超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第百四十一話 書き換え復活

 守護女神の四人、ネプテューヌ達四人は、原初の女神…もう一人の私に勝った。力ではなく心で、在り方で、今の時代を守るのに相応しいのは自分達だと…その為ならどんな脅威だって、どんな限界だって超えてみせると、もう一人の私へ示した。

 きっと、ネプギア達や、イストワールさん達は、誇らしかったと思う。だって四人はあれだけの戦いを繰り広げて、女神としての限界を超えて、私から見ても堅物なもう一人の私からあれだけの言葉を引き出したんだから。勿論、私だって嬉しい。四人の事は勿論だし…もう一人の私が、四人を認めてくれた事が凄く凄く嬉しかった。

 そんな決戦から一夜明けた今日。私、女神の皆、イストワールさん達教祖の四人、その全員が今はプラネタワーのある部屋にいて……

 

「ネプギア、あーん」

「あいちゃん、わたくしもあーんですわ〜」

 

……それはもう、平和な時間を過ごしていた。開口一番ネプテューヌとベールがネプギアとアイエフに切った林檎を食べさせてもらって、ベールの方はチカさんが嫉妬するという、日常パート全開な状態だった。

 

「おねえちゃんおねえちゃん、わたしたちもあげよっか?」

「おりんご、食べたい…?(つんつん)」

「う…な、なんかこの流れは、随分前にもあった気が……」

 

 そんな二組のやり取りを見てブランをつっつくラムちゃんとロムちゃんに、軽く表情を歪ませるユニ。本当に今は、のんびりとした時間が流れていて…でも別に、もう大団円を迎えた気になってのんびりしている、って訳ではない。

 ネプテューヌ達は、もう一人の私との決戦に勝った。けど一度は全快した身体も、最後の天舞零式でまた普通なら死んでいるレベルの重傷を全身に負ってしまった結果、再び絶対安静を余儀なくされた訳で…のんびりしてるというか、(少なくとも守護女神の四人は)のんびりせざるを得ないのが現状。…というか、あの後すぐに四人はネクストフォーム諸共女神化が解けちゃった訳で…もし私達がいなかったらどうなってたんだろう…落ちてく四人を、もう一人の私が助けに入ってくれたのかな……。

 

「はぁ。何とかなったのは良いけど、まさかまたこの生活に逆戻りとはね…」

「しかも今回は、ロムやラム達と戦った時より重傷ね…教えてコンパ。わたし達は、後何日こうして過ごせばいいの…?」

「そ、それは皆さんの回復次第ですぅ…」

 

 全身包帯やらギプスやらでまともに身動きも出来ないとなれば、ノワールやブランがぼやくのも当然の事。勿論、全て真正面から受ける事を選んだのは四人自身ではあるけど…気持ちは、分かる。

 

「んー、美味しいっ!…に、しても…いやぁ、ほんともう一人のイリゼの実力にはびっくりだよね。最後のアレなんて、竜破斬(ドラグ・スレイブ)とかレベル虚数フレアかと思っちゃったよ」

「全くですわ。上には上があるのは当然とはいえ、あれは最早チートではなくて?新フォームのお披露目戦闘で相手の大技を受け切るまでの耐久が勝利条件なんて、あんまりですわ」

「…ベール様もねぷ子も、見た目に反して余裕綽々よね…その精神力は、凄いけども……」

 

 続けて話すネプテューヌとベールももう一人の私との決戦について話してはいるけど、確かに重傷も重傷な見た目に反して、話す口振りには余裕がある。…というか、しれっとブランもさっきの発言でネタを交えてたし…ほんと、皆のバイタリティって凄いよね…。

 

「はは…そうだ。セイツとピーシェはさっき一旦帰ったよ。もう一度来て、改めてお見舞いに行くって言ってたけどね」

「あ、そうなんだ。ならその時には、わたし達もちゃんとお礼を言わなきゃだね」

「そうね。レイに邪魔されてたらどうなってたか分からないし、ちゃんと感謝を示さないと」

「とはいえ、今のわたし達は動く事もままならない身…」

「治癒能力も常人とは比較にならないのが女神とはいえ…やはりこれでは、それこそ話す位の事しか出来ませんものね……」

 

 そこで皆に二人の事をまだ伝えていなかったと思い出し、端的に説明をする私。セイツとピーシェ…神次元をプルルート達に任せ、ネプテューヌ達の決戦を、邪魔する存在から守るという名目でサポートしに来てくれた二人は、その目的通りに邪魔しようとしたレイの相手をしてくれていた。その後決着が付いたのをレイも何かしらの手段で察知して交戦を止めた(ならもうこーんな面倒な事やる必要ないしぃー?…と言ったんだとか)らしく、無事に離脱が出来た二人は事の顛末の説明や、怪我の治療(勿論こっちでも治療は出来るけど、こっちで受けると、ネプテューヌ達に気を遣わせてしまいそうだから…との事)等で神次元に戻って…というのが、一連の流れ。

 本当に、二人には感謝してる。イストワールさん達もそうだし、セイツ達もそうだし…もう一人の私へ直接今の女神の在り方を示したのはネプテューヌ達とはいえ、それは色んな人が協力を、手助けをしてくれた結果なんだから。

 

「それに、あんまりここでゆっくりもしてられないよね。静養の為守護女神は全員暫くお休みです!…じゃ、もう一人のイリゼに見せる顔がないもん」

「あら、らしくない事言うわねネプテューヌ。流石の貴女も、意識改革が起こったのかしら?」

「意識改革って、失礼だなぁ。それに新フォーム獲得直後から静養で暫く戦線離脱って、主人公としてもメインキャラとしても格好悪いしさ…?」

『あー……」

 

 意外な発言に茶々を入れるノワールだけど、表情自体には同意の雰囲気が浮かんでいたし、ベールやブランは素直に首肯。

 確かにそう、ネプテューヌの言う通り。今の時代、今の信次元で望まれている女神の在り方は、もう一人の私が考えていたものとは違うとはいえ、いつまでも静養していたらもう一人の私が良い顔をするとは思えない。…静養せざるを得ない怪我を負わせたのは、他でもないもう一人の私自身だけど…そう言って納得してくれるなら、そもそもこんな事にはなってないだろうし…。

 それに、もう一人の私関係なしに、女神がいつまでも表に出られないという状況は基本良くない。その点においてもネプテューヌは真っ当な事を言ってる訳で、何だかんだ言ってもネプテューヌだって守護女神…と思いきや、もう一つの理由は何ともネプテューヌらしいものだった。…こっちも気持ちは分かるけどね。

 

「あはは…でも、焦らずちゃんと休んでねお姉ちゃん。支え合うのは、姉妹だって…女神同士だって、同じでしょ?」

「う…まさかそういう返され方をするとは…ネプギアも、段々強かになってきたんだね…」

 

 にこりと穏やかに微笑みつつも、イストワールさんが言ったという『今の女神の在り方』を口にする事で、上手く反論を封殺するネプギア。でもやはりというべきか、ネプギアは純粋に支え合う気持ちで言ったらしく、してやられた…とばかりの表情をしたネプテューヌに「強か」と言われたネプギアは、慌ててそれを否定して…そうして部屋内は、賑やかな笑いに包まれる。

 さっき私は好きでのんびりしてる訳じゃない、みたいな感じに表現したけど、大きな山場を一つ越えてほっとしてる、っていうのも事実。そして私達にも心はあるんだから、こうして安堵し一度は肩の力を抜く事も、決して間違ってなんかいない…そんな事を思っていた時、不意に聞こえたノックの音。

 

「あ、はーい」

 

 誰に言われるでもなく、自然に扉を開けに行くネプギア。さて、来たのは誰か。パーティーメンバーの皆か、黄金の第三勢力(ゴールドサァド)の皆みたいに事情を知ってる人か、或いは教会の職員さんが直接口頭で何かを伝えに来たか──

 

「失礼する」

『え……?』

 

 そう、私は思っていた。多分皆も、似たような事を考えていたと思う。だけど……ネプギアが開いた扉の向こうから入ってきたのは、もう一人の私…あの後戦場となった場所から飛び去った、原初の女神だった。

 

「…ふむ。やはり昨日の今日ではこんなものか」

「…え…い、いや…ちょ、ちょちょちょちょちょ!な、な、何!?え、もう一人の私!?どういう事!?どういう事!?」

 

 きっと誰一人予想していなかった、予想外にも程がある人物の登場に、私達は揃って唖然。けどその当人、もう一人の私はなんて事ない様子で中に入るとネプテューヌ達四人を一瞥し…そこまで来てやっと我に返った私は、かなり混乱したまま慌てて呼び止める。

 

「落ち着け。お前こそ何だ急に」

「急に来てしれっと入ってきたのにそれ言う!?というか…色々あるけど、まずどうやってこの部屋に来たの!?どうやって知ったの!?」

「どうも何も、正面から入り、彼女等の場所を訊いただけだ。私は訊いただけというのに、わざわざ扉の前まで案内してくれるとは…彼は何とも快い人物だった」

「へ?…あー……」

 

 幾らもう一人の私でも、情報収集能力においては普通…どころか、身の上的な理由で普通以下の筈。そのもう一人の私が、昨日あの後治療を受けてここに来たばかりの四人の居場所を知ってるなんて…と思った私だけど、訊いてみたら話は単純だった。

 言うまでもなく、私ともう一人の私は同じ姿。雰囲気だったりプロセッサだったりは違うけど、私が二人いると知ってる人じゃなきゃその程度の違いで別人だとは思わない、そもそも別人という発想自体にならないだろうし、女神化している事に多少の疑問は持ったとしても、もう一人の私を私だと思って接してしまうのは当然の事。

 

「…イリゼ様、来るなら来ると伝えてほしかったものです……(~_~;)」

「…そうだな、確かにそれに関しては私の落ち度だ。すまない、イストワール。それに…君達にも、驚かせてしまった事を謝罪させてほしい」

「あ、は、はい…」

 

 振り向いた事で皆が驚いていた事に気付いた様子のもう一人の私は、皆へと向けて深々と頭を下げる。ただ驚かせたというだけでここまでしっかり謝るのは、やっぱりもう一人の私らしくて…でもその身体の向きからして、私含む女神に対しては然程謝ってる感じがない辺りも、やっぱりらしい。

 

「…で、貴女は一体何用かしら?」

「ま、まさか…昨日の事は撤回だ!とか、誰がたった一戦で認めるなんて言ったのだ?…とか言うんじゃないよね…?」

「そんな訳があるか。貴君等の事は、もう十分に認めている。まだ思うところはあるが、少なくとも撤回する気などはない」

 

 警戒するように尋ねるブランと、そんなの勘弁だよ…?と言わんばかりの顔で訊くネプテューヌに対し、もう一人の私はさらりと返す。

 

(内容としては四人へ対する好意的な事を言っているのに、口振りと雰囲気のせいで、全然そんな感じがない……)

「…では、ブランも言いましたけれど、貴女は一体何故ここに?」

「理由は二つだ。まずは君等の状態を確認する事。そして……これだ」

 

 私が何とも言えない気分でもう一人の私を見つめていると、ベールがもう一人の私へ改めて質問。その問いを受けたもう一人の私は、答えながら前に出て…そのベールが座っているベットのテーブルへ、右手を置く。

 その瞬間、聞こえたのはコトン、という乾いた音。あれ?…と思って見てみれば、そこにあったのは四つのシェアクリスタル。

 

「…これは?」

「使え。それで怪我は修復出来る」

『はい…?』

 

 まずクリスタルを見て、それから視線を戻すノワール。それにもう一人の私は真顔で返す…けど、はっきり言って分からない。返しが端的過ぎて、どういう事なのかさっぱり不明。

 

「…修復、とは?そのシェアクリスタルに、治癒能力があるという事かい?」

「いいや、そういう訳ではない。このシェアクリスタルに込めているのは、女神の記録にアクセスし、その記録を現在の身体に上書きする効果だ」

「え、えぇと…すみません、もう少し噛み砕いて言って下さると、助かります…」

「それを望むのであれば、勿論。…ふむ、例えるのなら外部ツールにより、女神の『怪我をする以前』のセーブデータを引き出し、『今の身体』へ上書きロードをする…で、どうだろうか?」

 

 硬い言い方に困ったような顔をしたミナさんが更に訊くと、もう一人の私はゲームの様な喩えで説明。そのおかげで、途端に分かり易くはなったけど…それって……。

 

「…大丈夫なの?それは」

「無論、乱用して良いものではない。だが、一度使った程度で致命的な問題に繋がるようなものではない事は、この私が保証しよう」

「…ほんとーに?」

「うそ、じゃない…?(おろおろ)」

「…信じられないと言うのなら、実際に私が使ってみせよう。尤もその場合、再精製するまで誰か一人は今のまま待つ事になるがな」

 

 チカさんに続いて、ラムちゃんとロムちゃんも不安混じりの視線を向ける。それはそうだ、当たり前だ。だってつい昨日まで、もう一人の私は四人を討とうとしていた訳で、その果てに今の女神の在り方を認めてくれたとはいえ、疑念や不安が残るのは心情として当然の事。

 それに対して、もう一人の私は「信じてほしい」と強く言うような事はしない。それは多分、使いたくないのならそれでいい…というスタンスだから。そして、ネプテューヌ達四人はもう一人の私を暫く見つめた後、四人で顔を見合わせて…それから、言う。置かれたクリスタルを、取ってほしいと。

 

「…お姉ちゃん、いいの?」

「えぇ。確かに昨日の今日で、しかもいきなり来てこれを使え、って言われても100%信じる事は出来ないけど…まだ元々の問題が解決してない以上、早く治せる手段を逃す手はないもの」

「そういう事ですわ。それにわたくし達を害する気なら、そもそもこんなものを使わずとも、彼女なら幾らでも手がある筈。ですわよね?」

 

 クリスタルの一つを手に取ったベールが視線を向けると、もう一人の私は黙って首肯。

 このクリスタルを使うと危険だ、っていう明確な証拠はない。あるのは可能性だけで、言い換えるならもう一人の私を信じられるかどうかって事。そしてそれぞれの理由があるんだろうけど…四人は、信用する事を選んだ。取ってほしいと言ったっていうのは、そういう事。

 私はそんな四人に、こくりと頷く。私ももう一人の私を信じているから。それから数秒後、他の皆も段々と頷いていき…最後には、ロムちゃんとラムちゃんも少し不安そうではあるけどクリスタルを渡す。

 

「…普通に使えばいいの?」

「あぁ。その普通、とやらが何を指しているかは分からないが…通常のシェアクリスタルと同様、シェアエナジーを解放すればいい」

 

 受け取ったブランの問いに、もう一人の私が回答。なら、と四人はそれぞれちゃんと動く方の手でクリスタルを握って、そのまま一つ深呼吸。多分その中で、もしもに対する最後の覚悟を決めて……四人はシェアクリスタルを解放。そこに込められた、シェアエナジーを身体に取り込む。

 

『…………』

「お、お姉ちゃん…大丈夫…?」

「うー、ん…なんか、全身がむずむずする感じはあるけど、それ以外は特に何…も…って……お、おお…おおおおおおおおっ!?」

「え、お、お姉ちゃん!?」

 

 解放した直後、揃って黙り込んだ四人。不安げにネプギアが問い掛けると、ネプテューヌは釈然としない顔で小首を傾げ…た次の瞬間、急に震え出し、変な声も上げ始める。

 他の三人も、何か少し様子が変。でも特に変なのがネプテューヌで、ネプギアが慌てた様子で呼び掛ける間も、ネプテューヌは奇妙な声を上げ続け…そして、ばたりと仰向けに倒れる。

 

「お姉ちゃん!?お姉ちゃんっ!?ちょっ、こ、これはどういう……」

「──復活(リ・ボーン)ッ!」

「ええええぇッ!?」

 

 ばったりと倒れてしまった事で、私達は騒然に。明らかにおかしい、多少調子が悪くなる位ならまだしも、倒れるなんて普通じゃない。中でもネプギアは取り乱し、倒れたネプテューヌの隣へ駆け寄りながらももう一人の私へ振り向い……た、直後だった。何やら下着姿になりそうな叫び声と共に、ネプテューヌがベットの上で跳ね起きたのは。

 

「おー、動く!動くよ皆!全然痛くないし、普通に動く!わっ、凄っ!ほんとに完治してるじゃん!」

「ね、ねぷねぷ…大丈夫、なんですか…?」

「見てのとーり、元気百倍ねぷねぷだよ!ほらっ、ジャンプだってこんなに出来…あだぁッ!?」

 

 腕をぐるぐる回したり、包帯を解いて怪我の具合を確認していくネプテューヌは、本当に元気に満ち溢れた様子。安堵より困惑が先行しているらしいコンパが訊くと、ネプテューヌはぴょんぴょこベットで跳ね回り…高く跳び過ぎた結果、ネプテューヌの脳天は天井に直撃。頭を押さえた状態でベットの上へと落下して……私達は、再び唖然。

 

「ネプテューヌさん…そうだ、お姉ちゃんは…!?お姉ちゃんは大丈夫…?」

「あ、え、えぇ…うん、そうね…ネプテューヌがあんまりにもびっくりな事をするから、自分で自分の事を忘れてたけど…大丈夫よ。ほらね」

「おねえちゃん、おねえちゃんは…!?」

「よいしょ、っと。ほら、これで安心かしら?」

「おねえちゃん…(ほっ)」

 

 体当たりギャグみたいな流れになったネプテューヌに微妙な雰囲気となった数秒後、はっとしたユニ達は、ノワールとブランを心配する…けど、二人も無事…というか、ネプテューヌと同様に快調。ベールはベールで「完治した事を証明しますわ!」とか何とか言ってアイエフにハグをしていて…なんか軽くカオスだけど、結論から言うと皆完治したようだった。

 

「…けど、凄い…もう一人の私が作ったとはいえ、シェアクリスタル一つで、こんな事が出来るなんて……」

「元々女神は人の形をした、シェアエナジーの集合体だ。であれば人を基準とした治療よりも、シェアエナジーとして見た方法の方が高効率である事はなんらおかしな事ではない」

「痛た…でもこれで絶対安静生活ともおさらばだね!にしても狡いなぁ、こんな回復方法があるなら鬼にカナブンじゃん!」

「虫が寄ってきてどうするのよ…けど確かに、この場で即完治出来るのは強力以外の何物でもないわね…」

「残念だが、そう甘い話でもない。…ネプテューヌ君、だったか。そう思うのなら、一度女神の姿に戻ってみるといい」

「へ?いいけど、それが何か…って、あれ?」

『……?』

 

 効果、速度、使用難度…どこを取っても非の打ち所がない治癒手段に驚きを示す私達だけど、そう甘い話でもないとの事。女神化を促されたネプテューヌは不思議そうにしながら、ベットを降りて…そこで、女神化をせず何故か怪訝な表情を浮かべる。

 

「…ねぷ子?女神化しないの?」

「い、いやしようとはしてるよ?けど何故か女神化出来なくて…えいっ、ていっ、そいやっ……って、あ、出来た…」

「…やはりな」

 

 何故か出来ない、というネプテューヌ。それに私達まで怪訝な顔になってしまう中、ネプテューヌは色々ポーズも取りながら唸って…その内不意に、普通に女神化。

 結局、ネプテューヌは何をしてたの?普通に女神化出来たじゃん。…女神化出来た事により、逆にそういう雰囲気となり…そんな中で、もう一人の私だけはどういう事か分かってる様子。

 

「簡単な話だ。過去の、怪我をする以前の記録を引き出し、今現在に上書きする…現在を、過去の状態に改変するという行為は、本来女神に備わった力ではない。それを、それ用に調整したとはいえ、外部から強引に行おうとすれば、一時的な弊害は避けられない」

「ははぁ…先程の喩えに沿って言うなら、違法ツールでデータ改竄をした事による、バグの発生…といったところですのね」

「その通りだ。たった一度使う程度なら、すぐに身体が持ち直し、異常も軽微且つ短時間で済むが、短期間に何度も使おうものなら…どうなるかは、私にも分からない」

 

 見つめた私達へ語られた説明は、確かにそれはそうだと思うもの。治癒しているのではなく、改変しているんだと考えると、リスクがあるのも納得出来る。…とはいえ、私達はそもそもそういう技術すらなかった訳で…凄い事には、変わりない。

 

「…ありがとう、もう一人の私。皆の為に、治療の手段を持ってきてくれて」

「彼女等が動けなければ、それは人々の不利益となる。それは彼女等の力不足が引き起こした結果だが、同時に私が引き起こした結果でもある。故に、人々の為私がすべき事をしたまでだ」

「わぉお、ここにきてまさかのツンデレ…どうするノワール、キャラ被っちゃったよ?」

「そうね、このタイプのツンデレは…って、さらっとツンデレ認定するんじゃないわよ!」

「あ、あはは…そういう理由だとしても、お礼は言わせて下さい。ありがとうございます、イリ…こほん、オリジンハートさん」

 

 ネプテューヌとノワールがいつもの漫才みたいなやり取りを繰り広げる中、ネプギアはもう一人の私に向き直り、ぺこりと頭を下げて感謝を伝える。

 今もう一人の私自身が言った事だけど、そもそもこれはもう一人の私が与えた怪我。そのもう一人の私へ感謝をするのは変な話(私もありがとうって言ったけど)ではあるけど、それでも感謝するのがネプギアな訳で…けれどどういう訳か、もう一人の私はそれを無視。……えっ…ちょっ…もう一人の私…?

 

「…………」

「…え…あ、あの…オリジン、ハートさん……?」

「……?…それは、私の事か?」

「へ?ち、違うんですか…?」

「違うも何も、私はそんな名前など知らん」

 

 突然性格の悪い事をし始めたもう一人の私…かと思いきや、どうやらそもそも自分の事だと分からなかったってだけな様子。けど、その反応を受けた私達はむしろ混乱。もう一人の私はもう一人の私なんだから、オリジンハートでない訳がない。なのになんで…そう思う中、不意にイストワールさんが「あっ…」と何かに気付いたような声を上げる。

 

「…いーすん、何か分かったの?」

「分かった、と言いますか…ご存知の通り、イリゼ様は信次元の歴史における、最初の女神です。言い換えるならそれは、歴史上イリゼ様以前に女神は存在していなかった…イリゼ様の時代においては、『女神=イリゼ様』だったんです。ですから……」

「オリジンハート…女神としての、個別の名前は必要なかった…という訳ね」

「そういう事です、ブランさん。一応確認もしますが、オリジンハートというのも後の時代になってから付けられた名前かと思います(´・ω・`)」

 

 もう一人の私は、オリジンハートとは呼ばれていなかった(可能性が高い)。…さらっと意外な事実が判明し、部屋の中は何だか不思議な雰囲気に。驚きではあるけど、その事実が分かったからといって何かが変わる訳じゃない事実故の、何とも言えない不思議な雰囲気。会話が一度途切れた事もあって、ここからどうしようという感じになり……っと、そうだ。

 

「…ねぇ、もう一人の私。昨日はあのままいなくなっちゃったけど、これからは……」

 

 これからは、一緒に行動出来る?…私は、そう訊こうとした。もう対立する理由はないんだから、一緒に行動も出来る筈だと思って。

 けれど、そう訊こうとした瞬間…窓の外に、何かが見えた。見間違いかと思うような…だけど、そうじゃないような気もする何かが。

 

「……っ!もう一人の私、今……」

「あぁ。今のは恐らく四つ…それもあの大陸、か」

 

 途中まで出かけた言葉を飲み込み、違う言葉を訊く私。それにもう一人の私も頷いて…四つという言葉で、ピンときた。多分これは…各国への、攻撃だって。

 

「…ユニ、ロムちゃん、ラムちゃん。もしあれがダークメガミなら、女神の力は必要になる。リーンボックスは私が行くから、三人は自分の国に…」

「…いいえ、その必要はありませんわ」

 

 意識を切り替えた私は、三人に目を向ける。それと同時に、話しながら部屋を出ようとして…けど、それをベールに止められる。

 いや、ベールだけじゃない。ベールが私を止めた時…ネプテューヌ達三人も、包帯やギプスを全て取って、すぐに動ける体勢を取っていた。

 

「結局ネクストフォームでの初陣は、バトルとしては勝ててないからね!ここはわたし達に任せてよ!」

「国への攻撃かもしれないなら、まず動くべきは守護女神よ。そうでしょう?」

「それに、今のが陽動で、本命がまだ控えている可能性もある。だから、まずはわたし達が行ってくるわ」

「皆……」

 

 士気と自信に満ちた、三人の表情。それを見た私は、一瞬「でも……」と言いかけて、だけど止めた。…その通りだと、思ったから。その通りだと思ったし…今の四人には、何の心配も感じないから。

 それは皆も同じ事で、異論なんか一つも出ずに、全会一致で四人へ賛成。もう一人の私もまた、腕を組んだまま頷いていて……四人は飛び立つ。女神化をし、窓から外へ。四方に分かれて…ネクストフォームになると同時に、加速して飛び去っていく。

 それを私達は見送って……改めて、頷き合う。ブランが言った通り、別の戦力もあるかもしれない。それに警戒する為にも…私達も、動こうって。

 

 

 

 

 女神達の予想通り、浮遊大陸から放たれた存在は、四体のダークメガミだった。各国へ一体ずつ出撃した、偽りの神。

 だが、その四体が各大陸に降り立ち、攻撃を開始する直前、舞い降りたのは四人の女神。ネクストフォームという、新たな力を身に纏った、四人の守護女神。

 四人は気付いた。四体のダークメガミの携える武装が、それまでとは違う事に。だが、そんな事は関係ないと構え…防衛を、開始した。国を害そうとする存在を討つ為に……守りたいものを守り、守護女神としての在り方を貫く為に。




今回のパロディ解説

・「〜〜教えてコンパ〜〜いい…?」
新機動戦記ガンダムW EndlessWaltzの主人公、ヒイロ・ユイの名台詞の一つのパロディ。でも結果的には、そのすぐ後に完治してしまいましたね。

竜破斬(ドラグ・スレイブ)
スレイヤーズにおける、代名詞的な魔術の一つの事。実際浮き島一つを粉微塵にしていますからね。…勿論、だからといって同等の威力がある、という訳ではありませんが。

・レベル虚数フレア
すばらしきこのせかいに登場するキャラの一人、南師猩の使う技(サイキック)の一つの事。…いや、原初の女神は自爆してる訳ではありませんけどね。

復活(リ・ボーン)
家庭教師(かてきょー)ヒットマンREBORN!の主人公、沢田綱吉が死ぬ気弾に撃たれて死ぬ気状態となった際に言う言葉の事。…頭に火は灯ってませんからね?

・元気百倍ねぷねぷ
アンパンマンの主人公、アンパンマンの代名詞的な台詞の一つのパロディ。実際ダメージは完全回復してますからね。流石に本当に元気百倍かは怪しいですが。
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