超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第九十七話 現れる味方、現れる敵

 招集された軍の部隊及びネプテューヌ達女神の信頼する仲間による、プラネスタジアム内の捜索。軍を動員してまで捜索している対象は、姿を眩ましたアフィ魔Xの一員、ステマックス。

 

「ここにもいないですね…ステマックスさーん、どこにいるですー?」

「呼んでも出てこないでしょ…後自販機の中はそもそも入れないって……」

 

 スタジアムの一角、比較的外周部に近い通路を歩くのは、パーティーメンバーの一員であるコンパとアイエフ。だがそこを歩いているのは、彼女達だけではない。

 

「自販機…チーカマなら、ギリギリ入れそうだな……」

「いや無理だから。自販機の中を何だと思ってるのよ」

「自販機かぁ…そういえば時々、食べ物を売ってる自販機ってあるよね」

「あぁ…(まさかまたお腹空いてるのかしら…今のは会話として普通の流れだけど、彼女凄く大食漢だし…)」

 

 二人の後ろ。一見和やかに雑談しつつ、しかし全員警戒は一切怠っていないのは、別次元からやってきた四人。彼女達もここにいるのは、普段のちょっとした立ち居振る舞いから彼女達が手練れである事を理解していたネプテューヌが、彼女達にも協力を要請し、プラネタワーに世話になっている四人がそれを快諾した結果。

 通路は勿論の事、各部屋や非常口、果てはロッカーやどこぞの傭兵を想像したのか段ボールの中までもと、彼女達は入れそうな場所を片っ端から探していく。それはある種、奇妙な光景でもあるが…仮にも女神や忍者の前から姿を眩ます事に成功した相手な以上、確認する上でやり過ぎなどという事はない。……流石に、自販機は無いだろうという返しをされていたが。

 油断なく、見逃しなどしないという事を念頭に入れて探す彼女達。…そんな彼女達を、曲がり角の影からひっそりと見やる者がいた。

 

「…流石に…あの人数の突破は、無理で御座る…な……」

 

 息を潜め(と言っても呼吸はしていないが)てコンパ達をやり過ごすと、その存在…ステマックスは、ぽつりと力無く呟く。

 足音が完全に聞こえなくなったところで、ステマックスもまた移動開始。しかしその足取りは遅く、ネプテューヌ達との戦闘時に見せていた俊敏さはない。

 

(身体が重い…上手く、動かないで御座る……)

 

 戦闘の終盤、マーベラスAQLの一太刀を浴びる事で出来た損傷。離脱時点では然程問題のなかったそれが、時間経過によって少しずつ周辺機器…即ち彼の身体の様々な部位に影響を及ぼし、今や動きそのものを阻害する程のダメージへと至っていた。

 もしもそれが腕部や脚部であれば、最悪その部位をパージしてしまえばいいだけの事。しかし彼が損傷を負ったのは胸部であり、身体の中心且つ人間同様重要な器官が複数収納されているそこを、取り外す事など出来やしない。

 

「正に、年貢の納め時…されど、諦めないで御座る…使命を果たせず力尽きるなど、忍者の名折れ……ッ!」

 

 全方位に警戒を向け、可能な限り外部から情報を取得し、少しずつ少しずつステマックスは進む。

 彼は、機械としての死など微塵も恐れていなかった。だが、まだやり残した事が沢山あるという思いが…何よりアフィモウジャスへと送った「待っていてほしい」という言葉を果たすのだという熱意が、機械の身体を動かし続ける。

 

「…あら?今、何か動いた気が……」

「向こうか?俺には何も見えなかったが…念の為、確認しておこう」

「……っ!」

 

 T字通路の片側にいる軍人達の視線が向いていないタイミングを見計らい、進もうとしたステマックス。しかし想定よりも動きが遅れ、ほんの僅かながら一人の軍人の目に脚部が映ってしまう。

 見つかってしまえば、ただでさえ困難な脱出がいよいよ絶望的となる。故にステマックスは必死の思いで身体を動かし、ぎこちないながらもそれなりの速度でT字通路から離れる事によって、何とか見つかる事を回避。

 されどその動きが仇となり、バランスを崩したステマックスは正面から床へと転倒。装甲に覆われた彼の身体が柔らかい筈もなく、ガシャンという大きな音が静かな通路の中で響く。

 

(ま、不味い…早く、移動しなくては…離れなくては……!)

 

 運動能力が激減している今、音を立ててしまうのは致命的。人が来るのは勿論の事、何かが起きたと女神を呼ばれてしまえば、完全に彼は万事休す。だからこそステマックスは即座に立ち上がろうとするが……身体が動かない。転倒で損傷部位が更に破損したのか、先の無理な移動が原因か、それとも既に身体は限界すれすれだったのか。離れなくてはという彼の意思とは裏腹に、彼の身体は思うように反応しない。

 

「…は、は…どうにもならない事もある…そういう事で、御座ろうか……」

 

 何度も立ち上がろうと試すステマックスだが、身体はガクつきその動きは緩慢なばかり。そうして時間だけが過ぎ、微かに足跡も聞こえてくる中…遂にステマックスが漏らす、乾いた笑い。諦観を感じさせる、不気味な程に穏やかな声。

 ここまではまだ、動く事が出来た。勝ち目のない相手でも、自分なりに行動する事が出来ていた。されど、今はもう動けさえしない。努力をしたところで、まともに動かない現実を突き付けられてしまうだけ。…故に、思ってしまった。ならばもう、諦めるしかないだろうと。

 そう考えると、楽になる。諦めてしまえば、現実も受け入れられる。ここまでの経緯を考えれば、自分は十分に頑張った、だからこれは仕方のない結果なのだと自分も納得させられる。──だが、

 

「…ま、だ…諦められないで御座る…諦めたく、ないで御座る……っ!」

 

 手を伸ばすようにして腕を突き、踏み締めるようにして脚を動かし、それでもステマックスは立とうとする。無理だと分かっていても、諦めるという選択へ否を突き付ける。

 動ける見込みなどはない。思考回路はどうにもならないと既に結論を出している。だとしても尚ステマックスが諦めないのは、偏に諦めたくないから。単純で、飾り気のなく…だからこそ強い、折れない意思。初心で、人見知りで、決して自分に自信などないステマックスだからこそ…美しく諦める事ではなく、彼は何としてでも諦めないという道を選ぶ。

 

「将軍…拙者は、諦めないで御座る…!ユニ殿…拙者は、頑張るで御座る……ッ!」

 

 立ち上がれないのならばと、床を這いずる。どんなに遅くとも、動かない身体がどれだけ情けなくなろうとも、ステマックスは手を伸ばし続ける。

 近付いてくる複数の足音。迫るリミット、あまりにも遠い道のり。そしてステマックスが伸ばした腕の先に姿を現す…一人の少女。

 

「…ぁ……」

 

 彼女の姿が見えた瞬間、ステマックスは固まった。誰にも見つかってはいけない、見つかる前に隠れなくてはいけないと、必死に動いていたのだから。

 終わりなのか。やはり無理だったのか。沈んでいくような思考が過ぎる中、ゆっくりと顔を上げるステマックス。そんなステマックスを見下ろしていた少女は、彼の前ですくりとしゃがみ……言った。

 

 

 

 

「…ね、助けてあげよっか?」

 

 

 

 

 ルウィーの長たるブランの手振りに従い、主砲による砲撃を行ったミズガルズ級汎用空中戦闘艦。ラステイションやリーンボックスの戦闘艦にも搭載されている第三世代型アクティブステルスに加え、魔法技術による不可視…光学迷彩ならぬ魔術迷彩とでも言うべきステルスシステムを有するルウィー国防軍の航空戦闘艦の登場は、戦場に激震を巻き起こしていた。

 

「光学主砲による対象への損傷は軽微!エネルギー型防御兵装に防がれたものと思われます!」

「Unknown1、Unknown2、共に急速回頭!各砲門もこちらへと砲塔を向けつつあります!」

「光学主砲一番再充填!魔力障壁及び高エネルギーシールド展開用意!反撃に備えなさい!」

 

 空中艦のブリッジ内。そこに飛び交うのはオペレーターの報告と艦長の指示。続けて艦長は格納庫へと連絡を掛け、待機中のパイロットと意思疎通を交わす。

 

「準備は出来てる?恐らくすぐに、キラーマシンはこちらへと向かってくるわ。だから……」

「えぇ、分かってます。敵部隊の迎撃と、必要に応じて女神様の援護…前衛は任せて下さい」

「うん、お願いね。さ、来るわよ!」

 

 急遽出撃する事となった為に、現在艦に搭載されているMGは一個小隊と一機のみ。対するアフィモウジャス側の艦は積載能力に長けるのか、何割か撃墜されても尚数十機のキラーマシンを展開してきている…が、艦長の顔に焦りはない。

 だが、それもその筈。確かに数こそ国防軍側は大きく劣っているが…そのもう一機というのは、ルウィー国防軍の二大エースの一角が駆る専用機なのだから。

 

「1時、2時、10時の方向よりキラーマシン接近!数は陸戦型六、空戦型四です!」

「機銃準備、カタパルト展開!アロンダイト・エアキャヴァルリー発艦よ!」

 

 迫り来るキラーマシン部隊に対し艦首部を開き、内蔵型のカタパルトを展開する空中艦。伸長された左右二本のカタパルトに光が灯り、次の瞬間一機のMGが艦より出撃。

 アロンダイト・エアキャヴァルリー。空戦用ユニットに備えた赤翼を広げた白と金のMGは、騎士の如く先陣を切る。

 

 

 

 

 ブランさんは言っていた。もしかしたら、どこかに艦が…それもレーダーに対するステルスと、視認に対するステルスの両方を備えたフルステルスシステム搭載艦が、潜んでいるのかもしれないって。それならば見当たらない事も、マーカーの移動も説明が付くって。

 その後はまるでタイミングを図っていたかのような砲撃が放たれた事で訊きそびれちゃったけど、まさか、まさか……

 

(同じくフルステルスシステムを搭載した空中艦を、ブランさんが出撃させてたなんて……っ!)

 

 アフィ魔Xの物と思われる二隻の空中艦と対艦戦闘を始めたルウィー国防軍の空中艦を見て、まだプラネテューヌでも実用化出来ていないフルステルスを二種類もの艦が運用しているという事実を前にして、わたしは震えていた。ドキドキして、ワクワクして、心が踊ってしまっていた。

 

「凄い…ロムちゃんラムちゃん、いつの間にフルステルスが実戦レベルにまでなったの!?全然見えなかったよ!?」

「ふぇっ!?あ、え、えっと…」

「そういう話は後にしなさい!」

「あっ…は、はいっ!」

 

 ついつい好奇心のままにフルステルスの事を訊こうとしてしまったわたしはノワールさんに一喝され、反省しつつ意識を興味から戦闘へ。

 こちら側の空中艦が参戦した事で、二隻の空中艦及びキラーマシン部隊の攻撃は分散。艦一隻と搭載されていたキラーマシンの分敵戦力は増加したとはいえ、その二隻とミズガルズ級空中艦は正面から砲撃戦が出来ている以上…今は、ここまでで一番の有利。

 

「いい加減、観念してはどうでしてッ!」

「それともまだ、隠し球があるってかよッ!」

「ちぃッ…!まさか、同じ手で返されるとは……ッ!」

 

 突き出される大槍と、振り下ろされる戦斧。それを阻まんとしたアフィモウジャスさんの大剣は弾かれ、そこに叩き込まれるイリゼさんのサマーソルトキック。伸ばされた爪先がアフィモウジャスさん…の強化外装の顎を蹴り上げ、更に姿勢が崩れたところへノワールさんが飛び膝蹴り。淀みない連携にアフィモウジャスさんは蹴り飛ばされ、ルウィーの草原を何度も転がる。

 

「だがしかし…数ならば、まだこちらが…ッ!」

「いいや、そうは……」

「させませんッ!」

 

 砂埃を立てながら片膝を突くアフィモウジャスさんの周囲へ滑り込む、数機のキラーマシン。即座にキラーマシンは胸部を展開して砲撃をしようとするけど…イリゼさんの声を合図に、わたし達女神候補生組が先んじて攻撃。シールドの展開を強いらせる事で攻撃を阻み、その隙に再びイリゼさん達が接近をかける。

 

(空中艦の防衛は…うん、大丈夫みたいだね…!)

 

 ちらりと横を見てみれば、そこそこの数のキラーマシンがこっちの空中艦へと迫っている。けれど陸戦機は降下したパンツァー隊が砲撃で進行を遅らせている間に艦の対地攻撃で上から叩き、空戦機は飛行用ユニットを装備したアロンダイトが陣形を掻き乱し、崩れたところを主力MGのレグファ小隊が艦から付かず離れずの距離で迎撃する事によって、上手く抑え込んでいる。逆に言えばMGを対艦攻撃に向かわせられていないって事でもあるけど…アフィモウジャスさんと戦ってるわたし達からすれば、ある程度の戦力を引き付けてくれるだけで十分。

 ただそれでも…それでもやっぱり、アフィモウジャスさんはしぶとい。そう、強いとか脅威とかじゃなくて……凄まじく、しぶとい。

 

「貰った……ッ!」

「ぬ…うぅうんッ!!」

「なぁ……ッ!?」

 

 ノワールさん達の陽動で大振りの攻撃を誘い、それを躱して真正面に躍り出たのはイリゼさん。完全に隙を突く形となったイリゼさんは飛び上がり、上段から攻撃を仕掛けに入るけど……それに対して、アフィモウジャスさんはまさかのヘッドバット。自ら強化外装の頭部をぶつける事でイリゼさんの一撃が勢いに乗り切る前に強引に止め、すぐに大剣を振り回してくる。

 本体まで斬り裂いてしまう事を避ける為か、その時イリゼさんが手にしていたのは刃のない棒だったけど、それにしたって普通はそんな対応出来ない。もしあれを意識してやったのなら、覚悟が決まり過ぎている。

 

「くっ…何時ぞやのジャッジのような事を……ッ!」

「ほんっと無茶苦茶ね!あんたみたいなタイプは初めてよッ!」

「その言葉ッ、褒め言葉として…ぐぅっ…受け取って、おこう…ッ!」

 

 すれ違いざまに振るわれたノワールさんの大剣が、左腰の装甲を切断。反撃しようとしたところへブランさんが突進を掛け、寸前で防御したアフィモウジャスさんの身体がぐらつく。

 優位は優位。でもそのしぶとさから決め切れていない状態で、どういう装着方法を取っているのか分からない以上、一刀両断や胴体を貫くような攻撃は出来ない。だから優位だけど決着には至らない戦闘が続いて…そこでわたしが見たのは、ルウィー国防軍の空中艦対処に重点を置いている二隻の動き。

 

「…今なら、艦にも近付ける……?」

「近づく…?あっ、落としちゃうってこと?それならわたしが……」

「だ、駄目だよ!?何人乗組員があるかも分からないのに撃墜なんて…!…でも……」

 

 対空砲火を潜り抜けて肉薄する事は、楽じゃないけど無理でもない。けどさっきまではキラーマシンの妨害もあったし、アフィモウジャスさんの無力化を第一に考えていたから、対艦攻撃は自然と選択肢から外れていた。

 でも今は状況が違う。状況も、戦況の見込みも変わっているんだから…違う選択を取る価値はある。

 

「皆さん!わたしは、元々の目的を果たしに行きますッ!ロムちゃん、ラムちゃん、ここは任せてもいい?」

「ふふん、とーぜんよっ!」

「うん、任せて…っ!(ぐっ)」

 

 そう、わたし達は元々アフィモウジャスさんを倒しに来た訳じゃない。わたし達の当初の目的は、別のところにある。

 だからわたしは意味を理解されないよう抽象的な言葉を口にし、二人にこの場を任せて上昇。空戦型キラーマシンを射撃で牽制しつつ、攻め込むルートを割り出す為に周囲を見回して……そこでわたしの前に現れたのは、長く綺麗なポニーテール。

 

「手伝いますわ、ネプギアちゃん」

「あ…ありがとうございます!…でも、良いんですか…?」

「良いも何も、わたくし達は半ばアフィモウジャスに引き付けられていたようなものですもの。一人位はこちらに来た方が、状況も良い方に転がりますわ」

 

 ぱちんと軽くウインクをしたベールさんに頷いて、わたしは目標…恐らく例のサイトに纏わるシステムか何かが搭載されている空中艦へと向かって突撃開始。下ではわたし達の動きに気付いたアフィモウジャスさんが見上げていたけど…そこにロムちゃんとラムちゃんの撃ち込んだ氷塊が飛来した事で、わたし達へのアクションは何も起こらない。

 

「はぁあぁぁぁぁッ!」

 

 ベールさんのランスチャージを受けて胴体が貫かれたキラーマシンの頭部をわたしが斬り飛ばし、わたしが射撃で追い立てた機体をベールさんが薙ぎ払いで叩き落とし、隙があればそのまま横を通り抜ける事で、わたし達は空中艦へと近付いていく。

 まだまだ余裕。量産型の空戦機程度なら、わたしとベールさんの脅威にはならない。難しい事があるとするなら…それは、ここから先の道。

 

「……っ…流石に向こうも必死の迎撃を見せてきますわね…ッ!」

 

 ある距離まで近付いたところで、一気にわたし達へと襲いかかったのは機銃による対空砲火。機銃と言っても艦載クラスとなれば結構な威力になる訳で、当然連射性能も相当なもの。ここからは勢いよりも慎重さが必要になるし、場合によっては一度下がる事も重要になる。

 

(ダークメガミのエネルギー刃とは…一長一短、かな……ッ!)

 

 単発の攻撃範囲はダークメガミの方が上。連射性能はこの空中艦の方が上で、どっちがより厄介かと言えば……状況が全然違うから、正直どっちか分からない。

 

「…っと、ネプギアちゃん!」

「はい、後ろですね…!」

 

 目的は撃墜じゃなくて侵入だから、すぐ中へ入れる位置に取り付かなきゃいけない。出来る限り射撃で機銃を破壊しつつそのルートを探るわたし達だったけど、その間に背後へ直掩のキラーマシンが接近。流石に挟撃されると危ないし、無人機な以上味方の機銃も無視して突っ込んでくる可能性もあるから、一旦はその対処をしなくちゃいけない。そう思って振り返り、M.P.B.Lの銃口を一番近いキラーマシンへ向けようとしたその時……別方向からの魔力弾が、キラーマシンの翼を撃ち抜く。

 

「……!」

「ふふっ、頼もしいエースさんですわね…!」

 

 わたしの視界の外から姿勢を崩したキラーマシンへと一気に迫り、剣でメインスラスターを斬り裂いたのは白と金のあの機体。続けてその機体はライフルタイプの魔力砲でキラーマシンの進路を塞ぐと、スケートの様に軽やかな動きでわたし達より前へと躍り出て……

 

(…え?今、ベールさんの方を見たような……)

「今ですわ、ネプギアちゃんッ!」

「……っ!はいッ!」

 

 注意を引くが如く、魔力砲での照射と空戦用ユニットに装備されたミサイルによる同時攻撃を放ったアロンダイト。その後は即座に反転し、後方のキラーマシン迎撃に向かったけど…振り返ったその時、ほんの一瞬だけどアロンダイトのカメラアイは、ベールさんの方を見ていたような気がした。

 でもそれを訊いているような時間はない。ベールさんの言う通り、アロンダイトの強襲でわたし達への迎撃が緩んだ今が最大のチャンスなんだから。

 答えると同時にふっと小さく息を吐いて、爆ぜるようなイメージで加速。機銃がわたし達を捉えるよりも速く突っ込み、間に合わなかった弾丸は勢いのままに斬り払い……わたし達が肉薄に選んだのは、艦後方に位置するブリッジ。

 

「突っ込みますわよッ!」

「了解です!」

 

 ブリッジ側面へと滑り込んだベールさんは、掛け声と共にガラスへと突撃。速度の乗った大槍の一突きで容易くガラスを突き破り、機銃に追われるようにしながらわたしもその穴へと素早く飛び込む。

 

「退いて下さいッ!何もしなければ、わたし達も危害は…って……え…?」

 

 床に脚を突き立てるようにして着地したわたしはM.P.B.Lを水平に構え、ブリッジ内の乗組員を牽制…しようとした。実際に、その動きに入った。

 だけど、わたしはすぐに気付く。最低でも何人かはいると思っていたブリッジには、操舵士もオペレーターも…誰一人として、いない事に。

 

「…無人……?」

「これといい、電脳に精通しているといい、ロボットといい…もしやわたくし達が相手にしているのは、電脳貴族(サイバーノーブル)か何かですの…?」

 

 驚いたし、唖然とした。無人機がある以上、無人艦だって不可能じゃないのかもしれないけど…それならブリッジが、人が操作する為の区画がある理由が分からない。

 けれどそれも、考えるのは後。その疑問は一度頭の隅に押しやって、わたしはNギアを艦のコンソールの一つに接続。…このシステム構築は、やっぱり……。

 

「…ネプギアちゃん、出来まして?」

「これもありますし、やれる限りやってみます。奥から誰か来た時は……」

「えぇ、大船に乗ったつもりでわたくしに任せて下さいな。…まあ、実際にここは艦の中ですけども」

 

 Nギアに繋げたあのUSBメモリ…のコピーを見せて、わたしは艦内システムの捜査を開始。探すのは勿論例のサイトに纏わるデータやシステムで、ちょっと触っただけでも一筋縄じゃいかない事が理解出来る。

 

(…けど、見つけられれば一気に解決に繋がるんだもん。何としても、見つけ出す…!)

 

 手掛かりはある。起動中だったおかげで変なロックもかかってないし、出来ないなんて事はない。その為に必要な時間も、ロムちゃんラムちゃん達と国防軍の皆さんが、十分に稼いでくれる。

 数分が経った。まだ成果は上げられていない。また数分が経った。少しは進展したけど、これだったものは見つけられていない。そこからまた、数十秒経って…聞こえたのは、アフィモウジャスさんの叫び声。インカムからそれが聞こえたって事は、相当な声量だって事。…もしかしたら、外でも何か動きがあったのかもしれない。

 

「…何か、わたくしにも出来る事がありまして?」

「…じゃあ、Nギアの方に映し出されるデータを見て、何か気になるものがあったら言ってくれますか?そうすれば、わたしはこっちの画面に集中出来るので…」

「分かりましたわ」

 

 置いておいたNギアをベールさんに渡して、コンソールの操作を再開。そんな都合良く、ぱっと見で分かるデータがあるかは怪しいけど…やってみなくちゃ分からない。それにベールさんが協力してくれている…その形が出来るだけでも、わたしにとっては心強いから。

 まだまだ調べなきゃいけないデータは膨大。それにもしかしたら探しているデータはもう一隻の方にあるのかもしれないし、それがこっちからアクセス出来ない場所にある可能性もある。だけど、それを検証するのはもっと後。今はまず、目の前の事を調べなきゃ。

 そんな思いで、わたし達はデータの捜索を続ける。皆も外で、それぞれの戦いを続けている。同じ目的に辿り着くべく、わたし達は別々の戦いを繰り広げている……その時だった。

 

『……ッ!?』

 

 前触れもなく、予兆もなく…不意に外で轟く、凄まじい音。反射的に手を止め、外に手をやってしまう程の、激しい轟音。

 一瞬の硬直の後、視線を交わすわたしとベールさん。次の瞬間ベールさんは外へと飛び出て、わたしもイリゼさん達へと通信を掛ける。

 

「イリゼさん!皆さん!何があったんですか!?」

「……っ!緊急事態だよネプギア!奴が……」

 

 ストレートな問い掛けに対し、返ってきたのはイリゼさんの緊迫した声。その声音から、相当な何かがあったんだという事を確信し……そして次の瞬間、わたしは見た。艦の外、空から落ちるようにして飛来する──紫のダークメガミを。




今回のパロディ解説

・どこぞの傭兵
メタルギアシリーズの主人公の一人、ソリッド・スネークの事。でも原作シリーズで段ボールの中に…と言ったらケーシャですね。…まぁ、当然と言えば当然ですが。

電脳貴族(サイバーノーブル)
マクロスfrontier(劇場版含む)に登場する、ある登場人物(達)の総称。艦の迎撃を突破し突入といえば、クイーン・フロンティアに対するブレラ(VF-27)ですね。
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