超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第八十一話 来たるべき日

 いつ襲撃が来るか分からない…と警戒しながらも、小康状態のプラネテューヌで過ごす日々。油断するのは良くないけど、その状態が続けば『慣れ』は必ずやってくる訳で、今日も何となく「明日もこんな感じかなぁ…」なんて、頭の隅で思ってた。

 そんな中で、もう寝ようかなと思っていたその時…不意に、マジックが言う。

 

「──時は来た」

 

 普段は割り当てられた部屋にいたり、書庫にいたり、かと思えば窓の外を眺めていたり…そんないつも一人でいるマジックは今日、目を瞑ったままリビングルームのソファに座っていて…マジックがいる事にも慣れたわたし達が普通に会話している中、ふっと目を開くと同時に言ったのがそれ。…時は来た、って……。

 

「…破壊王さん?」

「又は、ナビゲーターの猫さん…?」

 

 あんまりにも急且つ聞き覚えのある台詞に、顔を見合わせたわたしとネプギア。続けて思い浮かんだ人物(ネプギアのは猫だけど)の事を口にするけど、それを聞いたマジックは「…何を言っているんだ貴様等は」みたいな視線を返してくる。…いや、それはこっちの台詞だから……。

 

「…いきなり何なのさ。やってるソシャゲの緊急メンテでも終わったの?」

「何だそれは、ふざけているのか」

「いやうん、確かに普段はそういう事よく言われるわたしだけど、今回はマジックが悪いからね?いきなり『時は来た』だけ言われても、普通誰も分からないからね?」

 

 どう考えたって悪いのはマジックなのに、その当人はこっちが悪いみたいな態度を取ってくるものだから、わたしはそれに不満を込めた目付きで返す。

 太々しいというか何というか…ある意味メンタル激強だよね、マジックって……。

 

「えぇと…それで、マジックさんは何について言っていたんですか?」

「…分からないのか?」

「だからそれ単体じゃ分からないんだって……」

「…ふん、おめでたい奴等だ」

「む…幾ら何でもそれは態度悪過ぎない?キャラなんて人それぞれだけど、個性は人を不愉快にさせる事への言い訳になんて……」

「我が待っていた事など、論ずるまでもなく一つだろうが」

『……っ!』

 

 マジックはそういう性格だ、とは分かっていてもイラっとするものはイラっとするし、わたしはともかくネプギアまで馬鹿にするならわたしだって黙ってはいられない。そんな思いでわたしは反論の言葉を口にして…だけどそれを言い切る直前、わたしの言葉を遮るようにしてマジックは言った。やっぱり具体的じゃない…でもそれだけで、何を意味しているのかがはっきりと分かる言葉を。

 

「…それは、間違いとか、早とちりとかじゃない?」

「抜かせ。この我が、犯罪神様の状態を見紛う事などあるものか」

「じゃあ……」

 

 途中まで言ってこっちを向くネプギアに、わたしは首肯。どういう原理かは分からないけど…この件に関してマジックがわたし達に嘘を吐く理由がない以上、間違いない。…犯罪神が、復活の直前にまで至ったんだって。

 行動はもう決まっている。だけどとにかくまずは、この事を皆に伝えなきゃいけない。だからわたし達は席を立って、いーすんを呼びに行きつつも各国の皆へ連絡をかける。

 

(何もなかったおかげで、こっちは体調ばっちりだけど…逆に言えば、向こうも万全の態勢で待ってる可能性が高いんだよね……)

 

 今更それを考えたって仕方ないけど、洒落にならない位に強いレイに、ダークメガミを従えるもう一人のうずめが万全の態勢だって思うと、このわたしでも自然と緊張しちゃう。…勿論、どれだけ困難だって諦めるつもりはないんだけど。

 そうして数分後、わたし達が移動したのはプラネタワーの会議室の一つ。

 

「ネプギアちゃん、ほんとなの…?」

「うん。マジックさんは、そう言ってるよ」

「ブレイブも同感だって言ってたし、間違いないと思うわ」

 

 TV通話をそれぞれで繋いで、画面越しに顔を見合わせるわたし達。…うーん…時勢に合わせて信次元もリモート会議だよ!…ってネタを温めてたけど…今は心境的にも場の雰囲気的にも、これを言える感じじゃないかな…。

 

「漸くこの時が訪れた、って感じね。やっぱり、ただ時を待つって言うのは私の柄じゃないし」

「そうね。…で、具体的には後どれ位なの?まさか、もう五分位しかない…とかではないのよね?」

「犯罪神様が動き出す…即ち復活に至るまでは、凡そ後一日…いや、一日弱と言ったところだろう。多少長さはあれど、半日以下という事はあるまい」

「一日弱…程良い時間ですわね。であればある程度長期戦になろうとも、復活に間に合いそうですし」

 

 半日以上、一日以下…となれば最深部までの移動時間を差し引いても数時間以上は戦闘に費やせる訳だし、何か想定外の事があっても対応出来る。これが仕事なら軽くゲームしてからにしよっかなぁ…と思うところだけど、流石にこの件はわたしだって、早めに動いて少しでも時間的余裕がある状態で事を進めたいって思ってる。

 

「じゃ、確認だけして早速行く?それともどこかの国で一回集合する?」

「うーん…まぁ、どちらにせよその前に一度食事を取っておいた方がいいんじゃないかな。女の子的には良くないけど、皆夕飯食べてからそれなり以上に時間経ってるでしょ?」

「…あの…その件なんですが、出発は早朝を迎えてから…では駄目でしょうか…?」

 

 わたしの言葉にイリゼが続いて、それは確かに…って感じに皆が首肯。でもそこでロムちゃんラムちゃんの隣にいるミナがおずおずと手を挙げて、今度はそれに首を傾げるわたし達。

 

「それはどういう事だい?」

「はい。ブラン様はお分かりだと思いますが…つい先程まで、ロム様とラム様は寝ていらっしゃったので…」

『あー…』

「え?ミナちゃん、わたしたちもうねむくないわよ?」

「いや…ミナの言う通りよ。普段は今も寝てる時間で、二人共朝までぐっすりでしょ?体力的な事はシェアエナジーで何とかなるにしても、コンディションの事を考えればちゃんと寝ておいた方が良いわ。…戦闘になる事が予想される相手は、生半可な強さじゃないんだから」

「でも…みんなは、だいじょうぶなのに……」

 

 代表してケイが訊くと、返ってきたのは「あ、それはそうだ」と満場一致で思う理由。わたし達としては、十分納得出来る理由だったんだけど、当の二人は自分達が出発を遅らせる要因になってしまうのが嫌なのか、ブランの言う事に不満そうな顔。…うーん…でも二人の気持ちも分かるし、ここは……。

 

「…ふぁー、ぁ……」

「……?何よネプテューヌ、会議中に欠伸なんて気が抜けて……と、思ったけど…分かるわ。この時間だと、私達も正直眠くなるわよね…」

「ほぇ?ネプテューヌちゃんはわかるけど、ノワールさんもねむいの?」

「え…わたしは分かるって……」

 

 これ見よがしに欠伸をすると、真っ先にノワールが反応し…そこからすぐにわたしの意図に気付いて、軌道修正をかけてくれる。さっすがノワール、こういう察しの良さは頼りになるぅ!

 

「…ま、夜更かしはお肌の天敵ですものね。同時にサブカル…特にゲームが捗るのも深夜な訳ですけども…昼夜逆転していない限り、誰でも深夜は眠くなりますわ」

「ふぇ…?ベールさんも…?」

「そうだね。皆も…というか、少なくとも私は今日も普通に寝るつもりでいたし、普段通りとまでは言わなくても、仮眠を取る事自体は全員にとって利がある事じゃないかな?」

 

 続けてベールとイリゼもわたしの思惑に乗ってくれて、その結果ロムちゃんとラムちゃんは二人揃って目を丸くする。

 大人だってなんだって、夜眠くなるのは普通の事。けどきっと、二人はこう思ってたんだろうね。大人は、夜も起きていられるもので、寝てなくても大丈夫なんだろうって。…まぁ、女神に大人も子供もないっていうか、わたし自身その境があるのかどうかよく分かんないんだけどさ。

 

「…じゃあ、ネプギアちゃんと、ユニちゃんも…?」

「うん。わたしもこの事がなかったら、もう寝ようかなぁ…って思ってたところだもん」

「ま、寝る子は育つとも言うしね。……女神が寝る事で成長するかは謎だけど」

「むむむ…じゃあ、ねる……」

「わたしも…実はちょっと、ねむいから…(うとうと)」

 

 ネプギアとユニちゃんによる駄目押しにより、遂に…って程ごねてた訳でもないけど…寝る事を受け入れたロムちゃんとラムちゃん。雰囲気と各々の察しだけでここまで持ってった成果に、ハイタッチでもしたいわたしだけど…残念ながら皆は画面の向こう側。でもネプギアはいるし、ネプギアとハイタッチしよーっと。

 

「何故急にハイタッチを…。…まぁいいや、集合の方はどうする?」

「それは墓場前での集合で良いのではないでしょうか、イリゼさん。今回の場合、どこかの国に一度集まるべき理由もありませんし

(・ω・`)」

「となると、後は何か確認しておくべき事があるかしら…」

 

 これまでと違って今回の件は十分に準備したり話し合ったりする時間があったから、今話す事なんてほんとにここまでで挙がった事位。むしろこっから色々なところに連絡したり準備してもらったりしなきゃいけないって事を考えれば、これも話すべき事が済んだらさっさと終わりにした方が良い感じ。

 でもここまでで気になる事があったみたいで、ベールの言葉にチカが声を上げる。

 

「…貴方達からは、特に何もないの?」

 

 腕を組みつつ訪ねた相手は、静かに会議を見守っていた四天王の四人。話を振られた四人の内、マジック以外の三人は少し考え込んで…それから口を開く。

 

「俺からはないな。ただ、墓場で全力を尽くすだけだ」

「俺もねーな。そもそも頭働かせるのは得意じゃねぇしよ」

「強いて言えば、ここまで向こうに動きがない事が、不可解…というか、本当に動きがないのか、そう見えているだけなのかが気になるが…今それを言っても仕方のない事。それよりも眠たそうに目をとろんとさせ、表情もふにゃっとなったロムちゃんとラムちゃんを見て、勝負へ向けた心作りをするとしよう…アクククク……」

「…ロム、ラム、貴女達は先に寝ていなさい。あの視線は有害よ」

『ふぁい……』

 

 全員がさらりと発せられたロリコン発言にドン引きする中、氷の魔眼か何かかと思う位に冷たい目をしたブランに促され、ロムちゃんラムちゃんはその場から退室。そしてミナは、立ち塞がるが如く何も言わずに扉の前へ。…うわぁ…墓場で集合した時、トリックがいなくなってなければいいけど……。

 

「え、えーっと…それじゃあわたし達も出来るだけ仮眠取っておきたいし、これでお開きにする…?」

「そ、そうだね…じゃあ、皆。次は、墓場の前で」

 

 頬を掻きつつわたしが締まる事を提案すると、イリゼが同意。続く言葉にわたし達全員が頷いて、作戦前最後の会議は終了。後は連絡を入れて、仮眠を取って、集合して……始めるだけ。

 

「…マジックさんは、何も言わなくて良かったんですか?」

「今更何を話す事がある。ブレイブではないが、我は犯罪神様の為、成すべき事を行うだけだ」

「そう、ですか…出発までまだ時間はありますし、何かあったら言って下さいね。わたしは、貴女の事を信じている…とは、言えませんが……頼りには、していますから」

「…あぁ、何かあれば言うさ。必要な事であればな」

 

 席を立とうとしたところで、聞こえてきた二人の会話。信じてるとは言えないけど、頼りにしてる…その言葉には、ネプギアのネプギアらしさ、ネプギアっていう女神らしさがあって…二人が見ている訳じゃないけど、わたしはそれに頷いた。

 そう。わたしだって、マジックの事は頼りにしてる。友達じゃないし、一時的な仲間に過ぎないけど…それでも、マジックの信仰心の強さは、わたし達がよーく知っているんだから。

 

 

 

 

 早朝。夜から朝に移り変わり、起床の早い人はもう目を覚まして活動を始める頃。その時間に、私達はギョウカイ墓場の前へと並び立つ。

 

「ロム、ラム、ちゃんと寝た?」

「もっちろん!」

「ぐっすり…(こくこく)」

「う、うん…意図は伝わってるけど、その単語単体だとまだ寝てるみたいになっちゃうね……」

 

 いつものように集まって、調子を確認しているネプギア達女神候補生の四人。ちゃんと仮眠を取ったおかげか、四人とも顔色は良い。

 

「侵入を阻むような存在の姿は…ありませんわね」

「どうぞお通り下さい、って感じね…誘い込んで中で包囲しようって魂胆かしら……」

「或いは、侵入を阻まなくても自分達だけで返り討ちに出来ると思っているのか…だとしたら、随分とわたし達を舐めてくれたものね…」

「まーまー、何にせよ邪魔されないのは良い事じゃん。どっちにしろ、わたし達は最深部まで進まなきゃいけないんだから」

 

 一方守護女神の四人は、各々腕を組んだり顎に指を当てたり腰に手を当てたりしながら、敵が配置されていない事について思案中。

 

「…皆、突入の前に行動の最終確認をしておかない?」

「あ、そうだね。確認って体で、読者さんやプレイヤーさんにこれから何をするのか説明するのは創作の定番だし」

「う、うん…まぁ、そういう事で……」

 

 ぐるりと見回した後、一歩皆の方から離れた私は、振り返って確認を提案。すると大分メタい理由だけど、それにネプテューヌが賛同の声を上げてくれる。…ほんとにメタいな…まぁ…そういう意図もなくはないけどさ……。

 

「…こほん。まずは前回と同様、最深部まで移動する」

「えぇ。今回は一刻を争う訳じゃないから、速度よりも慎重さを優先ね」

「で、最深部に到着したら、犯罪神及び障害となる存在を確認」

「予想される敵性存在は、あの二人。他は…行ってみなくては分かりませんわね」

「最後に、私達が障害の排除、或いは足止めをしている間に……」

「…四天王が、犯罪神の在るべき形ではない復活を止める」

 

 ブラン、ベールと私の進行に応答してくれて、締めの言葉をノワールが言いながらその四天王の方へと振り向く。今回の作戦の要である四人もまた、実行を前に話し合いを…と思ったけど、実際のところ四人の間での会話はなし。…緊張…するとは思えない面子だし、精神統一でもしてるのかな…。

 

「こう言っちゃなんだけど、確認するまでもないシンプルな作戦だよね。右ストレートでぶっ飛ばす、まっすぐ行ってぶっ飛ばす位の事しか言ってないし」

「いやそこまでではないかと…今回の場合、目標をセンターに入れてスイッチ、位ではないかしら?」

「なんで訂正すると見せかけてパロディを重ねてるのよ…しかも両方、あんまり今回の作戦と繋がらないし……」

 

 二人の流れるようなボケに半眼でノワールが突っ込み、私とブランは苦笑い。傍から見たら、貴女達も少しは集中しなさいよ…とか言われそうな私達だけど、もう作戦に向けての心は出来上がってる。女神なんだから、ここに来て狼狽えたりなんてしない。

 

「ネプギア達も、もう何か確認しておきたい事とかない?」

「あ、うん。わたし達も、大丈夫だよね?」

「んと…うん、だいじょうぶ(ぐっ)」

「いつもみたいに、とにかくじゃまするやつをぶっとばせばいいんでしょ?」

「そんな単純な話じゃ…ない、事もないわね…何も考えずに突っ込んでいくのは悪手だけど…」

 

 幼さ故かよく考えると中々物騒な事を言ってるラムちゃんだけど、ブランの言う通り…更に言えばさっきネプテューヌとベールがネタにした通り、やる事としては至ってシンプル。複雑な行動や判断を求められる場面はないし、気を付けなきゃいけない時間だって、まだまだ切羽詰まってるって程じゃない。

 

(…けど、作戦内容が複雑かどうかと、作戦の難易度が高いかどうかは比例しないんだよね……)

 

 だけど、シンプルだからって気を楽にして行える訳じゃない。現に、結局レイに打ち勝つ現実的な手段は見出す事が出来ていないし、今回は撃破が必須じゃないとはいえ、向こうが信次元に害を成そうとする限り、いつかは打倒しなきゃいけない。そして万が一作戦が失敗した場合は、ただでさえ厄介極まりないあの二人に加え、更に犯罪神までもを相手にしなくちゃいけなくなる以上……っと、いけないいけない。この事も頭に入れておかなきゃいけないけど、今は作戦を成功させる事を考えなきゃ。

 

「いーすん、今日も通信は良好?」

「はい、問題ないですよd(^_^o)」

「よーし、それじゃあ突入……」

「…あの、一つだけいいですか…?」

「…うぇ?ユニちゃんどったの?」

 

 拳を空へ突き上げて、音頭を取ろうとしたネプテューヌ。でもそこでユニが声を上げて、それにネプテューヌはきょとんと振り向く。

 

「あ、はい。作戦そのものには関係ないんですけど…確認というか、訊いておきたい事がありまして……」

「訊いておきたい…って言うと?」

「うん。この作戦では、犯罪神をもう一度倒す…というか、復活を阻止して霧散させる事が目的だよね?…じゃあ…それが成功した時、ブレイブ達はどうなるのかな…って……」

『あ……』

 

 訊き返したノワールに答える形でユニが言う、一つの問い。それはユニ一人じゃない、私達全員に関わる事で…半ば無意識に、私達は四天王の方へと向いていた。

 

「…んー…そりゃあ、俺達は犯罪神ありきの存在なんだから、その犯罪神が霧散すりゃ……」

「…俺達も、消えるだろうな」

『……っ…』

 

 ジャッジから言葉を受け継ぐ形で、ブレイブが口にした結論。それを聞いた瞬間、私達は…私達は…一瞬、心が締め付けられた。

 言われてみれば、当然の事。わざわざ聞かなくても、そうなるだろうって予想は簡単に付く。けど、問題はそこじゃない。受け流せないのは…ジャッジ達が消えるという、その事実。

 四天王は、これまで二度消滅している。二回とも、私達の手で倒してきた。でもそれは敵だったからで、そうしなくちゃいけない理由があったからで…だけど今は、違う。向こうがどう思っているかは分からないけど、私はジャッジの事を仲間だと思っている。理解し合えた今のジャッジとなら、共存の道だって絶対にある筈。なのに、想定外とはいえこうしてまた会えたのに、再び私達の手で消滅に向かわせるなんて……

 

「…よもや、今の発言で実行を躊躇ったのではあるまいな?だとしたら…ふん、軟弱にも程がある」

「軟弱って…そういう事じゃ……!」

「ならば何故、黙り込んだ。疑問が解決したにも関わらず、何故話を進めない」

「…それは……」

 

 鼻を鳴らして侮蔑の言葉を発したマジックに、思わず私は反論しようとする。でも、続く言葉に返せない。全くもってその通りだったから…ぐうの音も出ない。

 

「アクク、まぁ良いではないか。我輩的に今の環境はパラダイス故、止められてもそれはそれでという感じであるぞ?」

「トリック、貴様……」

「…冗談だ、本気にするでない。だが…躊躇ってどうする女神達よ。元々敵であった我輩達の身すら案じるその精神は、流石と言ったところだが…では、犯罪神様が復活するのを見過ごすか?」

 

 嫌な笑い方でマジックを茶化す…と思いきや、ふっと真面目な表情を浮かべたトリックも言う。

 それについても、何も返せない。犯罪神の復活は、全力で阻止するべき事で…やらなきゃいけない事は、決まってる。躊躇ってる場合じゃない事も、分かってる。…だけど……

 

「…ジャッジ……」

「お?おいおい、まさか俺との別れを惜しんでるのか?だとしたら、案外これはマジで脈ありかもしれねぇなぁ」

「茶化さないでよ…私は、そういう意味じゃなくて……」

「ああ、わーってるよ。けどどっちにしろ、犯罪神はいつかまた復活するんだ。そうなりゃまた相対する可能性はあるんだから、それで良いじゃねぇか。…ま、思い出作りにもう一戦だけ交えて、ついでにベットでも一戦……ごほん。まぁとにかく、今行かなきゃ俺みたいな碌でなしや、あっちの変態まで残っちまうんだぜ?それは困るだろ?」

 

 どこまでふざけてるのかは分からないけど、私は本気で…本当に、これからも居てくれていいと思ってる。それなのに事もあろうか下ネタまで突っ込んできたジャッジの事を怒りから睨むと、咳払いをした後全員を見回す。

 そして、ジャッジが口を閉ざしたところで…ブレイブもまた、口を開く。

 

「ユニよ、もし俺の事を思ってくれているのなら、それは嬉しい。だが…お前もあの時見ただろう?思いは、夢は、本人がいなくても受け継がれる。そして俺はお前に、お前とノワールに、既に夢を託したのだ。こうして蘇ったのは、本来あり得ない現象、言うなればボーナスタイム。…それが、終わるだけなのだ」

「……貴方達は、覚悟が決まっていますのね…」

「ま、分かってた事な上、ブレイブの言う通り一時的なボーナスタイムだと初めから思ってたからな」

「それに…我輩は勿論、どうやら奴等も諸君等との戦いの中で、対話の中で、かけがえのないものを得られたのだ。マジックにとってこれは、何としても達成したい事なのだ。故に、心残りも後悔もない。もしも再び、いつかまた蘇る機会があれば、その時は是が非でも掴み取るつもりだが…だからといって、今を惜しむ気などないのだ。…覚悟を決めよ、女神」

 

 突き付けられる選択。選ばなきゃ…ううん、飲み込まなきゃいけない、進むという道。そして…初めに声を上げたのは、ノワール。

 

「…そうね。貴方達に、後悔がないのなら…それでいいと言うのなら…女神として、信次元の為に…私は向かうわ。ユニは、どうする?」

「アタシは…うん。アタシも、進むよ。じゃなきゃ、ここで進めるアタシじゃなきゃ…アンタは安心出来ない、そうでしょ?」

 

 そう言って、にっと挑戦的な笑みを浮かべるユニ。二人の言葉を受けたブレイブは、力強く頷き…皆も、それに続く。

 

「ま、わたしはマジックと別に仲良い訳じゃないしねー。…だから、純粋にマジックの信仰心に敬意を表して、躊躇ったりなんかしないよ」

「うん。マジックさん、見くびらないで下さい。わたし達は…貴女を、犯罪神を打倒した、女神なんですから」

「わたしはむしろせいせいするもーん。…今度は、やらなきゃこーかいすることなんてもうないから」

「わたしも、女神さまだから…ほんきの人の、じゃまはしないよ…」

「…だって。トリック…わたし達は全力で、貴方達を送り届けるわ。だから…貴方も、頼むわよ」

 

 次々と皆も覚悟を決め、これから向かう先へと目を向ける。そうして最後は…私とベール。

…いや、違う。最後は、最後まで躊躇っていたのは…私一人。

 

「…考えてみれば、貴方達はそれぞれ天命を全うした身。その上で、今ではなくこれからの未来に目を向けるのなら…わたくし達のすべき事は、一つですわね。…イリゼ、貴女は……」

「…分かってる…だから、ジャッジ……」

「…おう」

「何度でも…何回でも、蘇ってくるといいよ。それが何度であろうと、いつであろうと…私が、私達が…相手になってやるから…!」

 

 こういう時、いつも私は思う。私は、割り切れない女神だって。良い悪いじゃなくて、迷って躊躇ってしまうのが私だって。

 けれど、躊躇いだけじゃない。その覚悟に、意思に、応えたいと思うのもまた私。だから私はジャッジを…ベールと共にジャッジを見据えて、言った。私からジャッジへ向けた、未来への宣戦布告を。そしてそれを受け取ったジャッジは、心から痛快だって思っているような笑みを浮かべ……躊躇う者は、いなくなる。

 

「…じゃ、改めて…行こっか、皆。もう一人のうずめと、レイの行動を止める為に……犯罪神の復活を、阻止する為に」

 

 落ち着いた声音で話すネプテューヌに、私達は首肯。小さく一つ深呼吸し……それから私達は、ギョウカイ墓場最深部へと向けて足を踏み出す。




今回のパロディ解説

・破壊王さん
プロレスラー、橋本真也さんの事。冒頭の「時は来た」に対する問い…という形でのパロディその1ですね。私としては、まずこちらを連想します。

・ナビゲーターの猫さん
まちカドまぞくに登場するキャラクターの一人…ではなく一匹、メタ子ことメタトロンの事。時は来たに対するパロディその2、上記の次に私はこれを連想しますね。

・「〜〜右ストレート〜〜ぶっ飛ばす〜〜」
幽☆遊☆白書の主人公、浦飯幽助の名台詞の一つのパロディ。読まれるのなら、読まれても対応出来ない動きをすれば良い…これって、割とほんとに良い対抗策ですよね。

・「〜〜目標を〜〜スイッチ〜〜」
エヴァンゲリオンシリーズの主人公、碇シンジの名台詞の一つのパロディ。最近で言うと、炎炎ノ消防隊でもしれっとパロネタに使われていましたね。
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