超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第九十五話 逃がしはしない

 油断していた訳じゃないし、ふざけてもいない。後から思えば、ほんと「我ながらよくあんな事したわね…」と思うような行為もしたけど、それだって意図あっての事。ただでも、気分が乗っていれば気にならないような事でも、気分が途切れれば…横槍によって意識を平坦な状態に引き戻されれば、途端に恥ずかしくなったり、流れから転落したりしてしまう。実際それで、ある意味追い詰めていた筈のステマックスを、わたしは取り逃がしかけてしまった。

 そんな時に動いたのは、先を読んでいつの間にか天井の陰へと移動し、待ち構えていたマベちゃん。マベちゃんは天井の穴に辿り着きかけていたステマックスを叩き落とし……ひらりとスタジアムに、着地する。

 

「ごめんね、ネプちゃん、ユニちゃん。ここまでずっと何もしなくて」

「ううん、助かったわマベちゃん。流石の判断力ね」

「忍者は出し抜くもの、裏をかくものだからね。それに二人なら普通に通路から逃げられるなんて事にはならないと思ったから、天井に張っていたんだ」

 

 小太刀を構えたまま、マベちゃんがわたし達へと発したのは謝罪。でもマベちゃんに落ち度なんてないどころか正しい判断だった訳で、わたしは肩を竦めつつ隣に並ぶ。

 

「く、ぅ…その身のこなし、火遁という名…もしや……」

「話には聞いていたけど、直接対面するのは初めてだね。あぁいや、見かけた事位はあるかな?」

 

 立ち上がり構え直すステマックスへ、ふっと笑みを浮かべてマベちゃんは言う。…正対する忍者と忍者…今人間状態だったら、間違いなく興奮していたわね。

 

「…………」

 

 問いに対してステマックスは答える事なく、ぴくりとも動かないままマベちゃんを見つめる。…それは恐らく、彼の中で策の再構築を行っているから。忍者としての行動は読まれると理解し、その上で知り得た情報を持ち帰るにはどうするべきかという作戦を……

 

「お、大きい…ネプテューヌ殿と同等か、それ以上に…しかも明らかに、服のサイズが……」

「…あー……」

 

……立ててなかった。マベちゃんというか、マベちゃんの胸を見ているだけだった。…まぁ、それはそうよね…。

 

「…そういえばネプちゃん、さっき大太刀を胸に……」

「わぁぁっ!?ま、マベちゃんそれは言わないで!あれはその…まあとにかく忘れてっ!それが無理なら、せめて胸の中にしまっておいてぇっ!」

「あ、う、うん……」

「ほんとにあれは何だったんですかネプテューヌさん…」

 

 呆れたのも束の間、マベちゃんから思い出したようにさっきの事を掘り起こされて、再び凄まじい羞恥心に襲われるわたし。全力の懇願で分かってはもらえたけど…今度は代わりに、二人から何とも言えない感じの表情を向けられてしまう。うぅ…冷静になる事が、こんなに辛くなるなんて……。

 

(…って、このままじゃさっきの二の舞ね…意識を切り替えなさい、わたし)

「…ステマックス、これで三対一よ。まだ投降する気はない訳?」

「…無論。情けない拙者で御座るが、どれだけ戦力差があろうと忠義を捨てる事などしないで御座る。…それにそもそも、ネプテューヌ殿一人の時点で勝機は薄かったので御座るからな。であれば一対三になろうと、今更で御座る」

「アンタ、ほんと別人格かって位覚悟が決まってるわね。…元から、芯は強かったって事かしら」

「さて、どうで御座ろうな…」

 

 投降するなら丁重に扱う。声音にそんな含みを持たせたユニちゃんの問い掛けにステマックスは肯定し、今度こそわたし達全員を見据える。…これだから、油断出来ない。人であろうとロボットであろうと、意思が折れていない限りは、何をしてくるか分からないから。

 

「なら、これまで通り…力尽くで拘束させてもらうとするわッ!」

「そうは、いかないで御座るッ!」

 

 床を蹴り、真正面から突撃をかけたわたしの刺突。それを振り出した刀で横から弾くと、ステマックスは真上に跳躍。けれどそこにユニちゃんの射撃が襲い、盾の様にした大手裏剣で防いでいる内にマベちゃんが背後へ回り込む。

 

「てぇいッ!」

「ふ……ッ!」

 

 振り出したマベちゃんの小太刀と、反転したステマックスの刀が激突。互いに激突の衝撃を利用して後ろに跳び、着地と同時に床を蹴って再び双方の刀を交える。

 次々繰り出される刃の連撃。同じ刀を武器にする二人でも、ステマックスの刀はわたしの大太刀よりも短く、マベちゃんの小太刀は更に短い。加えてどちらも片手持ちをしているから、同じ刀と言ってもその動きは全然違う。

 拳を突き出すような軌道で放たれる斬撃に、裏拳を思わせる動きで打ち込まれる刺突。斬り上げは間違いなく順手持ちの動きより速く、逆に順手持ち以上に二人が斬り結ぶ距離は近い。…正直それは、刀を使うわたしとしてはこれが模擬戦ならじっくりと見ていたいと思う程の、興味深い攻防だった。

 

「貴方が選んだ多勢に無勢なんだもの、悪く思わない事ねッ!」

 

 左から右への、斬っ先で薙ぐような刺突に対し、ステマックスは身体を後ろへ逸らす事で避け、そこから身体を起こす動きのままに刀を斜めから斬り下ろす。それをマベちゃんは刀身の背へ左手を添える事で正面から受け…そこへ横から、わたしが飛び蹴りを叩き込む。

 蹴りそのものは大手裏剣で受けたとはいえ、真横から女神の飛び蹴りを喰らった事で吹っ飛ぶステマックス。床を何度も跳ねながら立て直そうとしたところでその先へユニちゃんの射撃が走り、砕けた床に足を取られてステマックスは転倒。…不規則な動きをしているステマックスではなく、動かない床を狙う事によって、確実に立て直しを阻害する…やるわね、ユニちゃん。

 

「行くよ!風遁ッ!」

「……──ッ!」

 

 ユニちゃんの射撃を追うように駆け出したマベちゃんの放つ、風の刃。弾かれるようにマベちゃんの方を向き、右手を振るったステマックスから伸びるのは、影の様な黒い一撃。不可視と漆黒、両者から放たれた忍術は双方の中間よりも数瞬遅れたステマックスの側でぶつかり……風と影が爆ぜた次の瞬間、その余波を突っ切る形でマベちゃんが肉薄する。

 

「しまっ……」

「貰ったッ!」

 

 身体を左側へ傾けて繰り出す回転斬り。突進し飛びかかる形となった斬撃はステマックスの反応を超え……その胸元を、強かに斬り付けた。

 

「ぐッ…だが、まだ……」

「…いいや、終わりよステマックス」

 

 装甲が切り裂かれ、露出する内部機構。即座にマベちゃんが跳び退いた事で、反撃の一太刀は空振り……ステマックスが歯噛みするような声と共に立ち上がった瞬間に、わたしは左から、ユニちゃんは右から得物をステマックスに突き付ける。

 

「…なんという連携…個としての強さだけでなく、集団としても卓越しているとなると、いよいよ八方塞がりで御座るな……」

「女神二人と一流の実力者を相手にここまで食い下がったんだもの、恥じる事はないわ」

 

 刃と銃、それにユニちゃんからの言葉を突き付けられたステマックスは、残念そうに言葉を漏らす。それに対するわたしの言葉は…勿論、お世辞なんかじゃない。

 

「…ステマックス。アンタがどういう存在かは知らないけど、ジャミングの中でも普通に動けてたり、全力で逃走しようとしてた以上、本体は別にあってここにいるのは替えの効く端末…って訳じゃないんでしょう?……これ以上やれば、ダメージもその程度じゃ済まないわよ」

「…あくまで捕らえる気、で御座るか。しかし忍者は、そう簡単には口を割らないで御座るよ」

「ふぅん…一応言っておくけど、ネプギアはアンタが想像してる以上のメカオタよ?もしかしたら、好奇心が抑えられずに全分解とかされるかもね」

「……に、にに忍者は…たとえ命が危機に瀕しようと…じょ、情報は喋らないので御座るるる…!」

 

 生け捕りにしても無駄だ。そんな意図の言葉を発したステマックスだったものの、ユニちゃんからの返しを聞いた数秒後、彼はあからさまにビビり始める。…まぁ、人で言うなら皮を全部剥がして肉も削ぎ落として、骨と内臓も一つ一つ取り外すって言ってるようなものだものね…。……う、うん…よく考えたらこれ、相当エグい脅迫じゃない…。

 

「…さ、分かったら武装解除しなさい」

「…ぶ、武装解除…で、御座るか…?」

「当たり前でしょ。よくあるRPGじゃないんだから」

「た、確かに捕まえたにも関わらず、装備をそのままにしておくゲームはそこそこあるで御座るが…。……まぁ、当然の事で御座るな…」

 

 脅迫に臆したのか、それとも流石に万事休すと観念したのか、大手裏剣と刀を落とすステマックス。それからステマックスは、これでもう丸腰だとばかりに肩を竦め…けれど勿論、それだけじゃわたし達は納得しない。

 

「さっきの爆発する刃物は?忍者だしロボットなんだから、どうせ他にもまだ隠し持っているんでしょう?」

「…どうしても、で御座るか…?」

「わたし達の目を欺き切れると思うなら、もう無いって言い張ればいいんじゃない?或いは、本当にもう何も無いのなら、無いって言うしかないでしょうけど」

「…そ、そう言われては仕方ないで御座るな……」

(…うん……?)

 

 素の身体能力が高い以上、何か一つでも武装は残しておく訳にはいかない。その意思の下わたしが問い詰めると、ステマックスはわたし達の顔をちらちら見ながら了承を示す。

 その瞬間、わたしは違和感を抱いた。上手くは言えないけど、何かおかしいような、どこか釈然としないような、そんな奇妙な気配を感じる。

 

「…背に腹は変えられぬ…肉を切らせて骨を断つ覚悟が、戦場では必要なので御座る……」

「…何か言った?」

「な、何でもないで御座る、ユニ殿。…さぁ、これで良いで御座るか…?」

 

 ぼそぼそと何かを言うステマックスの声は、破損した内部機構がバチバチと音を鳴らしている事もあってよく聞こえない。でも彼は、殊勝な態度で隠し持っていた物も落とす。

 一瞬わたしは、やっぱりまだ持っていたのか…と思った。けど、違う。ステマックスが落としたのは、刃でも暗器でもなく……薄めの本。

 

「本…?何のつもりよ、ステマックス」

「ふ、ふっふっふ…よーく、ご覧あれ……」

「ご覧あれ…?…ネプちゃんユニちゃん気を付けて、もしかしたら幻術か何かの類いかもしれな──」

 

 明らかに武具ではない、REDが盾として使っているそれのように特別な仕様になっているとも思えない、一見すれば本当にただの雑誌らしき紙の束。訝しげに訊くユニちゃんに対してステマックスは含みのある声を返し、マベちゃんは警戒するよう声を上げて……だけど次の瞬間、わたしは気付いた。それは、ただの本ではない事に。

 ばら撒かれた本の内、大半の表紙で最も多く占めているのは肌色。全ての本で表紙に描かれているのは女性で、開いている本から見えているのもやはりその殆どが女性の姿。そして、表紙や中のコマに描かれた女性は、多くが一糸纏わぬ姿、或いは本来隠すべき部分が露わになっている、扇情的な格好をしていて、見える限りの内容は愛を感じるものから、思わず目を背けたくなるようなものまで多種多様。そう、それは…ステマックスが落とした本というのは……

 

「きゃあっ!な、ななっ…なんて物を持ち歩いてるのよ貴方ぁあぁぁッ!?」

 

……成人向け、18禁、R-18…所謂そういう名称で呼ばれる、凄く如何わしい雑誌だった。

 

「なぁぁ……ッ!?」

「う、あぅ…こ、これって…この本って……」

「こ、これぞ五欲の術で御座る…拙者の奥の手にして身を切るような思いの秘儀…とくと味わうで御座るッ!」

『んな……ッ!?』

 

 想像を絶する隠し玉に、それをまじまじと見てしまったという恥ずかしさに、わたしは勿論ユニちゃんも絶句し、マベちゃんもまた一気に顔を赤くする。

 あまりにも破廉恥過ぎる、戦闘を冒涜している…けれど確かに意表を突き硬直させるという意味では有効な、とにかく思いもしなかったステマックスの奥の手。だけど次の瞬間ステマックスは隠していた煙玉を床へと叩き付け、叫びと共にわたし達の視界を奪う。と、とくと味わえって…これじゃ味わうも何も見えないわよ!?…って違う、そうじゃない…ッ!

 

「図られた…ッ!ユニちゃん、吹き飛ばすわよッ!!」

「はいッ!」

 

 まんまと術中に嵌まってしまった事へ歯噛みしながら、螺旋を描くように飛び上がるわたし。その動きによって発生する風を利用する事でわたし達は煙幕を吹き飛ばし、即座に周囲へ目を走らせる…けど、ステマックスの姿は見当たらない。

 

「くっ…こ、こんなふざけた策でしてやられるなんて…ッ!アイツはどこの下品な偽怪盗よッ!あーもうッ!」

「お、落ち着いてユニちゃん…」

「…まだよ、まだ逃げられたとは限らないわ…!」

 

 天井にも、会場の出入り口にもステマックスの姿はない。だけどそれだけで諦めるようなわたしではなくて、即座にわたしは時間を確認。そして頭の中に入れておいた時刻を既に過ぎている事を確かめて、天井の穴から外へ出た後ある部隊へと通信を掛ける。

 

「パープルハートよ、聞こえる!?」

「……!はい!こちらパールス6、異常はありません!」

「本当? 天井の穴から出ていく存在はいなかった?」

「天井の穴及び各出入り口は監視していましたが、今お出になった女神様以外、そのような反応はありませんでした!」

「分かったわ。なら、もう少し監視を頼むわね」

 

 インカムから聞こえてくるのは、空中にて警戒を行っているMGのパイロットからの返答。

 この作戦を行うに際し、わたしは念の為にと同じ時間帯に哨戒任務へ当たる予定の部隊へ、途中からでも何機か来てくれるよう話していた。

 その結果得られた、何かが出ていった様子はないという回答。続けてわたしは外で待機している警備員にも連絡をかけ……同じ答えを彼等からも受け取り降下。

 

「…朗報よ、二人共。恐らくまだ、ステマックスはスタジアムの中にいるわ」

「…ネプちゃん、それって……」

「えぇ、ステマックスはどこかに隠れてる。逃げたんじゃなくて、きっとわたし達をやり過ごそうとしてるのよ」

 

 考えてみれば、その可能性は始めからあった。だって、わたし達が煙幕によって視界を奪われていたのは、極僅かな時間だったんだから。幾ら俊敏なステマックスとはいえ、あんな短い間で逃げ果せるというのなら、もっと早い段階で取り逃がしていてもおかしくはない。

 完全にしてやられた。一杯食わされた。だけど、まだ作戦失敗じゃない。まだステマックスがスタジアム内にいるのなら…状況はわたし達に有利なまま。

 

「どこかに隠れてる…ジャミングは、スタジアム全体に効果があるんだよね?」

「そうよ。このインカムも機能しない位ばっちりジャミングしてるから、外に出ない限りは外部に連絡を取られる事はないと見ていいわ」

「だったら、虱潰しに探せば良いだけですね。…って言っても、広いからそう簡単にはいかないか…ステマックスって、影薄いからうっかり見逃す可能性もありますし…」

 

 とはいえユニちゃんの言う通り、この広い上に部屋数も少なくないスタジアムの中から見つけ出すのは一苦労。加えて隠れる以上は普通なら入らない場所に潜んでいる可能性も大いにある訳で、時間がかかる事は必至。

 

「…一先ず応援を呼んで、人海戦術を取るしかないわね。でも隙を作らず出られない状況を維持さえすれば、きっとステマックスを捕まえられる筈よ」

「…ですね。あの、アタシ達は……」

「向こうが心配なら止めはしないけど、出来れば残ってほしいわ。わたしは勿論指揮をする必要があるし、ステマックスの行動を推測する上で二人は貴重な人員だもの」

「そういう事なら、わたしは勿論良いよ。…でも……」

「でも?」

「…そういう言い方をされると、ユニちゃんは断り辛いんじゃないかな……」

「あっ……」

 

 ここからはどう探すか。人員配置はどうするか。この時点から先の事を考え始めていたわたしだけど、そのせいでうっかり発言をしてしまう。

 不味い、ユニちゃんは目上の人を立てるタイプなんだから、これじゃあユニちゃんが自分の意見を言えなくなってしまう。マベちゃんに言われたわたしは、胸の中に「やってしまった」という思いが広がって…だけどユニちゃんは、ふるふると首を横に振る。

 

「あ、い、いえ…遠慮とかなしに、アタシもここに残ります。元から戦力は向こうの方が充実してますし、こんな半端な状態で終わらせるなんて嫌ですから」

「そ、それなら良かったわ…」

 

 危惧した事は避けられたけど、雰囲気からしてそれはそれで気を遣わせてしまった様子。…うん、これは反省ね……。

 

「…こほん。ともかくまずは応援の要請とそれまでの警戒、それに何がどうなったかを皆に連絡する事ね。二人共、取り敢えず見て回れる範囲に隠れてないかを確認したら移動するわよ」

 

 自分で自分に反省するよう心の中で言い聞かせ、それからわたしは二人に言う。

 有利だけど、まだ終わっていない。勝利を掴んではいない以上、まだまだ油断なんて出来ない。だけど心配する必要もない。油断せず、しっかりと然るべき捜索と対処さえすれば、きっとこの有利を勝利へと変えられ……

 

「……あ」

「……?どうしました?マベちゃんさん」

「マベちゃんさん…うーん、やっぱりさん付けは無しでも良いんだけどなぁ…。…じゃなくて……この本、どうしよっか……」

『あ……』

 

 何とも言えない表情でマベちゃんが指差す先。そこにあるのは、転がったままの薄い本達。正直わたし達はそれのせいでステマックスを取り逃がしたようなものだし、良い印象は全くもってないんだけど、だからって本に罪はない訳で……ま、まぁ何とかしたわ。うん、何とかしたから…具体的にどうしたかは、訊かないで……。

 

 

 

 

「うん、うん…分かった。何かあったら、すぐに連絡してね」

 

 プラネテューヌでユニちゃん発案の作戦に当たっていたお姉ちゃんからの、状況報告。インカム越しの言葉に返答したわたしは、同じくインカムで聞いていた皆さんと頷き合う。

 

「中々やりますわね、彼。もう一人程向こうに当たるべきだったかしら……」

「こっちは向こう以上に未知数だし、スタジアム内に封じ込めるのには成功してるんだから、判断ミスって程じゃないでしょ」

 

 顎に指を当てるベールさんの発言に、ノワールさんが肩を竦める。これに関してはまだ作戦続行中な訳だから、今のところ答えは出せない。

 

「何れにせよ、向こうも頑張ってくれてるんだから、こっちも気を引き締める必要があるわね。ロム、ラム、起きてる?」

「もっちろん!」

「ねむく、ないよ」

「…みたいね。さてと、ネプギア…今はどこを示してる?」

 

 今は早朝。ロムちゃんとラムちゃんの目がぱっちりしているのを見たブランさんは、その視線をわたしの方へ。

 わたし達は今、ルウィーの生活圏外を移動中。でも徒歩や飛行じゃなくて、わたし達だって事を気取られないよう車両を使って動いている。

 

「はい。少しですが、出発前からまた変わっています」

「という事は…やはり、対象は移動能力を持っている、或いは移動能力を持つ何かに乗っていると見るべきですわね」

 

 推測を立てるベールさんに、わたしは頷く。それは全会一致の認識で、それ以外とは考えられない。

 USBメモリに入っていたシステムによって示された、恐らく例のサイトに纏わる何かが存在している場所。けどそれは、これまでに何度かマーカーの位置が変わっていて…システム側に問題がある訳じゃないのなら、対象が移動しているとしか思えない。

 そしてそれを確かめる為、発見出来たのなら対処する為に、わたし達はマーカーが示す場所へと向かっている。…いや、今はもう向かっていたって言うべきだね。だってたった今、わたし達の乗る車両が停止したんだから。

 

「…到着致しました、ブラン様」

「そのようね。警戒しつつこの場で待機しておいて」

 

 改めて皆で頷き合い、車両を降りるわたし達。マーカーが示す場所はもう少し先だけど、何があるか分からない以上、完全に重なる地点までは移動出来ない。

 マーカーが示す場所にあるのは、一体何か。そこには誰が、或いは何がいるのか。そんな緊張感を抱きながらわたし達は降り、周囲を見回し……だけど全員、足が止まる。

 

「……ネプギア…場所は、間違っていないのよね…?」

「は、はい。その筈です。間違いなく、もう目視で見える距離の筈なんです…」

 

 初めに発されたのは、ノワールさんの困惑した声。訊かれたわたしは答えるけど、そのわたしの声にも困惑というか、動揺の感情が籠ってしまう。

 そう、間違いなくわたし達はすぐ側まで来ている。距離から考えれば、余程小さな物且つ野晒しになってるとかでもない限りは、見えてこない方がおかしい。

 そしてここは、開けた草原。雪も少ない、生活圏から遠く離れた全方位がよく見えるような地形で……だけど、何もない。マーカーは、すぐ側を示している筈なのに、場所は合っている筈なのに……わたし達の見回すここには、車両と草原以外何もなかった。




今回のパロディ解説

・「〜〜捕まえたにも〜〜ゲーム〜〜」
直前のユニの台詞にもある通り、RPGにおいてよくある展開の事。解説するまでもない気もしますが…これに関しては原作シリーズもそうなので、触れておく事にしました。

・下品な偽怪盗
怪盗ジョーカーに登場するキャラの一人、ニセスペードの事。前にもパロった気がしますが、五欲の術は彼の秘技エロエロ(ラブラブ)タイフーンとほぼ同様の技なんですよね。
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