超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第七十三話 共同戦線?

 突如として空に上がった闇色の柱。犯罪神だけでなく、異常の元凶であるうずめや、恐らくセイツの言っていた女神であろうレイもいたギョウカイ墓場最深部。そこで戦い痛感した、レイの圧倒的な強さ。そして…犯罪神の復活を前にして、再び現れた四天王。

 立て続けに私達が目にしたものは、どれも驚愕の事態だった。一つ一つが私達にとっては不利となり得る事柄で、最悪の展開になる事も想像した。

 だけど、そうはならなかった。そうはしなかった。他でもない……四天王、四人の意思で。

 

「貴女、達……」

 

 私達の前へと並び立つ四天王。その背に声をかけるネプテューヌの声音には、驚きの色が籠っている。

 当然だ。幾ら彼等なりの意思や心情があるとはいえ、四天王は犯罪神…私達の敵の従者で、嘗ては戦っていたんだから。理解し合った部分はあっても、結局は戦って、倒したんだから。

 

「…それは、どういう事ですの?あくまで向こうの側には付かないというだけでして?それとも……」

「そうさなぁ。俺個人としちゃ、底が知れねぇあいつ等と、最高に強いお前等を同時に相手取って暴れるなんざ、涎が出る程面白そうな戦いだが……安心しな、今はお前等の味方だ。今回ばかりは、かなり事情が事情だしな」

「…ジャッジ……」

「お、俺とまた戦えなくて残念か?それとも共闘出来そうで嬉しいか?前者なら同感だが…後者だったら、それはそれで満更でもねぇんだよなぁ」

 

 自分は味方だ。ベールからの半信半疑な問いにそう答えたジャッジを、思わず安堵の籠った声で呼んでしまった私。すると肩越しに振り返ったジャッジはにやりと笑みを浮かべて、軽く私をからかってくる。…よ…よくこんな状況で、そんな事を…。

 

「…おいトリック。それはテメェも同じだってか?」

「うむ。それに我輩は、約束をしたのだからな。もしも、そんな日が訪れたのなら…必ずや、君達の力になると」

「…トリック、さん……」

「おぉっ!?わ、我輩にさん付けだと…!?…良い、幼女のさん付けは心にグッとくるものがある…!紳士ならば誰しもお兄ちゃん呼びに憧れるものだが、さん付けもまた甘美……ッ!」

「…あー…なんだ、やっぱりへんたいねコイツ……」

「…ブレイブ、アンタも……」

「あぁ。俺の心はあの時既に…誉れ高きブラックシスターとブラックハートに夢を託したあの時より決まっている。そしてそれは、今も変わる事などない」

「…そうだったわね。貴方は夢を、願いを貫く男だもの」

 

 続くブラン達の言葉にも、トリックとブレイブの二人が回答。片方はジャッジ以上に「よくこんな場でそんな事を…」と思うような発言をしていたけれど、その声音に嘘は感じられない。

 

「…驚いたわね。まさか、四天王が全員味方になるなんて……」

「ふん、勘違いするなよ?信仰心の薄いあいつ等と違って、我は貴様等と肩を並べるつもりなどない。ただ犯罪神様の為に、この場での最善手を選んだだけだ」

「…でも、一先ず今はわたし達と敵対する気はない…そう受け取って、いいんですね…?」

「今は、な」

 

 唯一マジックだけは、こちらへの敵意を見せている。でも彼女の大鎌の刃に写っているのはうずめとレイ二人の姿で、それこそが彼女の答え。スタンスは、私達へと抱く気持ちは違えども…立つ位置は、ジャッジ達三人と同じ。

 

「…………」

「残念でしたわね。こんな事になるとは、思いもしませんでしたけれど…彼等はわたくし達の側に付くようですわよ」

「…ふー…あぁ、そうだね。どうやらそのようだ」

 

 持ちかけられた提案を蹴り、四天王はこちらに付いた。それを前に、何も発さず静かにこちらを見つめていたうずめ。そしてうずめは、大きく一つ息を吐き…仕方ないなとばかり、肩を竦める。

 

「…随分と余裕だな。これも想定内だってか?」

「まさか。でも、想定外の事なんて端から当てになんてしていないよ。こちらに付くのなら儲け物、付かなかったとしてもそれならそれで予定通りに事を進めるだけ。それだけの話だからね」

 

 ブランからの言葉も飄々と返したうずめが見上げる先。そこにいるのは、退屈そうにこちらを見下ろすもう一人の敵。

 そうだ。四天王が味方に付いた事で、状況は大きく変わった。でも、最大の敵の力は何一つ削がれていない。四天王は全員強いけど……それでもまだ、戦ったらどうなるかは分からない。

 

「…用心して。奴は…レイは、私達の誰よりも強い」

「みたいだな。ヤベぇ気配がぷんぷんしてやがる」

「そのようだな。だが…奴の強さは、この際どれ程であろうと関係ない」

「その通り。我輩達がやらねばならぬ事は、戦いとは全く別にある」

「別?…それは……」

 

 てっきりこのまま戦うものだと思っていた私。けれどブレイブとトリックの口振りからは、違う考えがあるように感じられる。

 それは皆も思ったようで、何を言おうとしているのかネプギアが問う。するとマジックは振り返り……

 

「…これより我等はこの場から離脱する。殿を務めろ、女神!」

『え、ちょっ…はぁぁぁぁッ!?』

 

 言うが早いか跳躍し、すぐさま飛んで行ってしまった。しかもその後を、ジャッジ達も追走していく。

 

…………。

 

……いや、飛んで行ってしまった…じゃないよ!?追走していく…でもないよ!?はぁぁ!?はぁああああッ!?

 

「な、何のつもりよマジック!離脱とか殿とか突然過ぎて…って、ほんとに行く気!?ちょっと!?」

「説明している暇はない。だが、貴様等とて知らぬ訳ではないだろう。我等四天王の消滅が、一体何を意味するかは」

『……っ!』

 

 突然味方だと思っていた四人に戦う前から離脱された私達どころか、うずめやレイすら呆気に取られる中、目を白黒させながらネプテューヌが飛ばした質問。それに振り向いたマジックは平然と答え、再び最深部から離れていく。

 唐突にも程がある。でも、意図は理解した。四人がうずめ達による犯罪神の復活を阻止しようと言うのなら、自分達の消滅は戦闘の勝敗に関わらず…というか、それ自体が敗北条件と言っても過言じゃない。…まぁ、それでもちゃんと説明せずに行動されるのはあんまり好きじゃないんだけど…ッ!

 

「あー、もうッ!いいわよやってやろうじゃないッ!ユニ達は先に行って援護お願い!私達は……」

「少しばかり、荒らすとしましょうかッ!」

 

 理解したなら動くだけ。弾かれるように私達も行動を開始し、ノワールの指示で候補生組四人は飛翔。私達は前を見据え、各々の遠隔攻撃をレイへと放つ。

 

「へー、あいつ等を逃がす為の捨て石になる気?でもそんな事……」

「勘違いしないで、もらおうかッ!」

 

 唯一即座の遠隔攻撃に移らなかった私は、その間(と言っても数秒だけど)全力で精製。剣も槍も魔法弾も打ち砕いたレイに向けて身の丈の数倍以上ある巨大剣を放ち、その後を追うように私も飛ぶ。

 

「はぁああああああぁぁッ!」

「あはっ、もしかして特攻?全力で突っ込めばー、ってやつ?いいわ、だったらその思い…あっさりと、呆気なく叩き潰してあげるからぁッ!」

 

 肩に担ぐように長剣を構え、雄叫びを上げながら私は突進。巨大剣を真っ二つにしたレイは私の突進を見て笑い、避けるでも遠隔攻撃を放つでもなく、ただ私を待ち構える。

 それは、絶対的な自信の表れ。何をされようと返り討ちに出来ると信じて疑わないからこその行動。そして実際、それ程の力がレイにはあり……だからこそ、その認識を私は突く。

 

「……!見誤るなレイ!それは……」

「あぁ?何を見誤る……ぁ…?」

 

 一直線に私は肉薄。そこから私が長剣を振るうよりも早く、私の顔面に迫る杖。全速力を乗せた今の私にそれを避ける術はなく、最早防御も間に合わず……だけど次の瞬間、レイの杖は空を切る。──私の身体が、後ろへ引っ張られた事によって。

 

「ふっ…どれだけの実力があろうと、無意識の思い込みには勝てぬものさ」

「……ッ…白髪女神…ッ!」

 

 明らかに不可解な下がり方をする私に、外れた攻撃にレイが呆然とする中、にやりと笑みを浮かべる私。その背後にあるのは……私のプロセッサと繋がった鎖。伸びた先にいるのは、離脱行動を取りながら引っ張るネプテューヌ達。

 そう。私が下がったのは、この鎖で引っ張られたから。巨大剣も、さも全力攻撃をするかのように見える突撃も、全て私が作り、背で隠した鎖を気取られない為のブラフ。即ちここまでの一連の流れは、レイをその場に留める為の時間稼ぎであり……桁外れの力を持つレイでも、鎖を介して女神四人に思い切り引かれている私へ一瞬で追い付く事など出来ない。

 

(けど、これッ…胸が締め付けられる……ッ!)

 

 とはいえそれは、相当の無茶。鎖とプロセッサの繋ぎ目が引き千切れる可能性もゼロじゃないし、普通の人間で同じ事をやったら慣性で内臓が潰れるか、下手したら四肢が飛んでいってるかもしれない。特に胸は爆ぜるんじゃないかって位の圧力で押さえ付けられていて、その苦しさを思えばブランが羨まし「あぁッ!?鎖叩き斬るぞッ!?」…あ、ごめん…。

 

「このまま私達も一気に離脱するわよッ!イリゼ、立て直せるッ!?」

「大、丈夫…ッ!」

 

 歯を食い縛る事で胸元を襲う圧力に耐え、私は身体を捻って半回転。丁度側にあった大岩を足の裏で蹴り付ける事で引く力とは別の推進力を生み出し、自律飛行を再開。間髪入れずに皆へと合図を出して、四人の持つ鎖も消滅させる。

 そこからはとにかく全員全力で飛びながら、殆ど無差別に遠隔攻撃を放ちまくる。どこかを狙うという事ではなく、地上にも空にも障害物にも、ギョウカイ墓場を壊滅でもさせるかのように。

 勿論、本当に焦土にしたい訳じゃないし、全速力で飛びながら焦土にする事は流石に出来ない。だけど追撃の妨害ならば、やたらめったらに撃つだけでも十分。

 

「……ちっ…」

 

 微かに聞こえた舌打ちと、遠くに見える、私達の攻撃で弾け飛んだ岩の破片を杖の一振りで打ち払うレイの姿。こちらを見てはいるものの、レイに追いかけてくる様子はない。うずめはそもそも動いていないのか、角を曲がった今はその姿すらもう見えない。

 

(…食えないな、こっちのうずめは……)

 

 良くも悪くも真っ直ぐで、よく思いが伝わってくる向こうの次元のうずめと違って、こっちに現れたうずめは真意が読めない。でもだからといって言動が胡散臭い、裏がありそうって訳でもなく、むしろ言っている事は向こうのうずめと同じように、嘘なんてないような印象すら感じられる。

 その感覚は正しいのか、それともうずめの演技なのか。その疑念を抱きながら私達は飛び続け、遂に見えてきた外の光。

 だけどまだ油断は出来ない。もう目前という瞬間こそ、無意識の油断を回避する為気を引き締めておかなければいけない。そうして私は身を捻り、外へと背を向ける形でギョウカイ墓場より脱出する。

 

「ユニちゃん!うずめさん達の姿は見える!?」

「大丈夫!両方追ってきてないわ!」

 

 地面を滑りながら着地し警戒を続ける中、上空から聞こえてくるネプギアとユニのやり取り。件の二人は勿論、それ以外の気配も周囲にはなく……十数秒後、漸く私達に訪れる安堵。

 

「な…何とかなったぁぁ……」

「はふぅ…つかれた…(へとへと)」

 

 へなへなと空から地面に降り、揃って膝に手を突くロムちゃんとラムちゃん。特にロムちゃんは私達と一緒に来ていた訳で、今は披露していて当然の状況。

 

「一先ずお疲れさん、けどまだ気は抜くなよ?」

「ですわね。向こうの様子からして、振り切ったのではなく単に追う事をしなかっただけのようですし」

「それに考えてみれば、状況が変わったとはいえうずめの言う通り墓場から退いてしまったわね…」

「なんだ、存外後ろ向きなのだな。だがまぁいい、強い負の感情は犯罪神様の力となるのだから」

 

 浮かない顔で現状を見つめるネプテューヌに対し、漆黒の修道服に身を包み、左目を眼帯で覆っている女性が煽り混じりの言葉を返す。…もしかしてこれ、好都合だからわざと追わずに見逃した…?

 

「相変わらず容赦ねぇなぁ。けど、我先にと離脱しておいてンな事言うのは、流石にちっと格好悪いってもんだぜ?」

「同感だ。して、ここからはどうする女神達よ」

「ここから?…まぁ、取り敢えずはプラネタワーに帰還…ですよね?」

「それが良いと思うよ。色々情報の整理もしないとだし」

「ほほぅ、プラネタワーと言えばあの妖精の如き幼女がおる場所…ふふ、であれば今から胸が踊るというもの…!」

 

 その女性の口振りをやれやれとばかりに指摘したのは、野武士というか浪人というか…とにかく身なりなんて気にしないとばかりの和装をした男性。そこにライダースーツの様な、戦隊物のレッド辺りが着用していそうな服を着た男の人が言葉を続け、ユニと私でそれに応答。するともう一人、ぱっと見執事にしか見えない整った服装をしている男性がにやりと卑しい笑みを浮かべて……浮か、べて……浮か…べ、て…………

 

『……って、誰ぇええええええええええッ!!?』

 

 ギョウカイ墓場の前、開けた場所に響き渡る私達九人の絶叫。見間違いかと思って目を擦ったり、ぐっと目を瞑ってから改めて見たりもしたけれど…やっぱり見間違いなんかじゃない。

 女性一人に男性三人。見た事のない、でも声は聞き覚えがあるどころかついさっきまで聞いていたのと同じ声をしている謎の人達が……そこにはいた。

 

 

 

 

「…で、そちらの方々が……( ̄◇ ̄;)」

「ブレイブだ」

「ジャッジだ」

「トリックだ」

「……ふん」

 

 色々不測の事態はあったものの、全員でプラネタワーに戻ってこられた私達。傷の治療も兼ねて帰還後まずは休息し、その後状況の整理の為に再度会議室へと私達は集合。

 そんな中、イストワールさんが真っ先に口にしたのは、やはりというか何というか…案の定、この四人の事。

 

「…何が起こっていてもおかしくないとは思っていましたし、インカムからの通信で多少は把握していましたが…これはまた、物凄い方々を連れて来ましたね…

( ̄▽ ̄;)」

「はは…私達も未だにびっくりしてます…」

 

 苦笑いと共に頬を掻くイストワールさんの言葉に、私も乾いた笑い声を上げて返答。もう皆お分かりの通りだと思うけど…この四人は、四天王の四人らしい。

 

「けっきょく、これってどーゆーこと?これまではへんしんしてたの?」

「そうではないぞ、ラムちゃん。これは我輩達本来の姿ではなく、我輩達の『生前の』姿なのだ」

「…せいぜん…?(きょとん)」

「だが、俺が死んだのはこの頃よりもずっと後。恐らく死の直後ではなく、各々の最盛期の姿が再現されたのだろう」

「何よその英霊召喚みたいなのは…っていうか、じゃあもしや……」

「そう、これは俺がヒーローだった頃の姿だッ!」

 

 ぐっ、と胸の前で右手を握り締めたのは、ブレイブ…らしい男の人。…ヒーロー……?

 

「生前、ね…まぁ、その姿が何なのかは分かったわ。なら、その姿になった理由は?まさか、街に出るに当たって混乱を起こさない為…とかじゃないんでしょ?」

「それに関しては、確証がある訳ではない。…が、今回の我輩達の復活はそれ自体がイレギュラーな上、犯罪神様もまた本来の形での復活に近付いている訳ではない。それ故我輩達に配分されたシェアエナジーの量も十分ではなく、足りていないシェアエナジーで存在を維持する為、身体の方から自然に再構成が行われた…という辺りであろうな」

「…では、墓場を出た時点で姿が変わったのは……」

「墓場ん中はともかく、そこ以外じゃ負のシェアが周囲にも全然ねぇからな。…にしてもトリックお前、今は幼女以外とも普通に話すんだな。特にベールなんて幼女とは真逆なのによ」

「我輩とて、必要であれば幼女以外とも話すわ。そもそもこれまでお前達とも話していただろうに」

「おっと、そういやそうだな」

 

 腕を組んで更に踏み込んだ質問をノワールがすると、それに執事っぽい人…トリックが回答。そこに何となくジャッジだって分かる男の人が茶々を入れて、トリックが平然と返して…と若干脱線はしたものの、取り敢えず姿に対する「何故?」はこれで判明した。

 

「それじゃあさ、そろそろさっきしてくれなかった説明してよ」

「…………」

「ちょっとー、マジックー?わたし貴女に訊いてるんだけどー?」

「…はぁ。一応知っていたとはいえ、こんなどこにでもいそうな娘に犯罪神様は討たれたというのか…あぁ、さぞ屈辱だったでしょう犯罪神様……」

「聞いてない上にさらりとわたしをdisってきた!?酷くない!?後、わたしはどこにでもいる普通の○○系主人公じゃないよ!?主人公オブ主人公、オンリーワンでナンバーワンのネプテューヌさんだからね!?」

「…騒がしい……」

「誰のせいだと思ってる訳!?」

 

 続けて先程の件に…と思いきや、予想外の弄り(?)を受けて地団駄を踏む程憤慨するネプテューヌ。対する唯一の女性、マジックは涼しい顔で…というか…うん、これ別に弄った訳じゃないね…本気で言ってたんだ、マジック……。

 

「まあまあ、我輩はオンリーワンの魅力があると分かっておるぞ?…そうだ、では我輩が身内の失言のお詫びとして、あるマジックをお見せしよう」

「え?何?トリックってマジック出来るの?」

「うむ。よーく見ておるのだぞ?ここにあるハンカチが…」

「ハンカチが…?」

「…なんと、一瞬で縦縞から横縞に!」

『まさかの某マギーさん!?』

『おぉー…!』

 

 見た目から何か凄い手品でもするのかと思いきや、出てきたのはなんと違う意味で凄いマジック。意外過ぎる手品に思わず突っ込んでしまった私達だけど……ロムちゃんとラムちゃんは、揃って目を輝かせていた。…守りたいよね、この無垢さ。

 

「…下らん。あの場で言った通り、離脱した最大の理由はあの不届き者共に犯罪神様の眠りを妨げさせない為だ。奴等の目的なぞどうでもいいが、犯罪神様を利用するなど許されざる事だ」

「やっぱり、貴女達がやられるのは不味いんですね。でも……」

「うん、うずめは他にも…っていうか、そもそも別の手段で犯罪神を復活させようとしてたよね?四人の事は想定外って言ってたし。なら、このまま四人が倒されなくても、このままだったら犯罪神は復活するの?」

「だろうな。第一我等は尖兵であり、犯罪神様が蘇る上で必要不可欠な存在ではない。そして犯罪神様が仮の姿で蘇るのは、早ければ数日、遅くとも数週間といったところだろう」

 

 早ければ数日。緩んだ空気を一蹴したマジックのその言葉で、一気に緊張感が走る。犯罪神から分離するような形で現れたマジックの言う事だから…恐らくその見立てに、狂いはない。

 

「…下手をすると、数日間で態勢を整え、レイやうずめの迎撃を突破し、犯罪神を封印しなければならない。しかも振り切れなかった場合は、再封印前にあれだけの相手を倒さなければならない…という事ですのね……」

「しかも、間に合わなかった場合は、そこに犯罪神の撃破も加わる…わたし達にとっては一度倒した相手とはいえ、難しいなんてレベルじゃない戦いになりそうね……」

「ふっ…最後の一手、犯罪神様を何とかする役目は、お前達がやる必要はない」

「…どういう事ですか?(・・?)」

 

 運がこちらに味方してくれれば、最悪の場合に比べて時間的には数倍の余裕が生まれるとはいえ、どうなるか分からない以上最悪の場合を想定して考えなくちゃいけない。…そう思って少し雰囲気が暗くなる中、両腰に手を当てて口を開いたのはブレイブ。

 

「言葉通りだ。犯罪神様の相手は、俺達がする」

「…というより、我輩達だからこそ出来る事があるのだ」

『それって……?』

「ふぉっ、ロムちゃんラムちゃんが左右へ同時に小首を傾げて…!……ごほん。元来犯罪神様は、次元の…世界からの影響で復活するもの。故に人為的に復活させようというのは『犯罪神』において間違った在り方であり、そこには必ず歪みが生じる。そして我輩達は、本来の在り方の犯罪神様によって四天王としての形を得た、謂わば本来の犯罪神の因子を内包した存在なのだ」

「だからこそ復活の寸前、間違った形で起きる瞬間に我等という楔を打ち込む事で犯罪神様は在り方を取り戻し、今はまだ来たるべき時ではないとシェアエナジーとなって霧散する、という事だ。それに粗暴な貴様等が手を出したところで、大方不完全なまま犯罪神様が暴走するだけだろう」

「粗暴って…隻眼だし態度デカいし主への忠誠心は凄いし、マジックってやけにブリタニアの軍師さん感ない…?」

「ははは!ま、俺等と違ってマジックにとっちゃ、お前等は敵でしかねぇだろうからな」

 

 半眼を向けてネプテューヌが呟くも、やはりマジックはどこ吹く風。ただまあそれとは別に、私の頭に浮かぶのは一つの疑問。

 

「…それは、復活の寸前じゃなくちゃいけないの?」

「マジックが言うならそうなんだろ」

「え…ジャッジは分からないの…?」

「いやいや分からねぇって訳じゃねぇぞ?けど俺にゃ上手く言葉に出来ねぇってか、そもそも俺が説明上手な奴に見えるか?」

「あ、あー…えと、他の方……」

「…直前が一番通り易いという事だ。タイミングを合わせる必要はあるが…やるなら、可能性は少しでも高い瞬間の方が良いだろう?」

 

 全くこの男は…みたいな視線をジャッジへと向けた後のブレイブの言葉で私は納得し、他の皆もそれぞれ頷く。

 今更だけど、ここまでの話は全て元敵であり、今も一時的に味方になったに過ぎない人達の言葉。でも…何となく、その言葉はどれも信じられるような気がした。そんな雰囲気が、四人にはあった。

 

「…となると、その直前までは貴方達を守る事が、当面の私達の行動になるわね。出来る事ならさっさとあいつ等も倒したいけど、二兎追う者は一兎も得ず、って言うし」

「一つ一つ着実に、だねお姉ちゃん。じゃあそれまで、ブレイブ達の事は……」

「…国の事もありますし、今は手を組んでいるとはいえ元々は敵。向こうが四人の性質に気付いて一気に叩こうとしてくる可能性もゼロではありませんし…各国で預かる、という形がベターだと思いますわ」

「そうね。組み合わせは…ま、各々縁のある相手を預かるって事で。うちとしては、ロムラムから遠ざけておきたいところだけど…目の届かないところに置いておく方が不安だし……」

 

 本当に気の重そうな顔でそう言うブランに、ふっ…と口元に笑いを浮かべているトリック。そして私は例の如く、戦力面を考えてリーンボックスへ行く事に。

 

「さて、細かい事はまだありますが…一先ずこれで、大まかな行動は決定ですね。しかし皆さん…特にネプテューヌさん達四人は疲労も多いと思いますし、各国に戻るのは明日の方が良いかと思います(・ω・`)」

「ですね。えっと、それじゃあ…取り敢えず皆さん、お疲れ様です!」

「うん、ネプギアこそお疲れ様」

 

 部屋の中を見回したネプギアが締め括り、私がそれに言葉を返して、先の事を決める為の会議から続く緊急事態への対処は一旦終了。とはいえ同時にこれは始まりでもある訳で……まずは、きっちり準備をしなくちゃいけない。…それにしても、ほんと…こんなに早くまたジャッジと会う事になって、しかも今度は味方になるなんて……ね。

 

 

 

 

 イリゼ達女神がギョウカイ墓場最深部より離脱した直後の事。遠ざかっていく銃声や瓦解音を耳にしながら、キセイジョウ・レイは地面へ降り立つ。

 

「…で?結果的にあいつ等、あんたの望み通り逃げてった訳だけど…こっからどうする気?」

 

 軽く肩を回しながら振り向いたレイの視線の先にいるのは、同じく地上へ降り立ったうずめ。彼女は一つ吐息を漏らし、それからまた笑みを浮かべる。

 

「どうも何も、予定していた通りに進めるだけさ。想定外である事は事実だけど…あんなのは所詮、サブイベントが一つ増えた程度の事。そもそもオレ達にとっては、とにかく犯罪神が復活すればそれで目的達成なんだからね」

「あ、そ。じゃあそろそろ影響も出てきそうだし、私はもう帰るから」

 

 さして慌てる様子もなく、本当にただ少し驚かされた程度の素振りしか見せないうずめへ興味なさげな言葉を返し、レイは力を込めた杖を一振り。すると次の瞬間、彼女の前の空間が割れ…その割れ目へと、レイは足を踏み入れる。…そして、そんな彼女の背に向けて、うずめは感情の読めない表情で呟くのだった。

 

「…難儀なものだね。数多の次元の自分の力を束ねた結果、比類なき力を得たのと引き換えに、ただ居るするだけで周囲を歪めてしまう、そのままではどの次元にも長く居られない存在になってしまうだなんて」




今回のパロディ解説

・「〜〜英霊召喚〜〜」
Fateシリーズにおいて、サーヴァントを呼び出す儀式の事。ブレイブ…はギリなれなくもなさそうですが、他三人は無理でしょう…反英雄としてならともかくですが…。

・『まさかの某マギーさん!?』
手品師であるマギー司郎さんのこと、野澤司郎さんの事。縦縞が横縞に…のマジックは、ある意味ほんとに凄いというか、画期的な手品ですよね。

・「〜〜ブリタニアの軍師さん〜〜」
コードギアス 亡国のアキトに登場するキャラの一人、ジュリアス・キングスレイの事。あ、勿論作品としてはmk2の方が先なので、メタ的には変な表現かもしれません。
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