超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第百三十五話 決戦への思い

 黄金の塔の破壊以降、これといって大きな問題は起きていない。猛争モンスターはもう殆ど現れなくなり、神次元は再び平和になった。

 でも、信次元では今も動乱が続いている。元々の問題の元凶が本格的に動き出し、一度は犯罪神という存在も復活しかけ……そして今は、もう一人のイリゼもいる。イリゼを生み出した、原初の女神が第三勢力の様に新たな脅威となって、状況をより厄介なものにさせている。イリゼや皆曰く、原初の女神も人の為に動いていて、敵というべき相手ではないらしいけど…脅威となっている事は事実。わたしとしても、ネプテューヌ達に刃を向け、イリゼを泣かせた原初の女神の事を、「人の為の行動だから」…って理由だけじゃ受け入れられない。

 それに、この一連の事態の元凶…その一人は、他ならぬレイ。わたしが、わたし達が取り逃がしたあの悪神が元凶の一角である以上、こうなった原因はわたしにもある。…いや、元を正せばわたしがあの時…タリの時代にレイを討ち亡ぼす事が出来なかったから、倒した筈が討滅し切れていなかったから、奴が復活するなんて事態を引き起こしてしまった。つまりこれは、手を抜いていた訳じゃないとはいえ、わたし次第で防げたかもしれない厄災だった事。…だから、だからこそ……

 

「やっぱりわたしも行こうと思うの!ねぇ、駄目!?」

「だ、駄目?…と言われましても……( ;´Д`)」

 

 わたしはイストワールに訴えた。信次元に、助太刀をしに行きたい事を。

 

「えぇ、分かっているわ。向こうは次元の境界が脆くなっていると分かっていても、次元移動を使わなきゃいけない事がある。クロワールに逃げられてしまった以上、知らぬ間に何度も次元移動を行われて、折角修復されつつある状態がまた悪化し始めてしまう可能性もある。だから本当に緊急事態だって時以外は、こっちから開いて行き来するのは止めるべきだ、って事はね。でも……」

「わぁ〜。ぴーしぇちゃん、いーすん、これが噂の『説明口調』ってやつなのぉ〜?」

「あ、うん。確かにこれは説明口調だね。けどぷるると、今それを言うのは……」

「ほぇ?あ…ご、ごめんねぇせいつちゃん…」

「…は、はは…今日もプルルートはマイペースね……」

 

 ここからがわたしの思いだ。そう思って本題に入ろうとしたわたしだけど、そこに割って入ってきたのはのんびりした声。わざとでも冗談でもなく、ただただ天然さから同じ部屋にいるプルルートが声を挟んできて…わたしは思い切り出鼻を挫かれてしまった。…プルルートの何が怖いって、基本は狙ってふざけるネプテューヌと違って、全く狙ってないからこそ予想も困難な事なのよね…。

 

「…こほん。じゃあ、改めて…緊急事態でもない限りはというなら、今がその緊急事態じゃないかしら。理由はどうあれイリゼは自分の身を原初の女神に委ねていて、ネプテューヌ達も戦いは避けられない状態で…しかも、ネプテューヌは左腕を失っている。この状況で、こんな事になって…今のまま、上手く何とかなると思う?」

「…確かに、セイツさんの言う事も一理あります。しかし…セイツさんには、何か打開策がお有りですか?何も策なくただ行くだけでは、次元の状態を悪くするだけですよ?(-_-)」

「そうね。だけど、ここで何もしなかったら、状況も何も変わらない。困った時の神頼み、なんて言葉があるけど…わたし達は頼む側じゃなくて、困った時に動く側でしょ?だって、女神なんだもの」

 

 イストワールの発言もご尤も。焦るような状況であれば、尚の事冷静に、よく考えて行動しなくちゃいけない。焦っている時は大概思考が浅く、安直なものになってしまうからこそ、意識してちゃんとした思考をしなくちゃいけない。

 けど恐らく、今考えたところで妙案なんて生まれない。現にこれまで良い案なんて生まれず、その結果今に至っている訳だから。そういう現状があるからこそ、今はまず動く事で状況を変えるべきなんじゃないかというのが、わたしが抱いている思い。

 

「うぅ、ん…けどさせーつ。ねぷてぬ達は言ってたよね?原初の女神は、信次元を破壊したい訳でも、私利私欲で襲ってきてる訳でもなくて、あくまで人の為に行動してる訳だから、自分達に『女神として』敵対しているんだから、自分達も女神として負けられないんだって。…なら、別次元のぴぃ達が助けに行くのは…ねぷてぬ達の、気持ちを踏み躙る事なんじゃないの?」

「それは……」

 

 首を軽く傾けて、考えを纏めながら話している様子のピーシェ。けど、その考えには考えさせられるものがある。確かにネプテューヌ達は、そう言っていて…そこにある思いは、女神ならきっと誰だって理解出来る。

 

「…そうですね。彼女がネプテューヌさん達の事を、今の信次元を守るのに相応しくないという理由で敵対しているのなら、わたし達が加勢するのは、その理由に説得力を与えてしまうかもしれません(¬_¬)」

「……?ぴーちゃんと、いーすんの言う事は分かるけどぉ…セイツちゃんは、女神としてじゃなくて、友達として助けたいんじゃないの?それも、駄目なの…?」

 

 今ピーシェが言った事は間違ってない。でも…そう言おうとしたところへ、イストワールとプルルートの言葉も続く。イストワールはピーシェに同意して、プルルートは逆にわたしの事を支持…というか、プルルートなりの考え方を口にする。

 どっちが正しい、なんて事はない。ピーシェやイストワールが言う事は真っ当だし、わたしが助けに行きたいのは、友達だから。大変な中にいる友達を助けるのに、納得を得る必要なんてものはない。

 でも…プルルートの言う事は、少しだけ間違ってる。わたしが助けに行きたいのは、勿論皆が友達だからだけど…今信次元が置かれている状況にはわたしも責任があるんだから、それを『女神として』放置するのは…わたし自身が、許せない。

 

(…けど、だからって加勢に行って、皆の気持ちに泥を塗るのが、わたしの…レジストハートの、する事なの?…えぇ、違う。それはわたしが望む事と、まるで違うわ。それに、仮に加勢をしに行ったとして……)

 

 助けに行きたい、力になりたい。この思いに偽りはないし、やっぱり何もせず成り行きを見守る…なんてつもりもない。けど思いを踏み躙るって事は、その人の心を踏み躙るって事。色んな人の、皆の心の動きに、感情に沢山の喜びや感動を貰ってきたわたしだからこそ…そんな事をするのは、絶対に駄目。

 加えてここまでは「まず行くか、行けるかどうか」が問題だったから触れなかったけど、わたしの加勢で勝敗が変わるのか…っていう問題もある。先手を取られたとはいえ、ネプテューヌ達もネプギア達も、全員が殆ど抵抗すら出来なかった存在を相手に、今現在のわたしが一体どれだけ対抗出来るのか。戦闘どころか会った事すらない相手に尻込みするようじゃ、女神の務めなんて到底果たせやしないけど…勇気と無謀は、全然違う。

 わたしを見つめる、三人の目。三人共、わたしの次の言葉を待っている。言い出したわたしが、三人の意見を聞いて、どう思ったか、どうするか…それを聞く為に、見つめている。そしてわたしは…考えている。迷っている。皆の気持ちを踏み躙る事無く、皆を助ける方法を…女神として戦いに臨もうとしている皆に、レジストハートとして一体何をするべきか、わたしの責任を果たすにはどうしたら良いのかを、自分と皆、全部の考えを見つめ直してしっかりと……

 

「……あ」

 

 考えた。考えて、考えて……そしてわたしは、思い付く。わたしの思い、譲れない事、その全てを貫く方法を。

 

「せーつ…?」

「セイツちゃん…?」

「…ねぇ、皆。確かに二人の言う通り、ただ加勢するんじゃ向こうの皆の思いを踏み躙る事になるわ。だけど、ここで静観するのがベストな選択だとも思わない。だから…こういう事なら、どうかしら」

 

 そうしてわたしは皆に伝える。わたしの考えた、これなら…って行動を。

 分かってはいる。これが信次元の問題な以上、最後は信次元の皆次第になる。自己責任とか管轄とかじゃなく…それを放棄してしまえば、女神の名折れだから。そこを奪ってしまえば、最早侵略だから。

 でも、わたしはわたしと共に戦ってくれた人達に、協力の強さを教えてもらった。プルルート達と触れ合う中でも、女神同士だって手を取り合えば良いんだって知る事が出来た。だからこそ…わたしは止めたりなんかしないわ。イリゼの、ネプテューヌ達の…向こうにいる皆の、力になる事を。わたしの責務を、果たす事を。

 

 

 

 

「……よし」

 

 最後に一度手をぐーぱーして、女神化を解除。同じように女神化を説いた三人と顔を見合わせ…頷き合う。

 

「…お姉ちゃん」

「えぇ、ここまで心配をかけたわね。…女神ブラックハート、復活よ」

「おねえちゃんは、おねえちゃんは!?」

「おねえちゃんも、ふっかつ…?(どきどき)」

「二人も、わたしの動きを見ていたでしょう?…大丈夫、復活よ」

 

 それぞれ自分の妹に、もう大丈夫だって伝えるノワールとブラン。わたしもネプギアにサムズアップして、ばっちりだって事を表現。ベールは……うん、まぁ…念じれば、あいちゃんとチカが感じ取ってくれるんじゃないかな…。

 

「良かった…。…でも、感覚は?長期間じゃなかったとは言っても、ずっとベットの上にいたんだから、鈍っちゃってる部分もあるでしょ?」

「だから、軽い模擬戦形式で身体を動かしたのよ。勿論、模擬戦と実戦は違うけど……」

「最後の詰めは、実戦でなければしようがありませんものね」

 

 ほっとはしながらも訊いてくるユニちゃんの言葉へ、ノワールとベールが軽く肩を竦めて返答。まぁ、もっとがっつり模擬戦出来れば実戦なしでも感覚もほぼ戻せると思うけど…そうしてる時間は、ないんだよね…。…っと、そうだ。まずわたし達がどこにいるか、それを描写しないとね。こほんっ。

 今わたし達がいるのは、プラネタワーのトレーニングルーム。ここにいるって事からも分かる通り、遂にわたし達は完治した。普通なら、それを祝してわいわいやろー!…とか思うわたしだけど…流石に今は、そうもいかない。

 

「…さて、と。じゃあ、わたし達はぱぱーっとシャワーだけ浴びちゃうから、ネプギア達は先に連絡しておいてもらって良い?」

「…良いんだね?お姉ちゃんも…それに、皆さんも」

 

 返ってきたネプギアからの言葉に、わたしもノワール達も頷く。身体はもう完治してるし…心なら、とっくに決まってるんだから。

 そうしてわたし達はシャワーに行って(前みたいにシャワー室でハプニング!…とはならないよ?)、それから四人で会議室へ。入るともう準備は出来ていて…モニターに、各国の皆の姿が映っていた。

 

「うーん…やっぱこの人数だと軽く威圧感あるよねぇ」

「あはは…でも実際に集まったら、威圧感どころか圧迫感すらありそうだよね。もっと広い部屋なら良いけど、そうじゃないならぎゅうぎゅうで……」

「そんな状況、勘弁だにゅ」

「ぎゅうぎゅうの状態……ある意味それも、トレーニングになる…かも…?」

「え、えぇぇ…?トレーニング云々以前に、そういう状況は会議的に問題があるんじゃ……」

 

 画面越しとはいえ個性的な皆がずらっと並んでる光景には、「おおぅ…」ってなるところがある。それをわたしが言うとまずコネクトちゃんが反応して、それにぷち子が返して、鉄拳ちゃんも反応して、5pb.が…って、何気無く言った一言なのに連鎖凄いね!ぷよを消すゲームとか、進化し続けるゲーム並みの連鎖だねっ!

 

「あー、皆。中々の光景である事はアタシも同意だけど、今は極力脱線を避けるべきじゃないかしら?何せ、向こうから仕掛けてくる可能性もゼロじゃないんだから」

「おー、流石シーシャ。支部長らしいリーダーシップ!」

「いやビーシャ、貴女もうちの支部長でしょ…ってしまった、これじゃまた脱線するわね。ごめんなさい」

 

 呆れ顔で突っ込みを入れた直後、そう言って謝るあいちゃん。でも別にこれ位で怒るような人はこの場にいないし、そっち方面で色々言うんじゃそれこそ話が脱線しちょうってもの。わたしも今は真面目モードに頭を切り替えるつもりだから、変な弄りをしたりはしない。

 という訳で、一度静かになる会議室とモニターの向こう。皆の視線はわたしの方に向いていて……って、あ、わたし?わたしから?…まあ、そういう事なら……

 

「…こほん。それじゃあもう、皆には言うまでもないと思うけど…わたし達は、もう一人のイリゼと…原初の女神と、戦うよ。もう避けられない戦いだから、っていうのもあるけど…ここで逃げたら、それこそもう一人のイリゼの主張が、正しいって認める事になるから」

 

 皆の前で一つ咳払いをして、わたしはこれからの事とわたし達の考えを伝える。それに対して、皆は何も言わず…だけどしっかりと頷いてくれた。それで良い、わたし達の意思に賛成する…そう、わたし達に答えるみたいに。

 

「この戦いに、加勢は不要よ。けど何かあった時、そっちにまで対応出来るかは分からない。だから皆には……」

「いつもみたいに、各国の事をお願い…ですよね?」

「そういう事なら、答えは決まってるねっ!」

「既に長い付き合いだ、今更言われなくても分かっているさ」

 

 わたしに続いて言うノワールの言葉に、ケーシャ、RED、MAGES.の三人が連続して反応。…そっか、そういえばMAGES.…っていうか第一期の別次元組は皆、別次元組のわたしとも知り合いだったんだもんね。

 

「…悪いわね、毎回」

「気にする事はないよ。そういう事で言うなら、元々あたしは船の事故で倒れていたところを助けられた身なんだからね」

「ふっ、確かに気にする事ではない。可愛い女の子を助ける事に、理由など必要な……もとい、信念を持って戦う者に力を貸すのは、王として当然の事なのだからな!」

「ほ、ほぼほぼ言ってましたわねミリアサちゃん…そう言ってもらえる事には感謝しますわ。とはいえ、頼み事は頼み事。ですので、きちんと頼ませて下さいまし」

「勿論!忍としても友達としても、最大限協力するよ!」

「無論だ。君達がやられてしまっては、その方がずっと困るというものさ」

 

 腕を組みながら言ったエスーシャの返答と、その言葉に頷く皆。…ほんと、皆に何かをお願いする時はいつも思う。本当に皆は…頼もしい。

 だからこそ、わたし達は改めてしっかりとお願いした。わたし達がもう一人のイリゼと戦っている間、何かあればその時は頼む、って。

 

「…けど、あたし達だけで良いの?大人数とは言っても、信次元全体から見れば微々たるものじゃないかしら」

「それに関しては、教会も教会で動くし、軍も警戒のレベルを上げる…んだと思うわ」

「そうですね、私もラステイション防衛隊の一員として頑張ります!……まぁ、この次元にはないので、今は一人部隊ですけど…」

「まあ、あたし達はこれまで通り、柔軟に対応出来る事を活かして…って事じゃないかな。だよね?ネプテューヌさん」

「そーそーファルコムの言う通り!…だよね?」

 

 ニトロプラスの疑問にケイブが答えて、第一期パーティーメンバーのファルコムの言葉にはわたしが答えて…ちょっと不安になったから、くるっと振り向いていーすんに確認。そしたらいーすんはちょっと呆れながらも頷いてくれて…ほっ、良かった合ってたぁ…。

 

「…さて、皆さんへ頼むのも終わりましたし…」

「後は……イリゼね」

 

 神妙な声音でそういうブラン。その言葉にわたしが頷くと、ネプギアがスピーカーモードで電話をかけてくれる。…イリゼを介して、もう一人のイリゼと話す為に。

 

(これで繋がらなかったら…まあ、仕方ないとはいえがっくしだよね…)

 

 電話にしてもインカムにしても、天界とじゃ流石に連絡が取れない。その関係で連絡が付かない事もあったから、まず繋がるかどうかで軽くドキドキしたわたしだけど…コールが始まってから十数秒後、無事にイリゼと電話が繋がる。

 

「お待たせ、イリゼ」

「お待たせ?…って、事は……」

「…えぇ。もう、私達は…大丈夫よ」

 

 応答してくれたイリゼへ向けて、前置きなしにわたしは切り出す。一瞬戸惑うイリゼだったけど、すぐにその意味を理解してくれて…ノワールの言葉で、答え合わせ。

 それを聞いたイリゼの声は、一旦途切れる。次の返答、もう一人のイリゼからの答えを待つわたし達の間には、段々と緊張感が生まれていって…だけと数分も経つ事はなく、イリゼの次の言葉は返ってきた。

 

「こっちこそ、お待たせ皆。…って、なんかこれだと私がもう一人の私の付き人みたいだね…はは……」

「…その様子だと、やはり苦痛を強いられている事はなさそうだな」

「それは、うん。…こほん。皆、いい?」

 

 ほんの少し頬を緩ませながらマジェコンヌが返答をして、その内容をイリゼが肯定。それからイリゼはわたし達に呼び掛けて…言う。

 

「──逃げたくば逃げれば良い。だが、ほんの一片でも女神としての信念、自らこそが人を守り、導くのだという気概があるのなら…明朝、天界に来訪せよ。そして、見せてみるが良い。この時代の、女神の意志を」

『…………』

「…これが、もう一人の私の言葉だよ。もう一人の私に、情けはない。もう一人の私を、ただ間違ってるって否定したところで、何も意味はない。だから…全力の、全霊の『正しさ』で以って……原初の女神に、立ち向かって」

 

 原初の女神の言葉と、イリゼの言葉。その二つを受け取って、わたし達は強く頷く。

 勝てるかどうかは分からない。原初の女神が、わたし達の事を理解してくれるかも分からない。だけど…見せる事なら、伝える事なら、わたし達の意思で出来る。わたし達の…わたし達、今の守護女神の覚悟で以って。

 

「…ねぷねぷ、皆さん……」

「だいじょーぶ。今イリゼに言われた通り…いつもみたいに、全力を尽くすだけだよ」

 

 決戦は、明日。場所は、天界。何かあった時の事は、頼れる皆に任せてある。だから…わたし達も、わたし達の信念を……貫くだけ。

 

 

 

 

 天界へと戻ろうとしていた最中、ネプギアから掛かってきた通話。それを終えたイリゼは、行動を共にしている相手…もう一人の自分へと、向き直る。

 

「…ありがとね、もう一人の私。皆の事を、ほんの少しでも考え直してくれて」

「…ふん。最後にもう一度だけ、この目で、この手で直接確かめようと思っただけだ。でなければ、人々からの理解も遠退く」

 

 感謝を伝えるイリゼに対し、原初の女神は素っ気ない態度で返す。だがそれにイリゼが気を悪くする気配はなく…嬉しそうな、表情のまま。

 元々原初の女神は、ネプテューヌ達守護女神を下すと言っていた。判断ではなく、結果としての撃滅をすると示していた。しかし、今し方イリゼへ伝えた言葉に、その旨はなく……それは即ち、戦いの中でもう一度だけ判断すると考え直したという事。無論、原初の女神はそう認めた訳ではないが…イリゼはそう、感じていた。

 されど同時に、イリゼにはまだ気になる事があった。そしてそれは、明日以降も訊く機会があるとは限らない。故にイリゼは、そのまま言葉を続けて訊く。

 

「…ねぇ、もう一人の私。もう一人の私が、ネプテューヌ達を相応しくないっていうのは、納得はしないけど…言いたい事の、理解は出来るよ。…なら…私は…?私自身は…相応しい、女神なの…?」

 

 それは、イリゼがずっと心の奥底で気になっていながら、口にする事はなかった疑問。守護女神、女神候補生…どちらにも間違っている、相応しくないと評したもう一人の自分が、何故自分にだけはその旨の発言をしないのか…それがずっと、気になっていた。

 相応しいから何も言わないのか。それとも評する価値すらないというのか。訊くと同時にイリゼは答えに緊張し…しかし初めに返ってきたのは、顔を背けるという彼女の行動。原初の女神は、イリゼと向き合う事を避け…それから答える。

 

「愚かしい事を言うな。お前が相応しい在り方であるものか。…だが、お前という存在は、今の時代の女神達とは違う。どこまで真実か怪しいものだが、お前が私に…女神によって生み出された女神であるというのなら、在るべき姿そのものが異なっている可能性もある。故に…安易な判断を、下していないだけだ。お前の存在を見極め、やはり相応しくないと分かった時は……」

「…うん。でも、そうはいかないよ。私はもう一人の私に生み出された。もう一人の私が望んでくれた、セイツや皆が私として在る事を応援してくれた、たった一人の私だから。だからこそ…私はもう一人の私の思いに応える為にも、やられない。やられは…しない」

 

 身体は横を向き、視線だけを向けて答えた原初の女神。それはただ聞くだけならば、優しさなどない、冷徹な言葉にも聞こえるが…イリゼはそれを落ち着いて受け止め、その上で言葉を返した。視線を、言葉を、真っ向から投げ返した。無論、イリゼにとってそれは喜ばしい言葉ではなかったが…それでも今のイリゼには、そう言い返せるだけの心があった。何より…原初の女神への、実際に会ったもう一人の自分への、信頼の思いが既にあった。

 数秒の沈黙。感情の読めない顔で見る原初の女神を、穏やかな自信の籠った表情でイリゼが見返し…原初の女神は背を向ける。背を向け、天界への移動を再開する。

 

「…もう一人の私、か…。もしも、彼女の言う事が本当ならば…それは……」

 

 ぼそり、と原初の女神が呟いた言葉。それはイリゼには届いていなかったが…そもそもこれは、聞かせる為に発した言葉ではない。

 徹頭徹尾、一貫して原初の女神はイリゼに対して冷たい態度を取っていた。悪意ではなく、純粋に女神として正しい在り方ではないという判断と、同じ姿を持ち、同じシェアエナジーを有する事への疑念から、友好的な態度を取る事はしていなかった。…だが、今の原初の女神の心には、イリゼに対する形容し難い思いがある。何故そんな思いが生まれているのか、それすらも分からない気持ちがある。女神として相応しくない在り方でありながら、そんな彼女との時間、彼女との行動が、然程不愉快ではない…普通ならばあり得ない感覚を、確かに原初の女神は抱いていた。

 それは、行動を共にし、人々と接するイリゼの姿を見た事で、無意識に女神としての可能性を感じているのかもしれない。イリゼが自身の判断を狂わせる力を有しており、見た目やシェアエナジーも何らかの偽装によって同じように見えているだけかもしれない。或いは、ひょっとしたら…本当に彼女が、自身が生み出した存在なのかもしれない。…そんな思いが、次々と原初の女神の中を巡り……だがそれを、原初の女神は一度打ち切る。

 

(…まあ、いい。何であれ、彼女の事は後回しだ。今は、あの四人の女神だ。既に、答えは決まっているも同然だが……せめて最後に、見せてみよ。曲がりなりにもそれぞれに信仰されている…相応しくなくとも、その程度には価値があったのだという事を)

 

 そうして原初の女神は今ではなく、これからの事に目を向ける。四人の女神との戦い、女神でありながら人に仇成す出来損ない共の討滅……そして、人がより平和に、より幸せに暮らせる未来を作る事へ。




今回のパロディ解説

・ぷよを消すゲーム
ぷよぷよシリーズの事。連鎖!…といえば、まずはこのゲームかなぁと思います。…何故か私の中では、連鎖の言い方が太鼓の達人の「コンボ!」になっていますが…。

・進化し続けるゲーム
パズル&ドラゴンズのCMにおけるキャッチフレーズの事。「芯貸して、芯貸して、芯、貸し続けるゲーム」…私には、こんなふざけた感じに聞こえるんですよね…。
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