超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
ロムちゃんとラムちゃんが声を上げた時、私の心の中では期待の気持ちが膨れ上がった。でも正直に言えば、半信半疑でもあった。だって、ここにいるのはおかしいから。浮遊大陸に居たのであれば、帰って来られる筈だから。通信だって、繋がる筈だから。
でも確かに、追った先にブランの姿はあった。あったからこそ…余計に不信の気持ちが強くなった。ブランなら、ロムちゃんラムちゃんに呼ばれて、 それを無視するような事はしないから。反応出来ない状況ならば別だけど、一瞬見えたブランは、とてもそんな状況には見えなかった。
確かにブランはいる。けど、何かおかしい。そんな疑念を抱いたまま、私は皆と共に先行するネプギア達を追い掛け…その先で外へと出た瞬間、私は見た。立ち並ぶ、ネプテューヌ達四人の姿と……その隣で、まるで仲間であるかのように佇む、くろめの姿を。
「…お姉、ちゃん……?」
待ち受けていた光景を前に、茫然と立ち尽くすネプギア達四人。震える声で発された言葉に込められているのは、理解が出来ないとばかりの感情。
だけどそれは、ネプギアだけの感情じゃない。ネプギアがネプテューヌの妹だからだとか、女神候補生だからだとか…そんな事は、一切合切関係ない。私も、皆も…全員が思っている。…信じられない、と。
「えぇ、そうよネプギア。まさか、わたしの顔を忘れちゃったの?」
「あ、う、ううん。そんな訳…って、そうじゃなくて…!…どうして、お姉ちゃんが…くろめ、さんと……」
茫然とする私達とは対照的に、ネプテューヌ達四人は落ち着いた顔。あまりにも自然体だったからか、一瞬ネプギアは普通に言葉を返しかけ…改めて、ネプギアは訊く。この状況に対し、四人がくろめと共にいる事に対し、何故…と。だけど、その問いに答えたのは…くろめ。
「ふふっ…それは勿論、四人がオレの友達になってくれたからさ」
「は…はぁ!?お姉ちゃん達がアンタの友達って…訳分かんない回答してんじゃないわよ!」
「そーよそーよ!それにネプテューヌちゃんいつも言ってるもん!ノワールさんは、あんまりお友だちいないって!」
「うん、言ってた…!(こくこく)」
「いやいるわよ失礼ね!っていうか、あんたのせいであの二人信じ込んじゃってるじゃない!後このシリアスな流れでこんな事言う辺り、ラムの方は特にあんたの悪影響受けてるわよ!?」
「…それは、ほら…人間状態のわたしのせいだから……」
「女神化してようがしてまいが貴女は貴女でしょうが…!」
「ノワール、さらりと良い感じの台詞っぽくなってますわよー…?」
「ラム…一番見習っちゃ駄目なとこだぞ、それは……」
嬉しそうに答えたくろめへ、ユニ達三人が強く反論。…したは良いものの、ラムちゃんの反論内容はそれこそネプテューヌばりにぶっとんだもの。その結果ノワールは言い返し、しかもそこから矛先がネプテューヌへと移り(まあ当然だけど…)、さっきまでの緊迫した空気が完全に霧散。…何だこれ……。
「ったくもう…ユニ、それに皆も、くろめは別に嘘を吐いてる訳じゃないわ。そうよね?」
「あぁ。つってもまぁ、くろめが言うんじゃ信じてもらえないのも当然だけどな」
「酷いなぁ、ぶらっちは…」
やれやれ、とばかりのジェスチャーと共にブランが言い、それに対して不服そうにくろめが返す。
それは、なんて事ない普通の会話。ありふれたやり取り。だけど…だからこそ、私達には異質にしか見えない。黒幕の一人であるくろめと、穏やかに会話するなんて…おかしいに決まってる。
「そんな…そんなの嘘だよ…!……そうだ、偽者…それか、お姉ちゃん達は操られて……」
「いいえネプギアちゃん。貴女の気持ちも分かりますけれど…わたくし達は操られてなどいませんし、こうしているのはわたくし達自身の意思ですわ」
「まあ、偽者に関しても操られてるに関しても、そう返すようにされてる…って言われたらどうしようもないんだけどね。…だから、よく見て頂戴ネプギア。わたしが、わたし達が、偽者だったり嘘を吐いていたりするように見える?」
そんな訳ない、と否定するネプギアに対し、ネプテューヌは真剣な眼差しを浮かべて言う。その声を、眼差しを受けたネプギアは、何かを言おうとして…だけど、何も言わなかった。言えなかった。
初めは私も、その可能性を考えていた。偽者か、精神操作か、そのどちらかじゃないか…って。でも…感じるシェアエナジーは、間違いなく四人のもの。それに…こちらへ向けている眼差しは、さっきのやり取りからは、四人が正気だとしか思えない。
…だけど、だからってそれだけで納得する私じゃない。だから私は、頭の中で意識を少しずつ切り替えながら、一歩前へ。
「…なら、四人は許したと?くろめがこの次元に対し、皆に対してやってきた事を、水に流したって事?」
「まさか。だけど、だからって敵へ手を差し出す事も、差し出された手を掴む事も絶対にしない…っていうのは、必ずしも正しい事じゃない…そうでしょう?」
「確かにね。現に私達は、マジェコンヌさんと仲間として手を取り合ってるんだから。…でもそれは、もう今のマジェコンヌさんに悪意がないから。今はもう、次元を滅ぼそうとしていないから。…四人は、くろめもそうだって言うの?」
軽く肩を竦めて答えるネプテューヌに、理解は示しつつも言葉を返す私。
動揺していないといえば嘘になる。だけどそれ以上に、完全にネプギア達が動揺してしまっている事で、その様子を見て私の頭は冷静になる事が出来た。そしてこの状況…冷静に立ち回らなければ、恐らく不味い。
「それに関しては、オレから言わせてもらおうか。イリゼ…いやいりっち、それに皆も勘違いしないでほしいんだ。確かに君達からすれば、オレのしてきた事は『悪』なのかもしれないが…大局的に、超長期的に見れば、オレは君達と同じものを目指しているんだよ」
「…アンタが、アタシ達と…同じものを……?」
「あぁ。オレはこの信次元をもっと良くしようと、正しくしようと思っている。そして優しくも聡明なねぷっち達は、それを理解してくれた…そういう事さ」
「…そんな…まさか……」
茶化すでもなく、誤魔化すでもなく…大真面目に、嘘だなんて微塵も感じさせない表情で、くろめは言う。自分の目的は、信次元に仇為す事とは対極にあると。それから笑みを深めたくろめは、ぽつりと言葉を漏らした大きいネプテューヌをちらりと見やりながら言葉を続ける。
「つまり、オレ達には分かり合える道があるんだよ。だから…ゆっくりと話し合おうじゃないか。君達だって、戦う事はあくまで最終手段だと思うだろう?」
「そ、それは…でも、そんなの……」
穏やかに、誘うようにくろめは問い掛ける。一見それが正しいように、そこにこそ利があるかのように。
実際、まるっきり間違ってるとは言い切れない。少なくとも、対話で解決出来るのなら、それに越した事はないんだから。…それもあるからか、ネプギアは躊躇うように口籠もり……私は、確信する。くろめは、こういう駆け引きに長けていると。やはり、ここで冷静さを失うのは危険だと。
「…イリゼ、どうするの?このままだと、どんどん向こうの流れになるわ」
「うん。…ニトロプラス、それに二人も、いつでも動けるようにしておいてもらえる?」
背後から耳打ちするような、ニトロプラスからの言葉。それに私は顔も口元も出来る限り動かさないまま答え…決める。ここから行う、私がするべき行動を。
「…一つ訊かせて、くろめ。貴女の目的と、レイの目的は同じなの?レイも、この次元を良くしようと思っているの?」
「いいや、彼女の目的は全く別さ。けど、利害は一致している…手を組む上で、それ以上の理由はないだろう?」
「そう。であれば確かに、一考の余地はあるかもしれないね。奴と目的が同じだと言うのなら、その時点でくろめの言う目的も偽りのものだと一蹴したところだけど」
「え……それじゃあ、イリゼさん…」
肩の力を抜き、私は表情もふっと緩める。多分それは、傍から見れば戦意を解いたように見えるんだろう。実際ユニは動揺に困惑まで混ざったような顔をして、私の方を見やってくる。
うん、そうだ。そう思ってくれなくちゃ困る。だから私はユニ達の方へ身体を回して、何かを言うような素振りを見せて……次の瞬間、その勢いのまま鋭く回転。身体を再びくろめ達の方へ向け…回転と同時に精製したナイフを、遠心力を乗せて投げ放つ。
『……っ!?』
「……ッ!」
「おっと…随分と乱暴だね、いりっ……」
「はぁぁッ!」
ネプギア達四人が目を剥く中、投げ放ったナイフはくろめへ向けて真っ直ぐと飛び…当たる寸前、振るわれたノワールの大剣が横からナイフを叩き落とす。
些か驚いた様子を見せながらも、その場からは動かなかったくろめ。続けてくろめは余裕ぶった反応を見せるけど…それを言い切るよりも早く、私は肉薄からの一閃。再び私の放つ刃がくろめに迫り…けれどまた、止められる。今度は、ベールとブランによって。
「今のは少々、品に欠けますわよ?」
「いざ戦いとなりゃエゲツない攻め方も容赦なく出来るのは、流石イリゼってところだが…対話を自分から蹴るのは、どうかと思うぜ?」
「対話を自分から蹴る、ね…今正に信用ならない行為をしていて、しかもそれを悪びれてすらいない相手と無条件に対話をする程、私は甘くないよ。特に今は、四人がまともに戦えるような精神状態じゃないんだから」
大槍と戦斧、それぞれの武器の柄を交差させて阻んだ二人からの、落ち着いた…でもいつでも反撃に移れるだけの雰囲気を纏った言葉。それに私は淡々と声を返しつつ、長剣の先端で圧縮シェアエナジーの爆発を起動し、強引に押し切る事を図ったけど…やっぱり女神二人相手じゃ、これでも足りないか…ッ!
「なら……ッ!」
強行突破は無理。ならばと私は力を込め続ける事で二人を押し留めながら、精製剣で頭越しにくろめを攻撃。…と同時に、このまま二人を押し留めると見せかけたところで長剣を手放し、前へと込めていた力を利用する事で交差された二振りの武器のアーチを潜り抜け、剣と抜き手による時間差攻撃を仕掛け……阻まれた。剣は再びノワールに弾かれ、抜き手は手首をネプテューヌに掴まれる事によって。
そして次の瞬間、正面からノワールの、斜め後方からはベールとブランの…三方向からの刃が、私へと向けられる。
「…連携はばっちりだね」
「操られてるなら、上手く連携は出来ない筈…とでも思ったかい?…だから、べるっちが言っただろう?そういう事じゃないんだって」
「……っ!イリゼさん…ッ!」
「うん?君達、その武器は…誰に対して向けてるのかな?」
我に返ったようなネプギアの声と共に、四人はこちらへ武器を向ける。でもそれに対し、くろめが牽制。一体誰に向けるのか、その得物で狙うのは誰なのか…その言葉で四人は封殺され、次の行動を起こせない。
けどそれは、仕方のない事。今のは、くろめの方が一枚上手だったというだけの事であり…強いて言えば、こういう状況を作ってしまった私が悪い。……でも。
「…ねぇ、皆。理由はどうあれ、皆がくろめの側に付いた事で、ネプギア達は心を掻き乱されてる。これはあの時みたいに、また自分達が助けるんだって心に決めてた四人を、裏切ってるも同然の行為だよ。…四人は、それで良いの?」
「…それは……そう、ね。わたし達も色々あった…なんて言っても、結局は言い訳。心配させて、挙句こんな形になっちゃった事は、姉として申し訳ないと思ってるわ」
「だったら……」
「…だけど、わたし達だってふざけてる訳じゃないの。思い付きで、こうしてる訳じゃない。だからこそ…話し合いましょう?わたし達は、仲間で友達なんだから」
交錯する、私とネプテューヌの視線。私からの投げ掛けに対し、四人は一度表情を曇らせ…でも、主張も刃も降ろしはしない。ネプギア達の事を出しても尚変わらない程…四人の意思は、固い。
…でも、おかげで私の気持ちも決まった。はっきりと分かった。それが四人の選択だというのなら、それなら……
「…今、私に刃を向けるだけで何もしないのは、ネプギア達に反撃される可能性を危惧してるから?それとも、この場で戦う事を余儀無くされても、勝てると思っているから?」
「その質問は、どういう事かしら?」
「…こういう事だよ、ノワール、それに皆。もし後者なら、考え直すべきだね。私は原初の女神の複製体。皆を下した原初の女神、そのもう一人の存在。それを……たったの四人で、抑えられると思うなよ?」
『……!』
三方向から向けられている刃。掴まれた右手。一見すれば圧倒的不利で、実際四人は間違っていない。考え直すべきだとは言ったものの、私ともう一人の私との間には、天と地程の実力差があるのだから。
だけど、打開する手はある。相手が心ある存在だからこそ、四人が自我を奪われてる訳ではないとはっきりしたからこそ……打開出来る。
私は前へ、真っ直ぐに突っ込む。手首を掴まれている事を無視して、その先にはノワールの向けている大剣がある事も分かった上で、地を蹴り前へと身を投げ出す。そして……反射的にネプテューヌは手を離し、ノワールは大剣を私から逸らす。
「な……ッ!?ちょっ、何考えて……」
「天舞壱式・桜ッ!」
自分から突き刺さりに来るなんて。そんな顔で目を剥くノワールが言い切るより早く、私は新たに精製したバスタードソードで全方位攻撃。反射的に飛び退いた四人へ片手四本、両手合わせて八本の投げナイフを一斉に投げて、私は長剣を回収しつつ後ろに跳ぶ。
「今は退くよ、皆!援護お願いッ!」
「ひ、ひくって…おねえちゃんたちは!?」
「おいて、いくの…?」
「…残念だけど、今はそうするしか…ぐ……ッ!」
未だ戦意を削がれたままの四人の前へ着地し、構え直しながら指示。ロムちゃんとラムちゃんからの悲痛な返しに、私は二人が取り敢えずでも納得の出来るような言葉を探そうとして…それを遮る、ベールの突進。咄嗟に長剣の腹で受けるも、ある程度の距離とはいえ勢いの乗ったベールの刺突は重く、私は姿勢を崩される。
「貴女の実力も、ネプギアちゃん達の実力も、よーく理解しているつもりですわ…だからこそッ!」
「今はもう少し、ここに留まってもらう…ッ!」
先程の意趣返しをするように、上から押さえ付けるようにして私の動きを封じてくるベール。そのベールを飛び越えるような形でブランが、横をすり抜ける形でノワールが姿を現し……けれど次の瞬間、宙のブランを数発の弾丸が、脇構えとなっていたノワールを異形の顎門が襲い掛かった。
「やらせはしないわ…!」
「ごめんなさい、ノワール様ッ!」
「これが、神機…って、今本当に喰らおうとしてなかった!?」
即座に放たれた二つの攻撃、その内弾丸はニトロプラスの、顎門はゴッドイーターのもの。続けてニトロプラスは私の頭のすぐ側を通すようにベールへも射撃をかけ、ゴッドイーターは武器を剣の形に可変させる事でノワールとその場で斬り結ぶ。
援護によってベールを弾き返す事に成功した私は、弾丸を斬り払ったブランに向けて跳躍からの斬り上げを敢行。後は、ネプテューヌだけど……ッ!
「ふっ、相手は四人の女神…であれば、新たな力を試すのには相応しいッ!」
今私が斬り結ぶブランよりも更に上からネプテューヌが飛び越えてくる中、背後から聞こえたのは高らかな声。その声と共に、後ろの方で輝きが放たれ、ネプギア達の息を呑む音が聞こえ……次の瞬間、赤い何かがネプテューヌへと突っ込んだ。
攻撃らしきその存在を、反射的に斬り返そうとしたネプテューヌ。けれどその直前、ネプテューヌは大太刀を持つ手を急に止め…代わりに叫ぶ。
「えっ……RED!?」
「え?……ってあれ!?RED!?なんで!?」
驚きの声に反応してよく見てみれば…確かにそれは、突っ込んでいった赤い存在は、REDだった。第二期パーティーの一員で、今は下界にいる筈の、REDだった。
いきなり現れた、パーティー内でも屈指の個性を持つ女の子。唐突過ぎる出現に、私達は勿論ノワール達も驚愕で一瞬動きが止まり……ばっと振り向いてみれば、そこにはしたり顔のミリオンアーサー。
「ふっ…頼むぞ我が盟友!」
「まっかせてー!とりゃー!」
「だからなんで!?どういう事!?」
「混乱するのは分かるけど、今は退くのが最優先なんでしょう?畳み掛けちゃいなさい、アーサー!」
「うむッ!」
いきなり現れただけでも驚きなのに、ヨーヨーの糸による拘束を図ろうとしたREDはネプテューヌに弾かれ、そのままヨーヨー諸共吹っ飛んでいく。元々REDは奇想天外な性格をしているけど、今回は幾ら何でもぶっ飛び過ぎている。
その結果完全に動揺してしまった私だけど、さっき自分で言った言葉をチーカマに返されはっとする。そうだ、ニトロプラスもゴッドイーターもネプテューヌ達女神を相手に正面からぶつかるっていう無茶を、長い付き合いって訳じゃない私の言葉一つでしてくれている。なら、私が手を止めてどうする。最後まで私が一番動かなきゃ…それこそ原初の女神の名折れってものだ…!
「皆、ネプテューヌ達は必ず連れ戻す!でもそれは今じゃない!あの時作戦を立てて、準備を重ねて、それでやっと助けられたのと同じように!それが分からない、皆じゃないでしょ!?」
『……っ…!』
強い口調で、言葉で殴るような言い方で理解させるやり方は好きじゃない。でもネプテューヌ達がしっかりと話す時間をくれる訳がないし、そういう言い方には気つけのような効果がある事は事実。
そして、私の言葉を受けた四人は表情が変わった。今、この場は諦めるという選択に対し、拒絶を示すのではなく…何か意識が切り替わった、そんな表情をしていた。…ちゃんと伝わったみたいだね…なら、後は……!
「ネプテューヌ、一旦撒いたら来たのと同じ手段で離脱するよ!いける!?」
「あ…う、うん……!」
「だったら大きいネプテューヌは先行して準備、他の皆で撒く為に弾幕張るよ!それと誰か、REDの救助を……」
「いいや、その必要はないぞ」
「…ど、どういう事?」
「今わたしが呼び出したのは、因子を用いた複製体。つまり…えっと…分身…そう、影分身の様なものだからな!」
「複製体……ま、まぁそういう事なら了解!相手はネプテューヌ達なんだから、手加減は無用だよ…ッ!」
言うが早いか私は天舞伍式・葵でくろめ含めた五人へ同時に射出をかけ、その後も続いて武器精製。ニトロプラスはベールとせめぎ合っていた際に使っていた逆手持ちの太刀を、カウンターウェイトの様に背後へ向けつつハンドガンによる射撃を続け、ゴッドイーターも神機を今度は銃火器に可変させて攻撃に参加。ミリアサちゃんは…カード?…らしき物を使う事で剣からビームを放ち、私の攻撃に続いてくれる。
とはいえそれだけじゃ力不足。普通のモンスターなら群れ相手も十分な火力だろうけど…守護女神四人が相手じゃ留め切れない。…私達、四人だけだったら。
『…ごめんね、おねえちゃん……!』
「くろめ…絶対アンタから、お姉ちゃん達を取り戻してみせるんだから…!」
一気に密度を増す、私達の弾幕。銃弾が、光弾が、魔弾がそれぞれの攻撃の隙間を埋め、ネプテューヌ達へ防御を強いる。
それと同時に聞こえた、強い意思の込められた声。…そう、だから心強いんだ。四人はまだ自分達を未熟だと思っているんだろうし、実際そういう面もあるけど…ちゃんと心の中には強さがあるから、私は四人に期待が出来る。
「行きましょう、皆さん…!」
後ろ髪を引かれるような、辛そうなネプギアの瞳。それに私は頷いて、まずは先行する大きいネプテューヌを追う形でミリアサちゃん達が離脱開始。ある程度行ったところで私はユニに目配せし、ユニがグレネード弾を地面へ放って爆発と砂煙での二重煙幕を作った瞬間私達も反転。そこから離脱する事に専念して、先行した皆へとすぐに追い付く。
今のところ、具体的な策がある訳じゃない。戦闘含む駆け引きの中で幾つか分かった事、手掛かりとなる要素はあったけど、そこから先はまだ未定。
でもそれは、ネプギアとコンパ、アイエフとでギョウカイ墓場から撤退した時も同じ。同じだけど、あの時より今は、私も皆もずっと強い。なら、きっと何とかなる。まだまだ悲観は必要ない。そんな思いを胸に秘め…私達は、浮遊大陸から撤退した。
*
本当に離脱するのか、それとも煙幕は次の一手の為のものなのか。恐らくその判別が付かなかったから、ねぷっち達は強行突破をしなかった。結果、煙幕が晴れた時そこには誰もいなかったが…別に、それを責めるつもりはない。オレだって、この状況なら慎重に動く事を選ぶのだから。
「…逃げられたみたいね」
「ああ。けど、構わないさ。ゆっくり話せなかったのは惜しいけど…それよりも、ねぷっち達に怪我がない事の方が大切だからね」
着地しながらのねぷっちの言葉に、オレは返答。念の為見回してみるけど…やはり、逃げたと見せかけて、という策ではないらしい。
「ふぅ…それにしても、いきなりREDが突っ込んで来た時には驚いたわ。しかもびっくりする程簡単に弾き返せたから心配になったけど、どうやら本物のREDじゃないみたいね」
「びっくりといえばこっちもよ。変形っていうか、完全に化け物っぽいのが出てきたし。…一瞬羅生門かと思ったわ……」
「それでいうと、ニトロプラスちゃんの戦い方には感慨深いものがありましたわね」
「感慨深いもの?あったか?」
「えぇ。太刀に拳銃だなんて、嘗てのネプテューヌの様ではありませんの」
「いや、それは無印のわたしじゃない…」
戦闘直後とは思えない程緩い会話を繰り広げる四人。でも正直、これ位の方が頼もしい。それに、オレも思い返せば……
「…いや、今更そんな事を考えたって無意味か…」
「…くろめ?どうかしたの?」
「何でもないよ、のわっち。それより驚いたよ、まさかのわっちがぼっちだったとは」
「だ、だからぼっちじゃないっての!」
「ふふ、でもオレはのわっちの友達だから、これで晴れてのわっちはぼっち卒業かな?」
「かな?じゃないわ!ネプテューヌと纏めて叩っ斬るわよ!?」
「のわっちぼっち、あまぼっち…なんかちょっと面白いフレーズが思い付い…ってわたしも!?何で!?」
「貴女が元凶だからに決まってるでしょーがッ!」
つい魔が差して弄ってみると、のわっちは何ともまあ楽しい反応を返してくれる。…これなら確かに、ねぷっちがそう弄るのも頷けるね。けどオレはまだねぷっち程のわっちの事を知らないし、本気で怒らせる訳にはいかないから、今回はこれだけにしておこう。
「…で、どうしますの?恐らく皆はプラネタワーに行ったと思いますわよ?」
「ふむ…いや、今は別に追わなくていいさ。それより今は、ゆっくりと休んでほしい。オレのせいで、皆には物凄く負担をかけてしまったからね」
「それに関しちゃほんと、お前のせいでな。…それと、勘違いもするなよ?わたし達はあくまで、わたし達の意思で力を貸してるだけだ。取引をしてる訳でもなきゃ、ましてやお前の手下でもねぇ」
「分かっているさ。オレは皆の意に沿わない事をしてもらう気なんてないし、いりっち達の下に戻ると言うなら、それも止めない。…勿論、気持ちとしてはこのままでいてほしいと思っているけどね」
皮肉混じりの返しに続いて、真面目な声音でぶらっちがオレへと告げた言葉。ねぷっち達三人も、真剣な眼差しでオレを見ていて…だからオレも、真面目に答える。
これは、本心だ。実際ねぷっち達は、相手が家族や仲間だった事で、本気ではあっても全力ではないという感じだったが…その時オレは、何も言わなかった。…言う訳がないさ、四人は友達なんだから。
(…さて、これで選択肢が一つ増えた。これまで通りに進めるか、それともプランを組み直すか…もう一人のねぷっちへの説明も含めて、じっくり考えるとしようかな……)
それからオレは、四人と共に施設の中へ。これといい原初の女神の事といい、色々考えなければならないけど…それ位は甘んじて受け入れるさ。オレの正しさを、信次元へと示す為に。
今回のパロディ解説
・羅生門
文豪ストレイドッグスに登場するキャラの一人、芥川龍之介の異能の事。黒の顎門と言えばこれかなと思います。勿論GEの方が先に発売されていますけどね。
・無印
原作シリーズの一作目、超次元ゲイムネプテューヌの事。OriginsシリーズはRe;Birth1の方を一作目の直接の原作としているので、そういう意味でも違うネプテューヌです。
・あまぼっち
生徒会の一存シリーズにおいて出てきた、ある単語の事。ぼっち予備軍、甘めのぼっちという事です。…なんかちょっと、ゆるキャラの名前みたいでもありますね。