超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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 今回の話は、『ガラルのワイルド散歩(愛月 花屋敷さん作)』とのコラボストーリー後の話となっています。読む事が必須…という訳ではありませんが、コラボ終了後を前提とした要素もありますので、気になる方はそちらを読む事をお勧めします。



第百一話 帰還からの再スタート

──開かれたカーテンの間、窓から入る明るい光。穏やかな天気と、穏やかな街並み。そして交わされるのは、気心の知れた友との会話。

 

「…って、訳なんだが…皆はどう思うよ?」

「どうもこうも、話がざっくりとし過ぎでは?それで意見を求められても……」

「まぁねぇ。けど分かってる範囲で言えば、悪くはないんじゃない?」

「うんうん、ボクは賛成だよ!」

 

 一通り説明を終えて意見を求めると、返ってくるのは三者三様の反応。一人は賛否以前の問題だと言い、一人はそれに同意しつつも暫定的な肯定を示し、一人は快活に大賛成。

 いつも通りの光景。思った通りの、三人らしいそれぞれの答え。

 

「また即決をして…本当にそれで良いと思ってます?」

「勿論。それに、よく分からない内から否定的に見てたら、物事は何も進まないよ?」

「お、良い事言うわね。分からないからこそ気を付ける、分からないからこそ否定しない…どっちも大切っしょ」

「い、いや…別に私も、否定している訳じゃなくてですね…そもそもこれ、ちゃんと詰めてから提案してくれれば私もこうは言わなかったんですよ?」

「えー、こっちとしちゃ早めから意見を貰っておこうと思っただけなんだが…じゃあさ、お前はどう思う?」

 

 確かにそれはその通り。けど、今これ以上の説明は出来ない…というか、まだ決まってないから言いようがない。という訳で、半ば誤魔化す事も考えつつ…俺は少し離れた場所にいる、もう一人へと話を振る。そしてそれを受けたもう一人は、こっちへ半眼を向けつつ…言う。

 

「…どう、っていうかなんていうか…取り敢えずこれ、菓子摘みつつ、自室でするような話じゃなくね…?」

「あはっ、これは完全な正論ねー。けど軽く何かを食べながらの方が、話は活発になり易いのよ?知ってた?」

「…これ、そういう意図ありました?私は単に、堅っ苦しく話したくないからこの場を選んだだけだと思ってたんですが……」

「そう言いつつボク達と同じくお菓子摘んでる辺り、君も結構図太いよね」

「ふーむ、賛成2、保留が2か…よし、なんかちょっと自信出てきた」

「おーい待て待て、この時点で自信持つのは早計だと思うぞー?」

 

 会議らしくない、確かにそれは否定出来ない…というか、駄弁りの延長線上にあると思われてもおかしくはないが、別に形に拘る必要はない。何もこれは誰かに見せる為にやっている訳じゃないし、俺達は形をいちいち気にしなきゃいけない間柄じゃないんだから。

 

「はぁ…またいつものように、済し崩し的に進んでしまうような気がしてきました……」

「まぁまぁ、二人も何も考えず言ってる訳じゃないでしょーし、あーし等で気を付けておけば不味い事には取り敢えずならないんじゃない?…別に、気持ち的な部分まで否定しようとは思ってないっしょ?」

「それは、まぁ…。…というか貴女、本当に適当な性格してるように見えて、実はいつも真面目ですよね…」

「ちょっ、それあーしに対しては全然褒め言葉じゃないから!むしろキャラブレるし言わないで!?」

「ねぇねぇ、それで会場はどこにするつもりなの?日時は?呼ぶ人は?」

「そうだなぁ…よし、今日は皆集まってるし、今日の内にがっつり決められるところは決めるとするか!」

 

 何やら話が脱線しつつあるが、雰囲気は良好。こういう雰囲気の時は話も軽快に進むし、脱線の中にだって時には光るアイデアが埋まっている。何より俺は…こういう雰囲気が好きだ。好きだからこそ、大切にしたい。

 

「すみません、少しお話が……っと…皆さん、いらしていたんですね」

「うん。…うん?ボク達を呼んだ事、話してなかったの?」

「あ…悪い、言い忘れてた……」

『…適当(ですね・ね・だなぁ)……』

「う…だ、誰だってうっかりしてる事はあるだろ!?別にわざとじゃないし…!」

 

 本当に、本当に温かく穏やかな時間。特別何かが凄い訳じゃない、けれど満ち足りている、幸せな時間。

 そう、それが幸せな時間だって、俺には分かる。だからこそ、嗚呼、だからこそ……

 

 

 

 

 

 

…………俺は、目を覚ます。目を覚まし、ゆっくりと見回し、心の中が冷えていくのを感じる。

 そうだ。考えるまでもない。確認するまでもなく──これは所詮、夢だ。

 

 

 

 

 立ち直った事で、自分の心が知らぬ間に進むべき道を見失っていたと知った事で、漸く私は気付く事が出来た。皆が私の『心』を心配してくれていた事に、私が心配させてしまっていた事に。

 全く我ながら情けない。同じものを目指し、共に戦ってくれている皆に心配をかけておきながら、それに気付きもせず、原初の女神の複製体である事を誇示するなんて…それこそ、私自身が原初の女神の名を貶めているじゃないか。

 それに気付けたって事も、セイツ達には感謝したい。私の周りにいる、私を思ってくれる、私を支えてくれる皆に感謝して…あの思いを胸に、私は進むんだ。原初の女神であって原初の女神でない、原初の女神の複製体として。

 

「…って、訳で…やっぱりこれからは、こっちから打って出るべきだと思うの。これまでは打って出る余裕がなかったり、打って出るって言ってもどこに…って状況が続いていたけど、今は違う。今もアフィ魔Xの事とか、もう一人の私の事とかはあるけど、こっちから向こうに対応を強いる事が出来れば、それは向こうの策略を阻む事にも繋がるし、やっぱり各国の皆に安心してもらうには、私達が活動してる姿を見せる事が一番だと思うから」

 

 セイツとのデートと、その後の大ハプニングから始まったある出来事から無事信次元に帰還し、一日経った翌日。予定通り、私達はまた会議の為に集まり…そこで私は意見を口にした。

 

「確かに、イリゼさんの言う通りですね。今は浮遊大陸という、明確な敵地がある訳ですし」

「もう一人のイリゼはイレギュラーそのものだけど、それは向こうも同じ事。取り敢えずわたし達…というか国と国民に剣を向ける可能性は極めて低い事を考えれば、向こうもまだもう一人のイリゼについてよく分かっていないであろう今こそ、好機なのかもしれないわね」

 

 まだ具体性はない、ざっくりとした意見ではあるけど、それにネプギアとブランが賛同の声を上げてくれる。

 実のところ、今私が言ったのは一昨日私が口にしたのと大差ない内容。だけど、皆の反応は違う。それは皆の考えが変わったとか、話し方を大きく変えたとかじゃなくて……私が焦りや強迫観念染みた思考からじゃなく、冷静な意見として言っている事が伝わっているから。言い換えるなら、一昨日止められたのは私そのものであって、私の主張だった訳じゃない。

 

「けど、打って出るにしても何を、どうやってやるか…って話よね。出たとこ勝負で動いて返り討ち、じゃ話にならないし」

「はいはーい!ノワールさんノワールさん、それならわたしたちの魔法とか、センカンのほーげきとかミサイルとかで、思いっきりどっかーん!…ってやるのはどう?」

「ばくげき…?(どーん)」

「わー…今日という日にそういう作戦だと、某血のバレンタインっぽくなっちゃう気が……」

「陽気にえげつない事を言いますのねラムちゃん…ブラン、貴女のところの教育体制は大丈夫でして…?」

「…ラム、後で少しお話ししましょ……」

「ほぇ?」

「は、はは…けどその場合、厄介なのは迎撃設備ですよね。ぐるっと一周、かなりの防備をしていますし、アタシ達が突っ込むのはともかく軍の攻撃じゃ……」

「条約的にも接近は出来ず、長距離攻撃は大方迎撃されてしまうだろうね。陽動ならともかく、本命の作戦は別に考えるべきだろう」

 

 ユニから引き継ぐ形で言ったケイさんの言葉に、私達は首肯。仮に迎撃設備がなかったとしても、浮遊大陸は四大陸の外の浮き島とは比べ物にならない、それこそ一つの国として十分成り立つ位の規模があるから、ラムちゃんのアイデアは現実的じゃない。…まぁ、浮遊大陸のどこかに拠点があって、そこの場所が分かってるとかなら、炙り出しの手段として爆撃をかけるのも一つの手になるけどね。

 

「んー…あ、そうだ!おっきいわたし…っていうかクロちゃんのワープで、一気に迎撃の内側に入っちゃうのは?というかこれ、いーすんでも出来るんじゃない?」

「それはどうでしょう…。わたし云々はさておき、仮にそれが出来たとしても、どこに転移するつもりですか?( ̄▽ ̄;)」

「勿論それは…って、そっか…あの大陸のどこにいるか分からなきゃ、行く手段だけあっても仕方ないよね…」

 

 軽い困り顔でイストワールさんに言葉を返され、肩を落とすネプテューヌ。こっちも全く使えない策…って訳じゃないけど、やっぱり「どこに」の部分がネック。

 

「その点で言えば、まずはあの大陸の内側の調査がしたいですね…何の目的で作り出したのかも気になりますし……」

「こっちでの拠点が欲しかった…ってだけで、あれだけの大陸を用意する訳ないものね。いや、そもそも…何もない場所から、大陸を作り出すってどういう事…?」

「まあ、シェアエナジーは某システム並みに限界がありませんもの。教祖たるもの、そういうものだと認識しておいた方が良いですわよ」

「…じゃあ、一度調査に出てみる?現状じゃ手当たり次第にならざるを得ないけど、手をこまねいていたら向こうの動きも牽制出来ないし」

「うんうん、わたしは賛成!やられっ放しはわたしの柄じゃないし、当たって砕けろ…いいや、砕けるまで当たれだよ!」

「いや砕ける前提は止めなさいよ…けど、調査自体は私も賛成ね。あの大陸がどういうものなのかっていうのはうちの国民の多くが気にしてるし、それは皆のところも同じでしょ?」

 

 今度はネプテューヌとノワールが賛同を示してくれて、ベールとブランもノワールの言葉に首肯。賛同って言っても、調査の案を出したのはミナさんであって、私も賛同した側なんだけど…やっぱり賛成してもらえるのは、嬉しい。嬉しいし、安心もする。

 

「となると、問題はどうやって調査に行くか、ですよね。さっきお姉ちゃんが言った方法で行ければ一番ですけど、それが出来なかった場合は……迎撃の射程を飛び越えて、高高度から浮遊大陸に降下する、とかでしょうか?」

「それ位は向こうも想定してるんじゃない?それに何らかの理由で急いで離脱しなくちゃいけなくなった時困るし、大変でも迎撃網を突破して、一ヶ所でも迎撃の穴を作ってからの方が良いんじゃない?」

「…あんみつ、じゃなくていいの…?」

「あんみつ?…あ、隠密か…確かに気取られないよう調査するなら、アタシの案は問題があるわね…」

「さっすがロムちゃんね!あっ、じゃあじゃあくーちゅーかんで行くのはどう?とーめーになってれば、バレないでしょ?」

「フルステルスはまだ軍の艦にしか搭載されてない以上、それは出来ないわね…避けるじゃなくて、上手い事して通るって発想には、一考の余地があると思うけど…」

 

 ただ上陸するだけなら正面突破で良いけど、それは調査の前段階でしかない以上、よく考えなくちゃいけない。それに考えなくちゃいけない事も、上陸方法だけじゃない。調査って言っても、具体的に何をするのか。ただ歩き回ってみるだけなのか、もっと色々な事をするのか。調査には誰が向かって、実際何かあった時はどういう形で離脱するのか。犯罪組織の時のギョウカイ墓場と違って未知の場所且つ、今は手段を選ぶだけの余裕があるからこそ、しっかりじっくり考えなきゃいけない。

 そうして会議が始まってから一時間強。不明な部分、確認しなきゃいけない要素が多少なりともあるから、完全にではないけど…大体の作戦が、私達十三人の間で決まる。

 

「…一先ず、この辺りでしょうか。もう少し…というか、出来る限りは事前に情報を得ておきたいですし、決行まで監視は厳にしておいた方が良いかと思います」

「…いーすんさん、いーすんさんの力じゃ、やっぱり分かりませんか?」

「すみません…大陸自体をシェアエナジーで作り出しているからか、検索が難しくて……(~_~;)」

「うーん、こういう事になると大概いーすんの能力って通用しないよねぇ。…でもある意味シナリオへの気遣いばっちりな点では、流石いーすんってところかな!」

「どこでイストワールさんを評価してるのネプテューヌ……って、うん?…皆、私の顔に何か付いてる?」

「イリゼさん、やっぱりもう元気(ほっ)」

「ちょーしがもどったみたいで、安心よね!」

 

 いーすんが調べて全て判明!…じゃ物語もへったくれもないもんね!…って意味であろうネプテューヌの発言に呆れていると、いつの間にやら皆の視線が私の方へ。何だろうと思って訊いてみると、ロムちゃんラムちゃんがにっこり笑顔でそんな言葉を返してきて…何だかそれは嬉しいような恥ずかしいような。……うん、どっちかって言うとやっぱり恥ずかしい!ロムちゃんラムちゃんにまで一安心されてると思うと、凄く恥ずかしい!

 

「ご、ご心配をおかけしました…」

「ほんとよねー。イリゼちゃんはわたしたちのししょーをしてたこともあるんだから、もっとちゃんとしなきゃダメよ?」

「いや気持ちは分かるけど、その態度はおかしいでしょ…でもほんと、元に戻って何よりです」

「冷静で、でもいつも『皆』との思いを大切にするイリゼさんは、いつもわたし達の心の支えだもんね。それに…わたしは今も、イリゼさんを師匠の一人だと思ってますよ」

「また何かあったら、わたしたちに…言ってね?」

「皆…うぅ、皆ケーキなら何食べたい…?一人1台、合わせて4台分作ってあげるからね…っ!」

「え!?ねぇねぇイリゼ、わたしは?心配するだけじゃなく、実際に行動まで起こしたわたしは!?」

「分かってるよネプテューヌ…ネプテューヌには、本当にバケツ一杯のプリンを作ってあげるからね…!」

「やったーっ!」

 

 一気に感動メーターが振り切った私は、うるっとしながらケーキ作りを女神候補生の四人に確約。なんか急にネプテューヌも乗っかってきたけど、今の私の心は感涙の思いで一杯だったから、その思いのままにネプテューヌとも約束。どうも皆からは「いやいやいやいや……」と半眼で見られていたけど…良いの良いの、これが私の、私を思ってくれた皆への恩返しなんだから…。

 

「イリゼ貴女、貢ぐ女になるのだけは駄目ですわよ…?」

「や、それは流石にイリゼに失れ……とも、言い切れないわね…」

「確かに…なまじ表面的にはしっかりしてる分、立場も能力もある分、余計止まらない感は否めないかも……」

「ベール、ブラン、ノワール…。…………。……あれ!?私、今物凄く失礼な事言われてない!?」

「それは、まぁ…現にブラン、失礼って言いかけてるしねぇ」

「酷い…三人にはケーキの片手間で作れるような簡単お菓子しかあげないんだからね!」

「一応お三人にもあげはするんですね…(⌒-⌒; )」

 

…と、何だか少し…いやかなり脱線してしまったけど、次の私達の方針が決定。今はまだ調査の事しか決まってないけど、調査の結果次第で次の行動や必要な事が決まってくるし、その時には向こうも何か行動を起こしているかもしれない。

 大切な事は、先を見通して動く事、綿密な計画の下で進める事、そして常に柔軟な思考を持っている事。たかがとされど、その両方の視点を頭の中に入れておくのが重要で…それはいつだって変わらない。この一連の事も、これまでの事も、これから起きるかもしれない事も。…多分そんな事すら、女神だったら普通に意識しておかなきゃいけない事ですら、(信次元視点で)昨日までの私は見えていなかったと考えると、本当に私は自分が情けなくなるし……これを教訓として、きちんと胸に残さなきゃいけない。もう一人の私に会って、ちゃんと訊くんだって決意と共に、胸の中へ。

 さて、と…これからはまた準備だね。よーし、それじゃあ頑張るよ!……ケーキとプリン作りをっ!

 

 

 

 

 その日の夜、自分の部屋へと戻った私を待っていたのは、少し不思議な光景だった。

 

「ただい……(あれ?)」

 

 自分の部屋へ入る時、ただいまと言うのは一見変。でもそれは誰も…何もいない部屋の場合であって、既にそこへ住民がいるのであれば、至って普通の、当たり前の行為。まあつまり、私の部屋には一緒に住む住民がいるんだけど……

 

「ぬ、ぬら…ぬら、ぬらー」

「ちるちる、ちーる?」

 

 現在私の部屋の中では、同居人ならぬ同居人モン二匹が、ちょっと距離を取って…会話?…を交わしていた。

 片方は、二匹の内の先輩に当たるライヌちゃん。私のベットに乗って、毛布を被って、顔だけ出して(元々一頭身だけど)ぬらぬら言ってる、可愛い子。

 もう片方は、つい昨日この部屋の新たな住民になったるーちゃん。帽子っぽく振る舞うのが好きだからかハットスタンドに止まって、ちるちる言ってる、可愛い子。

 

「ぬーら、ぬら…ぬらぁ、ぬららっ」

「ちるぅ…ちるっち、ちー!」

「ぬらっ!?」

「ち、ちる…?ちるる……」

(…お話し、してるんだよね……?)

 

 頭頂部の尖り(?)と耳とで毛布に三つの小山を作ってるライヌちゃんが話して、それにるーちゃんが反応してるっていう状況らしく、ある時ライヌちゃんに対してるーちゃんはふわふわの翼をばたつかせ、鳴き声も一際高めに反応。するとそれに驚いたのかびくりと震え、るーちゃんもそれにしゅんとなって……うーん、ここは出てあげた方が良さそうだね。

 

「えっと…ただいま。ライヌちゃん、るーちゃん」

「ぬら!ぬらら〜♪」

「ちるっ!ちる〜♪」

 

 しっかりと私の身体が見える位置まで出て、改めて声を掛けると、二匹はほぼ同時に反応し、ライヌちゃんは跳んで、るーちゃんは飛んで私の胸元へと飛び込んでくる。

 もうそれだけでも可愛い。ぱぁっと表情を明るくして、嬉しそうに来てくれるだけでも、心の底から癒される。

…っと、そうだ。一応説明しておくと、るーちゃんは丸っこくて黄色い身体と二又のアホ毛、綿の様な翼を持つ、小鳥みたいなモンスター。モンスターと言ってもライヌちゃんや他のモンスターと違って、この子は別次元…というか別世界にいた存在なんだけど…取り敢えず、そういう存在だと思ってくれれば大丈夫。

 

「わ、っとと。…二人共、お話ししてたの?」

「ちるっ!ちちるる〜!」

「ぬら〜!ぬりぬら〜!」

「…そ、そっかぁ……(わー、相変わらず…というか、二匹になったから輪をかけて分からない…)」

 

 小柄な二匹はすっぽりと私の腕の中に収まっていて、その中でくりくりとした目を輝かせて、私に(鳴き)声を返してくれる。…けど、なんと言っているのかはさっぱり分からない。ご機嫌だって事は伝わってくるけど、話している内容はちんぷんかんぷん。…というか…ライヌちゃんとるーちゃん同士は、会話が成立してるのかな…種族どころか、住んでた次元が違う訳だし……。

 

(さっきも何の話をしてたんだろう…。…ライヌちゃんは怖がりだけどここの先住民だし、るーちゃんは多分社交的な方だから、案外互いに「この子は自分が面倒を見てあげなきゃ」と思って会話してたとかだったりして。…だったら可愛いなぁ……)

 

 二匹の会話内容を頭の中で想像して、更にほっこりとする私。身体を隠すみたいに毛布を被ってた辺り、ライヌちゃんにはまだるーちゃんを怖がる感情があるんだろうけど…たった一日でまともに会話出来るようになったのなら、その内容がどうあれきっと仲良くなれる筈。だってどっちも、とっても良い子なんだからね。

 

「…ぬら?ぬらら?」

「あ、もしかして匂い気になる?そうだよね、ケーキとプリン作った後だもん、匂いもするよね」

「ちーるー…?」

「皆へのお礼なんだよ。そして…ふっふっふ、じゃーん!材料の余りで作った、君達の分のお菓子もあるよっ!」

「ちるーっ!」

「ぬらぬら〜っ!」

 

 くんくんと鼻をひくつかせていたライヌちゃんと、私の服にすりすりしてるるーちゃんを一度ベットに降ろし、私が取り出したのはなんちゃってパウンドケーキ。自分のおやつ用に余りの材料で作ったやつの一部を、ライヌちゃんるーちゃん用に小さくカットした、二匹へのプレゼント。それを見た二匹は更に目を輝かせて、早く早くと私を急かす。…あー、可愛いなぁもう…!

 

「はいどーぞ。流石に沢山はないから、味わって食べてね」

「ぬらふ〜!」

「るちっちる!」

「あははっ、くすぐったいよも〜!」

 

 両掌に小分けパウンドケーキを載せて差し出すと、ライヌちゃんは私の手をぺろりと舐めながら、るーちゃんはつんつん啄む感じにパウンドケーキを食べていく。舐められるも、つつかれるのも私としてはくすぐったくて…けれど二匹にはそれが伝わらず、可愛いとは思いつつもこの状況にちょっと後悔。

 

(…平和だなぁ……)

 

 美味しそうに食べる二匹の間に、争いの気配は微塵もない。今この部屋の中は、完全な平和で…信次元全体も、所々でぴりぴりしていたり不安な空気が漂っていたりはするけれど、今も小康状態は続いている。

 考えてみれば、もう一人のうずめ達は、国や国民を狙った攻撃はしてきていない。少なくとも、そういう意図を感じられる侵攻は今のところ行われていない。

 けれど、人を害する気はないのかと言えば…それは絶対にあり得ない。だって一番初めに、一番大規模な、無差別攻撃をしてきたんだから。信次元はともかく、神次元では街や人が集まっている場所への攻撃も行っているんだから。私は敵であっても、分かり合う事が出来るって知ってるけど…それは何でもかんでも許して、敵を肯定するって事じゃない。

 

「ライヌちゃん、明日からもこれまで通り私がいない時間が多くなると思うけど、るーちゃんの事をお願いね?」

「ぬら?…ぬ、ぬら……!」

「るーちゃん、一緒にいられない時間も長くなると思うけど、いる時は一杯遊んであげるから、お留守番宜しくね?」

「ちー…?…ちる!」

「よしよし。でもまあ、今日はもうどこか行ったりしないから…一服したら、遊ぼっか!」

 

 欠片一つ残さず食べた二匹の頭を撫で、私は二匹へ向けて笑う。

 この子達もまた、私が頑張る理由の一つ。次元全体に比べたら小さなものだし、理由としても個人的だけど…それでも、この子達との日々だって、私には大切な時間だもん。それに…頑張る理由、戦う理由は、沢山あった方が良いもんね。

 そう、私はもう一人の私に対面して訊くんだ。そしてもう一人のうずめ達から、絶対に守るんだ。この次元を、皆を、今の私にあるこの日々を……

 

「……って、あぁ!?今私がライヌちゃんとるーちゃんに掛けた言葉、ちょっと死亡フラグっぽくない!?その後イリゼが帰ってくる事はなかった…パターンのフラグっぽくなってない!?」

『……(ぬら・ちる)?』

 

……何でもない場面で雰囲気を出し過ぎると、何か危ない。危ない気がする。…そう、強く思った私だった。




今回のパロディ解説

・某血のバレンタイン
機動戦士ガンダムSEEDにおける、本編開始よりも前の出来事の事。丁度今日は二月十四日ですし、ぴったりなネタですね。…いや、エゲツないにも程があるネタですが…。

・某システム
ガンダムビルドダイバーズ Re:RISEに登場するガンプラ、コアガンダム(Ⅱ)に搭載された、プラネッツシステムの事。いやほんと、シェアエナジーに限界はありませんよ。

 前書きでも触れたコラボのあとがきを、活動報告に載せました。設定に関する話も多少あるので、コラボストーリー同様是非読んでみて下さいね。
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