超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第百三十一話 思う気持ちと自分の気持ち

 それは歴史の中で、何度も行われてきた戦い。人の世である以上、人に思いがある以上、逃れる事など出来ない宿命。

 だとしても、その脅威で以って歴史が終わりを迎えた事はない。何度その脅威が顕現しようとも、その時代の女神は、人は、打ち倒し、そして守ってきた。国を、次元を…未来を。

 戦いの歴史、勝利の歴史。そこに今…また一つ、勝利の結末が綴られる。

 

「…問題ないみたいだな」

 

 状態を確認し、俺達は頷き合う。異常や別の脅威はどこにもない。それをはっきりとさせてから、俺達は前へ。

 

「後は封印するだけ、か…時間が空いちゃった分、緊張はするけどなんか不思議な感じだよね。消化試合…じゃないけどさ」

「あー、分かる。即座の封印は出来ないとはいえ、本来セットのものを二つに分けちゃった感あるわよねぇ」

「そんな事を言っても仕方ないでしょう。邪魔が入っても困りますし、早く終わらせてしまいましょう」

 

 話しながら、打ち合わせ通りに四方へ分かれる。二人の言う通り、『撃破』から少し空いての『封印』ってなると、どうも流れが途切れてしまっているような感じがある。…まあ、その封印すら何回も分けてやらなくちゃいけない…ってのよりは、よっぽど楽だが。

 

「…さ、やろうぜ皆。締めでミスって失敗じゃ、格好が付かねぇしよ」

 

 気持ちを切り替えるように俺は言い、もう一度三人と頷き合う。そこから封印の為の準備を整え…開始。力を合わせ、練り上げ、確実に封じていく。

 数分か、十数分か。集中していたから、どれ程時間がかかったかは分からないが…とにかく結果から言えば、封印は成功した。何の問題もなく、その核たる部分を封印し……脅威との戦いに、終止符を打つ。

 

「はふぅ…あー、疲れた…」

「同感です。…でも本当に、勝てて良かった……」

「うんうん。聞いてはいたけど、ほんっとーに手強かったわよね。でもこうやって無事封印までいった訳だし、打ち上げとかどーよ?」

「あ、いいねいいね!まだ封印が残ってるからって事でやってなかったパーティー、皆も呼んで盛大にやろうよっ!」

 

 力を抜き、ほっと安堵の吐息を漏らす俺。その内に打ち上げパーティーの話が始まり…勿論俺も、それには賛成。全員でもう一度、封印に不備がないか確認し…そうして俺達は、徒歩でこの場を後にする。

 今でこそ全員余裕があるが、奴との戦いは熾烈を極めた。全員で笑って帰る…それが出来なかった可能性も、あるとは思う。だがそれももう終わった事。勝って封印もした以上、もう心配する事は……

 

(…本当に、ない…のか……?)

 

 前を見れば、いつものように三人が話しながら歩いている。いつも通りの、なんて事ない普通の光景。

 だが、確かにこの光景が失われていた可能性もあった。今回は何とかなったが、これから先、もっと大きな脅威が現れる可能性もゼロじゃない。勝てる勝てないに関わらず、これから先…三人が、俺の大切な友達が、苦しみ傷付く事があるのかもしれない。俺自身…大事なものを、守り続けられるって保証もない。

 勿論これは、もしもの話だ。自分で言うのもなんだが、俺達は強い。強いんだから、そう簡単にはやられない。だがそれでも、そのもしもを考えれば……思う。もっと大きな力、強い力…どんな脅威だろうと排除し、皆を助けられる力が…そんな強さが、俺は欲しい。

 

 

 

 

 

 

──思えばそれが、切っ掛けだったのかもしれない。今に続く…最初の、分岐点だったのかもしれない。

 

 

 

 

 今考えれば、何故か分からない。分からないけど、わたしも皆もくろめの事を一番に…守らなきゃ、力を貸してあげなきゃって思う相手の内、その一番にくろめを置くような思考になっていた。ネプギア達に負けて、意識が途切れて、目が醒めるまで、それがおかしいとすら思わなかった。…多分それが、くろめの仕込み。わたし達を極限まで追い詰める事で心を脆くさせて、そこに付け入る形で、わたし達の心の中に「自分の領域」を作り出したんだと思う。

 でもネプギア達のおかげで、正気に戻る事が出来た。ぼっろぼろにはなっちゃったけど…理由はどうあれ道を踏み外していた事を考えれば、この位の怪我は安いもの。怪我はちゃんと治して、皆にも謝って、離れていた分を取り返す…わたしは本気で、そう思っていた。

 そうして、わたし達はプラネタワーに戻った。戻る事が、出来た。……イリゼが、自分の身をもう一人のイリゼに預ける事で。

 

「…ごめんね、いーすん。わたし達が不甲斐ないばっかりに、イリゼが……」

 

 プラネタワーに戻ったわたし達を待っていたのは、治療の準備。ちゃんと起こった事の説明をする間もなく、わたし達四人はコンパや他の人達に連れていかれて、治療を受けて……今は、ベットの上。動こうと思えば動けるけど、一日でも早く治す為にって、今はまだベットにいるよう言われている。

 そのわたし達へ会いに、いーすん達教祖の皆が来てくれた。本当だったらわたし達が戻ってきた事を喜んでくれたり、それかちょっと叱られたりしたのかもしれない。でも、今は…そういう雰囲気じゃ、ない。

 

「…気に病まないで下さい、ネプテューヌさん、皆さん。あの状況であれば、イリゼさんの判断は妥当ですし…そこに、皆さんの非はありません(。-_-。)」

「それは、そうかもしれないけど…けどそもそも、わたし達が正気を失う事なんてなければ、多分あそこで鉢合わせする事も……」

「もしもの事を言っても仕方ありません。そもそもの話をすると言うのであれば、もう一人のネプテューヌさんの件もありますし、皆さんがギョウカイ墓場に行く事に何も異を唱えなかった、わたし達にも非があります。何より、仮にこの一連の件が無かったとしても…早かれ遅かれ、イリゼ様は皆さんに仕掛けてきた事でしょう。確かにタイミングは悪かったですが…まだマシどころかもっと酷い形になっていた可能性もあると、わたしは思います( ̄^ ̄)」

 

 わたしらしくない事は分かってる。だけど、イリゼはわたし達の為に…ぼろぼろでまともに戦う事なんて出来ない、狙われているわたし達を守る為に、もう一人のイリゼの人質になった。それは凄く申し訳なくて、情けなくて…いーすんにも、謝らなくちゃって思いで一杯だった。いーすんはイリゼの、お姉ちゃんなんだから。

 

「…ほんとにごめんね、いーすん…いーすんだって凄く辛い筈なのに、冷静なフリまでさせちゃって……」

「…フリでは、ありませんよ。勿論、イリゼさんの事は心配ですが…イリゼさんは、きっとイリゼ様の在り方を信じたんです。イリゼ様ならきっとと、そう思う心に賭けたんです。…例え拒絶されようとも、わたしやイリゼさんにとって、イリゼ様は…産みの親、ですから(´-ω-`)」

「…強いね、いーすんは」

「わたしは尊重し、誇りに思っているだけですよ。イリゼさんの選択を…自分の気持ちと皆さんへの思い、その両方を貫いた、イリゼさんを( ̄∀ ̄)」

 

 そう言って、いーすんは笑う。多分それは、100%の笑みじゃない。いーすん自身、心配する気持ちはあるって言ったんだから。その上で、わたし達に笑ってくれるのは……本当に、イリゼを信じているからだと思う。イリゼの決心を、イリゼの行動を、お姉ちゃんとして支持しよう…そんな思いがきっとあるから、いーすんは微笑む事が出来るんだ。

…だったら、わたし達は?助けられた、友達のわたし達がするべき事は……何?

 

「…だよね。正直、イリゼがああいう選択をしてくれて良かった、なんて思えないけど…イリゼはあの時、イリゼが出来る精一杯の方法で、あの場を収めてくれた。だったら、わたし達がしなくちゃいけないのは……」

 

 そう言って、わたしは皆の方を見る。皆を見て、視線を、思いを交わし合って…それから、皆で頷く。

 わたし達がしなくちゃいけない事。それはまず、ちゃんと怪我を治す事。怪我を治して……今度はわたし達が、イリゼを取り戻す。

 

「…まずは、ちゃんと休んで下さいね?でなければ、それこそイリゼさんの行動が無駄になってしまいますから( ̄^ ̄)」

「分かっているわ。…ロムとラムにかなり容赦無くやられたから、まだ身体の節々が痛むし……」

「私は…うん、なんで頭撃たれたのにこうして普通にいられるのか、我ながら訳が分からないわね…。…手加減、されたのかしら……」

「…わたくし達が受けた攻撃って、手加減も何もあったかしら……」

 

 何とも言えない感じの顔をするベールの言葉に、わたしは苦笑い…と、いきたいところだけど…わたしがベールと一緒に受けた攻撃って、ほんとに手加減も何もってものだったんだよね…。ビームだよ…?ビームに飲み込まれたんだよ…?なんで生きてるのっていうか、真っ黒焦げになったり灰になったりしてない理由が、わたしにはよく分からないよ…。…まぁ、頑丈なのが女神の強みの一つだけど……。

 

「じゅ、重傷にならずに済んだ事が一番ですわ、お姉様!もしもお姉様がもっと酷い状態になって帰ってきたらと思うと、アタクシ、アタクシ…!」

「チカ…そうですわね。この程度…とは言えずとも、命の危機があるような重傷にならずに済んだ事は、素直に喜ぶべき……」

「まあ、犯罪組織の時はもっと酷い怪我だったし、それに比べれば何を焦る事が、って話だとは思うけどね」

「…ケイ、貴女って人は……」

「あ、あはは…ともかく、怪我を押して何かをするような事はしないで下さいね?癒えるまでが長引けば長引く程、ロム様とラム様も負い目を感じてしまいますから」

「分かっているわ。負けはしたけど、姉としての威厳を保つ為にも、しっかり回復して早く万全な姿を見せないと…」

 

 ぐっ、と胸の前で右手を握るブランを見て、わたしも首肯。確かにブラン…というかミナの言う通り、これはネプギア達と戦って負った怪我。理由はどうあれきっとこの事を四人は気にしてるだろうし…それも含めて、しっかり素早く治さないと。っていうかこういう時、ギャグ漫画みたいに次のコマとか次の話とかではもう治ってる…とかになったら便利なのにね。バトル要素ある作品としてはご法度だろうけどさ。

 

「…さて、それじゃあ僕達はそろそろ行くとするよ。安心するといい、ノワール。身体に負荷のかからない、今のままでも出来る仕事は、戻ったらすぐに回すさ」

「よ、容赦無いですね…」

「とはいえ仕事が溜まっているのも事実…あ、も、勿論気にする事はありませんから…!お姉様は、ゆっくり、休んで下さいまし…!」

「あはは、ほんと教祖の四人もキャラ濃いよねぇ…っとと」

 

 普段通りのやり取りを見ながらわたしが脚を動かすと、その拍子にベットから転がり落ちるお菓子の袋。左側に落ちたそれをわたしは取ろうと、そっち側に身体を傾け、手を伸ばして……

 

(……あ…)

「…ネプテューヌさん?(・・?)」

「…い、いやぁグミ落としちゃってさ〜。わたし怪我人だし、代わりに取ってくれないかなー?」

「えぇ…?もう、仕方ないですね…って、これグミじゃなくて黒飴ですよ!?∑(゚Д゚)」

「あ、バレちゃった?てへっ」

「またよく分からないボケを仕掛けてるわね、貴女は……」

 

 咄嗟にいーすんを誤魔化して、呆れ顔で突っ込んでくるノワールには照れ顔を見せてみるわたし。そうして上手く話を逸らせたわたしは…心の中で胸を撫で下ろす。

 今のわたしに、左腕はない。イリゼが言うには、目覚める直前に消えちゃったとかで…それは多分、わたしの心がくろめから離れたから。それが引き金になって、くろめの作ってくれた腕も、多分無くなっちゃったんだと思う。

 腕がないのは、凄く不便。…なんてレベルじゃない。片手じゃゲームは勿論、紙を押さえて文字を書いたり、お箸とお茶碗の両方を持ってご飯を食べたりも出来ないし、今みたいに左側の物も取れない。何より……

 

「…ねぇ、ネプテューヌ」

「ん?なぁに、ノワール」

「…流石にそれは、誰だって気付くわよ?」

「……っ…そ、そっか…そう、だよね……」

 

 呼ばれて振り向けば、そこにはわたしをじっと見つめるノワールの顔。いーすんも、他の皆も、同じようにわたしを見ていて…やっぱり、誤魔化し切るのは無理みたい。

 

「…これはもう、隻腕のネプテューヌとして、太刀からボウガン使いに転向……」

『ネプテューヌ』

「……うん、ごめんね。気にしてくれてるのに誤魔化すのは…良くないよね」

 

 もう一度だけ冗談で躱そうとしてみたけど、返ってきたのはベールとブランからの、窘めるような視線と声。そこに籠っているのははぐらかされた事への不満じゃなくて、わたしが誤魔化して何でもないように振る舞おうとしている事への怒り。

 皆は、わたしを思って怒っている。無理するなって、そういう気持ちが伝わってくる。…だからわたしは、考えを変える。隠そうとするのを止めて…その上でわたしが思っていた事を、皆へと伝える。

 

「…ねえ、皆。わたしのお願い…我が儘な考え方かもしれないけど、訊いてくれるかな?」

 

 

 

 

 お姉ちゃん達は戻ってきたけど、まだすぐには動けない。動けないし、今は自分の身体を癒す事を最優先にしてほしい。だからわたし達は、ここ最近の通りの生活をしていて…同時にわたし達も、しっかり休息を取るようにしている。戻ってきたと言ってもお姉ちゃん達はまだ戦えないし…今は、イリゼさんもいないから。

 イリゼさんの事は、凄く心配。出来る事ならあの時止めたかったし、今すぐにでも助けに行きたい。けど、それをしちゃったらイリゼさんの折角の行動が、選択が水の泡。だから、わたし達が今しなきゃいけないのは、万全の体制を整えておく事。次に何が起こっても、それへ全力で当たれるようにしておく事。それに…わたしにはもう一つ、ずっと気掛かりな事がある。

 

「ごめんなさいね、ネプギアちゃん。ネプテューヌだけでなく、わたくし達までお世話になって…」

「いえいえ、会いに来るついでですから。手間でもないですし、これからも任せて下さいね」

「…ほんとに、貴女の妹は良く出来た子よね」

「ロムとラムともよく遊んでくれるし、助かるわ」

「ふふーん、何せわたしの妹だからね!」

『ネプテューヌの妹(な・です)のにね』

「ちょっとぉ!?」

「あ、あはははは……」

 

 いつもと…くろめさん側に付いてしまう前と何も変わらないお姉ちゃん達のやり取りに、自然と感じる安心感。まだ安静にしてるように、って事らしいけど、お姉ちゃん達は全員元気で、これなら自由に動けるようになるのももうすぐな筈。流石にまだ、万全の状態にはならないとしても…お姉ちゃん達には、少しずつでもしっかり身体を治してほしい。

 

「むむむ…ネプギアが良い子なのは、わたしの教えの賜物だよね…?」

「え?そ、それは…そう、なのかなぁ…?」

「そ、そうだよ!そうだと言ってよネプギィー!」

「元ネタとは逆の発言になってますわね…」

「え、えぇと…その、わたしこの後も予定があるから、今は一旦これで戻るね…?」

「がーん!ネプギアに逃げられる…!?」

「いやネプギアの事なんだから、真面目に予定気にしてるだけでしょ。ネプテューヌの事は気にせず、行ってくれて構わないわよ」

 

 呆れ顔で肩を竦めつつ、わたしをフォローしてくれるノワールさん。それにわたしは頷いて、お姉ちゃんの側から部屋の出入り口へ。…ほ、ほんとは反応に困って話を逸らした部分も、ちょっとあるんだけど…フォローしてくれたノワールさんの為にも、黙っておこうかな…。

 

「ぶー…なーんて、ね。今…っていうか、ここ暫くはわたしの分のお仕事も出来る限りしてくれてたんでしょ?大変だと思うし、忙しい時は来てくれなくても大丈夫だからね?」

「ううん、大丈夫だよ。皆さん手伝ってくれるし…お姉ちゃんと話すと、それだけでも元気になれるもん」

「ネプギアちゃん…疲れた時は言うんですのよ?マッサージでも何でも、わたくしがしてあげますわ…!」

「貴女もブレないわね…ある意味流石だと思うわ。全く羨ましくはないけど」

「残念、そんな隙を見せるわたしじゃないんだもんねー。…じゃあネプギア、今日も頑張って」

 

 お姉ちゃんからの優しい言葉を受けて、わたしは頷く。頷いて、扉へと手をかける。

 そうしてわたしは部屋から廊下へ。扉を閉める前にもう一度部屋の中を見て、その時お姉ちゃん達は皆わたしを表情や仕草で見送っていてくれて…お姉ちゃんも、わたしに手を振っていた。わたしに右手で……右手だけで。

 

「…………」

 

 普通ならそれは、何にもおかしくない事。幾らお姉ちゃんだって、こんなちょっとした事で両手をぶんぶん振って見送ったりはしない。

 でも…どうしても見えてしまう。気になってしまう。わたしへと振ってくれた右手、その反対の…病衣の袖から見える事はない、左にもあった筈のお姉ちゃんの腕が。

 それをお姉ちゃんは気にしてないみたいに、困ってもいないように振る舞ってる。けど、そんな訳ない。片腕がないのに不便じゃないだなんて、平気だなんて…そんな筈がない。…だからわたしは、いーすんさんの所へ向かう。

 

「…いーすんさん、少し良いですか?」

「どうしましたか、ネプギアさん(・ω・`)」

 

 ノックをして、いーすんさんの執務室へ。入って声をかけた時、最初いーすんさんはきょとんとした顔をしていたけど…多分わたしの顔に感情が出ていたみたいで、すぐにいーすんさんの雰囲気は変わる。

 

「お姉ちゃんの、事についてです」

「…何か、ありましたか?それとも…腕の、事ですか?(・ω・)」

 

 察してくれたいーすんさんに、わたしは首肯。いーすんさんも同じ事を考えていたのか、そんなにわたしの顔には考えてる事が表れちゃうのかは分からない。けど、そこは別にどうでも良くて…頷いたわたしは、そのまま切り出す。

 

「…いーすんさん。お姉ちゃんの左腕は、ただ切断されただけ…そうなんですよね?」

「はい( ̄^ ̄)」

「何か特殊な術式で手出し出来ないとか、細胞レベルまで駄目になってる…そんな事は、ないんですよね?」

「その通りです(´-ω-`)」

「なら…いーすんさん、お願いがあります。お姉ちゃんに、腕もちゃんとした治療を受けるか、義手の手術をするか言ってくれませんか?」

 

 初めにわたしは確認した。わたしの知っている事、聞かされている事が、本当に本当の事なのかを。それを確認して…それからわたしは、いーすんさんに言う。お姉ちゃんの腕を、何とかしてほしい…って。

 

「…ネプギアさん、それは……」

「分かってます。これまでは、先に身体を癒してほしいと思って黙ってましたが…わたしも言うつもりです。けどきっと、わたしが言ったらお姉ちゃんは、わたしに心配かけないようにって強がっちゃうと思うんです。だから……」

 

 前と比べて今は色々わたしに任せてくれる、わたしの事も頼ってくれるお姉ちゃんだけど、それでもわたしは『妹』。わたしの前じゃきっと強くて頼もしいお姉ちゃんでいようとするだろうし、そうしたくなる気持ちは分かる。

 だけど、いーすんさんは違う。いーすんさんはノワールさん達とはまた違う形でお姉ちゃんと『対等』の教祖だから、この事に関してはわたしよりも言葉が届き易いかもしれない。そう思ったから、わたしはいーすんさんに頼み込んで…わたしからの言葉を聞いたいーすんさんは、小さく頷く。

 

「ネプギアさん。確かにネプギアさんの言う通り、ネプテューヌさんの腕は治ります。そもそも女神はそういうものですし、義手も検査が必要ですが、可能性はあると思います(。-_-。)」

「……!じゃあ……」

「…ですが、それは出来ません」

「え…ど、どうして……」

「…他ならぬ、ネプテューヌさん自身が言っていたんですよ。治療にしろ義手にしろ、そうするとなると暫く戦線離脱する事になってしまう。この大変な時に、今の怪我の治療位ならともかく、それ以上戦いから離れる事はしたくない、と」

 

 出来ない。何故なら、お姉ちゃん自身がそう言ったから。治す為、義手を使えるようにする為により多くの時間を費やす事は、出来ない…と。

 分かる。そういう事を考えるのは、ほんとにお姉ちゃんって感じ。…だけど……

 

「でも、それは…お姉ちゃんが、お姉ちゃんだけが、今の辛い状態を我慢するって事じゃないですか…そんなのって……」

「ネプギアさんの言う事も分かります。わたしも個人的には、ネプギアさんに同意です。…ですが、ネプテューヌさんの言う事も間違ってはいないんです。イリゼ様が、腕の治療が終わるまで待ってくれる保証はありませんし、暗黒星くろめ達もまた健在。それに、ネプテューヌさんはこうも言っていました。くろめの作った義手ですら、ほんの僅かに反応が遅れていた。ならそれより遅れると思う普通の義手は、むしろない方がやり易い…と。これも確かに、一理あるかもしれません」

「でも…だとしても、お姉ちゃんは……!」

「…ネプギアさん。それは、ネプテューヌさんの気持ちですか?それとも…ネプギアさんの、気持ちですか?」

「……っ…!」

 

 今の状況を考えてるお姉ちゃんや、それを理解しているいーすんさんが間違っているとは思わない。でも、それは合理的な判断であって、気持ちを考えた判断じゃない。お姉ちゃんはきっと、自分が我慢すれば良いって、きっとそう考えて言っている。それをわたしは、どうしても認める事なんて出来なくて……だけど食い下がるわたしへと、いーすんさんは言った。それは、誰の気持ちなのかって。

 そう言われた瞬間、わたしは言葉に詰まった。勿論そんなの、お姉ちゃんの為。お姉ちゃんの気持ちを思っての事。……でもそれは…実際にお姉ちゃんが「我慢する」って言っていたのを、聞いた訳じゃないから。お姉ちゃんに無理な我慢をしてほしくないっていう…わたしの気持ち、だったから。

 

「…その気持ちは、何も間違ってはいません。ネプギアさんの気持ちは、きっとネプテューヌさんの支えになっていると思います。ですが…その話をした時ネプテューヌさんの顔に浮かんでいたのは、周りへの申し訳なさではなく、ネプテューヌさんなりの決意です。イリゼさんの事、今の状況の事、これからの事…それ等全てを考えた上での選択であると、分かってあげて下さい」

「…………」

「とはいえ勿論、どちらの気持ちの方が良い、尊いなどという事はありません。ですので…ネプギアさん自ら、気持ちを訊いてみるのも良いと思います。わたし達教祖や同じ守護女神がいる中だからこそ話した事、妹のネプギアさんだからこそ言える事…それぞれ、あると思いますから」

「…そう、ですね……」

 

 優しくわたしに助言してくれるいーすんさんに、こくりと頷く。この後する事もあるから、それで終わりにしてわたしはいーすんさんの執務室を後にする。

 そういう事も、あると思う。わたしだから話してくれる事…それがあるなら、嬉しいと思う。だけどきっと、いーすんさんやノワールさん達が了承する位の思いなら、わたしには止められない。止めて、あげられない。

 

(…これは、わたしの我が儘…なのかな……)

 

 お姉ちゃんが望ましい事を押し付けるのなら、それはわたしの我が儘。でも左腕無しで生活を続けるのが、辛くないなんて筈がない。…だったら、どうしたら良いのか。もし本当に、心から今のままを望んでいるのなら、わたしは応援する方がいいのか。……いーすんさんは、訊いた方が良いと言っていたけど…それで本当に良いのか、わたしの心の中には迷いが生じていた。




今回のパロディ解説

・「〜〜グミじゃなくて黒飴〜〜」
ギャグマンガ日和シリーズに登場するキャラの一人、牛山サキの台詞の一つのパロディ。同時にこれ、ネプテューヌがマネージャーのパロネタをしている訳でもあります。

・「〜〜隻腕のネプテューヌ〜〜太刀からボウガン〜〜」
モンハンシリーズ(ノベル版)に登場するキャラの一人、クルトアイズの事及びその異名。でもネプテューヌの場合腕が丸ごとなくなってるので、多分ボウガンも無理ですね…。

・「〜〜そうだと言ってよネプギィー!」
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争の各話サブタイトルの一つのパロディ。しかしベールも触れた通り、この場合求めているのは否定ではなく肯定です。
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