超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第百二十二話 そして向かうは姉との激突

 一体何があったのかは分からない。でも、その日を…より正確に言えば、その日の前日を境にネプギア達の修練は飛躍的に成果を出すようになった。めきめきと伸びる能力、見ていて安心を感じる安定性、課題としていた二つの要素をどちらも、四人の全員が掴んでいき、結果が伴った事により、四人のやる気も更に強く、増していった。そして……

 

「はぁああああぁぁッ!」

「……ッ…!」

 

 迫るネプギア、振り出される一撃。後退していた私はその一太刀を受け止めきれず、衝撃と共に弾かれる長剣。即座に私は圧縮シェアエナジーの爆発で自身を飛ばす事によって一度距離を開け、そこから反撃に移ろうとするも…その私の動きを止める、正面上方からのユニの銃口。ロムちゃんとラムちゃんも、左右から私へと狙いを定めていて……万事休す。今の私が思い付く策、取れる手段、そのどれを試したとしても…この状況は、覆らない。

 だから私は、ふぅ…とゆっくりと吐息を漏らし…両手を挙げる。

 

「…参った。完敗だよ、四人共」

 

 四人へと向けて示す、降参の意思。修練の仕上げとして、尚且つ今の四人を見極める為に、私は改めて一対四の模擬戦を行い……そしてその結果、私は成す術なく負けた。たった数分で、動きも策も完全に封殺されて、徹頭徹尾一方的なまま…模擬戦は、終わった。

 

「ありがとうございます、イリゼさん。でも、これは……」

「四人がかりだったんだから、当然だって?…ううん、仮に一対一でも、私は負けていたと思うよ。その場合はもっと善戦出来てただろうし、何度戦っても絶対負けるとは言わないけど…断言するよ。今の四人は…強い」

 

 女神化状態に戻って、得物を下ろすユニ。確かに一対四なら、かなり前から…それこそ嘗ての守護女神奪還作戦の時点で、四人は私に勝ててただろうけど…個々の力が、あの時と今とじゃ段違い。あの時ならまだ、奇策や駆け引きでもう少し戦えていただろうけど…今はその殆どが、恐らくは力でねじ伏せられる。通用する策があるとすれば、それはもうわざと攻撃を受けて、自分から重傷を負って、それに皆が茫然としたところを狙う…なんていう、本末転倒なもの位。

 

「イリゼちゃん…なら、これなら……!」

「…うん。今の四人なら、きっと勝てるよ。勝てるし…取り戻せる」

「……!ラムちゃん、ネプギアちゃん、ユニちゃん…!」

「うん…っ!やっと、やっとわたし達……!」

 

 期待と興奮の籠った言葉に、私は首肯。それを聞いた事でロムちゃんはぱぁっと表情を輝かせ、ネプギアもそれに強く頷き、四人は全員がほぼ同じタイミングで動いて集まる。…本当に、ネプギア達四人は仲が良いね。

 

(…でも、油断は駄目だよ。ネプテューヌ達を取り戻す事は確かに目的だけど、それを果たせば万事解決という訳じゃ……っていうのは、また後でいいかな…)

 

 指導者として、ちゃんと言うべき事は言わなきゃ。…そう思った私だけど、喉元まで出かかった言葉を私は飲み込み、代わりに喜ぶ四人を見つめる。…だって、四人は本当に喜んでるんだからね。大切な姉を取り戻したくて、その為に頑張ってて、でも中々上手くいかなくて、それでも頑張って、それでやっと可能性が形になったんだもん。それなら喜んで当然だし、注意は今じゃなくても出来るもんね。

 

「本当に…本当にありがとうございます、イリゼさん!わたし達、イリゼさんがいなかったら、きっともっと前に諦めてました。イリゼさんが、いてくれたから……」

「ありがと、ネプギア。でも、私だって感謝してるんだよ?四人の頑張る姿、諦めない姿は、見てるだけで力をくれるんだもん。そういうところを含めて、やっぱり皆も女神だよ。ちゃんと女神してるよ、四人は」

『イリゼ(さん・ちゃん)……』

「…じゃあ、帰ろうか。四人が完璧な状態になった事を、皆に伝えて……準備、しなきゃだからね」

 

 四人からの、感謝の籠った視線。それが少し照れ臭くなった私は、誤魔化すように四人へと言う。

 新たな力は、ネプギア達のものとなった。ならば当然、次の目標は本来の目的である、ネプテューヌ達四人を取り戻す事。でもそれは、力があるだけじゃ叶わない。力だけじゃなく、思いも…的な意味じゃなく、極当たり前な理由として…まず四人を、見つけなくちゃいけないから。

 

(各国でも常に情報収集をしてもらってるとはいえ、正直このままで見つかる可能性は低い。あの大陸のどこかに隠れ家があるなら、四大陸の中を探してても当然見つかる訳がない…となれば、やっぱり…こっちから向かうんじゃなくて、何とかして誘き寄せるしかないのかな……)

 

 誘き出す形を取れれば、こっちに有利な場を選ぶ事も出来る。でもそれは「誘き出せるなら」の話であって、確実性がない。確実に誘い出せる『餌』が、私達にはない。

 ただまあそれも、どうしたものかと少しずつ会議は重ねてきている。別に私一人で考えなきゃいけない事でもない訳で…兎にも角にも、まずは帰らないと。

 

「皆、絶対お姉ちゃん達を取り戻そうね!えい、えい、おー!」

『おー!』

「お、おー…!…しまった、これ多分普通になった方がまだ恥ずかしくなかったパターンだわ……」

 

 元気良く拳を上げるネプギア達に軽く微笑み、それから私達はプラネタワーへ。まだ安心するには早い、取り戻した気になるなんて取らぬ狸の皮算用も良いところだけど…頑張った結果の今だもん。今日は皆に、何か作ってあげようかな。

 

 

 

 

 サクッとした生地と、しっとりとしたクリームの舌触り。食べれば口の中には甘さと温かさが広がって、思わず頬が緩んでしまう。

 

「はふぅ…おいひ〜…」

「ほふぅ…(さくふわ)」

 

 美味しそうに顔を綻ばせ、感想を呟くラムちゃんとロムちゃん。うんうん、とわたしもそう言う二人に頷き、二口目を…イリゼさんの作ってくれた、桃のクリームチーズパイを、口に運ぶ。

 

「ふふっ、喜んでくれて何よりだよ。これは四人の分だから、まだまだ食べてくれて良いからね」

「はいっ!…あ、じゃない…ありがとうございます、イリゼさん。最後まで訓練に付き合ってくれて、しかもパイまで作ってくれて…」

「いいのいいの。…あ、でも多かったら無理しなくていいからね?その場合は取っておいてあげるから」

 

 訓練を始めてから今に至るまで、イリゼさんにはお世話になりっ放し。なのにイリゼさんは、感謝を求めるどころかむしろ嬉しそうな顔をしていて…これじゃあまるで、わたし達が何かをしたみたい。

 

「…これは、何が何でもお姉ちゃん達を取り戻さなきゃ…成功させなきゃ、いけないわね」

「だね。これだけ色々してもらったんだもん、それだけの結果は出さないと…」

「ネプギアちゃん?ユニちゃん?なに話してるの…?」

「ないしょばなし?」

「あ、ううん何でもないよ」

 

 肩を寄せてきたユニちゃんの言葉に、わたしは首肯。何かをしてもらったらお返しをするのが礼儀だけど、わたし達がイリゼさんに教えられる事なんてそんなにないし、お菓子作りだってイリゼさんの方が上。なら、してくれた事に…その思いに報いるのが一番のお返しになるし、そうしなきゃって気持ちで心も引き締まる。

 とはいえ、それを今この場ではっきりと言ったら、逆に「無理しなくていいからね?」とイリゼさんに気を遣わせてしまう。だからわたしは、追求されないよう話を逸らす事を考え…頭に浮かんだのは、さっき行った会議の事。

 

「…イリゼさん。やっぱり、浮遊大陸で何か大きなアクションを起こす事が、一番可能性が高いんでしょうか…」

「え?…うん、そうだろうね。わざわざ犯罪神の存在を利用してまで顕現させた大陸だもん。ただの巨大な拠点…って事はないと思うよ」

「ねーねー、それならやっぱりバクゲキじゃだめなの?」

「炙り出すって事?まあ確かに、今のアタシ達なら迎撃を正面突破して、その上で広範囲を焼き払う位出来ると思うけど…それで出てきてくれるかしら。すぐ出てきてくれれば良いけど、そうじゃないならアタシ達はそこそこ疲労した状態で戦う事になっちゃうわよ?」

「それにそもそも大陸にいなかった場合、十分に待ってから狙われる可能性もあるね。…反応弾とか、DEクラスの攻撃を纏めて撃ち込んだりとか出来るならまた別だけど……」

『…………』

「…え、皆?」

『……出来る、かも…?』

「えぇぇッ!?いや冗談だよ!?流石に大陸丸ごと抹消するとか、出来るとしても止めてね!?」

 

 目を白黒させるイリゼさんに、わたし達は苦笑い。…別にこれは、まるっきり冗談だって訳じゃないけど…流石にやらない。そんな事して浮遊大陸が崩れて、万が一にもそれが四ヶ国の生活圏に落ちちゃったら一大事だもんね。

 

「…ご、ごほん。とにかく浮遊大陸で何かを、って考え方は間違ってないだろうけど、爆撃は色々とリスクがあるね。誰か一人がやって、注意を引き付ける…みたいな、状況によっては有用にも働きそうな案ではあるけど」

「…逆に、誘き寄せる案なら何があるでしょうか。さっきも良い案は出てこなかったとはいえ、誘き寄せるっていう発想自体は悪くないんですよね?」

「うん、『誘き寄せられるのなら』こっちの方が良い…って感じだね。浮遊大陸は向こうのホームグラウンドな以上、どうしたって向こうが有利になるし」

「でも、おねえちゃんたち…どうしたら、来てくれるかな…?」

 

 むむむ…と口に出しそうな顔で考え込むロムちゃん。応じるようにわたしも考えるけど、これだって案は浮かんでこない。もしこれが普段のお姉ちゃんなら、有名なお店の数量限定プリンとかでつれそうな気はするし、ベールさんなら…まぁ、わたし達の『呼び方』を変えれば、それだけで来てくれそうな気もするけど…流石にそういう方法じゃ無理だと思う。というか、それで成功しちゃったら…うん、それはそれで何とも言えない気分になるね…。

 

(誘き出すだけなら、喜ぶ事じゃなくて、困る事でも…放置出来ない事をするって手段も、あるにはある。…けど……)

 

 具体案がある訳じゃない。でもきっと、その方向で考えて浮かぶのは、女神としてやるべきじゃない方法。守護者として、取っちゃいけない手段。…だから、それは選べない。

 考えてはみるけど、良い案なんて出てこない。さっきだって考えたんだから、然程時間が経っていない今考えたって良い案が出てくる望みは薄い。…でも、考えなきゃ案は生まれない。見つける為には、考えるしかない。だからわたしは更に捻って、物理的にも首を捻って……

 

「…皆、ちょっと良いかな」

『うわぁッ!?』

 

 次の瞬間、不意に後ろから聞こえたのはわたし達の誰でもない声。驚いたわたし達が、びくぅ!…と揃って反射的に振り向くと……そこには、いつの間にか大きいお姉ちゃんがいた。

 

「あ、ね、ネプテューヌ…来てたんだ……」

「あ……ご、ごめんね。もしかして、驚かせちゃった…?」

「び、びっくりした…(どきどき)」

「も、もー…いきなり声かけないでよね……」

 

 胸に手を当てている二人からの言葉を受けて、あはは…と頭を搔きつつ大きいお姉ちゃんは笑う。それはお姉ちゃんもよくやる、「やっちゃったなぁ…」って感じの顔で…だけど、何か違う。雰囲気というか、声音というか、はっきりとは言えないけど…単に声をかけるのに失敗したというだけじゃない、別の何かがあるような気もする。

 

「それで、どうかしたの?…あ、パイ?このパイは四人の分だけど、余った材料で別の簡単なものを作ったから、もし良ければそっちを……」

「ううん、そういう事じゃなくて…聞いたよ、皆。修行、終わったんだってね」

「ふふん、そーよ。今ならおねえちゃんたちにだってかてそうなんだから!」

「…本当に?今なら、皆は…ちっちゃいわたし達を、止められる…?」

「……?そう、思う…ううん。わたし達は、そのつもりだよ。大きいお姉ちゃん」

 

 やっぱり何か、雰囲気の違う大きいお姉ちゃん。それにどこか、思い詰めてるような感じがあって…だからって訳じゃないけど、わたしは大きいお姉ちゃんからの訊き返しへ、言い直す形ではっきりと答える。思う、っていう曖昧な言葉じゃなくて、そのつもりだっていう断言で。

 

「そ、っか…うん、確かに今の四人は、そうなんだって感じの光が目にあるもんね…だったらわたしも、覚悟は決めなきゃ……」

「……大きいお姉ちゃん…?」

「…よし。ねぇ皆、皆は今、どうやってちっちゃいわたし達を取り戻すか…どうやってその状況に持っていくか、で話してたんだよね?」

「えぇ、そうですけど……」

「なら、そこはわたしに任せて。…今ちっちゃいわたし達がいる場所なら、拠点にしてる所なら、分かるから」

『……!』

 

 近くでも聞こえない位の小さな声で何かを呟いたお姉ちゃんは、それからふっと表情が変わり、わたし達へ訊いてくる。確認の様なその質問に、答えたのはユニちゃんで…返答を受けた大きいお姉ちゃんは、言った。お姉ちゃん達の居場所を、知ってるって。

 それは、正に今わたし達が求めていたもの。分かる訳がなくて、だからどうしようと悩んでいた事。それが分かるなら、物凄く助かる。…でも……

 

「…ネプテューヌ…どうして、それを……?」

「いやぁ、わたしここのところ不在にしてたでしょ?実はその間、旅で培った技術や知識を駆使して、ちっちゃいわたし達の場所を突き止め……って、言っても…流石に納得、してくれないよね…」

「…大きい、お姉ちゃん……」

「…ごめんね、皆。理由は後で、ちゃんと話すよ。だから、今は…わたしを信じて、くれないかな」

 

 もし本当なら、凄く嬉しい。けど、手放しでは喜べない。多くの人や情報網を用いても得られなかった情報を、大きいお姉ちゃん一人で…ってなったら、疑う事はしなくても、何か訳ありなんじゃないかと思ってしまう。

 それは大きいお姉ちゃんも分かっていたようで、取り繕いはすぐに止めて、遠回しに訳ありだって事を肯定。その上でわたし達の顔を見て、わたし達へと向けて言う。今は、自分を信じてほしいって。

 今は一刻を争う状況じゃない。説明だって、今出来る筈。なのにしないって事は、本当に訳が…ううん、きっと裏がある。それは間違いない。でも……大きいお姉ちゃんの言葉に対する答えは、初めから一つ。

 

「…勿論だよ、大きいお姉ちゃん。大きいお姉ちゃんが、信じてほしいって言うなら…わたしは、それを信じる」

「ネプギア…皆……」

 

 わたしは気持ちを、初めから決まっていた答えを、大きいお姉ちゃんへと返す。するとすぐにロムちゃんラムちゃんがうんうんと頷いてくれて、ユニちゃんも「アンタはほんと…」って感じで肩を竦めながらも首肯してくれて、わたし達四人の答えは揃う。

 そう。ちゃんと考えずに、ただ信じればいいってものじゃない。でも、大きいお姉ちゃんは信じる事が出来る相手。勿論、裏にある理由は分からないけど…信じてみなきゃ、それこそ何も分からないもん。

 

「…正直、今は大規模な何かが幸い起こってないだけで、こっちとしては色々綱渡りな状況である事には変わりないもんね。だったら分からない事があっても、一番の可能性に賭けてみたい。…多分他の皆も、こう思ってくれる筈だよ」

「イリゼまで…うぅ、心の友と心の友の妹ちゃん達と心も身体も大概一緒なもう一人のわたしの妹よーっ!」

「長い長い長い上にちょっとややこしい!ほぼ原型が入ってるのに元ネタとはかけ離れた感じになってるね!?」

「おぉー、長文突っ込み!流石は噂に名高いイリゼだね!」

「突っ込みで!?私突っ込みで噂になってるの!?それは素直に喜べない…って…ごほん。…話を戻すけど、流石に今すぐは行けないよ?ここまで来て焦って、それで失敗して勝ち目を失うなんて事になったら、それこそ万事休すなんだから」

「あっ、それはうん。……じゃあ、いつ出発する?わたしも同行するよ?」

 

 さっきまでの思い詰めたような雰囲気はどこへやら。元気になったお姉ちゃんの冗談にわたし達は苦笑いし…だけど、心は引き締まる。

 理由はどうあれ、最後の問題が解決した。取り戻す為の方法、それを実行する為の力、そしてお姉ちゃん達の居場所。だったら後は……取り戻すだけ。

 まずは残りのパイを食べて、その後はこの話をいーすんさんに伝えて、いつものように会議室へ。事が事だからか各国との通信準備もすぐに整って、画面越しにわたし達は一堂に会する。

 

「…という訳で、私達は大きいネプテューヌの言葉を信じてみようと思ってる。それに関して、まずはどう?」

「も、勿論私も賛成ですっ!ノワールさんの…こ、こほん。…守護女神の皆さんを取り戻す事は、今一番大切な事ですから」

「うんうん、やっぱりねぷねぷ達がいないと、何だか調子も狂っちゃうもんね」

「わたしも賛成する。座して待つよりは、不明な事があろうと動くべきだろう」

「…と、いう訳でアタシ達黄金の第三勢力(ゴールドサァド)の意見は、全会一致での『支持する』よ。アタシとしても、ブランちゃんがいないのはやっぱり物足りないもの」

 

 最初にするのは、皆さんから意見を聞く事、わたし達全体での意思を決める事。わたし達は皆で同じ目標へ向かっているんだから、勝手に動く訳にはいかない。

 イリゼさんの呼び掛けに、まずは黄金の第三勢力(ゴールドサァド)の皆さんが答えてくれる。次にいーすんさん達教祖の皆さんが、その次はパーティーの皆さんがそれぞれに答えてくれて……でも皆、答えは同じだった。自分も賛成だって、わたし達が信じるのならって、わたし達の意思を肯定してくれた。勿論、焦らないように、とか、慎重に、とか色々な事は言われたけど…皆さんわたし達を、応援してくれた。

 

「ありがとうございます、皆さん…わたし達、絶対に……!」

「うんうん、その意気だよ…と、言いたいところだけど…少し肩に力が入り過ぎだね、ネプギア」

「ですね。力が入り過ぎると、動きが硬くなる。それは戦いだけじゃなく、一つ一つの判断でも言える事じゃないかな?」

「うっ…で、ですよね…気を付けます……」

「これ、ネプテューヌさんだったら…」

「間違いなく、もう少し気を引き締めろと言いたくなるような事を言っていたにゅ〜」

 

 いつの間にか気負っていたわたしは二人のファルコムさんに指摘され、そこから鉄拳さんとブロッコリーさんが肩を竦め合って、そこから零れる小さな笑い。

 わたしはこれが、わたし達の…皆の強さだって思う。こういう雰囲気があるから気負い過ぎず、何かあっても大丈夫なような気がしてくる。…ま、まあ勿論万が一の事は、起こらないように努めなきゃいけないんだけど…。

 

「…さて。行動を起こすに当たって必要な準備は既に大方整っている筈だったな。であれば、実行日だが…その辺りは、どうするつもりだ?」

「あ、はい。私としては、今日はゆっくり休んでもらって、決行は明日にしようと思っています。さっき別の場所でも言ったんですけど、ここまで来て焦るのは悪手ですし」

「私はそれで良いと思うわ。今日も最終確認とはいえ、訓練をした後なんでしょう?」

 

 マジェコンヌさんからの言葉と、イリゼさんの返答。それにケイブさんが頷いて、そこにも否定や別意見はなし。今マジェコンヌさんが言った通り、今日の訓練から帰ってきた後の…それにこれまでの会議で大体の事は決まっていたから、その後の会話といえば殆どがわたし達へと向けた鼓舞。直接だったり、画面越しだったり、言い方も内容もそれぞれだけど、全員が全員わたし達への期待、それに気遣いの思いに溢れていて……わたし達は、再確認する。お姉ちゃん達を取り戻すのは、わたし達の望みだけど…同時にわたし達は、皆さんの望みも背負ってるんだって。

 あの時もそうだった。今もそうだった。お姉ちゃん達を取り戻す。その責任は、凄く重くて…だけど、重荷には感じない。女神として、皆さんの思いに応える為にも、絶対成功させよう…そう、思っている。

 

「ロム様、ラム様、今日は夜更かしせず、早めに寝るのですよ?…いや、普段からあまり夜更かしはしてほしくないのですが…」

「状況は色々違うとはいえ、ノワール達を取り戻すという意味では二回目なんだ。だから…あの時のように、やればいい」

「…頑張りなさいよ。うちに女神候補生はいないとはいえ…それでも教祖の一人として、アタクシも応援してるんだから」

 

 最後に言ったのは皆さん達で、それ等の言葉にわたし達は首肯。そうして実行へ向けた話は終わり…通信も、切れる。

 

「…じゃ、後は各々自由に休もうか。明日の戦いの相手は…とびきり強いんだからね」

「ま、ねぷ子達だものね。…今日の内に言うのは少し早いけど…四人を、頼むわよ。それに……」

「ちゃーんと、帰ってくるですよ?」

『はい!』

 

 そうしてわたし達は解散。まだ寝るには早い…というか、まだ夜にすらなっていないから、機械を弄ったり、皆とお喋りをしたりして、今日の残りの時間を過ごす。わたし達にリラックスしてもらう為か、会議室を出てからはもう明日の事について必要以上には言われなくて…だからちょっぴり、不思議な感じもあった。決行は明日なのに、もう少し先のような…そんな感じもした。

 でも夜になって、お風呂にも入って、後は寝るだけの段階までくれば、流石に緊張もする。緊張はするけど…怖くはない。大丈夫、わたし達はやれるって気持ちがしっかりとわたしの中にはあって…きっとこれは、皆の心の中にもある。だって、わたし達は掴んだんだから。わたし達の、わたし達だけの、大切な力を。

 そしてわたしは、いつもより少しだけ早く寝て……明日を、朝を迎える。お姉ちゃん達を取り戻す…お姉ちゃん達に打ち勝つ為の、戦いの日を。

 

 

 

 

 準備と行動、その確認をもう一度だけして、プラネテューヌにいる皆からは直接、他の三ヶ国にいる皆からは端末へのメッセージで見送られ、私達はプラネタワーを出た。

 前回と同じように、別次元を介した、実質的な目的地へのワープ。いつもの(…って表現が出来る程、次元移動経験をしてる事については触れないとして…)感覚を抱きながら、私は次元の扉を抜け…そうして出たのは、所謂「電子空間」と言って皆が想像するような、何となくそれに近い空間。

 

「…ここ、は……」

「浮遊大陸の地下だよ。ここのどこかに、ちっちゃいわたし達もいる筈だから」

「え、地下…?」

「うん、地下…っていうか、地下空間…かな。前に調査したあの施設には、ここに降りる通路があるの」

 

 出てすぐに、私はぐるりと周囲を見回す。その後大きいネプテューヌの言葉に訊き返すと、ネプテューヌも神妙な表情をして言葉を返す。

 そっか、大きいネプテューヌはまたあそこを調べて、それでここを見つけたんだね。…とは、思わない。むしろその声には、元々知っていたかのような響きがあって…でも今は、それについて言及しない。大きいネプテューヌは、今は信じてと言って、それに私も応じたんだから。

 

「不思議な場所ですね…どこかって事は、ここからは探す必要があるんですか?」

「ううん。その内向こうもわたし達の事に気付くだろうから、歩いていればちっちゃいわたし達の方から来てくれると思う」

「え…じゃあ、いきなり仕掛けられるって事も…?」

「ある、かもね。…ちっちゃいわたし達が、ネプギア達にそんな事するとは思えないけど……」

 

 ユニからの質問に対し、さらりとまあまあ驚愕の事実を口にする大きいネプテューヌ。確かにネプテューヌ達が不意打ちをしてくるとは思えないけど…ここがもう向こうの、くろめ達の陣地内だっていうなら、最大限の用心は必要不可欠。

 

「…皆、もう女神化はしておこうか。それと大きいネプテューヌは、私達の内側へ入るようにして」

 

 そう言いながら私は女神化をし、先頭へ。陣形…って程でもないけど、どこから仕掛けられても対応の出来る形を作ってから、改めて進む。

 どこでネプテューヌ達と会うか分からない。いつ仕掛けられてもおかしくない。そういう状況だから、自然と口数は少なくなり、同時に緊張感も高まっていく。そうして数分間程歩いたところで、私達はかなり広い空間に出て……次の瞬間、そこに響く一つの声。

 

「…まさか、ネプギア達の方からここに来るとは思わなかったわ」

「……お姉ちゃん…」

 

 広い空間の奥、丁度私達とは逆に当たるような位置に並び立つ、四人の人影。言うまでもなく、それはネプテューヌ達…守護女神の四人。

 

「今回は、話し合う為に来た…って訳じゃなさそうね」

「お姉ちゃん達こそ、戻って来てくれる…って感じの顔じゃないのね」

「…良い面構えしてんな。本気だ、って訳か」

「…そうだよ、おねえちゃん」

「前と同じじゃ、ないんだからね」

「どうやらまた、貴女がネプギアちゃん達を導いたようですわね」

「まさか。私は皆の、手伝いをしただけ。皆は、自分自身の足で…自分自身の力で、今ここに立ってるんだよ」

 

 交錯する視線、交わす会話。ネプテューヌ達は、落ち着きながらも威風の籠る雰囲気を放ち…けれどそれに、ネプギア達は負けていない。向けられる瞳に、声に、真っ向から意思を返している。

 

「…お姉ちゃん、腕は…大丈夫なの?」

「…知っていたのね…えぇ、大丈夫よネプギア。少なくとも、今はね」

「そっか…それなら、良かったよ」

 

 大丈夫だという言葉を示すように、ネプテューヌは掲げた左手をゆっくりと握る。それを見たネプギアは、ほっとしたような声を出し……次に向けたのは、戦闘の意思。それにネプテューヌは、少しだけ目を見開き…ネプテューヌもまた、同じ意思をネプギアへ返す。

 

「…いいわ。妹が本気だって言うなら、それに応えるのが姉だもの。だけど…勝つ気なの?貴女が、貴女達が、わたし達に」

「…そうだよ、お姉ちゃん」

「ふふっ。そう言い切られるのは、実は姉として悪い気はしないわ。だけど…もし本当にそう思ってるなら…少しわたし達を、見くびり過ぎよ。守護女神は……」

「いいや、見くびっているのはネプテューヌ達だよ」

 

 ふっと表情から柔らかさが消え、完全に守護女神としての顔になるネプテューヌ。その顔で、ネプテューヌは言い切ろうとし…だけど私は、それを遮る。それを遮り、場所を譲るように横へと退いて…ネプギア達を、静かに見やる。そして、ネプギア達は頷き合い……力を、解放。

 女神化と同じように、けれどそれ以上の光を以って、輝きを放つ四人の身体。善意のシェアエナジーと悪意のシェアエナジー、その二つがネプギア達へと収束し、光が薄れていくと共に露わとなる四人の姿。

 大きくその姿を変えた四人のプロセッサユニット。ネプギアのプロセッサには、両肩部と左右腰部の浮遊ユニットに大型の武装が。ユニのプロセッサは、全身に牙や爪を思わせる装備が。ロムちゃんととラムちゃんのプロセッサには、それぞれ四つの浮遊する魔法陣が。配色は、元々のものをベースに正負のシェアが、光と闇が並び立つようなものとなり……光が完全に消え去った空間で、私は告げる。

 

「本気でかかってくる事だ、親愛なる守護女神よ。彼女達の新たなる力は、強い。打ち勝てると言うのなら、やってみるがいい。彼女達の手にした力を……──ビヨンドフォームを、超えられると言うのならば」




今回のパロディ解説

・「〜〜断言するよ。今の四人は…強い」
Fateシリーズに登場するキャラの一人、ギルガメッシュの台詞の一つのパロディ。勿論イリゼは腕を斬り落とされたりしてませんけどね。むしろそれはネプテューヌです。

・反応弾、DE
マクロスシリーズに登場する兵器の事。まあ、反応弾もディメンジョンイーターも使い方を誤れば、星一つを潰してしまうものですからね。そのレベルは流石にアウトです。

・「〜〜心の友〜〜よーっ!」
ドラえもんシリーズに登場するキャラの一人、ジャイアンこと剛田武の代名詞的な台詞の一つのパロディ。確か女神のネプテューヌも、原作でこのパロをしていましたね。

・「〜〜いつ出発〜〜するよ?」
ジョジョの奇妙な冒険の第三部に登場するキャラの一人、花京院典明の台詞の一つのパロディ。返しとしては、「ネプテュー院」…ですかね?
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