超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
ノワールの上に落っこちてきた…じゃなかった、次々と巻き起こった想定を遥かに超える事態の末に、重い気持ちでプラネタワーへと戻ってきたわたし達の前…ではなく後ろに現れたのは、どこか別の次元にいる筈のおっきいわたし。それだけでも、わたし達にとっては驚きの出来事だったけど…切羽詰まった表情で、おっきいわたしは言った。うずめ達のいる次元が、とんでもない事になっているんだって。
「あ、あの、大きいネプテューヌさん…その、とんでもない事って言うのは……」
「とんでもない、凄く大変な事なの!」
まずはプラネタワーの中に入って(ここも敷地内だから、プラネタワーの中って言えば中だけど…)、身体を休めながらわたし達が見たもの、感じた事をいーすんや皆に伝えるつもりだったけど…おっきいわたしの表情を見れば、それがどれだけの事態なのかがよく分かる。
「凄く大変って…凄く大変な事なの!?」
「うん、凄く大変な事なの!」
「それって、どれ位!?」
「えっと…これ位!」
「い、いや大きいお姉ちゃん…両腕を広げてぐるっとやられても、流石にそれだけじゃ分からな……」
「そんな…それって一刻を争うレベルじゃん!」
『いやなんで今ので伝わる(のよ・んだよ)!?』
おっきいわたしに合わせるようにしてわたしが応えると、三方向から飛んでくる突っ込み。その突っ込み主は、ノワールと、あいちゃんと、それにクロちゃん。
「おぉー、綺麗なトリプル突っ込み。っていうか…前から思ってたけど、クロちゃんって実は結構突っ込み気質?」
「あのなぁ…はぁ。あぁ、そうかもな。誰かさんが四六時中ふざけた事を言ってるからな」
「いやぁ、それ程でも〜」
「…こんな馬鹿な話してたせいで取り返しが付かなくなっても、俺は知らねーぞ」
「うぁぁそうだ!いやほんと、冗談なんて言ってる場合じゃないレベルの緊急事態なんだって!」
わざとらしく照れた反応をするおっきいわたしだけど、多分今日も本の中にいるクロちゃんから淡々と言葉を返されると、再びその表情は緊迫したものに。……え?さっきのやり取りで本当に伝わってるのかって?ふっふっふー、それは秘密かな。
「話が脱線したのは貴女達のせいでしょうが…で、具体的には何が起こってるの?」
「それは…詳しい説明はしてる暇がないから省くけど、皆には…っていうか、信次元には皆の避難場所になってほしいの!」
「避難場所?向こうで何か、大規模な戦いが起こっているという事でして?」
「ううん、ある意味それより酷い状態だよ。…で、その皆っていうのは、海男達の事なんだけど…受け入れて、くれる…?」
仕切り直してくれたブランからの質問に答える形で、おっきいわたしが口にしたのは避難先になってほしいというお願い。確かにそれを頼むんだったら、女神として国を治めているわたし達がベスト。
大規模戦闘より酷いって事なら、一刻を争うんだってのも納得出来る。だけどおっきいわたしは、自信なさげ。
その理由は、分かる。だって、おっきいわたしが言う皆っていうのは…海男達は、モンスターだから。話す事が出来て、人を襲わないっていっても、モンスターである事には変わらないから。…でも……
「そういう事なら…わたし達は、良いよね?」
「それは勿論。海男達とは短い間とはいえ一緒に生活してた間柄だし、見捨てる事なんて出来ないもん」
「わたくしも構いませんわよ。人とモンスターは相容れない…なんて、わたくしは思いませんもの」
「おねえちゃん、わたしたちも…いいでしょ…?」
「海男さんたちって、みんなかわいかったりおもしろかったりするの。ね、いいでしょ?」
「二人共…。…流石に、心は善良でも見た目がモンスターである以上、手放しで受け入れる事は出来ないわ。でも…何もせず、ただモンスターだからというだけで見捨てるのは、女神のする事じゃないわね」
「…お姉ちゃん。アタシは、ほんとにちょっとしか接してないけど…向こうでうずめさん達といたモンスターは、人と大差ない精神だったわ。それだけは、アタシも保証出来る」
「…ま、そのモンスター達を含めた向こうの住人に、私達…っていうか、ネプテューヌ達は協力してもらった訳だしね…。問題もあるでしょうけど、私も拒絶しようとは思わないわ」
それぞれで顔を見合わせたり、肩を竦めたりして、それからわたし達は四ヶ国で、四ヶ国の女神全員で一つの同じ答えを返す。責任ある立場って、色々大変な事も多いけど……こうやって自分の責任で、自分がこうだって思った事をそのまま決定に出来るのはありがたいよね。
「皆ぁ…うぅ、心の友よーっ!」
「あー、はいはい。で、どうするの?私達は、とにかく避難してくるモンスターを受け入れれば良い訳?」
「それは…ううん、何が起こるか分からないし、出来れば何人か付いてきてくれる?実際に皆が来てくれた方が、話もスムーズに進むと思うし」
「そういう事でしたら、適任なのは向こうに行った事のある人…特に生活を共にしていた、イリゼさん、ネプテューヌさん、ネプギアさんのお三方でしょうか(´ω`)」
「まだ何が起こるか…いや、これまで以上に何が起こるか分からない以上、ネプテューヌとネプギアが同時に行くのは避けた方が良いと思うわ」
「うーん…じゃ、わたしとイリゼで行く?向こうに一番長くいたのはわたしだし」
ブランからの指摘を受けて振り向くわたし。向く先…っていうか、声をかけた相手は勿論イリゼ。…でも、イリゼからの返答がない。
「……イリゼ?」
「…あ…うん、そうだね…私もそれで、構わないよ…」
「……ほんとに?今、イリゼに爆笑必至の一発ギャグ十連発をやってもらおうって話してたんだよ?」
「…違うよね…?後、一発の十連発って……」
(…いつものハイテンション突っ込みが返ってこない…どうしよう、これは重傷だ……)
名前を呼んだらイリゼは反応してくれたけど、その様子は半ば上の空。もしやと思って、試しに出鱈目な事を言ったけれど…返ってきたのは覇気のない声だけ。
思い返せば、ここまでほぼイリゼは何も言ってない。理由は分かるし、気持ちも理解出来るけど……。
「…イリゼ、貴女本当に行けまして?ネプテューヌの言う通りであれば、ただ行くだけでは済まないかもしれませんのよ?」
「うん…それ位分かってるよ…?」
「……前言撤回。何かあっても困るし、今回はわたし一人で行ってくるよ。おっきいわたしもそれで良いよね?」
「え?…そりゃ、お願いしてるのはわたしの方だし、皆がそっちの方が良いって言うならわたしもそれに従うけど……」
「…ど、どういう事…?皆、どうして私を……」
少しだけ語気を強めたベールの言葉にも、イリゼの反応は同じ調子。それを見て、それを聞いて…わたしの中の疑念は、確信に変わる。
こういう時、ムキになるのは冷静じゃなくなってる証拠だし、そういう意味じゃ今のイリゼは落ち着いてるけど…はっきり言って、多分今のイリゼはそれより悪い。だって、ムキにすらなってない…自分が普段の調子じゃない事にすら気付いてない様子だから。そんな状態のイリゼじゃ、コンディションもどれだけ落ちてるか分からない。
「皆もそれで良い?良ければ早速行ってくるよ」
「はい。ではネプテューヌさん、それに大きいネプテューヌさん。詳しい話はまた後で聞くとして、どうかお気を付けて下さ……」
「…いーすん?」
「ねぷ子が二人で…ねぷ子が、二人だけで……?」
「…ネプギア、さっきはああ言ったけど…やっぱり貴女も行った方がいいわ。戻ってくるまでは、わたし達もプラネテューヌで待機しているから」
「そうよネプギア。アンタもネプテューヌさん達に付いていった方がいいわ」
「あ、う、うん…確かにその方が良さそうかも……」
「えっ、ちょっと…?な、何この空気…なんか今、すっごい失礼な空気になってない…?」
のんびりもしていられないし、ここは真面目に…と思っていたのに、急に流れる何とも失礼な感じの雰囲気。しかもネプギアまで同意してるし…。一個前の地の文じゃ、あれだけ真面目な雰囲気出してたのにだよ…?
「ま、まあまあとにかく早く行こうよ。ほら、クロちゃんも。ちゃんと出してあげるからさ」
皆の反応は不服だけど、おっきいわたしに言われてわたしも渋々首肯。するとおっきいわたしは持っていたねぷのーとを開いて、あるページに手を当てて、引っ張り出すような動きでその手を離す。
普通に考えれば、特に意味のない行為。でもおっきいわたしが手を離した時、そこにいたのは……
「ふぃー、久し振りに出たぜ…」
「え……く、黒いいーすん!?くろいーすん!?」
おっきいわたしの手の中で、ぐりぐりと首を回しているちっちゃな女の子。ロムちゃんラムちゃんよりずっと小さい、いーすんと同じ位なその子は、背丈だけじゃなく容姿も何だかいーすんっぽくて、思わずわたしは某有名作品の二作目第一話のタイトルみたいな事を言ってしまう。
「誰がくろいーすんだ誰が!なんで大きい方も小さい方も妙な渾名を付けるんだよ!」
「はは…しかし貴女、本当にわたしと似ていますね…。もしや、貴女も……」
「止めろ、変な詮索はすんな。てか、離せよネプテューヌ」
「え、やだよ?クロちゃん離したらすぐに逃げるじゃん。流石に今回はフルパワーを出してもらわないと困るから出してあげたけど、ただそれだけなんだからね?」
「お前なぁ…てか、それ抜きにしても怖いんだよ!ぜ、絶対何かの拍子に握ったりとかするなよ!?言っとくがお前これ、お前達なら馬鹿でかい万力に挟まれてるような状態なんだからな!?」
服装と髪型とかの変えられる部分を除けば、肌が黒い事以外はほんとにいーすんと似てるクロワール…うん、やっぱくろいーすんって呼ぼっと。…は、おっきいわたしの右手の中で猛抗議。確かにわたし達で言えば巨人に掴まれてるようなものだし、怖いって気持ちは分かるけど…おっきいわたしの判断だもんね。実際おっきいわたしの持ち方だって、握ってるってより丁寧に包んでるって感じだし。
「こほん。それじゃあ頼むよ、クロちゃん」
「ったく…へいへい、ほんとに人使いが荒いこった……」
「……?今回はサポート不要ですか?
(´・ω・)」
「今はこっちも向こうも次元の壁が不安定になってるからな。そりゃ、機材を使った方が負担は減るが、俺一人の力で開くより色々複雑になっちまう。普段ならともかく、不安定な時に慣れねぇ機材のサポートなんてむしろ使えねぇよ」
「えと…よく分からないですけど…くろいーすんさん、頑張って下さいです!」
「だからその渾名で呼ぶなっての…!…あぁそうだ、同じ理由で今回はすぐ閉めて、また来る時に扉を開くから、それまで向こうにコンタクトは取らないでくれよ?扉を開くのも、次元間通信をかけるのも、揺らぎは発生するんだからな」
「えぇ、分かっています。では、今度こそ…皆さん、お気を付けて( ̄^ ̄)ゞ」
次元の扉を開ける者同士によるやり取りを経て、くろいーすんは次元の扉をオープン。くろいーすんの作る扉は、いーすんよりもずっとスムーズに出来て……でも何だか端っこが変。…これも、次元の壁が不安定…ってのの影響かな…そもそもの話、信次元は完全に別次元と交流出来ない状態だった筈だし……。
「(…いや、それも後で訊けばいい事だよね。とにかく今は、うずめ達の所に急がないと!)じゃ、ちょっくら助けてくるね!」
「出来る限り、早く戻ってきます…!」
気になる事は一度頭の隅にシュートして、わたしとネプギアはおっきいわたしに続く形で次元の扉へ。扉を潜って向こうの次元に行く直前…わたしが振り返って見たのは、イリゼの姿。
イリゼはまだ、困惑した顔のまま…どうして自分が駄目なのか、分かっていない顔をしたままだった。その顔を見ると、どうしても不安になる。でも…大丈夫だよね。なんたってイリゼは、誰よりも仲間を…友達を信じて、その気持ちで前に進む女神なんだから。
そうしてわたし達はおっきいわたしの導きで、うずめ達のいる次元へ……
「……えっ?ちょっ、待っ……のわぁああああぁぁッ!?」
…………うぇ?今、何か…すっごいデジャヴ感のある声が聞こえなかった…?
*
目を開ければ、すぐにそこは別次元。何となく、そうじゃない…っていうか、もっと長い時間がかかっていたような気もするし、逆に一瞬よりも短い時間しかかかってない気もするけど、とにかく次元の扉を通るのはワープをしているような感じ。
そんな感覚を経て、わたし達はうずめさんのいる次元へ降り立った。そして、わたし達は……絶句する。
『…何、これ……』
初めにわたしの目に映ったのは、空間ごと削り取られたかのように抉れた大地。少し視線を上げればそこにはズタズタになった森林があって…見える街並みは、一層無残。
元からこの次元は、衰退の一途を辿っていた。街は廃墟と化していた。でも今は、それよりも酷く……わたし達が見ている間にも、ビルの一つが崩れ落ちた。
「……嘘、そんな…」
あまりにも酷い光景を前に、大きいお姉ちゃんも声を震わせる。…こんな光景を見たら、誰だって平然としていられる訳がない。
「…おっきいわたし、うずめ達がどこにいるか分かる?」
「う、ううん…でもきっと、モンスター達はどこかに避難してる筈……」
「となると、拠点を回ってみるのが良さそうだね。おっきいわたし、掴まって!」
完全に女神の顔になったお姉ちゃんは、大きいお姉ちゃんへ手を差し出しながら女神化。わたしもそれに続いて、わたし達は飛び上がる。
「まずは森の中のあの拠点から行くわよ。…っとそうだ、ネプギア。わたしと交互に、空に向かって攻撃を放ってくれる?」
「へ?良いけど…どうして?」
「こんな状況じゃ、きっと皆周囲を警戒してるでしょ?で、空にエクスブレイドやビームが見えたら……」
「そっか、うずめさん達がわたし達を見つけてくれても良い訳だもんね」
お姉ちゃんからの提案に頷いて、わたしは水平に一射。少ししてからお姉ちゃんがエクスブレイドを打ち込んで、そこからは二人で散発的に目印を放つ。
大体飛ぶこと十数分。距離的に一番近かった森の中の拠点にわたし達は到着し…けれどそこには、誰の姿もない。代わりにあるのは……拠点のすぐ側に出来た、巨大な穴。
「…ここで…ううん、この次元で何があったって言うの……?」
「この跡、戦闘によるもの…じゃ、ないよね?だとしたら……って、あれ?」
低空飛行で見回る中、わたしの目に留まったのはわたし達も前に使ったあるテント。その表面には黒い模様が書かれていて…よく見ればそれは、伝言だった。
書かれていたのは、ここは危険だから放棄するという事と、どこへ向かったかの二つ。それを見たわたし達は頷き合い、書かれていた場所へと向かう。
「おいネプテューヌ、俺を握り潰すなってのもだが、本も落とすなよ?」
「分かってるって。クロちゃんは心配性だなぁ…」
「お前がうっかり屋だから言ってるんだよ…!」
速度重視の今回は洞窟を使わず、山を飛び越える形で移動。その山も至る所が削れていて、それを見る度不安になる。うずめさん達は無事なのかって。もしかしたら避難した先も、崩れてしまっているんじゃないかって。
「…もう少しスピードを上げるわよ。おっきいわたし、大丈夫そう?」
「もっちろん!急いじゃって、ちっちゃいわたし!」
力強い首肯を受けて、わたしもお姉ちゃんも更に加速。最低限の警戒はしつつも山を一気に駆け抜けて、その速度のまま街に突入。そうしてわたし達が向かった先、テントに書かれていた避難先は……わたし達で見つけた、あの交信用施設。
「……!お姉ちゃん!大きいお姉ちゃん!今施設の中から出てきたのって……!」
「あれは…あっ、エビフライ!おーい、エビフラーイ!」
「……!?僕はエビフライじゃ…って、この声は…皆さん!?」
恐らくは偶然出てきた一体のモンスター…通称エビフライさんの姿を目にして、大きな声を上げる大きいお姉ちゃん。その声にびくんと反応したエビフラ…もとい、ひよこ虫は条件反射の様に突っ込みかけて、それから丸っこい目を更に丸くする。
「良かった、無事なのね。他の皆は?」
「あ、は、はい!僕達の仲間は、皆ここか近くのビルにいるのです!…でも、どうして皆さんが……?」
「おい、急に大きな声を出してどうした!まさか、こんな時に話の通じねぇモンスターでも……って、ねぷっち!?ぎあっち!?大きいねぷっち!?……と、後、ちびっこい誰か!?」
「クロワールだよクロワール!…いやまぁ、分からなくて当然だろうけどよ…」
施設前に着地し、早速状況確認を…と思ったところで、奥から聞こえてくる別の声。聞き覚えのあるその声にわたし達がはっとする中、慌てた様子でその声の主…うずめさんがばっと出てきて、次の瞬間そのうずめさんもわたし達を見て目をまん丸に。そして、その後を追うようにウィードさんや海男さんも出てきてくれて……良かった、皆さんも無事だったんだ…。
「皆…どうして、ここに……」
「どうしてって…そんなの、皆を助ける為に決まってるじゃない」
目を見開いたまま訊くウィードさんの言葉に、お姉ちゃんは優しげな表情を浮かべて返答。それにわたしもこくんと頷き、一旦わたし達は女神化解除。間に合って良かった…と、心の中で吐息も漏らす。
「そうか…すまない、皆。どうやらオレ達は、また君達に気を遣わせてしまったようだね」
「そんなの気にしないで下さい。それに、この緊急事態を教えてくれたのは大きいお姉ちゃんなんですから」
「ん?そうなのか?…でも大きいねぷっち、暫くはこっちに来てなかったよな…?」
「あ、あー…それはほら、来た途端に慌てちゃったっていうか…あんまりにも酷い状態だったから、何とかしなきゃと思ってすぐに信次元に飛んじゃった的な……」
「…確かに、いきなりこの光景を見りゃ誰だって冷静じゃいられねぇよな…何にせよ、ありがとな大きいねぷっち。ねぷっち達に、この事を知らせてくれてよ」
「う、ううん。それより、何が起きたか教えてくれる?」
「おう。…つっても、俺達もまだ理解し切れてないんだけどな……」
てっきりわたし達は、大きいお姉ちゃんは信次元に来る前はうずめさん達と行動していたのかと思っていたけど、それはどうやら違う様子。まあでも重要なのはそこじゃないし、聞かなきゃいけないのはこの次元の事。
うずめさん曰く、至る所で起こっているこの崩壊は、突如起こった事らしい。正確には、少し前から建物や自然がちょっとずつ消えてる…っていうか、一部が消えたみたいな跡をウィードさんや一部のモンスターが見つけてたらしいけど、それでも段階的にじゃなくて、ある時突然次元中が崩壊を始めて……消えていると、そう言った。
「消えてる、って…それは本当に、なくなってしまっている…って事、ですか…?」
「信じられねぇと思うが、本当だ。…ほら、な」
『え?……あ…』
悲しげに、どこか無力感も感じ取れる表情を浮かべたうずめさんが、視線で示した先。誘導されるようにして振り向いたわたし達が見たのは……ビルの一つが砕けながら宙へと浮かび、空へ向かうと共に崩壊しつつ消えていく光景。
それを見て、理解する。どうやってこの次元が崩壊していったのかと、それがまだ続いているんだって事を。
「…ごめん。俺、こうなる前になんか変だって事には気付いてたのに、気のせいだと思って忘れてて……」
「だから、それはいいって言ってんだろ。それを言ったら、そもそも俺は気付きもしなかった訳だし…仮に分かってたって、俺達にゃどうにも出来ねぇよ」
「そうだね。失敗を反省するのは大切だけど、抱かなくていい負い目まで背負うのは、心の負担になるだけだよ」
俯きがちになるウィードさんの発言をうずめさんが否定し、続けて海男さんは含蓄のある言葉を口に。それを聞いたウィードさんは、二人を見回した後、自嘲気味に軽く笑って…それから気持ちを切り替えるように、両手の指で軽く頬を叩く。
こういう事は、あまり軽々しく言いたくないけど…正直、今のこの次元の状態は絶望的。どうしたら良いかなんて想像も付かない。だけど…皆さんの心は、まだ絶望に染まってない。まだ、生き延びるんだって意思は消えてない。
「そーそー。後ろを見たら、次はスピンしてまた前も見なきゃ。って訳で、提案なんだけど…皆、信次元に来ない?」
それはお姉ちゃんも感じたみたいで、ちらりと大きいお姉ちゃんへと目配せした後、お姉ちゃんはわたし達がこの次元に来た、具体的な理由を口にする。
提案を聞いた瞬間、驚きからか皆さんは揃って目を見開く。その後は数秒間の沈黙があって…初めに口を開いたのは、ウィードさん。
「それは…移住しないか、って事か…?」
「そうだよ。こっちもこっちで大変だけど、少なくともこのままここにいるよりは安全だと思うし」
「…僕達も、ですか…?うずめさん達だけじゃなくて、僕達モンスターもなのです……?」
「勿論。流石に来てすぐ街中を出歩く…って事は難しいけど…それでも、皆が生活し易いようやれる限りの事はするし、この事は他の皆も承知済みだよ」
「…ありがたい話だね。これまでは、過酷な環境でも愛着が…なんて言っていたけど、今となってはもうそんな事を言っている余裕はない。ここ周辺も、いつ崩壊するか分からないし…正に、渡りに船じゃないか」
腕を組むようにヒレを重ねた海男さんは、小さく笑みを浮かべながらうずめさんへと軽くウインク。それを受けたうずめさんも頷きを返して、皆へと話をするべく一度中へ。同時に海男さん達も、周りのビルにいる仲間の下へと向かって…全体としての意見が固まったのは、十数分後。
「おーい、待たせたな四人共…って、うおっ…結構集まってるな……」
「うりうり〜。…あ、待ってたようずめ。それで、皆の答えは?」
「…これから、宜しく頼むってよ」
お姉ちゃんが出てきてくれた子達を撫でたり、わたしも話を聞いていたりした中で戻ってきたうずめさんは、にっと笑みを浮かべて言う。
これで、わたし達も一安心。信次元に受け入れたらそれでお終いじゃなくて、むしろ大変なのはここからだけど…取り敢えずこれで、皆さんを少しは安全な場所に連れて行けるもんね。
「悪いな、二人共。そっちも大変だってのに」
「困った時はお互い様、ですよ。それに…皆さんは、わたし達にとっても知らない他人…他モンスター…?…じゃないんです。女神として、そんな皆さんの危機を無視する事なんて出来ませんから」
「ぎあっち…それじゃあ二人を、いや信次元の女神皆を見込んで、皆の事は任せるぜ」
「任せてよ!…って、え?任せる…?」
頼まれたから助けるんじゃない。わたしやわたし達自身がそうしたいと思ったから、出来る事を尽くすんだ。…そんな意思を込めてうずめさんの言葉に答えると、うずめさんは右手を胸の前で握った後、わたしとお姉ちゃんそれぞれの肩に手を置いて、再び笑みを浮かべてくれた。
その笑顔に、お姉ちゃんは片手でガッツポーズを作って答える…けど、その口振りは何かおかしい。その言い方は、まるで……
「…うずめさんは、来ないんですか…?」
「あぁ。見知った顔は全員ここに集まってるが、どこかにまだ誰かがいるかもしれねぇ。なのに、俺まで信次元に行っちまったら、そいつを助けられる奴がいなくなっちまうだろ?」
「そんな…駄目だようずめ!今は、何が起こるか分からないんだよ!?明日にも…ううん、五分後にも物凄い勢いで次元が崩れてく可能性だってあるんだよ!?なのに、こっちに残るなんて……」
「ありがとよ、大きいねぷっち。けど…俺は女神だ。どんなに可能性が低くたって、身の危険があったって、いるかもしれない誰かを見捨てる事なんて出来ねぇ。…そうだろ?二人共」
『…それは……』
意地を張ってる訳じゃない、穏やかで落ち着いた表情のうずめさんにそう言われて、わたしもお姉ちゃんも口籠る。
だって、その通りだから。わたしもうずめさんの立場なら、きっと同じ選択をしているから。…だから、わたし達には止められない。
「け、けどさ、皆はうずめに着いてきたんだよ?そのうずめが来なきゃ、皆不安になるんじゃないの…?」
「大丈夫だって。リーダーってんならきっとそりゃ海男の方だし、皆だってこの次元で生きてきたんだ。戦えなくても、心まで弱いなんて事はねぇよ」
「…困ったね…先んじてそういう事を言われてしまうと、オレ達には止め辛くなってしまう。けどうずめ、これだけは言っておくよ?確かにオレは、皆の纏め役だけど…皆にとっての心の支えは、間違いなく君の存在だよ」
「…ありがとな、海男。そう言ってもらえると…それだけで、すっげぇ勇気が湧いてくる」
食い下がる大きいお姉ちゃんの言葉も、うずめさんは穏やかに否定。次に口を開いたのは海男さんで…けれど、声音からはすぐに伝わってきた。海男さんは、止めようとしているんじゃなくて、頑張れとエールを送っているんだって。海男さんは、背中を押しているんだって。
「…うずめ……」
「んだよ、しゃきっとしろしゃきっと。それとも、ウィードは俺が心配だってか?」
「そりゃ、心配に決まってるだろ…。…けど、止めたいかって言うと…止めたくは、ない。だってうずめは…ここで妥協して安全を取るような女神じゃ、ないもんな」
「へへっ、そういうこった。何たって俺は、格好良い女神なんだからな」
「……あぁ。そうだ、うずめはそういう女神だよ。だから…そうだな。俺も、うずめの事は止めねぇよ」
「うん?何だよ、一人で納得したみたいな顔して…やっぱ変な男だよなぁ、ウィードって」
「うっせ、個性的なのはお互い様…っていうか、皆そうだろ」
最後に冗談を言い合って、にっと笑ううずめさんとウィードさん。そのウィードさんの口振りには、どこか含みもあるような雰囲気があって…それが何なのかは分からないけど、やるべき事は決まってる。…そんな顔を、ウィードさんはしていた。
「皆…もう、これじゃわたしがネガティヴ思考みたいじゃん…明るく楽しく賑やかに、がわたしのモットーなのに……」
「あはは…ここはさ、うずめを信じようよ。っていうか、信じてほしいな。うずめを…自分の信念を貫く時の、女神の強さを」
「……そうだね、うずめの信念は強いんだもんね…だったらうずめ、次に会う時は絶対元気な顔を見せてくれなきゃ駄目だよ!もしその約束を破ったら、二年連続夏休みイベント参加禁止の刑だからねっ!」
「いやそれ違う次元の俺じゃねぇか!後、二年目は登場してないだけで、別のイベントに参加してるし!…ったく…いいぜ、どんな罰でもどんとこいだ。その約束、破る気なんてないんだからよ」
最後まで、大きいお姉ちゃんはうずめさんが残る事に賛成じゃなかった。だけどお姉ちゃんからの、「信じてほしい」という言葉を聞いて、遂に大きいお姉ちゃんの顔にも戻る笑顔。その言葉も、最後は賛成してくれた大きいお姉ちゃんの思いも背中を押す力になったみたいで、うずめさんもまた力強く言い放つ。
これでは、話は決まった。後はもう、皆さんを連れて戻るだけ。うずめさんを、信じるだけ。
「大変な時は、呼んで下さいね。わたし達、いつでも駆け付けますから」
「呼ぶも何も、この施設壊れたら呼べねーんじゃねーの?」
「もう、そういう事言わないの。ほら扉開く開く」
「ははっ、そうなっちまったら頑張って叫ぶしかないかもな。…じゃ、早速行くとするよ。また後でな、皆!」
やる気に溢れた笑みを見せて、うずめさんは背を向ける。崩壊を続ける街の中心部へと向かって、歩き出す。
その姿を、わたし達は見送った。最後に言った、「また後でな」って言葉は、必ず自分もここでやるべき事を果たして、信次元へ行くって意思表示なんだと思いながら。
「…行ってしまったね、うずめは」
「だね。くろいーすん、扉の方はどう?」
「あーはいはい、出来てるよ。けど通るならさっさと行け。次元の壁が不安定なのは相変わらずなんだからよ」
見送りを終えたわたし達が振り向けば、そこにはもう次元の扉が完成済み。ここを潜れば信次元で…けれどいきなり海男さん達が出てきたらやっぱり驚かれるだろうから、最初はお姉ちゃんが入る事に。
「じゃ、信次元に出たら皆が来るまで一度待つから、勝手にどこか行かないでね?それと、不安な事があったらすぐに言ってね?」
『はーい』
「うんうん、なんか引率の先生になった気分だね。それじゃあ皆、わたし達の信次元にレッツ……」
「…待ってくれ、皆」
快活にお姉ちゃんが右の拳を上げようとしたところで、待ったをかけた一つの声。
それは、しっかりとした男の人の声。強い意思の籠った言葉。その声に、わたし達は振り向いて……
「皆、頼みがあるんだ。…いや、違うな。俺は…やりたい、事があるんだ」
声の主、ウィードさんは…凄く凄く真剣な顔で、わたし達に向かって言った。ウィードさんが思う、やりたい事を。ウィードにとっての…やらなくちゃいけない事を。
今回のパロディ解説
・「〜〜心の友よーっ!」
ドラえもんの登場キャラの一人、ジャイアンこと剛田武の代名詞的な台詞の一つのパロディ。なんとなーくですが、数年前にもこれでパロディをした気がします。
・某有名作品の二作目第一話のタイトル
機動戦士ガンダムZの第一話タイトル、黒いガンダムの事。黒いいーすんと言うと、闇落ちしたイストワールみたいだすね。実際原作じゃそんな感じの設定らしいですが。
・「〜〜二年連続〜〜参加禁止〜〜」「違う次元の〜〜してるし!〜〜」
メガミラクルフォースにおける、夏(水着)イベントの事。来年は…どうでしょうね。三度目の正直ではなく、登場しない事をお約束のネタにしてきそうな気もします…。