超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
突然聞こえた騒がしい…林の中で何かあったと、一目…いや、一耳?…で分かる音を聞いて、俺は振り返った。
ぐるりと振り返って目にしたのは、黄色と白の何かがイリゼの方へと飛んでいく光景。それにイリゼは目を見開きつつも……両手と胸元で、しっかりと受け止める。
「…っと、と……え…?」
一歩、二歩と後ろに下がって衝撃を流しつつ、受け止めた際に崩れた姿勢を立て直したイリゼは、両腕の中にある存在を見て目を丸くする。…今の、って……。
「大丈夫か、イリゼ?」
「あ、う、うん。…ええっと…この子も、ポケモン…?」
声をかけながら小走りで駆け寄るグレイブと共に、俺もイリゼの側へ。対するイリゼはこっちを向き、手にしたその存在を見せてくる。
両腕で抱えられる位の小柄な身体の色は黄色。ぴょこんとアホ毛の様なものが頭から二つ出ていて、何よりも目立つのは見るからにふわふわそうな、まるで雲の様な翼。何が起きたか分からない、と言っているような表情をしているその存在は……
「お、チルットじゃないか」
「それも、色違い…」
「チルット?色違い…?」
うん、間違いない。今グレイブも言ったが、このポケモンは間違いなくチルットだ。そっか、そういえばチルットはシンオウ地方にも生息しているんだったな。
「あー…えっとだねイリゼ。その通り、その子もポケモンだよ。で、色違いっていうのは……」
目をぱちくりさせているイリゼに俺は説明。続けてポケモン図鑑を取り出し、チルットの項を表示させてその姿を見せる。
「…水色?」
「そう。色違いって言うのはその名の通り色が違う、凄く珍しいポケモンの事で、普通のチルットは身体が水色なんだよ」
「ほ、ほんとにそのまんまだね…凄くって、具体的にはどれ位珍しいの?」
「えーっと…確か昔は8192分の1で、暫く前から4096分の1位になったんだったかな」
「そうそうそれで光ってるお守りを持ってたり、同じ場所で根気強く釣りをしてたりすると出会い易くなる事も…って、それはゲームの話だからな!?混同するなよ!?」
「うーん…じゃあ、色違いっていうのは亜種的なもの?」
「亜種…あぁ、そうかも。だけど、ほんと色違いのポケモンは色以外何も変わらないかな」
「つまり、G版で初登場の亜種的な…?」
「そんな感じそんな……いやイリゼも!?イリゼまでゲームと混同するのかよ!」
そんなつもりなんか無かったのに、二人がぶっ飛んだ事を言うもんだから思わず突っ込みを入れる俺。…いや、うん…グレイブは分かる、だって無茶苦茶の化身みたいな存在だし。けどまさか、イリゼまでって…。
「あはは、ごめんね。つい魔が差しちゃって…。…けど、そっかぁ…君は凄く珍しい子なんだね」
「…ちる?」
「うん、分からないよね…それで…えと、どうしよう?」
「どうしよう、って?」
「この子の事。私はトレーナーじゃないし、やっぱり離してあげるのがいいのかな?」
「あー…まぁ、離してもいいんじゃないか?けど折角出会った色違いだし、ここは……」
言いたい事がよく分からずに俺が訊き返し、そこでイリゼが言い直してくれて、今度は隣のグレイブが回答。…いや、違う。正確に言えば、グレイブが問いに対する意見を言う最中の……その時だった。
『……!?』
さっきの音より数段大きい、激しいとすら言える林からの音。草木の音とほぼ同時に、多数の羽ばたきらしき音も聞こえて……次の瞬間、幾つもの黒い影がイリゼに向かって飛来する。
「わ……ッ!?」
(これは…ヤミカラス…の、群れ…!?)
反射的に飛び退いたイリゼが一瞬前までいた場所を駆け抜けるのは、帽子を被った鳥の様なポケモン、ヤミカラス。嘴と足以外は全身真っ黒なそのポケモンが一気に何体も現れた事により、それまでの空気は一変した。
「わっ、わわわッ!?」
「ちるぅううぅぅぅぅッ!?」
着地したイリゼへと、更にヤミカラス達は突進。林からは次々と他のヤミカラスが出てきて、立て続けにイリゼへ襲い掛かる。
それにイリゼは勿論の事、抱えられたチルットも大慌て。甲高い鳴き声を上げていて……と、いうか…確かチルットも、今ヤミカラス達が出てきたのと同じ方向から飛び出して来なかったか…?
「何々どういう事!?よく分からないけど、私この子達の逆鱗にでも触れちゃった!?或いはこの子達から見て私は物凄く美味しそうなの!?」
「ちるぅッ!ちーるぅううぅぅっっ!」
「うわぁ暴れないで!?き、君も今飛んだら危ないよ!?」
(……?今、なんか落ちた…本、と…なんかの箱…?)
真正面から来る一体を屈んで避け、続けて左右から飛んできた二体は後ろに跳ぶ事で凌ぎ、着地の瞬間を狙ってきた個体に対しては身体を捻る事で紙一重で回避。絶え間なく、引っ切り無しにヤミカラスは仕掛け続け、それをイリゼは避け続ける。避け続けられている。それも、チルットを抱えて、両手が塞がってしまっている状態で。…凄ぇ……。
「どうなってんだこりゃ…。けどまぁ、一先ずここは撃退を……」
「あ、待て待てグレイブ!お前何する気だよ!」
「何ってそりゃ、片っ端から軽くぶっ飛ばして……」
「まだポケモンの事もよく知らないイリゼにお前の無茶苦茶な戦い方は、刺激が強過ぎるっての!驚いた拍子に転んで頭打ったりしたらどうすんだ!」
「人をスプラッター映画みたいに言うなよ…なら、どうすんだ?」
我に返り、ボールからポケモンを出そうとしたグレイブを止める俺。けどグレイブの言う通り、ならどうすんだって話。止めておいて「さぁ?」…じゃ、幾ら何でも無責任過ぎる。
(落ち着いて考えろ、俺。ヤミカラスはどちらかといえば獰猛なポケモンだけど、理由も無く群れで人を襲ったりなんてしない筈。じゃあ、なんでヤミカラスは襲ってるんだ?そもそも狙われてるのは、イリゼなのか…?)
俺は考える。こうなっている理由を。ヤミカラスの特徴や生態を、どういうポケモンなのかを。考えて、思い出して、想像して……──っ、そうだ…ッ!
「──イリゼ!チルットが宝石とかアクセサリーとか、とにかく光ってる物を持ってたりしない!?」
「え、ひ、光ってる物!?」
「それとグレイブ!どこかにヤツがいる筈だ!それを探してくれ!」
「…あぁ、そういう事か…任せろ!」
ぱっと閃いたのは、ひょっとしたら…という可能性。絶対そうだとまでは言えないけど…俺が思い付いた通りなら、全部説明が付く。
次にやるべきなのはイリゼのサポート。あまり派手な事をするとヤミカラス達も慌ててもっと危険な攻撃をするかもしれないから、軽く気を引く程度にしなきゃいけない。
(ピカチュウ…は弱点付けるし、慌てさせる可能性が高いよな…だったら、悪タイプのヤミカラスには効果の薄い、ミミッキュのゴースト技で……)
「…ぴかぁ……!」
考えている中、すぐ側から聞こえてきたのは肩に乗せたままだったピカチュウの声。何かと思って前を見れば……イリゼが回避行動を続けたまま、チルットを矯めつ眇めつしていた。
上へ下へ、左へ右へ。曲芸の様に、流れる様に猛攻を躱すイリゼは、回避とチルットの確認を完全に両立している。顔を近付けたり、横にしてみたりしながらも回避の動きに淀みはなく…それはまるで、直感だけでヤミカラスの位置や動きを見切っているよう。素早くて回避が得意なピカチュウでも驚くのが分かる、巧みな回避で…やっぱり凄ぇ…女神って言ってたけど、これが女神の実力ってやつか…?
「……っ!あ、あった!あったよ愛月君!背中側の翼の付け根に、水晶の欠片っぽい物が!」
「あ…や、やっぱりか!だったら後はグレイブが……」
「もう見つけてる!イリゼ、あそこだ!あそこにそれを投げろ!」
「な、投げろって…それは流石に無茶ってか、そもそも指差したってイリゼに見る余裕は……」
「いいや…大丈夫ッ!」
びっと林のある場所を指差すグレイブだが、今イリゼは俺達に背を向けてる状態。幾らイリゼでもそれは無理だろうと思った俺は、ピカチュウにそれを伝えに行ってもらう事を考え……けれど次の瞬間、イリゼは跳んだ。一斉に飛びかかるヤミカラスに対して、バク宙で突撃を回避し…その最中、上下逆さとなった体勢で、グレイブの指の向きを確認する。
そして着地と同時に、チルットから離した右手を振るうイリゼ。その手からは水晶の欠片らしき物が投げ放たれ……放った先、ぱっと見何もなさそうな暗がりの中で、鉤爪が飛来した欠片を掴む。
「…あれ、は……」
欠片が掴まれた事に、その暗がりの中にいた存在に、イリゼは目を見開く。
そこにいたのは、群れのボス。一回り大きい身体に、ソフト帽の様な頭部。白い胸毛をたっぷりと蓄えたそのポケモンは…ドンガラス。
「…………」
「…思った通りだ。大方、なんかの拍子に群れが集めてた光り物をチルットが翼に引っ掛けちゃって、それを奪い返せとドンガラスがヤミカラス達に命令した…ってとこかな」
「ドン…?…あぁ、そっか…そういう事ね…」
鋭い視線を向けてくるドンガラスに、イリゼもじっと視線を返す。ヤミカラス達は一度攻撃を止めていて……にしても、ドンガラス遠いな!遠いし暗がりにいてぱっと見じゃ全然見えないのに、よく分かったなグレイブ…。
「…ねぇ!これは、君が指示した事!?この子の翼に引っ掛かった欠片を奪い返そうとしてたの!?…もし、そうなら……」
「…………」
(さて、ボスの場所は分かったんだ。後は俺とグレイブで一気に……)
「…ごめんねっ!でもきっと、この子に悪気はなかったの!だってこの子、気付いてなかったもん!だから、許してあげて!」
「…わぉ……」
ボスの発見は出来た。執着する理由も分かった…というか、もう渡した。なら後は…そう考えていた次の瞬間、ドンガラスに対して呼び掛けていたイリゼは……頭を下げる。ごめんねと言って、腕の中のチルットもくるりと前へ90度回転させて、一人と一匹で揃って謝る。
「…ぷっ…はははははっ!やるなイリゼ、その発想はなかったぜ!」
「えー…グレイブ、そこ笑うとこか…?」
「けど、お前だって驚いたろ?…で…どうよドンガラス。そいつは取り戻せたんだから、もういいだろ?それとも…まだ、続けるか?」
愉快そうに一頻り笑った後、ボールを手に一歩前へと出るグレイブ。薄く笑みを浮かべたままのグレイブが放つのは、それこそ伝説のポケモンかって位のプレッシャー。
走る緊張。交錯するグレイブとドンガラスの視線。そして……
「……グゥ!」
号令の様な鳴き声を一つ飛ばし、ドンガラスは止まっていた枝から飛び立つ。
その声に呼応するように、次々と飛んでいくヤミカラス達。あっという間に全てのヤミカラスも飛び去っていき……「ちるぅぅぅぅ……」という、ふにゃっとなったチルットの鳴き声がイリゼの方から聞こえてくるのだった。
*
突然襲ってきた、烏っぽいポケモンの群れ。取り敢えず何とかなったけど、それはもうびっくりした。モンスターに襲われる事は慣れっこだけど、ポケモンに襲われるのは初めてで、しかもいきなり群れで襲われたんだから。
「ちるぅ、ちるぅううぅぅ〜〜…!」
「おー、よしよし。もう大丈夫だからね〜」
で、ヤミカラス達が飛び去ってから数十秒後。一度はほっとした顔を浮かべたチルットは、落ち着いた事で怖さがぶり返してきたのか、今はひしっと私に抱き付いてきている。…可愛い……。
「お疲れ、イリゼ。もしかしてイリゼは、戦い慣れてたりするのか?」
「え?…まぁ、色々あってね」
「なんか、チルット抱えてなきゃ普通にやり返せそうだったよね。ほらこれ、落としたよ」
「あっ…うん、ありがとね愛月君。…気付かなかったけど…やっぱ、今回もこれあったのか……」
両手が塞がっていたのもあったけど、反撃しなかったのは何か違和感というか、直感的に「変だ」と感じる部分があったから。それは多分、さっき愛月君が気付いた事で…私は左手でチルットを抱えたまま、右手で落とした物…メイトと、いつの間にかあったらしいあの『本』を受け取る。
「…って、ん?…これって…あー……」
『……?』
「いや、これ…多分、さっきここ通った時に俺が落としたやつだ……」
と、そこで急に荷物をごそごそしだす愛月君。私達が何だろうと思って見ていると…私が受け取ったメイトを指差し、言った。これを落としたのは、自分であると。
「あ、そうだったの?というか、ここの道はさっきも通ったの…?」
「まー、地上と地下を行ったり来たりだったから…。…うん、折角だしそれはイリゼにあげるよ。イリゼが拾ってくれなきゃ、そのまま朽ち果ててたかもしれないし」
「そ、そう?…じゃあ、ありがたく受け取るね」
「…落とした物だし、要らなければ捨ててもいいからね?」
世間は狭いというべきか、偶然は案外起こるものというべきか、ぬるっとメイトの落とし主が判明。そしてその落とし主から譲られた事で……なんかもう、事故で別次元に行った際の私とメイトとの関係は確定してしまったような気がする…。
「ちぃるぅぅ……」
「ん?あ、やっと涙止まったみたいだね。でもこれからは気を付けなきゃ駄目だよ?盗る形になったのか、狙っていた物を偶々引っ掛けちゃっただけなのかは分からないけど、前者だったら相手が怒るのも当然なんだから」
「ちー…ちるっ」
「よし、偉い!」
「…そいつ、ずっと守ってもらえたからか思いっ切り懐いてるな。だったらやっぱ……」
「……これって…」
ちゃんと返事を返してくれたチルットの頭を撫でていると、そこでグレイブ君から差し出されるモンスターボール。それを見た私が視線を上げると、グレイブ君はこくりと頷く。
「そいつは偶然この世界に来たイリゼが、偶然出会ったチルットで、しかも珍しい色違いで、更にはこんなに懐いている。それってもう、運命みたいなものだろ?そりゃ勿論、チルットが嫌がるってなら別だが…そうじゃないなら、捕まえるのも良いと思うぜ?」
「…運命…。…君は、どうしたい?」
「…ちる?ちるるっ!」
これは良いものを見せてもらったお礼だ、と言ってボールをくれるグレイブ君。確かにここまでの流れは普通ない…それこそ運命的な何かを感じられる程のもので、私はもう一度チルットを見つめる。
私の視線に初めはきょとんとしていたチルットだけど、何かしら伝わるものがあったのか、ご機嫌そうに元気良く鳴き声を返してくれる。
その声の意味は分からない。だけどその表情からは、チルットの気持ちを感じる。受け入れてくれている、そんな気がする。だから……
「……ううん、やっぱり止めておくよ」
「いいのか?」
「うん、だって私は何とかして帰らなきゃいけないし、その時この子を私の世界…信次元に連れていく訳にはいかない。…それに、この子がこの世界で自分から付いてくる分には、別にボール必須って訳じゃないでしょ?」
「…まぁ、確かにね。不便な事もあるだろうけど、小柄なチルット一匹なら、いいんじゃない?」
だからこそ、私は止めた。私からどうこうするんじゃなく、あくまでこの子の方から付いてきている…そういう形でなきゃ、別れる時にこの子が可哀想だから。
それがこの世界において良い判断かどうかは分からなかったけど、愛月君は肯定してくれたし、グレイブ君も「ま、決めるのはイリゼだもんな」と再び首肯をしてくれた。…でも、ごめんね。折角ボールをくれたのに。
「さーて、それじゃあ一件落着したし、今度こそ行こうぜ?」
「そうしよっか。じゃ、改めて二人共…案内宜しくね」
「任せて。…って言っても、ここからは町に着くまでずっと一本道だけどね」
私はチルットを抱えたまま、愛月君はピカチュウをボールに戻し、全員揃って同じ向きに。そうして巻き起こった一悶着を乗り越えた私達は、道中のお供にチルットが加わり…今度こそ遺跡に向かって移動を開始するのだった。
*
歩き出してからは特に障害や騒動もなく、無事に私達は町に到着。初めは突っ切ってそのまま進む予定だったけど、考えてみれば私達は遺跡の場所位しか知らない。遺跡の前に都合良くガイドさんでもいれば良いけれどそれは流石に楽観的過ぎるし、だから私達は一度この町で情報収集する事に決めた。
で、情報収集の為に町を回る事数時間。一応そこそこの情報は得られたけど、その頃にはすっかり暗くなってしまっていて……取り敢えず今日は、この町に泊まる事となった。
「遺跡に関する情報を纏めると…まずその遺跡は、確かにパルキアを祀る場所で間違いない。結構大きい遺跡で、今は多くのポケモンが住み着いていて、古い遺跡である事と、中には気性の荒いポケモンも少なくない事から、立ち入りは制限されている…ってところか」
「そこじゃ昔、バトルを捧げてたらしいな。パルキアも熱いバトルは好きって事か?」
「さぁ?けど、特別な道具とかよりは分かり易くていいんじゃない?」
「バトル、かぁ…(女神化出来れば私自ら…っていきたいところだけど、それは出来ない話だもんなぁ…)」
今私達がいるのは、ポケモンセンターという施設のレストランコーナー。ポケモンセンターというのは、ポケモンを預ける事でその治療をしてくれる施設で、その他にもホテルとしての機能や、トレーナーのサポートを行う各種機能を備えた、謂わばポケモントレーナーの為の施設。しかも大体のコーナーを無料で使えると言うんだから、中々に凄い。…まぁ、それが誰に対しても無料なのか、条件付きなのかは分からないけど。
(…それにしても、大した二人だよね……)
遺跡の中にはどんな種類のポケモンがいるんだろうかという話で盛り上がる二人を眺めつつ、私は思う。
さっき…と言っても数時間以上前の事だけど、私達がドンガラスとヤミカラスの群れに襲われた際、愛月君は的確な推測と指示で私達を解決に導いてくれた。あれは間違いなくヤミカラス達へ対する正しい知識がなければ出せない指示だし、知識があっても実戦慣れしていなければその知識を引き出す事は出来ない。
それに、グレイブ君。素早くドンガラスの位置を見つけてくれたのもそうだけど…群れが退いてくれたのは、きっとグレイブ君の放つプレッシャーを感じ取ったから。グレイブ君の放っていた威圧感は明らかに常人が出せるようなものじゃなくて…多分だけど、私が想像し得ない程の経験と実力を、グレイブ君は兼ね備えている。
「…ちるぅ?」
「二人共、凄いよねぇ。君も、二人には感謝しなきゃ駄目だよ?」
目をぱちくりさせながらこちらを見上げてくるチルットの…アホ毛?…をふにょんふにょんと撫でながら、私は軽く語り掛ける。
あの状況、二人がいなかったらもっと時間がかかっていた。力尽くで撃退するしかなかったし、この子に非がある結果の強襲だったのなら、凄く後味の悪い終わり方になっていたと思う。しかもその場合、それに気付く事も多分出来ないから…ほんと、二人には感謝しかない。
それにしても…まさかとは思うけど、この世界の子は皆これ位凄いっていうか、この世界ではこれが普通…なんて事はないよね…?
「…うん?」
そう思っていると、別の席から聞こえてくる話し声。ひそひそとしたその会話がちょっと気になって、その会話に耳を傾けてみると……そこで出てきたのは、すぐ側にいる人物の名前。
「…やっぱりあの人、グレイブじゃない?」
「いやいやグレイブさんって言ったら、幾つものリーグで名を轟かせて、あのレジェンドトレーナーとも激戦を繰り広げた人物だぜ?その人がこんな所に……って、マジか…マジでグレイブさんか…」
「……グレイブ君、有名なんだね」
「あー…まあ、有名と呼ばれるだけの事はあるかな〜」
ちらほら聞こえてくる驚きの声に、満更でもなさそうなグレイブ君。愛月君からは「調子に乗るなよー?」なんて言われてるけど、本人としては何だか気分良さげで……
「…やっぱあれ、グレイブなのか…」
「マジで?あの各地で圧倒的な戦歴と騒動を立てまくってるって事で有名なグレイブ?」
「あぁ、デストロイヤー・グレイブだ…」
「なんと、世界凄ぇ奴ランキングと世界ヤベぇ奴ランキングで二冠達成したグレイブか……」
「って事は、向かいの彼は愛月って子じゃない?」
「うん、間違いない。鬼畜の意志を継ぐ者、愛月だよ…」
「同じ席にいる子は色違いのチルットを抱えてるし、凄い席だなあそこ…避難しておいた方が良いんじゃ…?」
「……よし。ちょっと俺は急用に…」
「だ、駄目だよ!?気持ちは分かるけど、異名…?…の由来を遺憾無く発揮するのは駄目だからね!?」
その十数秒後、私は表情の消えた顔で立ち上がろうとするグレイブ君を慌てて止める羽目になるのだった。しかも愛月君も愛月君で、「き、鬼畜の意志を継ぐ者って…俺、そんな目で見られてたの…?」とショックを受けていたせいで全く助力をしてくれず、それはもう大変だった。…は、はは…やっぱり二人は、この世界基準でも普通じゃない二人組だったんだね……。
…因みに余談…というか二人の名誉の為に言っておくと、その後普通にファンとか二人に憧れる人もやってきていた。更に言えばセンターの人も「二人に喜んでもらえればセンターとしての箔が付く」って事なのか、かなり手厚いサービスをしてもらえていた。
これ等の事から察するに、デストロイヤーとか鬼畜の意志っていうのは、噂話に尾びれ背びれが付きまくった結果のものだと思う。…というか、そういう事にしておこう。二人の為にも、私の精神衛生上の為にもね…っ!
今回のパロディ解説
・「〜〜昔は8192分の1で、暫く前から4096分の1〜〜」「〜〜光ってるお守り〜〜同じ場所で根気強く釣り〜〜」
ポケモンシリーズ(本編)における、色違いポケモンとの遭遇確率に関する事。今回はポケモンの二次創作とのコラボなので、ある意味原作ネタとも言えますね。
・「〜〜G版で初登場の亜種〜〜」
モンスターハンターG及び、そこで登場した亜種モンスターの事。武器や防具としての性能抜きにも、亜種の装備…って特別感があって良いですよね。実際亜種は特別ですが。