超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
取り敢えずプラネタワーでは海男さん達を保護する事になったけど、何らかの理由で信次元に来てしまった皆さん(いーすんさん、クロワールさんの見解では、次元の壁が歪んだ影響で突発的に次元の扉…というか穴が開いて、そこに落ちてしまったんじゃないかとの事)も、一先ずはプラネタワーに滞在する事になった。ゴッドイーターさんはラステイションに行ってみたいみたいだし、ミリアサさんは各国を回って…因子?…を集めたいみたいだから、わたしとしては引き留めるつもりはないんだけど…ここはゲイムギョウ界であっても、皆さんの知っている次元じゃない。しかも今は状況が状況だから、こっちに慣れるまではプラネテューヌに残った方が良い…というのが、全体での判断。…まぁ、そうだよね。違う次元なんだから何か思いもよらぬ差異があるかもしれないし、それが何らかの危険に繋がる事だってあり得るもん。
って事で、今は皆さんもプラネタワーにいるんだけど…一緒に夕飯を食べた後、ミリアサさんはこんな事を言ってきた。二人の部屋を、見てみたいって。
「という訳で、今わたし達は自分達の部屋にいるよー!じゃじゃーん!」
「おぉ、ここが二人の…うむ、正に二人の部屋という感じだな!」
共用部屋の扉を開けて、部屋の中を披露するお姉ちゃん。初めに言葉を返したのはミリアサさんで……そこへ次々と言葉が続く。
「へぇ、確かに二人の部屋…って雰囲気があるね」
「可愛らしい、ですね」
「…けど、自室にしては少し物が足りない気が……」
「確かに…え、もしかして二人は布団派?この部屋で?」
上がった感想は計五つ。ミリアサさんを除くとそれぞれ海男さん、ゴッドイーターさん、ニトロプラスさん、チーカマさんで…お分かりの通り、何故か四人と一匹へお披露目する事となっていた。…い、いや理由は分かってるんですけどね?お三人はミリアサさんと同じ場にいたからで、海男さんはお姉ちゃんがぽろっとその話を零した結果、「それは面白そうだ。オレもお邪魔していいかい?」…ってなったからですし…。
「あ、それはですね。この部屋はわたしとお姉ちゃん二人の部屋で、個人としての部屋は別に…というか、この部屋の両隣にあるんです」
「あ、だからベットがないんですね。納得です」
「ふむ、二人のベットは両隣の部屋か……」
「アーサー、おかしいわよねぇその反応」
「…ご、ごほん。しかし何故共用と個人、両方の部屋を?確かに部屋が多い方が、何かと便利な気はするが…」
「プライバシー、というやつじゃないかい?仲良し姉妹と言えど、秘密にしたい事の一つや二つはあるだろう?」
「え、そうなの?もしかしてネプギア、自分の部屋にとても言えない、お姉ちゃんにすら言えないような物を隠してたり?」
「し、してないしてない…と言うかあったとしても、それは言わないよ……」
きょとんとした顔で見てくるお姉ちゃんの言葉を、わたしはちょっと困りながら否定。……うん、実は…って言ってとんでもない物出したら、お姉ちゃんどんな反応するのかな…ないから試す事は出来ないけど…。
「そういう事じゃなくて、一緒の部屋だと邪魔になっちゃう事もあるかな…って考えたからなんです。特にわたしの場合、床一面にパーツ並べたりする事もありますし」
『……パーツ?』
「あ…はい。海男さんは知ってると思いますが、わたし機械弄りが趣味でして……」
「凄いんだよー?次元の扉を開くサポート装置とか、次元間交信をする為に通信施設へ取り付ける機材とか、趣味の域を遥かに超えて役に立ちまくりな物まで作っちゃうんだからねー」
「大したものね。あたしは機械に関して素人だけど、それがどれだけ凄い事なのかは容易に想像出来るわ」
「そ、そんな…趣味が偶々役に立っただけですよ…」
「ううん、切っ掛けは趣味でも、実現したのはネプギアが凄く頑張ったからでしょ?だからやっぱり凄いよ、ネプギアは」
「お姉ちゃん……」
そう言ってお姉ちゃんは右手をわたしの頭の上に。それからにこりと微笑んで、わたしの事を撫でてくれる。
優しく撫でてくれる、お姉ちゃんの右手。その手は温かくて、お姉ちゃんの笑顔は優しくて、ちょっと照れ臭いけどお姉ちゃんのなでなではとっても嬉しくて……
『じー…』
「はっ!?と、ところで皆さんっ、折角部屋に来たんですしちょっと物色するのは如何でしょうッ!?」
次の瞬間感じた、というか聞こえた温かい視線。はっとして見れば、海男さん達は揃ってわたしの事を見ていて……一瞬で恥ずかしさが振り切ったわたしは、訳の分からない提案をしてしまった。
「せ、折角部屋に来たんですしって…どこぞのグルメバラエティみたいな事言うわね……」
「だが、魅力的な提案だな!」
「おおぅ、ネプギアがそんな事を言い出すとは…じゃあわたしもそれに乗じて、ネプギアの部屋のあーんな所やこーんな所を探ってみようかなーっ!」
「お姉ちゃんまで!?」
半ば予想出来た事とはいえ、早速乗ってくるミリアサさん。でも予想外だったのは、お姉ちゃんまでその気になっちゃった事。ま、不味い…ほんとに見られて困るようなものはないけどお姉ちゃんの場合、下着位は引っ張り出し兼ねない…!
「よぉしミリアサちゃん、ネプギアの部屋に突撃ー!」
「承知した!」
「あ、コラ!人様の部屋だって事忘れるんじゃないわよ!」
「え、えーと…私達は、どうしましょう…?」
「さぁ…?…あ、そういえばこの部屋冷蔵庫もあるのね」
「あ、ほんとですね。…お腹空いたなぁ……」
「…少し前に食べたばかりなのに…?」
言うが早いかお姉ちゃんとミリアサさんはわたしの部屋に行っちゃうし、ゴッドイーターさんとニトロプラスさんは(まあ自分の部屋じゃないんだから当然だけど)のんびりしてるしで、早くもわたしはかなり窮地。…自業自得だけど。自分で提案しちゃった事だけど。
という訳でわたしは二人を慌てて追いかけ、変な物を出されないか真剣に注視。その甲斐あってか色んな引き出しを開けられたり、ミリアサさんが妙な躓き方をしてベットへダイブしたり(その直後チーカマさんに引き摺り下ろされてた)、ふとした事からお姉ちゃんが無くしたと思ってた掘り出し物パーツを見つけてくれたりと色々あったけど、無事に二人によるわたしの部屋探索は終わりを迎えた。
「つ、疲れた……」
「災難だったね、ぎあっち。ところで二人共、あそこのぬいぐるみの裏に二つお皿が置いてあったけど、あれには何か意味があるのかい?」
「あー、あれはプリンのお皿だね。神次元から帰ってきたら、何故か二つもプリンがあそこに置いてあってさー。ネプギアと美味しく頂いたんだけど、お皿はどうするか困るじゃん?」
「そ、それはまた不思議な事があるものだね…」
「あはは…って、お二人は寛いでる……」
「…物色してた方が良かった?」
「で、ですよねー…しないでいてもらえて助かりました……」
それからは一度雑談を挟んで、今度はお姉ちゃんの部屋の物色に。これに一番興味を示したのは意外にもニトロプラスさんで、何でも「同じ得物を使う物として、手入れにどんな物を使っているか見てみたい」んだとか。で、皆さんがお姉ちゃんの部屋へ行った事で手持ち無沙汰になったわたしは、さっき見つかったパーツを仕舞う為にもう一度自分の部屋へ。
「これでよし、っと。でもほんと、なんでこれ無くしちゃったんだろう…徹夜で機械弄りしてた時は寝惚け眼で片付けをする事もあるし、その時間違えてあそこにしまっちゃったのかな……」
ジャンクパーツを仕舞っている引き出しの一つを開けて、中にそれを仕舞うわたし。それからまた共用部屋に戻ろうとして…そこでふと、棚の上に置いておいたある物が目に留まる。
「…これ、結局何に使えるんだろう……」
それは、神次元から帰る時にピーシェさんから渡されたUSBメモリ。何でもアノネデスさんから渡すよう言われた物らしくて、こっちに戻ってから早速わたしは中を確かめたけど、データは何も表示されなかった。
普通なら、何も記録されてないだけって判断する。でも「きっと役に立つ」って伝言と共に渡された以上、これには何か特別な使い方がある筈。じゃなきゃ、メモリ自体が特別凄い訳でもないこれを、わざわざ渡す訳がない。……た、多分。
(…もしかして、データじゃなくて物理的に何かが入ってるとか?いやでも、メモリとしての機能はちゃんとしてる以上中にそんな余裕があるとは思えないし…じゃあ、何らかのデータを記録する事で何かが起こる?…うーん…でもそれはそれで、何のデータを記録すればって話だよね……)
試しにNギアへ挿してもう一度確認してみるけど、やっぱり表示上は完全に空っぽ。↑↑↓↓←→←→BAの順にキーボード入力してみたり、ゴミ箱アイコンから下に2㎝、右に2㎝した所を何回か押してみたりしたけど、表示はうんともすんとも言ってくれない。
そもそも考えて答えを見つけられるものなのかどうかも分からないし、当人に訊いてみようか、とも思う。でも多分、そうしても答えは得られない気がする。だってそれで教えてくれるようであれば、そもそも渡す時点でどう使うのかも教えてくれて良い筈だから。
つまり恐らく、これの使い方には何か説明出来ない事情がある、或いは説明だけ受けても理解出来ない方法である可能性が高い。…と、思う。
「…まだ、これを使うべき時じゃないから…これの使い方を導くのに、手掛かりとなるピースが足りないから分からないって事?…いや、そもそも…わたしはちゃんと、必要な情報を基に考えている…?」
段々と深まっていく思考。考えて答えが出るかは分からないけど、一度走り出した思考は止まらない。
改めて考えてみれば、わたしはこのメモリには一見何も入っていないという事と、「きっと役に立つ」という言葉と共に、ピーシェさんを介してアノネデスさんから渡されたって事しか思考の手がかりにしていない。…それじゃ、あまりにも少な過ぎる。
わたしは振り返る。アノネデスさんは、どんな人物だった?…アノネデスさんは、接し易くて機械に精通していて、ノワールさんの事が好きな…だけどどこか、掴み所のない人。そこには何か、考える上で必要な事柄があるかもしれない。
「…………」
更にわたしは振り返る。ピーシェさんはアノネデスさんからの伝言と共に、アクダイジーンさんからの伝言も受けていた。もしかしたら、信次元に不利益となる事をしてしまったかもしれない…そんな謝罪を、わたし達は受け取った。
それがアクダイジーンさん個人で何かしてしまったという事なのか、アクダイジーンさんが関係する組織や集団が…って事なのかは分からない。真っ先に思い付くのは、もしかしたら元は神次元にいたのかもしれない、もしそうならアクダイジーンさんの元仲間だったって事になるキセイジョウ・レイの事だけど、これはまだ推測の域。
神次元から信次元へ渡った人物。持ち出された技術。放たれた攻撃。可能性は沢山ある。というかそもそも、アクダイジーンさんの謝罪とアノネデスさんの伝言とが、関連してるとは限らない。関係ありそうに思えるけど、答えに早く辿り着きたいわたしの心が、そう感じさせてるだけって事も十分あり得る。
(…でも、後少し…後少しで何かが見えそうなんだ…後一つ…バラバラのピースの内、必要な物と関係のない物を振り分ける何か…それか、道標になる大きな気付きさえあれば……)
神次元の事。今の信次元の事。ここ最近の事。これから起こるであろう事。どれかじゃなくて、思い付く事全てを片っ端から考える。手がかりはどこにあるか分からないから、安易な決め付けは全部取っ払って、広く広く思考を重ねる。考えて、考えて、そして……
「ネプギアー?何やってるのー?」
「あっ……」
……わたしは思い出した。ついさっきまで、わたしは何をしていたのかを。…お姉ちゃん含め、皆さんの事を完全に忘れてた……。
「あ、あはははは…これ、わたし一人だったら普通に失礼な行為だよね……」
幸い今はお姉ちゃんが皆さんといてくれてたから問題ない…と思うけど、もしお姉ちゃんがいなかったら、わたしは部屋に来た人達を放置して、一人思考に耽っていたって形になる。元々は皆さんの方が気になると言って始まった事だけど、それでも今のわたしの行動は宜しくない。
だから一旦思考を中断して、メモリもNギアから外すわたし。それからわたしはお姉ちゃん達がいるであろう、お姉ちゃんの部屋へ移動すべく部屋を出て……
──え?…部屋を、出る…?場所を、移る…?お姉ちゃんの部屋に、入る…?ここじゃなくて、別の場所に…自分のじゃなくて、他の人の部屋で……
「……もしかして…」
絡まっていた糸が解けるように、洞窟の先で光明が見えたように、浮かび上がっていく可能性。
そこに、根拠はない。もしかしたら以上のものじゃない。だけど……その可能性は、確かにある。
「皆さん、ごめんなさい!お姉ちゃん、ちょっとわたし出かけてくるね!」
「え、今から?…何かあったの…?」
「重要な事が見つかるかもしれないの!」
置き直したメモリをもう一度手に取って、まずは手元にある物全てで確認。それじゃ駄目だって分かった後は、一気にお姉ちゃんの部屋まで走り、説明もそこそこに部屋を出る。そうして浮かび上がった可能性を確かめるべく、わたしは思い付いた場所へと向かう。
*
「…で、可能性がある場所としてうちに…ラステイションに来た訳?」
可能性が浮かび上がってから数時間。わたしはラステイションへと訪れていた。
「は、はい…!ここなら、もしかしたらと思って…だから、少し…試させて、ほしくて……っ!」
「う、うん、一先ず息を整えたら…?」
「だ、大丈夫です…!大分、整ってきたので…!」
「無駄だよお姉ちゃん…アタシが言っても全然聞かなかったし、実際にこの状態で色々確かめてたから……」
ほんのり呆れ顔を浮かべるノワールさんに右の掌を向けて大丈夫だと返しつつ、わたしはずいっと一歩近付く。
正直言うと、そこまで焦らなくたって…って気持ちもある。息を整える為に数分を費やしたって、何かが変わる訳じゃない。だけど、わたしの心が急かしてくる。わたしの心を占めているのは、早く確かめたいって思い。
「そうなのね…まぁ、言いたい事は分かったわ。で、具体的には何を試させてほしいの?」
「…教会の…メインフレームです」
がっつり呆れてるユニちゃんからの言葉を受けて、話を進める事を選んでくれたノワールさん。その質問の言葉を受けて、わたしは一度しっかりと呼吸し…はっきりとした声で、言葉を返す。
その瞬間、ノワールさんの表情に走る緊張感。わたしを見る目も、全くもう…って感じから険しいものへと雰囲気が変わる。
「…確認よ。貴女は今、メインフレーム…うちのシステム面での中枢に触れさせてほしい、って言ったの?」
「…はい」
「随分とまた、大きく出たわね…。…その意味が分かってるの?貴女の言う通りなら、確かに試す価値はあるけど、うちからしたらリスクが大き過ぎる要求よ。もしもそのメモリに有害なプログラムが仕込まれていたら、うちの被害は計り知れないわ」
「…分かってます」
静かな、けれど威圧感を感じるノワールさんの言葉にわたしは首肯。数秒間、無言の時間が訪れて…ノワールさんは、再び口を開く。
「…アノネデスって人は、信用出来るの?信用出来ると、断言出来る?」
「……断言は、出来ません」
「つまり、絶対大丈夫だ…とは言い切れない訳ね。少なくとも、ネプギアからはそう言えないと。…もう一度言うわ。貴女の言っている事は、リスクが大き過ぎる」
「…責任は、取ります」
「真面目ね。躊躇わずにそう言えるのは評価出来るわ。…けど、甘い。女神としては、考えが甘過ぎるわ。どれだけ貴女が責任を持つって言ったって、システムの破損やデータの流出があった場合、それを元通りになんて出来ないでしょ?プラネテューヌならまだしも、リーンボックスやルウィーに機密が漏れ出た場合、貴女は差し止める事が出来るのかしら?」
「…それは……」
「お姉ちゃん……」
投げかけられる、厳しい言葉。だけどノワールさんが言っているのは、当然の事。わたしが求めているのは、それだけのリスクを孕んだ行為。それと同時に、突き付けられる。責任は持つとか、責任を取ってとかは、結局のところ内部の、局地的な事柄でしか意味をなさない事なんだって。
ノワールさんに、申し訳ない。こんな事を言わせてしまったわたしが、順序を追わずに一直線で来てしまった自分自身が情けない。
何か、出来る事はないのか。今のわたしに、ノワールさんを納得させられる手札はないか。それともやっぱり、ここは一度お願いを取り下げた方が良いのか。…そう、頭の中でわたしは悩み…ふと聞こえた、ノワールさんの溜め息。
「…はぁ、悪いところも姉譲り…ってとこかしらね。その向こう見ずさが、いざって時には状況打破に繋がったりもするんだけど。…ユニはどう思う?」
「え…あ、アタシ…?」
「えぇ、貴女よ。私と同じラステイションの女神で、私よりもネプギアの事を知っている貴女は、どうしたら良いと思う?ユニは、どう考えているの?」
「アタシは……」
困り顔を浮かべながらも、ノワールさんの声に戻る温かさ。そのノワールさんから意見を求められたユニちゃんは、少しの間黙り込んで…でもそれから、わたしの隣に立って言う。
「…アタシは、信用しても良いと思う。お姉ちゃんの言う事は正しいと思うし、アタシもネプギアは先走り過ぎだと思うけど…ネプギアには、人を見る目があると思うから。ネプギアって割と感情に流され易くて、そこそこ騙され易い性格してるけど…アタシは、ネプギアが信じるものなら信じて良いと思う。それが、アタシの意見」
「…そう。ユニも甘いわね…けど、その甘さは女神にとって、大切なものだと思うわ」
「ありがと、お姉ちゃん。…だからやるなら、アタシも責任を持つ。責任を取ったってって話だけど…推す以上、アタシも責任を持つべきだと思うから」
「ユニ、ちゃん……」
わたしが信じるものなら信じてもいい。わたしの隣で、ノワールさんへ向けて、ユニちゃんはそう言ってくれた。それだけじゃなくて、同じく責任も背負ってくれると宣言してくれた。
根回しなんかしていない。ラステイションに来たわたしはまずユニちゃんに話して、ユニちゃんの端末や教会の通常サーバーで試させてもらって、それでも駄目だって分かったからノワールさんに頼んだ。ただそれだけの事しかしてなくて、この話において味方をする理由なんて一つもない。むしろユニちゃんもラステイションの女神なんだから、背負うリスクはノワールさんと同じ筈。
それでもユニちゃんはわたしの味方をしてくれた。わたしの側に立ってくれた。…そんなの、嬉しくない訳がない。
「…うぅ…ありがと、ありがとねユニちゃん……」
「べ…別にお礼なんていいわよ。アタシはただ、自分の見解を言っただけで……」
「でも、その見解でユニちゃんはわたしの味方をしてくれてるでしょ?」
「…それは、まぁ…そうだけど……」
染み渡る感謝の気持ち。もし二人だけだったら、抱き着いていたかもしれない位、ユニちゃんの言葉は嬉しかった。ユニちゃんにここまで信頼されてるんだって思うと、誇らしい気持ちだった。
それを見ていたノワールさんは、気付けば小さな笑みを浮かべている。ユニちゃんが味方してくれたのなら、わたしも黙り込んでなんかいられない。そう思ったわたしは、出せるものがないならせめて誠意を示すべく頭を…下げようとしたけど、そこで待ってと止められる。
「悪いけど、その前に一本電話させて頂戴」
「へ…?…いい、ですけど……」
何故、このタイミングで電話?…そう疑問に思いつつ見つめていると、繋がったようでノワールさんは話し始める。…んだけど……
「えぇそう、ネプギアがね。だから貴女の意見も…ってはぁ!?まだ何も言ってないわよ!?ちょっと、ふざけるのは止めな……うっ…そ、それは確かにそうだけど…でも、良い訳?これは……って、だから…あー、もう…分かった分かった、分かったわよ。それで良いならもう切る……あーはいはい、了解よ。じゃ」
何やら妙に、ノワールさんの表情の変化が目まぐるしい通話だった。…相手いるんだよね…?鳳凰院さんの真似じゃないよね……?
「…お姉ちゃん、今のって……」
「ネプテューヌよ。私はこの件、最悪ラステイションとプラネテューヌの友好そのものにも関わると思った。だから守護女神のネプテューヌにも訊いたのよ。貴女は、どう思うのかって」
「……それで、お姉ちゃんは…」
「…はぁ…概ねユニと同じ、ネプギアの言う事なら信じるってよ。しかもあの子、内容聞かずに大丈夫だって言ってくるし、そこ指摘したら『まずは信じてあげる。それがお姉ちゃんってものでしょ?』なんて即答するし…あーあ、これじゃ調子が狂うって言うか、私が度量の小さい女神みたいになるじゃない……」
「え、えっと…お姉ちゃんがすみません……」
「いいわよ、今に始まった事じゃないし…。…でもネプギア、貴女はネプテューヌにも感謝する事ね。信用もそうだし、ネプテューヌだって言ったもの。責任は、わたしも持つって」
更に広がる喜びと感謝。お姉ちゃんも、わたしを信じてくれている。経緯とか内容とかじゃなくて、わたし自身を信用してくれている。それは、女神としては必ずしも正しい訳じゃないんだろうけど…あぁ、駄目だ。ユニちゃんも、お姉ちゃんもそんな事を言ってくれるなんて、泣きそうになる。感謝で涙が溢れそうになる。
「…わたし、本当に周りに恵まれてるんですね…」
「…その信頼を勝ち取ったのは、他ならぬ貴女自身の努力や行動のおかげだと思うけどね。……ネプギア、さっきも言ったけど、これは最悪国の友好にもヒビを入れる可能性があるわ。ユニもネプテューヌもああ言った以上、貴女一人ではもう責任も背負えない。…それでも、試したい?」
「…はい。正直反省してます。次からは、もっと段階を踏んで話を進めようと思ってます。…だけど、今は止めません。信じてくれたユニちゃんやお姉ちゃんの思いを、無駄になんて出来ませんから」
「……分かった。そこまで言うなら…本気でその覚悟があるなら、試してみるといいわ」
「……っ!ありがとう、ございます…っ!」
再びわたしはノワールさんに、その瞳に見据えられる。わたしを試すような、わたしの覚悟を測るような、赤い瞳に。
もう、さっきまでの迷いはない。信じてくれた二人の為にも、わたしは突き進むだけ。その思いを込めて、わたしは答えた。そうして得られた、ノワールさんからの許可。わたしはそれに、深く頭を下げて感謝し……そしてわたし達は、メインフレームがある部屋へ。
「可能な限り無線のアクセスは絞ったし、うちのサイバー対策班にも警戒はしてもらってる。…それでも、危険な事よ」
「分かっています。…何かあれば、その時は女神として、国の長として判断して下さい」
「当然ね。…でも、そうはならない事を祈ってるわ」
ノワールさんも、わたしの言葉を信じてくれている。声音から何となくそう感じながら、わたしはNギアを有線接続。USBメモリを挿そうとした瞬間、ふっと不安な気持ちがよぎって…だけど振り向いたわたしへと、ユニちゃんは頷いてくれた。大丈夫だって、わたしに視線で応えてくれた。
一つ、大きく深呼吸。その中で、わたしの中の覚悟をもう一度だけ強く固めて、わたし自身もわたしを信じて……USBメモリを、Nギアに刺す。
「…………」
「……ど、どう…?」
「……出た…出たよユニちゃん、ノワールさん!やっぱりそうだったんだ、鍵はラステイションだったんだ…っ!」
数秒の沈黙と、次の瞬間現れた二つのデータ。一つは動画のデータで、もう一つは何かのシステム。
「…これ、何のシステムかしら…名前が入ってないし……」
「動画はこっちを先に見て、って名前になってるし…ひ、開いてみますか…?」
二つの内、システムの方を指差すユニちゃん。記録されたデータが出てくるのは、わたしが望んでいた事で…だけどいざ出てきたってなると、仕掛けが仕掛けだった事もあって、俄かに覚える緊張感。
再び振り向いたわたしへ、ユニちゃんとノワールさんは揃って首肯。それを受けて、ドキドキしながら動画データを押すわたし。すると、そのファイルが開き……動画が流れ始める。
「はぁいネプギアちゃん。これを見ているって事は、アタシの意図を読めたって訳ね」
『えっ…何このロボット……』
動画の中に現れたのは、一体のロボット…ではなく、パワードスーツを着た一人の……乙女。…説明は…後にしようかな…。アノネデスさん、かなり個性的っていうか、キャラクター特盛りだし……。
「でも、やっぱり流石はネプギアちゃんね。暇があったら、一度アタシの所で勉強してみない?もしかしたら、アタシ以上の逸材になれるかもしれないわよ?」
「いきなり何言ってるのよこいつは…。っていうか、何でうちのメインフレームに接続しなきゃ表示されないシステムなのよ……」
「ふふっ、だって折角アタシが善意でやった事を、どこの誰かも分からない奴に使われるなんて癪でしょ?」
「会話が成立した!?え、これ通話だったの!?」
「まっさかぁ。愛するノワールちゃんの事なら、この位予想出来るってだけよ。けど、やっぱり神次元と信次元じゃ違う部分もあると思うし、当たるのはこの辺りまでかしらね〜」
「な、何なのよこいつ…!?ほ、ほんとに信用出来るの…!?っていうか、そもそも大丈夫な奴なの…!?」
某騎士団のリーダーさんみたいな芸当を見せるアノネデスさんにノワールさんは戦慄し、ぞっとした顔でわたしへ問い詰めてくる。……どうしよう、なんて返せばいいか分からない…。
「あぁそれと、これが機能してるって事は、システム構築もこっちとそっちで似てる訳ね。ネプギアちゃん、その事は後で教えて頂戴ね」
「ぜ、絶対教えちゃ駄目よ!?教えたら何されるか分からないわ!」
「お、落ち着いてお姉ちゃん…でも、教えるのは止めておいて……」
「あ、う、うん…えと、動画続いてますよ…?」
「さてと。アタシとしてはノワールちゃんと話したいところだけど、結局のところ一方的にただ話してるだけだし、ちゃっちゃと必要な事を教えちゃうわね」
何だか凄い雰囲気になっちゃったけど、しれっとアノネデスさんは本題へ。ノワールさんはかなり不服みたいだけど、動画な以上何を言ったってアノネデスさんには伝わらない。
その内に…というか今言った通りに本題の説明が始まって、自然と変わっていく雰囲気。わざと秘密にしてるのか核心部分は口にしてくれないけれど、その内容からかなり重要なシステムだった事は伝わってくる。そして……
「…これを活かせるかどうかは貴女達次第よ。それじゃあ皆、頑張ってね」
「…な、なんというか…徹頭徹尾、変な意味で付け入る隙が無さそうな人物だったね……」
「え、えぇ…こいつのシステム、ほんとに何かの役に立つのかしら……」
「は、はは…一先ず開いてみますね……」
動画が終わり、元の画面に戻って、左右から聞こえる辟易の声。正直それには同感だったけど…アノネデスさんが、技術者として凄まじい力を持っているって事は実際に見て知っている。
一拍置いて、人差し指をもう一つのデータへと近付けるわたし。そしてわたしはそのファイルを押し…システムを開く。
「…こ、これって……」
今回のパロディ解決
・どこぞのグルメバラエティ
バナナマンのせっかくグルメ!!の事。折角プラネタワーに来たんだから、プリンとねぷ矢サイダー飲んでって…ってところでしょうかね。
・↑↑↓↓←→←→BA
コナミコマンドの内、特に代表的なものの事。完全な余談ですが、このシーンでは他にレジ系(ポケモン)と戦う為の方法辺りを出そうかな…とも思っていました。
・ゴミ箱アイコン〜〜押してみたり
半沢直樹にて登場した、隠しファイルの発見方法(の一部)の事。ネタとして最初に思い付いたのはこちらですね。無論ネプギアは黒ではなく紫ですが。
・鳳凰院さん
STEINS;GATEシリーズのメイン主人公、岡部倫太郎の別名(自称)の事。ノワールはむしろ助手の方ですね。実際原作でもMAGES.が助手と呼んでいたりしますし。
・某騎士団のリーダーさん
コードギアスシリーズの主人公、ルルーシュ・ランペルージ(ヴィ・ブリタニア)の事。…実際アノネデスなら、ちょっと位予想出来そうなのがまた怖いですね……。