超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
行きと同じように一度別の次元を経由して、そこから信次元のプラネタワーに戻って。一先ずわたし達は、無事に帰還する事が出来た。
普段なら、それだけでも一安心出来る。皆で、無事に帰って来られる…それは凄く、大事な事だから。わたし達がしているのは戦いで…そこには常に、『死』の危険があるんだから。
……でも、今回は違う。お姉ちゃん達を探す手掛かりを見つける為に行った先で、わたし達はお姉ちゃん達と再会する事が出来て…だけど、お姉ちゃん達と一緒に帰る事は出来なかった。全員、無事だったけど…見せ付けられてしまった。今のお姉ちゃん達との間にある、心の溝を。
「ふぅぅ…緊張したぁ……」
「この次元で最初にする全力の戦闘が、まさか女神相手とはね……」
プラネタワーの敷地に出たところで、ゴッドイーターさんが安堵混じりの吐息を漏らす。横を見てみれば、ゴッドイーターさん程じゃないけどミリアサさんや、ニトロプラスさんも似たような顔。
「お疲れ様、皆。…ごめんね、ノワールと戦わせる事になっちゃって」
「いえ、大丈夫です。あの状況で何もしなかったら、そっちの方がきっと後悔していましたから」
「そっか……え、あれ?じゃあ、後悔自体はしてるって事…?」
「あ、いや、そういう事じゃないですよ!?今のはただの言葉の綾で……!」
わちゃわちゃとしたやり取りを交わす、イリゼさんとゴッドイーターさん。その何とも言えない緩さのある会話に、わたしは思わず苦笑いし…あぁ、でも、やっぱり…素直に、無事に帰れて良かった、とは思い切れない。
「…おねえちゃん……」
「…なんで、あいつなんかに……」
そこで聞こえてきたのは、しゅんとした二つの声。いつの間にか、ロムちゃんとラムちゃんは浮遊大陸の方を見つめていて…その事に、イリゼさんも気付く。
「…取り敢えず、中入ろっか。私は起きた事の報告と、個人的な見解をイストワールさん達に伝えるつもりだけど…皆も、ミリアサちゃん達と一回休む?」
「…個人的な見解、ですか…?」
「うん。今のネプテューヌ達の状態に関する、私の推測をね」
「それって……」
訊き返したユニちゃんに頷いたイリゼさんの、気になる一言。それにわたし達四人は顔を見合わせ…再び視線をイリゼさんの方へ。
ベールさんは言っていた。自分達は操られてる訳でもなければ、偽者でもないと。お姉ちゃん達の目には、確かに自分の意思が宿っていた。…でもイリゼさんの口振りからは、あの場で聞いた内容に対して異を唱えるような感じがある。
あそこでお姉ちゃん達が、嘘を吐いていたようには思えない。わたしは真正面から、お姉ちゃん達の目を見たんだから。…でも、そうじゃないなら…イリゼさんが、何かを見抜いたって事なら……
「…いえ、イリゼさん。わたし達も行きます。イリゼさんの話、聞かせて下さい」
わたし達四人、イリゼさんを見つめて言う。イリゼさんが実際考えている事が何かは、聞いてみるまで分からないけど…きっとそれは、大事な話だから。それを聞く事で、わたし達も何かに気付けるかもしれないから。
そうしてプラネタワーの中に入った私達は、いつものように会議室へ。入った時にはもういーすんさんが先に来ていて、ケイさん達も映像越しに準備済み。
「お姉様!お姉様は、本当に無事だったのよね!?」
「あ、は、はい。元気では、ありました…」
「そう…それなら、良かったわ…。…良くは、ないけど……」
「き、気持ちは分かりますが落ち着いて…イリゼさん、まずは詳しい話をお願い出来ますか?」
物凄い勢いで訊かれて思わず後退りながら答えると、それに苦笑いしつつミナさんがイリゼさんへと問い掛ける。そして訊かれたイリゼさんは、この部屋に来るまでの道中では話し切れなかった部分を説明開始。
それを聞きながら、わたし達も振り返る。振り返って…思う。やっぱり、浮遊大陸にいたのはお姉ちゃん達で間違いない。妹の勘、って言うと信憑性が無さそうになっちゃうけど…これは、断言出来る。
「…ノワールは、いっそ頑固と言うべき程に生真面目な性格だ。そのノワールが彼女の側に付いたという事は…そうせざるを得ない理由があるか、その方がラステイションに利となる何かがあるか、或いは僕達の方が間違っているか……」
「その方がラステイションに、って…少なくともそれは無……」
「…そうとも限らないよ。くろめは方便で信次元を良くしようだなんて言っていたようには見えなかったし、打倒するより別の関係を築く方が…って事は実際あるからね。ほら、特にラステイションなんてその好例があるでしょ?」
「好例……あっ、アヴニール…」
「…ですが、イリゼさんはそうではないと…ネプテューヌさん達が、完全に正気なまま行動している訳ではない…そう思っているんですよね?( ̄^ ̄)」
元々は教会を乗っ取ったり、嘗てのマジェコンヌさんと手を組んだりしていた企業、アヴニール。でも今は国営企業となっていて、そうした理由はノワールさんがアヴニールの持つ企業としての力を捨てるのは惜しい、国営企業として取り込む方がより多くの利益を生む…と判断したから。…わたし達が生まれる前に起きた事を例にユニちゃんへと解説したイリゼさんは、続いていーすんさんからの問いにゆっくりと首肯。
ここからが、本題。わたし達が、一番気になっているところ。そうして一体どういう事なのかとわたし達がじっと見つめる中、イリゼさんはゆっくりと全員の顔を見回して…話し始めた。
「…結論から言えば、今イストワールさんが言った通り、ネプテューヌ達は恐らく『完全な正気』ではないです。言い換えるなら、何かしらの事をされている…私は、そう感じました」
「感じた、ですか?」
「はい。より具体的に言えば、四人と剣を交えた際…感じたんです。四人のものではない、四人が発するものとは違う、シェアエナジーを」
「え、それって……」
「…うん。原理は分からないけど…そのシェアエナジーが、ネプテューヌ達の精神に干渉してるんだと思う。元々シェアエナジーはシェア…思いから生まれるものだし、シェアによって在り方に影響を受けるのが、私達女神だからね」
訊き返すミナさんへ答える形で、イリゼさんが口にしたのはシェアエナジーという言葉。
あぁ、だから「感じた」なんだ。反射的に声を出したわたしは、自分も何か感じられてなかったかともう一度思い直……って、あれ?…じゃあ、もしかして……
「…あの、イリゼさん。ひょっとして、イリゼさんから仕掛けたのって……」
「そういう事。肉薄して、刃を交える事で感知出来るものがあると思って、ね」
「って事は…その前にアタシへ答えるような動きをしたのは、単に不意を突く為だけじゃなくて、探りを入れるっていう目的に気取られない為の布石でもあったんですね。流石です、イリゼさん」
「ほぇ〜…今はしっかりしてるときのイリゼちゃんなのね!」
「うん。しっかりイリゼさん…(きらきら)」
「あはは、流石だなんてそんな……って、あ、あれ…?ラムちゃん?ラムちゃんは、私を褒めてくれてるの…?」
「……?」
「う、うん、だよね…気持ちとしては褒めてるんだよね…はは……」
何とも言えない感じの表情になってしまったイリゼさんと、きょとーんとしているラムちゃんの顔に、わたしやユニちゃんも苦笑い。…ロムちゃんも同じ意見っぽいのがまた、何とも言えないですよね……。
「…こ、こほん。私としてはそれが、四人の精神に作用し、くろめの味方をするという判断をさせている…そういう事じゃないかと思うんですが、イストワールさん達はどう思いますか?」
「って、事だけど…貴女の見解は?」
咳払いの後発言を締めたイリゼさんは、視線をいーすんさん達の方へ。そしてそれに、いーすんさんが頷き答える。
「…その可能性は、大いにあると思います。そもそもの話として、女神であるネプテューヌさん達への精神支配は、そう易々と出来る筈がありません。しかし本質を縛るのではなく、あくまで表層を薄く覆う、又は一部にシェアエナジーを介して都合の良い要素を付与する程度であれば……」
「じゃあ……」
「後は、その手段だね。けど、具体的な方法も分かっていないのに対処だなんて……」
「いえ、今言った通りであれば割と簡単ですよ。こちらも推測ではありますが、シェアクリスタル一つで何とかなると思います(・ω・`)」
『え?』
助けられるかもしれない。そう思ったわたしと、あくまで冷静に次の事を考えていたケイさん。でも次にいーすんさんが言ったのは、あまりにも意外な…即座に用意してしまえる物だったから、わたし達は全員揃って目を丸くする。しぇ、シェアクリスタル一つって…そんな、携帯一つで契約出来る、みたいな感覚で……?
「これもあくまで推測ですが、今言った通りの方法を用いているのなら、精神干渉はあまり強固ではない筈です。であれば、シェアクリスタルを用いてネプテューヌさん達のシェアエナジーを活性化させ、力尽くで引き剥がす事も出来るのではないかと思います。少なくとも、女神としては全員安定しているようですからね(´・∀・`)」
「じゃあ、おねえちゃんたちにシェアクリスタルをあげれば、いいの…?」
「なによ、いがいとカンタンなのね!」
「えぇ。…ネプテューヌさん達が、素直に取り込んでくれるのなら…ですが(。-_-。)」
拍子抜けする程単純な話だったからこそ、それならと沸き立つわたし達。…けれど、次の言葉でわたし達はハッとする。
確かにそうだ。こんな単純な話なら、くろめさんだって何の対策もしていない訳がない。きっとクリスタルを渡そうとしても、お姉ちゃん達は受け取ってくれないだろうし、もしそうなったとしたら……
「…アタシ達でお姉ちゃん達を倒して、無理矢理服用させるしかない…そういう事、なんですね……」
「恐らくは、そうでしょう。…イリゼさん、勝機はどの程度ありますか?(・・?)」
「…基本は四人の意思で動いているだけあって、連携は普段と殆ど変わりありません。それに…やっぱりまだ、一対一だとネプギア達がネプテューヌ達に勝つのは厳しいと思います。…勿論、戦術や状況次第では四人が勝つ事も不可能ではないと思いますが」
「つまり、こちらが優位な状態で交戦に入れなければ…という事ですか…」
そう言って、ミナさんは顎に親指と人差し指を曲げて当てる。他の皆さんも同じような顔をしていて…考えているのは、きっとこれからの事。
お姉ちゃん達と、戦って倒す。…それは、考えていなかった。考えた事もなかった。いつかは超えたい、超えるんだとは思っていたけど…今のわたしがお姉ちゃんを、パープルハートを倒す…?…そんなの……。
「……一先ず、混乱を起こされる前に先手だけは打っておきましょうか。後からの情報じゃそれこそ嘘っぽくなっちゃいますし」
『先手…?』
「向こうが行動する前に、情報を流しておくんだよ。偽者の守護女神に、騙されないように…って」
黙ってしまったわたし達を見たイリゼさんは、少し考えてから話を別の事に移す。
それは、正しくはない情報。だって偽者なんていないんだから。…でも、妥当な選択。今のお姉ちゃん達が精神干渉を受けてる状態だなんて、見て分かるような事じゃないんだから。
「それは僕達でやっておくよ。だから君達も休むといい」
「そうね。…何にせよ、お姉様達が本気で動いてきたら、同じ女神である貴女達に対応してもらうしかないんだから」
「…すみません。あの時も今も、大変な役目をさせてしまって」
「い、いえ。…候補生でも、わたし達は…女神ですから」
それで、この場での会議は一旦終了。イリゼさんといーすんさん達はもっと細かい事を詰めるって事で、わたし達は部屋を出る。
わたし達は女神。だから大変な役目だとしても、それを嫌だとは思わないし…お姉ちゃんの事を、人任せにはしたくない。だけど、それでも…わたしの、わたし達の心の中にはのしかかっている。お姉ちゃん達を助ける為には、お姉ちゃん達に勝たなくちゃいけないんだって事が。
*
初めわたし達は、言われた通り休もうとした。でもそんなに、体力的には疲れてない。お姉ちゃん達と戦闘になったって言っても、わたし達は最後に弾幕を張っただけだから。それに、わたし達はお姉ちゃん達に勝てるのか…そう思うと、ゆっくりする事なんて出来なくて……わたし達は今いるのは、トレーニングルーム。
「てやああああぁッ!」
「ぐ、ぐ……ッ!」
接近を阻む為に張られた魔力障壁へ、斬撃を一発。それは弾かれてしまったけど、そのままわたしは刀身による連続攻撃を仕掛けて、障壁の先にいる相手…ラムちゃんへと、圧力をかける。
「そのまま持ち堪えて頂戴!その間にアタシが…!」
「させない、よ…ッ!」
正面から斬り崩そうとする中、障壁の後ろから斜め上へと現れたのはユニちゃん。ユニちゃんの持つX.M.Bの銃口はわたしの方を向いていて…けれど放たれる直前、数発の魔法の光弾がユニちゃんを攻撃。光弾に対して身を翻す事でユニちゃんは避けると、狙う相手をわたしから光弾の射手であるロムちゃんに変えて、二人は互いに弾と魔法を撃ち合いながら飛び回る。
これで暫く、ユニちゃんからの攻撃は来ない筈。でも逆に、わたしもロムちゃんからの援護は受けられない。つまり、突破は…わたし一人でやるしかない…ッ!
「でも、これで……ッ!」
「そうは、いかないんだからッ!」
「……っ!」
後一息で破れると感じたわたしは右手を引き、横にしたM.P.B.Lの刺突を障壁の中央へ打ち込もうとした。でも次の瞬間、連撃が途切れたその一瞬でラムちゃんは自分から障壁を解除して、氷の礫をわたしへ向けて放ってきた。
それをわたしは身体を捻る事でギリギリ回避し、次の魔法を撃たれる前に連続バク転で素早く後退。その最後に一際強く床を押す事で大きく跳び、上下逆さまになったまま射撃を撃ち込む。
「むむ、やっぱりスピードの出るお星さまとか、マジカルなはっぱとかの方がよかったかしら…!」
「いや、その場合はその場合で、別の対応をしてたけどね…ッ!」
振るわれた杖の軌跡が刃になったような魔法の斬撃を、上段からの一撃で叩き斬る。続けて降下しながらわたしが撃ったビームを、ラムちゃんもバックステップで避ける。そうしてわたし達がすぐ次の攻撃に移れる体勢で向かい合う中、空中で弾かれるように離れたロムちゃんユニちゃんもそれぞれわたしとラムちゃんの隣に着地して……またわたし達は、激突。時に一人で、時に連携して、何度も何度もぶつかり合う。
今、わたし達がしているのは模擬戦。二人ずつに分かれた、実戦形式での訓練。それをしている理由は…勿論、強くなる為。
(もっと、もっと…もっと、もっと……ッ!)
弾丸を、魔法を交えながら、わたしは心の中で何度も呟く。別にこれは、某TICKING TIME BOMBさんの真似をしてる訳じゃない。もっと速く、もっと鋭く、もっと強く…戦いながら、幾度となくわたしはそう思っていた。そう呟きながら、戦っていた。
「せぇえぇいッ!」
「えい……っ!」
飛び上がってからの、叩き付けるような上段斬り。組み合わせを変える事で今度は相手になったロムちゃんは、それを高めのバックステップで避けて、そこから氷塊を落としてくる。
避けるか、斬るか、撃ち抜くか。その内の斬るを一瞬で判断し、ビームを纏わせたM.P.B.Lの刀身でもってわたしは斬り裂き…だけど思う。お姉ちゃんだったら、もっと早く判断出来たのかもって。或いは、考えるまでもなく即座に最適解が頭の中に浮かぶんじゃないのかって。
でもそれは、後で…模擬戦が終わってから、考えるべきだった。今のこの瞬間には必要ない事を考えてしまったせいで、ほんの少しわたしは斬り裂いた後の動きが遅れ…折角対応そのものは正しかったのに、その後のロムちゃんへの反撃は失敗。ロムちゃんには距離を取られて、五分五分の状態に戻ってしまう。
「わ、っとと……」
「ラムちゃん、だいじょうぶ…?」
「あ、うん。今のはちょっとよろけただけ」
「……ネプギア、そろそろ休憩を入れましょ。気分的には、もう少し続けたいところだけど…」
「…うん。模擬戦は危険が多いから、普段以上に小まめな休憩が大事…だもんね」
よろけたラムちゃんを見て言うユニちゃんに、わたしは同意。ラムちゃん自身は「まだヨユーよ!」と言っていたけど、ロムちゃんに説得されてわたし達は全員女神化解除。取り敢えず水分補給を…と思って、その後に気付いた。水分も何も、わたし達は一切用意せず模擬戦を開始しちゃったんだって。
「あはは…取りに行こっか…」
一応トレーニングルームの近くには自販機があるけど、飲み物さえあれば良いって訳じゃないから、わたし達は一度出てエレベーターへ。
「…久し振りに模擬戦したけど…前より皆、強くなってるね」
「当然よ。…ネプギアこそ、更に動きが良くなってる気がするわ」
「うん。ネプギアちゃんが前にいてくれると、たのもしい(こくこく)」
「…でも…おねえちゃんや、イリゼちゃんだったら……」
「…だよね。前よりまた、強くなれてるけど…これじゃ、お姉ちゃん達には敵わない…良い勝負は出来るかもしれないけど、勝つのは……」
前衛のお姉ちゃん達と、中衛が本領のわたしとじゃ…なんて事は言わない。それを差し引いてもきっと、わたしよりお姉ちゃん達の方がずっと頼もしい。技術も、知識も、判断力もお姉ちゃん達の方が上で、強いんだから。
エレベーターの中でしたのは、そんな会話。当然盛り上がる訳のないやり取りで、結果目的の階に着く前にしていた会話は途切れてしまい…その数秒後、開いたエレベーターの扉から、ある人達が入ってきた。
「あ、ユニさん…それに皆さんも…」
「お、奇遇だね」
登ってくるエレベーターを待っていたのは、ビーシャさん、ケーシャさん、エスーシャさん、サーシャさん…現
「皆さんは、イストワールさんに呼ばれてここに…?」
「そうそう、その通りだよ。…しかし、いやぁ…随分と久し振りに登場したわ…」
「ですね……」
「あ、あはははは…(どうしよう、返す言葉が見つからない…)」
遠い目をするシーシャさんとそれに頷くケーシャさんの言葉に、わたしは乾いた笑い声を漏らす。…ほんとに、なんて返せばいいのこれ……(因みにエスーシャさんの方を見たら、ちょっと目を逸らしながら「興味ないね」と言っていた。…本当かな……)。
「…まぁ、それはともかく…ブランちゃん達の事は、聞いたよ」
「…ごめんね。わたし達、犯罪組織の時より全然力になれてなくて……」
「そ、そんな!全然そんな事ないですよ!皆さんギルドの支部長としての立場から色々情報を集めてくれたり、軍よりも柔軟に動いてくれていたんですから!」
「…逆に気を遣わせてるじゃないか」
「ユニさんは、ノワールさんと同じでしっかりしてますもんね。…ところで…もしかして、少し疲れてます…?」
じっと見つめてくるケーシャさんに、わたし達は一瞬躊躇い…それから、それぞれでこくりと頷く。
確かに、疲れてないと言えば嘘になる。でもわたしとしては、ぱっと見で分かる程疲れを表に出してる気はなくて…それなのに見抜かれてしまったのは、ケーシャさんだからなのか。それとも他のお三人や、全く違う人でも分かってしまう程、本当は疲れが表れてしまっていたのか。…もし、後者だったら…少し、情けない。
「さっきまでモギセンをしてたのよ。…わたしたち、おねえちゃんたちに勝たなきゃいけないんだから」
「ねぷねぷ達に?…それも、ちょっと聞いたけど…別に二対一とか、それ以上で戦っても良いんだよね?」
「それは、はい。…でも、わたし達が行くまでお姉ちゃん達が…くろめさんが待っててくれる訳がありません。こっちから仕掛ける事が出来ても、モンスターやダークメガミに邪魔をされて、一対一で戦わなくちゃいけなくなる事は十分あり得ると思います。だから……」
「一対一で勝てるだけの力がなくては、確実に彼女達を取り戻す事など出来ない、か。…確かにそれはそうだ。搦め手も、半端なものなら純粋な実力で打ち破ってくるのがベール…いや、女神だものな」
「…うん。おねえちゃんたちは、すっごくつよいから…わたしたちも、もっとがんばらないと……」
きゅっと両手を握りながら言う、ロムちゃんの言葉。それを大人しくて、多分わたし達の中じゃ一番戦いに対して消極的なロムちゃんが言うからこそ…重みがある。
そうだ。お姉ちゃん達は、凄く凄く強いんだ。もっと頑張らないと、もっと努力しないと…勝つ事なんて、出来やしない。
そうわたしが思う中、目的の階に到達した事で開く扉。そこでシーシャさんが開けるボタンを押したままでいてくれたから、わたし達はお礼を言いつつ出ようとして…そこで、シーシャは言った。
「流石だね。そりゃ、ブランちゃん達も皆の事を信頼する訳だ。…けど、四人共…それはいつかじゃなくて、今出来る事なのかしら?」
『……っ…!』
表情は穏やかに、でも瞳には真剣な色を浮かべて言うシーシャさん。その言葉に、わたし達の足は止まり…シーシャさんは、続ける。
「ごめんね、厳しい事を言うようで。でも別に、アタシは問い詰めたい訳じゃないの」
「うんうん、シーシャは気負うな…って言いたいんだよね」
「そうそうアタシは…ってビーシャ、速攻で言うのは止めて頂戴…即座に言われると恥ずかしいだけだから……」
「え、あ…えっと……」
「ふふっ。ネプギアさんの言う通り、物事が上手く進まないのが戦場ですけど…無理に自分達だけで勝とうとする必要はないと思いますよ。だって、相手はあのノワールさんなんですから!……あっ、じゃなくてノワールさん達なんですから…!」
「自分だけで、と焦れば大方失敗するものだ。一人で出来る事の限界など、たかが知れているのだからな」
「…ね?一人で頑張るのも大事だけど、出来ない事は認めて、その上で進む…って言うのも大切だよ思うよ」
それぞれの言葉で、皆さんはわたし達に言ってくれる。無理をするなって、わたし達を気遣ってくれる。
そう言ってもらえるのは嬉しい。皆さんの言葉には、どれも深みがあって、形だけじゃないと思える何かがあって、そうなのかもしれない、きっとそうなんだって心から感じる事が出来る。……だけど、
(…相手は、あのお姉ちゃん達…一人で出来る事には限界があって、時には出来ないと認める必要もあって……やっぱり、そうなのかな…。今の、わたし達じゃ…いつかじゃない、今出来る事で、お姉ちゃん達に勝つのは……)
皆さんが、そういう意味で言った訳じゃないのは分かってる。頼ってくれて良い、言ってくれればいつでも手を貸す…そんな優しさから、わたし達に言ってくれたんだって事位、十分に理解している。
でも本当は、さっきの模擬戦で…その前に見た、『敵としてのお姉ちゃん達の動き』で…わたし達は、思ってしまっていた。わたし達は、勝たなきゃいけないけど…それは今出来る努力とか、心の持ちようとかだけじゃ、絶対出来ない事なんだって。自力でその差を埋める事は、不可能だって。
「…ねぇ、皆……」
頭は、皆さんと協力し、知恵を出し合い、皆で勝てば良いんだって事を理解している。でも心の中では、勝てない自分への飲み込み切れない思いが渦巻いている。お姉ちゃん達はわたし達よりずっと先に生まれたんだから、これは仕方のない事、当たり前の事だとは分かってるけど……それで絶対に取り戻せるのか、いつか女神として超える事が出来るのか…
「皆?どうしたの?」
ノックをした後入ってみると、部屋にはイリゼさんもいた。急にわたし達が来た事に、お二人共不思議そうにしてたけど…すぐにその表情が変わる。理由はきっと…わたし達の、目を見たから。
「…いーすんさん、イリゼさん。わたし達、もっと強くなりたいんです」
「…それは、ネプテューヌ達を取り戻す為?」
「うん。おねえちゃんたちに、帰ってきてもらうために…」
「わたしたちは、勝たなきゃだめなの。すっごくつよい、おねえちゃんたちに」
「…何も、同数で戦う必要はないんですよ?むしろ確実性を考えるなら、ギリギリではなく余裕で勝てるレベルの戦力で……」
「その為にも、アタシ達には一対一でも勝てる位の力が必要なんです。…何があっても、予想外の事態が起きても、お姉ちゃん達を取り戻す為に」
「…本気、なんですね?」
わたし達からの言葉を受けたいーすんさんは、わたし達を見回し…確認する。それが本気の、心からの言葉なのか、って。
それに、わたし達は頷いた。誰からともなく、大きく強く。そんな私達を見たイリゼさんは、何か言いたそうな顔をしていたけど…そのイリゼさんを止めるようにいーすんさんは目配せ。そこからいーすんさんは、またわたし達に視線を戻して…言う。
「…皆さんの気持ちは、よく分かりました。イリゼさんも含め、皆さん個人個人の力が向上すれば、奪還出来る可能性の上昇に直結するのも事実です。…だから、もう一度だけ訊きますね。それが皆さんの、本気の選択ですか?」
『…(はい・うん)』
「…分かりました。では、皆さんをただの候補生としてではなく、候補生であっても『女神』の一人であると見込んで、お話ししましょう。嘗て、ある女神が編み出し…そして、これは女神として間違っていると評した、一つの力の事を」
神妙な顔で、真剣そのものな顔で、いーすんさんは言う。いーすんさんは、わたし達へ向けて告げる。皆を守る為、もっと皆が安心して暮らせる国を作る為に生み出されながらも、その本人によってこれは使われるべきでないと判断された力──カニバルフォームの事を。
今回のパロディ解説
・スピードの出るお星さま、マジカルなはっぱ
ポケモンシリーズに登場する技の一つ(二つ)、スピードスター及びマジカルリーフのパロディ。要は必中技ですね。そして氷の礫もポケモンシリーズにはある技です。
・某TICKING TIME BOMBさん
新日本プロレス所属のレスラー、高橋ヒロムこと高橋広夢さんの事。もっと、もっと、もっと、もっと!…ですね。ネプギアの場合、姉は制御不能のカリスマ感ありますし。