超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第九十九話 思惑は巡る

 視覚的、電子的、その双方での不可視化を成立させるステルスシステムを展開し、戦域から離れていく二隻の空中艦。その一角、相当数の艦載機を喪失した事で大分広くなった格納庫内で、アフィモウジャスは座り込んでいた。

 

「くっ…ここまで全身ガタガタになったのは、いつぶりか……」

 

 ダークメガミの強襲に乗じ、撤退を選択したアフィモウジャス。強化外装に内蔵されていた使い切り型ブースターによって跳躍し、ハッチより艦に戻った彼だったが、取り外した強化外装は酷い有り様。特に離脱する為の殴打を放った結果、右腕パーツはノワールの反撃によって完全に両断されており、取り外す前から彼本体の右腕部が露出していた程。更に彼が口にした通り、外装に覆われていた本体の身体もかなりの負荷を抱え、とても放置などは出来ない状態。

 

「……ぐ、ぅぅ…ッ!」

 

 だが、アフィモウジャスはそんな身体で床を叩く。握った右の拳を、唸りと共に叩き付ける。

 彼が仕掛けたのは、ステマックスの為。女神を人質に取り、それを材料にステマックスを取り戻す為。当然それは、ステマックスが完全破壊…即ち機械としての死を迎えていないのであればの話だが、アフィモウジャスはそれを信じて疑わない。ステマックスが待っていてほしいと言ったのだからという信頼と、もう手遅れだとは思いたくないという恐れから、そう考えるように彼はしていた。

 されど、結果は惨敗。伏せていた二隻目を投入しても尚目的を達成する事は出来ず、逆に同じ発想での反撃を返され、ダークメガミの強襲がなければ…或いは女神達が本気の殺意を向けてきていたのなら、こうして艦に戻る事も恐らく出来てはいなかった。

 

(…やはり、あの時ステマックスの言葉を聞くべきだったのか…友の言葉よりも己の欲望を優先したワシが、愚かだったという事なのか……)

 

 座り込む彼を苛むのは後悔。やむを得ないと、あの場で倒れたところで何にもならないと撤退を選んだアフィモウジャスだったが、その撤退に次へ繋がるものなどない。隠し持っていた手札をほぼ全て見せ、更にかなりの損耗もしてしまった以上、もう不意打ちだとしても目的を果たせる望みは薄い。

 だからこその後悔。だからこその失意。そして何よりも、自らに対する怒りがアフィモウジャスの中で湧き上がっていく…そんな時だった。

 

「──やあ。無事に離脱出来たかな?」

 

 アフィモウジャスへ向けて送られてきた、一件の通信。それにアフィモウジャスが応じると、聞こえてきたのは穏やかな声。その声を聞いたアフィモウジャスは、握っていた拳をゆっくりと開き…言う。

 

「…何の用じゃ」

「それは勿論、君の安否確認だよ。協力者が健在かどうかは、きちんと把握しておかなければならないからね」

 

 ドライな声音で言葉を返すアフィモウジャスに対し、通信相手の雰囲気は変わらない。今は貴様とのんびり話すような気分ではない…と内心思っているアフィモウジャスだったが、それは言わずに会話を続ける。

 

「ふん…ワシ等と貴様はあくまで受注者と依頼主の関係。破格の条件には感謝しておるが、協力者になった覚えはない」

「そうかい、まぁ健在ならいいさ。まだ余裕があるとはいえ、ダークメガミ一体を捨て駒にしての結果が軍とぎあっち達に多少のダメージを与えた程度じゃ、あまりにも割りに合わないからね」

「…ワシをあの場から離脱させる事は、そのダークメガミを捨て駒にするだけの価値があったと?」

「あるからそうしたんだよ。君達が女神にとって無視出来ない、されど対処も難しい問題を引き起こしてくれたおかげで、大陸を現出させるところまでは順調に進んだんだからね。…けれど、奴は…原初の女神の存在は、些かイレギュラー過ぎる。無視出来ない要素な以上は、オレも有用な手札を出来るだけ残しておきたいのさ」

 

 声や表情だけならば、大多数の人が物腰の柔らかい人物であるという印象を抱くような通信相手だが、アフィモウジャスは警戒心を緩めない。しかし、それも当然だろう。その声の裏にある得体の知れなさは勿論の事、社会に大きな影響を与え得るシステムや大型兵器、果ては空中艦購入の支援までも行うような相手を、危険な代物を平然と用意させるような相手の事を、気軽に信用出来る筈がない。

 

「…撤退支援に関しては、それに見合った礼をしよう。だが、新たな依頼という事であれば他を当たるがいい。悪いがワシは今、何を差し置いてもやらねばならん事が……」

「…それは、彼の救出かい?」

「……っ!…そこまで把握しておったか……」

「ふふ、オレにも頼れる仲間がいるからね。そして…安心するといいよ。彼は無事…ではないけど、存命さ」

 

 声のみのやり取りでありながら、直接見透かしているかのような一言。声に驚きを滲ませながらアフィモウジャスが言葉を返すと、相手は得意げに軽く笑い…言う。ステマックスは、生きていると。

 それは、ここまでのやり取りの中で一番の衝撃。明言されたステマックスの存命に、アフィモウジャスは昂り……しかし、声のトーンは変えずに返す。

 

「……だから、依頼を受けよと?でなければステマックスの命は保証しないと?」

「酷いなぁ、それじゃあまるでオレが悪人のようじゃないか。…けれど、賢明な判断を期待したいね。今のような関係が続くのであれば、今後も何かあればオレは君達を支援するし、逆に選択次第では、ねぷっち達だけじゃなくオレ達も敵に回す事になるんだからさ。…さぁ、どうする?アフィモウジャス」

 

 変わる事なく穏やかな声で、しかし暗に脅迫も交えながら、その声の主は問う。それからの彼の身の振り方を、選択を。

 訪れたのは、数秒の沈黙。互いに何も言葉を発する事なく、空を行く空中艦の駆動音だけが僅かに響き……その沈黙の末、ステマックスは「…ふん」と鼻を鳴らした。

 

「…それは、今の関係を続けるという事と受け取ればいいのかな?」

「ワシは最もワシの…アフィ魔Xの利益となる行動を取る。それだけじゃ」

「その欲望への忠実さ、オレは嫌いじゃないよ。…さて、それじゃあ早速…と言いたいところだけど、今はねぷっち達も警戒を強めているだろうし、一旦は身を潜めるのがベターだろうね。急がば回れ、という事さ」

 

 警告とも取れる言葉を最後に、終了する通信。格納庫には静寂が戻り……そしてアフィモウジャスは、天井を見上げる。

 

「…そうか、ステマックス…お主、無事なのじゃな……」

 

 発されたのは、安堵の言葉。無論直接確認した訳ではないが、虚言であれば容易にバレてしまうような嘘を、この状況で吐く訳がない。だからこそアフィモウジャスは信じる訳ではないが、それを真実であると捉え…そこで漸く、彼は脱力するのだった。

 

 

 

 

 信次元上空に現出した、浮遊大陸。その中心部、教会と思しき…しかしどこか違和感のある建物の中で、通信を終えたうずめは吐息を漏らす。

 

「お疲れ様ー、うずめ。…というか、お疲れ?」

「…まぁ、彼は欲望に忠実だけど愚かではないからね。そして欲望は物事を動かす強力な原動力である以上、彼を軽んじる事は出来ないのさ」

 

 後ろから彼女に声を掛けたのは、女神ではないネプテューヌ。その声にうずめは肩を竦め、ネプテューヌへと向き直る。

 

「…けど、本当に助かったよねぷっち。まさか先を見越して独自に動き、誰にも知られる事なく彼を回収してくれるなんて」

「ふふん、これでもわたしは色んな次元を旅してきたんだよ?その経験と養われてきた思考を、舐めてもらっちゃあ困るなー!」

「…確かに、誰よりも油断しちゃいけないのはレイでも原初の女神でもなく、ねぷっちなのかもしれないね…」

「え……?」

「…なんて、冗談さ。それよりこれからも頼むよ。レイは言わずもがなで、クロワールも自分が楽しいかどうかを最優先にしている以上、信頼出来るのはねぷっちだけなんだから」

 

 楽しく喋ろうと調子良く胸を張ったネプテューヌだったが、それに対するうずめの反応は彼女の想像とは大きく違うもの。だがネプテューヌが目を見開くとうずめは再び肩を竦め、ネプテューヌへ向けてにこりと笑う。

 その反応に、ネプテューヌも一安心。しかしそれからネプテューヌの浮かべる表情は変わり、うずめへと静かに呼び掛ける。

 

「…ねぇ、うずめ」

「なんだい、ねぷっち」

「わたしさ、少しだけどこの次元の事も見て回ったよ。良いよね、信次元って」

「ああ、オレもそう思うよ」

 

 賑やかで快活な普段のネプテューヌとは違う、どこか落ち着きの感じられる声。その声音の変化をうずめは感じ取るが、彼女はそこに触れようとしない。

 

「…でもさ、悲しんでる人も沢山いるよ?不安そうな人も、一杯いるよ?この大陸の事だって、アフィ魔Xにうずめが依頼した事だって、きっと皆の幸せには繋がってないよ…?」

「…………」

「……嘘じゃ、ないんだよね?うずめは、皆を助けるんだよね…?」

 

 うずめを見つめるネプテューヌの顔は、嘗てない程に不安そう。声音から伝わってくるのは、「信じたい、だけど…」という思い。

 相手の心に触れるような、手を伸ばすような、ネプテューヌの瞳。その瞳に見つめられたうずめは、真正面から見つめ返して…言う。

 

「勿論だよ。オレには力がある。力ある者には使命と、責任もある。だからちゃんと、それを果たすさ。…女神の使命を、ね」

「…だよ、ね…うん、だよねだよね!いやぁ、なんかごめんね!折角うずめが信頼してくれてるのにさっ!」

「気にする事はないさ。オレとねぷっちの仲だろう?」

 

 一切動じる事なく、ネプテューヌの問いへと答えるうずめ。その言葉と醸す自信にネプテューヌも表情を緩め、彼女は普段の雰囲気に戻る。

 

「そう?そう言ってくれると助かるよ〜」

「ねぷっちがそう思うのも理解は出来るからね。…さて、最終段階とその為の判断はもう少し先とはいえ、ここからは女神のねぷっち達とぶつかる機会も増えるだろう。だから君も、動く時は細心の注意を払うんだよ?」

「…それは、どういう意味?巻き込まれないようにって事?それとも……」

「両方だよ。…まあでも、これは無用な心配かな?ねぷっちは女神の同一人物なだけあって、隠し事に気付かせもせず立ち回るのが上手いみたいだからね」

「それ褒めてる…?というか、ちっちゃいわたしはそういう事苦手だと思うけどなぁ…」

「どうだろうね?ねぷっちが出来るなら、小さいねぷっちも出来る…というか、普段からしているかもしれないよ?」

「うーん…ま、とにかく気を付けるよ。わたしもまだまだやりたい事がたっくさんあるからね」

 

 評価しているのか、それとも皮肉なのか。穏やかな態度故に読めないその意図にネプテューヌは困惑しつつも、朗らかな顔で部屋を立ち去る。

 しかしその寸前、ほんの一瞬ネプテューヌが見せたのは複雑そうな顔。うずめに対し、様々な思いが渦巻いているかのような表情。…しかし、うずめはそれに気付かない。

 そうして、うずめと別れたネプテューヌ。彼女は廊下を進んでいき…十字路を曲がろうとした時、反対側の通路より掛けられる声。

 

「…ネプテューヌ殿」

「あ、意識戻ったんだね。…うん?ロボットだから、意識が戻ったじゃなくて再起動したって感じ?」

「はは…まあ、どちらかといえば後者で御座るな…」

 

 そこにいたのは、一体の忍者。小首を傾げたネプテューヌに対し、忍者…ステマックスは、苦笑い。

 

「ところで、身体はもう大丈夫なの?というか、何もしてないんだから絶対大丈夫じゃないよね?」

「あー…詳しく説明すると長くなるので御座るが、機械は時間を置いたり再起動したりすると、少し良くなる事があるで御座ろう?」

「あ、うんあるね。……え、それ…?」

「分かり易く言えば、で御座る。見ての通り損傷はしたままな上、激しく動けばまた動けなくなるで御座ろうが…」

「そ、そうなんだ…後、距離遠くない…?」

「それは…ま、まあお気になさらずで御座る……」

 

 先程…プラネスタジアムでネプテューヌが彼を発見した時点では、ステマックスはまともに動けない状態だったが、確かに今は最低限動ける様子。そしてネプテューヌはやけに距離を取っている事にも疑問を抱くも、そちらに関してステマックスはぼかすだけ。

 

「うぅん…ま、いいや。で、どうしたの?わたしに用事?」

「…左様。まずはネプテューヌ殿、助けてくれた事を感謝するで御座る。この恩は忘れないで御座る」

「あはは、固いなぁステマックスは。わたしはそうした方がいいと思ったから、そうしただけだよ」

「……ならば、もう一つ。…ネプテューヌ殿は、どちらの仲間なので御座るか?うずめ殿か、それとも……」

 

 あっけらかんと笑うネプテューヌの顔を、じっと見つめるステマックス。そして続く質問、彼女の真意を問うような質問に対し、ネプテューヌは真面目な…されど温かみのある表情を浮かべて、言った。

 

「…そんなの、勿論うずめの仲間だよ。うずめの仲間だし…ちっちゃいわたし達の、味方でもあるんだ」

「…凄いで御座るな。まさかこんな近いところに、拙者には出来なかった事を平然と為す女性がいたとは……」

「ステマックスだって、凄い事をしたと思うけどね。…うん、やっぱり一番大切なのは…気持ちだよ」

 

 そう言って、ネプテューヌは窓の外から空を眺める。ただ空をではなく、もっと先の何かを見つめるように。

 一方、いつものように一人思案に耽っていたうずめもまた、ふと先のネプテューヌとのやり取りを思い出し…心の中で、呟くのだった。

 

(…あぁ、そうだ。オレは恨んじゃいない。憎んでもいない。だからオレが守る、オレが導く…全ての人は、オレが救うさ)

 

 

 

 

 アフィモウジャス及び空中艦の撤退と、ダークメガミの撃滅により、ルウィーでの戦闘は終了。もう一つの作戦に当たっていた皆との合流及び結果報告をする為、私達はプラネテューヌへ戻る事となった。

 

「まずは皆さん、お疲れ様でした。どちらも想定外の事態が起こった訳ですが、取り返しの付かない結果に至らず何よりです

( ̄∀ ̄)」

「ま、即応力も国の長には必要な力だからね。ざっくりした事はお互い道中で連絡してるし、手短に済ませましょ」

 

 私達が集まっているのは、いつも使っている会議室。腕を組んだ状態から右手を軽く振ったノワールに皆が頷き、ふっと気持ちを引き締める。

 

「じゃあ、最初はアタシ達の方から。…結果から言うと、ステマックスは未だに見つかっていません。何度かそれらしい報告はあったので、見失った時点でもう逃げられていた…という事はないと思いますが、一通り探しても見つけられていないのが現状です」

 

 そう言って申し訳なさそうな表情を浮かべるのは、対ステマックス作戦の提案をしたユニ。未だに、という表現から分かる通りプラネスタジアム内の捜索は続けられていて、コンパやアイエフ達も今はそっち。それなりの人員で約一日探し続けても見つからないという事は、既に逃げられてしまっている…という可能性もあるものの、はっきりしない以上は捜索を続けておく方が無難。

 

「けれど、彼は姿を眩ます前に手負いとなっているのですわよね?…であれば、そう易々と逃げ果せるのかしら…」

「ねー、UFOみたいにくーちゅーかんがステマックスをすい上げたってことはない?」

「…ピカー、って…?(ふよふよ)」

「そう、ピカーって!」

「うーん…でも外にいた軍人さんは誰も出てこなかったって言ってたし、どうかなぁ…。でも、空中艦自体はいてもおかしくないか……」

「問題はそこね。アフィ魔Xの有するフルステルス空中艦は二隻だけなのか、もっとあるのか、あるとしたら信次元のどこかに生産工場があるのか…一対二だったとはいえこっちの戦闘艦とまともに戦えるだけの戦力がある以上は、警戒を厳にしておくべきじゃないかしら」

 

 首を傾げるネプテューヌの言葉に頷き、ブランはコートの袖に隠れた右手の指を顎へと当てる。

 それは、全くもってその通り。女神からすれば厄介止まりの戦力だとしても、フルステルスによって気付かれる事なく動き回れるとなれば、国の防衛において脅威以外の何物でもない。二隻しかないのであれば、反撃で落とされる事によるダメージを考えて下手に攻撃する事はないだろうけれども、これからは空中艦の事を常に念頭に置いておかなければいけない。

 

「じゃあ、それを踏まえて今度はわたし達の方の報告を。…空中艦の奇襲から始まって、予想外な事が多発しましたが…結論として、目的は達成出来たと思います」

「…って、事は……」

「…でも、空中艦の…マーカーの示す場所に、例のサイトのサーバーとか、発信している端末とかは無かったの」

『…どういう事……?』

 

 一先ずプラネテューヌでの作戦の報告が終わり、次はルウィーでの作戦報告。ネプギアが発した言葉にネプテューヌが反応し、けれどそれに対するネプギアの返しは些か以上に不思議なもの。

 道中で行った連絡でも、そこに関するしっかりとした言及はされていない。だから私達が疑問の視線を揃って向けると、ネプギアはわたし達を見回し言う。

 

「空中艦の中にあったのは、情報配給用のデータベースや、大まかな指示を与えるシステム等なんです。なので、これはわたしの推測ですが…不安を煽るような記事を作っていたのは、実在する誰かじゃなくて、AIか何か…それもネット上を自動で移動出来る存在が、ネットに繋がっている別のサーバーを利用して記事を作っていたんだと思います」

「えっと…ラムちゃん、わかる…?」

「ううん…むー、もっとわかりやすく言ってよー…」

「うーん…空中艦にあったのが拠点や司令部で、ネットの中だけにいる妖精さんが、自分の家じゃなくて毎回他人の家で記事を作ってた…みたいな感じかな…?」

「むむむ……」

「わかったよーな、わからないよーな…」

「なら…見つけたのは『なりゆき☆ダンジョン』の画面で、記事を作ってたのはステラちゃん…って、これはかなり語弊が……」

『あー!』

「えぇっ、今ので分かったの!?むしろおかしな例えしちゃった気がしてたんだけど、これで分かるの!?」

 

 まさかの例えでロムちゃんラムちゃんからの理解を得られたネプギアは、逆に驚愕。しかも表情からして、本当に二人は今ので納得しているらしい。

 

「はは…けどそっか。だからどれだけ調べても違う所に繋がっちゃったり、足取りが掴めなかった訳ね」

「そういう事です。でもシステムを見る限り完全に自立して動けるんじゃなく、あくまで大元のシステム…司令部としてのシステムがありきのものらしいので、そこを丸ごと消しちゃった今はもう新しい記事を作れないと思います」

「アフィ魔Xがシステムを復元させる、或いはもう一度作る…って可能性は?」

「それも多分ないんじゃないかな。だってシステムは無駄に複雑…っていうか最適化されてない感じだったし、復元するだけの技術があるなら最適化だってしてる筈だもん」

 

 もし色々手を加えられていたら、消すのにも手間取った筈だしね…とネプギアは付け加えて、ノワールとユニからの質問に対する回答を締める。

 電子関係はあまり詳しくない私にとって、ネット上を自在に移動し、他者のサーバーを利用して記事を作るシステムなんて、説明されても尚「そういうものなのか…」以上の事なんて言えない。けれど、ネプギアがそう言うのならそうなのだろう。そう結論付けて、今度は私が口を開く。

 

「…であれば、総合的に見ても作戦は成功と見て間違いないだろうね。ステマックスさんの件に関しても、記事の件を解決する為の作戦だった訳だし」

「わたしもそう思うわ。空中艦の事、逃げられた事、アフィ魔Xともう一人のうずめ達との関係性…考える事は幾つもあるけど、目的は達成出来たんだもの」

「じゃ、その事は皆にも伝えなきゃだね。各国にいる皆とか、おっきいわたしとかにも」

「だね。…というか、大きいお姉ちゃんは今どこに…?」

「彼女の事ですし、また別の次元に行っているのかもしれませんわね。…というか、あいちゃん達を始めわたくし達は色々な方に協力して頂いていますけど…民間の方に積極的な協力をしてもらうなんて、本来ならばあまり良い事ではありませんのよね…。勿論、今のあいちゃんやコンパさん等、民間人ではない方もいますけれど」

「確かにね。けど協力してくれるって気持ちを無下にするのも悪いし、大切なのは私達が協力して良かったって思われるようにする事じゃないかしら」

 

 何はどうあれ、目的は達成。記事がこれ以上出てこないのであれば、更新されなくなった情報は少しずつ影響力が落ちていくだろうし、私達も済んだ事として次の行動を考えられる。

 そう。ここから考えるべきは、次の行動。記事の件が済んだとしても、信次元の危機はまだ何も去っていない。そして危機がある以上……いいや、仮に次元規模の危機がなかったとしても、女神の為すべき事は変わらない。

 

「さ、次はもう一人のうずめ達及び大陸の対処と、全ての人にこれからはもう大丈夫、不安がる事はないって伝えなきゃ…ううん、感じてもらわなきゃだよ。こうしている間も、向こうは何か新たな策を進めているかもしれないんだから」

「お、やる気満々だねイリゼ。でも……」

「やる気満々?それはそうだよ、そうに決まっている。女神が次元を守る事、人に安寧を与える事、女神の威光を示す事にやる気を見せないでどうするの。…いや、違う…やる気がどうのこうの言っている時点で間違ってる。やる気なんて出すまでもなく、使命を果たすのが女神なんだから」

 

 やる気はある。勿論ある。けれど、やる気どうこうの話じゃない。女神は、人の理想の体現者たる存在は、そんな次元に位置していない。当然それは皆も分かっているとは思うけど、その上で皆を見回し言う私。

 それから数秒間、誰からの返答もなかった。そしてそれを、やはり皆分かっていた事かと捉えた私は、より具体的な話に移ろうと更に口を開こうとして…その直前、イストワールさんが私を呼ぶ。

 

「…イリゼさん」

「なんですか、イストワールさん」

「お気持ちはご立派です。ですが、明日一日は休息に当てるべきかと思います」

「休息…?」

「はい。イリゼさんの言う通り、新たな策が進んでいる可能性は大いにあります。だからこそ、休める時はきちんと休んで、極力コンディションが良い状態を維持しておく…それが重要だとは思いませんか?」

「そういう事なら、別にコンディションは……」

「そうだよイリゼ。特にイリゼの場合は怪我してるでしょ?万が一の事を考えるなら、休む事が一番大事じゃないの?」

 

 賛同してくれると思っていたイストワールさんからの、待ったの言葉。更にコンディションに問題はないと返そうとした私に先んじてネプテューヌもイストワールさんの側に回り、ノワール達他の皆もそれに首肯を示している。

 分かる。コンディションを良くする事は大切だ。けれどそれは、そうしなきゃいけない状態の話。そして、それは今必要な事かといえば……答えは、否。

 

「…問題ないよ。コンディションもだし、こんな怪我どうって事ない。この程度で支障が出る程、原初の女神の複製体は柔じゃない…」

「だとしてもだって。今は危ない状況じゃないんだから、落ち着いていこ?」

「落ち着いてるよ、見ての通りにね。皆だって、不調って訳じゃないでしょ?だったら……」

 

 気遣いは無用。皆だって、私の怪我への気遣いを除けば、気持ちは私と同じな筈。

 そう思って、私は皆の事を見回した。…だけど、皆が私へと向けている瞳は、ネプテューヌも同じ。ネプテューヌと同じ、私を気遣うような瞳。

…何を考えてるんだ…なんでここで、こんな軽傷の私を気遣う。それは皆の美徳だろうけど、間違っている。今すべきは、女神の務めを果たす事。それが今重要な事。だというのに……皆はそれを、選ばない。

 

「…分かったよ。でも、今私がすべき事は分かってる。決まってる。だから明日一日を私は、それに費やして……」

「駄目です。休んで下さい、イリゼさん」

「……なんで、なんでですかイストワールさん…!私は……」

「──お姉ちゃんの言う事が、聞けませんか?」

「……っ…」

 

 私は動く。女神の務めを果たす。それは咎められるような事じゃない筈なのに、咎められる訳がない事なのに、イストワールさんは私を止める。私を止め、真っ直ぐに私を見て言う。……姉の、家族の言う事が、聞けないのかと。

 

「……それは…その言い方は、ズルいです…」

「ごめんなさい。でも…分かって、くれますよね?」

「…………」

 

 そういえば、いつの間にイストワールさんは顔文字を使わず話していたのか。ただ、真剣に…本気で言っているんだという事は伝わってきて、他ならぬイストワールさんの言葉なのだという事実が私の心に突き刺さって、私は小さく頷いた。…そう言われたら、私は従うしかないのだから。

 

「では、皆さんもきちんと休んで下さいね?…それと、イリゼさん…少し、付いてきてもらえますか?」

 

 そうして報告会は終わり、会議としても今日は解散。ちらりとネプテューヌの方を見て、ネプテューヌと頷き合ったイストワールさんは、再び私の事を呼ぶ。

 

「…怒って、るんですか……?」

「まさか。わたしが呼んだのは、ある方からのお話があるからです(・ω・`)」

「ある方…?」

 

 呼ばれて廊下を歩く道中、私の心に過ったのは不安。イストワールさんに悪く思われたのかと思うと、凄く凄く怖くなる。

 だけど、そういう事じゃないらしい。一体誰なのだろうかと思いながら私が付いていくと、イストワールさんが止まったのは別次元との交信や転移の為に使う部屋。その部屋へと入った事で私がもしやと思う中、イストワールさんは機材に接続し、そして……

 

「──ふふっ、話は聞かせてもらったわよイリゼ。明日は一日、休みって事にしたのよね?だったら、その一日を素敵なものにする為に……わたしとクリスマスデート、しましょ?」

 

 繋がったのは神次元。映し出されたのはセイツ。セイツは私の姿を見ると、優しく温かな微笑みを浮かべて……私は何故か、デートに誘われてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

「……いや、あの…確かにこれの投稿日はクリスマス・イブだけど…実際にそれが描かれる事となる次の話の時点じゃもう、クリスマス終わっちゃってるよね…?」

「うっ…そ、そういうところは突っ込まなくていいのっ!それを言ったら、そもそもクリスマス要素なんて一切出てこないんだろうから!」




今回のパロディ解説

・(〜〜全ての人は、オレが救うさ)
デュエル・マスターズ プレイスにおける、聖獣王ペガサスのボイスの一つのパロディ。でも彼女的にはむしろ、ゼロ・フェニックス辺りの方が似合いそうですね。

・なりゆき☆ダンジョン、ステラちゃん
原作シリーズの内、Re;birthシリーズの要素の一つ及びそこに登場するキャラの事。彼女がやられる度、シン・アスカ風に「ステラァァァァ!」と言いたくなる私です。
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