超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
当たり前だけど、これまでわたしは『敵としての』お姉ちゃんから攻撃を受ける事なんてなかった。神次元で偽者のお姉ちゃんとは刃を交えたけど、あれはあくまで偽者、中身は全く別の存在だったし、実力も明らかに劣っていたから、早期に割り切る事が出来た。
でも、今は違う。今わたしが相手にしているのは、本物のお姉ちゃん達。疑いようがない、見た目も中身も実力も本物の……守護女神。
「ぐッ、ぅぅ……!」
「イリゼさ…っ、ぅ……!」
お姉ちゃんとノワールさん、二人による切れ目のない連撃を受けて、防戦一方のイリゼさん。完全に一対二の状況となってしまったイリゼさんは凌ぐので手一杯で、完全に翻弄されてしまっている。
そのイリゼさんへ、わたしは援護に入ろうとした。でもそこへ振り出される、戦斧の一撃。それはさっきからぴったりとわたしをマークしているブランさんによる妨害で…それを振り切って援護に入るだけの力は、今のわたしにはまだない。
「悪ぃなネプギア、もう少し付き合ってもらうぜ…ッ!」
(重い…それに、力の掛け具合が上手い……ッ!)
掲げたM.P.B.Lの刀身で斬撃を受けたわたしは、そのままブランさんとせめぎ合う。
押し付けられる戦斧は重く、押し返す事や受け流す事は困難。そういう攻撃は、往々にして敢えて力を抜き、その力に任せる事で距離を取れるものだけど…そうしようとする度に、ブランさんは力を緩め、利用させないように図ってくる。
普通、そんな事は出来ない。相手の視線の動きや気配を読み切って、その上で推測もしなきゃ出来ないような芸当で……そしてそれを、無理してやっているような気配もない。
「だったら…ロム、ラム!」
『うんっ!』
完全にわたしが押し留められてしまう中、ならばとユニちゃんが上げた声。それはほんの一瞬、錐揉み回転で高度を落としてイリゼさんがお姉ちゃん達から距離を取れた瞬間の声で、それに応えたロムちゃんとラムちゃんが、火力支援の光芒を放つ。同時にユニちゃんもわたしとブランさん、イリゼさんとお姉ちゃん達がぶつかり合う中間の地点に拡散ビームを放つ事で合流を阻止し、三人全員でイリゼさんの援護に入る。
幾らお姉ちゃん達でも、ロムちゃんラムちゃんからの攻撃を無視は出来ない。下手に強行突破しても、その下にはイリゼさんがいるんだから。これなら有利とまでは言えなくても、十分イリゼさんの助けになる筈で……
「──そうは、させませんわ」
けれど二人の光芒は、割って入ったベールさんに阻まれた。少し前から攻撃を控え…意図的にわたし達からの注意が薄まるように立ち回っていた、ベールさんの大槍によって。
(これが、お姉ちゃん達…敵として見る、お姉ちゃん達の力と連携……っ!)
何とか押される状態から堪え、ブランさんの脇腹を狙って横蹴り。それを回避する為にブランさんは一瞬離れ…でも離れる際身体を回転させた事で遠心力を生み、速度の乗った戦斧の横薙ぎで離れようとしたわたしを即座に強襲。わたしも縦横同時の回転をかける事で戦斧を飛び越えるようにして回避し、そのまま斬撃を叩き込むけど、ブランさんの防御は硬い。
互角には一歩及ばなくても、一対一の形であればわたし達はお姉ちゃん達と正面からぶつかれている。連携だって、決して劣ってるとは思わない。…だけど、その連携で行う事の幅が違う。戦術が、そこにある柔軟さと奥深さが、わたし達を数段上回っている。その状態が、戦闘開始のすぐ後からほぼずっと続いていて…こうして戦う事によって、より一層思い知らされる。お姉ちゃん達との間にある差を。どうしても埋められない、経験の違いを。
「イリゼ、わたし達はまだまだ余裕があるわ!それでもまだ続ける気!?」
「当然……ッ!」
「…そう、だったら……」
大太刀での袈裟懸け、返す刃での斬り上げ、そこから流れるように駆り出される後ろ回し蹴り。言葉と共に繰り出される三連撃を、右手の長剣と逆手持ちにした左手の短剣で何とか凌いだイリゼさんは、鬼気迫る表情で反撃を一発。突き出された長剣の斬っ先は、真っ直ぐにお姉ちゃんへと迫り……
「…良いわよ、もう追ってくれても」
「え……?」
お姉ちゃんは、それを避けた。それも、ただの回避じゃなく…イリゼさんへと、道を開けるかのように。
「……何の、つもり…?」
「単純な話よ。…もう、どこに行ったか分からないでしょう?」
刺突の体勢のまま、首だけ動かして問うイリゼさんに、お姉ちゃんはさらりと言う。ノワールさん達他のお三人も、これ以上の戦闘は必要ないとばかりに武器を降ろす。
対するイリゼさんが浮かべているのは、苦渋の表情。…確かにお姉ちゃんの言う通り…もう、レイがどこに行ったのかは分からない。
「…皆は、あの発言を信じるっての?あんな反吐の出るような発言を」
「イリゼは段々セイツみたいな事言うようになってきたわね…。…レイが信用に足る人物とは言わないわ。けど、そもそもレイなら、いつだって襲撃は出来た筈。なのに、それをしなかったって事は……本当に、彼女が言ったようにしか考えてないのよ」
問い詰めるイリゼさんと、それにゆっくりと首を横に振るお姉ちゃん。それはレイから皆さんを…信次元の人をそう見られているんだと認めるようなものだからか、お姉ちゃんは少し悲しそうな顔になり、その状態のお姉ちゃんとイリゼさんは視線を交わして……イリゼさんもまた、剣を降ろす。
「…戻ろう、皆。ネプテューヌの解釈は一理あるけど、証拠がある訳じゃないんだから」
「え…もどる、って……」
「じゃあ……」
ゆっくりとお姉ちゃん、それにノワールさんから離れるイリゼさんの言葉に、ロムちゃんとラムちゃんがふっと表情を曇らせる。…当然それは、今イリゼさんが言った『皆』という言葉の中に、お姉ちゃん達は含まれていないから。
出来る事なら、このままお姉ちゃん達に帰ってきてほしい。だけど…くろめさんもレイもいない場ですら、スタンスが変わらないって事は…やっぱり、そういう事なんだ。
「…ねぇ、皆。私達は……」
「待って、お姉ちゃん。…アタシ達だって、意思は固いから。お姉ちゃん達が、くろめの味方をしてる…それだけでならアタシ達もって考えるような事は…しないわ」
「…そうね、そう言うと思ったわ」
不意に、引き留めるようにノワールさんが発した声。でもその内容を言うよりも早く、ユニちゃんがそれを否定。その否定の言葉を聞いたノワールさんは、表情を沈ませ…でも同時に納得したような顔になって、背を向ける。
(お姉ちゃん…皆さん……)
イリゼさんはプラネテューヌの生活圏へ、お姉ちゃん達は別の方向へ、それぞれ無言で飛んでいく。それぞれの背中を見たわたしは……ほんの一瞬だけ迷い、それからイリゼさんの方へ。
考えは変わっていない。けどやっぱり…心はお姉ちゃんといる事を求めてしまう。こうして、同じ場所へは行けない事が…凄く辛い。
「…ごめん、皆。威勢良く突っ込んだ割に、封殺されちゃって……」
「いえ…アタシ達こそ、すみません。もっと上手く援護出来ていれば、或いは……」
「…いや、先に謝った私が言うのもアレだけど、そんなに気にしないで。多分今回の戦闘に関しては、私達一人一人がもっと強くても突破は無理だっただろうから。…そういう意味じゃ、こっちは無理が出来ない、向こうはただ時間を稼げれば良いって状況下で強行突破を図る事自体が、判断ミスだった……」
斜め前から聞こえてくる、イリゼさんの呟き。落ち着いていて…でもその中に不甲斐なさを滲ませた、静かな言葉。
確かにイリゼさんの言う通り、条件や状況的に言えば、わたし達は戦い辛く、お姉ちゃん達は戦い易い戦闘だったと思う。それがこの結果に少なからず影響を与えているのは、間違いない。…でも……
「…わたしは、わたし達は…やっぱりまだ、足りない……」
「…ネプギア……」
さっきの戦いにおいて、わたしは、わたし達は、封殺されていた。わたし達は思うように動かなかったし…一方でイリゼさんは、殆ど常に一対一以上の状況だった。イリゼさんはきっちりとマークされていて、わたし達の優先度はイリゼさんより下だった。
それだって、お姉ちゃん達はわたし達の事をよく知ってるだとか、イリゼさんさえ押さえれば、わたし達だけで勝手にレイを追ったりはしないだろうっていう判断だろうとか、そうなっても仕方ない理由を考える事は出来る。だけど、でも、やっぱり……そういう事は、全てわたし達の力の無さに帰結する。お姉ちゃん達を取り戻す為の力が、まだまだ足りないんだって…今のままじゃ無理なんだって、そうわたしは思い知らされていた。
*
出来る事なら、ネプギア達にはカニバルフォームの修練に専念させてあげたい。専念出来る状況なら、落ち着いて進められると思うから。
だけど現実は、そうもいかない。ネプテューヌ達がいない以上、女神でなければこなせない務めはネプギア達がせざるを得ないし、くろめ達の動きに対する警戒だって怠れないんだから。取り戻す事は必須だけど、それだけを考えていれば…きっと私達は、足を掬われる。
ネプギア達が修練に専念する事は、状況が許してくれない。でも、緩和させる事なら出来る。カニバルフォームを使うのは四人だけでも、サポートだったら私にも…皆にも出来る事だから。
「これで、もう暫くは誤魔化せるかな…向こうが真実を明らかにしようとしてくると、やっぱり厳しいけど…間違いなく各国に動揺が広がるような事を、ネプテューヌ達がやる訳ないし……」
カニバルフォームの修練を始めてから、数日が経った夜。今私がしているのは、現在各国に流している情報の補強案構築。神次元から皆に来てもらえれば、この辺りは楽だけど…それをした場合、その間は当然神次元側の戦力が減るし、しかも減ってるって事を、くろめ達に教えてしまう事になる。だから、流石にそれは避けたいところ。
それに、かなり皮肉な話ではあるけど、もう一人の私の存在は向こうを牽制してくれている。もう一人の私が、状況が複雑化している要因の一つである事は事実だし、結果論的にはもう一人の私の行動が今のネプテューヌ達の状態に繋がっているとも言えるけど、それでも牽制となる存在でいてくれている事には、私は感謝の念を抱いて……
「…っと、はーい」
そんな思考をしていたところで、廊下から聞こえてきた声。それで呼ばれている事に気付いた私が執務室の扉を開けると、そこにいたのはコンパとアイエフ。
「悪いわね、急に来て。今忙しかった?」
「ううん、大丈夫。っていうか私達の仲なんだから、これ位気にしないでよ」
「え?あ、うん…」
「ふふっ、やっぱりわたしの思った通りです」
「……?」
にこりと微笑むコンパと、苦笑い気味に肩を竦めるアイエフを見て、訳の分からなかった私は小首を傾げる。
なんでも二人は、ここに来るまでに「執務室にいるなら、忙しいかもって事を考えなきゃいけないわね」「そうかもです。けど、イリゼちゃんなら気にしないで、って言うと思うですよ?」…って感じのやり取りをしていたんだとか。で、私がその通りな反応をしたから、コンパの「やっぱり」に繋がったらしい。
(でもなんか、それだと私が分かり易い子みたいになっちゃうなぁ…)
「イリゼちゃんの事なら、丸っとお見通しですっ」
「断言された!?そして心まで読まれた!?ほ、ほんとに丸っとお見通しなの!?」
「ふぇ?……あっ、じ、地の文と間違えちゃったです!ごめんなさいですぅ!」
「お、おおぅ…それはまた、天然な間違いだね…後、台詞がメッタメタだよコンパ…。…ごほん。それで、二人はどうしたの?」
「あ、はい。ちょっと、ギアちゃん達の事を訊きたくて……」
「…それって…カニバルフォームの事?」
「えぇ。…今のところ、どう?」
コンパのびっくり発言から気を取り直して私が訊くと、二人も真面目な顔に変わって来た理由を話してくれる。…カニバルフォームはどう、か……。
「現状、悪くはないと思うよ。…でも、今回ははっきりとしたゴールが…何をもってカニバルフォームの完成とするかが分からないし…皆が焦りの感情を抱いているみたいなのが、気掛かりかな……」
「焦り…っていうのは、早くねぷ子達を取り戻さないと、っていう焦り?」
「それもあるとは思うけど…前にも話した通り、最初の日に私達はネプテューヌ達と一戦交えたんだよ。で、内容としては正直劣勢だったし、勝利条件的に私達は負けたようなものだった。それは私の責任も大きいし、状況はネプテューヌ達に有利だったんだから、皆はそんなに気にする事でもないんだけど……」
「その結果で、ギアちゃん達は責任を感じちゃってるんですね…」
締めの言葉を言ってくれたコンパに、私は首肯。それは難しいわね、とアイエフは表情を曇らせて、それにも私は小さく頷く。
あの戦闘はほんと、私の判断ミスだった。レイの存在で気が立ってたのか、普段より狭い視野で即座の強行突破って選択をしてしまった。もっと状況を読んで、何度もプランを頭の中で精査して、その上で行動に移していれば、違う結果になったかもしれないと、私は本気で思っている。
でもそれをネプギア達に話しても、気休めにしかならない。それどころか、責任のある自分達へ気遣いまでさせてしまったと、余計に焦るかもしれない。自分達が、って思い込みをしてしまっている時は、その勘違いを訂正するだけじゃ心の納得は得られないものだから。
「…イリゼちゃん、それを何とかしてあげられそうですか?」
「どう、かな…やるだけの事はしてみるけど、こういうのって結局は、それぞれの心の問題だから……」
「…ねぇ、やっぱり私達全員で取り戻しにかかるのは駄目なの?一人でも取り戻せたら一気に戦力は変わるし、心も上向きになるでしょ?」
「確かに…っていうか、私もそっちの考えだったんだけど…ネプギア達は、本当に本気だから…さ。そうした場合、自分達は信じてもらえなかったんだって、そう思っちゃったりしないかな…?」
心配する二人の気持ちは分かる。私だって同じ気持ちだし、私はネプギア達を頼れる仲間だと思ってるけど…やっぱり、目上の立場として助けてあげたいって思いがあるから。
だけど私は四人と同じ女神で、同じ場で戦った。だから四人の気持ちだって分かるし、本気の四人の気持ちを裏切る事はしたくない。こういう時、四人に恨まれてでも…って判断をするのも、一つの優しさなのかもしれないけど…私はそれが優しさだからって、そんな勝手な思いを押し付ける事はしたくない。
「…そうね、ネプギア達の事を思えば良くない考えだったわ。忘れて頂戴」
「ううん、一理ある事は事実だから大丈夫。…なんか、ごめんね。あんまり明るい話が出来なくて」
「それが事実なら仕方ないわ。それに…イリゼが思い詰めてないって分かったのは、素直に一安心だもの」
「あはは…私は、一応四人の指導者だからね。そういう意味じゃ、四人の存在が私を冷静にさせてくれてるのかも」
そう言いながら、私は四人が協力してくれるって言った瞬間の事を思い出す。後から思えば判断ミスをしていたとはいえ、実際あの瞬間の私は冷静でいないと、と思えていた。そして…指導する事、一緒に戦う事、私が四人にしてあげられる事は色々あるけど、きっと一番は頼れる存在で居続ける事。心の支えになってあげる事。だって皆は、私を信頼してくれてるんだから。
「…うん。二人と話してたら、頑張らなきゃって気持ちが強くなったよ。ベールもちゃんと取り戻すから、二人も私と四人を信じて」
「ちょっ、何でそこでベール様だけ名前出すのよ…」
「うふふ、あいちゃん照れてるですぅ」
「て、照れてないし!」
私が四人の支えである(と思う)のと同じように、コンパやアイエフ、パーティーメンバーの皆が私にとっては大きな支え。こういう何気ない会話も、案外元気にしてくれる。だからこそ…頑張ろう。四人の為にも、皆の為にも。
「もう…じゃあ、また何かあれば言って頂戴。私達なりに手伝うから」
「ちょっとした事でも良いですからね?」
「勿論。皆の力が必要な時は速攻頼るから、覚悟しておいてよ?」
部屋を出て行く二人を見送り、私は四人の修練メニューを改めて考える。もっと良く出来る点はないか、皆を頼る事でより効率良く進められるようなところはないか、と。
で、それを考え始めてから十分弱。思考がごちゃごちゃしてきたところで、さっきも聞こえたノックの音がまた廊下からして……
「ユニ様達、調子はどうですか?」
「苦悩する少女、努力する少女、そんな少女達に手を貸さずして何が王か!…という事で、出来る事があれば協力するぞ?」
「偶然迷い込んだ身とはいえ、もう女神候補生の四人も、守護女神の四人も他人じゃない。だからあたしも、力を貸すわ」
まるで面子を変えてのテイク2をするかのように、第三期パーティーメンバーの三人が執務室を訪れ、私に訊いてきた。四人はどうかって、自分達も協力するって。
「……ぷっ、ふふっ…!」
『……?』
「あ、いやごめんね。ついさっきもコンパとアイエフが来て、同じような事を言ったものだからさ。…大丈夫だよ。不安な事もあるけど、私が精一杯フォローするつもりだし、皆の事も頼る気満々だからね」
思わず吹き出してしまった私は謝罪と共に訳を言い、それから現状に関して説明。すると三人は説明終わりにはしっかりと頷いてくれて、そこでも感じる心強さ。
「そういう訳だから、もしかしたら修練に協力してもらう事があるかもしれない。…その時は、お願いね?」
「了解よ、任せて」
「うん。…あ、そういえば…なんだかんだ聞きそびれちゃってたんだけどさ、ミリアサちゃんの…出した?…REDって、結局何なの?」
「あれか?あれは前にも言った通り、因子を用いた複製体の我が同士…因みに力だけを借りる事も出来る。その場合はこうだ!」
ふと思い出した疑問を訊くと、ミリアサちゃんは一枚のカードらしき物を手に。それをバックラーに見える左腕の装備にセットすると、同じく出していた剣に力が籠って、どうだとばかりに軽くドヤ顔。何でも、そのカードにも騎士の力が込められているらしく……
「あー…世界を渡り歩くライダーさんみたいな…?」
「カレイドの魔術師みたいなものかしら…」
「う、うむ…確かに両者共カードの力を使うが、そう表現されるとは思わなかったぞ……」
それに対するまさかの返しに、ドヤッとしていたミリアサちゃんは一転してタジタジの表情になってしまった。…電波ヒーローさんもそうだよね。可哀想だから言わないけど。
「こ、こほん。ともかくこれがわたしの力。そして…あ、そうだ。実体化させる場合、大概戦闘能力は皆無だから、そこは注意が必要だぞ?」
「あぁ、だからREDはあんな簡単に吹っ飛んだんだ…でもその力があれば、ネプテューヌ達の影武者っていうか、『ちゃんと居る』って各国の人達に思わせる事が出来るかな…」
「…それは、彼女が因子を持っていたらじゃない?」
「その通りだ。そして残念ながら、彼女達の因子はまだ……」
「そっかぁ…まあそれなら仕方ないね。だけど何かに使えるかもだし、私の因子だったら今すぐでも……」
「待った、安易に渡さない方が良いわよ?アーサー、絶対邪な事に使ったりするし」
「えっ?」
いつの間にかいたチーカマの言葉に私が目を丸くすると、あからさまに目を逸らすミリアサちゃん。その反応にこの場の全員が半眼となり、半眼の集中放火を受けたミリアサちゃんは目どころか身体全体を逸らしてしまい…私は因子の件を一旦保留にする事を決意。勿論、ミリアサちゃんの事は仲間だと思ってるけど…こういう事って、ちゃんと考えてから決断しないといけないもんね、うん。
そんなこんなで第三期パーティーメンバーの皆との会話も終わり、再び私は皆を見送る。そうして修練メニューの思考をまた私は行って…数分後、ある事を決定。
(吉と出るか、凶と出るか…安全第一だけど、やってみなきゃ分からない事だってあるもんね)
未知の事に当たる時は、慎重さが必須。だけど物怖じしてしまえば、歩みはいつまでも進まない。
だから必要なのは、慎重な思考と前向きな意欲。そして前者を私が、後者を四人が持っているんだから、今考えた事をやってみる価値はある。そう考えた私は、執務室を出て…明日やろうとしている事を伝えるべく、ネプギア達を探しに行く。
*
「やっ!ふっ!てやぁああぁッ!」
頭の中に仮想の敵を想像し、それと戦うようにしてM.P.B.Lを振るう。斬撃、刺突、防御、それに持ち手での殴打。出来る事を片っ端から駆使して、わたしはその場で素振りを続ける。
今わたしがいるのは、プラネタワーのトレーニングルーム。ユニちゃん、ロムちゃん、ラムちゃんもいて…全員が、個人個人で訓練中。
「……っ…!…と、と……」
ここでこう!…と心の中で叫びながら、わたしはM.P.B.Lを振り抜いた次の瞬間サマーソルトキック。でも思った以上にそれは速度が出てしまって、着地の瞬間軽くわたしはよろけてしまう。
(…やっぱり、まだ足りない…もっと慣れなきゃ、 話にならない……)
普段だったら、怪我もない状態でこんなミスはしない。なのによろけてしまったのは、今わたしがカニバルフォームの状態だから。まだわたしの身体が、わたしの感覚が、カニバルフォームの力に慣れ切ってなくて…時々、こうなる。
個人個人で訓練してるのも、それが理由。勢い余ってぶつかったり、或いは動き過ぎて本来なら当たらなかった筈の攻撃に当たってしまう可能性があるから、今はまだ皆で一緒にやる事は出来ない。
「よしっ!…けどまだ、ちょっと感覚が狂ってるわね……」
「こうして、こうして…えぇいっ!」
「もっともっと、とりゃーっ!」
今のはどこで力が入り過ぎていたか。それを考える中、聞こえてくる皆の声。皆一生懸命で、必死で…その声を聞いていると、奮い立つ。こんな事で躓いてたら、お姉ちゃん達を取り戻す時が遠退いちゃうって。わたしだけが、力不足になってしまうって。
じゃあ、どうするか。そんなの、もっと頑張るしかない。もっと頑張って、少しでも早く力にしなきゃいけない。そう思って、もう一度素振りを始めようとした時……トレーニングルームの隅に置いておいたNギアの、アラームが鳴る。
「……!…もう、時間なんだ……」
それは、イリゼさんに指定された時間制限。自主トレをするんだったら、一回につきこれ以上の時間やっちゃいけないっていう、明確な注意。
その時間を告げるアラームが聞こえた瞬間、わたしは迷った。迷って皆の方を見ると、皆も躊躇うような顔をしていて……だけどわたし達は、カニバルフォームと女神化を解く。
「…続けたら、イリゼさん…おこる、もんね……」
「うん…おこるし、かなしそうなかおもすると思う……」
浮かない顔で言う二人の言葉に、わたしもユニちゃんも小さく首肯。
そう。イリゼさんは、わたし達を心配して、わたしの事を思って、熱心に指導してくれている。なのに、それを無視して続けちゃったら…それは、イリゼさんへの裏切りになる。恩を仇で返す事になる。…それは出来ないし、したくない。だからわたし達は今日の訓練を止めて、トレーニングルームを……
「あ、もしかして今、終わったところ?」
出ようとしたところで、イリゼさんとばったり出くわした。本当に丁度、扉が開いたところで。
「あ、はい。…もしかして、アタシ達に何か用事ですか?」
「うん、明日やろうとしている事で…ね」
何となく含みを感じるイリゼさんの言葉に、顔を見合わせるわたし達。イリゼさんの事だから、突飛な事は言ってこない…と、思うけど、思い返せば前は遊びの中での連携訓練とかがあったし、今回も意外な事を言ってくるかもしれない。
そう思って自然とわたし達が緊張する中、それが伝わったのか、イリゼさんは軽く笑って肩を竦める。でもその後は、ふっと真面目な顔になり……言う。
「…こほん。明日は一回、模擬戦をしてみるよ。今のネプギア達が、カニバルフォームでどこまでやれるか…今の限界と、その先の伸び代を、ちゃんと知っておく為に」
今回のパロディ解説
・丸っとお見通し
TRICKシリーズの主人公、山田奈緒子の代名詞的な台詞の事。別に謎もトリックもなく、単にイリゼをよく知ってる、又はイリゼが分かり易いってだけの話ですけどね。
・世界を渡り歩くライダーさん
仮面ライダーディケイドの主人公、門矢士の事。カードを使って戦うキャラクターは?…といえば、やはりシリーズ自体が有名なのでこれを思い出した人も多いと思います。
・カレイドの魔術師
Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤに登場する魔法少女の事。こちらもカードの力を使って戦いますね。特にカードに込められている力は、騎士の場合も多いですし。
・電波ヒーローさん
流星のロックマンシリーズの主人公、星河スバルの事。少々毛色は違いますが、バトルカードがバトルのメインとなるのですから、やはりこのシリーズも連想します。
今回の話(つまりこれ)の投稿後、今後の投稿に関する重要なお知らせを活動報告に載せるつもりです。今日中には出せると思うので、もし宜しければご確認下さい。