超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第百十七話 やる気はあれども

「ご苦労様、皆。何か行動の手掛かりになりそうなものでも見つかったかい?」

「残念ながら空振りよ。…まぁ、今に始まった事でもないけど」

 

 浮遊大陸の一角にある、ある施設内。そこでゆったりと椅子に座るくろめと、同じように席へと腰を下ろし、或いは壁に背を預けて立つネプテューヌ達四人。今この場にいるのはその五人で、人間のネプテューヌやレイの姿はない。

 

「仕方ないさ。常識外の力を持ち、その一方で科学技術にはてんで疎く、無秩序にゲイムギョウ界中を動き回るなんて、それこそ獣の様なものなんだ。どうせ獣の様なら、どこぞの蟲に覚えさせられるような痕跡でも残してくれれば楽だというのに」

「そうなったら苦労はしないけどね。…いや、そうなっても苦労するか……」

「するな」

「ですわね」

 

 冗談交じりに話すくろめへ、ノワールが反応。それにブランとベールも頷き、くろめは小さく肩を竦める。

 

「まあ何にせよ、このままは良くないわね。目的が見えない以上はいつどんな行動を起こしてくるか分からないし……」

「…ないし?」

「…こっちにも、状況を引っ掻き回しかねない存在がいるでしょう?」

「あぁ……」

 

 困ったようにそう返すネプテューヌの言葉を聞いて、くろめが浮かべたのは何とも言えない…否、感情を特定させない顔。それは明かせない何かがあるという事なのか、それとも単にお茶を濁しただけなのか。しかしそれについてネプテューヌ達が口を挟むより早く、くろめは次の言葉を口にする。

 

「ともかく、ねぷっちの言う事はその通りだ。何なのか分からないから恐怖を覚える。何をしてくるか予想出来ないから、対処も出来ない。だから、普通ならそこを判明させていくものだけど…獣そのものであり幽霊の様でもある彼女の行動を、完全に見切ろうとするのは悪手だろうね」

「…深みのある言い方ですわね。何か案でも?」

「ふふっ、察しが良いねべるっち。まあ、期待していてよ。それに関しては、もうすぐ仕込みが終わるところだからね」

 

 煙に巻くようなくろめの言葉に、怪訝な表情を浮かべる四人。しかしその顔付きからこの場で答えるつもりはない事を察した四人は、各々で軽く肩を竦める。

 それからくろめは四人に休むように言い、応じた四人はその場の奥へ。歩いていく四人を見送った後、くろめはアフィ魔Xへと連絡を取り…彼等へと繋がる前に、心の中でふっと呟く。

 

(彼女が次に何をするか、最終的に何を目指しているのか…そういう具体的な行動は分からなくても、どんな理念、どんな方針で動いているかは今の段階でも想像は容易。ならば、それに合わせた策を講じるだけさ)

 

 

 

 

 わたし達は、イリゼさんと約束した。イリゼさんを信じて、もう一度頑張ると。また制御出来なくなるかもしれない、その危険は十分にある…だけど頑張る事が出来る内は、それが許される限りは、最後まで諦めないと。

 だけど、まだイリゼさんは安静が必要。いざって時、イリゼさんが万全の状態で動けるようにする為にも、今はまだ休んでいてもらわなくちゃいけない。そんな状態で、わたし達は修練を再開する為…幾つか、対策を講じる事にした。

 

「これで良し、っと……ユニちゃん、一回やってみてくれる?」

 

 今いるのは、外じゃなくてトレーニングルーム。そこでカニバルフォームとなったわたしは、少し離れてユニちゃんへお願い。

 それを受けたユニちゃんは、手の内にある、ある物を操作。するとあれからまた改造をしたカニバルフォーム用のプロセッサの一部が輝いて…そこから展開したシェアエナジーの鎖が、わたしの身体を縛り付ける。

 

「わっ、とと…うん、成功だね」

 

 がっちりと拘束されたわたしの身体。一応、少しは動けるし、全力を出せば少しずつ壊せる位の強度だけど…取り敢えず動きを大きく制限出来るなら、それで十分。

 これは、某アイアンなプリズナーさんを意識した仕様のプロセッサ…とかじゃ勿論ない。わたし達が講じた対策、その一つ目が物理的拘束。遠隔で起動出来る拘束ユニットをプロセッサに組み込む事で、制御出来なくなってると分かったらその場で身体を拘束し、動けなくする事で周りの誰かを傷付ける事を防ぐのが狙い。

 

「ギアちゃーん、皆さーん!」

 

 縛る鎖をユニちゃんに解除してもらって、カニバルフォームも解いたところで、開くトレーニングルームの扉。入ってきたのはコンパさんとアイエフさんで…その手元には、箱が二つ。

 

「ギアちゃん達に頼まれていたお薬、用意したですよ」

「ありがとうございます、コンパさん、アイエフさん」

 

 そう言ってまずはユニちゃんが、続いてわたしが箱を受け取る。二つの箱の中に入ってるのは、何本もの注射で…コンパさんはお薬と言ったけど、薬は薬でも頼んだのは麻酔。

 これが、もう一つの対策。まずは鎖で動きを封じて、壊される前にこの麻酔で眠らせる事が、わたし達の考えた対処。加えてわたし達はちゃんと対処をする為に、わたし達四人だけで訓練する場合カニバルフォームになるのは最大でも二人まで、常に二人はならずに備えておく、って事も決めた。当然訓練のペースは落ちちゃうけど…万が一の事を考えれば、そうする方がずっと良い。

 

「ねーねー、どう使えばいいの?」

「いたく、ない…?」

「こっち側を当てて、このボタンを押すだけですから、使うのは簡単だと思うですよ。…でも、出来るだけ使わない方が良いです。幾ら女神化している時の皆さんが、半端な量の麻酔じゃ効かないとはいえ……」

「…分かってます。…ごめんなさい、心配をかけて……」

 

 表情を曇らせながら言うコンパさんの言葉に、わたしはこくりと静かに首肯。今コンパさんが言った通り、普通の量の麻酔じゃ女神を眠らせる事は出来なくて…そんなわたし達へ通用する麻酔となると、それはもう常人だったら致死量の麻酔。コンパさんが気にしているのは、それによるわたし達への影響で…こうして心配してくれるコンパさんの為にも、わたし達は頑張らなきゃいけない。最悪これがあるじゃなくて、そもそも制御を失わないように、使わなくて済むように。

 

「大丈夫よコンパ。ちゃんとイストワール達とも確認を重ねて、その上で用意したやつなんでしょ?…それに、出来るだけ訓練には私達だって付き合うんだから」

「…です、よね…ギアちゃん達は頑張ってるんですから、水を差すような事を言っちゃ悪いですよね。よーし…!」

 

 アイエフさんからぽん、と肩に手を置かれたコンパさんは、喝を入れるように両手で自分の頬を叩く。ただでも、叩くと言ってもぺちぺち、って音が鳴りそうな感じで…自然と溢れるのは、小さな笑い。

 

「…ほぇ?皆さん、どうしてにこにこしてるです?」

「あ、あはは…さて、と。コンパさんに持ってきてもらったし、早速始めましょ」

 

 それからわたし達はプロセッサの拘束がちゃんと機能するかどうか全員分確認して、それが済んだところで改めてわたしとラムちゃんがカニバルフォームを使用開始。あの時我を失ってしまった理由を探る為、ちゃんと戦えるようにする為に、加減をしつつも二人で手合わせ。

 

(…今もそう、あの時もそうだった…最初から、使った瞬間から我を失った訳じゃない…今は、あの時は……)

 

 魔法を避けて、射撃を返して、トレーニングルームの中を飛び回って…ラムちゃんとの稽古を展開しながら、わたしは考える。考えて、振り返って、見つめ直す。

 何となくだけど、ああなってしまった原理は想像出来る。流れ込む負のシェアに心が囚われて、そっち側に流されてしまったから、わたし達はイリゼさんを傷付けてしまった。…だけど今は、わたしはわたしを保ってる。昨日以前にも、それなりの時間カニバルフォームのままでいた事もあったけど、その時だって記憶が飛ぶような事はなかった。…なら、何が違う?何が引き金で、わたし達はああなった?

 

「もらったわッ!」

「……!な、なんのぉ!」

 

 気付けば迫っていたラムちゃんの攻撃。反応が遅れた事、攻撃が杖に氷剣を纏わせた近接攻撃だった事で二重の衝撃を受けたわたしは、思わず某富野さん節みたいな声を出してしまったけど、攻撃自体は何とかM.P.B.Lの刀身で防御。勢いに押される形で飛び退きながらも、わたしは頭を切り替える。

 今考えていたのは、大切な事。だけど今わたしがしているのは、ラムちゃんとの手合わせ。どっちも大切な事とはいえ…優先順序を間違えるんじゃ、この訓練の意味がない。

 

「やるね、ラムちゃん…けど、そっちがその気なら…ッ!」

 

 続けて撃ち込まれた氷塊を、わたしは着地し床を蹴る事で一気に前へと跳んで回避。更に床すれすれの跳躍からもう一度床を蹴る事で真下からラムちゃんに迫り、その勢いのまま下からラムちゃんを斬り上げる。

 それをラムちゃんは上昇で回避。わたしも追いながら斬撃を続け…その中で、思い出す。前のイリゼさんとの模擬戦でも、こういう動きがあったって。

 

(あの時は、相手がイリゼさんだった…でも今はラムちゃんなんだから、このまま押し切る…ッ!)

 

 別にラムちゃんが弱いとは思わない。でも、あくまでラムちゃんは後衛で、この距離ならわたしが遅れを取る訳がない。この距離で遅れを取るようなら、それこそお姉ちゃん達になんて勝てっこない。

 更に距離を詰めて、身体でぶつかる位の勢いで、わたしは何度もM.P.B.Lを振るう。いつもより大振りになっている気はするけど…それで良い。接近戦慣れしてないラムちゃんなら、そっちの方が翻弄出来る筈だから。

 

「逃がさない…ッ!」

「む…しつこい……ッ!」

 

 段々斬撃と回避との距離が縮まる。感覚的に、追い詰められつつある事が分かる。そしてここだと思った瞬間、わたしは大上段からM.P.B.Lを振り抜き…間一髪それを、ラムちゃんは杖でガード。それぞれの得物、それ越しにわたし達の視線は交錯し……その瞳を見て、わたしは気付いた。ラムちゃんは、本気でわたしを出し抜き近接戦で勝とうとしてたんだと。

 

(…まさか、わたしを舐めてるの?不意打ちの一発ならともかく、その後でもまだ近接戦で勝てると思ってるの…?…だったら……)

 

 M.P.B.Lを持つ手に一層の力が籠る。策で、駆け引きでじゃなくて、純粋な力や技で押し切ろうって思いが……格の違いを見せ付けてやろうっていう感情が、心の中に湧き上がる。

 さっきラムちゃんは、しつこいと言った。それはつまり、今わたしが仕掛けてる攻撃自体はラムちゃんにとって望ましくないものだって事。ならこのまま攻め立てる。徹底的に、ラムちゃんにとって嫌な攻撃を仕掛け続ける。それも戦闘においては一つの作戦なんだって、よく考えもせず接近戦を仕掛けてきたラムちゃんに思い知らせて……

 

『……ッ!?』

 

 その時、突然に下方から飛んできた何か。かなりの勢いで飛んでくるそれに、わたしもラムちゃんも反射的にその場を離れ……飛んできた存在、ロムちゃんがわたし達の間に立ち塞がる。

 

「……っ…ロムちゃん、何のつもり…!?」

「二人とも、だめ…っ!」

「だ、だめって…今はわたしとネプギアでやる時間でしょ!?今、ネプギアにかてるさくせんがあったのに…!」

「…わたしに?言うねラムちゃん。だけど有利だったのはわたし……」

「だから、だめ…!二人とも…けんか、しないで……っ!」

『……っ…!?』

 

 いつも優しくて大人しいロムちゃんらしからぬ剣幕で、わたし達を止める女神化状態のロムちゃん。でも正直言って、ここからだって時に止められるのはあまり気分の良いものじゃない。しかもそこへ、やっぱり勝つ気らしかったラムちゃんの言葉が重なったものだから、わたしの中の不満はどんどん大きくなっていって……だけど次の言葉で、わたしは…そして恐らくはラムちゃんもはっとする。

 喧嘩しないで?…何を言っているのロムちゃん。これは手合わせだよ?ただの訓練だよ?なのにそれを喧嘩だなんて、本当に何を…初めはそう思った。だけど…今は手合わせ中だった事を、ロムちゃんが分からない訳がない。それなのに止めたって事は、何かそう思うような理由があるのかもしれない。…そこまで考えたところで、わたしは気付いた。ロムちゃんがそう思うような…まるで喧嘩しているかのように見える何かが、わたしとラムちゃんにあったんだって。そしてそれは……一つしかない。

 

(……っ…そうだ、そうだよわたし…わたし、また……)

 

 全く気付かなかった。おかしいとすら思わなかった。でも…思い返してみれば今確かに、わたしはラムちゃんへと抱いていた。手合わせの時に、訓練の時に抱くものとしては間違っている…ラムちゃんへの敵意を、それを生み出している暗い悪意を。

 

「…ごめん、ラムちゃん…ロムちゃんも、ごめんね……」

「ネプギア…わ、わたしこそ…ごめん……」

「…取り敢えず、二人の手合わせはここで中断するのが良さそうね。…大丈夫?」

 

 自覚した事でわたしもラムちゃんも気不味くなる中、同じく飛んできたユニちゃんがわたし達を見て一言。カニバルフォームに飲まれつつあったわたしとラムちゃんは、それに頷き…ユニちゃんロムちゃんとバトンタッチ。カニバルフォームを解除して、今度はわたし達が二人を見守る。

 

「ふッ……てい、ゃぁぁっ!」

「こっちだって、まだまだぁッ!」

 

 多彩な魔法で次々と仕掛けるロムちゃんに対し、ユニちゃんはカウンター主体でロムちゃんの攻撃の隙を狙う。今のところ常に防御出来るだけの余裕を残しているロムちゃんと、そもそも自分からはあまり仕掛けないユニちゃんだからか、動きこそ激しいけれどヒヤヒヤした感じはあまりなくて…だからこそ余計に、思う。さっきのわたしは、本当に過激な思考になってたんだって。

 

「…二人共、もう落ち着いたです?」

「あ…はい。お二人にも、ご心配をおかけしてすみません……」

「どっちかが怪我する前に何とかなって良かったわ。…ロムには感謝しないとね」

「うん。ロムちゃん、いつもわたしたちのこと、よく見ててくれてる…」

 

 アイエフさんの言葉を受けて頷くラムちゃんの声には、嬉しそうな…でもちょっと申し訳なさそうな響きも籠っていて、今ラムちゃんがどんな気持ちでいるのかよく分かる。

 もしかしたら、どこかで自分から気付けたかもしれない。でも気付けなくて、あのままわたしとラムちゃんは黒い気持ちのまま戦ってしまっていたかもしれない。そういう事を想定して、そうなっても大丈夫なように、訓練体制を整えておいたとはいえ…やっぱり、情けない。

 

(…って、駄目駄目後ろ向きになっちゃ。わたしはイリゼさんを、わたし達ならって思ってくれてる皆さんを信じるって決めたんだから。訓練も、機械の開発と同じでトライアンドエラー。気を付ける事は大切だけど、怖気付いたらいつまでも前に進めないもん…!)

 

 弱気な気持ちを追い出すようにわたしはふるふると首を振って、視線を二人の手合わせに戻す。見る事で学ぶ為に、二人の改善点を見つける為に、そして何より二人に何かあったらすぐ止められるように。

 そこから、二人の手合わせが続く事十数分。段々二人とも動きが大胆にはなっていったけど、最後まで勝負が決まりそうな瞬間はなく…そのまま決めておいた時間が来て終了。それは一見、きっちりと制御出来たようにも見えたけど……

 

「…ロム、もしかして…全力じゃなかった?」

「…うん…で、でもねユニちゃん、わたしは……」

「分かってる、感情に気を付けなきゃって思いが頭から離れなかったんでしょ?…アタシもよ……」

 

 カニバルフォームを解いた二人は浮かない顔。二人共安定して戦ってはいたけど、確かに言われてみれば、二人の動きはカニバルフォームじゃない時とそこまで変わってなかったような気もする。勿論、黒い感情に飲まれかけてたわたしが言える義理ではないけども…カニバルフォームの力を全然引き出さなかった結果の安定じゃ、意味がない。

 そしてその後も、途中で休憩を入れながらもわたし達は訓練続行。組み合わせを変えて、やる手合わせにも何度か条件を付けて、色んなパターンで訓練を続け……だけど結論から言えば、結果は二パターンだった。最初のわたしもラムちゃんの様に、我を失いかけるか、次のユニちゃんとロムちゃんの様に、力をちゃんと引き出せなかったかの、その二択。鎖や麻酔を使わずに済んだのは良かったけど……成果も、薄い。

 

「はぁ…ふぅ…みんな、まだ…やる……?」

「わたしはいけるわ…!…あ、でも…ちょっとおなか、空いちゃったかも……」

「ふむ…では、この果物はどうだろう?水分もあって、丁度良いと思うよ」

「あ、ありがとうございます海男さん……え、海男さん!?」

 

 差し出された蜜柑を受け取ったわたしは、何の気なしにお礼を言って…そこでくれたのが海男さんだと気付き、びっくり仰天。さっきまでいなかった人(…人じゃないけど)がいつの間にかいた、ってだけでも驚きだけど…それが海男さんの場合、色々とインパクトが強過ぎる……。

 

「はは、オレが来た!…とでも言っておこうかな?」

「い、いや蜜柑を渡す時に使う台詞ではないかと…あの、海男さん。どうしてここに…?」

「気になったからだよ。因みにこの果物は、いりっちの所で貰った物でね。色んな人が来てはお見舞いの品を持ってくるものだから、彼女達だけじゃ食べ切れなくなってしまったらしい。という訳で、いりっちの為にも食べてくれるかな?」

「あ、あはは…そういう事なら、アタシも頂きます…」

 

 そういえば、わたし達が行った時も結構な量の果物があったような…と思いつつ、わたし達は貰った蜜柑を剥いて食べる。

 すっきりした甘さと、その中にちょっぴりある酸味。瑞々しい蜜柑は心身どちらの疲労も癒してくれそうな感じで、皆の表情も自然と緩む。

 

「…ところで海男さん、ここまではどうやって…?」

「見舞い共々まじぇっちに同行させてもらったのさ。今は飲み物を買いに行っているから、すぐに戻ってくると思うよ」

「…マジェコンヌさんと、うみおさん…(ぽわぽわ)」

「…ふしぎなこーけーかも……」

「そうかい?まあ、そうかもしれないね。…で、どうかな。訓練は、順調かい?」

 

 ちょっと上を向いて想像する二人の様子に、わたし達は苦笑い。海男さんも肩を竦め…てるように見えなくもない動きをし、それからカニバルフォームの事を訪ねてくる。

 その質問に、顔を見合わせるわたし達四人。当然、どうかと言われれば芳しくはない訳で…でも、それを誤魔化したって仕方ない。だからわたし達は正直に話し、それを海男さんは真剣な表情で聞いてくれた。

 

「そうか…うん、でも安心したよ。君達が、思っていたよりも前向きで」

「後ろ向きでいたら、今度こそイリゼさんに怒られてしまいますから。それに…今のアタシ達に、後ろ向きになっている時間なんてありません。まだまだカニバルフォームを使いこなすには、程遠いレベルですから」

「気丈だね、ゆにっちは。でもそういう事なら、適度な息抜き…というか、訓練以外の事も色々としてみるのはどうだい?単純な技術や試行回数の問題なら、確かにひたすら訓練するのも良いだろうが…その力は、心の部分も少なからず関わってくるのだろう?」

 

 真面目な顔で返すユニちゃんに、わたし達もこくんと首肯。こういう事を言うと、無理をするな…って返されちゃうのかもしれないけど、実際今は頑張らなきゃいけない。頑張ろうって気持ちもあるし、ペースだって対策の関係でどうしても落ちてしまうから。

 そして実際、それを聞いた海男さんが口にしたのは「息抜き」という言葉。だけどそれは、単に無理するなって話じゃない。カニバルフォームの事を考えた、一つの提案で…わたしは思った。確かに、それもそうなのかも、って。

 

「心の部分は、ただ訓練を繰り返すだけじゃ向上するとは限らない、か…女神の事、よく分かってるのね」

「…いやいや、オレは話から思った事を言っただけさ。けれどそうだね…もしかしたら、うずめの側にいた事で、そういう思考が鍛えられたのかもしれない、ね」

「海男さんは、本当に大人っぽいです〜」

「うんうん、大人ー、ってかんじよねー」

「わたしも、そう思う(こくこく)」

「ありがとう、それは褒め言葉として受け取っておくよ」

 

 自慢するでもなく、かといって卑下する事もなく、ただ穏やかな笑みを浮かべて評価を認める海男さんは、本当に大人って感じ。そんな海男さんと話していたからか、わたしの心も訓練直後の状態から少し落ち着いてきていて、わたしは会話をしつつ考える。まだもう少し訓練するか、それとも今日はこの位にしておくかって。

 体力的には、まだ余裕がある。でも制御出来なくなったのは長時間の使用が原因かもしれないし、当然わたし達には仕事もある。だからわたしは、どっちにするか迷って……そこで入る、一つの連絡。

 

「……?あ、ごめんね皆。ちょっと連絡……」

 

 一度離れて連絡に出よう。そう思ってわたしが言う中、その後を追うように更に鳴った三つの音。それはユニちゃん、ロムちゃん、ラムちゃんからそれぞれ聞こえてきた着信音で……こういう場合、それだけでも連絡の内容は予想が付く。わたし達皆の端末が一斉に鳴ったとなれば…少なくとも、良いニュースとか情報じゃない。

 

「…いーすんさん。何か、あったんですか?」

 

 連絡の相手はいーすんさん。くろめさん達が、お姉ちゃん達が動いたのか。それとも別の次元で何か起こったのか。そういう方向の連絡だと考えていたわたしは、すぐ本題に入れるような形で訊き……いーすんさんは、言う。

 

「リーンボックスからの連絡です。生活圏外の一角に、武装集団と思しき存在が確認されました。まだ、断定は出来ませんが……情報からして、犯罪組織の残党かと思われます( ̄^ ̄)」

 

 返ってくる、いーすんさんの言葉。身元不明の武装集団という、無視の出来ない存在の報告。そしてそれは、もうその殆どがいない筈の…けれどわたし達が未だに撲滅する事が出来ない、ここ暫くは昏睡の件もあってかその影すら見せていなかった…犯罪組織の、残り香とでも言うべき存在に纏わる連絡だった。




今回のパロディ解説

・どこぞの蟲
モンハンシリーズに登場するシステムの一つ、導蟲の事。このシステムは画期的でしたねぇ。でも私の愛用スキル、捕獲の見極めが消滅したのは複雑な気持ちです…。

・某アイアンなプリズナーさん
キングダムハーツ バースバイスリープに登場するアンヴァース(敵キャラ)の一つの事。でも別に顔とか下半身全体が、特殊な拘束具で覆われてるとかじゃないですよ?

・某富野さん節
アニメ監督、富野由悠季さんが手掛ける作品における、独特なフレーズや言い回しの事。でも文字に起こすなら、「なんのぉ!」というより「なんとぉ!」…ですね。

・「〜〜オレが来た!〜〜」
僕のヒーローアカデミアに登場するキャラの一人、オールマイトこと八木俊典の代名詞的な台詞の一つのパロディ。海男の声で言った場合、それはそれで格好良さそうです。
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