超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

139 / 234
第百七話 それぞれの行動

 ネプテューヌ達四人と、くろめの失踪。くろめを取り逃がしてしまっただけならともかく、もう一人の私とは殆ど対話出来ず、レイの居場所も不明なままでの守護女神失踪は…痛いなんてものじゃない。戦力的にも、国営的にも、私達の心理的にも、かなりの重傷。

 同時にこれは、過去にも一度あった事。帰らない守護女神というのは、犯罪組織との戦いの際にもあった事で…あの時私達は、それを切っ掛けに犯罪組織に対して大きく押される事となった。その時と今とは、状況的に近くて…だけどある点においては、まるで違う。

 あの時女神候補生の四人は、傷心でとても戦えるような状態じゃなかった。でも今は、違う。勿論今だって、不安や心配で胸が一杯だと思うけど…ちゃんと女神として、考える事も動く事も出来ている。だからこそ…私も、そんな皆に遅れを取ってなんていられない。私を心配し、気に掛けてくれた皆に対して…今度は私が、助ける番なんだ。

 

「そうか…なら、俺も気を配っておくよ。恐らくないっつっても、こっちに飛ばされてる…って可能性はゼロじゃないんだろ?」

「うん、お願いねうずめ」

 

 まずはネプテューヌ以外の三人も存命かどうかを確認するのが最優先。そう私達は判断し、ユニ、ロムちゃん、ラムちゃんは一度自国に戻った。ベールの確認は、チカさんにお願いして…今私は、うずめ達に現状を伝えている真っ最中。

 

「…悪いな、そっちがそんな大変な時に、行ってやる事が出来なくて……」

「気にしないで。というか…状況的には、依然そっちの方が大変でしょ?」

「まぁな。昨日なんか、気付いたら歩いてる場所が丸ごと浮き上がってて、ウィードと慌てて崩壊の外にダイブする事になったしな」

「ま、まぁなで片付けて良いレベルじゃない……」

 

 いやぁ、あれは大変だった…と軽い調子で話すうずめに、私は思わず呆れてしまう。…うずめはまぁ、女神だから大丈夫って確信があったんだろうけど…ウィード君は無事で済んだのかな……。

 

「はは…分かっているとは思うが、今はこれまで以上に安全マージンを取っておかなければいけないよ。うぃどっちの安全確保は勿論だが、君が負傷し動きに支障が出れば、それもまたうぃどっちの危険に繋がるんだからね」

「あぁ、わぁってるよ。…気を付けてるさ、ウィードの事は……」

「……?うずめ、ウィード君と何かあったの?」

 

 海男さんからの忠告に首肯するうずめだけど、ふっとその表情が俄かに曇る。だから、喧嘩でもしたのかと思って私が訊くと…数秒考えた後、うずめは言う。

 

「…ここのところ、なんかウィードが記憶を思い出しそうみたいでさ…それに関係してるのかどうかは分からねぇけど、ぼーっと考え込む事が増えたんだよ…」

「そ、そうなの?じゃあ、ウィード君について今は色々分かってたり…?」

「や、ウィードが言うにはパズルのピースが見つかるみたいな感じで、まだ記憶の全体像は全く見えてないらしいんだ。…まぁ、しょうもない事を思い出してたりもするらしいんだけどな」

「そっか…うずめ、引き際だけは絶対に見誤らないようにしてね?今のそっちでぼーっとなんて、危険極まりないでしょ?」

「おう。そっちこそ、本当に不味いって時は正直に言ってくれよ?そんときゃ一度切り上げて、そっちに行くからさ」

 

 記憶が戻りそうになっている。それ自体は朗報だけど、そう上手くはいってない様子。でもそのウィード君と共にいるうずめは、多少悩んでこそはいるみたいだけどまだまだ前向きで…やっぱりそういう友達を見ると、それだけで安心する。

 

「そうでなくとも、早めにこちらへ来られる事を期待するよ。皆、うずめ達の事を日々心配しているからね」

「…そうだな。皆を安心させる為にも、頑張るさ。もう少しの間、皆の事は頼むぜ海男」

 

 そうしてうずめとの次元間交信を終え、私達は部屋を出る。

 今はまだ施設が無事だから交信も出来ているけど、いつかはそこも崩壊に巻き込まれてしまう筈。そうなったらもう、直接行く事でしかやり取りは出来なくなる訳で…出来る事なら、それより早く二人にも来てほしい。どんなに可能性が低かったとしても、ギリギリまでいるかもしれない『誰か』の為に探すっていううずめの意思は、同じ女神として応援しているけど…そう思わずにはいられない私だった。

 

 

 

 

「ふー……」

 

 交信を終え、機材を待機状態にして部屋を出る。別に疲れた訳じゃないが…つい、口から出てしまったのは嘆息。

 まさか、向こうであんな事が起こっているなんて思いもしなかった。まさか、ねぷっち達が行方不明になっちまうなんて…。

 

「…友達が、恩人が、大変な事になってる…普通に考えたら、行ってやるべきだよな……」

 

 そっちには行けない、と言ったものの、正直それで良かったのかは自信がない。勿論、理由があるから行けないって言ったんだが…その理由は、いるかどうかも分からない『誰か』を探すってもの。誰もいなきゃ完全な無駄、しかも可能性としちゃ恐らく『いない』の方がずっと大きい訳で……

 

「…って、駄目だ駄目だ。もしかしたら、助けを必要としてる奴がいるかもしれねぇんだ。だったらギリギリのギリギリまで探すのが、女神ってもんだろ」

 

 俺は両頬を軽く叩き、浮かんでしまったマイナス思考を振り払う。無駄になるかもしれない。ひょっとしたら、あの時信次元に行っていれば…と後悔する事になるかもしれない。けどそれは、信次元に行ったって同じ事。まだ誰かいたのかもしれないって思いには、絶対なる。

 どっちを選んだって、逆の選択をしていたら…って思いは生まれるんだ。だけどきっと…ねぷっちなら、こう言うよな。わたし達の事はいいから、そっちで探してあげてって。そういう女神さ、ねぷっちは。

 

「…よし。ウィード、そろそろ行くぞー」

 

 気持ちを引き締め直した俺は、施設内の休憩室へ。そこで仮眠を取っているウィードの肩を掴み、ゆさゆさと揺する。

 

「…ぅ、んん…はいよ……」

「今さっきいりっち達と話したがよ、向こうもかなり大変みたいだ。多分こっちで何かあっても助けに来てくれるだけの余裕はねぇだろうし、慎重さマックスで行くぞ」

「りょーか…えっ、連絡あったのか?なら起こしてくれりゃいいのに…」

「起こしたさ、けどウィード『止めろチョッパー!ぶっ飛ばすぞぉぉっ!』とか何とか言ってて起きねぇんだもん」

「そうか…って、俺どんな寝言言ってんの!?しかもぶっ飛ばそうとしてる相手、ちょっと間違えてんじゃねぇか!」

「あ、悪ぃ。ちょっと間違えた。そうじゃなくて、えーっと…『うぅん…うぇい……』とかだったかな」

「全然違ぇ!ちょっとどころか、原型が欠片もなくなってんじゃねぇか!どうなってんだようずめの記憶!?」

「えー、だって俺記憶喪失だしー」

「俺もですが!?てか記憶喪失言い訳にすんなよ!」

 

 寝起きから早々にフルスロットルでの突っ込みをしてくれるウィード。期待通りの反応をしてくれた事が嬉しくて、俺はにっと口角を上げる。ははっ、やっぱウィードと話してると面白いんだよな。

 

「ったく……ほら、行くなら早く行こうぜ。それとも、うずめも少し仮眠するか?」

「や、俺はいいさ。…ところで、記憶の方はどうだ?」

「相変わらず、断片的な事ばっかりだよ。…でも、そうだな…何となく…何となく、俺は何か大切なものを、無くした気がする…」

「…大切なもの、か……」

「あぁ…凄く大切で、今はもう遠いような…けど、変わっていないような気もして…多分、凄く複雑な思いがあって……」

 

 そう語るウィードが浮かべているのは、最近時々している、どこか遠くを見るような目。それは本気で記憶を、無くしたものを探すような…けど同時に、切なそうでもある瞳で……それを見ていると、不安になる。ウィードが遠い存在の様に思えてしまって、心が凄くモヤモヤする。

 だから俺は、前に出る。その気持ちを紛らわせるように、ウィードの見る先を戻すように。

 

「とにかく!動かなきゃ何も始まらねぇよ。考えて出てくる記憶なら、もうとっくに思い出してる筈なんだからさ」

「お、おう。…行こうって言ってんのに、話変えたのはうずめの方だけどな」

「うっせ、過去を気にする男はモテねーぞ」

「記憶喪失に対して言う事じゃねぇ…!そして記憶を探してるのはうずめもだろうが…!…男ではないけど……」

 

 煙に巻くようにして話を打ち切り、俺はウィードに先立って外へ。ぶつぶつ文句は言ってるものの、ウィードはすぐに後を付いてくる。

…正直ちょっと、格好悪ぃなと思う。モヤモヤしてるのは俺の都合なのに、勝手に話を始めたり終わらせたりして、ウィードを振り回すのは。けど、どうしてもそうせずにはいられなくて、俺じゃない『何か』を見ているようなウィードは怖くて、その癖ウィードなら振り回しても付いてきてくれる、一緒にいてくれるって安心感もあって……ほんと俺は、勝手だな…。

 

(海男達には、自分達に気を遣い過ぎだって言われてたのに…何なんだろうな、最近の俺は……)

 

 振り回してまで話を打ち切ったのに、また別のモヤモヤが渦巻く。ウィードといるのは楽しいし、何だかんだ頼り甲斐も…頼り、甲斐も……うんまぁ、とにかく心から信じられると思える相手なのに、どうしてこんなにもモヤモヤするのか。もしこれが、人且つ異性のウィードと二人だけになったから、ってだけならその内慣れるだろうが、もっと他の理由があるなら、一体俺はどうしたら……そこまで考えたところで、俺はぶるぶると頭を振る。駄目だ駄目だ、慎重にっつったのは俺なんだから、今はそんな事を考えてる場合じゃねぇ。それに、今考えるべき事っつったら……いるかもしれない誰かを探す事、そいつを助ける事だ。その為に、俺はここにいて…うじうじ一人で考え込む俺なんて、きっとウィードが思ってくれる『格好良い女神』じゃないんだからな。

 女神として話したい事、ウィードにとっての格好良い女神でいる事…それを考えるだけで、ちょっと頭がすっきりする。我ながら少し単純な気もするが……ごちゃごちゃ考えてばっかで全然動けないよりはきっと良い筈だ。…多分。

 横まで来たウィードと共に、施設を出る。視界の中に広がっているのは、崩壊の進むこの次元。だけどまだ、確かにここに、次元はある。だから今日も俺達は、人と記憶を探しに行く。

 

 

 

 

 お姉ちゃん達の事を聞いた神次元の皆さんは、こっちに来てくれると言ってくれた。手助けは勿論、必要なら代役…ノワールさん、ベールさん、ブランさんがこっちで『信次元のお三人』として振る舞う事をしても良いと言ってくれて、それは凄く心強かった。

 でもまだ、その時じゃない。ありがたいけど、お姉ちゃん達が行方不明になっちゃったからってすぐに頼るんじゃ、そんなのは女神候補生の名折れ。それをしたら、わたし達を『女神』として認めてくれてる信仰者さん達の信頼を、無下にする事になってしまう。それにレイが健在で、普通に活動してるって事だから、神次元の皆さんがこっちに来るとその隙を突いて神次元が襲われる可能性もある訳で…だからわたし達は、申し出に対して「まだ大丈夫」だって答えた。もう少し、自分達で頑張るって。

 そして、そう答えたわたし達がやる事。それは勿論…お姉ちゃん達の、捜索。

 

「皆、くろめは奥の手をまだ残していて、それによって守護女神の四人はやられたのかもしれない。私達がまだ知らない敵や勢力が今信次元にいて、その存在に四人もくろめも襲われたのかもしれない。…それがどういう事か、分かるよね?」

「はい。お姉ちゃん達が行方不明になる…その事実の裏に何があるかを、よく考えて行動しろ、って事ですよね」

「ユニはいっつもむずかしく言うわよねー。よーは気をつけろってことでしょ?」

「いのち、だいじに…?(さくせん)」

「ふふっ、要はそういう事だね。…真面目な話、四人が『女神』だから狙われたんだとしたら、当然私や皆だって狙われるんだろうから」

 

 一度柔らかな表情を浮かべてからの、イリゼさんの真剣な言葉。それは本気の警告であると同時に、きっとその上でわたし達を『守る対象』ではなく『力を合わせる仲間』と見てくれているからこその発言で…わたし達は、しっかりと頷く。

 

「大丈夫です、ユニ様。ご命令とあらば、私がどこへでも護衛しますから!」

「うむ、そしてネプギアの身はわたしが守ろう。わたしは将来の王だが、今は騎士の如くわたしを頼ってくれ給え」

「…………」

「…あ、ニトロプラスは何も言わないんだ…と、とにかくリーンボックスでも宜しくね?」

 

 そこに続いて声を上げたのは、ゴッドイーターさんとミリオンアーサーさん。お二人とニトロプラスさん、それにチーカマさん達にはこれまでプラネテューヌにいてもらったけど、今はこれまでより余裕がないし、皆さんもわたし達に力を貸してくれるって事だから、パーティーメンバーの皆さんと共にミリオンアーサーさん達にも捜索に協力してもらう事となった。…因みに、先日落ちてきた面々の中で、ルウィーだけは行く人がいないんだけど…それは人数的に仕方ない。

 

「…皆、絶対お姉ちゃん達を見つけようね」

「もちろんよ!」

「うん…!」

「えぇ、必ず見つけ出してやるわ」

 

 もう一度わたし達は頷き合い、ユニちゃん達は女神化して飛翔。それをわたしは見送って、ミリオンアーサーさん達とプラネタワーの中に戻る。

 

「…で、どうやって探す気なの?幾ら何でも、次元中を手掛かりなしで探す訳じゃないでしょ?」

「あ、はい。皆さんの前でも改めて説明はしますが…取り敢えず一度は、皆で闇雲に探してみる…という事にしようと思っています」

「ちょ、ちょっと…まさか、見切り発車なの…?…って、()()()()()…?」

「取り敢えず、です。…くろめさん、或いはお姉ちゃん達を襲った何者かが、こちらの動きを警戒してる可能性は高いですからね。だから一度、闇雲に探す振りをして…それから大きいお姉ちゃんとクロワールさんに協力してもらい、今度は一気に浮遊大陸へと向かうつもりです。手掛かりがあるとすれば、あそこですから」

 

 訊き返してきたチーカマさんにこくりと頷き、これからの行動を簡単に説明。

 今言われた通り、手掛かり無しじゃ見つけるのは困難。そして手掛かりがあるとすれば、イリゼさん達が見つけた浮遊大陸内の施設。もしかしたら、の域を出ない予想だけど…今はこれに賭けるしかない。

 

「勿論、探す振りも本気でやる…っていうか、見つけるつもりで行うんですけどね。それで見つけられる可能性は、限りなく低いと思いますが…」

「いや、行動が無駄になるかどうかは最後まで分からないものだ。分からないからこそ、出来る事はやっておく…そういう心構えは、国の主として大切だと思うぞ」

「ですよね。ふふ、ありがとうございます。やっぱりミリオンアーサーさんは王を目標にしているだけあって、わたし達と視点が近いような気がします」

「はっはっは。…ところでネプギアよ、わたしは常々思っているのだが、古今東西国の王と女神は往々にして特別な関係を結ぶもの。つまり将来の王たるわたしと未来の守護女神であるネプギアは、もっと親密になっておくべきだとは思わないか?」

「え、えぇ…?確かにRPGだと時々そういう設定が出てきたりしますが、それとこれとは別な気が……」

「いいや、よく考えるのだネプギア。立場的に関係はある、共に可愛い女の…ごほん、ネプテューヌ達を救いたい、そんなわたし達であれば、仲を深めるに越した事は……」

「はいはいそうかもねー。いつも言ってるけど、アーサーの妄言はデカい独り言だと思ってくれて構わないから。むしろ変に取り合わない方が精神衛生的にも良いと思うわよ」

「あ、は、はい…(チーカマさん、いつもミリオンアーサーさんには容赦ないなぁ…)」

 

 急角度で何やら誘ってくるミリオンアーサーさんに困っていると、わたしに変わってチーカマさんがぞんざいに処理。…何だろう、REDさんには日常的に嫁候補扱いされるし、セイツさんには会って早々にデートを誘われたし、ミリオンアーサーさんはこの通りだし…各次元に一人は、女神の近くにこういう人がいるものなのかな…セイツさんは近くどころか女神だけど……。

 

「と、とにかく捜索の協力、宜しくお願いしますね。ミリオンアーサーさん、チーカマさん」

「心得た!それとネプテューヌはミリアサと呼んでいるのだ、ネプギアも同じように呼んでくれて大丈夫だぞ?」

「そ、そうですか?じゃあ…ミリアサさん、で」

 

 本人がそう言うなら…という事で、ミリオンアーサーさん…もとい、ミリアサさんの呼び方を変えるわたし。ミリアサさんもそれには満足なようで、にこりとわたしに笑いかけてくれる。

 状況的には、芳しくない。今複数体のダークメガミに襲われたら、街を守り切るのは難しい。でもわたし達も、皆さんも、危機感は持っていても悲観している人はいない。それはきっと、犯罪組織との戦いを経験しているから、全ての人が昏睡状態に陥ってしまった状態から持ち直してきた今があるからで…ここからどうなるかは、わたし達次第。犯罪組織の時と同じように、お姉ちゃん達を取り戻せるか、時間ばかりが過ぎていくかは…わたし達に、かかってる。

 そう思うと、緊張する。責任も感じる。…だけど、当然だよね。それが、女神ってものだから。

 

 

 

 

 四大陸から遠く離れた、浮き島の一つ。人は住んでいなければ、特筆する程の自然もない、何か特別な理由がなければ見向きもされないようなその島の一角に、二隻の空中艦が停泊していた。

 

(周囲に熱源反応はない。追跡も受けてはいない。…問題なさそうじゃな)

 

 一つ一つ確認をしたところで、二隻の空中艦は光学迷彩を解除。空間が着色されていくかのように地上へ艦の姿が現れ、続けて二隻はハッチを展開。そこからある無人機を発進させ、作業を開始する。

 そこは、アフィ魔Xの補給ポイントだった。無数に存在する浮き島…特に小型の島は隠れ家としてはぴったりであり、アフィ魔Xはそこに資材や補給物資の貯蔵をしていたのである。

 

「航行には問題ないとはいえ、出来るだけ補修もしておきたいところ…とはいえ流石に、ワシ一人では骨が折れる……」

 

 艦の主、アフィモウジャスは物資の搬入作業を見やりつつも、モニターに表示された艦の状態を確認。機関部や推進装置こそ健在なものの、先の戦闘…女神及びルウィー国防軍を相手取った戦いの中で武装や防御機構には少なからず損傷が出ており、更にアフィモウジャスが乗っていない方の艦は、ブリッジがほぼ壊滅状態。艦の操舵を連動状態にさせている為ただ移動するだけなら問題はないが…武装面の損傷も含め、戦闘能力においては些か不安というのが彼の心理。

 多少の修理はこの場で行える。とはいえ現在作業中の無人機は修理に参加出来る程器用ではなく、自分一人で行うにはあまりにも艦が大き過ぎる…そう、アフィモウジャスが考えていた時だった。

 

「ならば、向こうは拙者がやるで御座るよ」

「……!?す、ステマックス…!」

 

 ブリッジの自動扉が開き、入ってきたのはステマックス。ある意味先の戦闘の要因となった、ギリギリのところを人間のネプテューヌに助けられ、一時的にくろめ達の下へと身を寄せていた、機械の忍者。彼の言葉に、アフィモウジャスは驚きを露わにし…しかしそれは、彼がいる事そのものへ対する驚きではない。

 

「お主はまだ絶対安静と言ったじゃろう!な、何故出歩いておる!」

「絶対安静って…将軍、ロボットにそれは必要な概念なので御座るか…?」

「あ……と、とにかくまだ今は休んでおれ!修理とパーツ交換の直後で、まだどこかに不備が出るのかもしれんのだぞ…?」

「だからこそ、慣らし運動をしてるので御座る。……とは、いえ…本当に、申し訳なかったで御座る、将軍…勝手に動いて、勝手に心配をかけて……」

「…それはもう良いと言ったじゃろう。ワシこそ、済まなかった。あの時大切な事を見落としていたのは、このワシじゃ…」

 

 一時的に浮遊大陸にいたステマックスが戻ったのは、原初の女神による侵攻の直前。彼女が辿り着く前にアフィモウジャスはステマックスを艦内へ回収し、彼はつい先程まで身体の修理を行っていた。

 

「…将軍。まだ、彼女達に協力する気で御座るか?」

 

 数秒間の沈黙の後、ステマックスが尋ねたのは今後の事。彼女、というのはくろめの事であり…その問いに対して、アフィモウジャスは首肯。だがそれにステマックスが言葉を返すよりも早く、アフィモウジャスは続ける。

 

「うむ。じゃが、ワシもその危険性は理解している。…いや…彼女達と四国家の戦いの危険性を、漸く正しく理解出来たというところか。この戦い、最後まで付き合えば割りに合わないどころの騒ぎではない被害を負う可能性が高いじゃろう。ただでさえ、システムに入られた時点で多くの情報を抜き取られたかもしれんのだからな」

「…その上で、まだ続けるので御座るな」

「そういう事じゃ。…しかし、勘違いするでないぞ?ビジネスにおいて大切となるのは、金と、交渉力と、そして信用じゃ。ビジネスの関係に過ぎない相手であっても…否、ビジネス関係であれば尚更、筋を通さねばならんとワシは考えている。そこを疎かにすれば、無意識にそれに慣れ、真に筋を通すべき時にも、きちんと通せなくなってしまう…それがワシの、ビジネス観じゃ」

「……そういう事であれば、止める訳にはいかないで御座るな。…筋を通す事には、拙者も賛成で御座る」

 

 世の中は金が全て。しかしそれは、凡ゆる事柄に関わり力となる事が出来るのは金だという事であって、それ以上に金を過信すれば、他の物事を疎かにすれば、足元を掬われる。それがアフィモウジャスの信念であり、同時にステマックスとの事で改めて理解した事実。そしてその信念に対し、ステマックスは強く頷き……そこに入る、一つの通信。

 

「…お主か。何用じゃ」

「いや何、無事補給地点まで行けたのかどうかの確認をと思ってね」

「それはまた、随分と優しいではないか」

「そりゃ、あの後回収してもらい、ここまで送ってもらった訳だからね。それにそんな離れている場所じゃ何かあってもすぐには行けないし、確認は必要だろう?」

 

 艦へと向けて入った通信をアフィモウジャスが受けると、モニターにくろめの姿が映し出される。噂をすれば何とやらじゃな、と思いつつアフィモウジャスはやり取りを交わし…くろめもまた、彼の隣に立つステマックスを見て薄く笑う。

 

「…へぇ、無事に直ったみたいだね。良かったじゃないか」

「…一応、礼は言っておくで御座る」

「ああ。君も一安心したんじゃないかい?」

「当然だ。しかしまさか、お主にそんな事を言われるとはな」

「心外だなぁ。オレだって、友情の大切さは理解してるつもりだよ?…信頼出来る友達がいるというのは、素晴らしい事だからね」

 

 どこか含みのある、くろめの言葉。その言葉を半信半疑で聞いていたアフィモウジャスとステマックスだったが、実際にそれを口にする事はなく、くろめもその真意の見えない笑みを浮かべたまま。

 そんな彼女はどうやら本当に確認する事だけが目的だったのか、それを最後に通信は終了。二人はくろめがこれからしようとしている事と、そこにある思惑に想像を巡らせながらも、まずは自分達の事を…と修繕作業を開始する。

 

 

 

 

 

 

 そうして、通信の切れた先。通信を終え、穏やかな表情を浮かべたままにゆっくりと振り向くくろめ。そんな彼女の眺める先にあるのは、四つの窓に限られた映像。そしてそこに映っているのは、大樹の根の様に幾重にも絡まったコードに絡みつかれた、まるであの時の再現の如く、その身の自由を奪われた──四人の守護女神の姿だった。




今回のパロディ解説

・「〜〜止めろチョッパー!ぶっ飛ばすぞぉぉっ!〜〜」
とんねるずのみなさんのおかげです内のコーナーの一つ、仮面ノリダーの主人公、木梨猛の代名詞的な台詞のパロディ。下記の通り、これはパロ内へ更にパロを入れました。

・チョッパー
ONE PIECEに登場するキャラの一人、トニートニー・チョッパーの事。チョッパーは医者ですし、改造ではなく普通の手術をしていたのかもです。…いや、嘘の話ですが。

・「いのち、だいじに…?(さくせん)」
ドラクエシリーズにおける、仲間キャラへの作戦の一つのパロディ。ロムは回復魔法が豊富ですし、実際この作戦とは相性が良さそうですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。