超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第百十九話 混戦、その果てに

 リーンボックスに現れた犯罪組織の残党と、リーンボックス及びネプギア達の取った対処。それを私が聞いたのは…決定が下され、既に状況が動き出した後。要は、事後報告。

 

「…あ、いや、事後っていうか…事中?まだ事が済んだ訳じゃないし…」

 

 言葉のちょっとした部分が気になりつつも、ベットから降りて立つ私。知らぬ間に決定が下された形にはなったけど…それに関して、これといった不満はない。まだ怪我の癒え切っていない私を気遣ってくれたからかもしれないし、私も皆の判断には同感だから。

 むしろ気になるのは、武装集団の事。皆の間でも意見が交わされてたみたいだけど…私からしても、確認された戦力には違和感がある。

 

(罠か陽動か…確かにそんな気はするけど、罠なら強力な何かが、陽動なら別で動く本隊があるって事になる…。…今の残党に、それが出来るだけの余力があるの…?これもしかしたら、私達が想像しているのとは、全く別の何かがあるんじゃ……)

 

 ぽてぽてと窓際まで歩いていき、窓枠へと軽く両腕をかけながら、私は考える。

 嘗ての犯罪組織なら、陽動と見て間違いない。決め付けるのは良くないけど、可能性の一つとして考える事に違和感はない。…でも、今の残党ははっきり言って、画像に写っていた戦力ですら用意するのは一苦労、掻き集めて何とか…ってレベルだった筈。それを用意した上で、更に本命を…最悪この戦力を損失しても良いと考えられるような何かを隠し持っているというのは、やっぱりどうにも信じ難い。それならむしろ、残党ではなく全く別の、ただの(って表現するのも変だけど…)武装集団だって考えた方がまだ納得出来る気すらする。

 でもまあ、この場じゃ推測までしか立てられない。信じ難いと言ったって、ひっそり戦力を拡充していた可能性だってゼロじゃないし、そういう事も含めてネプギア達の判断は妥当だと思う。…となれば、後は……

 

「…私も早く怪我を治して、必要な時に必要な事が出来るようにしないとね…。…うん、昨日より飛んだりはねたり動けるようにはなってる」

 

 窓の側から少し離れ、右脚を浮かせた状態で軽くジャンプ。まだこうやって動くと何ヶ所か痛いし、普段よりは若干動きも悪いけど、一先ずは動ける。治療を受けて目が覚めた直後は流石にベットから出られなかったし、そこから考えれば回復のペースはかなりの快調。

 そう。今起こってる件もだけど、私には皆の修練に付き合う役目もある。他ならぬ私自身が止めかけていた四人を再びその気にさせたんだから、ちゃんと付き合ってあげなきゃ無責任。それに、四人の為にも、皆の為にも…私は皆の、力になりたい。私を信じてくれた皆の、思いに応えたい。

 

「…よし、その為にも張り切って治さないと!…って、治すんだったら安静にしているべきだよね…はは……」

 

 これなら私がするべきなのは、このやる気を一切必要としない事。何ならむしろ、やる気が仇になりかねない事。だから私は苦笑いし……今の私のテリトリー、ベットの中へと戻るのだった。

 

 

 

 

 ねぷっち達による、犯罪組織残党の制圧。それにオレが同行したのは、あの犯罪神を信奉し、残党となってまで活動を続ける人間を直接見ておきたかったから……とかじゃあ、勿論ない。多少の興味はあるけれど、わざわざ出向く程の価値はない。

 なら何故、同行したのか。…それは、作戦を円滑に進める為。強力ながらも下手な敵以上に厄介なこちらの最大戦力を、上手く目標へとぶつける為。その為には、直接の言葉と、その場その場の適切な判断が、必要不可欠。

 そして実際、上手くいった。思っていた以上に上手く事が進み、こちらの最大戦力…キセイジョウ・レイが、原初の女神と激突した。…ああ、やっぱり……計画通りにいくのは、実に気分が良い。

 

「ほらほらほらぁ!逃げるのはお上手みたいですけど、それで勝てるつもりですかぁ?」

 

 オレでも嫌悪感を抱くような方法で以って原初の女神を自らの戦闘に引き入れたレイは、遠近織り交ぜた攻撃で苛烈に彼女を攻め立てる。それを原初の女神は非常識にも程がある機動で悉く避けるが、レイもまた桁外れの速度で彼女を追い掛け、攻撃を続行。電撃が、衝撃波が何度も空中を裂き、その余波が何度も地面を叩く。

 

「……っ…分かってはいたけど、ほんとに無茶苦茶ね…!」

「ちっ…貴方達、死にたくなかったら残ってる機体にシールド張らせて、その後ろに隠れなさい!どうせ私達は信用出来ないんでしょうッ!」

「なっ、う…い、言われなくたってそうするつもりだよ…ッ!」

 

 言うまでもなく、レイに「周りを気にする」なんていう思考はない。御構いなしに放たれる攻撃は、当然こちらにも幾度となく飛び…それをねぷっち達が斬り払う。

 無論、避けられない訳じゃない。所詮は流れ弾に過ぎない攻撃なんて、ねぷっち達の実力なら回避は容易。…けれどここには、彼等…犯罪組織の残党がいる。彼等がいる限り、ねぷっち達は守る事を優先するだろうし……

 

「くろめももう少し下がってろ!」

「…っと、悪いねぶらっち」

 

 原初の女神に避けられそのまま下方へ、オレがいる場所へと迫ってきた魔力の刃を、横から戦斧で叩き割るぶらっち。一応オレだって今のは見えていたけれど…わざわざ助けてくれたんだ、素直に従っておくとしよう。

 

「…………」

「ほんっと避けるのはお上手でちゅねー。でも何よその動き、もしかして忘れちゃった?お婆ちゃんボケちゃって、戦い方を忘れちゃいましたかー?」

 

 左右から襲いくる電撃を原初の女神が後ろへ避ければ、一気に距離を詰めたレイが杖を短槍の様にして素早く一突き。それを原初の女神が手にしたバスタードソードの腹で滑らせ逸らしたのも束の間、その勢いのまま更に距離を詰めたレイは膝蹴りを打ち込み…されどそれも、彼女は避ける。逸らした杖とは逆側へ半身となり、流れるようにすれ違う。そして原初の女神は上昇し、その後をレイの放つ魔弾が追う。

 余裕綽々で煽るレイだが、その動きに甘さはない。女神でなければ目で追う事も叶わない、女神ですら対応し続けるのは困難であろう攻撃をいとも簡単に連発し、原初の女神もそれを悉く回避し凌ぐ。予想通りの、横槍など許さない別格の戦いが繰り広げられ……だが次第に、オレは違和感を覚え始める。

 

(…なんだ?この、感覚は……)

 

 振り下ろされる杖と、掲げられた剣が衝突。レイと原初の女神はせめぎ合い、至近距離で視線がぶつかり、次の瞬間両者は弾かれるように後方へ。そこから即座にレイは動き、下がる原初の女神を追撃する。

 ここまで原初の女神は防戦一方。だが身を守るので精一杯という様子はなく、むしろ敢えて防戦に徹しているような気すらする。その意図は分からないが…違う。今オレの中にある違和感の正体は、これじゃない。

 なら、何か。どこまでも自分本位なレイと、意図の読めない原初の女神。残党を守るねぷっち達と、さっさと逃げればいいものをいつまでもキラーマシンを盾にして残っている残党。一体どこに、何に違和感を覚えているのか。

 

「…いや、待てよ……?」

 

 意識の外、無意識の領域で何かに気付くオレの思考。それが何かは分からないが、確かにオレの無意識は違和感の正体に気付いた。そしてそれをはっきりさせるべく、オレはより視界を広げて思考を重ねる。

 二人の女神は交戦を続ける。上向きの流れ弾はそのまま空へと消えていき、下向きの流れ弾は地面へ落ちて大地を抉る。危険な攻撃はねぷっち達が捌き、その甲斐あってか残党達は構成員どころかシールドを張るキラーマシンすら全機が健在で……

 

(……健在?健在、だと?幾らねぷっち達が捌いているとはいえ、あんな機体の装備でレイの攻撃をそう何度も防ぐなんて不可能な筈。…なら、まさか…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…?)

 

 そんな馬鹿な。そんな筈はない。レイが残党だけは気を付けているなんて、残党の方へだけは流れ弾がいかないようにしているだなんて…そんな事は、あり得ない。それは、断言出来る。

 なら、何故だ?偶然、偶々、一度足りとも残党にだけは飛んでいないと?残党の中に、不可視の壁を張る能力者か何かがいるとでも?…馬鹿馬鹿しい、それこそあり得ない。だがそれならば、一切流れ弾が、見ている今も尚一発足りとも飛んでいないこの状況に、現実的な理由なんて……

 

 

……いや、ある。まだ一つ、可能性を持った存在が残っている。

 

「……っ…やってくれるじゃないか、原初の女神…」

 

 レイからの猛撃に真っ向から対応し、以前空を高速で疾駆する原初の女神。もしも彼女が、そうしているとしたら?残党に流れ弾が飛ばないよう、立ち回っているとしたら?

…それならば、むしろ納得がいく。レイへの反撃より、残党の安全を優先しているという事なら、防戦一方なのも理解が出来る。…そういう思考を、戦い方を出来る点に目を瞑れば。

 

(…だが、それならばやはり君は愚かだ。力尽くで打ち払うでもなく、逃がすでもなく、ただ凌ぐだけの戦い方で…一体いつまで耐える気だい?)

 

 ふっと小さく息を吐き、オレは意識してクールダウン。オレやねぷっち達の事は眼中にもないような、あくまで「勝てる」前提で動いてるようなスタンスは気に食わないが…オレの見立てが正しいのなら、彼女は防御に徹すれば流れ弾が残党へ行かないようにする事が出来ても、そうしなければ今程の余裕は保てない筈。保てるのなら、反撃をしている筈なのだから。

 そしてそうなれば、どちらが先に集中力やリソースが切れるかの勝負となる。リソース…シェアエナジーの方は彼女の配給源が分からない以上何とも言えないが、集中力においてレイは無差別に、好き勝手に攻撃をしている一方、原初の女神はその対処を、常に位置取りへ気を配りながら行わないといけない以上、どちらがより大きな負担を強いられているのかなんて、火を見るよりも明らか。

 

「…とはいえ、万が一という事もあるか…皆、レイの援護は出来そうかな?」

「…援護?彼女はそれを望んでいまして?」

「望んでないだろうね。けれどこれは決闘でもなければ、オレ達は彼女の親衛隊という訳でもない。…それとも、彼女の戦場を汚すのは嫌かい?」

「まさか。…けど、援護って言ってもあのレベルとなると一筋縄じゃいかないわよ?それに横槍を入れられた腹いせでこっちを、残党を狙われたら堪ったものじゃないわ」

「大丈夫、そういう時はオレがきちんと宥めるさ。それに…何もちゃんとした援護をする必要はないんだ。ほんの少し、一瞬でも原初の女神の気を逸らせれば、彼女の中の流れを僅かにでも途切れさせられれば、それで良い」

 

 構えたまま、背中越しに言葉を返してくるねぷっちと三人に向けて、オレは言う。

 援護とは言ったけど、別にレイを助ける形にならなくてもいい。むしろ下手に助けようものなら、それこそねぷっちの懸念している事になるだろう。だからこそオレが求めているのは、彼女へ対する余計な情報。集中状態を遮るノイズ。勝負とは、高度になればなる程些細な揺らぎでも大きな影響となるものであり…あんな言動をしていても、レイの戦闘能力は本物。それがたとえ刹那程の時間でも、隙があれば彼女はきっと見逃さない。

 不意の攻撃で気が逸れるのは、レイも同じ事。逆にレイが隙を晒してしまう事を避ける為、タイミングを測るべくオレは四人へアイコンタクト。視線を地上から空へと戻し、再び両者の攻防を追う。

 

「ちッ…ちょっとぉー?そういうウザったいだけの行動は止めてもらいますー?やる気がないなら、さっさとサンドバッグになるとかしてさぁッ!」

 

 実際に戦うレイも原初の女神からの攻撃がない事に気付いたのだろう。変わらずの煽りをぶつけながらもその声音に苛立ちを籠らせ、突き刺すように幾条もの電撃を発射。その全てを原初の女神が斬り払った瞬間、裂かれた電撃はそこから無数に枝分かれして、全方位へと迸る。

 ねぷっち達はその場で防御、オレもキラーマシンの残骸の影へ。しかしこの攻撃は流石に原初の女神も予想し切れなかったのか、拡散した電撃の数本が残党達の方へと伸び……それを彼女は撃ち落とす。視線を向け、そちらに作り出した剣を放って。

 

(ふっ…流石は原初の女神。その程度の攻撃でも無視は出来ないか。或いは、理解の及ばない科学技術は信用出来ないか。まあ、何れにせよ…もらった…ッ!)

 

 数瞬かかったかどうか程度の、僅かな隙。恐らく今レイが仕掛けても、寸前で対応が間に合うのであろう…本当に些細な、攻防の隙間。

 だがそこに、そよ風程度でも更に気を逸らすものがあったら?気が逸らされるような、異物が紛れ込んだら?…そうなれば、たったそれだけで勝負は決する。その瞬間、原初の女神は……チェックメイトだ。

 オレが気付いているんだから、ねぷっち達がこのチャンスを見逃す訳がない。直感的にそう感じたオレの予想通り、既に動いているねぷっち達。そして……

 

『……──ッッ!?』

 

──次の瞬間、原初の女神の動きは止まった。宙を裂いた光芒によって、これ以上ない程に、完全に止まり……だがそれは、ねぷっち達の攻撃によるものじゃない。

 攻めるなら、最大の脅威を排除するなら、絶好の瞬間。にも関わらず、レイは動かない。ねぷっち達も、止まっている。何故ならそれは……この場にいた、誰のものでもない攻撃であったから。

 光芒に貫かれたのは、シールド非搭載のキラーマシン。その斜め上空、光芒を遡った先にあったのは……一体の鉄騎。

 

「な……ッ!?」

 

 黒を基調に緑と金の色を併せ持ち、その重厚さとは裏腹に安定した滞空を見せる、鉄の巨人。その存在に、べるっちは目を見開き……鉄騎が両腕部に備える二門の砲に、再び先の光芒と同じ光が灯る。

 

「新手か…!…だが、この感覚は……」

「…ふーん、よそ見?私相手によそ見なんてぇ…随分余裕かましてくれるじゃないッ!」

 

 その瞬間、爆ぜるような勢いで上空の鉄騎へ猛進する原初の女神。だがその動きは不意に止まり、直後に彼女をレイが強襲。真横からの突進は彼女を巻き込み、大きく距離を引き離す。

 

「ちっ、邪魔を……!」

「あはっ、そうそうそういう顔を見たかったのよ。調子乗ってるあんたの顔が、そうやって歪むのをねぇッ!」

 

 嬉々として嗤うレイを原初の女神は受け流すが、レイも即座に身を翻し彼女を追撃。彼女はこれまでよりもより荒く、縦横無尽に飛び回りながら連撃を仕掛け、その間に鉄騎は二度目の攻撃を放ち、光芒がキラーマシンのシールドを叩く。

 その直後に両腰から離れる、二基の端末らしき武装。それ等は左右側面へと回り込み、光芒の防御に専念しているキラーマシンを機銃で攻撃。残党がその場にいるが為に動けないキラーマシンは少しずつ削られていき…だがそこへ、割って入っていくのはべるっち。

 

(…不味いな…折角残党は彼女の足枷になっているというのに、このままだとこの状況が崩れる…)

 

 意地でも張っているのか頑なに逃げない残党に、自分の力で守る事に終始している原初の女神…どちらも想定していた事ではないとはいえ、折角の状況が崩れてしまうのは惜しい。べるっちはあの機体のパイロットに話を掛けているようだけど…ここは、楽観視をする場面じゃない。

 このままだと、崩れてしまう可能性がある。ならば、どうするか。なら…崩れる前に、最大限利用する…!

 

「皆、もう暫く流れ弾の処理を頼むよ」

「え…く、くろめ……?」

 

 のわっちからの声を背で受けながら、オレは残党の下へ。完全に空へ意識を奪われている彼等はオレの接近に気付かず、声を掛ける事で漸く気付く。

 

「お前は…な、何の用だ…」

「いや何、君達は気付いているかい?…君達は今、あの白い髪の女神に守られている。彼女がもう一方からの攻撃が君達に及ばないよう、立ち回る事でね」

「……!…確か、オリジンハートって名前だったよな…くそっ、お情けかけてやるってか…!」

「ちっ…だから、お前は何だってんだ。犯罪組織が女神に守られてる状況を、せせら笑おうってか?」

「まさか。ただ、気になっただけさ。今も尚犯罪神の信徒たらんとしている君達が、この状況に甘んじるのか、それとも君達の言う『情け』を跳ね除け、その意思を貫くのかを…ね」

 

 ほんの少し口角を上げ、意図的に煽りの成分を含めて、オレは言う。どうも彼等はもう一人の方の彼女と勘違いしているようだけど…それはこの際関係ない。

 甘んじるか、意思を貫くか。現状を知り、選択を迫られた彼等は、それぞれに顔を見合わせる。それはオレが狙っていた通りの反応で、全く彼等は分かり易い。一つ情報を与え、前者には不満を、後者には心地良さを感じる言葉を使うだけで、心を惑わせてくれるんだから。

 

「そういう傲慢さが、オレは気に食わないんだ!お前等もこのままでいいのかよ!」

「そうよ!女神の保護なんて不要だって、私達が見せてやろうじゃない…!」

(ふふっ、そうだ…それでいい)

 

 怒りを燃え上がらせる残党達。この場で我が身可愛さに走らない辺りは大したものだけど…いや、大したものだで留めておこうか。彼等はオレに利をもたらそうとしてくれてるんだから。

 反抗心は伝染する。再び手にした火器を掲げ、闘志を燃やす残党達。そうして彼等は残ったキラーマシンへと指示を出し……

 

「…待てよ。そういうテメェは何者だ。そうやって俺等を煽って、どうしようってんだ?」

 

 だが、都合の悪い事にまだ冷静な人間もいたらしい。そして彼は、オレへと銃を向けてくる。

 

「…だから、言ったろう?オレはただ、君達の選択が気になるだけ……」

「そうかい。…ところで、テメェも見たとこ女神の仲間だろ?って事は、俺等にとっては敵な訳だ。テメェは、俺等がこれを威嚇の為に用意したとでも思ってんのか?」

「…へぇ、言うね。なら、君は…そんなもので、オレに勝てるとでも?」

「さあな、けどあのあり得ねぇ戦闘やってる女神よりは…よっぽど勝てそうってこった!」

「ちっ、これだから半端な賢しさは…ッ!」

 

 敵意と共に引かれるトリガー。放たれる弾丸。だがそうくると分かっていたオレは一瞬早く脚を振り出し、銃を真横に蹴り飛ばす。

 それによって、別の者からも向けられる銃口。これは良くない。この程度怖くも何ともないが…全体の敵意がオレに向いてしまうんじゃ、先の扇動が水泡に帰す。

 

「くろめ!?貴女、何のつもり!?」

「……!パープルハート…!」

「…ねぷっち…(タイミングが悪い…君が来たら、それこそもう対立がこっちに向いてしまうじゃないか…)」

 

 オレの前へ降り立ったねぷっち。こうなるといよいよ策は瓦解し、次の案を練らなきゃいけない。

 

「…心配ありがとう。けど、君の存在が彼等を更に刺激するとは思わなかったのかい?」

「刺激って…銃を向けられている貴女を放置出来る程、わたしは冷淡じゃないわよ。それに、向こうの動きも何かおかしいわ…!」

「おかしい……?」

 

 つい、口を衝いてしまった皮肉っぽい言葉。これは良くない、とすぐに反省するオレだけど…その思考を止めたのは、ねぷっちの言葉。

 おかしい。それは何がおかしいのか。どうおかしいのか。ねぷっちの声音から無視していいものではないと感じたオレは、視線を空へと上げ……その次の瞬間、猛烈な勢いで飛来する白い影。

 

「あっはぁ♪もらったわよ、白髪女神ぃいいいいぃぃッ!!」

(なんだ、おかしいも何も遂にレイが優勢に立っ……──いや、待て…ッ!これは、まさか……ッ!)

 

 吹き飛んできたのは原初の女神。背中から飛来した彼女に対し、レイは杖に電撃を纏わせ、表情全体が歪む程の笑みを浮かべてその後を追う。

 ここまでで最大のチャンス。誰が見ても分かる程の優勢。その光景に、オレも自然と笑みが浮かびそうになり……だが、気付いた。ねぷっちの言うおかしさ…その、本当の意味に。

 あぁ、そうだ。おかしい。おかし過ぎる。あの機体の介入があったとはいえ、状況はまだ変わっていない。均衡が崩れるような要因はどこにもない。なのにレイが優勢?原初の女神が押されている?…いいや違う、これは…この、状況は……ッ!

 

「──散れ、出来損ない」

「しまっ……」

 

 電撃、いや雷撃が如く振り抜かれるレイの一撃。だが原初の女神は直撃の一瞬前から瞬く間に立て直し、舞うような横回転で鮮やかに回避。その次の瞬間、回転が終わりこちらへと視線を向けた時、瞳に浮かんでいたのは冷たい光。

 しまった。そう思った時にはもう、彼女はオレの眼前にいた。手にした刃は、振り上げられていた。そして、反射的に口から溢れた声が一つの単語になるよりも早く、原初の女神の刃は振り抜かれ……

 

 

 

 

……──鮮血と共に、左腕が斬り落とされる。血を撒き散らし、地に落ちる。

 

「……ッッ!……ぅ、あ…ぇ……?」

 

 咄嗟に、本能的にオレは左腕を、まだ残っている筈の二の腕上部を右手で掴む。……が、すぐに気付いた。オレに、全く痛みはない。それどころか…オレの左肩から先には、ちゃんとまだ左腕がある。

 

「…な、にが……?」

「……ッ…あ"ッ、ぐぅぅ……ッ!」

「……ッ!ね、ねぷっち…?」

 

 訳が分からない。斬られた筈の左腕はまだあり、なのに落ちているなんて、あり得る筈がない。…そう、オレが茫然とする中、聞こえてきたのはねぷっちの呻き。はっとして見回せば、いつの間にかオレは尻餅を突いていて……目の前で、ねぷっちが蹲っている。両膝と右肘を突き、震えるねぷっちの身体に……左腕は、ない。

 

「…よ、くも…ネプテューヌをぉおおおおおおおおッ!!」

 

 次に聞こえたのは、のわっちの怒号。邪魔になるものは全て吹き飛ばさんばかりの勢いでのわっちは原初の女神に斬り掛かり、掲げられた彼女のバスタードソードとせめぎ合う。

 

「…な、何を…して……」

「……ッ…ガラティーンと…あの機体のパイロット達とは話が付きましたわ。残党は軍に任せ、退きますわよ……」

「退く…?…べるっち…まさかオレに、また逃げろと……」

「寝惚けた事言ってんじゃねぇよッ!ネプテューヌは、お前を助ける為に斬られたんだぞ!?お前はそれを、放置するって言うのかよッ!」

「……っ!…す、すまない…ごめん、ねぷっち……」

 

 戦闘の状況は把握出来る。でも目の前の事が理解出来ない。斬られた筈のオレが無事で、斬られてない筈のねぷっちが蹲っていて、しかもそのねぷっちの左腕はなくて、だから……。

…そう、後から思えば混乱していたオレを我に帰らせたのは、ぶらっちの怒鳴り声。その声で何が起きたか…ねぷっちがオレを助け、そのせいでねぷっちが斬られたんだと分かったオレは、二人からの声に頷く。

 弾き返され、すぐ近くへと飛んでくるのわっち。のわっちはすぐ再度の攻撃に移ろうとしたけど、ねぷっちの姿を見ると拳を握り締め、その前へと立ちはだかる。べるっちとぶらっちは、立ち上がろうとするねぷっちを抱え、後退する。そしてオレも、後に続く。どうでも良いとばかりに戦闘を続けるレイ、こちらを一瞬見やった後に対応を再開する原初の女神……けれど今オレの頭の中にあるのは、オレを助ける為にねぷっちが斬られたという、その事実だけだった。




今回のパロディ解説

・「〜〜昨日よりは飛んだら〜〜なってる」
ジョジョシリーズに登場するキャラの一人、ジャン=ピエール・ポルナレフの台詞の一つのパロディ。…イリゼはカーテンじゃなくて、ちゃんと包帯巻いてますからね?

・「〜〜彼女の戦場を汚すのは嫌かい?」
機動戦士ガンダムUCに登場するキャラの一人、アンジェロ・サウパーの代名詞的な台詞の一つのパロディ。でもレイでガンダムっていうと、クローンの方を連想しますね。

・反抗心は伝染する
ダンガンロンパシリーズに登場するキャラの一人、江ノ島盾子の台詞の一つのパロディ。まあ、絶望や反抗の意思に関わらず、気持ちって伝染するものですよね。
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