超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
天界へ帰還…私からすれば少し変な表現ではあるけど、多くの人の話を聞いた後、私達は天界へ戻った。
扉を潜って出た先は、多分先程訪れた場所と違う。天界ならどこでも良いのか、どこからでも狙った場所に接続出来る訳じゃないのか…とにかく見える景色は、さっきとは違っている。
「…ねぇ、もう一人の私。…私の事…自由なままで、良いの…?」
「逆襲するとでも?…したくばすれば良い。されたところで、抑え込むだけだ」
浮き島に降りたところで、私は思っていた事をもう一人の私に問う。今の私は、一切の拘束も制限も受けていない。条件の関係から、私が逃げる訳にはいかない立場にあるというのを差し引いても、普通に考えたらもう少し私に対して何かしらしておくべきで……だけど返ってきたのは、ぐうの音も出ない返答だった。…確かにまぁ、その通り…もう一人の私には、多分不意を突いたとしても歯が立たない。
「する気がないのなら、それで良い。…聞かせてもらおうか、お前が人々から聞いた話を」
「…うん」
どうにもならない実力差がある事は疾うに分かっている事。だから別にショックでも無いし…それよりも今は、話したい事がある。
とはいえただ主張したって、もう一人の私が応じてくれるとは思えない。だから先に、私が応える。さっきも言われた、もう一人の私からの要求に。
(先に話を聞いていたのは、一人一人にあった言葉を返す為だと思ってたけど…これは、他にも理由があるって事だよね…?)
もう一人の私と向き合い、私はあそこで聞いた言葉を、受け取った思いをもう一人の私へ伝える。それにもう一人の私は一切口を挟む事なく、真剣そのものの表情で聞く。
より多くの人の事を知りたいからか、今の人が抱える悲しみをもっと正確に知る為か、或いは全て知り、認識しておく事が女神の使命であると考えているのか。…どういう意図かは分からない。分からないけどその真剣さは十分に伝わってきたから、私は一人一人の話を丁寧に伝えた。もう一人の私の為にも、話してくれた人達の為にも、この話を雑には出来ない。
「……っていうのが、最後の人の話だよ。何か、質問はある?…って言っても、聞いた側の私が答えられる事なんて限られているけど…」
「いいや、無い。…確かに、忘れる訳がないと言うだけはあるな。人々の思いを、よく聞いている」
「……っ…と、当然だよ。私を信じて話してくれた人の思いには、真摯に向き合うのが女神の礼儀ってものだから」
「その通りだ。だが、女神であるならそれは当然の事。それすら出来ぬようなら、女神の名を語る事すら烏滸がましい…ただ、それだけに過ぎん」
一通り説明を終えた後の、よくある確認。その位の感覚で、私は質問があるか訊いて…けれどそれに返ってきたのは、思ってもみなかった言葉。
もう一人の私が、私を評価してくれた。…軽く、たった一言の言葉に過ぎないのに、それでもそれが、私にとっては嬉しかった。さっきの私を分身体と呼んでくれた時と同じように、胸のつかえが取れるような嬉しさがあった。
その評価自体は、すぐにもう一人の私自身によって価値のないものへと変えられてしまう。…だけど、それでも良い。マイナスではない評価を、私への思いを、もう一人の私が向けてくれた事は事実だから。
「…何を喜んでいる」
「…嬉しいよ。だって…もう一人の私が、私を見てくれたから。ちゃんと、私の事を…見て、くれたんだから」
「訳の分からない事を……だがまあ、いい。その『もう一人の私』という言い方も含めて…答えてもらおうか。──何故お前は、私と同じ姿をしている。何故、私と同じシェアエナジーを担う事が出来ている」
興味がない…というよりは、今最優先に訊くべき事ではない。そんな雰囲気でもう一人の私は「まあいい」と言い、改めて言う。浮遊大陸でも私にぶつけた、その問いを。
「……分からないの?それを、貴女は…もう一人の私は、知らないの…?」
「知っていれば訊くものか。それともまさか、そんな言葉で私を惑わせるとでも?」
「……そ、っか…」
眉一つ動かす事なく、淡々と答えるもう一人の私。そこに嘘を吐いているような気配はないし、ここまで見てきて分かったもう一人の私の性格からして、嘘を吐いたり隠したりするとも思えない。…知っているとすら思いたくない程、私に失望している…その可能性も、ゼロじゃないけど……いや、やっぱりそんな事はない。もしそうなら、もう一人の私はきっとそう言ってる筈。もう一人の私は、そういう女神だ。
……だとしたら、もう一人の私は本当に知らないって事になる。それも辛いけど…もう一人の私が私を知っていてくれない…そう思うと、心が締め付けられるような思いになるけど…理解は出来るし、飲み込む事も出来る。だって現に、神次元じゃネプギア達女神候補生がいないから。次元ごと、いる人いない人がいて、いる人も辿ってきた道は少しずつ違う事を、私は知っているから。…だからもしかすると、本当に今ここにいるもう一人の私は、別の信次元のもう一人の私で、その次元じゃ自身の複製体を…私を生み出さなかったのかもしれない。
「…何を黙っている。全てに答える、そう言ったのはお前の筈だ」
「……ああ。それを違えるつもりはない。そして、それ故に…改めて、名乗らせてもらおう。私はイリゼ、又の名をオリジンハート……原初の女神が創りし、その複製体だ」
もやもやとするところはある。でももやもやするからって、立ち止まっていたら何も変わらない。私自身の持つ思いに、何の答えもあげられない。
だから私は、真正面から向かい合う。原初の女神の複製体として…もう一人の私が生み出してくれた、もう一人のイリゼとして。
「…戯れ言を。私が創り出しただと?私はお前を創り出した事など……」
「だが現に、私はここにいる。貴殿と同じ容姿を持ち、貴殿と同じシェアエナジーを秘める、貴女ではない貴女が、確かにここに存在している。…そうだろう?もう一人の私よ」
「ふん。…確かにそうだな。だがそれは説明などではない。単なる事実を、言い直しているだけだ」
「…そうだね。だから聞いて。どうして私が生み出されたのか…私を生み出してくれた私が、どんな思いでいたのかを」
そうして、私は語る。私が知る、もう一人の私の思いを。経緯はイストワールさんから伝えられた内容を語るだけだし、それを除けば私が語れる事なんて、本当に限られている。
それでも、そんな私は…もう一人の私の存在は、私にとって大切な柱。かけがえのない人。…だから、私が語ったのは説明というより…知ってほしいという、私の思いだった。私を生み出してくれた人の事を、今ここにいるもう一人の私に知ってほしい…それが、私の願いで本心。
「……これが、私の語れる全てだよ。今話した事が、私の知る、私という存在と、生み出してくれた私の全て」
「……理解出来ないな」
話し終えた私は、もう一人の私の瞳を見つめる。伝え、もう一人の私からの答えを待ち……だけど返ってきたのは、その否定。
「その者の…お前が言う、私ではない私の、人へ対する愛はよく分かった。どこまでも人を信じ、愛する姿勢は、女神として正しいものだ。だが何故、己が身を引く。この私であるというのなら、何故女神の責務を放棄する」
「それは、人の未来を思えば……」
「人の未来を思うのであれば、尚更私自身で守れば良い。私自身で導けば良い。…現に今の信次元には、泣く者が数多くいる。苦しみを抱えたまま、その苦しみから解き放たれる未来も描けぬまま、生きざるを得ない者に溢れている。何故だ、何故その者達は苦しみや悲しみを抱えたままでいなければならない。何故女神は、苦痛からの解放を成していない。…それは今の女神に、全ての人へ癒しと幸福を与えるだけの力がなく、そこに至るだけの思いもないから以外に、一体何がある」
僅かな逡巡すらなく、私に最後まで言う事さえさせず、もう一人の私は断言する。今の自分の在り方が正しいと。間違っているのは、今の信次元の在りようの方だと。
確かに、もう一人の私が言っている事もまるっきり間違っている訳じゃない。私や皆が、全ての人の手を掴み切れていないのは事実。でも…こういう話に、絶対的な正解なんてものはない筈。
「…人は、今よりもっと良くなりたいから、もっと高みを目指したいから、頑張るものでしょ?成長しようと、新しい何かを生み出そうとするものでしょ? なら、その在り方じゃ……いつまでももう一人の私が守り続けて、導き続けるんじゃ…いつかそれが、努力の否定に繋がるんじゃないの?」
「浅いな。人の可能性は無限大だ。如何なる状況であろうと、如何なる環境であろうと、人は成長し続ける。高みへと昇り続ける。緩慢に見える時があるとすれば、それは未来への休息だ。より先を見据えた、賢明故の判断だ。そもそも…私達女神を生み出したのは誰だ。女神という、形ある奇跡すら生み出す『人』が、至上の存在が…そんな事で、止まる訳がないだろう」
人は苦境でこそ成長する…とまでは言わないけど、現状が満ち足りていたら、普通頑張る事への意欲は生まれ辛い。例えば料理でいえば、凡ゆる素材がそのままでも十分に美味しく、食べ易く、栄養も抜群だったのなら、料理なんて発展しない筈だから。
でもそれすらも、もう一人の私は否定する。…何がそこまで、もう一人の私を確信させるのか。人を信じているからこそというのは分かる。私だって、人の可能性は無限だと信じてる。でも、そこまで思うのは……最早、妄信の域だ。…いや、それどころか……
「…一つ、訊かせてもう一人の私。それは、信じるに足る理由があるから信じる…結果としての信用じゃなくて、前提としての…初めから信じると決めた上での、信用なの…?」
「何を当たり前の事を。人を信じる事に、何か理由が必要だとでも?」
「……っ…そ、っか…」
その瞬間、その答えを聞いた瞬間…私には、見えたような気がした。もう一人の私の、本質が。
嗚呼、違う、違うんだ。私にもはっきりと、明確な言葉にする事は出来ない。でも、私ともう一人の私は違う。それは私がもう一人の私から、人の思いではなく女神から創り出された女神だから…とかじゃなくて、皆とも違う。そしてそれは…どっちが正しい、とかじゃない。
(…セイツ。貴女の…セイツの、言う通りだったよ)
あの時、セイツは私に言った。私はイリゼであってイリゼでない…原初の女神の複製体であっても、原初の女神そのものではないと。そのものじゃない私を、もう一人の私は求めたんだって…そこに意味が、価値があるんだって、言ってくれた。
この違いが、私を創り出してくれた私の望んだものかは分からない。でも…だからこそ、もっと知りたい。もっと話して、確かめたい。今目の前にいる、ここにいるもう一人の私の事を。
「…もう一人の私。私が貴女に言った事に、偽りはない。答えられる事なら、私の事でも、今の信次元の事でも…幾らでも、話すから」
「言われなくてもそのつもりだ」
淡白な返答、今のところ何も変わらないもう一人の私。でも、こうして話す事で、分かった事はある。さっきだって、もう一人の私と共に行動した事で、より深くもう一人の私を知る事が出来た。なら…続けよう。もう一人の私との対話を。もう一人の私を、知る事を。
*
一日一日、目に見えてお姉ちゃん達は回復していく。だけどそれは同時に、イリゼさんが作ってくれた時間の猶予がなくなっていくという事。…出来る事なら、戦わずに和解したいけど…多分、その望みは薄い。
それに、わたし達が立ち向かわなくちゃいけないのは、もう一人のイリゼさんだけじゃない。大変でも、一つ一つ、出来る事からやらなくちゃいけない。
「お、お待たせしました。すみません、ギリギリになっちゃって…」
「気にする事はない。君達には、女神の…君達でなければ出来ない務めがあるのだからな」
お姉ちゃん達のいる部屋へ、揃って入るわたしとユニちゃん、ロムちゃんとラムちゃん。そこにはもう、今からの話に参加する人達が集まっていて、わたし達がその最後。
気遣いの言葉をかけてくれたマジェコンヌさんに感謝をしつつ、わたし達は出入りの邪魔にならない位置へ。そうしてわたし達は…大きいお姉ちゃんへと、目を向ける。
「では、今回話す事は三つありますが、まずは……(。-_-。)」
「…うん」
皆からの視線といーすんさんの言葉を受けた大きいお姉ちゃんは、こくんと首肯。
これから大きいお姉ちゃんに話してもらうのは…大きいお姉ちゃんが隠していた事。後で話すと言ってくれた事。お姉ちゃん達を取り戻した後…というか、その直後から色々あって、一刻を争う事でもないからと今日まで遅れちゃったけど……これも、ちゃんと聞かなくちゃいけない大切な話。
「その…さ、多分もう皆分かってると思うけど…わたしが地下の事を知っていたのは、そこに出入りしてたから。どうして出入り出来てたのかって言えば…くろめの味方だった…ううん、今も気持ちとしてはくろめの味方だから…なんだ」
皆の前で、静かな声で、大きいお姉ちゃんは言う。ずっとわたし達に隠していた、大きいお姉ちゃんが誰の味方だったのかを。
そんな気は、していた。大きいお姉ちゃんが何かを隠しているのは分かっていたから…正直ショックは、そこまでない。
「くろめの味方、ね…ならその味方に襲われそうになってたっていうのは、裏切った、又は裏切られたって事?それとも…私達を信用させる為の、芝居かしら?」
「ちょ、あ、あいちゃん言い方…!その言い方はギスギス誘発必至だよ!?あいちゃん、不必要に味方間の空気悪くするキャラにチェンジしたの…!?」
「茶化すんじゃないわよねぷ子。…これは、はっきりさせておかなきゃいけない事なんだから」
「…大丈夫だよ、ちっちゃいわたし。あいちゃんの言う事は尤もだもん。…その言い方で言うなら…わたしがくろめを、裏切ったって事になる、かな…」
「…おっきいねぷねぷ、話して下さいです。どうしておっきいねぷねぷが、くろめさんの味方をしていたのかを」
悲しそうに、大きいお姉ちゃんが返す答え。裏切りたくなんてなかった、大きいお姉ちゃんはそう言っているようにも見えて…そんな大きいお姉ちゃんへ、コンパさんが訊く。わたし達全員が、訊きたいと思っていた事を。
それに大きいお姉ちゃんは頷いて、話してくれた。くろめさんとの偶然の出会いを。くろめさんの中に危うさを感じて、見て見ぬ振りなんか出来なくて、友達としてこれまで協力してきた事。くろめさんが本当は優しくて、皆を傷付ける事を望んでなんかいない…そう信じてきた事。だけど、くろめさんの中にある優しさは信じていても、それでも今のくろめさんには協力なんて出来なくて…それをあの時、伝えた事。
「くろめはさ、言ってたんだ。話せば分かり合えるって、そう信じてるって。…それは、わたしを引き止める為の方便、ってやつかもしれないんだけど…それでも、さ…やっぱり、そう言われたのに否定したんじゃ…裏切ったのは、わたしの方…だよね……」
「…おっきいわたし……」
「…なんて、わたしらしくない事言っちゃったかな…あはは、気にしないで気にしないで!これに関しては、わたしの問題だから!とにかくこれで、わたしが皆に話せる事はお終い!さぁ後は、煮るなり焼くなり好きにやってトーライっ!」
「な、なんでされる側がそんな意気揚々なんですか……」
どんな理由だとしても、自分はくろめさんの思いに応えてあげられなかった。罪悪感を感じさせる顔でそう締める大きいお姉ちゃんに、流石のお姉ちゃんもすぐには言葉をかけてあげられなくて…そんな状態、部屋内の空気に気が付いたのか、一転して大きいお姉ちゃんはあっけらかんとした態度に。某コーナーみたいなフレーズを口にする大きいお姉ちゃんに、ノワールさん達は仕方ないなとばかりに肩を竦めて……
「…じゃあ、丸焼き辺りが良いんじゃないかしら」
「そうね。私もそれで良いと思うわ」
「大きいネプテューヌは、変に凝った事をせずとも栄養価が詰まってそうですものね」
「そうそう、ないすばでーなわたしは栄養もたっぷり…って嘘ぉ!?ちょっ、ほ、ほんとに焼いて食べる気!?か、カニバリズム!?」
「ちっちゃいわたし…今こそ一つになる時なんだよ!」
「食す事で!?融合とかじゃなくて、もぐもぐやる事で!?い、いや…わたし食べてもあんまり美味しくないよ!?」
((あんまりなの……?))
…なんだかよく分からないコントが、お姉ちゃん達の間で繰り広げられた。ロムちゃんやラムちゃんは「え…!?」って顔をしていたけど、わたしやユニちゃん、コンパさん達は、どう反応したものか…って状態だった。
でもまあ多分、これもお姉ちゃん達の気遣い。一番辛い、大きいお姉ちゃん自身が空気まで気にしなくて済むようにする為の気遣いで……軽く肩を竦めたマジェコンヌさんが、一歩前へ。
「何にせよ、彼女の話はよく分かった。真偽の程はともかくとして…私個人の意見を言えば、『ネプテューヌ』らしい内容だったと思う」
「…そうね。今もまだくろめの優しさを信じる辺りは、やっぱねぷ子って感じだわ」
「やっぱりねぷねぷは、おっきくてもねぷねぷですっ」
「皆……」
「…その上で、選択は二つだろう。彼女、ネプテューヌを味方と見るか…信じるに値するか否かだ」
わたし達を見回したマジェコンヌさんの、「これから」を見据えた言葉。提示されたのは、大きいお姉ちゃんを信じるかどうか。信じられるか、どうか。
それに対して、大きいお姉ちゃんは何も言わない。その顔は、どっちの選択をされても受け入れる…そう言っているように、わたしには見える。
「…ま、言うまでもないと思うけど、わたしはおっきいわたしを信じるよ。わたしがわたしを信じなくて、どうするのって話だからね!」
「貴女はそう言うと思ったわ。…ただまぁ、原初の女神の前じゃ自分にも責任が…なんて言ってたけど、大きいネプテューヌがいなくちゃ私達は今もくろめの側に付いてた可能性が高いし、最悪どっちの側からも裏切り者認定される危険を犯してまで協力してくれた事は、考慮するべきじゃないかしら」
「考慮とは、相変わらず遠回しに言いますわねぇ。…わたくしは、大きいネプテューヌの気持ちも分かりますわ。皮肉にも、くろめの側に付いていた事で、彼女が単純な悪意から行動している訳ではないと、伝わってきましたもの」
「うずめ達の次元での出来事を含めて、大きいネプテューヌが力を貸してきてくれた事は事実。なら…答えは、一つね」
数秒間の沈黙の後、最初にお姉ちゃんが大きいお姉ちゃんを信じると言って、それにノワールさん達も続く。それぞれ口にした理由や視点は違うけど…皆さん、大きいお姉ちゃんを信じるって意思を表明する。
それにコンパさん、アイエフさんは頷いて、いーすんさんとマジェコンヌさんは、より多く接してきたわたしやお姉ちゃん達の判断を信じると言ってくれた。だったら後は…わたし達。
「……大きいネプテューヌ…さん。わたしは、大きいネプテューヌさんが、悪い人じゃ…ないと、思う。…でも……」
「…おっきいネプテューヌちゃんが、もっと早くはなしてくれてたら、おねえちゃんたちがまたいなくなったりはしなかったかも…そう、なんでしょ…?」
「…ごめんね、皆。絶対そう、とは言えないけど…もっとずっと早くから言ってたら、全然違う事になってたかもしれない…って言うのは、その通りだよ」
『…………』
ゆっくりと頷いた大きいお姉ちゃんの言葉に、黙り込む二人。二人の気持ちは、凄く分かるし、それを見たユニちゃんは、二人に向けて何か言葉をかけようとした。…でも……
「…だけど、大きいネプテューヌさんがおしえてくれたから、わたしたちは、おねえちゃんたちを見つけられた…だから……」
「…うん。おっきいネプテューヌちゃん、これからひみつはナシよ!それを約束してくれるなら、わたしたちもおっきいネプテューヌちゃんを信じてあげる!」
「ロムちゃん、ラムちゃん…勿論だよ!もう隠し事はしないって、約束する」
「ほんと?それなら…わたしも、信じる(こくこく)」
「うそついたら、その時はハリセンボーンのますんだからね!」
「…ラム、それだとモンスターになるわよ…?そもそも針千本だし…。…まあ、それはともかく…正直言えば、アタシは今すぐ全面的に信じる…って事は出来ません。でも、大きいネプテューヌさんに感謝しているのも事実です。だから…ラムじゃないですけど、その約束を信じて、アタシも信じてみたいと思います」
もう隠し事はしない。その言葉にロムちゃんとラムちゃんは笑顔を見せて、大きいお姉ちゃんを信じると決意。そんな二人に(というかラムちゃんに?)苦笑いしつつも、一拍置いたユニちゃんは大きいお姉ちゃんを真っ直ぐ見つめて、ユニちゃんも信じる事をはっきりと表明。
そうして最後に残ったのはわたし。最後のわたしを、大きいお姉ちゃんはじっと見ていて…だけどわたしの心は、最初から決まってる。決まってるし、変わらない。
「…大きいお姉ちゃん。わたしはずっと…大きいお姉ちゃんの事を、信じてます。だって、別次元でも…お姉ちゃんは、お姉ちゃんだから」
「ネプギア…うぅ、わたしもネプギアの事、本当の妹みたいに思ってるからねっ!」
「わぷっ!お、大きいお姉ちゃん…!?」
「あ、こらー!そういうのはベールがやるやつ…って、ベールのも許してる訳じゃないからね!?」
抱き締められてふかふかの胸に顔が沈むわたしと、(見えないけど)ぷんすか怒りを露わにするお姉ちゃん。何か前もあったような気のするやり取りに、若干の息苦しさを感じながらもわたしは思わず笑ってしまって……それからふと、思い出す。
「……あ、ところでお姉ちゃん…お姉ちゃんと、ねぷのーとの件は…」
「あ…そ、そうだった!ね、結果は分かったの?クロちゃんが言ってたのって、本当の事…?」
忘れてた…のかは分からないけど、大きいお姉ちゃんの意識が切り替わる事で離されるわたしの身体。
ねぷのーとの件。それはわたし達が大きいお姉ちゃんを助ける直前に言われたらしい、大きいお姉ちゃんの身体とねぷのーとの事。それについて、いーすんさんやミナさん達魔導書に精通している人達に調べてもらっていて…大きいお姉ちゃんからの問いに、いーすんさんはこくりと首肯。
「はい。件の魔導書、それに大きいネプテューヌさんの身体を調べた限り…恐らくは、そうなのだと思います( ̄^ ̄)」
「そう、なんだ…。じゃあ、やっぱり…クロちゃんから切れ端を取り返さない限り、わたしはまた同じ事になったり…?」
「そうなりますね。しかし別に、取り返す必要はありません。焼くなり切り刻むなりすれば良いんです(´・ω・`)」
「あ、なんだそれなら簡単…そんな事していいの!?え、それ死ぬ程痛いぞパターンじゃないの!?ねぷのーととわたしが繋がってるなら、それはもう最悪わたし死んじゃうんじゃ……」
さらりと中々に物騒な事を言ういーすんさんに、大きいお姉ちゃんは唖然。状態を聞いていたわたし達もびっくりしていーすんさんを見るけど…いーすんさんは、今度は首を横に振る。
「では、分かり易い例を見せましょう。ネプギアさん、そこのメモ帳から、紙を一枚取って頂けますか?( ̄▽ ̄)」
「え?…あ、はい。これでいいですか?」
「ありがとうございます。…さて、今そのメモ帳から、一枚失われた訳ですが…現在メモ帳は、どのような状態でしょうか?取った紙を切り刻んだとして、それがメモ帳に影響するでしょうか?( ˘ω˘ )」
『あ……』
全員を見回しながら話すいーすんさんの言葉に、わたし達ははっとする。
一枚取った事で、メモ帳はどうにかなったか。…そんな事はない。メモ帳から一枚なくなっただけで、メモ帳はメモ帳のままだし、機能もそのまま。この取った方の紙に何かをしても…メモ帳本体には、何の効果もない。
「で、でもさいーすん。クロちゃんは、切れ端でわたしに……」
「それは切れ端そのものを傷付けたのではなく、『魔導書の一部だったもの』として、それを介して影響を与えたのだと思います。彼女は端末とサーバーに例えていたようですが、これも端末の一つを物理的に破壊する事が、サーバーそのものへの攻撃になるか…と考えて頂けると分かり易いかと(´・∀・`)」
「あ、あー…そういう…そっか、そうだったんだ……」
「焼く、切る等をしても一切影響がない…とまでは言い切れませんが、あったとしても多少痛む程度。少なくとも命に関わる事はないと、わたし達は考えていますd( ̄  ̄)」
お墨付きを貰って、ほっと胸を撫で下ろす大きいお姉ちゃん。わたしとしても、取り戻すのと焼いたり破いたりしてもいい(取り戻そうとして破けたりしても問題ない)とじゃ大違いな訳で、何とかなる可能性がぐっと上がって凄く安心。…本音を言えば、大きいお姉ちゃんとねぷのーとの繋がりそのものを切れる方法が見つかるのが一番だけど…それは最初から凄く難しいと言われていたし、大きいお姉ちゃんも「理由はどうあれ、繋がっちゃった事自体は軽率に使ったわたしが悪いんだもん」って受け入れていたから、それはそれとして飲み込めている。
「では、この件も解決…ではなくとも、対処の方針ははっきりとしましたわね。となれば、次は……」
「イリゼの事だね…イリゼ、大丈夫かな…私が皆の替わりになるとか言って、ぼっこぼこにされてたりしないかな…」
「ない、とは言い切れないのが不安よね…」
そう言いながら腕を組むノワールさんに、わたし達もそれぞれ頷く。
あの時イリゼさんは、冷静さを失って、感情的に言っていた訳じゃない。イリゼさんなりの考えがある様子だったし、大きいお姉ちゃんに対するもう一人のイリゼさんの様子からして、大きいお姉ちゃんを裏切ったり悲しませたりするような事を、もう一人のイリゼさんはしないと思う。…思うけど、やっぱり不安だし…今イリゼさんが無事かどうかだけでも知りたい。
「…おねえちゃん…イリゼさんに、おでんわ…するのは…?」
「電話?いや、流石にそれは……」
「やってみなくちゃわからないでしょ?大カガクジッケンでもそう言ってたもん!」
「ラムまで…分かった分かった。なら一応掛けてみるだけ掛けて……」
ベットの左右に来て言うロムちゃんとラムちゃんに迫られ、ブランさんは携帯端末を手に。いやいやまさか…と思いつつわたしがそれを見てると、ブランさんは端末を耳に当てて、暫く待って、それから「やっぱりね」と言おうとして……止まる。
「…ブランさん?どうか、しました…?」
「……繋がったわ」
『え?』
「…普通に、繋がったわ…しかも、原初の女神が預かってるとかじゃなくて…普通に、イリゼに……」
『……えぇ…?』
怪訝そうな顔で尋ねるユニちゃんに対し、物凄く困惑した顔で答えるブランさん。普通にイリゼさんに繋がった、そのまさかの結果にわたし達まで困惑する中、ブランさんが耳から話した端末を操作し、スピーカーモードに変えると……確かにそこからは、至っていつも通りなイリゼさんの声が聞こえてくるのだった…。
今回のパロディ解説
・「〜〜やってトーライっ!」、某コーナー
噂の東京マガジンのコーナーの一つ、やってTRYの事。…確かにネプテューヌ(大)、肉付き良いですもんね…。魅力的な身体してますもんね……。…ごほん、状態です。
・ハリセンボーン
遊戯王シリーズに登場するモンスターカードの内の一つ。初めはハリセンボンにして、それ魚の方じゃない?…と突っ込む予定でしたが…もう一捻りしてみました。
・「〜〜死ぬ程痛いぞ〜〜」
新機動戦記ガンダムWの主人公、ヒイロ・ユイの代名詞的な台詞の一つのパロディ。意図した訳ではないですが、タイムリーなネタになったと思います。
・大カガクジッケン
テレビ番組、大科学実験の事。その直前の、「やってみなくちゃわからない」も、この番組におけるキャッチフレーズですね。そして実際、繋がってしまいました。