超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
信仰を得る方法は、特に決まっている訳じゃない。為政者として国の為になる政策を進めるのも良し、守護者としてモンスターや秩序を乱す存在から国と国民を守るのも良し、街に出て身近に触れ合うというのも良し……得るのが物理的なものではなく気持ちな以上、決まった形なんてない。何かをしなければではなく、自分に向いている事で信仰…即ちシェアを得て、力に変えるのが女神という存在。
但しそれはあくまで、普通の女神の場合。自らが治める国があり、統治者としての立場を持つ場合であって、治める国のない私に、統治者としての手段は取れない。得られるのは守護者、或いは偶像としての信仰であり、皆に比べてどうしても手段は限られてしまう。
とはいえ、それは今に始まった事じゃない。初めからそれは分かっている事で、別に私は困ったりしない。それが、今の私の普通であり…自分に出来る事をという今では、皆と同じなのだから。
「そうだったんですか…心中、お察しします」
「イリゼ様…やはり私が悪かったんでしょうか。この状況で大変なのは妻も同じなのに、自分の事ばかり……」
「えぇ、確かにそれが奥さんを傷付けてしまったのかもしれません。けれど貴方の言葉からは、奥さんへの愛が、思いやりが感じられました。そんな貴方の思いであれば、まだ奥さんには届く筈です。だから一度、ゆっくりと話してみて下さい。もし必要であれば、私もお口添えしますから」
「い、いえ!女神様に背中を押して頂けただけでも十分です!妻ともう一度、話してみようと思います!」
「はい。貴方が奥さんとの関係を修復出来る事、お二人がまた幸せに暮らせる事を祈っていますよ」
テーブルを挟んで向かいに座る男性の手を、言葉と共に両手で握る。それから立ち上がった男性を、笑みを浮かべる事で見送る。
数時間前、私はプラネタワーから街に出た。目的は直接街の人から話を聞いて、何に困っているのか、国や女神が出来る事がないかを知る事であり、尚且つその場で私が出来る事があれば、可能な限り行う事。それが私に出来る事で、これまでも…ずっと前から、私はそうしてきた。
そんな中、私はある喫茶店に立ち寄り、店主さんに話を聞いていた。それが終わったところで、お客さんの一人から悩みを打ち明けられ、それを聞いている内に他の人も集まっていき…気付けば出張相談室状態。今も人だかりが出来ていて、相談待ちは最早二桁。
「…すみません、営業中なのに……」
「いえいえ、むしろ集客に繋がっており助かっています。あ、紅茶のお代わりお待ちしますね」
多くの人が私を頼りにしてくれている。それはありがたい事とはいえ、これは完全に想定外。今は良くてもこれ以上人が集まれば流石に営業にも支障が出てしまうだろうし、この喫茶店を目当てにやってきた人からすれば、これは邪魔な人だかりな筈。
けれど、途中で打ち切る事はしたくない。一人でも多くの人の話を聞き、その人の力になりたい。だから場所を移動するか、それとも別の手段を取るか…そう思っている時だった。
「ちょ、ちょっと…次は、私の番なんですが…」
「す、すみません!けれど一言だけ、一言だけでいいので、オリジンハート様に伝えさせてくれませんか…?」
「…一言なら、まぁ……」
列の先頭に立っていた女性が先に座ろうとしたところで、私から見てテーブルの側面側に出てきたのは一人の女の子。何かあったのか、と思いつつ私が見やると、その子は一つ深呼吸をした後言う。
「あ、あの!昨夜は母がありがとうございました!お母さん、本当に感謝していました!」
「…昨夜…?母…?」
「はいっ!」
かけられたのは、感謝の言葉。それも、かなりの思いが詰まった言葉。恐らくは私を見かけて、それで偶然に興奮してこの子は来たんだろうけど、私は彼女の言葉に困惑した。
何故なら、思い当たる節がないから。昨夜私は、この子の母親に感謝されるような事なんてしていない筈だから。
「ここ最近、母は本当に元気がなかったんですけど、イリゼ様のおかげで元気になって……って、これじゃ一言を余裕で超えちゃってますよね…!し、失礼しましたっ!」
忘れているのか、いやまさか昨夜の事を忘れるなんてある訳がない。ならば、人…もとい女神違いか。母親が、名前を間違えてしまったのか。そんな思考を私が巡らせていると、その間に少女は頭を下げて立ち去ってしまった。…どうもあの子は、せっかちな性格らしい。となると母親が間違えたのではなく、あの子が聞き間違えたのかもしれない。
「…え、と……」
「あ、次は貴女の番でしたね。さあ、どうぞ」
結局なんだったのかは気になるけれど、だからと言って目の前の人達を後回しには出来ない。だから私は、一人一人の悩みを聞き、女神としての言葉を返し……そうして気付けば、喫茶店に入ってから数時間。漸く私はお店を出て、プラネタワーへの帰路に着いていた。
「いやぁ、イリゼもすっかり皆の女神だねぇ。長い付き合いのわたしとしては、感慨深いものがあるよ…」
「あはは。でもこの調子だと、わたし達からイリゼさんに鞍替えしちゃう人が出てくるかもね」
「うっ、た、確かに…。しまった、イリゼは伏兵でもあった……」
私の左隣を歩くのは、ネプテューヌとネプギア。二人は偶然喫茶店の前を通りかかって私に気付き、二人も出張相談室に参加してくれた。
今私が帰れているのも、二人が来てくれたおかげ。でも思い返せば、今日は普段よりも一人当たりの時間が長かったような気もする。何故だろうか。
「…別にシェアは物理的な票じゃないんだし、心配しなくても大丈夫だと思うよ?ネプテューヌとネプギア、両方を信仰してる…って人も沢山いるだろうし」
「え、あ、うん。そ、そうだよね…」
「でも、だからって気を抜くのも駄目だからね?やっぱりプラネテューヌに住んでる人の多くは、私よりネプテューヌやネプギアを信頼してるんだろうから」
「だ、だよねー…。ネプギア、わたし達も頑張ろー…」
「う、うん。シェアもそうだけど、わたし達がいるから大丈夫…って思ってもらえるようにしないとね…」
真面目なネプギアは勿論の事、何だかんだちゃんと守護女神として支持されてるネプテューヌだって、こんな事は言うまでもないとは思うけど…二人へのエールって意味も込めて、私は二人へ言ってみた。
でもやっぱり注意するみたいな感じになっちゃったのか、二人は何とも言えない表情に。
(もう少し、気を遣った言い方をするべきだった…?それか、冗談を交えて……)
どんなに愛情が籠っていようと愛の鞭は所詮暴力であるように、与えるものとそこに込めた思いは別物。ちゃんと思いが伝わってほしいのなら、手段もよく考えるべきで……
「……えっ…?…あ……」
そう、考えていた時だった。視界の端、遠く離れた空の彼方に、何かが飛んでいた事に。
あまりにも距離が離れていて、その姿を視認する事はほぼ不可能。けれど私には直感的に、内側から答えが湧き出るように、それが何なのか…いや、誰なのかが理解出来た。
──私だ。あっという間に見えなくなった、凄まじい速度で空を駆けていったその存在は、もう一人の私以外の何者でもない。そして彼女の存在により、私は気付く。
(ああ、そうか…あの子の母親が感謝していたのは、もう一人の私だったんだ……)
理由は分からない。何もしたのかも知らない。けれどそれなら、辻褄が合う。もう一人の私も私もオリジンハートなのだから、もう一人の私がいる事は私達以外誰も知らないのだから、もう一人の私を私と勘違いしたとしても、それは至って普通の事。
それともう一つ、今ので判明した。やはりもう一人の私は、人の味方なのだ。あの時姿を消してからは、人に感謝される事をしていたのだ。
「ふ、ふふっ…あぁ、でも……」
もう一人の私は人助けをしている。それは嬉しい。自分の事のように、というか実際もう一人の自分なんだから、嬉しいに決まっている。私の中にある、人を救い、人を愛し、人の幸せを願った
けれどその裏で、分からないという思いも同時に広がる。私の思い描くもう一人の私は間違っていなかったからこそ、あの時の行動が理解出来ない。皆に刃を向けた理由が、どれだけ考えても分からない。
一致する。乖離する。私の思うもう一人の私と、私の見たもう一人の私が。あの時見たもう一人の私と、さっき聞いたもう一人の私が。そんな訳がない。そんな筈がない。もう一人の私はもう一人の私なんだ。私を生み出した私なんだ。なら、あぁ、ああ、嗚呼……
「ちょっ、イリゼ!?どこへ行こうというのだね!?」
「お姉ちゃん口調が変だよ!?いや、驚いてるのは分かるけど!わたしも『えぇ!?』ってなってるけど!」
不意に、斜め後方から掴まれる手首。振り返れば、掴んでいたのは目を白黒させたネプテューヌで、いつの間にか私は女神化していた。女神の姿となり、浮き上がっていた。空へと飛び上がろうとしていた。
「…ごめん…ちょっと、考え事し過ぎた……」
「か、考え事し過ぎたからって女神化する…?元からイリゼって頭フル回転させると思考を途中から言い出しちゃったりするけど、それより重症だよ…?」
「返す言葉もないよ……」
「えぇー…そこは何かしら返してよ…むしろ余計不安になっちゃうじゃん……」
女神化を解き、何かの発作かとばかりに心配する二人へ謝る私。ネプテューヌ的には別の言葉が欲しかったみたいだけど、本当に返す言葉が浮かばない以上はそう言われてもどうにもならない。
それよりも、これじゃいけない。今言われた悪癖ならまだ変な目で見られるだけで済むけど、これは周りを驚かせてしまうし、心配もさせてしまう。ただでさえ私はまだ皆に心配されているのだから、これ以上下手な姿は見せられない。
大丈夫。本当にただ、意識が内に向き過ぎていただけだから。そう伝えて、私は再び歩き出す。
『…………』
「…二人共?どうかしたの?」
「い、いえ……」
数歩進んだところで二人が付いてきていない事に気付いた私は、くるりと振り向く。すると二人は、私を複雑そうな顔で見ていて…けれどその理由は、はぐらかされて結局話してくれなかった。
*
「ふぃー…ねーいーすーん。今は雑務よりも、もっと派手な事とかした方が良くない?」
「確かに、今は長期的なシェア及び国の維持に必要な雑務よりも、シェアの回復に直結するイベントや、国民との直接的な触れ合いの方が重要かもしれませんね(´-ω-`)」
「でしょでしょ?だから一旦雑務は置いといて……」
「いやぁ、感心しました。あのネプテューヌさんが、今や『状況を考えて』『止む無く』雑務の優先度を下げようとするとは…。そう言うという事は、勿論それを方便にサボろうとしてる訳じゃないんですよね?何だかんだ言っても国の事を大切にしているネプテューヌさんなんですから、わたしは当然信じていますよ(⌒▽⌒)」
「……ごめんなさい…ちゃんとお仕事します…」
にこぉ…と表情でも顔文字でも笑ういーすんに言外からの圧力をかけられて、わたしはしょんぼりと謝罪。うぅ…そういう事言うのは狡いよいーすん…どの口が狡いなんて言うんだ、ってのは置いとくとして……。
「全く…今後、それこそ雑務をやっている余裕なんてなくなる可能性も十分あるんです。これも国の運営に必要な事なんです。それは分かっていますよね?( ̄ー ̄)」
「おっと、舐めちゃいけないよいーすん。それ位分かってる……」
「…………」
「…ので、しっかりお仕事頑張ります…」
それ位分かってる。そう言っちゃったもんだから、いよいよ八方塞がりなわたし。不味い…これ以上何か言ったら、更に状況が悪くなる気しかしない……。
…と、思いっ切りいーすんにやり込められているわたしがいるのは執務室。今は丁度いーすんが来たところで…そうだ!…と思い付きで喋った結果がこれだよ、とほほ……。
「…………」
「うーん…えっと、環境部はもうちゃんと機能してるから、これは任せるとして……」
「…では、お願いしますね(´ー`)」
「はいはーい。……って、ん?…いーすん、待って」
「…なんでしょう?(・・?)」
「もしかして、いーすん…元々は、イリゼの事について話したくて来たの?」
真面目にお仕事をやり出してから数分後。暫く佇んでいたいーすんが出て行こうとするのをわたしは見送…ろうとしたけど、出て行く直前に待ったをかける。
くるり、と乗っている本ごと振り向くいーすん。そのいーすんに、ふと感じた事を問いかけると…いーすんの肩が、ぴくりと動く。
「…よく、分かりましたね…もしかして、顔に出ていましたか…?( ゚д゚)」
「同じ姉として、感じるものがあったって感じかなー。でも、そうなら遠慮せず話せばいいのに」
「いえ、それを理由にネプテューヌさんがまた仕事を疎かにしてしまうのは困るので……(ーー;)」
「うっ…し、仕事もちゃんとやるって。…やっぱりいーすんから見ても、イリゼは変?」
「…変、ですね。あからさまに、ではなくむしろ大方は普段通りなのが、逆に気になります…( ˘ω˘ )」
そう言って話すいーすんの顔は、本当に心配そう。いーすんがこんなに思ってくれてるよ、ってイリゼに伝えたら喜びそうだけど…今はそういう話じゃない。
わたしもそう思う。わたしから見ても、あれ以降のイリゼは普通で…だけどぬらりんの時だったり、今日の帰り道の時だったりと、時々イリゼらしくない…ううん、イリゼの精神がどっかに行っちゃってるように感じる瞬間があるから、心配になる。そういう瞬間があるのに、普通に振る舞えていて、言われなきゃおかしいとすら感じないなんて、そんなのただ取り乱してるよりよっぽどおかしい。
「…リフレッシュ、とかそういうレベルの話じゃないよね…しかもイリゼ自覚がないから、話しても理解してくれるか分からないし……」
「…街での様子は、どうでしたか?
(・ω・`)」
「街でも大体は普通だったよ。でもイリゼの…ファンクラブ?…の人達とかなら、わたし達と同じように何か変って気付くかも…ね」
わたしといーすん、二人で頭を悩ませる。どうにかしてあげたいけど、自覚がないんじゃ何か言ってもピンとこないで終わっちゃう可能性が高いし、そもそも話をして何とかなる問題かどうかも分からない。…いつもみたいにネプテューヌ節全開で話せば何とかなる?…そりゃ、そうなってくれれば助かるし、実際イリゼに対しては前に一回それで何とかなったけどさ、わたしはいつも言いたい事を言って、伝えたい思いを伝えて、それが結果的に『何とかなった』に繋がってるだけだもん。最初から計算して言ってる訳じゃないもん。
「…やっぱり、もう一人のイリゼともう一回会わなきゃ解決しないのかな……」
「かもしれませんね…けれど、イリゼ様は今どこにいるか分かりませんし……」
「……困ったさんだね、イリゼって」
「…困ったさんですね、イリゼさんは(。-∀-)」
今、イリゼが心の中で思っている事が分からないし、もしかしたらイリゼ自身それを自覚してないのかもしれない。そんな状態で、一体何をすればいいのか。…そう悩むわたしだけど、これに悩んでいるのはわたしだけじゃない。いーすんもだし、他の皆もイリゼの事は心配してる。自分だけじゃないっていうのは、それだけでも心強くて…わたしといーすんは顔を見合わせ、困ったなぁって肩を竦める。
「…話すだけでも、ほんの少し気が楽になりますね( ´ ▽ ` )」
「だよね。実際には何の解決もしてないどころか、一歩も進んですらいないのに」
「はは…ネプテューヌさん。また何かあれば、どんな些細な事でも教えて下さいm(_ _)m」
「勿論。いーすんも、何かあれば言ってね」
出ていくいーすんに言葉を返して、それからは視線をまた仕事へ。
雑務はつまんないし面倒だけど、考えてみれば大概「こうすれば良い」っていうのが分かってる。考えるべきところはあっても、こういう流れでこうする…っていうノウハウがもう出来上がってる。でも悩みは、心の問題は一人一人、一つ一つが全然違って、同じ方法なんか使えない訳で、そういう意味じゃ案外雑務って楽な事……
「…な訳あるかーいッ!面倒なものは面倒だもんねーっ、だ!……はぁ…」
という訳で、やっぱり雑務はやだなぁ…というところに行き着くわたしだった。
*
ある種物々しい、緊迫した空気を思わせるような内装に、幾つものモニターに表示される多彩な情報。そしてガラス張りの向こうに見えるのは、一面の大空。そんな場所の手前中央、数段高くなった席の上で、豪奢な外見をした巨躯のロボットが笑い声を上げていた。
「ぐわっはっはっはっは!やはり右肩上がりの資本グラフは良いものだ!」
至極愉快そうな彼が見るのは、その言葉通り右肩上がりの折れ線グラフ。その隣のモニターには所有物の推定資産額が表示されており、折れ線グラフはそれを含めた額の様子。
「…だがしかし、400億か…それだけの金があれば、一体どれだけの夢が叶えられる事か……」
一頻り笑った後、ふっと声のトーンを落とすロボット…否、アフィモウジャス。
ここは、彼が拠点としているある建造物。謂わば彼にとっての城であり、同時に彼が有する中で最も価値を持っている物。
「……将軍」
「ぬ、来たなステマックスよ。遅かったではないか」
「少し、野暮用があったので御座る」
アフィモウジャスがもしも400億という莫大な額を手に入れたら…と妄想を巡らせる中、自動で開く後方の扉。そこから入ってきたのはステマックスであり、アフィモウジャスはくるりと彼の方を振り向く。
「野暮用か…っと、そうじゃステマックス。見よ!先日話した女神のアイドル姿、その画像を遂に大量入手したぞ!」
「な、なんと…!おぉぉ…これが、例の……!」
「ふっふっふ…だがまだ驚くのは早いぞ?…なんと、何枚かだが際どいショットの画像もここに……」
「……!?そっ、それはその……」
「はっはっは、相変わらずステマックスはピュアじゃのぉ。ならばこの本編シリーズとは愛の表現がかけ離れているにも程がある、夢オチを設定に組み込んだエロ小説などは……」
「それは色んな意味で遠慮しておくで御座るよ!?」
途端に顔付きの変わったアフィモウジャスが投げ掛けるのは、まるで思春期の少年かのような話題。段々と過激になっていく話にステマックスは目を白黒させ……ごほんと一つ、仕切り直しと照れ隠しの両方を兼ねて咳払い。
「…ステマックス。ふと思ったのだが…ワシ等が咳払いをするのは、かなり不自然ではないだろうか」
「い、言われてみると確かに…!…って、茶化さないでほしいで御座る将軍!…拙者は、真面目な話があるので御座る」
「…そうか、それは悪かったな。して、真面目な話とは?」
一歩近付き、アフィモウジャスを真剣に見つめるステマックスのカメラアイ。その雰囲気からアフィモウジャスも佇まいを正し、彼の事を見つめ返す。
「…この辺りで、手を引かぬで御座るか?ここまででも、十分に報酬を貰えているで御座る。それに、もう一件の方も依頼は果たせている…違うで御座るか?」
「…急に何を言うかと思えば…怖気付いたのか、ステマックス」
「そうではないで御座る。ただ拙者は……」
「ならば続けようではないか。今の依頼を受けた時点で、十分危ない橋を渡っているのだ。今更何を躊躇う事がある」
将軍…というのはあくまでアフィモウジャスが自称し、それにステマックスが乗っているだけの通称だが、実際に将であるかのような雰囲気を纏い、アフィモウジャスは言葉を返す。
そしてアフィモウジャスは、その言葉で話を終わりにしようとしていた。すると思っていた。だが……
「…その通りで御座る。今更なのは百も承知で御座る。されど、今ならばまだ拙者達主導で手を引けるで御座る。もしも将軍の要求を呑まれてしまえば、間違いなく向こうも手抜きは無くなるで御座るよ?国の長であっても、400億は軽くない筈で御座る」
「…どうしたのだ、ステマックスよ。何か、あったのか…?」
「…そうで、御座るな。拙者はこれまで、将軍を頼りにしてきたで御座る。将軍の言う事ならばと、そう考えていたで御座る。しかし、今は…これまでしてきた事と、これから起こるかもしれない事は……」
静かに、されど真っ直ぐにアフィモウジャスのカメラアイを見つめ返して話すステマックス。その姿に、臆する事なくはっきりと自らの意思を示す友人の姿に、アフィモウジャスは内心驚き…同時に、喜ばしくも思っていた。
だが、アフィモウジャスは首を振る。ゆっくりと、横に振る。
「お主の言いたい事は分かった。お主は、ワシの身を案じてくれておるのだな?」
「と、当然で御座る!こんな拙者を友と呼んでくれたのは、趣味を分かち合ってくれたのは……」
「だが、それは出来ん」
「なっ…何故で御座るか…!もう十分に稼げているというのに、そこまでして金子が……」
「そこまでして欲しいのだ!他ならぬお主なら知っておるだろう?ワシが、欲に糸目は付けないという事は。程々などつまらん、可能な限りのものが欲しいという性格である事は」
はっきりと言い切る。どんな危険を冒してでも、より多くの金が欲しいと。それが自分の意思なのだと。
単純な欲求。分かり易い欲望。だからこそ、ステマックスは言い淀む。論理ではなく、好き嫌いである以上、彼が言い返せないのも仕方のない事。無論、「それでも」と話を続ける事も出来るが…それを引き止める、ステマックスの恩義。
「…だが、お主の言う事も一理ある。ワシは別に、お主の上司であるつもりなど微塵もない。故にもしお主が同感でないのなら、違うと思うのであれば、お主だけ降りてくれても構わん」
「……拙者は不要だという事で御座るか?」
「悲しい事を言うなステマックス。無理に付き合わせる事などしないというだけじゃ」
「……であれば、降りはしないで御座る。時に異を唱える事はあっても、最後は主君に仕える事こそ忍者の使命。ここで降りてしまえば、拙者はただの陰が薄いロボットで御座るからな」
「そうか…であればこれからも共に、億万長者を目指そうではないか。そして将来的にはワシ等がスポンサーとして、金髪と巨乳の粋を集めた最高のカルチャーを打ち立てようぞ!ぐわっはっはっはっはっはっは!」
自分は欲望に忠実だと示すように、或いは暗くなった空気を壊さんとばかりに、恥ずかしげもなくアフィモウジャスは自らの野望を言い放つ。何を言っているのだ彼は…と言われそうな宣言だが、彼自身は至って真面目。少なくともその声に、嘘や誇張の色はない。
されど唯一、ほんの僅かに別の色が含まれていたのはカメラアイ。それは間違いなく、工業品でのみ構成された、本来温かさなどない筈のパーツであり…されどもそこには、これまでとは違うステマックスの姿に複雑そうな感情が浮かび上がっていたのだった。
「……あ、そ、それと将軍…」
「うん?まだ何か言い足りないのか?」
「そうではなく…その、さっきのアイドル画像の内…ユニ殿が写っているものを、ピックアップさせてくれたらなー…などと……」
「ほぅ…ほほーぅ。ステマックスよ、お主実はそういう趣味だったのか……」
「なっ、そ、そうではないで御座るよ!?これは、えーとその……へ、変化の術の鍛錬で御座る!そのモチーフとしてユニ殿を……」
「何ぃ!?ステマックスお主、変化の術が出来たのか!?で、では彼女よりもベールを!彼女で、おいろけの術的な何かを是非ッ!」
「中身拙者で御座るよ!?う、うぅ…やっぱり良いで御座るぅぅぅぅッ!」
「ぬぉぉ!?ステマックス、どこへ行くのだステマックスぅぅぅぅ!」
今回のパロディ解説
・「〜〜本編シリーズと〜〜エロ小説〜〜」
形としてはOriginsシリーズの一つである、Origins Visionaryの事。パロディというか、自分の作品のネタですね。私がごく稀にやるパターンです。
・おいろけの術
NARUTOシリーズにおける忍術の一つ。何気にナルトverもボルトverも巨乳且つ金…ではないですが黄色の髪になる訳ですし、アフィモウジャスには中々効くのかもですね。