超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

138 / 234
第百六話 無数の不明と一つの事実

 轟音と共に、空を切り裂く電撃の槍。砂塵を巻き上げ、地を砕く衝撃の刃。強く、鋭く、一撃一撃に必殺の重みが伴ったそれ等の攻撃を放つのは、この次元最古の女神。数多の人々の思いの結晶をその身に宿し、その理想を形とする『国』を造る力をこの次元で初めて得た者による、本来ならば人を守り、人の幸せを導く為の力の一端。

 けれどそこに、信念も、熱意も、輝かせるべき思いもない。そこにあるのは……歪み腐った悪意だけ。

 

「落ちろッ、悪神ッ!」

「ざーんねーん。あんたの攻撃じゃ…落ちないのよッ!」

 

 縦連結状態の連結双剣を右手で振り上げ、振り下ろす瞬間に左手でも掴む事によって加速する一撃。その刃が向かう先は…キセイジョウ・レイ。

 一切の躊躇いを持たないわたしの一撃に対し、レイは濃密なシェアエナジーを纏った杖で迎撃。わたしとレイ、それぞれに振り出した一撃はぶつかり…わたしは飛び退く。

 

「オラぁッ!」

「ぴぃ、ぱーんちッ!」

 

 大きく距離を開けるわたしへ向けて、即座に姿勢を整えたレイが見せる追撃の素振り。そこへ左右から強襲を掛けるのは、拳を握ったブランとピーシェ。挟み込む形で二人はレイに拳を突き出し、それをレイは上昇で回避。

 避けられた事で空振り、交差する二人の身体。けれどそれは陽動であり、回避先へノワールとベールが同時に突進。速度に長ける二人の突撃は一気にレイとの距離を詰め……次の瞬間、黒い電撃が二人を阻む。

 

「はいシャットアウトー。ただ突っ込むだけとか、単純過ぎなーい?」

「…って、思っちゃうなんて単純過ぎるんじゃないかしらぁ?」

「あぁ?」

 

 防御を余儀無くされて二人を見て、レイは憎たらしげに嘲笑……したのも束の間、その背後へ皮肉と共に蛇腹剣が襲い掛かる。

 振り向きざまに弾かれる連なった刃。けれどその瞬間、咄嗟の反応を強いられた事により…確かに消えた。レイの顔から、嘲りの感情が。

 

「畳み掛けるぞッ!」

『えぇッ!』

「たたみをかける?…よくわかんないけど、えーいッ!」

 

 ブランからの声に応えるように、わたし達は代わる代わる、立て続けのヒットアンドアウェイで連撃。防御はされても反撃は許さない、流れるような連続攻撃で負荷を与えていき……最後にピーシェが真っ直ぐ突っ込みそのまま頭突き。わたし達でも予想しなかった攻撃にはレイも反応が遅れ、額と杖の柄が衝突をした次の瞬間には互いに後方へ弾かれる。

 

「あぅぅ〜、いたい〜……」

「ま、まぁ頭突きですものね…しかもロケット的な頭突きを…。いつも何かしら予想の斜め上を通っていく辺り、流石はピーシェちゃんですわ……」

 

 空中でくるりと後転をする事で勢いは殺しつつも、涙目でピーシェは額を押さえる。一方、レイはといえば……あちらも健在。

 

「あー、びっくりした。やっぱりアイツは戦い辛いわねー。低脳過ぎて、逆に予想出来ないわ」

「…よくもまぁ、それで偉そうに出来るわね。理由はどうあれ、貴女は一枚上手を取られたって事なのに」

「べっつにー?私みたいな有能がお馬鹿の行動を予想出来ないのは当然の事だし、そもそも六人がかりでも優位を取れないアンタ達に言われてもねぇ?」

「…有能?愚劣極まりない政治で人々に愛想を尽かされ、この次元からも超次元からも追い出されて、その癖のこのこと戻ってきたかと思えばデカい顔をしてる誰かさんが、事もあろうに有能?これ、聞き間違いよね?」

「…………」

「…………」

 

 口の減らない女神崩れにわざと芝居掛かった態度で言葉を返すと、再びレイの顔から嘲笑が消失。対するわたしは顔の角度を僅かに上げ、真っ直ぐではなく上から下へ…見下ろす形で奴を見やる。

 あぁ、腹立たしい。あぁ、不愉快だ。ピーシェには悪いけど…こんな奴が再びこの次元に現れたという事が、わたしにとっては不快でならない。

 

「…セイツ、あんまり煽るのはそれはそれでどうかと思うわよ。女神の品位的に、ね」

「お前がそれを言うのかよ…ま、品位云々は同感だがな」

 

 現実を認めず反論してくるか、それとも言葉で返さず暴力で返してくるか…そう思っていたわたしへかけられたのは、味方からの声。…確かにそうね。品の無い女神なんて、アイツ一人で十分だもの。

 

「…では、セイツの代わりにわたくしから。貴女、何が目的でして?まあ大方、禄でもない事なのでしょうが…大規模な破壊活動をするでもなく、ただ単独で仕掛けてくるという事は、それ相応の理由があるのでしょう?」

「…へぇ、少しは頭が回るのね。なーんにも考えてないと思ってたけど」

「という事は、わたくしの見立ては合っていますのね。して、その目的とは?」

「やっぱ気になる?気になっちゃいます?けど、そんなのぉ…あんた達クソザコに一々手間かかる事なんてする価値ないからに決まってんでしょバーカ!あははははッ!」

 

 わたしに変わる形で尋ねるベールの口振りは、煽るでもなく、かといって変に下手に出るでもない、上手く会話する気を誘うようなもの。実際レイはそれに誘われ…たと思いきや、答えとして返ってきたのは低俗な嘲笑。ただ、ベールはこういう返しになる事も予想はしていたらしく、軽く嘆息を漏らすだけでそれ以上の反応はしなかった。

 

「むぅぅ…そういうわらいかた、やっ!」

「あっそ、別にガキにどう思われようがどうでもいいしー。…さぁて、それじゃあそろそろあんた等の骨を五、六本、或いは七本位へし折って……」

 

 そんなベールとは対照的に、ピーシェははっきりと意思を示す。それは嫌だという、単純ながらもピーシェらしい反応を。

 対するレイの反応は冷淡。続く言葉が脅しや意気がりによるものではないと分かっているわたし達は、想定し得る攻撃全てに神経を張り詰め……次の瞬間、不意にレイの表情が変わる。

 

「…あぁ?何よ、今から良いところだってのに…って、あれぇ?…へぇ、随分と愉快な事になってるじゃない。一体何があった訳?」

 

 突如わたし達から視線を外したレイは、何やらぶつぶつと話し始める。遂に頭の髄まで逝かれたのかしら。…と、言いたいところだけど…どうもそういう事じゃないようね…。

 

「…ふぅん。あー、はいはい。まあその話の方が面白そうですしー、すぐに戻ってあげますよー」

「戻る?…テメェ、まさか…!」

「はい、お察しの通りー、あんた達の相手をするのにも飽きたのでー、今回はこれにて終了でーす。良かったわねぇ、もう少しだけ長生き出来る事になって」

「それってぇ、今話してたっぽい相手に呼ばれたって事かしらぁ?」

「そうそう。そういう事だから邪魔しないでよね。折角まだ殺さずにいてあげるんだから」

 

 相変わらず奴は他者を馬鹿にせずにはいられないのか。そう思う程にレイは言いたいだけ言って…反転。

 

「……っ!誰が逃がすか…ッ!」

「せいつちゃん、ストップ」

「ちょっ…プルルート!?何のつもり!?」

「それはあたしの台詞よ。どこに行くのかも、何をしに来たのかも分からない相手を無策で追うのって、それは正しい判断かしら?」

「それは……。…そうね、軽率だったわ…」

「大丈夫よ〜、せいつちゃんなら一回で分かってくれるって思ってたもの。せいつちゃん、まあまあ単純だけどお馬鹿さんじゃないものね〜」

「あ、え、えぇ…(さらりとdisられた……)」

 

 飛び去ろうとするレイを咄嗟に追おうとしたわたしだけど、プルルートの制止を受けて我に返る。……駄目ね。今も昔も、どうしても奴が絡むと冷静さに欠けるわ…。

 

「…一先ず、撃退成功…って事で良いのかしら。今回はほんと、何しに来たのか謎だけど……」

「ただ、わたくし達が迎撃に来た際の反応からして、迎撃に来られる事自体は織り込み済みだったように思えますわね」

「だな。…まあ、それはそうと…完全に調子戻ってきたな、プルルート」

「うんっ!ぷるると、げんきっ!」

「…えぇ。いつもありがとう、皆」

「ほんとよね。…まあ、さっきみたいに不意打ちで言の葉刺してくる辺りも、ある意味調子戻ってるけど……」

「うっ…だってせいつちゃん、隙だらけだったし……」

「隙だらけって……えぇ!?そんな理由でわたし単純な子呼ばわれされたの!?」

 

 よく言えば脅威が去った、悪く言えば取り逃がした事で戦闘は終わり、わたし達は構えを解く。その後、プルルートの口から出た明らかに本音っぽい言葉に、わたしは思わず突っ込みを返し…それに皆も苦笑い。

 

「ともかく事は済んだんだから戻りましょ。向こうの目的が謎なままな以上、ここで時間を無駄にするのは惜しいし」

 

 その後、わたし達もノワールの言葉に頷き反転。プラネテューヌの教会へ向かうべく動き出し…すぐに気付いた。ピーシェが、レイの飛び去った方向を見つめている事に。

 

「…めがねのおねーさん……」

「…ピーシェ……」

「…もっとちゃんと、めっ!…ってできたら、おねーさんももとにもどるかな…?」

「かも、しれないわね。絶対とは言えないけど…一番大切なのは、諦めない事。そうよね?ピーシェちゃん」

「うんっ!」

 

 にこりと笑いかけるプルルートの言葉に、ピーシェもぱっと笑って元気良く返す。

 そう。わたしからすれば一刻も早く討滅したい、誕生すらしなければ良かったのにと思うような奴でも、ピーシェにとっては違う。そしてわたしの思いとピーシェの思い、それはどっちかが正しいとか、どっちがより本質を突いているとか、そういう話じゃなくて……

 

「皆さん、皆さん!:(;゙゚'ω゚'):」

「あら?いーすん、どうしたの?」

「それが…と、とにかく急いで戻ってきて下さい!(><)」

 

 改めて帰還しようとしたその時、通信機から届いたのはイストワールの声。それもかなり切羽詰まった、一刻を争う事態である事が即座に分かるような程の声で。

 まさか、レイが去ったと見せかけて街の方へ瞬間移動をしたのか。それとも別の敵が強襲をしてきたのか。一瞬で生まれ、急速に膨れ上がる不安に駆られながら、わたし達は全力でプラネテューヌ教会へと戻り……そして、知った。信次元の守護女神の四人が、一連の騒動の黒幕の一人を発見したという通信を最後に、行方が分からなくなった事を。

 

 

 

 

 天界は信次元の中にある空間だけど、実質別次元みたいな場所。だから普通の手段じゃ出入り出来ないし、インカムで下界と通信する事も出来ない。そういう環境だから、わたし達は何かあったら、或いは何もなくても決めた時間になったら一度戻る、と決めていて…くろめさんを見つける事の出来なかったわたし達は、プラネタワーに戻った。

 もしギョウカイ墓場の方に逃げていたなら見つからないのは当然だし、墓場の方にもいなかったって事なら、次はもっと広範囲を探してみないと。…そう、思っていたのに…そう意気込んでいたのに……

 

「そんな……」

 

 プラネタワーで待機していたコンパさん、アイエフさん達から聞かされたのは、お姉ちゃん達が通信途絶になり、行方知れずになったという、想像もしていなかった話だった。

 それを聞いて居ても立っても居られなくなったわたし達は、浮遊大陸から直接墓場へ向かったイリゼさん達を追う形で、すぐに飛んだ。お姉ちゃん達が行方不明になる程の何かが墓場で起きたって事なのに、後先考えない程の全力で一気に飛んで、イリゼさん達と合流した。

 そうして見つけた、戦闘の跡。ダークメガミとの戦いがあったと一目で分かる場所が、墓場の中にはあって…だけどそこには、何もなかった。お姉ちゃん達に起こった『何か』の手掛かりになるものは、何も。

 

「おねえちゃん…」

「どこよ…どこに行っちゃったのよ、おねえちゃん……」

 

 酷く静かな墓場の中で、ロムちゃんとラムちゃん…二人の声だけが静かに零れる。

 ここで戦闘があったのは間違いない。でも、お姉ちゃん達の痕跡は一つもない。それはつまり、痕跡を残すまでもなくあっという間に勝ったか、痕跡が残るだけの戦いにもならない程、あっという間に負けたかで……もしも勝っているなら、連絡位してくれる筈。なのに、それがないって事は……

 

「…ううん…ね、ねぇ皆。やっぱり、ここじゃないんじゃないの…?ダークメガミはお姉ちゃん達以外の何かと戦ってたとか、すぐに場所を移動したとか…うん、そうだよ。きっとそういう……」

「…周囲の状態からして、ここで暫く戦闘になっていた事は間違いないわ。それにお姉ちゃん達以外で、ダークメガミとまともにやり合える存在が、こんな都合の良いタイミングでここに来てると思う?」

「それは……」

 

 だけど、そんな訳ない。信じられない、そんな訳ないと思いたいわたしの頭に浮かんだのは、何かしら認識が間違っているという可能性。それならきっと、と言葉にしながらわたしは自分で信じようとして……ユニちゃんに、言葉を返される。

 

「…いるかも、しれないじゃん。もう一人のイリゼさんなら、くろめさんを追ってここに来ててもおかしくないし…もしかしたらまた、四天王の皆さんが……」

「アンタ、コンパさん達の話聞いてなかったの?イリゼさん達の見立てじゃ、もう一人のイリゼさんはくろめを見失ってたみたいだし、お姉ちゃん達がくろめを見つけた時、そのもう一人のイリゼさんはまだ浮遊大陸にいたのよ?それに、四天王って…そういう現実逃避は、止めなさいよ……」

「……っ…冷静だね、ユニちゃんは…凄く冷静に、思考が回ってる…」

 

 ユニちゃんの言う事も分かる。ユニちゃんの方が、より事実に基づいているとも思う。けれど、わたしには理解出来なかった。お姉ちゃん達にもしもの事があったらと思うと、わたしは不安で不安で仕方ないのに、ユニちゃんはいつも通りに冷静で…気付けば口から漏らしていた、目を逸らしながらの一言。それを聞いた途端、ユニちゃんの目付きは変わって…声音も少し、荒くなった。

 

「…何よ、その言い方…だったら訊くけど、自分に都合の良い考え方を優先するのが、女神として正しい事なの?」

「都合の良いって…正しい事って…じゃあユニちゃんは、今の状況を普通の事だって思ってるの…!?ここはギョウカイ墓場だよ!?ここで、わたし達は…ここで、お姉ちゃん達は…なのにユニちゃんは、何とも……」

「そんな訳…そんな訳ないじゃないッ!アタシだって不安よ、お姉ちゃん達の事が心配で心配で、信次元中を探し回りたい気分よッ!けど、それでどうにかなる訳!?気が楽になる考え方をしたって、お姉ちゃん達が見つかる訳じゃないでしょ!?ネプギアこそ、何を考えてるのよッ!」

「……っ…!」

「ちょ、ちょっと…なんでこんな時に、ケンカしてるのよ……」

「ふぇ…二人とも、ケンカ…しないで…(ぐすっ)」

 

 冷静を超えて冷淡な、棘のあるユニちゃんの言葉を聞いた瞬間、不安な気持ちが爆発して、衝動的に声を荒げてしまったわたし。けどその直後、わたしの言葉が引き金となる形でユニちゃんも声を荒げて…そこで漸く、わたしは気付いた。ユニちゃんは我慢していたんだって。不安な気持ち、心配な思いを押し殺して、ただ不安がるより一歩先を見ようとしていたんだって。

 それに気付くと同時に、わたしはユニちゃんが特別冷静だった訳じゃなく、自分が冷静さを失っていただけなんだって理解した。理解して、後悔もした。冷静で自他共に厳しいユニちゃんだけど、胸の中にあるのは…強くなりたいって思いや、お姉ちゃんが大好きだって気持ちは、わたしと同じなんだって事を、前の旅の中で知った筈なのに…そんなユニちゃんを、冷たい人みたいに言ってしまった自分の浅はかさを。

 そうしてわたしが言葉に詰まる中、ラムちゃんとロムちゃんが辛そうな目でわたし達を見上げる。…あぁ、駄目だなわたし…今ここで、一番何も見えてなかったのは…わたしだ……。

 

「…ごめん、ユニちゃん…わたし、冷静じゃなかった……」

「…こっちこそ、感情的に言い返して悪かったわ…それに、ネプギアが何も言ってなかったら、アタシが似たような事言ってたかもしれないから…そんな事ないって思いたいけど、アタシだって…そんな、冷静じゃないし……」

 

 謝って、ユニちゃんも言葉を返してくれて、一旦今の言い争いは終わる。だけど、空気は気不味いままで…そんな中、わたし達がここの探索をしている間に周辺を見に行っていたイリゼさんといーすんさんが戻ってきた。

 

「皆、こっちは何か見つかった?…って、何かあったの……?」

「…何でもないです。それよりイリゼさん、手掛かりになりそうなものは見つかりましたか…?」

「ううん…やっぱり何かあったのは、ここなんだと思う。戦いと…それに、想定外の何かが」

 

 気不味い空気にすぐに気付いたイリゼさんだけど、ユニちゃんがすぐに話を逸らした事で、それ以上の追求はない。そして同時に、周辺でも手掛かりを見つけられなかったって事で…いよいよ誤認でも何でもなく、お姉ちゃん達が『負けた』という可能性が真実味を帯びてきてしまう。

 でも、最後にイリゼさんは「想定外の何か」という言葉を強調。それはどこか、「普通の戦いなら負ける筈ない」と言っているようで…頭が冷えた今のわたしなら、分かる。イリゼさんも、わたし達がいるから…或いはもっと先の事を考えているから冷静に振る舞っているだけで、心配する気持ちはきっと同じだと。

 

「…一度、戻りましょう。こうなると準備も無しの捜索をこのまま続けても手掛かりが見つかる可能性は低いですし、皆さんも少なからず消耗している以上、ここに長居をするのは賢明ではありません」

「ですね。…皆も、良い?」

 

 いーすんさんの言葉にこくりと頷き、イリゼさんはわたし達に問いかける。訊かれたわたし達は、逡巡し…それぞれに、答える。

 

「…はい。お姉ちゃん達の事は勿論ですけど…くろめの件も、ありますもんね……」

「わたしも、了解です…」

 

 まずユニちゃんが、次にわたしが答えて、最後にロムちゃんとラムちゃんが小さく首肯。二人の顔付きを見たイリゼさんは、何かを言おうとして…けれどそれをぐっと堪えるように身を翻すと、先頭に立って地上から宙へ。わたし達もそれに続いて、ギョウカイ墓場からプラネタワーへ向かう。

 多分イリゼさんは、二人を元気付ける言葉をかけようとしたんだと思う。だけどまだ、分からない事が多過ぎる。何があって、どうやって、どうしてお姉ちゃん達が行方不明になったのか…何も分からないんじゃ、さっきのわたしみたいな事しか言えない。

 だからこそ、イリゼさんは言わなかったんだ。その場凌ぎの根拠がない言葉を言うのは、二人の為にならないと思って。

 

(そうだ…お姉ちゃん達の事もだけど、くろめさんの事や、キセイジョウ・レイの事もまだ分かってない…ユニちゃんも言ってたけど、女神として何が正しいか…それが考えられないんじゃ、駄目駄目だよ、わたし)

 

 プラネタワーへ向かう最中、わたしは心の中で自分を叱咤。ユニちゃんに酷い言い方しちゃったのもそうだけど、それ抜きにもわたしはこのままじゃ自分に対して納得出来ない。だから…これから挽回するんだ、女神として。

 そうしてプラネタワーに到着したわたし達は、女神化を解いてすぐに中へ。入った途端に待っていたコンパさん達が駆け寄ってくるけど…皆さんに対して、喜んでもらえるような情報はない。

 

「…そ、っか…うん、でも…皆が無事に帰って来てくれただけでも、まだ良かったわ……」

「はいです…皆、自分を責めちゃ駄目ですよ…?」

 

 何も見つけられなかったわたし達に対して、コンパさんやアイエフさん、皆さんがかけてくれたのは優しい言葉。…でも、さっきは…お姉ちゃん達の事を聞いたばかりの時には分からなかったけど、今は分かる。皆さんも凄く心配していて…でもそれを我慢して、わたし達の帰りを待ってたんだって。

 

「…皆、まずは一度確認をしようか。一人一人、調べた結果や思った事を言ってみて」

「…何にも、わからなくても…?(しゅん)」

「うん。一人一人の情報じゃ何もなくても、それを照らし合わせる事で、何か見つかるかもしれないからさ」

 

 確認したい事がある、といういーすんさんと別れて、わたし達は上層階のリビングルームへ。会議室じゃないのは、休憩を兼ねた確認だから…っていう、イリゼさんからの気遣い。

 

「…で、さいごにもっかいぐるっと見てみたけど、やっぱり何もなかったわ…。…イリゼちゃん、何かわかった…?」

「…ごめん、何にも……」

「えぇ…何か見つかるかも、って言ってたのに……」

「そう言わないの。…けど、ほんとに信じられないですね…まさかもう一人のイリゼさんクラスの存在が、二人も三人もいるとは思えませんし……」

「じゃあ、やっぱり…お姉ちゃん達がいなくなったのは、あそこでの戦いとは別の何かがある、って事なのかな……」

 

 腕を組んで、考える。有益な情報がないままじゃ予想や推測ばかりの考えになっちゃうけど…それでも、考えなくちゃ始まらないから。

 

「…あ…べつじげん、は…?」

「…うん、それは私も考えてる。もしもくろめが何らかの手段で別次元に逃げようとして、それに巻き込まれて一緒に飛ばされた…って事なら、連絡が取れないのも説明が付くからね。それも含めて、イストワールさんが今確認をしてるんだけど……」

「そもそもイストワールさんは、何の確認を…?」

 

 ロムちゃんの言葉にイリゼさんが頷いて、続いた部分へユニちゃんが質問。それにイリゼさんが答えようとしたところで…当のいーすんさんが、ノックの後に入ってくる。

 

「イストワールさん…結果は、どうでした?」

「はい。皆さん、まずは安心して下さい。ネプテューヌさん達は…いえ、少なくともネプテューヌさんは存命です」

「……っ!ほ、本当ですか!?」

 

 五人全員の顔が見える位置に移動したいーすんさんが、真剣な面持ちで発した言葉。それは、お姉ちゃんが生きているんだって事な断言。その言葉を聞いた瞬間、わたしは全身が熱くなって…思わず立ち上がる。

 

「えぇ、間違いありませんよ。シェアクリスタルからのシェアエナジー配給は、まだ続いていますから( ´ ▽ ` )」

「シェアクリスタル…?…そっか、だから……」

「ね、ねぇおねえちゃんは!?おねえちゃんもだいじょーぶなの!?」

「残念ながら、それはルウィーのクリスタルでなければ分かりません…が、その可能性は決して低くないと思います(´-ω-`)」

 

 存命を確認した方法を理解し、わたしは安堵。ブランさん達もきっと大丈夫だという旨の言葉に、三人もほっと胸を撫で下ろす。

 今いーすんさんが言ったのは、昔…犯罪組織との初めの戦いでお姉ちゃん達が帰ってこなくなってしまった時にも、その生存を確認した方法。それなら間違いないし、シェアエナジーさえあれば…そう簡単に、女神は死なない。

 

「…けど、そうなると逆に分からなくなりますね……」

「……?イリゼさん、それは一体……」

「シェアエナジーの配給が続いてるって事は、勿論皆がまだ生きてるって証明になるけど…そうなると逆に、別次元に飛ばされたって線は消えるの。普通別次元に飛ばされるとシェアエナジーの配給も途切れる…っていうか、届かなくなるのはネプギア達にも話した事あるよね?」

 

 シェアエナジーの配給が途切れる、というのはイリゼさんの実体験。なら、うずめさん達のいる次元や、神次元は?…と思っていーすんさんに聞いてみたけど、配給出来ている量自体も全く変わっていないらしい。

 という事はつまり、お姉ちゃん達はまだ信次元の中にいるって事になる。…でも、それなら…信次元の、どこ…?

 

「天界なら自力で門を開いて帰って来られるだろうし、普通に出ただけならそもそも通信が繋がらない訳がないからね。…勿論、通信も自力で動く事も出来ない状態なら、また別だけど……」

「そんな状態なのに、それ以上の事をしなかった理由が今度は分からない…という事ですか……」

 

 さっきのわたしみたいにユニちゃんもイリゼさんも腕を組んで、俯きがちに考える。

 確かに、一つの事が分かったけど全然答えには近付いていない。むしろ謎は増えてる位で、このまま考えて分かる事かも分からない。

 

「…おねえちゃん…ほんとに、どこ行っちゃったの…?」

「…おねえちゃんたち、また…けが、してるのかな…(おろおろ)」

 

 『分からない』ばっかりだから、不安になる。分からないままだから、怖くなる。それは、そう思うのは、どうしようもない事で……だけど、

 

「…ねぇ、皆。それでも…お姉ちゃん達はまだ生きてるって事は、事実だよね?それは、疑いようのない事だよね?」

「…そりゃ、まぁ……」

「なら…きっと大丈夫だよ。今お姉ちゃん達がどこにいて、どんな状態かは分からないけど…生きているなら、きっと大丈夫。大丈夫だよ、お姉ちゃん達なんだから」

 

 どんなに分からない事が多くても、だからって分かってる事が変わったりはしない。お姉ちゃん達が生きてる、それだけは事実で…それだけでも、希望は持てる。きっと…って、そう思える。

 わたしはさっき、冷静じゃなかった。冷静じゃなくて、事実をちゃんと見られていなかった。だけど、今は違う。ユニちゃんとの事で反省して、頭も冷えていたから…悪い事も良い事も、今ならちゃんと見えてる。…と、思う。それに、こういう時こそ前向きさを忘れちゃいけない…そうだよね、お姉ちゃん。

 

「…そうね。確かにその通りよ、ネプギア」

「同感です。楽観視出来る状況ではありませんが…悲観していても前に進めないのもまた、事実ですもんね( ̄∇ ̄)」

 

 皆を元気付けた、なんて思ってない。わたしが言ったのも、全部事実で…物事を良く見るか悪く見るかは、心の持ちよう次第だから。

 そうだ。お姉ちゃん達はきっと大丈夫、大変な状況かもしれないけど…お姉ちゃん達の強さは、誰よりもわたし達が知っている。だから……希望を、無くさないようにしよう。きっと今も頑張ってる、お姉ちゃん達を信じて。




今回のパロディ解説

・ロケット的な頭突き
ポケモンシリーズに登場する技の一つ、ロケット頭突きの事。でも別に首を引っ込めてる訳ではないので、どちらかというとスマブラでやるタイプのロケット頭突きですね。

・「〜〜骨を五、六本、或いは七本〜〜」
「プリマエンジェル友情のテーマ」内の、フレーズの一部のパロディ。これはかなり、パロディだと分からない入れ方が出来たんじゃないかなぁと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。