超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第八十話 多様な彼等とのやり取り

 負のシェアの女神と化したマジェコンヌさん、真の姿となった犯罪神……私達女神が複数人で、連携してすら何とかギリギリ勝つのが精一杯だった両者と同等かそれ以上の力を持つレイに、ダークメガミを使役し、底の見えない何かを感じさせるもう一人のうずめ。対犯罪神においてこの二人が障害となる事は想定出来る以上、向こうから積極的に仕掛けてこないのは正直助かった。可能な限りの準備をした上で、戦いに臨みたい相手だから。

 だからこそ、向こうが動かないのは好都合だった。犯罪神復活まで邪魔されたくない向こうとしても、この互いに動かない状況は都合が良いとはいえ、こっちはとにかく犯罪神が本格的に動き出す前に対処出来れば良いんだから。でも、ただでさえ強大な力を、強力な戦力を有しているうずめ達が、こうして信次元に再び現れまでしたのに何もしてこないというのは、何とも不可解で……時間が経つにつれ、その感覚は増していく。

 

「…うーん……」

 

 女神にとっての住居である教会は、プラネタワー同様に一般家庭の様な部屋も数多くある。一般家庭というか、規模的には豪邸だけど……まあ、そこは別にどうでも良い。

 その内の一室、リビングルームに該当する部屋のソファに座り、私は熟考していた。

 

「…何か、考え事ですかな?」

「え?あ……」

 

 数分か、十数分か。とにかく一人考えていた私の前に、ことりと置かれたのは紅茶が入ったティーカップとソーサー。驚いた私が顔を上げると、そこにいたのはイヴォワールさん。

 

「どうぞ、温かい内にお召し上がりを。ベール様程美味しくは淹れられていないでしょうが…」

「い、いえ。それよりもすみません、気を遣わせてしまって……」

「なんのなんの、私は女神様に仕える教会の人間ですからな。それに…老いぼれは、ついついお節介を焼きたくなるのですぞ」

「…ふふっ、ありがとうございます。それと、お節介…だなんて事はありませんよ。そのご厚意、凄く嬉しいです」

 

 ふっと柔らかく笑うイヴォワールさんに、私もまた笑みを返す。

 確かに私は、紅茶を淹れてくれるよう頼んだ訳じゃない。でもイヴォワールさんは私の事を思ってやってくれたんだから、それをお節介だとは思わないし、そんな言葉で片付けてほしくない。何かしてもらえたらお礼を言う、自分を思って行動してくれた人には感謝する…そんなの女神云々じゃなくて、人として当然の事だもんね。……いや、女神だけど。

 

「そう言って頂けると、私も淹れた甲斐があるというものです。…して、何を考えていたのですかな?」

「少し、戦術構築…というか、シミュレーションです。現状での最大脅威である、レイに対して色々考えていたんですが……」

「…あまり、芳しくないと?」

「はは…そういう事です……」

 

 予想して訊き返してくるイヴォワールさんに、苦笑いしつつ私は首肯。それを聞いたイヴォワールさんは何も言わなかったけど…何となく、イヴォワールさんの穏やかな雰囲気からは話を聞いてくれそうな感じがして、私はそのまま言葉を続ける。

 

「一度しか戦ってないので、まだ理解し切れてない部分もあるんですが…現状思い付く策だと、どれも倒せそうな気がしないと言いますか……」

「ふむ……具体的には、どのような点で詰まってしまっているのです?」

「どこ、と言いますか……奴はとにかく純粋に強いんです。セイツ…あ、神次元にいる女神の名前なんですけど…が言うには、所謂次元干渉能力もあるらしいんですが、それ抜きにも近距離戦なら私やベール達以上、遠距離戦ならネプギア達以上の総合力を持っていて、それが如何ともし難く……」

 

 これまでも、強い相手は沢山いた。私達女神以上の破壊力を持っていたり、異常な回復力を持っていたりで、苦労する敵も多かった。でもそういう敵の多くは、一つ一つの能力では上回っていても総合力なら互角かこっちが勝っているってパターンだったり、巨体故に連携攻撃をし易かったりと、大概何かしら付け入る隙もまたあった。

 だけど、奴は…レイは違う。あの時のマジェコンヌさんや真の姿の犯罪神の様に、そもそものレベルが違う。巨体でもないから、一度に仕掛けられる人数も限られてしまう。まあ勿論、私達が個々の能力で上回っている要素は一つもないって事はないだろうけど…それを武器に打ち勝つビジョンは、見えてこない。

 

「確かにそれは難しいですな…常識の通じる相手であれば、質を飲み込むだけの量をぶつける事で勝利をもぎ取る事も出来ましょうが…超常の最たる存在である女神様ですら一戦でそれだけの評価を下すとなると、それこそ巨大数の物量を投入せねば勝機はゼロ。そして……」

「それは、全くもって現実的ではない。…そもそも、非常識過ぎる程の強さを持つ相手を常識的な手段である『物量』で何とかしようとした結果、やはり非常識な数が必要になった…じゃ本末転倒ですもんね。…けどほんと、どうしたものか……」

 

 引き継ぐように私が結論部分を言い、私達は肩を竦め合う。最早言うまでもない事だけど、私が導き出したのは『現実的な』策であって、実現可能かどうかは勿論の事、仮に可能でも甚大な被害が予想される策なんて取ろうとは思わない。次元の未来を守る為なら犠牲も辞さない…っていう考え方もあるんだろうけど、私は犠牲を払う事を是とはしないし、私達女神は何も犠牲にしない、諦めない道へ手を伸ばし続けた事で、今の信次元があるんだから。……まぁ、実際にはそんな格好良い思想の問題じゃなくて、単純に勝機があるだけの物量なんて用意出来る訳がない…って話なんだけどね。

 

「…いっそ、一か八かで本を使って、皆に来てもらう…?…いやでも、これも現状じゃ現実的じゃないか…皆も皆で忙しい可能性だってあるし……」

「…皆…まぁ、三人寄れば文殊の知恵とも言いますし、もう少し多くの者と話してみるのも一手では?例えば…そう、今廊下を歩いている者など」

「それもそうですね。案外意外なところから妙案が出てくるかもしれませんし、訊いてみますか」

 

 合間合間で飲んでいた紅茶をもう一口飲んで、私は立ち上がる。廊下から微かに聞こえる声は男性のもので、ちゃんとは聞こえないから誰かは分からないけど…アイデアはいつも、どこから出てくるか分からない。という訳で、私は部屋の扉を開いて……

 

「ほほぅ、これはまた珍しい組み合わせではないか」

「特務監査官と教祖代行…確かに珍しい組み合わせだね」

「彼女は…おらんのか。残念だ……」

「…………」

 

……なんだか凄い三人を招き入れてしまった私だった…。…何故このタイミングで、この三人が…。

 

「…はは…これは予想外ですなぁ……」

「い、意外なところからとは言いましたが…これは意外過ぎる……」

「しかし、彼等も独特な要素を数多く持つ身。一先ず訊いてみても良いのでは?」

「いやまぁ、確かに独特ではありますが…。…そもそも、何故貴方達が一緒に…?」

『同士だから(だ・さ・じゃ)!』

「…あ、あー……」

 

 くわっ!…っと食い気味に言ってくる三人…兄弟の二人にアフィモウジャスさんという、もうこの時点で味付けが独創的過ぎる方々の発言に、何とも言えない感じの声しか出てこない私。これはちょっと、お帰り頂こうかなぁとも思ったけど……イヴォワールさんの言う事にも一理あるし、何も聞かない内から「良い意見なんて出てこない」と決め付けるのは幾ら何でも三人に失礼。そう考えて、私は聞く事を決心する。

 

「…こほん。突然なんですけど、ちょっと私の話に付き合って……」

「悪いけど、君に付き合っている時間はないんだよ」

「我等は探求者として、探さねばならないものがあるのだ。そう、まだ見ぬ巨乳の女性を…!」

「三人で探せば、良い巨乳を見つけられる可能性も三倍…ふふ、ステマックス程ではないが、良い同士を見つけられたというものだ…!」

 

…………。

 

………………。

 

 

 

 

……へーぇ、巨乳ねぇ…私に付き合ってる時間はない、ねぇ…。

 

 

 

 

「……ふぅ」

『……!』

「…さて、今一度頼ませてもらおうか。諸君、私の話に……」

『あぁ、勿論』

 

 ソファ前で女神化し、ふわりと沈み込むように……たゆんとわざとらしい位に胸を揺らして座る私。続けて胸を乗せるように腕を組む事で胸を強調し、更に太腿を見せ付けるようにして脚も組む。

 すると次の瞬間、爽やかな笑みを浮かべた兄弟の二人は私の両隣に、アフィモウジャスさんは片膝を突いて私の前に。その変わり身の早さたるや、いっそ十数秒前の自分とは別人だと言わんばかり。明らかに態度が豹変しているにも関わらず、それを悪びれる様子は一切なし。…………はぁ…。

 

「是非聞かせてくれないかな?僕等の麗しき女神様」

「ワシ等で良ければ、幾らでも付き合おうではないか」

「女神様の力となる事が、我等の至福…!」

(……なんかここまで欲望に正直だと、逆に清々しいかも…もう少し揺らしてみようかな…)

 

 呆れを超え、辟易を超越し、逆に愉快ですらある三人の姿に魔が差し、私の思考にもなんだか変な発想が混ざる。というか既に、そういう方向で私は三人を釣っている。…これも私、っていうか女神の武器とはいえ…変な癖にならないようにしないとなぁ…。

 

「…こほん。知っての通り、そう遠くない内に私達はまたギョウカイ墓場に行く事になります。そこで……」

 

 咳払いと共に気を取り直し、私は三人にもこれまで考えていた事と話していた事を説明。やはりと言うべきか、胸にばかり視線を向けている三人ではあるけれど…話はちゃんと聞いてくれていると信じたい。

 

「……という訳で、どうにも勝機を見出す事が出来ず、イヴォワールさんとも話していたところなんです」

「ふーむぅ…そういう話であれば、ワシ等よりも戦術構築に長けた者に聞くべきではないのか?」

「この件は、元々女神同士で話し合っても答えが出なかったんです。なので、もっと多くの人から意見を…と思いまして」

「そういう事か…むむ、だがワシはサブカルチャーと金儲けであれば一家言あるが、こういう話となってはなぁ……」

 

 そう言って片膝を突いたままのアフィモウジャスさんは、考え込むようにして顎を触る。元々ゴツくて大きい体躯の人だから、片膝を突いていても存在感が凄い…というのはさておき、その目は真剣に考えてくれているように見える。……人じゃなくてロボットだし、目っていうかカメラアイだと思うけども。

 

「…そうは言いつつも、戦闘の素人…という訳でもあるますまい?」

「……御老体、何故そう思う」

「いや何、立ち居振る舞いからそう思った…ただ、それだけですぞ」

「ほほぅ…まぁ、否定はせん」

(…え、何この強者感溢れるやり取り…イヴォワールさんは実際只者じゃないし、アフィモウジャスさんも強そうな見た目してる訳だけど……)

 

 霊子ハッカーを兼任していそうな見た目&雰囲気のイヴォワールさんに、外観は完全に豪華な重装騎士なアフィモウジャスさんという、所謂老人語を使う二人のやり取りに漂っているのは謎の気配。でも確かに、アフィモウジャスさんもただのサイバー関連に詳しいロボットってだけじゃないような気が……って違う違う、そういう話じゃない…。

 

「お二人は、何か思った事あります?」

「そうだねぇ…質でも量でも太刀打ち出来ないと言うなら、その相手を何とかして弱体化させる…なんてどうだい?」

「弱体化、ですか…彼女も女神のようですし、どこかから得ている筈のシェアエナジーを断つ事が出来れば間違いなく勝てるとは思いますが……」

「そう簡単にはいかない、と?…であれば、その敵以上の質をぶつける他ないだろうさ」

「それは……」

 

 軽く首を後ろに傾け、これが結論だ…とばかりに言い切る(あに)さん。

 確かに、それ以上の結論はない。暴論だけど、強い相手に勝ちたいならより強い存在をぶつければそれで良いんだから。でも、それが出来るならもうそうしている。それが出来ないから、戦術で補おうとしている訳で……。

 

(…やっぱり、ゲハバーンしかないかなぁ……)

 

 二人の意見を聞いて思い出すのは、あの神滅兵装。最初に女神同士で話し合った時にも上がった、対神決戦兵装の名前。あれならとにかく一太刀浴びせれば、それだけで勝利が決まってしまう可能性すらある。

 だけどその案をイストワールさんに話した時、イストワールさん…というか教祖の四人は、揃って首を横に振った。あれは、本当に最後の切り札。犯罪神が真の姿となった時、或いはそれを使わねば間違いなく信次元が滅亡してしまうという状況になって、漸く使うという選択をする位の存在であるべきだと。私達女神にとっても、擦り傷一つで命を落とす事があり得る代物を使う基準は、それ程までに厳しくなくてはならないと。

 それに、どんなに強力でもゲハバーンは所詮信次元の中の存在。別次元の女神であるレイに効くという保証はないし、万が一効かなかったら、その上でゲハバーンを奪われるような事があったら…そう考えると、ゲハバーンも最善の策とは言い難い。

 

「おぉぉ…!姿勢が変わった事で、更に胸が強調されておる…!」

「身体にぴったり張り付く装いのおかげで、形がよく分かるのもいいね兄者…!」

「見えないからこそ想像の余地があるというのも事実だが、見えるからこそ思い浮かべられるものもある…あぁ、やはり豊かな胸は奥が深い……!」

「…そこまで好きですか?む『無論!』……紳士的な態度じゃなかったら、流石に怒ってますからね…」

 

 もっといやらしい目付きで見てきたり、品のない言動をしたり、こちとら外道でねと言いながら鷲掴みにしてきたりするなら私も怒る事が出来るのに、三人の立ち居振る舞いは本当に紳士的。発言はともかく話そのものは真面目に聞いて考えてくれたし、紅茶を飲もうとすればソーサーごと手元に持ってきてくれたりするから、どうにも怒るに怒れないというか、「仕方ない人達だなぁ…」という感情の方が強くなってしまう。そしてその点、イヴォワールさんは紳士的どころか正に紳士で……凄いよね、関係性の変化って…。誤解…というか騙されていたとはいえ、私会ったばかりの頃、イヴォワールさんに「死んで頂きたい」とか言われたんだよ…?

 

「…なんと言いますか…申し訳ありませぬ、イリゼ様……」

「はは…まぁ、気分転換にはなりましたので……」

 

 欲望に忠実過ぎる三人を呼ぶ切っ掛けを作ってしまったからか申し訳なさそうにするイヴォワールさんに、せめてものフォローとして肩を竦める私。…ま、まぁ気分が転換した事は事実だからね…好転かどうかはちょっと伏せておくけども……。

 で、本題の方はと言えば、結局良い案は出ず仕舞い。けど考えっていうのは積み重ねていくものだし、意外過ぎる形で解決し、この時間が丸々無駄になったとしても、結果的に何とかなるならそれで良い。…にしても、その敵以上の質かぁ…私達より数段以上に強いレイより、更に強い存在なんて……

 

 

 

 

「……女神の姿で優雅に手脚を組み、四人もの男性を侍らせるとは…イリゼも中々、隅に置けませんわね…」

「ぶふぅぅッ!?べっ、べべべべ、ベールぅっ!?」

 

 脚を組み直そうとした瞬間、ぼそりと聞こえてきた四人の内の誰でもない声。ひっくり返りそうな程驚き振り向いた先にいたのは、ちょっとだけ開けた扉の隙間からこっちを覗きつつ、明らかに何か間違った認識をしているベール。

 よりにもよって彼女、乙女ゲームも趣味の範疇であるベールに見られてしまった私は一瞬にして燃えそうな程顔が熱くなり……その後私は、女神化を解くのも忘れて全身全霊、全力の釈明を行う事となるのだった…。

 

 

 

 

 衝撃的な光景を目にしてから数分後。今わたくしがいるのは、ある客人を連れ添って入った応接室。

 

「はふぅ…本当に良いものが見られましたわ。やはりイリゼは、こちらの気があるのではないかしら…」

 

 まさかあのイリゼが、大人な様で所々子供な一面を見せる…女神としての強かさと、子供の様な純粋さを併せ持つイリゼが、若者二人に老人、更にはロボットまでも侍らせるとは。状況からして、明らかに(イヴォワール以外は)胸で侍らせていたとは。…まあ勿論、その後聞いたイリゼの説明は信じていますけど…それを差し引いても、あれは価値ある光景でしたわ……。

 

「…こほん。ベール様?」

「あ…これは失礼致しましたわ」

 

 ギャラリーからイベントのシーンを振り返るようにして先程の事を思い出していたわたくしに対し、咳払いと共にかけられる声。

 それは、わたくしが招いた客人…仮面の男性、ニルのもの。彼の事を忘れていた訳ではないものの、今関係ない事にうつつを抜かし過ぎていた事をその咳払いでわたくしは自覚し、彼へ向けて姿勢を正す。

 

「まずはこちらを。先日申し上げましたが…これを以って、正式に部隊の発足と致しますわ」

 

 そう言ってわたくしが差し出したのは、辞令の書かれた書類。彼からの要求も組み込まれた、国防軍のある部隊の指揮官として彼を任命するというもの。

 

「ありがとうございます。女神様のご厚意とご期待に添えるよう、これより全力を尽くす所存です」

「えぇ、頼みますわ」

 

 丁寧な、けれど感情の読めない声音で言葉を返してくる彼に、わたくしはにこりと微笑みを見せる。

 対する彼は、一体どのような表情をしているのか。…それは、顔を覆い隠す仮面の存在によって分からない。

 

「…しかし、このような時期に任命とは、少々驚きです。それに、当の国防軍関係者不在のまま任命されるとは……」

「このような時期、だからこそですわ」

「ほぅ……?」

 

 これまた感情の読めない…されど、含みのあるその言い方に、浮かべた微笑みを崩さぬまま返答。すると彼は、吐息のような声を上げ…わたくしもまた、言葉を続ける。

 

「今はどこも人手が足りず、目の前の事に手一杯な状況。そんな中で、一人でも済ませられる事にわざわざ呼ぶのは申し訳ありませんし…貴方としても、わたくし一人の方が何かと楽でしょう?」

「それはどうでしょう?」

「ふふっ。それに…如何に絶対的な権限を持つと言えど、信仰…即ち国民からの支持がなくては存在する事も危ぶまれるのが女神というもの。故に『日常』が回復し切っていないこの状況においては、むしろ色々と進めやすいのですわ。これは貴方も、理解しているのではなくて?」

 

 隠す事も飾る事もなく、理由をそのままに伝えるわたくし。正直である事が、いつも正解とは限りませんけれど…恐らく半端な嘘や飾り立ては、彼の前では通用しない。それに、正直に話す方が逆に強く出られるという事もありますもの。

 

「ふっ…流石はベール様。この窮地を、上手く利用した…という訳ですか」

「この程度、褒められる事ではありませんわ。他の女神も多かれ少なかれ似たような事はしてるでしょうし…こんなもの、『今出来る事をしている』に過ぎませんもの」

「いえいえ、本当に流石です。理想を掲げ、国民の為を謳い…その理念の下、こうして日々活動していらっしゃるのですから」

 

 表情を隠す仮面の奥、そこからこちらへと感じる視線。鋭いとは違う…わたくしを見透かさんとするような眼光の感覚は、相当な実力や経験を思わせるもの。

 文脈の上では、彼はわたくしを褒め称えている。けれど実際に聞けば分かる。ニルが口にしているのは、皮肉であると。如何に合理的且つ、最終的には国民の為の行為であろうと、一人一人が落ち着いて、心に余裕を持って判断出来る状況ではない時に新たな物事を決定し進めるのは、ある種卑怯な行動であると。

 確かにそれはその通り。耳の痛い話ではある。…けれど……

 

「わたくしはいつも、自分の行動が、決めた事が国民の為に…リーンボックスに住まう人々の幸福に繋がると信じていますもの。そう信じられる事を、行っているつもりですもの。そして、それを評価して頂けるのなら…嬉しいですわ」

「…えぇ、そうですね。貴女であれば、そうおっしゃると思いました。であるからこそ……いえ、あまり長く話しても、蛇足のようになるだけですね」

「あら、わたくしは長く話すのも好きですわよ?それと…部隊発足をこの状況下で進めたのは、今後…いえ、今日にでも大規模な戦闘となる可能性があるからですの。それもご理解頂けるかしら」

「勿論です。私とて、この国に住まう人間。貴女の判断は、是非とも支持させて頂きますよ」

 

 わたくしの意思は、わたくしが彼に向ける言葉、今日も変わらない。そしてそれは、彼もまた分かっていたようで…机に置いた書類を仕舞い、すっと立ち上がる。

 

「ではまた、何かあればお呼び下さい」

「分かりましたわ。まだ何があるか分からない状況なのですから、貴方も気を付けるんですのよ?」

「お気遣い感謝します。…それでは、今後も見させて頂きますよ。女神様の判断と、これからのリーンボックスを」

 

 どこか達観したような言葉を最後に、一人で部屋を去っていくニル。そんな彼の意図が、心の中で抱いている思いが…まだ、わたくしには分からない。彼との会話はいつも、互いの本心を探り合うようなもので……だからこそ、わたくしは思う。それ程までに、彼は油断ならない人物であり…その実力を信用出来る人であると。

 

「…ふぅ…それでは彼の支持するという言葉を信じて、わたくしもより一層頑張ると致しましょうか」

 

 彼が出て行ってから数十秒後、わたくしもまた立ち上がり、部屋を出る。

 これからいつ、何が起こるか分からない。明日にでもまた、戦いになるかもしれない。けれど、いつ何があろうと……わたくしはわたくしの理想を胸に、全力で最善を尽くすだけですわ。




今回のパロディ解説

・呆れを超え、辟易を超越し、逆に愉快ですら〜〜
機動戦士ガンダム00シリーズの登場キャラの一人、グラハム・エーカーの名台詞の一つのパロディ。えぇはい、イリゼも時にはこんな事をするんですよ。

・霊子ハッカー
Fateシリーズの内の一つ、EXTRAシリーズにおける用語の一つの事。イヴォワールって、服装含めちょっとダン・ブラックモアと見た目が似てるよね…と思う私です。


次回の投稿ですが、ちょっとした理由…と、前々からやってみたいなぁと思っていた事が合致した(?)事により、一度これまでとは全然違う内容の話を、ORに投稿しようと思っています。なので、OEは一回お休みとなりますが、そちらはこれまで通り日曜日に投稿する予定であり、その後はまたふつうにOEを続けますので、宜しければ次回はORを読んでみて下さいねー。
…あ、でも面白いかどうかは怪しいところです…私としても初めての試みな上、まあまあマニアックな事をする予定なので……。
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