超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第九十話 今は姿が見えずとも

 もう一人のうずめさん達にしても、もう一人のイリゼさんにしても、今のままじゃ勝ち目は薄い。だから少しでも力の差を埋める為に、各国の皆さんの不安を煽り、シェア率に悪影響を及ぼしているサイトの件を何とかしよう。…会議でそう決まって、解散してから数十分後。あの大陸発生で物理的な影響が起きた場所がないか確認する為、出ようとしていたわたし達の下へ、ある連絡が入ってきた。

 

「ねぷちゃぁん、ねぷぎあちゃぁん、無事で良かったよぉぉ…!」

「お、おおぅ…心配かけてごめんね、ぷるるん……」

「もう…昨日の時点で交信出来るようになっていたなら、すぐに連絡してくれればいいのに……」

「す、すみません……」

 

 いーすんさんに呼ばれて戻ってみれば、連絡してきた相手というのは神次元のプルルートさん達。プルルートさんは安心からかいきなり涙目になっていて、ピーシェさんには早速軽く怒られちゃって…でもそうは言いつつも、ピーシェさんの表情は柔らかい。…やっぱり、ピーシェさんって割と分かり易い人なのかも…。

 

「連絡するつもりではあったんですよ?ただ、こちらも立て込んでいた…というか、状況的には悪化すらしていまして……(−_−;)」

「悪化?…って、イリゼと何か関係があるの?」

「え…?どうしていきなり、私が…?」

「どうしてって…貴女の心、次元越しでも一瞬で分かる程曇ってるんだもの。何か、あったのよね?」

 

 そう言って、イリゼさんの事をじっと見つめるセイツさん。流石はセイツさんと言うべきか、ものの数分足らずで今のイリゼさんの事を見抜いた様子。

 

「それは…うん、あったよ。信じられない、想像もしなかった事が。けど、今はもう大丈夫」

「そんな事ないでしょ。わたしには分かるわ。イリゼが、全然大丈夫じゃないって事が」

「そんな事ないって。昨日はゆっくり寝て、起こった事の整理も出来たし」

「だけど、イリゼの心はそうは言ってないわ」

「心って…セイツ、多分セイツは心配し過ぎだよ。そう思ってもらえる事は嬉しいけど、現に私は……」

「だから、その今の貴女を見て言ってるの。ね、イリゼ。あった事、思った事、わたしに話して。わたしは全部……」

「あー、はいはい。そういう優しさは良いと思うけど、一回後にしてくれる?交信が復活した、あぁ良かったね…で済むような話じゃないでしょ?」

「うっ…そ、そうね……」

 

 見つめたまま話すセイツさんに対して、イリゼさんも見つめ返しながら自分は大丈夫だと言葉を返す。けどそれじゃセイツさんは全然納得しないみたいで、イリゼさんの方も「そんな事言われても…」って感じで、二人のやり取りは平行線。

 と、そこでセイツさんにストップをかけたのはピーシェさん。物凄く真っ当な指摘にセイツさんは何も言えず、それにわたし達は苦笑い。

 

「では、わかっている範囲でいいので、そちらで起こった事を教えてもらえますか?(・ω・`)」

「あ、はい。ではわたしから説明を…

(´・ω・)」

 

 二人で同じような顔文字を使った後、こっちのいーすんさんが神次元のいーすんさんへと起こった事を掻い摘んで説明。

 四天王の事、犯罪神の事、もう一人のうずめさん達の事、現れた大陸の事…そして、もう一人のイリゼさんの事。半分位は神次元の皆さんにとって全く知らない話だから、いまいちピンと来てない感じだったけど、レイさんと大陸の話では全員が一転して深刻そうな顔に。

 

「タリ…確かにレイは、大陸の事をタリって呼んだのね?」

「うん。確かセイツが言ってたのも、タリだったよね?」

「えぇ。あいつ、自分で国民を蔑ろにしてタリを衰退に向かわせた癖に、今度は信次元でタリを再興しようっての?…厚顔無恥にも程があるわね、あの女は……」

「うーん…やっぱりねぷちゃん達の所に来たレイさんって、いなくなっちゃったレイさんなのかなぁ…?」

『…いなくなった?』

 

 案の定セイツさんが不愉快さを露わにする中、プルルートさんが口にした気になる一言。それにわたし達が首を傾げると、ピーシェさん達は「あれ?」と顔を見合わせる。

 

「もしかして…誰からも聞いてない?」

「え、と…いなくなった云々という話は、聞いてない…と、思います」

「あー、そっか…言ってなかったかぁ……」

「あはは〜、ぴーしぇちゃんのうっかりさん〜」

「えぇ…ぴぃだけじゃないのに……」

「皆が皆、無意識にもう知ってるだろうと思っちゃったパターンね…」

 

 おずおずと尋ねてきたピーシェさんの言葉にわたしが応えると、あちゃー…とピーシェさんは自分の額に右手を当てがう。それからピーシェさんは佇まいを正し、再び視線をわたし達の方へ。

 

「…れい…さんは、元々は七賢人の一人だったの。…あ、じゃない…女神としての記憶も力も失ってた状態で、七賢人を立ち上げたらしいから…まあとにかく女神としての自分が蘇るまでは七賢人の一員だった。…まぁ、その頃はまだぴぃも小さかったから、覚えてない事も多いんだけど……」

「ですがある時、超次元の彼女から力を分けられる形で女神としての自分を取り戻し、この次元を破壊しようとしました。そしてその行動が決定的となり、七賢人は完全に解散する事となったのです( ̄^ ̄)」

「で、当然当のレイも、わたし達が打ち滅ぼしたわ。こっちのレイも、超次元のレイもね。だけど、倒した筈のレイの姿はどこにもなかったの。…まぁ、今思えば最初の時もわたしと皆が滅したのに生き残っていた訳だし、そういう奴なのかもしれないわ。はっ、あいつは人の事を虫ケラ呼ばわりするけど、あいつのしぶとさの方がよっぽど……」

「せーつ、次に言う内容によっては流石に嫌うかも」

「うん、あたしもそういうのは嫌かなぁ」

「……なんでもないです…」

 

 リレーの様に行われる説明。三番目に口を開いたのはセイツさんで、レイの事を何か物凄く…恐らく女性ならほぼ全てが憤慨するような生物に例えようとしたけれど、二人からかなり本気のトーンで「止めて(意訳)」と言われ、セイツさんは一転してしゅんとした感じに。…どうしよう、なんて反応すれば良いのか全然分からない…。

 

「えー…つまり、そちらにいたレイさんは最終的に行方不明となった…結論としては、これで正しいですか?(・・;)」

「あ、はい、そういう事です。もう…駄目ですよセイツさん、あまり長々とは交信していられないんですから( ̄◇ ̄;)」

「はい……」

「はは…で、あれか。そのいなくなったレイが、こっちに現れたレイなんじゃ…って事をぷるるんが言った訳だね」

「うん〜。でも、超次元のレイさんもいなくなっちゃったし、そうじゃないのかも〜」

 

 ちょっと脱線はしちゃったけど、とにかく神次元にいたレイさんの事は分かったし、もしかするとこっちに現れた彼女は神次元か超次元出身なのかもしれないって事も判明した。それだけだったら、別に何か変わる訳じゃないけど…とにかく強いって事以外は殆ど分からない以上、どんな事でも知っておいて損はない。

 

「…こほん。ともかく、皆の安否が分かって良かったわ。それに状況も分かったし…やっぱりわたし達も、信次元に行かない?流石に全員で行く訳にはいかないにしても、せめてわたしとピーシェだけでも……」

「…お気持ちはありがたいです、セイツさん。ですが先程の説明でも触れましたが、こちらは現在シェア率の回復を第一目標にしています。そしてその段階で皆さんがこちらに来るとなると……」

「…そっか、シェアが分散するのは得策じゃないものね…」

「申し訳ありません。もう少し落ち着いていれば、また違うと思いますが……(◞‸◟)」

「ううん、わたしこそ短絡的だったわ。それに考えてみたらただでさえもう一人のイリゼが現れたっていうのに、更にわたしやピーシェまでってなったら、シェア関係無しに混乱を広げちゃうだけかもしれないものね」

「でも、そう言ってくれる人がいるのは心強いよ。何かあれば皆を頼るし、だからその時はお願いね?」

「勿論っ!…あ、ご、ごほん。…これは他人事じゃないし、ぴぃ達も協力は惜しまないよ」

 

 こんな感じで通信が復活してから一発目の交信はお互い最低限話すべき事が済んで、わたし達の方も神次元とまた繋がったんだって事に安堵。後はセイツさんが言っていた事だけど……

 

「状況を考えれば、じっくり事を進める…って訳にもいかないんだよね。これ以上何かが起こらない内に少しでも好転させたいし、一足先に私は行くね。皆、心配してくれて嬉しかったよ」

「ふふっ、当然じゃない。イリゼの事なら…って、ちょっと!?話は!?イリゼー!?」

「あらら…行っちゃったね…」

「うぅ…そんな、酷い……」

 

 くるりと背を向けてこの場を後にするイリゼさん。それをつい和やかに見送ってしまったセイツさんは、ノリ突っ込み気味に待ったをかけるけど、もうその時点でイリゼさんは立ち去った後。多分セイツさん的には、本気で心配しての引き止めだったんだろうけど…普段の言動が言動だからか、捨てられた女感が微妙にあったセイツさんでした…。

 

 

 

 

 昨日はこっちに来た時一度会っただけで、その後は会っていなかったから、ラステイションに戻る前に一度顔を出しておこう。そう思って、海男さん達がいる階へと向かったアタシ。けれど、そこには既にロムとラムがいて……

 

「ふー…みんなって、元気いっぱいよねー」

「うん…ちょっと、つかれちゃった(はふぅ)」

「いやアンタ達も十分元気一杯だっての…なんで皆揃いも揃ってアタシに乗っかろうとしてくるのよ…」

「…ユニちゃん、やさしいから?」

「そういえば、前にタコつかまえた時も、ユニはタコにモテモテだったわよね」

「うっ…あの時の事は思い出さなくていいから…!」

 

 これから自国に戻ってやれる事を…ってところだったのに、早速アタシは疲れていた。いきなり疲弊させられていた。

 

「…まぁでも、元気がないよりは良いか…アンタ達もルウィーで頑張りなさいよ?」

「ふふん、そんなの言われるまでもないもんねー!」

「ユニちゃんも、がんばってね…?」

「…こういうところは正反対よねぇ、アンタ達って…」

 

 いちいちアタシと張り合ってくるラムと、素直に同意してくるロム。容姿は瓜二つで、好き嫌いも大概共通してるのに、偶に真逆の部分があるものだから、それがアタシ的には何とも不思議。……いやまぁ、双子であっても別人な訳だし、むしろ一切違いがない方がおかしいけど…。

 とまぁ、そんなやり取りをした後アタシは二人と別れて、別の階へ。エレベーターから降りて、一つ目の角を曲がって、こちらをじっと見ていたステマックスを目にしながら目的の部屋へ……

 

「…って、わぁぁッ!?ステマックスいたの!?影薄ぅっ!」

「えぇぇッ!?い、いきなり酷くないで御座るか!?」

 

 ステマックスが立っている。視認してからその事実に気付くまで、数秒かかってしまった。そのせいで、不意打ちを受けた時並みにその場から「びくぅ!」…と飛び退くアタシ。…び、びっくりしたぁぁ……。

 

「う、それはごめん…。…けど、ほんとアンタ影薄いわね…幻の6人目とかやれるんじゃない…?」

「……ステマのバスケ…中々悪くない響きで御座る…」

「いや、まぁ…(満更でもなさそうね…)」

 

 驚きはしたけれど、別にステマックスがいる事自体は変でも何でもない。ほんと、さっきの存在感のなさは凄まじかったけど。…ってか、ステマックスは忍者らしいし、存在感がないっていうか…消してた?

 

「…で、アンタは何してた訳?」

「べ、別に…何もしてないで、御座る…」

「なら、どうして壁を背にしてたのよ?何か隠してるの?」

「うっ…な、何も隠してなんてないで御座るよー…?」

「何その怪しい反応…まさか、ビニ本とやらを……」

「ち、違っ、違うで御座るよ!?拙者が隠しているのはそういうものでは……あっ」

 

 どうも怪しいステマックスを問い詰めると、割と早期にステマックスはボロを出す。……それでいいのか、忍者…。

 

「……せ、拙者ちょっとセンサー類のメンテナンスに…」

「待ちなさい。…あるのよね?何かしら、隠してるものが」

「…………」

「顔背けても誤魔化せな…って半回転した!?怖ぁ!?……ってあぁそうか、ロボットだから出来るのか…」

「うぐっ…首の内部機構が……」

「と思ったらやっぱり無茶だった!?…ほんと何がしたいのよアンタ…」

「うぅぅ…は、話したい事があったので御座る…けど、どう話すべきか迷っていて…丁度その最中にユニ殿が向かってきたで御座るから、つい……」

 

 下手な誤魔化しで乗り切ろうとした結果、首を痛めた(?)様子のステマックスに呆れていると、躊躇いながらもステマックスは話し出す。だからアタシも呆れの気持ちを心から消し、ステマックスの顔を見つめる。

 

「…内容がちゃんとしてるなら、話し方はどうだって聞くわ。だから話して頂戴」

「じゃ、じゃあその…う、えっと……」

「…………」

「……さ、サイトの…件…サイトの件より…他の事を、優先した方が…良い、と…思うで、御座る…」

「え…?」

 

 ステマックスが話したかったのは何なのか。それを考えながら待つアタシへ、ステマックスが口にしたのは少々予想から外れた言葉。思ってもみなかったステマックスの言葉に、一瞬呆気に取られるアタシ。

 

「他の事を優先って…どうしてよ?もう少し時間があれば、突き止められるかも…って事?」

「そ、そういう事ではないので御座るが…」

「なら何?わざわざ言うって事は、何かしら理由があるんでしょ?」

「それは、その……だっ、ぅあ…と、とにかくサイトの件を最優先にするのは止めるで御座る…っ!」

「…ステマックス、アンタ……」

 

 相変わらずぼそぼそした声で、具体的な事も言わないで…けれどステマックスはアタシの目を見つめ返して、どこか必死さを感じられる雰囲気で、アタシへと訴えてくる。

 どうしてなのかは分からない。だってステマックスは言わないから。だけどその口振りは、サイトの件を突き止めてほしくないような感じもあって……

 

(…何か、事情があるって事……?)

 

 口には出せない何かか、自分じゃ伝えられない何かしらがあるんじゃないか。…いつもの小さい声とはかけ離れた今のステマックスの言葉には、そう思うだけの『重み』があった。

 

「…アンタの気持ちは分かったわ」

「……!ゆ、ユニ殿…!では……」

「けど、これも重要な事なの。今の状況から勝つ為には、信次元を守る為には、今出来る事をやらなきゃいけない。アンタが適当な事を言ってる訳じゃないってのは伝わったけど…『とにかく』じゃ、アタシもお姉ちゃん達も納得出来ないわ」

「……っ…そうで、御座るか…いや、当然で御座る…そりゃ、そうで御座るよね……」

「…ねぇステマックス、アタシは……」

「…ユニ殿の言葉には、強い意思と気概があるで御座る…やはり女神は、違うで御座るな…」

 

 だけどそれでも、思いは伝わってきていても、アタシは頷けない。そう出来ないだけの理由があって、逆にステマックスの言葉には、納得させられるだけのものがなかったから。

 そしてそれはステマックス自身分かっていたようで、ふるふると悲しげに首を横に振る。その様子に、アタシは「言葉は受け入れられないけど、アンタを否定する気なんてない」…そんな言葉をかけようとして…止めた。ステマックスの言葉の言外に、自分への否定を感じたから…代わりに言うのは、「お節介」。

 

「…当然よ、アタシはラステイションの女神なんだから…って、言いたいところだけど…アタシだって、前はもっと未熟だったわ。今だってまだ未熟よ。だけどアタシには、競い合える仲間が、尊敬出来る人達が、信頼してくれる国民がいて……そして、アタシの道を問い質して、アタシが真に目指す在り方の切っ掛けになってくれた敵がいた。そういう人達に恵まれたから、今のアタシがあるの」

「……敵…それは…」

「えぇ、あいつよ。ステマックスからしたら、『…敵……?』って感じかもしれないけど。…アンタにも、一人位はいるでしょ?仲間か、友達か、それとも敵かは分からないけど…自分にとって、『力』になってくれる人が。なら、そこにある思いを胸に頑張ってみなさいよ。そしたら何か、変わるかもしれないわ」

 

 そう言いながら思い出すのは、前の自分。弱くて、情けなくて、ギョウカイ墓場でお姉ちゃんや皆さんへ迷惑しかかけられなかった頃の、そこから焦ってばかりで大切なものを見落としていた頃の、自分自身。そんなアタシが、少しずつでも成長出来ているのは…皆のおかげ。

 正直、アタシはまだ偉そうな事を言えるだけの存在じゃないと思う。お姉ちゃん達なら、きっと堂々とした言葉になっているんだろうけれど…アタシの場合、背伸びしてる感がある気もする。でも、分不相応でもいい。背伸びでもいい。それでちょっとでも、ステマックスに感じてもらえるものがあるなら。

 

「…ユニ殿…拙者、あまり交友関係は広くないので御座るが……」

「あっ…う、その…ごめん……」

「い、いや拙者こそ申し訳ないで御座る!ユニ殿からの折角の言葉に水を差すなど、拙者一生の不覚…ッ!」

「そ、それは言い過ぎでしょ…もうちょっと重要な場面に取っときなさいよ、その言葉は……」

 

 大袈裟過ぎる自責に再び呆れてしまうアタシ。するとステマックスは一度言葉に詰まり、それから言う。

 

「……ユニ殿…どうしてユニ殿は、拙者を気にかけてくれるので御座るか…?いや、そもそも…どうしてこんな拙者と、真剣に話を……」

「ま、性格はさておきアンタをここに招く切っ掛けになったのはアタシだからね。それに…アンタみたいな小心者で、でも頑張ろうって気持ちはあるやつの事は、放っておけないのよ」

「……放っておけない、で御座るか…ははっ、女神に…女の子にそう言ってもらえるなんて…ちょっと前まで、想像もしていなかったで御座る…」

 

 包み隠さず言えば、話し易さはアフィモウジャスの方が上。彼ははきはきしてるし、アレな部分もあるけど何を考えているのかも分かるし。その点ステマックスは逆だけど…緊張する場でも、本人的には苦手な事でも、頑張ろうとはする。昨日だって、一応「ここからならやれる」って提示はしていた。だから、アタシは気にかけたいって思ってる。

 そんな気持ちが伝わったのか、ステマックスはちょっぴり笑う。顔は覆面っぽくなってるから表情は変わらないけど…声音には、明るい感じのものがあった。

 

「…ユニ殿、拙者も…拙者も、やれる事をやってみたいと思うで御座る。駄目かもしれないで御座るが…人任せよりは、失敗しても納得出来そう…そんな気が、したで御座るから」

「えぇ、頑張りなさいステマックス。あぁ、それと…」

「……?」

「今アンタ、普通に喋れているわよ」

「……!ゆ、ユニ殿……そ、そう言われたら逆にっ、変なプレッシャーがかかるで御座るよぉぉ…!」

「えぇー……」

 

 大分マシな雰囲気になって、気付けばステマックスは堂々とした立ち姿。これ以上の言葉は不要だと思ったアタシは、最後にエールの言葉を一言。それを言い終えて、アタシが立ち去ろうとすると、ステマックスは振り返って……数瞬間前までのしゃんとした姿はどこへやら。元のおどおどした感じに戻っていて…アタシは今日何度目か分からない、呆れの感情を抱くのだった。…いや、まぁ…分かるわよ?無意識に出来てたものが、出来てるねって言われると逆に「それを維持しなきゃ…!」…って思っちゃうせいで、上手く出来なくなるなんて誰でも起こりうる事だし。…けど、それでも…ねぇ…?

 

(…まあでも、そっちの方がステマックスらしいか。…らしいかって言っても、アタシも別に長い付き合いでもないんだけど)

 

 駄目だこりゃ、とオチを付ける感じに言いたくなったアタシだけど、同時にちょっと笑ってしまう。こういうのも含めて、こいつは放っておけないのよね…って感じに。

 

「…さて、ステマックスに偉そうな事言った訳だし、アタシも気の抜けた事は出来ないわね……」

 

 元からそんなつもりはないけど、偉そうな事を言った以上は…と、アタシの気持ちは引き締まる。アタシはサイバー系の知識なんて人並みにしかないし、そっちの面じゃ成果なんてあげられないだろうけど、『女神』としてはやれる事がある。どこの誰とも分からない奴の言葉より、アタシの言葉を信じなさいって、皆に示す事は出来る。そしてそれをアタシで、アタシ達皆で積み重ねていけば、結果はきっと付いてくる……

 

「あ、ユニちゃーん」

「わっ、ネプギア!?また!?」

「え、ま、また…?何が…?」

 

…間が悪いというか、妙な偶然は続くというか…ステマックスと別れてから少しした曲がり角で、今度はネプギアと遭遇した。…これ、二度ある事は三度あるのパターンになったりしないわよね…?

 

「あ、うん、こっちの話…。…で、何か用事?」

「…用事がなかったら、話しかけちゃ駄目…?」

「そ、それは…別に、駄目じゃないけど……」

「まぁ、今回は普通に用事があるんだけどね」

「へっ…?あ、アンタねぇぇ!」

 

 しれっとからかわれた事に憤慨するアタシだけど、ネプギアの方はといえば謝りつつも明らかに表情は笑ったまま。くっ…ネプギアの癖にあくどい事を…!

 

「ふんっ…」

「ご、ごめんって…というかそもそも、普段はユニちゃんの方がわたしをからかってくるよね…?」

「今のはタチが悪いんだっての…。…それで、何の用よ?」

「あ、うん。前に民間からも腕の立つ有志を集めて、ネット上で可能な限りの人海戦術をかけてみるのはどうかって案があったでしょ?その時は現実的じゃないって結論になったけど、その時より今は目覚めてる人も多いし、集まってる情報も少しは増えてるし、何より今のうちに打てる手は打った方が良いんじゃないかって、わたしとしては思うんだけど……」

「…アタシからの意見も聞きたいって事?」

「そういう事。ユニちゃんの考えもそうだし、ラステイションの事情は、わたし自身で考えるよりユニちゃんに訊く方が絶対良いもん」

 

 早速からかわれた事はむっとしたけど、それはそれ。真面目な話を突っ撥ねるつもりなんてないし、打てる手は打った方が…っていうネプギアの考えにもアタシは同感。だからアタシもアタシの意見を言って、二人でどうするべきか歩きながら考える。

 強大な敵の後は、実体のない問題。見えてこない敵。だけど、アタシ達のする事は変わらない。だってそれもこれも、全て信次元の平和を取り戻す為の戦いなんだから。




今回のパロディ解説

・「うぅ…そんな、酷い……」
ドラクエシリーズにおいて、何度も出てくる台詞のパロディ。心の輝きとか皆大好きとか周りを翻弄するような事を言いつつも、実は翻弄され易くもあるのがセイツです。

・幻の6人目、ステマのバスケ
黒子のバスケ及びその主人公、黒子テツヤの事。ステマのバスケ…しれっとバスケを宣伝したりするんでしょうか。或いは宣伝する為の行為がバスケとかでしょうかね。

・駄目だこりゃ、とオチを付ける感じに〜〜
ドリフターズのリーダー、いかりや長介こと碇矢長一さんの代名詞の一つのパロディ。もしもステマックスが前向きになったら…例えるなら、こんな感じですかね。
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