超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第百二十三話 その手で掴み貫く今(ジ・オーバービヨンド)

 ビヨンドフォーム。あくまで普段は力としていない負のシェアも流れ込ませ、正負が混在した状態を作るに過ぎなかったカニバルフォームとは違う、善意も悪意も、応援も非難も、肯定も否定も…自分へと向けられる思いは、全てが一人一人の気持ちだと、信念だと受け止めて、その全てを力に変える、進む為の力へと変換する、『今』の向こう側へと至った姿。

 一概に、カニバルフォームの上位となる力とは言えない。普段の女神の姿にはない欠点だってあるし、そもそもカニバルフォームを編み出した嘗ての女神は、カニバルフォームをネプギア達よりもっと高度なレベルにまで鍛え上げていた可能性だってある。或いはビヨンドフォームと同じ段階にまで至ったものを本来のカニバルフォームとし、今までネプギア達がやっていたのは不完全なものだった…なんて事もあり得る。

 けれどそれは、大事な事じゃない。大切なのは、それをネプギア達が、自分達の力で掴み取り、それを胸に今ここにいるって事。誰かのではない、自分自身の力にした事。そして今から、これから…ネプギア達は、ネプテューヌ達に……打ち勝つ。

 

「いくよ、皆ッ!」

「くるわよ、皆ッ!」

 

 戦いの幕開けとなったのは、ネプギア達四人の遠隔攻撃。射撃が、魔法が、一斉にネプテューヌ達の下へと駆け抜け…それをネプテューヌ達は回避。散開し、一撃たりとも当たる事なく接近を図る。

 

「速い…けど、この位ならッ!」

「当たらない?アタシ達だって、これで終わったら拍子抜けだよ…ッ!」

 

 鋭い機動で攻撃を避けつつ真正面から仕掛けるノワール。けれど接近戦に入るよりも早くユニが手にした火器をノワール、それにノワールが取れる回避位置へと次々撃ち込み、向かう先を徹底的に潰す事で追い払う。

 接近は許さないとばかりの弾幕を作り出すネプギア達と、一瞬でも隙があればそこを逃さない、とばかりに躱し切れるギリギリの距離を飛ぶネプテューヌ達。その最中に私は下がっているよう大きいネプテューヌへアイコンタクトを取り、そこからすぐに行動開始。私だって、傍観者になるつもりは微塵もない。

 

「私もいる事を、忘れないでもらおうかッ!」

 

 四人の形成する弾幕の側面から回り込み、手始めに複数本の剣を射出。別方向からの攻撃で堪らずネプテューヌ達は後退を選び、当然私はそこへ追撃。最も近い距離にいたネプテューヌへと肉薄し、勢いそのままに袈裟懸けを放つ。

 

「……っ…けど、判断を誤ったわねイリゼ…!貴女が、この位置に来るのなら…ッ!」

 

 斬撃を大太刀の腹で受けたネプテューヌは、私を強引に押し返す事はせず、けれど下手に剣を引けばすぐネプテューヌが反撃に出られるような、微妙な力加減で私に対抗。

 その最中、ネプテューヌが私へと言った言葉。それは、私が邪魔になるという事。私が下手に前に出てしまえば、その私を盾に、射線へ私も入ってしまうような位置取りをする事によって、容易に接近出来てしまうという事。

 確かにその通り。四人は全員が接近戦を主体にしているから、その四人に対して私一人が不用意に突っ込むのは下策も良いところ。…けど、今私はそうは思わない。だって、今の四人は…今までの四人じゃ、ないんだから。

 

「迎え撃つわよネプギアッ!」

「うんッ!」

「来るか…って、んな……ッ!?」

「ユニが、前に…ッ!?」

 

 背後で聞こえる、二人の声。当然私からは見えないけど、何が起こっているかは分かる。

 ノワール達三人は、驚いている事だろう。女神候補生の四人の中でも、最大の射程距離を持つユニがネプギアと共に前へと出た事に。でもその行動に対し、私は全く驚かない。今の四人に、どんな力があるかは、私もよーく知っているから。

 位置の関係で見えるからこそ、見えているからこそ、ネプテューヌの顔にも走る驚きの感情。尚且つほんの僅かにだけど、大太刀から感じる力にも乱れが生じ…その隙を突く形で、私は受け止めていたネプテューヌを押し切る。

 

「そういえば、さっきは言っていなかったね。見た目や基本的な能力だけじゃなく、戦い方だって…今まで通りだとは、思わない事だね…ッ!」

 

 拮抗が破れた事で姿勢を崩したネプテューヌの左側面へと私は回り込み、言い放ちながら鋭く横蹴り。身体を捻って向きを合わせたネプテューヌは両手を交差させて防御するけど、当然今のネプテューヌに踏ん張るだけの余力はない。

 無理をせず、蹴りの衝撃を用いて離れるネプテューヌと、それを追いつつちらりと横を見やる私。そこではネプギアとユニに加え、その後ろからロムちゃんラムちゃんも支援の魔法を展開。四対二の形となった事もあり、火力でノワールとブランを封殺する。

 とはいえ、それは即ちベールがフリーな状態という事。二人より後方にいたベールは跳躍し、ネプギアとユニを飛び越える形で得物の穂先をロムちゃんとラムちゃんに向け……けれど次の瞬間、M.P.B.Lの射撃でブランを追っていたネプギアの肩部浮遊ユニットが上へと旋回。二基の先端はベールの進路、そのほんの少し先を向き……光芒を放つ。

 

「……っ!その装備、やはりビーム砲でしたのね…ッ!」

「そう簡単に抜かせはしません…!ロムちゃん、ラムちゃん!」

「任せて…っ!」

「行くよ、ロムちゃんッ!」

 

 『置く』形で撃ち込まれた偏差砲撃を避けるべくベールは身を翻し、その瞬間ネプギアは後方宙返り。同時に両腰のユニットも旋回させ、そちらの二基でもベールを追撃。ネプギアからの射撃がなくなった瞬間、ブランはノワールと二人で強行突破を図ろうと踏み込むも、そこに割って入るのは二つの魔法陣。ロムちゃんが四つの内二つを前方へ展開する事によって壁を作り、前進を妨害。反射的に二人の動きが止まる中、ブースターの様に二つを背中側に配置したラムちゃんは高速でノワール、ブランの背後へと回り、残りの二つを重ね合わせて大出力の魔力砲撃を叩き込む。無論、その射線上にはユニもいたけど、壁となったロムちゃんの魔法陣が光芒を受け止める事で、その砲撃は誤射にはならない。

 前から、下から、後ろからと次々襲いくる攻撃に対し、それでも高度を上げる事によって反撃に移ろうとする三人。けれどその跳躍先へ両手に拳銃を携えたユニが光弾を連続して撃ち、宙の三人へ後退を強いる。

 

「…確かに、ネプギア達の戦い方はこれまでとは違うようね…けど……ッ!」

 

 その間も私達は素早く位置取りを変え、少しでも仕掛け易い、少しでも相手が刃を振り辛い場所へと移動しながら、何度も得物を斬り結ぶ。こちらはお互い、大きな変化は特にない。互いに長所も短所も知り尽くしている相手だからこそ、多少打ち合った程度じゃ全くもって状況は変わらず…そんな中でネプテューヌは、私の上段斬りを半身で避けつつ腕を引き、私が張り切った瞬間に合わせて鋭く刺突。私が思い切り身体を仰け反らせる事で回避し、更に床を蹴る事で追撃を受けるよりも早く距離を取ると、その私をネプテューヌは追おうとせず、引いたノワール達に合流する。

 ならばと私も体勢を立て直し、ネプギア達の方へと跳躍。着地したところで即座に構え直し、私達は再び向かい合う。

 

「驚きましたわ。まさかわたくし達が知らぬ間に、そんな力を得ていたとは。…けれど……」

「あぁ、確かに強い。強いが…勝機が見えねぇ程じゃねぇ。付け入る隙も、ゼロじゃなかった」

「それを埋める連携も大したものだし、本当に短期間で良くここまで仕上げたと思うわ。…だけど、私達にはそう言えるだけの余裕がある。それが、答えよ」

 

 小さく息を吐いたベール達からの、賞賛の言葉。それは皮肉ではなく、本当に心から出た言葉のようで…だけどその上で、皆は言う。まだ、強いのは自分達の方であると。負ける気は、しないと。

 何とも皆らしい反応。認める上でそういう辺り…本当に、嫌でも分かる。やはり皆、自己意思でここにいるんだって。……でも。

 

「ふーんだ。その言葉、そっくりそのままかえしてあげるわ!」

「わたしたちだって、まだまだ…よゆう、だよ?」

「お姉ちゃん、それに皆さん。まさかアタシ達が、最初から手の内全てを晒すとでも?」

「…言うわね、皆」

「言うよ、お姉ちゃん。わたし達は、勝つつもりでここにいるんだから」

 

 勝てると思っているのは、自分達の方が強いと思っているのは、ネプテューヌ達だけじゃない。そして私には分かる。その言葉は、少しも虚勢ではないのだと。

 ぶつかり合う視線。張り合う気配。音が収束していくかのように、広間の中は静まっていき……完全に無音となった次の瞬間、爆ぜるように四人が動く。

 

『なら…見せてもらおう(じゃない・じゃねぇか)ッ!』

 

 全力を出し切っていなかったのは、そっちだけじゃない。そう言わんばかりにネプテューヌ、ノワール、ブランは地を蹴り、一瞬で肉薄。それをそれぞれネプギア達はM.P.B.Lの刀身、交差させた前腕のパーツ、二つ重ねた魔法陣で攻撃を阻み…けれど勢いに押される形で、或いは無理せず勢いに身を任せる事によって、大きく後ろへ。そしてもう一人、ベールはほんの少しタイミングをずらして、私へと突進。その勢いは、先の三人と遜色なく…でもその勢いの割に、軽い。

 理由は分かる。これは私の防御を崩す為の攻撃でも、押し切る為の突進でもなく、この場に留まらせる為の一撃。タイミングをずらしたのも、ずらす事によって意図を感じさせ、注意を引き、私が皆の方へ向かうのを遅らせる為。…やってくれるね、上手く乗せられたよベール…!

 

(でも……ッ!)

 

 重くないのならと私は左手を離し、身体を捻って右側に大槍を流しつつベールへと貫き手。逸らされたベールはそのままもう一歩出る事で貫き手を躱し、そこからの後ろ蹴りで私へ反撃。横に避けるとベールは逆脚を軸に回転を掛け、回し蹴りへ移行する事で刈り取るように踵を振り抜く。

 

「そういえば、こうして戦うのは……」

「えぇ、初めてですわね…ッ!」

 

 バックステップを掛けながらの横切り。回転で向きを合わせたベールの、大槍の柄による防御。互いに踏ん張り、押し合い…次の瞬間、殆ど同時に私達は離れる。離れ、地を蹴り、再び長剣と大槍で以って正面から激突。掬い上げるような斬り上げで打ち上げれば、ベールはその勢いを利用する事で即座にループし、そのまま急降下で放たれた刺突を私は避けつつ次の手に移る。

 ベールの策に乗せられてしまった。それは言い訳のしようがない事。でもネプテューヌ達はそれぞれ自身の妹へと、ベールは私へと仕掛けてくれた。これは好都合。だって元々、その形に持ち込む予定だったんだから。

 

(さぁ、見せてあげなよ皆。皆の得た力が、掴み取ったものが、その程度なんかじゃないって事を…ッ!)

 

 四人がそれぞれの戦いを始めている今、皆の動きをじっくり見るだけの余裕はない。位置の把握はするにしても、互角の相手に皆の事を気にかけるなんて出来やしない。

 そう。もうここからは、私の立場なんて関係ない。それぞれが出来る事をして、力を尽くして……ネプテューヌ達を、取り戻す…ッ!

 

 

 

 

 お姉ちゃん達に勝つ。それはつまり、守護女神に勝つって事。国を守る、国を導く、その最大最高の要に、打ち勝たなきゃいけないって事。

 最初は凄く、それがプレッシャーに感じていた。そうしたいと思ってはいたけど、本当に出来るのか…って不安もあった。

 だけどもう、不安はない。緊張はあっても、失敗への恐れなんて微塵もない。だって……今わたしは、本気で思っているから。今のわたし達なら、お姉ちゃん達に、勝てるって。

 

『はぁああぁぁぁぁッ!』

 

 同じタイミングで踏み込んで、同じタイミングで振り被り、同じタイミングで斬撃を放つ。お互いの袈裟懸けが真正面からぶつかって…たったそれだけでも、小さな衝撃が周囲に走る。

 

「気が合うわね、ネプギア…ッ!」

「そう、だね…ッ!」

 

 斬り結んだ状態からせめぎ合う。これまでなら武器の性質もあって不利になり易いから、こういう正面からの斬り結びを長く続けるのは出来る限り避けていたけど…今はそれも、ビヨンドフォームなら出来る。純粋な力比べでも、負けていない。

 

「ふ……ッ!」

「……っ!」

 

 そう思った次の瞬間、ほぼノーモーションでかけられる足払い。反射的にわたしは跳んで、そのままM.P.B.Lで射撃をかける。

 負ける気はしない。近接戦でも負けてない。だけどそれでも、踏んできた場数は、経験値は、お姉ちゃんの方が上。だから、油断だけはしちゃいけない。ビヨンドフォームがあったって、全力で、全身全霊で戦わなきゃ勝てない相手だって事には、変わりないんだから。

 

「逃さないわよッ!」

 

 すぐに距離を詰めてこようとするお姉ちゃん。遠距離戦ならわたしの方がずっと有利だからそうしようとしてくるのは当然の事で、言い換えればそれは分かっていた事。だからわたしは力を抜き、翼の角度を変える事で身体を安定させ、下からの攻撃をM.P.B.Lで受ける。

 予想通りの位置に来た斬撃を、確実にガード。初めから力を抜いていた身体は一切衝撃に抗う事なく跳ね飛ばされて…だから大きな距離が開く。そしてここだと思う距離の直前でわたしは身体を側転の様に回す事で勢いを外に逃がし、肩と腰、それぞれの浮遊ユニットを全て前へ。同時にM.P.B.Lの銃口も下に向けて、五門同時に一斉射。

 

「……っ…!自由の名を冠してそうな攻撃ね…ッ!」

「まだまだいくよッ!」

 

 五条の光芒は上昇をかけようとしていたお姉ちゃんを正面から迎え撃ち、対するお姉ちゃんはこれは捌き切れないとばかりに回避。だったら、とわたしも一斉射から単射に切り替え、五門それぞれを次々と撃つ事によって再上昇のタイミングを計りながら躱すお姉ちゃんを追い立てる。

 

「精度も狙いも中々なものね…けど、これ位じゃ……」

「やられないよね?知ってるよ、お姉ちゃんの事なんだから…ッ!」

 

 最小限の動きで、風に乗る木の葉の様に軽やかな軌道でお姉ちゃんは避けていく。わたしがお姉ちゃんの事を分かるように、お姉ちゃんもまたわたしの事を分かってるとでも言うように、わたしの砲撃を的確に避ける。

 上昇を許さず撃ち続けるわたし。無理せず回避に徹し、けれど隙を見せれば確実に攻勢に転じてくるお姉ちゃん。この状況、先に焦れた方が不利で…だけどわたしは、ここで動く。

 

「そこッ!」

 

 M.P.B.Lで偏差射撃。左回転のロールでお姉ちゃんが避けた瞬間、肩部の二門を同時に放ち、お姉ちゃんの正面を光芒で塞ぐ。

 そこからわたしは斜めに急降下。振り上げたM.P.B.Lを叩き付けるように振り抜き……でもそれはお姉ちゃんが垂直に跳んだ事によって、空を切る。

 

「勝ちを急いだわね、ネプギア…貰ったわッ!」

 

 床を裂いて食い込む刀身。真上から聞こえる、お姉ちゃんの声。冷静な、それでいて少し残念そうでもある声は次の瞬間、勝利を確信したものになり……

 

「──それは、どうかな?」

「……ッ!?」

 

 更にその次の瞬間、お姉ちゃんを上方からのビームが襲う。ユニちゃんのものでも、ロムちゃんのものでも、ラムちゃんのものでもない、わたしの…腰の浮遊ユニットから()()()()ビーム砲が、全くの別方向からお姉ちゃんを撃つ。

 

「これは…遠隔操作端末……!?」

「そういう事だよ、お姉ちゃんッ!」

 

 迫る二条のビームの内、咄嗟にお姉ちゃんは片方を躱し、片方を大太刀の腹で防御。間違いなく予想外だった筈の攻撃にも対応して、微妙に躱し切れなかった分もごく軽傷で済ませてる辺り、本当にお姉ちゃんは流石だけど…それでも今ので、攻撃チャンスは完全に潰れた。そして今チャンスを掴んでいるのは…わたしの方。

 自然と浮かんだ小さな笑みと共に、肩部ユニットの二基も射出。四基をわたしの意思で動かし、それぞれの位置から攻撃を敢行。さっき腰の二基だけを飛ばしたのは、体勢的にそっちの方が分離に気付かれ辛いからってだけ。

 

「ビットの操作中は、わたし自身の動きは甘くなる…そうは、思わないでよねッ!」

「く……ッ!」

 

 噴射する粒子を尾の様に引きながら、四基は自在に飛び回る。わたしが射撃で追い立てた先へ光芒を放ち、四基間でも状況に合わせて攻撃、牽制、誘導を担い、更に時にはビット自体を囮にして、そこへわたしが突進を仕掛ける。飛び込んでの上段斬りを掲げた大太刀で防いだお姉ちゃんの表情が歪む中、すぐにわたしは飛んで離れ、入れ替わるように半円状に展開したビット四基で同時砲撃。それが避けられた後もわたしはビットによる攻撃を続け、オールレンジ攻撃を浴びせ続ける。

 

「……っ…それなりのサイズなだけあって、そこそこの稼働時間もある訳ね…だけどネプギア、一つ忘れてないかしら?」

「忘れてる…?」

「わたしがもう、こういう攻撃には…慣れっこって事よッ!」

 

 近付こうとしても離れようとしても、ビットがその時々の位置から仕掛けてくる。それがオールレンジ攻撃の強み、オールレンジ攻撃の恐ろしさで、お姉ちゃんの攻め手は格段に減った。

 とはいえ、もう遠隔操作端末だったって驚きは終わってる筈。そう考えてわたしがある指示を四基に発する中、ふっと不敵な笑みを浮かべるお姉ちゃん。そして次の瞬間、お姉ちゃんは舞踊の様な動きで四方向から放たれた光芒全てを鮮やかに躱し…爆発的な速度でわたしの前へと迫ってくる。

 

「確かに貴女のビットは一つ一つが機敏だから、全部に狙われたら避けるだけでも一苦労よ。…けど、わたしを抑え込むのに四基じゃ…少しばかり、足りないわッ!」

「ぐっ……そう、みたいだね…ッ!」

 

 一気に踏み込んできたお姉ちゃんの刺突。それを刀身の基部で受けると、すぐにお姉ちゃんは大太刀を上へと滑らせ、そのままわたしを押さえ付ける。

 それは斬り伏せるのではなく、わたしをこの場から逃がさない攻撃。視界の端、上方へと見えるのは、お姉ちゃんが生み出すエクスブレイド。

 近接格闘で抑え込み、 手を使わない攻撃を打ち込む。それが、お姉ちゃんの狙い。そして、お姉ちゃんはきっと…次に、こう言う。

 

「そして、こう近付けば……」

「──四方からの攻撃は、無理?」

「な……ッ!?」

 

 上方のエクスブレイドが完成する直前、お姉ちゃんは飛び退く。わたしではなく、お姉ちゃんが逃げる。…わたしの更なる端末が、お姉ちゃんへと突っ込んだ事で。

 いつの間に?一体どこから?そう言うかのように、お姉ちゃんは目を見開き…けれどわたしが引き戻した四基を見た事で、気付く。

 

「形が、変わってる…?…まさか……」

「…四基じゃ、確かに無理みたいだね。だけど…十二基だったら、どう?」

 

 体当たりでお姉ちゃんを引かせたもう一種類、八基の小型端末は、数発撃ったところでわたしの周囲へ。引き戻した四基は浮遊ユニットに装着し、再使用の為にエネルギーチャージ。装着し直した四基の両側面は、欠けたように…何かが外れたようになっていて、それこそが答え。

 

「…前言撤回。攻撃と自由の名を冠してそうね、今のネプギアは」

「これで今度こそ、手の内全てを明かした…とは、限らないよ?」

「……どうやら本当に、全身全霊で戦わなきゃ、今のネプギアは倒せないみたいね…」

 

 お姉ちゃんが構え直すのを見て、わたしは小型端末も回収。全てを元の状態に戻したところで、ふぅ…と小さく息を吐き、わたしもまた構え直す。

 ちらりと横を見てみれば、ユニちゃんがノワールさんと目紛しく動き回り、攻撃を仕掛け合っている。両手に持ったサブマシンガンで頭上を飛び越えようとするノワールさんを追い掛け、背後を取ったノワールさんが鋭く刺突をかければ、それを倒れるような動きでひらりと躱し、右手のサブマシンガンを離したかと思えば脚のパーツ、その中から飛び出したショットガンを即座に掴んで、反動で距離を取りつつ近距離射撃。それをノワールさんが大剣の腹で受けると、更にユニちゃんは火器を両方手放して、数瞬前のノワールさんの様に飛び越えたかと思えば、手首下側から回転する形で手の内に収まったハンドガン二丁を握って、上から交互に弾丸を放つ。

 その奥では、ロムちゃんラムちゃんもブランさんと交戦中。ラムちゃんが横一列に並べた四つの魔法陣からは、それぞれ全く種類の違う魔法が同時に放たれ、ブランさんがしようとしていた強行突破を正面から妨害。その内の一つ、氷塊へとブランさんは戦斧を打ち付け、そこを起点にする事で棒高跳びが如く飛び上がって尚も突破を図るけど、それを予測していたようにロムちゃんが前へと割って入り、一回転して打ち込まれる戦斧の縦斬りを二つ重ねの魔法陣で防御。…と、同時に残り二つをブランさんを挟むように展開し、それぞれから無数の氷弾を叩き込む。ユニちゃん、ロムちゃん、ラムちゃん…三人それぞれが全力のノワールさんやブランさんとぶつかり合い、でも全く負けていない。負けていないし…その動きには、まだ余裕がある。

 

(…今わたし達がいるのは、これまでのわたし達の向こう側。見ていなかった、気付いていなかった、その先の場所。だから…必ず見せてあげるよ、お姉ちゃん。わたし達が…お姉ちゃん達に、勝つ瞬間を)

 

 女神化して戦うと出てくる高揚感のせいか、負のシェアエナジーも流れ込んできてるからか、何となく今のわたしは普段より気が大きくなっているような気もしている。…だけど、別にいいよね。だって本当に、絶対に…わたしはお姉ちゃんに、勝つんだから。




今回のパロディ解説

・「〜〜自由の名を冠してそうな攻撃〜〜」
機動戦士ガンダムSEED(とdestiny)に登場するMSの一つ、フリーダムの事。右手と両肩、両腰からのフルバースト(しかも翼を広げてる)となれば、このパロディは外せません。

・〜〜次にこう言う
ジョジョの奇妙な冒険第二部、戦闘流潮の主人公、ジョセフ・ジョースターの代名詞的な台詞の一つのパロディ。しかしこれ、ネプギアはパロ発言を予測した事に……。

・「そして、こう近付けば……」「──四方からの攻撃は、無理?」
機動戦士ガンダムの主人公、アムロ・レイの台詞の一つのパロディ。でも実際には攻撃出来ているので、クアトロ(シャア)VSハマーンのパロディにするって事も考えました。

・「〜〜自由と攻撃の名を冠してそう〜〜」
機動戦士ガンダムSEED destinyに登場するMSの一つ、ストライクフリーダムの事。ストフリは機関砲除けば十三門ですからね。小型だけ出して撃てばそれっぽくなります。
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