超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第七十九話 二つの次元で思いを馳せて

 結論から言って、猛争モンスターの発生は、あれから減少の一途を辿っている。神次元内の問題は全て解決した…と油断させる為、一時的に減らしてる…って可能性もゼロではないけど、恐らくは発生源が無くなった、或いは神次元から去った事により、増える事がもうなくなった…というのが理由なんじゃないかと思う。

 当然これは喜ばしい事。神次元に平和が戻って、神次元に住む皆が安心出来るようになるんだから、そんなのは嬉しいに決まっているし、このまま猛争モンスターという脅威がなくなってくれれば、信次元に行ってイリゼ達を手助けする事も出来るようになる。今度はわたし達が、イリゼ達の力になってあげられる。

 そう思って、それを期待して、報告を受けた猛争モンスターの討伐に勤しんでいたのに……何の前触れもなく、突如として、信次元との交信が出来なくなった。

 

「イストワール、今日も駄目だった?」

「はい。信次元のわたしは応答なし…いえ、それ以前に繋がる予兆すらありません…(´・ω・`)」

 

 わたしからの問いに、イストワールはふるふると首を横に振る。突然一切の交信が出来なくなってから、イストワールは毎日繋がらないか、何か変化はないか確かめてくれているけど…状況は何も変わっていない。

 

「む〜…振ったり叩いたりしたら何とかなったりしないかなぁ…?」

「いや、作者の端末じゃないんだから、それで良くなったりはしないでしょ…確かにいすとわる、次元間交信を受ける時振動したりするけど……」

「そ、それ以前にわたしを振ったり叩いたりしようとしないで下さいっ!(>_<)」

 

 プルルートからの容赦ない天然発言に半眼で突っ込むピーシェと、そんな事されて堪るかとばかりに猛抗議をするイストワール。今は幾つかの件を話し合う会議の最中で、交信不能が続いている事もその議題の一つ。

 

「止めなさいよプルルート…百歩譲ってそれが有効だったとしても、貴女それやったら絶対自己嫌悪に陥るでしょ…」

「そもそも妨害…少し前まで神次元に発生していたものと同じ力で阻まれてるのなら、イストワールをどうしたって変わらないわ」

「ですわね。考えるべきはその妨害を止める方法、或いはその妨害を突破出来る手段ではないかしら」

 

 同じくノワールも呆れ気味に突っ込んだところで、ブランとベールが軌道修正。

 交信出来ない理由を何とかするか、今の状態のまま交信する手段を見つけ出すか。言ってしまえば当たり前の話だけど、それに関して一つわたしは思っている事がある。

 

「…妨害の、突破…か……」

「せいつ?何か案があるの?」

「まぁ、そうね。この妨害、恐らくは奴の力でしょ?全てを奴一人でやっているのか、マジェコンヌが見たっていう、うずめって人物も力を貸してるのか、それともまた別の力が関係しているのかまでは分からないけど」

「それは…まぁ、そうですわね。彼女は次元に干渉する力があるようですし」

「そう、そこよ。奴は次元の境界を破る力があるんだから、逆に次元同士の接続を妨害する力があってもおかしくはないわ。…けどそれ以前に、あんな女神崩れが超常すら超えた超常なんて、まともに起こせる訳がない。まともに起こせて良い訳がないのよ、女神の癖に人に仇なすあんな奴が」

 

 皆から注目を受け、わたしは自分の考えを話す。自分の考えっていうか、ここまでは確認と推測だけど…順を追って話さないと伝わらない事もあるものね。

 

「相変わらず、レイの事になると敵意剥き出しになるわねセイツ…後、超が多い……」

「そこは良いじゃないブラン。超人を超えた超人なんて言葉もあるし。…じゃなくて、とにかく奴が複雑且つ高等な方法でもって、次元をどうこうしてるとは思えないっていうのがわたしの推測よ。これについてはどう?」

「…まぁ、良いんじゃない?私としては肯定も否定も出来ないってところだけど…一先ず続けて」

「えぇ。だから多分、奴はわたし達の想像も出来ない手段じゃなくて、もっと単純な手段で次元に干渉してると思うの。力尽くで破って、潰して、捻じ曲げる…そんな感じでね」

 

 核心部分を口にしたわたしは、ゆっくりと皆の顔を見回す。奴絡みの話で、わたしがいつものように色々言ったからか、ピーシェは少しだけ複雑そうな顔だったけど…他の皆は、概ね「あー…まぁ、理解は出来る…」みたいな感じ。でもわたし自身、結構強引な考えだって自覚はあるから微妙な反応でも気にしない。

 

「力尽く…あー、言われてみれば〜、レイさんが開くのってぇ、いーすんがやるのと違って、ガラスを割っちゃったみたいな穴みたいかも〜」

「でしょ?だから、わたし達のシェアエナジーを一点に収束させれば、同じように次元の『穴』を開く事が出来るんじゃないかしら。…奴と同じ手段を使うなんて心底癪だけど、イリゼ達の安否が確認出来るなら、向こうできっと起こってる事態に手を貸す事が出来るなら、わたしは辞さないわ」

「…うん。ぴぃも、それは試してみても良いと思う。もしかしたら、信次元では想像以上の事が起こってるかもしれないし…ぴぃ達は、ねぷてぬ達と協力し合うって決めたんだから」

「あたしも〜。ねぷちゃん達と、早く会いたいもん〜」

「ふふっ、ほんとにセイツはイリゼが、ピーシェちゃんとプルルートはネプテューヌが好きですわねぇ」

「勿論。でも、イリゼだけじゃなくてわたしは皆が大好きよ」

「えへへ〜」

「うっ…ぴ、ぴぃはそういう事じゃないし…!」

 

 片手を頬に置いて微笑むベールの言葉に、三者三様の反応を見せるわたし達三人。一人否定するピーシェは相変わらずで、ぷいっと横を向く仕草なんて何とも可愛らしくて…って、いけないいけない。真面目な話をしてるんだから、本格的な脱線は避けないとね。…ま、今のピーシェは皆も可愛いと思ってると思うけど。

 

「わたしとしては、それだけで上手くいくとは思えないけど…否定し切れる程の根拠もないのが実際のところね。イストワール、わたし達の中じゃ一番次元に関して精通している貴女の見解は?」

「はい。わたしも、可能性はゼロではないと思います。…ですが、極力やるべきではないとも思います(´・ω・`)」

「…どういう事?」

 

 一つ首肯をし、けれど否定の言葉を口にするイストワール。何か重要な事を危惧しているような口振りにわたしが問い掛けると、イストワールは言葉を続ける。

 

「今言った通り、セイツさんの言う考えはあり得るかもしれません。ですが、考えてみて下さい。力尽くで、強引に穴を開けるという事はつまり…この神次元の一部を壊す、という事ではありませんか?(。-_-。)」

「あ…それは……」

「これまで彼女が開いた穴は全てなくなっていますし、一部に穴を開ける程度であれば自然と直るのかもしれません。しかしその確証がない以上、試しに行ってみる…というのはあまりにもリスクが大き過ぎるのではないでしょうか。…もっとも、そもそもの話として壊すという概念が次元そのものにも通用するのかどうかがまず不明ですが……(。-∀-)」

「確かに、イストワールの言う通りね…レイは何度も開いてるけど、レイの場合はそもそも次元を壊そうとしていた訳だし……」

 

 一貫して個人的な見解だというスタンスで話すイストワールさんに、考え込むような表情をしながらノワールが頷く。

 確かに、その通りだ。わたしは次元の扉を開いた事も別次元を観測した事もない、完全に『次元の内側』の存在だったからか思いもしなかったけど、わたしの案は次元の外殻とでも言うべき部分を壊す行為に他ならない。そしてこの神次元には、数え切れない程の人が日々暮らしている以上……碌に分かってもいない手段で、次元に傷を与えるなんてするべきじゃない。

 

「…ごめんなさい、皆。わたしが言った手段は、一度保留にさせてもらってもいいかしら…」

「構いませんわ。それに、気にする事もありませんわよ。どんな案も、まずは共有しなくては始まりませんもの」

「だよね。ぴぃだって、今いすとわるが言った事は全然想像出来なかったしさ」

「…ありがと、二人共。でもそうなると……」

「えぇ。否定したわたしが言うのもあれですが…他に手段を考えなくてはいけませんね( ̄^ ̄)」

 

 気さくに微笑んでくれる二人にわたしは笑みを返して、またイストワールの方を向く。わたしの言葉を引き継ぐようにイストワールも同意を示して、わたし達七人は会議を続行。

 とはいえ、女神だって知らない事は知らないし、分からない事は分からない。それに話さなきゃいけない事は他にもある訳で、いつまでもこの話だけをする事は出来ない。だから、完全に話が詰まってしまったところでこの件は一度終わりにして、後日また話し合う、それまでに各々考えたり自分の出来る範囲で情報を集める…という事になった。

 でも、一旦持ち帰るなんて言えば格好が付くけど…実際には、このまま話しても無駄だろうから今日は諦めようってだけの事。時間というリソースを有効活用する為に必要な事ではあるけど……もやもやする。

 

「…ふー……」

 

 会議を終え、ノワール達三人は自国へ…とはならず、プルルートに引き止められて「仕方ないわね…」とかなんとか言いつつ、四人でゲームへ。それを見送ったわたしが会議室の椅子に身体を深く沈めると…そこでピーシェが声をかけてきた。

 

「…せいつ、疲れてる?」

「ううん、疲れてないわ。今回復したから」

「え、早っ…この椅子回復ポイントか何かだっけ…?」

「だって、ピーシェの心配してくれる心に触れて癒されたもの」

「あー、うん。そういうのはいいから」

「…本当よ?」

「冗談じゃないからせいつはタチが悪いんだよ…」

 

 ぐー、と思いっ切り身体で背もたれを倒していると、上から顔を覗き込んでくるピーシェ。それににこりと笑顔を返すと、気にしてくれたピーシェは一旦して半眼に。…タチ、悪いかしら…?

 

「…ほんとに、疲れてる訳じゃないわ。でもどうしても、絶対何か起こってるのに、何も出来ないっていうのが歯痒くてね……」

「…その気持ちはわかります、セイツさん(◞‸◟)」

「でしょ?ほんと、イリゼの事を思うと落ち着か…あぅッ!」

「痛っ!?ちょ、ちょっと!いきなり頭上げないでよっ!」

「ご、ごめんねピーシェ…」

 

 同意を得られた嬉しさから思わず上体を跳ね上げてしまったわたしは、まだ軽くわたしを覗き込む姿勢だったピーシェの頭とごっつんこ。…っていうと軽くぶつけた程度になるけど…うぅ、結構痛い……。

 

「お二人とも大丈夫ですか…?後、本当にセイツさんはイリゼさんがお好きなんですね…( ̄▽ ̄;)」

「だってイリゼってとっても良い子でしょ?心にぐっとくるものがあるでしょ?」

「は、はぁ…確かに、真面目で感じの良い方だとは思いますが…( ̄O ̄;)」

「あぁ…だから変態でタチの悪いせいつは真逆のいりぜに惹かれたと…」

「そうそうそういう……いやピーシェわたしの事をそう思ってたの!?」

「思ってたも何も…変態は今更だし、タチが悪いもさっき言ったよね?」

「た、確かに…っていうか、タチの悪い変態って…評価的に不味過ぎる……」

 

 さっきまで後ろに傾いていた上体は、今度は頭を抱えつつの前傾姿勢に。タチの悪い変態…タチの悪い変態って…どうしよう、どこからわたしコミュニケーション間違えたの…?

 

「強いて言えば最初からだと思うけど…後、タチの悪い変態とは言ってないからね?変態でタチの悪いって言ったんであって……」

「逆だったとしてもよ…。…いや、でも…うん…思いは変わるもの、気持ちが離れていくのは諦めた時…これまでじゃなくて、これからを見るのよわたし……!」

「…本格的に気にしてますよ?ピーシェさん(・ω・`)」

「まぁ、大丈夫でしょ。…別にぴぃは、せいつの事を嫌ってる訳でもないし…」

 

 本気でしょげるわたしだけど、わたしはレジストハート。立ち上がる事を、希望を掴む事を諦めない人達と共に未来を切り開いた女神。そうよ、諦めたって…何にも良い事なんてないんだから…!

 そんな思いで、わたしは自分自身を奮い立たせる。その間に二人が何か話してたけど…多分、関係ない雑談よね。

 

「…何にせよ、これから行き来する手段、それが無理でもせめて交信する手段を確立するのが最優先事項ね。神次元の技術の粋を集めて、可変超時空突入艇とか造れるかしら…」

「あ、復活した…ついでに話も戻した……」

「はは…同感ですよ、セイツさん。ですが焦って前のめりになっても転ぶだけ。落ち着いて、一歩ずつ進みましょう( ̄^ ̄)」

 

 冗談半分、でももしも本当に造れるのなら…って気持ち半分でわたしが呟くと、わたしの前に来たイストワールが真面目な表情でそう言葉を返してくれる。それにわたしは頷いて、漸く座っていた椅子から起立。二人と一緒に、わたしも会議室を後にする。

 分かっている。思考も行動も、余裕がなくちゃ浅くて穴のあるものになってしまうんだから。だからこそ、見るべきはゴールじゃなくてそこまでの道のり。もしかしたら、向こうではもう解決へ動き出しているかもしれないし…それを含めて、前向きに…ってね。

 

 

 

 

 ネプテューヌ達が、信次元に帰ってからどの位経つだろうか。どこまで正確かは分からないが、日数は数えようと思えば数えられるし、体感で大体は予想出来るが…ぶっちゃけ分かったところで、「まだそんなもんなのか…」と思うか、それとも「もうそんなにか…」と思うか位だろう。何せ、ここでの生活は何か大きな事がない限り、本当に変わり映えしないんだから。

 だが、変わり映えしなくても小さな発見はあるし、楽しい事や緊張する事だって色々ある。それに……

 

「よっしゃあ!久し振りに登場だぜっ!」

 

……って、俺がそれっぽく地の文で語っていたところなんだけどなぁ…。

 

「…うずめ……」

「む、何だよウィード。人を空気の読めない奴みたいな目で見て…」

「そりゃ、空気じゃなくてメタ視点で読んでくるんだもん…」

 

 廃墟となった都市の一角。落ちている瓦礫に腰掛けて休憩していた俺に対し、不満そうな表情で見てくるのはうずめ。

 

「でもよ、俺の初登場が第四話で、最後に登場したのが四十二話だぜ?で、今は七十九話だぜ?メインキャラ扱いなのに最後に登場してから登場していた期間と同じ位蚊帳の外なら、現状での2分の1も出番なしならこうもなるっての」

「いやまぁ分かるけど…うずめの言う事も分かるけど……」

 

 不満たらたらっぽいうずめへの反応に困りつつも、俺は一応理解を示す。…にしてもメタ発言が凄まじい…ここにいるのはうずめだよな…?実は変身魔法か何かを使ったネプテューヌとかじゃないよな…?

 

「…まぁ、冗談はこの位にするとして…」

「あ、冗談だったのか……」

「ごほん。…あの地下道は途中で崩れちまってて使えそうにないな。いつ完全崩落するかも分からねぇし、入るなよ?」

「了解。…ごめんな、一人で行かせて」

「気にすんなって、危ないから待ってろって言ったのは俺なんだからさ」

 

 立てた親指で背後…の少し離れた所にある地下道を指差すうずめに、俺は首肯。

 今俺達は、いつものように街の調査中。暮らせる場所、使える物、それに最近起こっているある事を探す為、調べる為に、少しずつ探索を進めている。

 

「…じゃ、どうする?うずめも休憩するか?」

「いや、さっさと進もうぜ。海男達も別の場所の調査をしてくれてるんだからよ」

「うずめ…ってか、女神は本当にタフだなぁ…」

「ウィードは相変わらずだけどな。技能や判断力は向上してても、基礎の体力とか身体能力はあんま変わってる感じねぇし」

「うっ…見てろようずめ、男子三日会わざれば刮目せよ…って言うんだからな…?」

「いや三日も何も、俺達毎日一緒じゃねぇか…けど、そう言うなら期待してるぜ?」

 

 そう言って俺の背中を叩いてくるうずめの手。衝撃で軽くよろめいてしまう程の一発に俺が視線で抗議すると、うずめは愉快そうな顔でにひひと笑う。…むぅ、悔しいな…何かやり返す、ってか見返してやる手段はないものか…。

 

「ほれほれ、行くぞウィード。真面目な話、今はどんな些細な事でも見逃せないんだからよ」

「分かってるって…はぁ……」

 

 軽い調子で、けど口振りにほんのりと真剣さを混ぜ込んだうずめの後を追って、俺も歩き出す。

 この次元での生活は、変わり映えしない。けど…少し前から、信次元と…ネプテューヌ達との交信が出来なくなった。最初は機材の問題かと思ったが、ネプギアが置いていってくれた&今使ってる施設について書き加えてくれた書類を読む限り、機材が壊れたとかじゃない様子。となると、信次元…或いは次元同士の繋がりの方に何かが起こったって訳で……こんなの、緊急事態以外の何物でもない。明らかに不味い事で…何も出来ない、何が起こってるのかすら現象レベルでしか認識出来ない俺達じゃ、事の全容を把握する事すら叶わない。

 それに、おかしいのは交信出来ない事だけじゃない。俺には全く感じられないが、海男や一部のモンスター達は何かを感じているらしく…その正体を確かめるのも、探索の目的。

 

「…なぁ、うずめ」

「なんだよ」

「また、ダークメガミが…ネプテューヌ達との連絡が取れないまま、またあのレベルの敵が出てきたら…どうする…?」

 

 根拠はないが、どうしても鎌首を持ち上げてくるのはその不安。うずめ達女神が複数人でなきゃ勝てないあの敵が、今現れたら…そんな不安が、交信出来なくなってからはいつも頭の隅に残っていて離れない。

 

「そうだなぁ…ま、何とかなるってか、何とかするさ」

「…何か、策があるのか?」

「いや、こうすりゃ倒せるって策はねぇな。でも、二回倒したっていう経験はあるし…今の俺には、前より守らなきゃいけないものも、やられる訳にゃいかねぇ理由もあるんだ。だから、負けねぇよ。逃げる事も、無様な姿見せる事になっても…絶対に、最後は勝ってやるさ」

「…そっ、か……」

 

 歩きながら空を見上げ、最後は俺の方を見て言い切るうずめ。その表情も、声も自信満々で、でも何となく俺を心配させまいとする気配もあるような感じがして……俺は、自分が情けなくなった。

 何を言っているんだ俺は。何が、ダークメガミが出てきたらどうする…?だ。そうじゃないだろ。ダークメガミが出てきても大丈夫だって、俺が力になるって、それ位言ってやらなきゃ、うずめがまた無理しちまうだろうが。あいつとは戦えなくても、せめて横槍を入れようとするモンスターを押し留めるとか…そん位の志を持ってなきゃ、男らしくねぇだろうが…!

 

「…ウィード?」

「…や、何でもない。にしてもほんと、海男達が感じてるのって何なんだろうな?」

「そうか…うーん、それなんだよなぁ。何かしらはあるんだろうけど、感じてる海男達でもよく分からないものを、全く感じられない俺達が探すなんて…ははっ、さらっと無理難題をこなそうとしてるよなぁ、俺達」

 

 自分で自分を叱り付け、でもすぐに話を切り替える。理由は勿論、今の俺の心を勘付かれたら、「ありがとな。でも、無理しなくても大丈夫だよ」…と、結局うずめに気を遣わせてしまうから。それは、嫌じゃないが…今も俺や海男達を一人で守ってくれてるうずめの負担は、少しでも減らしてやりたいってのが俺の思いだ。

 

「俺はともかく、うずめにも感じられないって事は、モンスター特有の器官か何かで感じてる…って事かねぇ?」

「どうだろうなぁ…っと、噂をすれば…俺だ、どうかしたか?」

「定時連絡だよ、うずめ。そっちからの連絡がないという事は、進展も問題もない…という事かな?」

 

 会話の最中に鳴った、うずめの通信機。言うまでもなくその相手は海男で、彼からの言葉を聞いて、俺もうずめも定時連絡の時間になっていたって事に気付く。

 

「あーっと、そういう事だな。そっちはどうだ?」

「進展はない…が、食料や使えそうな生活用品はそこそこ見付けたよ。これを持って一度拠点まで戻ろうと思うんだが、いいかい?」

「助かるぜ。それと悪いな、細かい探索は皆そっちに任せちまって」

「悪いも何も、これは役割分担だ。君達が先行して安全を確認し、オレ達が数を活かして調べていく。戦闘になる危険性はうずめ達の方がずっと高いんだから、気にする事なんてないさ」

 

 少し気にし過ぎなうずめの言葉に、さらりと返される海男の回答。ただ気持ちを伝えるのではなく、納得出来る…それはその通りだ、と思える理由をもって、うずめが気にしなくて済むような言葉をかけられる海男は本当に流石で、日々俺はこれを見習いたいと思っている。…まぁ、海男に関してはこの渋い声が、説得力を後押ししてる気もするけど……。

 

「そうか?なら……っとと」

「うん?何かあったのかい?」

「や、単に地割れの多い道路に出ただけだ。ウィード、ここは通れるか?」

「心配すんな。これ位ならもう、どうって事ねぇ…よ、っと」

「みたいだな。じゃ、このまま進んで……」

 

 大小様々な亀裂が走り、余所見をしようものならえらい事になりそうな路面。だが俺もいい加減この環境には慣れてきたし、うずめの言った通りあんま身体能力は上がってなくても、身体の動かし方はそれなりに上達している。それを証明するように俺が先に進むと、うずめも通信を切って後に続……

 

「…うぉぉっ!?」

「……!?う、うずめ!?何かあったのか!?」

「あ、あぁ…見ろよこれ、格好良くねぇか!?」

 

 次の瞬間、後ろから上がった並々ならぬうずめの声。何事かと俺が慌てて振り向くと、うずめは興奮した面持ちで……差し出した。金色と銀色の装飾がふんだんに付いた、ちょっとゴツい革のベルトを。

 

「…これは……?」

「いや、亀裂の一つに落ちてたんだよ。どうだどうだ?格好良いだろ?」

「格好良いだろ?…って……」

 

 似合う?…と言いたげに腰に当てがううずめを見ながら(先に言おう、似合ってない。だってこれ、どうみても男向けだし)、俺はがっくりと肩を落とす。…いや、うん…格好良いよ?俺的にも、見付けたら「おっ?」…と拾い上げたりすると思うよ?…けどさぁ、うずめ……

 

「…てかうずめ、よく見たらネクタイの締め方物凄く雑になってるぞ…?」

「なんかIWGPとか、NEVERとか書いてねぇかなぁ…ん?あー…ま、ぶっちゃけネクタイはほんとただしてるだけだしな」

「女の子なんだから少しはファッションに気を使いなさいよ…後こんな所にチャンピオンベルトが落ちてて堪るか……」

 

 ぱっと見ちゃんとしてるうずめのネクタイだが、よくよく見ると形だけというか、締める部分がかなりぐちゃぐちゃになっている。実際うずめは首元を締める為に使ってる訳じゃなく、普段から緩めに締めているんだが…それにしたって、折角身に付けてるなら最低限は整えておいた方が良い筈。何せうずめは、女神なんだから。

 だが、当のうずめはどうでも良いらしく、ちょっと皺を伸ばした程度で終わりにしようとする。…ったく、もう……。

 

「ほれ、ちょっと止まれうずめ。俺が締め直してやるからさ」

「へ?いや、ちょっ……」

 

 うずめの歩みに待ったをかけて、両手でそのネクタイを掴む俺。普段ネクタイなんてしてない俺だが、記憶を失う前の俺はいつもしていたのか、或いは何度か締めた経験があるのか何となーくやり方が浮かんできて、俺はネクタイを締め直し始める。

 

「お、おいウィード…ほんと、いいって……!」

「そうは言っても、どっかでまた人と会うかもしれないだろ?その時適当な結び方してたら、印象的にはマイナスだぞ?」

「そ、そうじゃなくて…!」

 

 視線はネクタイへ向けたまま、やけに遠慮するうずめに言葉を返して俺は続行。えーっと、ここがこうで、これはこうして…ん?何かおかしいような……あ、逆か。だったらこっちが…あーいや、これは一回完全に解いた方がいいな。そうすりゃ一から順にやれ……

 

「……っ…い、息が…息がかかってるんだよ馬鹿ぁ…!」

「へっ?……あ…」

 

 本格的に結び直そうとしていたその時、それはもう恥ずかしそうな声音でうずめが俺へと発した言葉。その言葉で、やっと俺は気付く。試行錯誤している内に、俺はかなり顔を近付けてしまっていた事に。それは、多少開いているうずめの首元に、息がかかってしまっていても全然おかしくない事に。更に言えば、うずめが緩く締めていたその位置は、丁度胸元である事に。…てか、そもそもこれ…形的には、俺がうずめの服を脱がそうとしてるも同然じゃないのか……?

 

「ご、ごめん…!その、わざとじゃ……」

「わ、わざとだったら張っ倒すぞ!?」

「わざとじゃないですはい!でもほんとごめん!」

 

 気付いた途端に恥ずかしくなり、俺は即座に急反転。背中越しにうずめへと謝り、同時に反省を開始する。……が、やはり俺は男故か、反省の途中で浮かんできたのはうずめの首元。

 胸元が見えそうで見えない位に開いた首元は、普段戦闘したり埃塗れの場所へ行って汚れたりしてる上、貯水タンクの水を利用したシャワー程度でしか身体を綺麗にする事は出来ていない筈なのに、とても健康的且つ眩しい位の白さがあって、あの肌は絶対に柔らかくそしてきめ細やか……

 

(……って、何を考えとるんじゃ俺はぁぁぁぁああああああッ!?)

「ったく、解くだけ解きやがって…ってウィード!?おまっ、何故急に全力疾走を!?」

 

 気付けば反省どころか脳内リプレイを始めてしまっていた俺は、思わず前へと全力ダッシュ。亀裂を次々と飛び越えて、特に理由もなく近くのビルの外階段を勢いのままに駆け上がる。

 人間思考がおかしくなるとリミッターが外れるのか、その時の俺は早いのなんの。あっという間に八割方を登り終え……だがそこで突然の多大な負荷に身体が根を上げたのか、がくんと速度が落ちて止まる。

 

「はぁっ…はぁっ…あ、脚が…脚と肺が……」

 

 口を閉じていられない程上がった息に、がくがくと震えてしまう脚。階段ダッシュでかかる負担は凄まじく、よろよろと踊り場で手摺りを掴む俺。そうして見えてきたのは、普段よりもずっと高い景色。

 

(……栄えて、たんだろうなぁ…)

 

 遠くに見える、幾つもの高い建造物。段々と冷静になっていく頭で思うのは、高層ビルを多数建てられたこの国はきっと繁栄していたんだろうなって事と、だからこそ感じる寂しさと悲しさ。栄えていた頃を想像すればする程、今広がっている景色が悲しく見えて……

 

「……って、ん…?」

 

 そう、思っていたところで、不意に感じた一つの違和感。その発生源は…見えている高い建物の一つ。

 それは、崩壊しかかっている。他の建物同様に、ボロボロになってしまっている。けれど…何となくおかしい。大部分は間違いなく『壊れた建物』なのに、所々欠けてるというか、無くなってるって印象を持つ部位があって……なんて思っていたところで、下から俺へと飛んでくる声。

 

「おーい、別に本気で張っ倒そうとはしてないからなー?」

「…っと、しまったそうだった……」

 

 上がってきた声の主は、勿論言うまでもなくうずめ。どうやらうずめは、俺が張っ倒される事を危惧して逃げたと思っているらしく、俺はすぐにその声へ返答。…ここに来た理由は言えないにせよ…このままここにいたって仕方ない。

 という訳で俺が戻ると、うずめはもうネクタイを締め直し、少し気恥ずかしそうに頬を掻いていた。…正直、その姿は可愛かったが…今言ったら今度こそ本当に張っ倒されてしまうので、俺はその思いを胸の中にしっかりとしまって、もう一度謝った後に探索再開。何か見付けられないかと、二人で注意深く進んでいく。

 俺はまだまだ、うずめの力になれていない。でも今はこんなんでも、いつかは力になれるかもしれない。そして俺はその可能性を、諦めたくなんかない。それにきっと、俺達だけじゃなく、信次元の皆も今は頑張ってる筈で…だったら俺も、出来る事を頑張りたい。そう思って今日も、俺はうずめと歩みを進める。




今回のパロディ解説

・「〜〜超人を超えた超人〜〜」
元プロレスラー、獣神サンダー・ライガーこと、山田恵一さんの発した言葉の事。確か、オカダ・カズチカさんの試合に解説者として出ていた時の言葉だったと思います。

・可変超時空突入艇
マクロスシリーズに登場する可変戦闘機の一つ、YF-30 クロノスの事。超時空というか次元ですが…クロノスなら割と何とかなるかもしれません。

・「〜〜現状での〜〜なるっての」
機動戦士ガンダム F91に登場するキャラの一人、ガラッゾ・ロナの名台詞の一つのパロディ。人類の10分の9を…のやつですが、正直これだと全然分かりませんよね…。

・「〜〜分かるけど…うずめの言う事も分かるけど……」
機動戦士ガンダムSEED destinyの主人公の一人、キラ・ヤマトの名台詞の一つのパロディ。こちらはほぼそのままなので、分かり易かったかなと思います。

・IWGP、NEVER
どちらも新日本プロレスが管理するベルトの事。シングルにタッグ、それに現在はない王座もある訳で…好きな物を想像して下さい。そもそもそのベルトではありませんが。
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