私。それで無意識に気が抜けてしまったのか、或いは偶々このタイミングで維持が出来なくなったのか……降り立った次の瞬間、ぐわりと視界が歪むと同時に女神化が解ける。

 

(…身体もシェアエナジーの残量も、もう限界…か……)

 

 解けると同時に身体がふらつき、どさりと前から地面に倒れる。

 全身が痛い。だがそれは今倒れたからでも、戦闘の傷によるものでもない。…これは、負荷。人の身に余る力を全力で行使した事による、あって然るべき代償。

 

「…事が済むと同時にお寝んねか。さっきまでの威勢はどこへ行ったのやら」

 

 軋むような痛みの中で、上から投げかけられる言葉。ゆっくりと身体を半回転させて見れば、同じく着地した神次元の私もまた変身を解き、悠然とこちらを見やっている。

 

「…同等の力を使いながらも、方や健在、方やこの有り様、か…。仕方のない事とはいえ、全く情けないものだ……」

「はっ、それが女神の力の限界というやつさ。これで少しは目が覚めたか?」

「まさか。こんなにも誇らしい力、手放そうなどとは思わないさ…」

 

 何故この次元…というか別次元の私が犯罪神と同じ姿を持ち、神域の力を有しているのかは分からない。私だけが例外なのか、それとももっと広く『負のシェアの象徴に纏わる力』を有する事になるのが、マジェコンヌ()という存在なのか…いずれにせよこれが、恐らくは自前の力で戦っていた彼女と、外部からの力を必要とする私の差。そもそも人の姿で私と戦っていた時でさえ、どこまで力を使っていたかは分からない。

 そして確かに、これが私の…今の私の限界だろう。女神云々ではなく、それを振るう私の限界。だがそれを、私は惜しいとは思わない。たとえこの次元の私には敵わずとも、これは私がこれまで積み重ねてきた…多くの人や女神と繋がり、様々な経験をし、功罪織り混ざった人生の中で掴み取った、私の歩みそのものと言っても過言ではない力。何より、今の私はネプテューヌやイリゼ、彼女達皆に肯定されて生きているのだから……そんな自分の過去を、否定などするものか。

 

「女神の力を誇らしい、か。…とことん相容れないな」

「そうは言いつつも、君とて今は積極的に女神を討とうとはしていないんだろう…?」

「…ふん。悔しいが、今の女神は誰一人として一筋縄ではいかない。愚かだろうと、確かな力を持っている。だからこそ、私も今はより強大なる力を探しているだけだ。私の目的は、最後に見据えているものは、今も昔も変わっていない」

「…そうか…ならこれ以上は、何も……っ…言う、まい…」

 

 農業もその一環なのか。一瞬そんな問いを返してみたくもなったが、それは口に出す事なく止める。本当にそうなのか、それとも無意識的に女神を憎む事、世界を終焉に誘う事以外の生き方も出来るようになった事の表れなのかは分からないが…今訊くのは野暮だろうと、何となくだがそう感じた。

 それよりも今はやる事が、やらねばならない事がある。それを果たすべく私は痛む身体に力を込め、起き上がろうとして……次の瞬間発されたのは、意外過ぎる言葉。

 

「…止めておけ。今立ったところで、無駄に無様な姿を晒すだけだ」

「…そうは、いかないさ…こう見えて私は、諦めが悪いんだ……」

「…ふっ、それに関してはお互い様だ」

 

 片膝立ちとなった私へと送られた、忠告するような言葉。その時点では真意が見えず、言葉を返した私だったが…それを聞いた神次元の私は、にやりと笑ってこちらに背を向ける。

 

「……私を、討たないのか…?」

「討つさ、だがそれは今ではない。今の満身創痍なお前を倒したところで、それは真に勝った事には…私は私一人で十分だという事の証明にはならんからな」

「…………」

「…だが、覚えておけ。この戦いで、お前が全力を持って相対すべき存在だという事がはっきりした。もう、小細工が通用するとは思うなよ?」

 

 こちらへ振り向く事なく、そう言い切った神次元の私。…その言葉に、嘘や建前などはないだろう。単に今倒しても意味がないと思っただけで、抱く意思は変わらない。

 そう、それが彼女であり…マジェコンヌだ。だからこそ私も、ふっと笑みを浮かべて言葉を返す。

 

「…神次元の私。人生は…何があるか、分からないものだな」

「…そんなものだろうさ、人生など」

 

 そうして神次元の私は、共に意思を貫いた彼女は私の前から立ち去った。彼女は無様な姿をと言ったが…それでも尚、私はここで立ち上がる。

 何があるか分からない。それが、生きる上で当たり前であると同時に真理。なればこそ、私は立ち上がる。自分で終わりを決めるのではなく、無様であろうと、私は立つ。……それこそが、私の道なのだから。

 

 

 

 

 さっきとは違う、ぴーしぇちゃんと帰る教会。逃げるんじゃなくて、自分の居場所に戻る為の帰還。あたしの心の中にあるのは…勝利と自分への安堵感。

 

「ふぅ。まだやらなきゃいけない事はあるけど…取り敢えずはお疲れ様、ぴーしぇちゃん」

「うん!ぷるるともよくがんばったっ!」

「あ、ありがとねぴーしぇちゃん…」

 

 敷地内へ着地したあたしは、今日もこれまでも本当に頑張ってくれた、支えてくれたぴーしぇちゃんの頭を一撫で。するとぴーしぇちゃんは嬉しそうな顔をしてくれて、そこまでは良かったんだけど…そこからぴーしぇちゃんは手を伸ばして、にっこにこの笑顔であたしの頭も撫でてくる。…うん、まぁ…こういう無邪気なところがぴーしぇちゃんの可愛いところだけど、これはちょっと…。後、撫でるにしてはぴーしぇちゃん力強過ぎよぉ……?

 

「〜〜♪…ほんと、お疲れ様ぷるると」

「…うん。でも、これからも頑張るよぉ〜。一難去ってまた一難〜!」

「え、っと…ぷるると、それはちょっと意味が違う気が……」

 

 髪がぼさぼさになりそうな位撫でたぴーしぇちゃんは、満足したみたいな顔をして女神化解除。ちっちゃい頃のままのぴーしぇちゃんから、しっかり者になったぴーしぇちゃんに戻って、あたしも女神化を解除して、そのままぐっと右手の拳を空へ。あたしは真面目に言ったつもりだったんだけど、それを見たぴーしぇちゃんは苦笑いしてて……そこへ、ある女の人の声が聞こえてくる。

 

「お帰り、ピーシェ」

「うん、ただいま……って、ママぁっ!?」

 

 あれ?この声は…と思って振り向くと、そこにいたのはぴーしぇちゃんに似てる女の人と、その隣で微笑んでいる男の人。自然に挨拶を返したぴーしぇちゃんだけど、すぐに誰なのかって事に気付いて目を見開く。

 

「パパもいるぞー?」

「あ、ほんとだ!?…って、そうじゃなくて!マ…お母さんもお父さんも、どうしてここにいるの!?」

「どうしてって、来たからに決まってるじゃない」

「うん、だろうね!でもぴぃが訊いてるのは理由の方だよ!?」

「はは、折角授与式なんて大きな行事があるんだから…って事でね。ごたごたではぐれてしまったけど、コンパちゃんとアイエフちゃんのご両親も来ているよ」

 

 お母さんとお父さんがいる事にびっくりしているぴーしぇちゃん。そんなぴーしぇちゃんをお母さんはにこにこした顔で見ていて、お父さんは苦笑い。

…ほぇ?どういう事、って?えっとねぇ、色々あって、昔プラネテューヌの教会では赤ちゃんだったぴーしぇちゃん、こんぱちゃん、あいえふちゃんを預かる事になったんだぁ。その時から普段はどこの国にも住んでないぴーしぇちゃん達のお母さん達が時々会いに来てて、最初は大きくなって色々…えっと、安全になったら、だったかなぁ…?…とにかくおっきくなったら引き取るって事になってたんだけど、あたし達とぴーしぇちゃん達が本当に仲良くなって、それをまた自分達の都合で引き離すのはあんまりだってお母さん達が話し合った結果、今も普段は別の場所に住んでるけど、お互い時々会いに行くって感じになってるんだ〜。

 

「ぴーしぇちゃんぴーしぇちゃん、今ので合ってるかなぁ?」

「え、な、何が?」

「何って、これだよぉ?」

「どれ!?…あ、じ、地の文か…うんまぁ、概ね合ってるんじゃないかな…」

「そっかぁ。良かった〜」

 

 合ってるって言われてあたしは一安心。えへへ〜、皆もこれで分かってくれたよね〜。

 

「はぁ…もう、来るなら連絡してくれればいいのに……」

「ふふっ、サプライズよサプライズ。びっくりしたでしょ?」

「お母さんはほんとマイペースだね…お父さんも秘密で連絡してくれていいんだよ?ぴぃ、知ってたら知ってたで演技するし…」

「ごめんごめんピーシェ。まあそれはそうと…大活躍だったじゃないか。ピーシェが戦う姿、ちらっとだったが見えていたよ」

「そ、そう?…まぁ、ぴぃも一応女神だからね…」

 

 ぽふり、とぴーしぇちゃんの肩に置かれるお父さんの手。お母さんも誇らしげに笑ってて、そんな二人の様子にぴーしぇちゃんは照れていたけど…でもやっぱり、嬉しそう。

 

「良かったね〜、ぴーしぇちゃん」

「うっ…ま、まぁ…褒められたら、誰だって嫌な気はしないからね…」

「素直じゃないわね、ピーシェ」

「だよね〜、ぴーしぇちゃんのお母さん〜」

「も、もうっ!…あ、皆帰ってきたよ!?」

 

 素直に喜んでもいいのにそうしないぴーしぇちゃんも可愛くて、あたしとぴーしぇちゃんのお母さんはふたりでにこにこ笑い合う。

 それでもっと恥ずかしくなったみたいなぴーしぇちゃんは、全然違う話を口に。でも嘘じゃなかったみたいで、振り向いたら本当に空にはねぷちゃん達が。

 

「あっ、皆もお帰り〜」

 

 皆に向かって手を振ると、皆も手を振り返してくれる。それはなんて事ない、普通の事で…だけどそんな事も、あたしは出来なくなっていた。本当に本当に、あたしはこんなちっちゃな事も失っていて……それを取り戻させてくれたのも、皆。

 あたしはこれから頑張らなきゃいけない。女神としてもそうだし、あたし自身との付き合い方も、もう完璧に分かった訳じゃないんだから。でもそれと同じ位、頑張って皆にありがとうの気持ちを伝えたい。あたしを助けてくれた、これからも一緒にいてくれるって言ってくれた……

 

 

 

 

「……ほんと、皆は可愛いわよね。だから…」

「うん。これからも皆と一緒にいられるように、あたしもあたしらしくいなくっちゃ」

 

 心の中で聞こえた、もう一人のあたしの言葉。あたしと同じで、可愛い皆が大好きな、女神のあたしの思い。それにあたしは頷いて…アイリスハートとも、約束する。あたしとアイリスハートで、ちゃんと前に進むって。

 

「……?ぷるると、今誰かと話してた?」

「ううん、独り言だよぉ」

 

 きょとんとした顔のぴーしぇちゃんにふるふると首を横に振って、あたしは皆をお出迎え。早速どうだったか聞いてくる皆に、あたしは胸を張ってどんな戦いだったかって事を伝える。

 なーんて、何だか凄ーく真面目な感じになっちゃったけどぉ…前みたいに皆で仲良く、楽しくいるのが今のあたしの願いだもん。そんなの頑張る事じゃなくて…皆が大好きって気持ちを、皆を信じる思いを持ち続けていれば、それだけで大丈夫だよね。だって……あたし達は、友達だもん。

 

 

 

 

「あははははっ!余裕綽々な態度しておきながら造反されるとか、哀れにも程があるでしょ!あははははははっ!」

 

 壁も天井も床もない…正しくはないように思える、どことも知れぬ空間の中。そこに響き渡るのは、嘲笑に満ちた笑い声。

 

「……笑い過ぎじゃないかな」

「いやいやこれを笑うなって方が無理でしょ!しかも最後のあんたの顔…ぷぷっ……」

 

 不愉快そうな表情を浮かべるうずめに対し、何の躊躇いもなく長身の女性…レイは笑い転げる。それを暫く不服そうに見ていたうずめだったが、ある時ふぅ…と小さく息を吐き、彼女に向けて口を開く。

 

「…君こそ、数倍の物量をぶつけておいて完敗していたじゃないか。偽者に聞いていた程の強さは見られなかったけど、あれはどういう事だい?」

「あぁ、あれ?そりゃ勿論私は格が違いますし、最初は本物(笑)を私が片手間で作った偽者で蹂躙してやろうとか思ってたわよ?けど強い偽者を作るって、つまり本物の強さを認めるって事じゃないですかー。だからしょぼーい偽者を作って、所詮はこの程度ー、ってのを見せてやったのよ」

「…なら、彼女…レジストハートだったかな。その偽者を作らなかったのは?」

「はぁ?あんな汚物の偽者を作るとか、こっちの力まで腐るんですけどー?てか、あれの話はしないでくれる?割と本当に不愉快だから」

「…そうか」

 

 最初の問いにはひらひらと手を振って答えたレイ。だがレジストハートという名を聞いた瞬間表情が変わり、声音も冷たいものへと変化。睨め付けるような視線を受けたうずめが淡白な返答をすると、その空間は静寂となり……そこで、本の中から三人目の人物が声を発する。

 

「しっかし、まさかマジェコンヌ&マジェコンヌVSマジェコンヌなんて戦いになるとはなぁ…今回は中々面白かったぜ?こんなの、普通だったらどれだけの次元を巡っても見られなかっただろうしな」

「そうだね、これは本当に意外だった。まさか彼女達が手を組むとは……」

「お前にとっちゃ、気分の良いものじゃないだろうな」

「…どういう意味かな、クロワール」

「さてね。それより…こういう時は徹底してネプテューヌは呼ばないんだな。友達だの何だの言ってる癖に」

 

 含みのあるクロワールの言葉に、うずめはトーンを落とした声で返す。だがそれを軽く受け流すと、クロワールはネプテューヌの名前を口に。

 確かにこの場にネプテューヌはいない。そしてある種、その発言はうずめへの皮肉の様なものだったが、うずめは表情一つ変えずに肩を竦める。

 

「ねぷっち、こういうのは好きじゃないだろうからね。それに、話していないのは君もだろう?」

「そりゃ、俺は友達なんかじゃねーからな。…ま、お前がそれでいいならそうすりゃいいさ」

「言われるまでもないね。それよりレイ、次は君にも動いてもらうよ。準備は万端なんだから……」

「あーはいはい分かってますよ。ま、軽く暇潰しさせてもらおうかしらね」

 

 再び人を小馬鹿にするような表情を浮かべて、レイは軽く首肯。立ち去る彼女を見送って、うずめはまた吐息を漏らす。

 静かになった空間の中、うずめは見つめる右手をゆっくりと握る。…計画は順調だ。そう言わんばかりに、頬を緩めながら。




今回のパロディ解説

・「〜〜両方苗字が木から始まるお笑いコンビ〜〜」
お笑いコンビ、TKOの事。木本さんと木下さんですね。因みに最初はTPOを全然違う略称と勘違いするネプギアという案もありましたが…こうなりました。

・EXブレイド、パープルハートハイパービームブレイド、ハイメガブレイド
ガンダムビルドダイバーズシリーズに登場する、巨大ビームサーベル系の必殺技や武装の事。考えてみれば、巨大ビームサーベルにはこういうものもありましたね。
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