超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第百四十三話 壁の向こうの提言

 真意が読めない攻撃に私達が警戒を続ける中、突如として浮遊大陸の周辺に発生した何らかの領域。浮遊大陸へと入ろうとすれば、何度試しても、どこから試しても外に出される、気が付けば大陸に背を向けた状態になってしまっている…形のない、実体のない壁。

 まだ情報が少な過ぎて断定は出来ないけど、侵入を阻む性質を持っている以上、これはくろめ達が発生させた可能性が高い。そしてその性質上、単純な攻撃で破る事は困難だろうし、よく分からないものへ大火力をぶつけるというのは、かなり危険。だから私達は、追ってやってきたネプテューヌ達と共に、一度プラネタワーへと帰還した。

 

「…では、情報を纏めましょう。発生した不可視の存在…便宜的に『壁』と呼びますが、その壁は浮遊大陸を中心に、全方位へと展開。完全に浮遊大陸を覆っている…ですね?(・ω・`)」

「はい。勿論、360度全てを1度ずつ調べた訳じゃないので、どこかしらに穴はあるのかもしれませんが…」

 

 戻った私達は、待っていたイストワールさん達に分かった事、感じた事をまず報告。一通りそれが終わったところで、イストワールさんが今分かっている事の纏めに入って…初めの問いに、ネプギアがこくりと首肯を返す。

 

「分かっていますよ、ネプギアさん。全方位展開された壁は、その奥…浮遊大陸へ進もうとすると、何度試しても外に出される、それも弾かれるような形ではなく、無意識に外へ向かってしまっていたような、不可解な状態を引き起こしている…これも間違いありませんか?(・・?)」

「そうです。複数人で同時に試す、速度を変える、その他色々と試してみましたが、どれも結果は同じでした」

「それも了解です。…そして、今のところ壁以外に何かが発生している様子はない…端的ではありますが、こんなところでしょうか(´・ω・`)」

 

 続いて答えたユニの言葉に頷きを返し、纏めを締め括ったイストワールさん。纏めだから、新たに目を見張るような情報は出てこないけど…これも大事。全員が正しい共通認識を持っていなくちゃ、その後の話も上手くいかないものだから。

 

「接近自体を不可能にする、不可視の壁、か…また厄介な物を出してくれる…」

「ロム様、ラム様、確認ですがそれは…」

「うん。魔法のかんじは、なかったよ…?」

「わたしもロムちゃんも、何にもかんじなかったもんね」

「わたしとしても、あれは魔法による結界や、各種幻惑ではないと思うわ。まあ、魔法技術が組み込まれている可能性はゼロじゃないけど…少なくとも、単なる魔法で展開されてるものじゃない」

 

 否定される、魔法の可能性。ルウィーの女神三人がそう言うのなら、十中八九それは間違っていない。

 

「魔法じゃない、当然科学技術の可能性も低いとなれば、残るのはやっぱり……」

「あぁ、その可能性が高いだろう。まだ何が起こっているのかは分からないが、シェアエナジーを用いているのであれば、どんな現象が起ころうとおかしくはない」

 

 顎に親指と人差し指を当てながら言うチカさんの言葉を引き継ぐ形で、自信を持って断定する声。その声の主は…もう一人の私。

 あそこにもう一人の私がいたのは、ネプギア達と同様何が起こったか調べる為で、何も考えずの力押しが賢明な判断じゃないと考えたのも同じ事。…まぁ、もう一人の私なら強引な突破も試せるのかもしれないけど…そうはせず、一緒に来てくれたっていうのは、きっと私達と協力するつもりがある事の証明だって、私は思う。

 

「と、なると…イリゼさんが感じたというのは……( ̄^ ̄)」

「…かも、しれません。でも、同時に違うような気もするというか……」

 

 イストワールさんからの言葉に、私が返したのは曖昧な答え。これじゃあまるで当てにならない、っていうのは分かっているけど、あの瞬間に感じたのは、本当に何なのか上手く言えない、けれどどこかで感じた事のあるもので……その事を考えていた私は、ふと気付く。ネプテューヌ達守護女神の四人もまた、同じように何か考え事をしている風な表情である事に。

 

「…皆?もしかして皆も、私と同じように感じたの?」

「いえ…というかそもそも、イリゼの表現が曖昧なので同じか違うかも分かりませんけれど……」

「…感じるものがあったって言われたら、イエスかな。それに…上手く説明は出来ないけど、確信もある」

 

 もしやと思って聞いてみれば、それにネプテューヌがこくんと頷く。答えてくれたネプテューヌ、それに皆の表情は真剣なものに変わっていて…当然視線も、四人へと集まる。

 

「確信…って事は、お姉ちゃんにはあれが何なのか分かってるの…?」

「感覚的にー、だけどね。…皆、心して聞いてくれる?あの正体は……」

『……ごくり…』

「…CMの後、なんちゃってーっ!」

「ずこーっ!も、もうっ!ふざけないの!」

 

 緊張感が部屋内を包む中、更に真剣さを深めたネプテューヌが言ったのは……まさかの冗談。さっきまで真剣そのものだったところからのバラエティみたいな冗談に、思わず私達は座ったまま某新喜劇みたいなコケ方をしてしまい…なんかもう、雰囲気台無しもいいところだった。

 

「てへっ☆…あ、でも確信があるっていうのは事実だよ?」

『本当に……?(じー)』

「お、おおぅ…ロムちゃんどころか、ラムちゃんまで擬音付きでの疑いの視線を…」

「因果応報よ因果応報。…あれは多分、時空間に干渉してるのよ。そうよね?二人共」

「えぇ、時空間…浮遊大陸の周辺の空間を歪め、その接続を本来ならばあり得ない状態にしているのだと思いますわ」

 

 軌道修正をし、改めてちゃんと言ってくれるノワールと、問い掛けに頷きもう一段階詳しい話をしてくれるベール。

 時空間への干渉。近付こうとした存在の感覚や身体に干渉しているのではなく、空間に…一部とはいえ次元そのものに干渉しているというのが、二人の回答。結構さらりと言っていたけど…どう考えたってそれは、「あ、そうなんだ」で済む話じゃない。

 

「え、と…つまり、A地点から真っ直ぐ進むとB地点に着く、っていう当たり前の状態じゃなくて、A地点から進むとA地点に着く、っていう状態に変わってしまってる…って、事ですか…?」

「うーん…実際に起きてる事って意味じゃユニちゃんの言う通りなんだけど、実際にはもっと複雑でおかしくなってるっていうか、さっき言った通り上手く説明出来ない感じになってるんじゃないかな」

「えーちてん…?びーちてん…?」

「むつかしいはなしってことしか、わかんない…(しゅん)」

 

 ふざけてただけ…と思いきや、本当に分かってはいる様子のネプテューヌが言葉を返し、なまじ難しい話だって事は理解出来たからこそ、ロムちゃんラムちゃんは肩を落とす。そんな二人を慰めるネプギアとユニの姿に、私はふっと頬を緩め…って違う違う。微笑ましいのは事実だけど、今はそういう話じゃない…。

 空間が歪んでいる。それは荒唐無稽な話にも聞こえるけど、天界や別次元の事を考えれば空間云々っていうのはあり得ない話じゃないし、それがネプテューヌ達の言葉なら、十分信用に値する。…けど、その前に…私にも、多分皆にも、一つ大きな疑問がある。

 

「…皆は、どうしてそれが分かったの?」

「それも、はっきりとした事は言えないわ。でも、多分…同系統の力があるから、でしょうね」

「同感よ。私やブランより、ネプテューヌやベールの方が分かってるっぽいのも裏付けになるし」

「ど、同系統?裏付け?…って、あ……」

「…ふむ、そういう事か…」

 

 何故四人は、四人だけが分かるのか。その問いに対する回答は、最初はよく分からないもので…でも、気付く。二人の言っている言葉は、一体何を指しているのかに。

 

「…イストワール。お姉様達の新しい力…ネクストフォームの詳しい事は……」

「…はい。まだ完璧に把握出来たわけではありませんが…端的に言うのなら、高速の果てによる擬似的な時間の超越、分子…或いは概念の領域からの凍結による実質的な時間の停止、物理法則の枠組みの外に立つ無からの精製、そして…世界を、更にその上に存在する法則すらも無に帰す破壊と根絶……それが、ネプテューヌさん達それぞれのネクストフォームの力です。…それも、わたしに認識出来る、言語化出来る範囲で表現するならば、ですが…」

 

 時間の超越と停止、無から有と、有から無…それが四人の力であると、イストワールさんは言う。顔文字を使わない、真剣な声音で。

 そんな気は、していた。もう一人の私との決戦の際、ノワールやベールはまだ、元からの力が凄まじく向上しただけと思えない事もない動きだったけど、ブランが接近した時はむしろもう一人の私の動きが鈍っているように見えたし、ネプテューヌの斬撃に至っては言わずもがな。けど、こうしてはっきり言葉にされると…やっぱり、その桁違いな力に一瞬声が出なくなる。

 

「概念の領域からの凍結…ふっ、中々粋な表現をしてくれるものね」

「うふふ、どれもあいちゃんが聞いたら喜びそうな言い方ですわ。そして先程、ノワールが言ったのは……」

「君やネプテューヌは、有と無の変化…空間への干渉に纏わる力であり、あの壁もまた、空間の歪みだから、という訳か」

 

 腕を組んで言うケイさんの解釈に、ネプテューヌ達が揃って首肯。…空間への干渉、って…時間の方もそうだけど、ほんと凄まじい能力だね…。それに…そんな四人を同時に相手にして、それでも尚あの結果って……もう一人の私も、本当に凄まじ過ぎる…。

 

「…法則すらも無に帰す力…じゃあ、もしやお姉ちゃんの力なら……」

「ふふん、よく気が付いたねネプギア!そう、わたしの新たな力を持ってすれば、あんな歪み位一太刀で!…と、言いたいところだけど…流石にちょっと厳しいかなぁ…」

「そ、そうなの?」

 

 期待の視線を向けたネプギアに対し、ネプテューヌは胸を張って回答!…するも、最終的に口にしたのはむしろ否定。それにネプギアが目をぱちくりさせると、ネプテューヌは軽く肩を竦めて頷く。

 

「いや勿論、絶対無理って訳じゃないよ?ほんとにフルパワーが出せればあんな壁は勿論、次元断層やA(あっち行って)K(こっち来ないで)フィールド、果てはリアルに次元の壁を破壊して、今これを読んでくれてる読者さん達の所に行く事だって出来る気はするんだけど……」

「…あの時、私と君達四人の、全員のシェアエナジー…そしてそれを生み出すシェアの共鳴とでも言うべき現象により、本来以上の力が発揮されていた。それ故に、そんな状況だからこそ、あれだけの事が出来ていた。…そういう事だな」

「そそ、だから出来ないとまでは言わないけど、ぱーっとやって即突破!…は、難しいと思うんだよね。中途半端な状態にして入ったら、身体の一部だけがねじ切れて戻された…なんて事になったら洒落にならないし。…って、え?あの時力が強くなり続けてたのって、そういう事なの?」

「さ、さらりと恐ろしい事言ったねネプテューヌ…えぇと、じゃあ、不可能ではないけど、問題も色々あるから一応プランの一つにはなるよ、位に考えてほしい…って事で良いのかな?」

 

 内容は真面目だけど少し逸れつつあった話を戻す為に私が訊くと、ネプテューヌはうんうんと肯定。…まあ、当たり前だと思う。あまりにも高次元の戦闘をしていたから実感はないけど、まだ昨日の今日だし、現に昨日だって制御し切れていない印象はあった。ネプテューヌにとってその力は手にしたばかりの、まだ馴染みのない力な訳で…その全力頼みというのは、酷というもの。

 でもそうなると、別の手段が必要になる。中に入らないなら、放置するしかないよね…とは、ならないんだから。

 

「…そうだ、イストワールさん。前にアタシ達が浮遊大陸へ行った時と同じように、別次元を介して浮遊大陸に入る事は出来ませんか?」

「それは…かなり危険だと思われます。あの壁が浮遊大陸の周囲だけにあるものであれば、確かにそれで突入出来ますが、壁の内側一帯が歪んでいる状態だとすれば、何が起こるか分かりません。通常ならばそのまま外に出される空間…その内側へ直接入る訳ですから(。-_-。)」

「ま、確かにそれもそうね。でも物理的には無理、ワープ的手段も無理ってなると、他にどんな手段が……」

 

 なら、どうすれば突破出来るのか。そんな旨の発言をチカさんは言いかけて、私や皆も他に何か方法があるか考える…そんな中で、不意に鳴ったのはネプテューヌの端末。

 

「ほぇ?……あ、うん…うん…そっか、ご苦労様。じゃあ、そうしてもらえるかな?」

「…お姉ちゃん、何かあったの?」

「うん、また警戒として軍の人達に動いてもらってるでしょ?で、さっき不審なコンテナを見つけたみたいでね?開いてみたら、音声データの入った端末が入ってたんだって。…あ、来た来た」

 

 そう言ってネプテューヌが自分の端末を操作すると、会議室のモニターに音声ファイルが表示される。何でもネプテューヌ…というか、開いた軍人さん達曰く、今起きている事に関係がありそうな内容だったんだとか。

 であれば、これの送り主はくろめである可能性が高い。だからそのファイルが表示された事で、再び雰囲気は緊張し…皆からの視線を受けたネプテューヌが、音声データを再生する。

 

「──やあ、無事届いているのかな?まぁ、届いているとして話すとしようか。…もう気付いているとは思うけど、浮遊大陸タリへの立ち入りは封じさせてもらったよ。そう何度も何度も突入されるんじゃ、こっちも堪ったものじゃないからね」

「…と、いう事は…これで自然発生か否か、人為的ならば誰が、何の為にあの壁を発生させたのかが確定しましたね」

 

 聞こえてきたのは、くろめの声。今ミナさんが言った通り、今の発言によって、ほぼ確定だったものが完全な確定に。

 けど何故、くろめはこんなメッセージを用意したのか。一つ分かった事で、また新たな疑問が浮かび…でもその答えも、すぐに明らかなものとなった。

 

「悪いけど、君達を呼び込むつもりはないよ。いい加減、予定を狂わされるのにもうんざりだからね。…だけど、ねぷっち…大きいねぷっちだけは別だ。大きいねぷっちであれば、うんざりどころか大歓迎だ。もし応じてくれるのなら、これから指定する場所、時間に一人で来てほしい」

「大きいお姉ちゃんを…?…けど、一人でって……」

「…とはいえ、これを他の皆も聞いている場合、まあまず止められるだろう。現に今、止められていたりするのかもね。…けど、物は考えようだ。君達にこの歪みを突破する手立てがあるのなら別だけど、そうでないのならこれはチャンスだと思わないかい?」

 

 こちらの反応を予測した…って程でもない、くろめからの提言を受けて、私達は顔を見合わせる。確かに現状で取れる打開策は懸念事項も多いネプテューヌの能力頼みな一手だけで、他にも手立てが欲しいところ。大きいネプテューヌに応じてもらって、内側から解除なり弱点を見つけてもらうなりしてもらえる可能性があるって意味じゃ、チャンスというのも間違っていない。

 でも、これは確実に罠。罠というか、向こうが考えている何らかの策略に、大きいネプテューヌ一人で飛び込んでもらうって事。

 

「現状打破の為に応じるか、不安だからと拒否するかは大きいねぷっち…それに君達次第だよ。でも、指定した時刻に間に合わなければ答えが出ていなくても拒否したとみなすし、他に誰かいた場合も勿論話は決裂だ。その点は注意してほしいものだね。……じゃあ、ねぷっち。君が来てくれる事を、期待しているよ」

 

 そうして最後に場所、時間が指定され、音声データの再生が終了。終わりはしたけど、少しの間私達は黙ったままで…初めに声を上げたのは、ネプテューヌ。

 

「…取り敢えず、おっきいわたし呼ぶ?どっちにするにしろ、おっきいわたしがいない場で決めるのは、何か違うし…さ」

「…だね。呼ばれたのはもう一人のネプテューヌだもん。ならまず、もう一人のネプテューヌにこの事を伝えなきゃ…失礼だよ」

 

 まずは呼ぼう、というネプテューヌに頷き、私はもう一人の私へと目をやる。私からの視線を受けたもう一人の私は、一瞬躊躇うような表情をしてから…小さく同意。

 多分、私が視線を向けていなかったら、論ずるまでもないと言って拒否する事を主張したと思う。思うというか…間違いない。

 

「大きいネプテューヌさん…は、今どこにいるんだっけ?」

「えっと…そうだ。さっき会った時は、海男さん達のいる階に行くって言ってたよ」

「それなら、わたしたちが呼んできてあげるわ!」

「うん。待ってて…(ぱたぱた)」

 

 言うが早いか二人は会議室を出て行き、その姿に私達はちょっとほっこり。そして待つ事十分弱。行きと同様勢い良くロムちゃんとラムちゃんが戻ってきて…その後から、大きいネプテューヌが現れた。

 

「お待たせ、皆。…二人から、ちょっと聞いたけど…くろめが、わたしを呼んでるんだよね?」

 

 初めから真面目な雰囲気の大きいネプテューヌに私達は首肯し、音声データをもう一度再生。大きいネプテューヌが内容を把握している間、私は耳を澄ませ、内容以外で何か得られる情報はないかと集中していたけど…気になる音は、特になかった。

 そうしてまた数分。くろめからのメッセージを聞き終えた大きいネプテューヌは、少しの間考え込むように目を閉じて…その目を開けると同時に、言う。

 

「…うん、分かった。わたし…行くよ」

 

 落ち着いた様子で、しっかりした声音で、自分は行くと言う大きいネプテューヌ。そこにははっきりとした意思が籠っていて…でも、驚きはなかった。大きいネプテューヌならそう言うと、私も皆も思っていたから。

 

「多分くろめの事だから、わたしに戻ってきてほしいんだろうね。…こう言うと、何かわたしが自信過剰みたいになっちゃうけど」

『…えっ?』

「うん…うん?え、何その『何を今更…?』みたいな反応…。…ま、まあいいや。だから多分、酷い事はされないと思うの。勿論、わたしはくろめを裏切っちゃった訳だし、絶対とは言えないけど…何にしたって、戦いの中で絶対に安全な行動、なんてまずないでしょ?」

「…そんな事はない。少なくとも人はそうではない。いやそもそも、人が自ら危険に躍り出る事自体が間違っている。やはりこのような馬鹿げた話……」

「待って。…ありがとね、わたしの身を案じてくれて。だけど…これは、わたし自身の願いもあるの。あの時は、わたしじゃ無理だって、今のわたしの言葉は届かないって思ったけど…今は、もう一度話したいって思っているから。ちっちゃいわたし達が頑張ったみたいに…もう一回、ちゃんとわたし自身で確かめたいって、そう思うから」

「…それは……」

 

 止めようとするもう一人の私へゆっくりと首を横に振り、真っ直ぐ見つめて大きいネプテューヌは言う。これは、私達の…状況打破の為に、自分が危険を負うんじゃない。自分自身、そうしたいと思う理由があって、だからくろめの言葉に応じるんだって。

 それにもう一人の私は口籠る。女神として、どんなに些細な事でも人を危険な目に遭わせたくないという思いと、人のしたい事を応援し、人の思いを後押しする存在でありたいという思い…今もう一人の私の中にあるのは、きっとそんな思い。

 分かる。私だって、幾らメリットがあったとしても、こんな危険な話に乗らせたくはないし、だけどそれがネプテューヌの思いだというなら、応援もしたい。私だって、両方の気持ちがある。……だけど、

 

「…応援、してあげようよ。女神として、人を守る事は絶対にしなきゃいけない事だけど…本気の思いを、意思を、危険だからって否定するのは…その人の心を傷付ける行為じゃないの…?」

「……軽んじるな。そんな事は、言われずとも分かっている」

「なら…信じようよ、大きいネプテューヌを。人が私達を信じてくれるように、私達も大きいネプテューヌを」

「…………」

 

 もう一人の私の側に寄り、私も言う。私だって、大きいネプテューヌがもっと短絡的に、或いは感情的にそうしようとしていたのなら、止めていたところだけど…本気の、心からの思いなら止められない。駄目だ、と止めるんじゃなく、なら私達に何が出来るか、どうする事で少しでも助けられるか…そう考える事こそが、女神として本当に必要な事だって…そう思う。

 真っ直ぐ向けた視線を、もう一人の私も真っ直ぐ返してくれていた。希望的観測かもしれないけど…それは私を、私の言葉を、ちゃんと一人の女神のものとして見てくれている証拠だって…そんな気がする。そして私の言葉を聞き終え、少しの間黙っていたもう一人の私は…ゆっくりと、頷く。

 

「…すまない。君の安全の為とはいえ、私は君の気高い精神を、その意思を侮辱してしまうところだった」

「え、ぶ、侮辱って…前から思ってるけど、貴女って言い回しが基本オーバーだよね……」

「そう、だろうか…。…ともかく、彼女の言う通りだ。人の本気の思いならば、願いならば、それに応じる事こそ女神の使命。……だが、少しでも危険を感じたのなら、その時は私を呼んでほしい。願ってほしい。君の、人の為なら、如何なる障害、如何なる不可能であっても捩じ伏せ、斬り捨て、馳せ参じる。…それこそが、女神なのだから」

 

 そんな方法があるの?…とは、誰も言わなかった。そういう話じゃないし…私達だって、気持ちは同じだから。

 勿論、これで即決定…とはならない。例えばだけど、指定された時までに壁を突破する手段が見つかったりすれば、応じる理由はなくなるし(話は普通に乗り込んだって出来る事)、逆にこのメッセージがまるっきり嘘で、指定した場所へ来たところで不意打ちする事こそが真の狙い…みたいな事が明らかになったら、当然応じられる訳もなくなる。だから、ここからギリギリまで調査を重ねて、色々試して、その上で状況が良くも悪くも変わらなければ、って話にはなるけど…それでも、大きいネプテューヌや私達の意思が決まった事は確かな事実。

 向こうから提言された話ではあるけど、これによって壁の突破に繋がる何かが得られる事が、私達全員としての理想。けれど同時に…私はこうも思っていた。大きいネプテューヌの気持ち、確かめたいっていう思い…それが果たされ、結果はどうあれ大きいネプテューヌが応じて良かった、話せて良かったって思えるようになってほしいと。




今回のパロディ解説

・某新喜劇
吉本新喜劇の事。皆座ってるので全体的には控えめですが、新喜劇宜しく皆揃ってがくっと姿勢を崩しているのでしょう。流石に椅子から転げ落ちた人は…いないです。

・次元断層
マクロスシリーズに登場する用語の一つの事。次元断層を突破出来るからといって、別にネプテューヌがバジュラ的力を持っている訳ではありません。

A(あっち行って)K(こっち来ないで)フィールド
30歳の保健体育(アニメ版)に登場するヒロイン、安藤なつの能力(?)の事。これ、要はATフィールドでしょうね。えぇはい、パロディのパロディパターンですとも。
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