超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第百二話 叶わぬ対話

 浮遊大陸への調査計画。受け身にならざるを得なかったこれまでの状況を変える為、こっちから打って出る為の、重要な第一歩。

 不確定な事もある。仮に上陸出来ても、一度で有益な情報を得られるとは限らない。でも、そんなのは当たり前。いつだって、結果はやってからじゃないと確定しないし、先に結果を知る事なんて出来はしない。だから最後は、想定外の事が起こらないよう祈るしかない。

……とは言っても、だからって無策で、対策を何もせず行ったらそれはお馬鹿さん。予想出来る危険、考えられる可能性に関しては、可能な限り対策を打っておくべきで…その中の一つに、わたし達は頭を悩ませている。

 

「…皆、何か思い付いた?」

 

 やる事を決めた次の日。朝ご飯を食べる最中、わたしは話題のネタに…って訳じゃないけど、ユニちゃんロムちゃんラムちゃんに話し掛ける。

 

「ううん、ぜんぜーん」

「むつかしい…(ふるふる)」

 

 わたしからの問い掛けに、ラムちゃんとロムちゃんは首を横に振る。

 今、わたしが三人に向けて発したのは、イリゼさん…もう一人のイリゼさんの事。昨日良い案が出てこなくて、取り敢えず一日寝かしてから改めて考えようって事になった、もう一人のイリゼさんの行動に関する話。

 昨日出た通り、もう一人のイリゼさんが人を害する可能性は低いと思うけど…まともにやり合ったら勝てない、どころかまず勝負にならない存在な以上、どこにいて何をしているか分からないというのは、懸念要素として大き過ぎる。…いや、場所や行動どころか、何もかもが謎だけど……。

 

「アタシは一応思い付いたけど…禄でもない案だから止めておくわ」

「そんな、言わない内から諦めるなんて駄目だよ。自分じゃ駄目だって思っても、実際には悪くなかった…って事、時々あるでしょ?」

「そりゃまあそうだけど、今回のはそういうレベルの事じゃないし…」

「…いいの?わたしたち、ちゃんときくよ…?」

「そーそー、言うだけ言ってみなさいよー」

「二人の言う通りだよユニちゃん。わたし達、真剣に聞くからさ」

 

 自分の案に自信無さげなユニちゃんを、わたし達は説得。確かに、ユニちゃんの言う通りなのかもしれないけど…それは聞いてみなきゃ分からない事だから。相談もせずに没にするのは、勿体無いと思うから。

 流石に、無理に合わせようとまでは思わない。でもわたし達の思いは伝わったようで…ユニちゃんは、言う。

 

「えー…じゃあ言うけど、アタシが思い付いたのは『街中で人が襲われている場面を偽装して、誘き寄せる』って案よ?」

「…………」

「…………」

「…………」

 

『…うわぁ……』

「ちょっと!?」

 

 良識も何もあったものじゃないユニちゃんの案に、ただただドン引きするわたし達三人。ユニちゃんは「なんで!?」って反応をしてるけど…これ、普通の反応だよ…?

 

「ユニちゃん…前から思ってたけど、ユニちゃんって偶に血も涙もない事考えるよね……」

「酷くない!?いや、確かに発想自体はそうなんだけど…言わせといてそれは酷くない!?」

「ユニ、サイテー」

「ユニちゃん、こわい……(ぶるぶる)」

「だから言わないでおこうとしたんだけど!?むしろアンタ達の方が最低だし、怖い位の掌返しだけどね!?」

 

 完全にショックを受けるわたし達に対し、ユニちゃんは憤慨。突っ込みもキレッキレで、勢いが凄い。

 

「ふんっ…いいわよいいわよ、どうせスナイパーは恨まれる定めなのよ……」

「あー…ごめんねユニちゃん、冗談だから…流石に言わせておいて本気でこんな反応は取ったりしないから……」

「…さっきの『…うわぁ……』、マジトーンだった気がするんだけど?」

「そ、それはほら…ユニちゃん自身が言った通り、発想自体はほんとに恐ろしかったから、つい……」

 

 その後ぷいっと横を向いてしまったユニちゃんを、わたし達三人は左右から宥める。…それならそもそも、「一応思い付いた」って気になる言い方自体しなければ…って言ったら、火に油を注ぐだけだよね……。

 

「ごめんってばー。ほら、ウインナーさんあげるから」

「わたしのベーコンさんも、あげるから…」

「そんなんじゃつられないっての」

「じゃあ、ピーマンも付けてあげる」

「しいたけさんも、あげるよ…?」

「いやそれはアンタ達が食べたくないだけでしょ…てか、セルフ方式なのに律儀ね……」

『おねえちゃんに入れられた…』

「あー……」

 

 途中コントみたいなやり取りも挟みつつ、皆でご機嫌を取る事数分。漸くユニちゃんが許してくれた事で、わたし達は話し合い再開。

 

「全くもう…というかアンタ達こそ、全く何も思い付いてないの?」

「うーん…まあ、正直に言うとそうかな…。もう一人のイリゼさんの事って、実力と『人の敵ではない』っぽい事しか分かってないし……」

「確かに、それは大きな問題よね…イリゼさん、は…前に聞いた生い立ちからして、性格とかは知らないでしょうし…イストワールさんも、知ってる事があるならそれを話してくれてるでしょうし……」

「分からないなら取り敢えず動いてみよー…って言いたいところだけど、どこに?って話だもんねぇ。あ、ネプギアネプギア。そのロールパン貰ってもいい?」

「え?うん、別に良いけど…って大きいお姉ちゃん!?いつの間に!?」

「六秒位前かな」

「普通に今さっきだった!?」

 

 そもそも情報不足過ぎて、考えるも何も…そんな流れになってきたところで、不意打ちの様に会話に入ってきたのは大きいお姉ちゃん。…び、びっくりしたぁ……。

 

「良いパンって、何も付けなくてもほんのり甘さとか塩味があるよねぇ。あ、クロちゃんにはプチトマトのヘタをあげるー」

「普通食べねぇとこあげようとすんなよ!俺を何だと思ってんだ!」

「嘘嘘冗談だって。ネプギア、プチトマトも貰っていい?」

「う、うん…(二人共、朝ご飯まだなのかな…)」

「クロちゃんじゃプチトマトでも食べ辛いだろうし、切ってあげるからちょっと待っててね」

 

 いきなり現れたお姉ちゃんは、プチトマトを四つに切って本の中へ。クロワールさんにプチトマトをあげて、それからロールパンを口に運んで、こくんと飲み込んだ後、大きいお姉ちゃんの視線はまたわたし達へ。

 

「それで、えーっと…もう一人のイリゼの話?」

「あ、はい。放っておけるレベルの相手じゃなくて、しかも現状どこで何をしてるかも分からないので、このままだと動き辛いというか……」

「んー…それならさ、呼べばいいんじゃない?」

『呼ぶ…?』

「いないなら 呼べばいいじゃん アルマジロ…って言うでしょ?」

「いや何もかも違う気が…」

 

 脈絡もなく、突然出てきたのは謎川柳。ボケが独特過ぎて、最早ふざけてるのかどうかも怪しいよ…。

 

「おっきいネプテューヌちゃん、よぶってどーやって?」

「おおごえ…?」

「そうだねぇ…あ、ぎょーせー無線?…ってやつ使うのは?四ヶ国で同時にやれば、案外聞こえるんじゃない?」

「い、いやいや…そもそも呼んで、来る相手ですか?フルサイコフレーム機じゃないんですし…」

「それに、生活圏外にいたら聞こえないよね…確かに何件か、もう一人のイリゼさんらしい情報は街から出ていますが……」

「でもさ、やってみなきゃ分からなくない?あ、いや、勿論そういうのをやるのに面倒な手続きが必要とかなら、わたしも軽々しくは勧められないけど…」

 

 やってみなきゃ分からない。その言葉に、顔を見合わせるわたしとユニちゃん。大きいお姉ちゃんの提案は物凄く単純で、単純過ぎて逆に思い付かないというか、「幾ら何でもそれは…」と思うようなもの。

 ただでも、他に良さそうな案がないのも事実。別に凄くお金や手間がかかるって訳でもないし……まぁ、一応お姉ちゃん達にも話してみよっかな。大きいお姉ちゃんがわざわざ案を出してくれたんだし、一応…ね。

 

 

…………。

 

………………。

 

……………………。

 

 

 

 

「何用だ」

『ほ……ほんとに来たぁぁぁぁああああああッ!!?』

 

 

 

 

 もう一人のイリゼさんが来た。本当に来た。来てしまった。取り敢えずお姉ちゃん達に提案して、お姉ちゃん達も「うーん…ま、やるだけやってみる?」…位の感覚で受け取って、準備の為にお姉ちゃん達が一度各国に戻ったタイミングで「オリジンハート様。可及的速やかにお近くの教会、又はプラネテューヌにおいて最も高い施設、プラネタワーにお越し下さい」…って感じの放送を行ってから十数分後……プラネタワーに、もう一人のイリゼさんがやってきた。…うっそぉ……。

 

「呼んでおいて、随分な第一声を発するものだな。実力も無くば、指導者としての自覚にも欠けるとは嘆かわしい」

「む…そっちこそ何よきゅーに!そーゆーこと言う方が、ずっとセーカクわるいんだからね!」

「ちょっ、何アンタ煽り返してるのよ!?」

「だってちゃんと言いかえさなきゃ、みとめたってことになるでしょ?」

「い、いやまあその気持ちは分かるけど……こほん。オリジンハート、さん…でいいですか?まずは、来てくれた事を感謝します」

「上辺の言葉などどうでも良い。それよりも、この状況下でわざわざ呼び付けたのだ。当然重要な事なのだろうな?」

 

 ちょっと!?何この放送!?これじゃあ私、呼び出しくらったか迷子になったかみたいじゃん!?……と、電話越しに全力でイリゼさんが突っ込んでくるような放送で本当に来てしまったもう一人のイリゼさんは、予想通りわたし達と仲良くする気は皆無な様子。…これ、大丈夫かな…まだお姉ちゃん達も来てないし…。

 と、わたしが不安を抱く中、後ろ…プラネタワーのフロントの方から聞こえてくるのは一つの足音。

 

「ふー、まさか皆してバルコニーから落下しての直行をするだなんて…確かに女神化すれば飛べるとはいえ、パワフル過ぎない?」

「お前だってよく空から落ちてるだろ」

「それはクロちゃんが位置ずらして落っことしてるだけじゃん!…で、おぉー…このおねーさんが、えっと…オデュッセイア?…の女神様?」

「あ、はい。この方が……じゃない!い、いや違いますよ!?オデュッセイアだと、違う次元になっちゃいますからね!?」

 

 開口一番、ピリついていた雰囲気を打ち砕いたのは大きいお姉ちゃん。こっちのお姉ちゃんもやっぱり空気の破壊者(シリアスブレイカー)みたいで…もう一人のイリゼさんの目も、わたし達から大きいお姉ちゃんの方へと向く。

 

「ふふ、愉快な事を言うものだ。小粋な冗談とは、きっと今君の言ったような事を言うのだろう」

「あ、分かる?分かっちゃう?いやぁ、我ながらこの方法で来てくれるなんてびっくりだったけど、貴女中々センス良いね!」

「我ながら…?…そうか、これは君の発案だったのか。このような案を思い付くとは、さぞや君は聡明にして柔軟な思考の持ち主なのだろうな」

「えぇー?そう?聡明で柔軟な思考の美少女に見えちゃう?やー、照れるなぁ…」

(え、えぇー…一転して何この展開……)

 

 まるで別人格になったのかと思う程にべた褒めを始めるもう一人のイリゼさんに、大きいお姉ちゃんは大喜び。でもわたし達的には完全に置いてけぼりな訳で…大きいお姉ちゃーん、美少女とまでは言われてないよー……?

 

「あ、あのー…わたし達、話を……」

「えへへぇ…っと、そうだ。ごめんごめんネプギア、おねーさんがあんまりにも正直者だからつい」

「しょ、正直者って…。…オリジンハートさん、わたし達、貴女にお話があるんです」

「…良いだろう。だがその前に、こちらからも一つ訊きたい事がある」

「な、何ですか?」

「この塔…プラエタワー、だったか。これの建築は、誰が行った?」

「それは……ってあれ!?今一文字間違えてませんでした!?間違えてましたよね!?だからそれ、違う次元の話ですからね!?」

 

 神妙な面持ちで問い掛けてきたもう一人のイリゼさんにわたしが首肯すると、もう一人のイリゼさんが言ったのは……まさかの誤解。大真面目な顔で、物凄い間違い発言を口にしていた。…どうしよう…普通に予想外過ぎて理解が追い付かない……。

 

「……この塔は、誰が建造したのだ」

「(あ、言い直した…わたしが間違ってるとしか言わなかったから、代名詞で…)…え、と…一応、わたしやお姉ちゃん、イストワールさんや各職員さんの意見も参考にはされていますが、基本的には専門の方々が……」

「ほぅ…そうか、人の知恵は、技術は遂にこれ程までの建造物を建てるに至ったか…ふふ、やはり人は素晴らしい。可能性に溢れ、創造性に満ち、万人が人の道に限界などない事を証明する…他の森羅万象とは一線を画するその素晴らしさが今も続いている、いや一層輝いている事こそ女神にとっての誉れであり喜びというものだ…」

 

 わたしの回答を聞くともう一人のイリゼさんはプラネタワーを見上げ、ふっと口元に笑みを浮かべる。それは本当に、心から幸せそうな微笑みで…わたしは確信した。やっぱりこの人は、人の敵じゃない。わたし達に対しては、友好的じゃないけど…人の味方という点は、絶対に間違っていないって。

 

(だったらきっと、どこかに手を取り合えるラインがある筈。わたし達ともう一人のイリゼさんの、願いは一緒なんだから…!)

 

 正直に言えば、この人の事は怖い。でも同じものを大切に思える、同じ女神なんだから…怖い人、訳が分からない相手で終わらせたくない。もう一人のイリゼさんの方は、仲良くしようなんて思ってないのかもしれないけど…この時はわたしは、確かにそう思った。

 

「…今の回答に関しては感謝しよう。そして、改めて問おう。何故私を呼び出した」

「……っ…それは…」

 

 余韻の残る吐息を一つ吐き出して、再びわたし達を見やるもう一人のイリゼさん。わたしの心の中にあるのは、漸く話を切り出せるという安堵と、まだお姉ちゃん達が戻ってきていない中で話をしなくちゃいけないという不安。だけど、わたしだって女神なんだから、ちゃんとわたし達の意思を、邪魔をしないでほしいというお願いを伝えなきゃいけない。今回は来てくれたけど、また呼べば来てくれる保証なんてないんだから。

 そう自分に対して言い聞かせ、わたしはもう一人のイリゼさんを真っ直ぐに見据える。そして、話を始めようとした……その時だった。

 

「──面白そうな話をしているじゃないか。その会話、オレも混ぜてくれないかな?」

『……ッ!?』

 

 ここにいる誰でもない、いる筈のない存在の声に、武器を構えながら反射的に飛び退く。飛び退いて、M.P.B.Lを向け、その方向に目を走らせる。

 わたし達が飛び退いた後ろ、わたし達や大きいお姉ちゃんがいた場所の背後。そこにいたのは……もう一人の、うずめさん。

 

「な……っ!?ど、どうしてアンタがここに…!」

「ふふ、どうしてだろうね。それよりも…初めまして、かな。原初の女神さん」

「……何者だ、貴様は」

「オレは天王星うずめ。そうだね、端的に説明するなら…ダークメガミとあの大陸の主、というところか──」

 

 ちらりとこちらを一瞥した後、もう一人のうずめさんはその視線をもう一人のイリゼさんの方へ。表情を険しくするイリゼさんに対し、うずめさんは薄い笑みと共にその存在を明かし……次の瞬間、うずめさんが言葉を言い切る直前だった。認識出来ない程の速さでイリゼさんが肉薄をかけ…うずめさんの首を、刺し貫いたのは。

 

「ふぇっ…!?」

「…案外短気なんだね、君は」

(え……?)

「…何……?」

 

 あまりに唐突な首への刺突で、訪れる静寂。初めに声を上げたのはロムちゃんで…それに続いて声を発したのは、今首を刺し貫かれている筈のうずめさん。イリゼさんのバスタードソードは確かに首を貫いている筈なのに、うずめさんは少し驚いただけで…続く数度の斬撃に対しても、うずめさんは涼しい顔。…って、あれ…?これ、って……。

 

「…捉えた感覚がない…貴様、実体無き存在か」

「おっと、そう見えるかい?確かにそれも間違ってはいないけど、これは……」

「…ホログラム…?」

 

 ぽつりとわたしが漏らした言葉に、もう一人のうずめさんはご明察、と首肯。

 そう。斬られても平然としていたうずめさんだけど…そもそもうずめさんの身体に、斬られた跡は一切ない。加えてよく見れば、うずめさんの身体はどこか映像の様で…だから気付いた。これは、本物じゃなくてホログラムだと。

 

「ホログラム?…ふん、まあ術の名前などどうでも良い。物理的な断罪が出来ないというのなら、シェアエナジーでもって……」

「あ…ち、違いますよイリゼさん!ホログラムっていうのは、簡単に言えば立体的な映像の事で…えぇと、つまりは機械で作った幻術です!魔法とか超能力とかじゃないですから、何してもうずめさんにダメージは与えられませんからね…?」

「…つまり、この霊体に何をしようと、発生させている機械が壊れるだけ、と?」

「あ、あの…ですからこれは単なる映像なので、そもそも何をしても何も起こらないかと……」

「…ぷっ…あははははははっ!なんだ、ダークメガミ四体を瞬殺した、最大級のイレギュラーだと思って警戒していたというのに、蓋を開けてみれば所詮太古の存在という事か!あははははははははっ!」

 

 いつの間に装置の設置を、とわたしが周囲に目を走らせようとする中、もう一人のイリゼさんが取ったのは更なる攻撃の姿勢。その明らかに間違った認識を慌てて訂正するも、まだイリゼさんは微妙に誤認してる感じで……そんなイリゼさんの様子を見たもう一人のうずめさんは、途端に吹き出し笑い出す。右手を額と右目に当てて、それはもう痛快そうに。

 

「…………」

「はー…いやぁ、拍子抜け過ぎてつい笑ってしまったよ。…けど、今のでよく分かった。原理は相変わらず不明だけど…少なくとも君は、レイの様に何らかの形で現代まで生きていた訳ではなく、君の元いた次元、或いは時間から直接現代に現れた訳だ。だから君は科学技術に関してはからっきし、他にも知らない物事や自分の中の認識とズレている事柄が多数存在する…そうなんだろう?」

「…だからなんだ。まさか、たったそれだけの事を理由にこの私に勝れると思ったのではあるまいな?」

「さあ、どうだろうね。お互い見込みはあるだろうけど、それが甘いのが君かオレか…直接確かめてみようじゃないか」

『……!』

 

 一頻り笑った後、ふっとその表情に真面目な色を浮かべたもう一人のうずめさんは、今の言動からもう一人のイリゼさんを冷静に分析。そして、返された言葉に対して投げ掛けたのは…宣戦布告。

 

「原初の女神。君を、浮遊大陸タリに招待するよ。勿論、手厚い歓迎と共にね」

「タリ?…ふん、あの大陸にそんな名前を付けていたのか。…良いだろう、今すぐに裁きを望むというのなら、すぐにでも貴様を滅するまでだ」

「裁き、か…随分と言ってくれるじゃないか、原初の女神…」

 

 刺し殺すようなもう一人のイリゼさんの視線と、それに真正面からぶつかるもう一人のうずめさんの視線。

 一触即発。もしホログラムを介した会話じゃなければ、すぐにでも戦闘が始まってしまいそうな雰囲気で…けれど、不味い。幾ら何でも、これは危な過ぎる。

 

「ま、待って下さいイリゼさん!確かに貴女は、凄く強いですけど…うずめさんは、きっとかなりの策を用意してる筈です!それに、うずめさんの側にも凄く強い女神がもう一人いるんです!だからここは、わたし達と一緒に……」

「抜かせ。実力も、行動も、精神も、何もかもが足りぬ貴様等程度が一体何の役に立つ。そんな事で、人々に一体何を示せる。…待つのは貴様等だ。邪魔だ、動くな」

「……っ…だ、だとしても、わたし達が守らなきゃいけないのはこの次元だけじゃないんです!安直な行動の結果、神次元やうずめさんのいる次元に何かあったら困るから、わたしは言っているんです!」

「…敵の心配か?女神でありながら人々ではなく、敵の心配をするとは…愚かにも程がある」

「ちょっと、今のは訂正してくれないかしら?今ネプギアが言ったのは、奴とは別の人の名前よ。それにそこには、人間だっているの。…本当に愚かなのは、文脈も考えず単語だけで判断したアンタとネプギア、一体どっちなんでしょうね」

「ゆ、ユニちゃん…!?」

 

 わたしの言葉を冷たく跳ね除けたもう一人のイリゼさんに対し、言い返すユニちゃん。さっきはラムちゃんを制止していたユニちゃんが、今度は皮肉を交えて言い返す。

 訂正しろ、とわたしの為に言ってくれたのは嬉しかった。でもその結果、ただでさえ悪かった雰囲気が、更に冷たく険悪になり……

 

「んー…これ要はさ、二人のうずめがごっちゃになるから悪いんだよね?だったら、んー…今いる方のうずめは、別次元のうずめと色々正反対だしダークな雰囲気もあるから…暗黒星くろめ、なんてどう?」

「あ、暗黒星くろめ…?…大きいネプテューヌさん、流石にそのネーミングセンスは……」

「暗黒星くろめ…暗黒星、くろめ…ふふっ、響きと言い字面といい、即興で考えたとはとても思えない程良い名前じゃないか。…うん、気に入った。これからオレは、暗黒星くろめと名乗るようにしよう」

『え、えぇー……』

 

 そんな雰囲気をがらりと変えたのは、またもや大きいお姉ちゃんだった。しかもその…正直に言うと安直な名前に対し、どういう訳かもう一人のうずめさんはご満悦。表情からして、どうも本気で気に入っているらしくて……うーん、こっちのうずめさんも、やっぱりちょっと独特のセンスを持ってるのかも…。

 

「…まあ、そういう訳だから待っているよ、原初の女神。もしも本当に物怖じしないというのなら、来るが良いさ」

「あ、ちょっ…もー!きゅーに出てきてきゅーに切れて、なんなのよー!」

 

 言うべき事は言った、満足もした…とばかりにもう一人のうずめさん…いや、くろめさんは言葉を締め、映し出されていた映像も消滅。確かに一方的過ぎるその態度に、ラムちゃんは不満を爆発させるけど…きっとその声は届いていない。

 

「…あ、あの…わたし、も…一人で、行かない方が…良い、と…思う……」

「貴様等などの力は必要ない。…だが、別次元か…この信次元以外にも人の住む次元があるという話であれば、それは貴重な忠告として胸に留めておこう」

「イリゼ、さん……」

 

 それからロムちゃんもわたしの言葉に賛同してくれるけど、もう一人のイリゼさんの回答は変わらず。胸に留める、とは言ったけどそれ以外は取り付く島もなくて……彼女はわたし達に背を向ける。そして、イリゼさんは飛び立とうとし……

 

「──イリゼ様…っ!」

 

 その背中を引き止めたのは、さっきの大きいお姉ちゃんと同じように、フロントから出てきたいーすんさんだった。

 

「…お久し振り…に、なるでしょうか。イリゼ様…」

「…イストワール?…随分と、小さくなったものだな……」

「…それは、まぁ…わたしにも、色々とありまして……」

 

 もう一人のイリゼさんと…自分の創造主と向かい合う、いーすんさん。少し意外そうな顔で発された言葉に対して、いーすんさんは何とも言えないような表情を浮かべ…けどすぐに、その表情を引き締める。

 

「そうか…して、何用だ」

「…イリゼ様。ネプギアさん達に…皆さんに、協力して頂けないでしょうか。イリゼ様が、絶大な力を持っている事は十分に理解しています。ですが……」

「イストワールまでそれを言うか。…悪いが、それを聞くつもりはない。イストワールこそ…これで良いと思っているのか。女神が揃いも揃ってこの体たらくな、今の信次元を」

「……っ…確かに、イリゼ様に比べればそうかもしれませんが…だからと言って、そんな言い方は…!」

「事実は事実だ、言い方を変えようとそれは変わらん」

 

 そう言って、またもう一人のイリゼさんは背を向ける。これ以上話す気はないと、そう示すように。

 わたし達と違って、いーすんさんともう一人のイリゼさんは親子の様なもの。現にいーすんさんの声には、確かな敬意の感情があって…だけどそれでも、いーすんさんの言葉でも、イリゼさんの意思は変わらなかった。

 

「私はこれから、あの愚者を叩き潰す。……イストワールよ。君が現代でもまだ健在であった事…それには少し、安心した」

「……!イリゼ、様…ッ!」

 

 そうしてもう一人のイリゼさんは飛び立つ。くろめさんの誘いに乗り、くろめさんを倒す為に。そして、イリゼさんが飛び去った後……いーすんさんの表情は、酷く酷く複雑そうに歪んでいた。




今回のパロディ解説

・フルサイコフレーム機
機動戦士ガンダムUCに登場するMSの一つ、ユニコーンガンダムの事。叫びに応じて現れるMSと言えばユニコーンですね。…えぇ、ユニがユニコーンネタです。

・オデュッセイア
本作と同じくハーメルンにて連載中の作品、『昴次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2(ゆーじ(女神候補生推し)さん作)』のパロディ。今回も許可は取っています。

・プラエ
こちらも昴次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2に登場するキャラの一人の事。読み易く、投稿が早く、そして面白い作品なので、私的にお勧めです。
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