超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第百四十二話 不可侵の障害

──力が必要だ。…そう、思った。単なる身体能力、戦闘能力じゃない、もっと大きな…強大にして圧倒的な、超常の更に先を行くだけの力が必要だと、あれからより一層思うようになった。

 特別何かあった訳じゃない。ただ、意識する事で、見えてくるものも変わってきた。自分の手の届かないもの、もっと力があればと感じる事、先の犯罪神との戦いの後から考えるようになった「もしも」…それ等が俺に、思わせる。それが、そんな力があれば、いつかあるかもしれない危機や後悔を未然に防ぎ、大切なものを全て守る事が出来るんじゃないかと。

 だからって、思うだけでそんな力が手に入る訳じゃない。世の中そんな都合良くはいかないし、今ある力、限られた範囲で頑張る事しか出来やしない。…そう、思っていた。

 

「お待たせ、ほいよ」

「え?あ…あぁ」

 

 時間が空く度、ふと頭の中に浮かぶその思考。たらればの思考なんて、場所を問わず浮かぶもので…そこから俺を引き戻したのは、聞き慣れた声と俺の前に出されたクレープ。

 

「…悪ぃな、俺の分まで買わせに行かせちまって」

「気にするなって。忙しい中時間を作ってくれたんだから、これはそのお礼だよ。…て言っても、財力の差を考えればクレープ一つなんて…って話かもしれないけどさ…」

「そんな事ねぇよ。クレープは普通に嬉しいし…それにその…時間だって、俺が作りたくて作ったっていうか……」

 

 目の前で浮かぶ、自嘲するような苦笑いに俺は首を横に振り、金関係なく嬉しいんだと言葉を返す。続けて俺は、仕方なく時間を作った訳じゃないって事も言おうとしたが…その内に段々頬が熱くなってきて、恥ずかしさも湧き上がってきて、それを誤魔化すように俺は渡されたクレープを掴む。

 

「作ったっていうか…?」

「な…何でもねぇよ。それより貰うからな!」

「え、あ、おう…」

 

 我ながら強引な誤魔化し方な気もするが、仕方ない。それはもう仕方ないんだからと俺は口元までクレープを運び、見るからに甘そうなクレープをがぶりと一口……

 

「…ほわぁぁ……」

「…美味しい?」

「うん…これ、甘くてふわっとしてて、すっごく美味し……ご、ごほんっ。…ベンチに座ってのクレープってのも、中々良いもんだなぁ…!」

「……ぷっ」

「な…何笑ってんだ!何『いやぁ、誤魔化す姿も良いなぁ』みたいな顔してんだこらぁ!」

「えっ、サイコメトラー…?」

「違ぇわ!てか本当に思ってたのかよ…!」

 

……不覚にも生クリームとチョコの濃厚な甘さ、苺の甘酸っぱさで気が緩んでしまい、そこからの立て直しを逆に笑われてしまった俺。くっ…まさかこれを狙って、わざとクレープ選んだんじゃねぇだろうな…!?

 

「いや、クレープ選んだのは単に近くに店があったからだから……」

「うん、お前こそしれっと人の心読んでんじゃねぇか…ったく……」

 

 一体どこまでが冗談で、それをどこまで狙ってやってるのかいまいち分からないこいつだが、少なくとも悪意を持っている訳じゃないのは間違いない。だから本気で腹が立ったりはしないが、悪意がない分逆に困る部分もある訳で…軽く呆れながら、俺はクレープを食べ進める。…うん、けどほんとこのクレープは美味いな。甘さもそうだが、生地も美味しい。生地だけでも美味しい。ここの店はまた今度、皆とも行ってみるとしよう。

 と、食べ進めながら思っていると、隣の方から感じる視線。何だと思って見てみれば…彼が、俺の方をやけに穏やかな顔で見つめていた。

 

「…なんだよ、また何か変だったか?」

「いいや。ただ単に、難しい顔してるより、今みたいに楽しそうな顔してる方がやっぱり良いなと思ってさ」

「…それ、って……」

 

 もしかして、考え事をしていた時の俺は、そんな分かり易く難しい顔をしていたのか。近くに店があっただけなんて言ったが、本当は色々気を回してくれたんじゃないのか。…そう思って視線を向けた俺だったが、返ってきたのは曖昧な笑み。さて、どうだろうな…そう答えを濁すような、そんな笑い。

 

「…そういうとこ、なんだよな…」

「え?…何が?」

「へっ、言わねぇよ」

「う…止めろよそういう、思わせぶりな事言っておいて話そうとしないの…気になるだろ…」

 

 目を瞬かせているのを尻目に、俺もにやっと笑みを浮かべる。ほんとに気になる感じをしている姿を見るのも…悪くない。

 別に、心に響くような事を言われた訳じゃない。なんて事ない、後から思えば思い出すまでもないような、そんな他愛のない会話とやり取りで…だからこそ、心が落ち着く。素直に、純粋に、楽しいって思える。そしてそれは、内容だけが理由じゃない。きっとこれは、こうして話す相手が彼だから……

 

「…って、こんな思考は俺らしくねぇな…」

「……?いやだから、一体何を……?」

「だから言わねぇっての。……なぁ、急…だけどよ、一つ話を…聞いてもらっても、いいか?」

 

 こういう思考は柄じゃない、と自嘲気味に笑って、それから俺は向き直る。そんなやつだから、信頼して…思いや悩みも、打ち明けられる。

 訊かれた事には答えない癖に、自分の話は聞いてほしいなんて、身勝手だとは思う。けど、それでも頷いてくれた。勿論、と一切躊躇う事なく、俺に対して頷いてくれた。だから、俺はまず「ありがとう」と伝えて……それから、言う。

 

「──俺には、力が…他のやつとは全く違う、次元の違う力がある…みたいなんだ。その力を使いこなせれば、俺はきっと皆を…今まで以上に、もっと守れる…かも、しれない。……なんて、言ったらさ…お前は、どう思う?」

 

 

 

 

 原初の女神との戦いを乗り切ったらしいねぷっち達四人の現状確認と、装備の仕様変更を図ったダークメガミの試験運用…その二つを目的に、オレは四体のダークメガミを各国へ放った。

 別に負けても良かった。謂わばこれは威力偵察で、今のねぷっち達の事と、ダークメガミの動きを把握さえ出来れば良かったんだから。大幅強化ではなく、あくまで仕様を変えただけな以上、結果もある程度見えてはいたんだから。…あぁ、そうだ。交戦状態に入った時点で、目的は達成されたも同然だった、筈だというのに……。

 

「…………」

 

 目の前に映る、四つの映像。各国の、それぞれの戦闘を映し出していたモニターに今映っているのは、他に倒れ伏す四体のダークメガミ。一体は各部を斬り刻まれ、一体は頭部を叩き斬られ、一体は全身至る所を槍で貫かれ、そして一体は胸部が丸ごと消失した……手も足も出なかった、そもそも戦闘の形を成していたかどうかも怪しい程に、一方的にやられたダークメガミ。

 

「おーおー、こりゃ凄ぇな。時間見てねぇからよく分からねーが、大体三十秒位で四体のダークメガミが全滅じゃねぇか」

 

 モニター越しに繰り広げられた蹂躙の感想を、あっけらかんとクロワールは言う。他人事だと言わんばかりに、ある意味純粋な感想を口にする。

 ただ負けたんじゃない。ただ完封されたんじゃない。完封されるだけならまだ良かった。どうも新たな力を新しい、見た目からしてプロセッサの変更以上の変貌を遂げたねぷっち達の実力を、ざっくりとでも知る事が出来たのなら、十分価値があったんだから。

…けど、結果はこうだ。のわっちとダークメガミが正対し、のわっちが肉薄を仕掛けた…と思った次の瞬間にはもう、のわっちは背後にいた。ダークメガミの背後にいて、ダークメガミは各部関節を悉く斬り刻まれていた。同じようにぶらっちが接近し、ダークメガミも迎撃に動こうとした次の瞬間、突如ダークメガミは停止した。完全に動きの止まったダークメガミに近付いたぶらっちは、その頭部を叩き斬り…ぶらっちが離れた数秒後、頭部を潰されたダークメガミはそのまま崩れ落ちた。その二人に対して、べるっちと対峙したダークメガミは攻撃に移れはした。…が、その攻撃が届くより先に、降り出した腕の内側から無数の槍が出現し、それは腕を伝うように胴体へと登っていき、あっという間に全身を貫かれた。最も時間がかかっていたのはねぷっちで…けれどそれは、普通に接近をしていたから。肉薄するまでは普通で…けれど黒紫の光を纏った一太刀が胸部を斬り付けた瞬間、ダークメガミは胸部が丸ごと消失した。見間違いでも、誇張でもなく…それが、映し出された光景の全て。

 

「……冗談じゃない…」

 

 やられてもいいとは、確かに思っていた。…だが、これでは話にならない。ここまで一方的じゃ、ここまで訳の分からないやられ方をしたんじゃ…何の参考にもなりはしない。それに何より…今のねぷっち達は、ダークメガミを一撃で、一瞬で撃破するだけの力がある。これを想定外と言わずして、一体何を想定外と言うのか。

 

「…んで、どうすんだよくろめ。原初の女神と戦ってたらしい四人が、昨日の今日でこんだけ動けたって事は、和解なりなんなりしたんだろうが…あいつ等が協力関係になって、しかも守護女神、女神候補生、どっちも数段強くなったんじゃもう打つ手がない…なんて、そんなつまらねぇ終わり方したりなんかしねーよな?」

「…当然だ。協力関係と言ったって、そもそもオレはねぷっち達と原初の女神が潰し合う事になんて期待していない。それに……」

 

 ちらり、とオレを見やり、軽い口振りながらも奥底の見えないような声音で問い掛けてくるクロワール。その問い掛けに、オレは若干の腹立たしさを感じながらも答えを返し…それから、四つの映像へと視線を戻す。

 そこではもう、ダークメガミが消滅しつつある。そしてそのダークメガミを圧倒的な力で打ち倒したねぷっち達は今…揃って地面に落っこちている。撃破直後、多少の差はあれど四人共女神化が解け、そのまま下へと転落していた。…冗談みたいな展開だが…一つ、思い当たる可能性がある。

 単純な話だ。強力な力には、大概大きな弱点や、欠点が付いて回る。能力として尖り過ぎていて使い所が限られるだとか、身体の負担が大きいだとか、力の全ては制御し切れないだとか。絶対にじゃないにしろ、力というのはそういうもので…ねぷっち達の場合は、時間制限、或いはシェアエナジーの配給が短時間で間に合わなくなる程消費が激しい、というのが欠点だろう。それが分かっているのなら…対処も、出来る。

 

(…いや、対処するまでもないかもしれないね。継戦能力を端から捨てるような消費量だとするなら、他に術がなくなりでもしない限り、まず使える筈がないんだから)

 

 昨日は、レイが上手い事原初の女神を排除してくれれば御の字だと思っていた。一日明けた今日は、想定外な上相当喜ばしくない状態となっている。

 とはいえ、そんな事は諦める理由にならない。原初の女神の時点で、想定外も想定外。ならば今更、何を臆する事がある。

 

「…クロワール。君が見たいのは面白いもの、普通じゃないもの…そうだったね?」

「あぁ。面白きゃなんだって良いし、つまらねーならお断りだ。単純で分かり易いだろ?」

「そうだね、分かり易くて助かるよ。…見せてあげようじゃないか、クロワール。他の次元じゃ見られないような、そんな光景を」

「へぇ、そりゃ楽しみだ。けど、あんまりハードルは上げねぇ方が良いと思うぜ?世界はお前が思ってるより、俺が思ってるより…ずっと広くて、未知数なんだからな」

 

 ま、だからおもしれーもんも色々あるんだけどよ。そう言ってクロワールは締め括り、オレももう必要ないと映像を切る。

 全くもって想定外。流石はねぷっち達だけど、このレベルの強さは厄介。けれどねぷっち達と原初の女神、この両者間でぶつかってくれたおかげで、本当に準備がスムーズに進んでいる。後はその先に、どれだけ想定外があるかだけど…ならば、最初からそれを踏まえた用意をしておけばいい。想定外も、想定の内に入れてしまえば…何ら、問題はない。

 

「…アレを使う。レイを呼んできてくれ」

「俺がかよ…へいへい」

 

 レイの呼び出しをクロワールに任せ、早速オレは準備に入る。使いどころに迷っていたものだけど…ここまで来たならもう、出し惜しむ必要もない。それに…そうだ、この機を有効に活用するのも良いかもしれないな。

 

 

 

 

 予想通り、浮遊大陸から放たれたのはダークメガミだった。各国一体、計四体が現れ…でもその四体を、ネプテューヌ達が撃破。それも単独で、まともな勝負にすらさせず、ダークメガミからすればいっそ理不尽な程の強さで以って。

 ただ、快勝し、意気揚々と凱旋したかといえば、そうじゃない。戻ってきた時、無傷で勝利したネプテューヌ達は……

 

『酷い目に遭った……』

 

…見るからに疲れた状態で、げんなりとしたテンションだった。

 

「あ、あはは…お疲れ様、皆……」

 

 全員が(ネプテューヌ以外は一度自国の教会に寄ってから)戻り、再集合したところで、初めに四人が言ったのがこれ。思わず苦笑いしてしまった私だけど、笑い事じゃない…と四人は更に肩を落とす。

 

「んもう…これで三度目だよわたし…最新作入ってから、転落事故多くない…?」

 

 一体何が四人をこんなテンションにさせているのか。それは戦闘終了直後に起きた、四人の女神化(ネクストフォーム含む)の意図しない解除。空中で人の姿、つまりは飛べない状態になった四人は当然落下し…戦闘では完全な無傷だったのに、その後の落下で普通に怪我をしてしまっていた。軽傷で済んでいるとはいえ…確かに折角気持ち良い位の完全勝利をしたのに、戦闘外で怪我をしたとなれば、気分が落ちるのも無理はないよね。

 

「にしてもまさか、あんな勢いでシェアエナジーを消耗するとは…気付いていないだけで、赤くなっていたりしたんじゃないかしら…」

「なんでそんな高濃度圧縮粒子を全面開放したみたいな発想に…ま、まあ分からないでもないけど……」

「そんな冗談言ってる場合じゃないっての。今回の戦闘で、全力全開ならダークメガミも余裕で倒せるって事が分かったけど、現状じゃその後のリスクが高すぎるわね…はぁ…」

 

 私とベールのやり取りに半眼を向けつつ言ったノワールの言葉に、それはそうだと私達は首肯。確かに切り札としては凄まじく強いけど…これじゃ諸刃の剣にも程がある。四人がもっと高高度にいた場合、浮遊大陸地下での戦闘から通算して某幻想を殺す主人公さん並みに大怪我と治療を繰り返す事になっていたんじゃないかと思う。…いや、茶化したみたいな表現になっちゃったけど、「残る力を全て注いだ攻撃」と、「残る力を根こそぎ持っていかれるような攻撃」は、結果は同じでもまるで違う。

 

「…それに、向こうの狙いも気になるわね。陽動かと思ったら次の動きは特にないし、今更各国一体で攻め切れる訳ない事位は分かってる筈なのに…携行武装が違ったし、まさかくろめとは別の誰かが動かした…?」

「んー、どうだろ。そういえばイリゼ、もう一人のイリゼの方は?」

「あ、もう一人の私なら『眺めていたところで意味はない』とか言って、一人でどこかに行っちゃった…多分また、色んなところを回ってるんだと思うけど……」

 

 動きはない…と見せかけて各国内に潜入されてる可能性もあるからという事で、一旦戻ったネプテューヌ達と交代で女神候補生の四人はプラネテューヌ以外の三ヶ国へ移動したのがついさっきの事。ネプテューヌ達に戻ってもらったのは、元々完治後に予定していたネクストフォームの検査…というか、具体的にどんな力なのかを調べる為で、私ではなくネプギアがリーンボックスに行ったのは、単にここで待機していた私より、既に展開していたネプギアが行った方が早いから…というだけの事。

 そして今言った通り、もう一人の私も、あの後すぐに一人でどこかへ行ってしまった。でももう一人の私の事だから、何かあればどこにだってすぐ来られるだろうし、何の心配もない。…ない、けど……。

 

(…寂しい、な…折角、これからは一緒に行動出来るかも、って思ったのに……)

 

 分かってる。もう一人の私の信念は。単純に、純粋に、人の為に出来る事をしたいっていう思いと、それをすべきなんだって使命感が、もう一人の私にとっては第一なんだって事は。

 その在り方を、尊敬している。色々と極端なもう一人の私だけど、私はもう一人を間違っているとは微塵も思わない。…だけど、やっぱり…折角こうして出会えて、もう対立する理由もないんだから、もっと一緒にいたかった、もっと色々な話をしてみたかったっていうのが、今の私の正直な思いで……

 

「…でもそんな事言ったら、絶対怒られるか呆れられるかだよね…もう一人の私とは居たいけど、失望なんてされたくないし……」

「考えてる事ダダ漏れ状態になってるわよー、イリゼ…」

「ふぇっ!?あ、アイエフにコンパ!?」

 

 ネクストフォームの検査に行く四人を見送り、牽制を兼ねてプラネテューヌの上空を飛び回ろうと外へ向かっていた私。その最中、不意に私は声を掛けられ…それはもうびっくりした。というか…考えてる事をそのまま口にしてたなんて、今初めて気付いたぁぁ……。

 

「う、うぅぅ……」

「大丈夫ですよー、イリゼちゃん。わたし達、イリゼちゃんのそういう姿は前から時々見てるですからね」

「ぐふぅっ……!」

「いや、うん…鋭く抉るじゃなくて、柔らかく抉るって言葉があるとしたら、きっとこういう事を言うんでしょうね……」

「……?」

 

 優しげな微笑みから放たれた一撃に私が大ダメージを受ける中、アイエフは乾いた感じに苦笑い。コンパの方は、きょとんとしていて…分かってる、コンパからは無自覚の一撃が稀に放たれる事は分かってた事だけど…分かっててもガード不能な辺り、ある意味強過ぎるよコンパ…。

 

「…で、どうしたのよイリゼ。まあ、何を考えていたのかはざっくり聞こえてたけども」

「や、あの…多分、聞こえていた通りの事です……」

「そ、そう…。…まぁ、そんなに悲観する事でもないと思うわよ?」

「ですです。原初の女神さんは、何かあればきっとまた来てくれると思うです」

「それは、そうなんだけど……」

 

 確かにその通り。私達ともう一人の私は、人を、その生活を守るという同じ目的を持っていて、共通の敵だっている訳だから、もうこれっきり…になんて、むしろなる訳がない。きっとまた会える、そうは私も思っている。

 それでも私が寂しいと思うのは、一緒に行動出来る事を期待していたからなのか、それとも私が単に子供なだけなのか。…なんて、そんな事を考えていたら…いつの間にか、アイエフはにやにやと、コンパは微笑ましそうに私を見て笑っていた。

 

「え、な、何…?」

「何だか今のイリゼちゃん、昔のギアちゃんみたいです」

「同感。今以上にねぷ子の後を追っていた、ねぷ子がいないと不安になってた頃のネプギアとちょっと似てるわよね」

「えぇっ!?い、幾ら何でもそれは……」

『それは?』

「…ない、と…思いたいです……」

 

 まさか、昔のネプギアと重ねられるなんて。それも私より上の立場だったり、先輩だったりする人の昔の姿じゃなく、私が旅の中で教えてた頃…或いはそれより前のネプギアと重ねられてしまうなんて。

 酷い!…と言いたいところだけど、何となく否定し切れない気がするのが悲しいところ。だからかまた私は敬語になってしまい、それを聞いた二人は最早温かい目で私を見ていて…うぅぅ、居た堪れない…これじゃ居た堪れな過ぎるよぉ……!

 

「も、もうっ!あんまりからかわないでよね!それと私、そろそろ行くからっ!」

「あ、うん。…とにかく、折角対立状態は解消出来たんだから、もっと前向きに考えた方が気持ちも楽になると思うわよ」

「ねぷねぷと大きいねぷねぷは、以心伝心って感じです。だからイリゼちゃんの気持ちも、ちゃんと原初の女神さんに伝わるって、わたしは思うですからね」

「…それは、その…うん、ありがと二人共」

 

 恥ずかしさから逃げるように飛び立とうとする中、私の背中へかけられた声。そこにあるのは…いや、最初から二人は私を励まそうとしてくれてた訳で、その気持ちはちゃんと分かってるから、恥ずかしい気持ちはあるけど私は二人にきちんとお礼。それから女神化し、飛翔し、ある程度の高さまで上がってから…私はぱんっ、と両頬を叩く。

 

「もう一人の私と邂逅してから、私は皆に凄く心配をかけた。気だって使わせちゃった。…同じ事を二度繰り返してどうするの、私」

 

 あの時と今とじゃ、精神状態が全然違う。こんなの気にする事はないって、きっと二人なら言ってくれる。でも女神として、同じ失敗を繰り返すのは嫌だ。二人が言ってくれた通り、悲観するような状況でもないんだから…もっと前向きにならなくちゃ。

 そう自分に言い聞かせ、気持ちも切り替え、私は全方位に意識を向けつつ上空を飛行。時々止まって、ゆっくり見回してから移動を再開して、という流れで暫くの間飛んでいて……本当にあれは陽動でも何でもない、単発の攻撃だったのか。…そこへの疑問が深まり始めた、そんな時だった。

 

「……う、ん…?」

 

 視界の中に映る、浮遊大陸。敵の拠点な訳だからあまり良くはないけど、そこにある事に慣れ始めている浮遊大陸は、今も変わらずそこにあって……だけど不意に、その浮遊大陸が歪む。若干ではあるけど…ぼやけた見た目に変貌する。

 

「…これ、って……いや、違う…?」

 

 何かは分からない。けど何かが起きている事は確実。そう感じた私は浮遊大陸へと目を凝らし…その内に、気付いた。ぼやけた風になっているのは、浮遊大陸だけじゃなく、その周囲も…大陸を含む周辺が、そういう状態になっている事に。

 

(……っ…何にせよ、こんなに遠くちゃ何が起きているのか分からない…!)

 

 そう思った私はインカムで状況と浮遊大陸へ向かう事をイストワールさん達に連絡し、すぐに加速。一直線に、何かが起こっている浮遊大陸へと向かう。

 幸いな事に、その最中邪魔を受ける事はなかった。邪魔しなかったのか、出来なかったのか、それともそもそも気付いてないのか…ともかく阻まれる事のなかった私は、浮遊大陸のかなり近くにまで到達し…そこでネプギア達四人と、もう一人の私を発見。

 

「……!皆!それにもう一人の私も…!」

 

 数時間振りの、もう一人の私との再会。さっきの思考が馬鹿馬鹿しくなるような、早速の再会。普段ならそれに苦笑いしつつ、また会えた事に喜ぶ私だけど…というか現に、嬉しくはあるけど…それよりも今は、目の前の事。

 かなり近付いた事で分かったけど、浮遊大陸はぼやけているというより、何かに覆われているといった感じ。上手くは言えないけど、やっぱり陽炎みたいな、自然現象とは違う何かが起こっている。

 

「…今は、どういう状況?迎撃圏内に入らないよう、ここで止まってる…って、訳じゃないよね…?」

「それが、その……」

「…説明するより、実際に体験した方が早いだろう」

「え……?」

 

 考え事をするように滞空していた皆は声をかけると、まず困ったようにネプギアが声を発し、それからもう一人の私が答えてくれる。答えつつ、視線で私に言ってくる。近付いてみろ、と。

 それが、どういう事かは分からない。何を体験なのかは、全くの謎。でも…もう一人の私が、無意味な事を言うとも思えない。だから私は頷いて、皆よりも更に前へ。

 

「…あ、でも…体験って言っても、一体どこまで近付けば……」

 

 ふっと抱いた一つの疑問。前進しつつ、それを私は訊こうとした。途中までその問いを言いかけた。だけど、その次の瞬間……私の身体に、何かが起こる。

 

(……っ!?…あれ…この、感覚は……)

 

 今、何かが起こった。まずそう感じて、次に私はこれを…これとよく似た感覚をどこかで感じた気がすると思った。

 でも、本当に私を驚かせたのは、その感覚じゃなかった。私が真に驚いたのは…その直後。

 

「…………え…?」

 

 瞬きをし、一瞬よりも短い時間で再び目を開けた時…そこに、浮遊大陸はなかった。驚いて見回しても、左にも右にもなくて……だけど、あった。私の背後に、浮遊大陸は存在していた。

 移動した?浮遊大陸が、女神にも気付かれないような瞬間移動を?……いや、違う…これは……。

 

「…私が、外に出ている……?」

 

 振り向いた私は、再び浮遊大陸へ接近。だけど同じ。また気付けば、浮遊大陸は後ろにあった。もう一度試してみたけど…やっぱり同じ。近付いた筈の浮遊大陸が、私の後ろ側にあって、後ろにいた筈の皆が、私よりも前にいる。

 沈黙する私に対し、皆もまた無言で頷く。──そう、原理は分からない…分からないけど…浮遊大陸には接近出来ない、入れない状態となっていた。




今回のパロディ解説

・「〜〜高濃度圧縮粒子を全面開放〜〜」
機動戦士ガンダム00に登場するシステムの一つ、トランザムの事。使った後は完全に継戦不能となると、一番近いのはビリー式のトランザムですかね。

・某幻想を殺す主人公さん
とあるシリーズの主人公の一人、上条当麻の事。瀕死の重傷が翌日速攻で治って、でもそのすぐ後にまた転落で大怪我とか、誰だって勘弁ですね……。
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