超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第八十二話 不可解な思惑

 女神の九人と、四天王の四人、計十三人で私達はギョウカイ墓場へと突入。パーティーメンバーの皆には全員各国で待ってもらってるけど、女神は全員いるから戦力的には十分も十分。勿論相手の戦力は未知数だから、そういう意味では間違いなく十分、とは言えないけど……それを言ったら、未知数な以上はどれだけ揃えたとしても十分とは呼べない。

 ただ少なくとも、障害となるのがもう一人のうずめとレイだけなら、四天王の四人が犯罪神を霧散させるまでの時間稼ぎ位なら出来る筈。多少ならそこにモンスターが加わったとしても、何とかなると思う。…というより、何とかしなきゃいけない。その為に、私達は来たんだから。

 

「…また居た。数は3…いや、4。内一体は汚染モンスターです」

「四体…じゃ、次は私達で行くわよ」

 

 戦闘距離及び戦闘スタイルの関係から周辺警戒が得意なユニが進行上の障害となるモンスターを発見し、それを受けたノワールが守護女神組の皆へと呼び掛ける。

 四人は頷き合い、息を合わせて同時に地を蹴る。接近に気付いた四体のモンスターは当然唸りを上げて戦闘行動を開始するけど、一体は汚染されているとはいえ…所詮ただのモンスター。ネプテューヌ達四人に敵う筈もなく、あっという間に駆逐される。

 

「ふー…そろそろ肩慣らしとしては十分かなー」

「出来る事ならもう少し強い個体と戦って、弾みを付ける前哨戦にでもしたいところですけれど…まぁ、そんな都合良くはいきませんわよね」

「…にしても、汚染モンスターと遭遇する頻度が多い…やっぱり、犯罪神の影響かしら……」

 

 当然無傷で戻ってくる四人。今回四人だけで行ったのは、全員でかかるまでもないから…というのも理由と言えば理由だけど、一番の理由は守護女神組と女神候補生組+私という、二つのチームに分けて交互に戦闘をする…って事にしているから。要は最深部までに極力疲労を溜め込まない為のプランで、今は四人の番だったって事。

 

「ひゅー、華麗だねぇ。つか、そろそろ良いだろ?俺にも一回はやらせろって」

「そうはいかないって言ってるでしょ。この作戦における重要度は私達よりジャッジ達の方が上なんだし、特にジャッジの場合は面白くなりそうだったらわざとスリリングな事もするよね?」

「ご不満なら次はより華麗な動きを見せて差し上げますから、観戦で我慢しなさいな」

「へいへい、わーったよ…」

 

 うずうずしているジャッジをベールと共に嗜めると、渋々ながらもジャッジは了承。全くもう…と私達が肩を竦めていると、何やらネプギアが珍妙そうな目でこっちを見ていた。

 

「…どうかした?」

「あ、いやその…ジャッジさんと話す時のお二人って、気心の知れた間柄感が凄いなぁ…なんて……」

「あー…まぁ、ジャッジは気を遣うのが馬鹿らしくなるような人だからね……」

「今更な話ですけど、ジャッジと話す際は適当にあしらう感覚位が丁度良いですわよ」

「は、はぁ…それ含めて、やっぱり気心知れてる感凄いです……」

 

 思いもしなかった事だけど、どうやら周りからは私達はジャッジと気心の知れた間柄っぽく見えるらしい。それに関しては、まぁ心外…って事はないし、真っ向から否定する気もないけど……仲が良いとは違うんだよね。ざっくり言えば同じ方向性ではあるけど、仲良しとは微妙にベクトルが違うというか…。

 

「うむぅ…我輩もあれ位、遠慮無しに言ってもらいたいものだ…」

「あら、わたしも貴方に遠慮なんてしてないわよ?変態にあげる気遣いなんて持ち合わせてないし」

「うほぅ…!この冷たい感じも、また良い…っ!」

『…うっわぁ……』

「気心、か……」

「うっ…ち、ちらちらこっち見ないでよ…アタシ達もそうよね、とか言ってほしい訳…?」

「貴方って、偶に子供っぽいというか、純粋な部分があるわよね…特撮ヒーロー的には、それがプラスに働いたんでしょうけど……」

 

 興奮するトリックに三姉妹揃ってドン引きするブランとロムちゃんラムちゃんに、ぽつりと呟いたブレイブに対し呆れ気味の表情を浮かべるノワールとユニ。…自分も含めてだけど、よくここまでの関係になったよね私達……。

 

「盛り上がってるなぁ…。…その点こっちは……」

「…………」

「…これはわたしのコミュ力を持ってしても、もう暫く期間が欲しかったところかなぁ……」

「え、期間があれば打ち解けられる可能性あったの…?さ、流石お姉ちゃん……」

 

 唯一和やかな(ルウィー組はまたちょっと違うけど…)やり取りのないプラネテューヌ組も、ネプテューヌとネプギアの向ける視線は決して敵に対するものじゃない。

 思い返せば…いや、思い返すまでもなく、四人の…犯罪組織の行いによって苦しんだ人、大切なものを失った人だって沢山いる。彼等を許せないという人も、少なくはないと思う。

 だけど私達は、憎しみでは戦わない。どんな悪人でも、罪を犯した人でも、きちんと罪を贖えば、或いは社会に必要とされるのであれば、その人はそこに居ていいと思っている。だって、私達は守る存在であって、奪う存在ではないんだから。

 

「…って、この段階に至ってもまだこの雰囲気、っていうのは流石に少し気が抜け過ぎでしょう…私も人の事言えないけど……」

「た、確かにそれもそうね…ここまで相手してきたモンスターは全て私達に備えて配置された個体って感じじゃなさそうだし、本当にまさか二人だけで返り討ちにしようって考えてるのかしら……」

「何にせよ、策なり思惑なりがあっての事であるのは間違いありませんわね。足元を掬われないようにしなくては……」

 

 気の抜けた会話が出来る位余裕があるのは良い事だけど、上手くいき過ぎてる時程怖いものはない。心理的な事を言えば、適度に障害があった方が不可解さを感じなくて済むんだから。

 事前に私達の戦力を削るまでもないと、本気で思っているのか。敢えて何も障害を配置しない事で、私達に不安感を抱かせようとしているのか。或いは…もう何らかの術中に嵌まっているのか。考え出せばキリがないし、今確かめられる事なんて限られてるし…もうここまで来ている以上、今ベールの言った通り気を付けて前進するしかない。

 

「…あっ、またいた……!」

「よーっし、こんどはわたしたちの番ねっ!」

 

 少ししたところで再び私達はモンスターを発見し、殆ど反撃を許さず一方的に撃破。遭遇するモンスターには遅れを取る事などなく、それ以外にはそもそも邪魔される事すらなく、最深部へと進み続ける私達。

 そうして遂に、私達は最深部まで後一歩という所にまで辿り着く。……結局、これまでと同じ調子のままで。

 

「…ここまで、余裕で来られちゃいましたね……」

「そ、そうね……」

 

 何とも言えない感じの表情を浮かべるユニに、同じような顔をしたブランが同意。…何であろうと進むしかないとはいえ…やっぱり余裕があり過ぎてるってのは逆に落ち着かない……。

 

「…まさかとは、思いますけど…犯罪神を囮に、わたし達を各国から離れさせた…なんて事は、ありませんよね……?」

「それは…イストワールさん、何か異変はありませんか?」

「いえ。各方面からも、定時連絡以外の報告はありません( ̄^ ̄)」

「だったら、その線の可能性は低いんじゃない?幾ら何でも、私達を誘き寄せる為だけに犯罪神を…なんて無駄遣いにも程があるもの」

「ま、それも含めてここを曲がれば分かるんじゃないかな。ここから先は、君の目で確かめてくれ…って事だよ、うん」

「いやどういう事なのネプテューヌ……」

 

 一先ず今ネプギアの上げた事はなさそうとはいえ、ここまで来ても謎なまま。突っ込みはしたけど、ここまで来たなら後は実際に見て確かめるだけ…って意味ではその通り。

 だから私達は視線で意思疎通を図り、きっと起こるであろう戦いに備えて女神化。四天王の四人にも目配せをし、頭も心も臨戦態勢に切り替えて……最深部へと、踏み込む。

 

「……っ…あぁ、ああ…犯罪神様……!」

 

 突入した最深部で、初めに声を上げたのはマジック。それまでの仏頂面から、心から敬愛する人物を見つけたような(いや、実際その通りなんだけど)表情へと変わり、その口元には笑みも浮かぶ。

 彼女の向ける視線の先にいるのは、前回と同じ場所に鎮座している犯罪神。外観は変わらず……いや、違う。何となく違和感のあった前と違って、今の犯罪神に違和感は殆どなく…感じるシェアエナジーの気配も、より濃く深いものになっている。

 

「…確かに、復活直前である事は間違いないみたいだな……」

「むー…でも、おねえちゃん……」

「…だれも、いない……?」

 

 そんな気配を感じている中、きょろきょろと左右対称の動きで周囲を見回していたラムちゃんとロムちゃんが、不思議そうに声を上げる。

 確かに、最深部に犯罪神以外の姿はない。もう一人のうずめと、レイの姿すらない。

 

「…ふっ、甘いねロムちゃんラムちゃん。こういうのはね、ある程度進むとイベントパートが発生して、そこで敵が出てくるんだよ?」

「そ、そうなの…!?(がびーん)」

「言われてみると、たしかにゲームではそうかも…!」

「でしょ?そしてここはゲイムギョウ界な以上、媒体がゲームじゃなくてネット小説だとしてもその仕組みは存在して……」

「わたしの妹に妙な事を教えんなよ…てか、なんで女神化解いてんだネプテューヌ……」

「え?あ…あはは、あまりにも拍子抜け過ぎてつい…。…こほん、それにしても…これは一体……」

「いよいよもって、訳が分かりませんね…まさかアタシ達が、『わーい、敵がいないから楽々犯罪神の前まで行けるー』なんて思うとでも…?」

 

 最深部は開けてるとはいえ、ギョウカイ墓場は伏兵を配置し易い地形をしている。でも戦闘が加熱している中でならともかく、犯罪神以外は人っ子一人いない中で伏兵だけ配置したって、何の意味もない。

 つまり、戦力を伏せてるって事は恐らくない。でもそうなると、防衛すべき犯罪神を丸腰で放置しているという訳で……おかしい、そんなのおかし過ぎる。

 

(人がやる事には、何にだって意味はある。普通はやる筈の事をやらないのだって、そこには意図なり狙いがあるからこそ。女神だってその点においては人と変わらないんだから、どこかに必ず何もしていない理由、対抗策を講じていない意図がある筈なんだ…!)

 

 予想だにしない、想像を遥かに超える何かがこの状況の裏にあるんじゃないか。あまりにも不自然過ぎる状態にそんな不安がよぎる中、その不安を搔き消すように…いや違う、確かにある筈の『意図』を割り出す為に、私の思考はここまでの事を一つずつ洗い出し始め……

 

「…ン?」

「ジャッジ、どうかしまして?」

「や、今犯罪神から視線を感じて……」

 

 次の瞬間、最深部に響く咆哮。獣よりも禍々しい、狂ったような叫びが響き渡り、一瞬にして私の意識は引き戻される。

 

「ちょっ…どういう事!?復活にはまだ後一日弱かかるんじゃなかったの!?」

「その推測は間違っていない筈だ。だが、これは……」

「犯罪神様を甘く見るな。動く事は出来ずとも、やれる事はあるというだけだ」

 

 振り向き問い詰めるノワールに対し、ブレイブとマジックが視線を鋭くさせながら返答。地を震わせるような咆哮は墓場の中で反響し……遠くから、幾つもの雄叫びが私達の耳に届く。

 

「…もしや、これって……」

「えぇ、どうやらそうみたいね…」

 

 四天王を守るように円を作り、目を走らせる私達。ぽつりと呟いた私の言葉に、ネプテューヌが反応し…その数秒後、モンスターが現れる。

 それも、一体や二体じゃない。次々と現れるモンスターの数は十を超え、勢いが衰えないまま更に増え、その中には汚染モンスターの姿もちらほらとある。

 

「これがどれだけ続くかは分からねぇが…取り敢えず、こいつ等を片付けなきゃならねぇって事か」

「……!…気を付けて下さい、皆さん。普通のモンスターや汚染モンスターに混じって、わたし達が神次元で戦った猛争モンスターの姿もあります…!」

「へぇ、あれがもーそーモンスターってやつなのね。でも、もの凄くつよいってわけじゃないんでしょ?」

「みんなでたたかえば、だいじょうぶ…!」

 

 わらわらと集まってきたモンスターは、あっという間に数え切れない数まで増加。汚染モンスターや猛争モンスターもいる事を考えれば、流石に一筋縄ではいかないと思う。

 とはいえ、こっちには女神化状態の女神が九人。ここまでのように数分足らずで決着…とはいかずとも、まあまず負けるって事もあり得ない。

 

「皆!一先ず犯罪神は後回しにして、安全を確保するわよ!」

 

 あの後改めて女神化し直したネプテューヌの声を合図に、私達は交戦開始。ある筈の思惑を割り出す事も必要だけど、まずは目の前に迫った障害を取り除くべく、私達は大群へと斬り込んでいく。

 

 

 

 

「天舞壱式・桜ッ!」

 

 吹き荒れる暴風の様に、或いは宙を舞う花弁の様に、得物の刃で剣舞を放つ。わざと深くにまで突っ込む事でモンスターの注意を集め、押し潰さん勢いで前後左右から襲いかかってきたモンスターを、逆に次々と斬り飛ばす。

 長剣の届く範囲にいたモンスターは立て続けに斬り裂き、同時に倒したモンスターを撃破時の勢いでぶつける事によって、更に複数の個体を打ち上げる。そして後方から撃ち込まれた射撃が、一体残らず私が打ち上げた個体を貫く。

 

「タイミングばっちりだよ、ユニ!」

「いえ、イリゼさんが分かり易く突っ込んでくれたおかげです!」

 

 駆け抜けていく光弾でそれがユニの射撃であると理解した私は、背中越しにユニへと賛辞の言葉を送る。するとすぐに返ってきたのは謙遜の言葉で、射撃の精密さといい本当にユニらしいと思える反応。それに小さく笑みを浮かべながら、私は長剣で目の前の個体を一刀両断。

 

「ネプテューヌさんっ、ノワールさんっ、とんで…っ!」

「じゃないと、かちんこちんになっちゃうわよーっ!」

 

 顎を蹴り上げ、上げた脚でその個体を踏み台にする事によって跳び上がった私が見たのは、地面に杖を突き立てたロムちゃんとラムちゃんが、扇状に地面を凍らせモンスターの足を固めていく姿。足を凍らされたモンスターの中には、力で強引に捕縛から逃れる個体もいたものの、ネプテューヌとノワールはそういう個体を優先して撃破。狩りをする猛禽類が如く飛来する二人の斬撃を前に、地面へ固定されてしまったモンスター達はあまりにも無力。

 

「おっと、速度が足りないな…ッ!」

 

 跳んだ私の背後へ一体のモンスターが飛び込んできたけれど、分かっていた私は振り向きざまに下から首根っこを掴み、そのまま片手で背負い投げの如く地面へと落とす。そこへ精製した武器…と言うまでもない先端の尖った棒を投げ放ち、串刺しにして一度後退。その動きの中で戦場全体を見回し、四天王の直掩を行うネプギアの前へと降り立つ。

 

「ネプギア、モンスターの増援具合はどう?」

「数もタイミングもまばらですし、規則性は見当たりませんが…この調子だと、まだ打ち止めにはならない気がします…!」

「そっか…流石にそれだと膠着感が否めないね……」

 

 ネプギアの射撃と共に精製した投げナイフで迎撃を突破しようとするモンスターを阻みながら、私はその場でネプギアとやり取り。

 ここまでの戦況は、概ね優勢。けれど殲滅にはまだ至らず、モンスターの増援も止まらない。勿論、全員が大盤振る舞いをすれば一気に薙ぎ払う事も可能だとは思うけど…本命と判別出来る存在が出てきてない以上、ここで全力を出す訳にはいかないのが現実。

 そして問題なのは、これがあくまで「犯罪神によって」呼び出されたモンスターだって事。もう一人のうずめやレイは、別の行動をしている可能性が高い訳で…ジリ貧になる事はなくても、この状況がずっと続くのは宜しくない。

 

「ベール!ブラン!」

「えぇ、聞こえていましたわ。ここは一度一気に倒し、再度集まってくるまでにここを調べるのも一手かもしれませんわね」

「それか、数人をそれに回して、残った面々で抑えるかだな。多少負担は増えるが、このペースならまぁ何とかなるだろ」

 

 再度前へと戻り、踏み込みざまの一つで一体倒しながら、私は近くのベールとブランを呼ぶ。三人で背中合わせに立ち、背後を取れない形を作る事で周囲のモンスターに警戒をさせて、これからの動きについて軽く話す。

 二人の言う事は、どちらも一理ある。どちらにせよ消耗や負担はこのまま戦うより増えるけど、今のまま戦ったところで何も判明しないまま疲労するだけ。流石にどこかで増援は途切れるだろうけども、それを待つのはあまりにも消極的過ぎる。

 

「…うん。どちらにせよ、この辺りで動かないとずるずる時間だけが過ぎていくもんね。一度皆に声をかけて……」

「いーや、その必要はねぇぜイリゼ!」

「え、ジャッジ…?な、何を……」

 

 二人に同意し全員との共有を…そう思ったところで、不意に後方から聞こえた声。それは確認するまでもなくジャッジのもので、でもその内容に思わず振り向く。

 

「いい加減ケリを付けようぜ、ってこった!」

「ちょっ、そんな勝手な…!」

「ついに痺れを切らしましたわね貴方…!」

「いや、こいつの言う通りだ。ここまできて、いつまでも犯罪神様を待たせる訳にはいかん」

「ま、マジックさんもですか…!?」

 

 ここまで素直に守られてくれていた四天王(の内二人)による突然の心変わりに、慌てて私達は一旦集合。最初の全員で囲って守る陣形に戻りつつ、先の発言を問い質す。

 

「いつまでもって…復活にはまだもう少しある筈だし、そもそも今の犯罪神はまともな意思があるような状態じゃないんでしょう?」

「だからなんだと言うんだ。我は犯罪神様の忠実なる臣下。であれば、主を待たせて良い理由などない」

「無茶苦茶言ってるわね…ブレイブ、貴方はどうなのよ?」

「俺はお前達の言葉を無視してまで強行しようとは思わん。だが…そもそもの作戦は、今のようにお前達が障害を押さえている間に、俺達が役目を果たすと言うものではなかったのか?」

「そ、それはまぁそうだけど……」

 

 ネプテューヌとノワールからの問いかけに、それぞれマジックとブレイブが返答。マジックの言い分は感情からくるものだけど、ブレイブの返しには一理あって、ノワールも返しに一瞬詰まる。

 

「…まぁ、そうであるな。何かが起こる前に、事を果たすというのも判断としては悪くなかろう……」

「つー事は、トリックもか…ってかお前、さっきからやけに静かだな……」

「どうも、この不可解さが気になるのだ…もう少しで、何か見えそうなのだが…うぅむ……」

「…どうしますか?皆さん。今なら四天王の方々が犯罪神を霧散させるまで押さえ込む事は、十分可能だと思いますが……」

 

 四天王全員の意思を聞き、次にネプギアが発したのは私達へ向けての問い。当初の予定通りに進めるか、想定外の事態に対し、実行よりも見極めを優先するかという二択。

 ここまでは後者で考えていた私達だけど、前者が間違ってるって事はない。トリックの言う通り、何かされる前に片を付けるのも一つの手。

 流石にゆっくり話し合う時間はないから、迎撃の間に視線で意思疎通を図る私達。分からない事が多い中で、今取れる手の中で、何を選ぶのがベストかを考えて……

 

「…分かったわ。けど、そう言うって事は…この状況下で成功させる自信があるって事なのよね?」

「犯罪神様の御前なのだ。端から失敗する事など考えてはいない」

「要は、自信に満ちてるって事ね…でも、それ位言ってくれるならわたし達も安心出来るわ。良いわ、やってやろうじゃない!」

「ですね。…けど、もしこれで何事もなく成功したら、それこそ何の為に復活させたんだって言いたくなるような……」

 

 一切ブレないマジックの在り方に、若干の呆れを見せながらもネプテューヌは笑みを浮かべ、気合いを入れるようにして構え直す。私達もそれに頷き、ここからどう動くかを思考開始。

 その中で、ぽつりとユニが呟いた言葉。動きをシミュレーションしながらも、その呟きに私は内心同感した……その時だった。

 

「……待て…今、何と言った…」

「へ?…これで何事もなく成功したら、それこそ何の為に復活させた──」

「それだッ!」

「はい!?」

 

 不意に、トリックが口にした訊き返し。それに不可解そうな声を上げながらも、ユニはもう一度今の言葉を繰り返し…言い切る直前、くわっと目を見開いたトリックが叫びを上げる。

 

「ちょっと、きゅーに大声出さないでよ!びっくりするじゃない!」

「す、すまないラムちゃんよ…!…だが、そうか…そうに違いない…!ぐぅぅ、可愛げがないだけでなく、こうも小賢しい策を仕組んでくるとは…!」

「…おいトリック、お前は何を言っているんだ。…何か、分かったのか…?」

「…うむ…どうやら我輩達は、奴等に良いように踊らされていたのかもしれん……」

 

 不可解ながらも何か重大な事に気付いた様子のトリックに、トーンを落とした声で尋ねるブラン。そして、次に口を開いたトリックは、全員に取って息を呑むような推測を口にし…そのまま彼は、言葉を続ける。

 

「皆も思っているだろうが、ここまでの事には理解の出来ない部分が多過ぎる。我輩はそれを、作戦として敢えて不可解な形にしているのだと思っていたが……漸く分かったのだ。我輩達は、初めから…一番最初の時点で、大きな勘違いをしていたのだ」

「トリック、さん…どういうこと……?」

「…結論から言おう。我輩の予想が正しければ…奴等の目的は、犯罪神様を復活させる事ではない。むしろその逆……犯罪神様の復活を阻止される事こそが、奴等にとっての本当の狙いなのかもしれん」

「は…?犯罪神の復活を阻止させる事が目的…?んだよ、それ…意味が分からねぇよ…。そもそも犯罪神は、あいつ等が復活させようとしたんだろ?なのに、その犯罪神を阻止させるのがなんて……」

「あぁ。だがこの状況は、どうぞ倒して下さいと言っているようなものではないか?女神全員を相手に出来る程の実力があるなら、こんな誘い込みをする必要があると思うか?」

 

 トリックの言う事は、到底信じられない。だけど同時に、もしそうなら…阻止される事を目的としているのなら、この不可解な状況にも合点がいく。…けど、だとしても……

 

「…なら、阻止されたい理由は何?私達に阻止されるのは、それは向こうにとって不都合な事ではないと…?」

「確証は無い。だが、犯罪神様は謂わば、シェアエナジーの濃縮体。膨大な量のシェアエナジーを内包する存在。普通、霧散したシェアエナジーはその場に溶けて消えるが…もしも、それを集める方法があるのだとしたら、犯罪神様を戦力ではなく、シェアエナジーを集める器として見ているのなら……」

「…まさか…真の目的はそのシェアエナジーを別の何かに利用する事であり、その為にわたくし達に倒させようとしていると…?ここまで何もしてこなかったのは、シェアエナジー集めをわたくし達にさせ、その間に別の事を進めていたからだと…そう、言いたいんですの……?」

 

 半ば無意識に迎撃の手が緩んでしまいそうな程の驚愕の中、トリックはベールの言葉に無言で首肯。そして私達は、その愕然とする可能性を前に…全員が、言葉を失う。

 

(…まさか…幾ら何でも、そんな事…。…でも、だけど……)

 

 ここまでの考えが、根本から覆される。向こうの目的は、犯罪神を復活させ、その強大な戦力を得る事だと思って、そういう前提であれから今に至るまで動いてきたのに、それが最初から間違っていたなんて。

 まだ信じ難い。強大な犯罪神すら、そのものではなくシェアエナジーを集める為の器としてまで、もう一人のうずめ達は一体何をしようというのか。そんなの想像も付かないし、理解の及ぶ範囲なのかすらも分からない。

 だけどそれでも、トリックの言葉は筋が通っている。トリックの言葉と、ベールの返しを合わせれば、この状況全てに説明が付く。でも、だとしても…それじゃあ、もしその通りなら……私達が行おうとしていたのは、うずめとレイにとって思惑通りの行動で…犯罪神の復活阻止は、二人に利益をもたらす行為だったって事…?




今回のパロディ解説

・「〜〜ここから先は〜〜確かめてくれ〜〜」
主に最速攻略本にて使用される、あるフレーズのパロディ。あ、一応伝えておきますよ、最終話は目前…とかじゃないですよ?まだまだ最終話は先ですからね〜。

・「〜〜んだよ、それ…意味が分からねぇよ〜〜」
魔法戦争の主人公、七瀬武のアニメ版における台詞の一つのパロディ。重ねて言いますが、まだ最終話ではありません。百話どころか百五十話も余裕で超える可能性大です。
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