超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
くろめから指定された時間…その時が、遂にやってきた。それはつまり、私達の力で突破する、第三の手段を見つけられなかったって事であり…大きいネプテューヌに、頼るしかなくなってしまったって事。
「凡ゆる攻撃、凡ゆる存在を阻む、不可視の壁。…その正体は、擬似的な次元の壁。周囲の空間を歪ませる事で、次元と次元の隔たりを再現しているもの…言うならば、それが我々の侵入を阻む障害の正体です
(´-ω-`)」
私達へ向けて、イストワールさんが言う。これまでに得られたデータを元に、導き出された一つの答えを。
「次元の壁…って事は、いーすんの力で超える事は出来ないの?」
「それは難しいです。今言った通り、あれは空間の歪みによって発生しているものですが…その歪みが酷く、わたしの力では安全を保障しかねます…(¬_¬)」
頬に人差し指を当てて訊くネプテューヌの言葉に、イストワールさんが頭を振る。
次元の壁。世界と世界を区切っている、本来は触れるどころか認識する事も叶わない、それ自体が概念的な存在。擬似的とはいえ、それが阻んでいるとなれば…確かに、どんな手を使っても突破出来ないのも仕方ないって気がしてくる。斬撃にしろ、魔法にしろ、それ等は次元の内側の…通常の物理法則に従う攻撃なんだから、その法則が通用するのかどうかも謎な領域の存在を前に、普通に通る筈がない。
「そして現状、あの壁を解除する手段はありません。どのようにして発生させたのかも未だ不明です。ただ、どう考えても不安定な筈の『空間の歪み』が、広がる事も消える事もなく、同じ規模で留まり続けている事からして、何かしらの方法で以って制御している可能性は高いでしょう
(・ω・`)」
「だから、それをわたしが何とか出来れば……」
「うん、だけど無理はしちゃ駄目だよ?わたしはわたしで、頑張ってみるつもりなんだから」
無理はしないようにと言うネプテューヌの言葉に、私達(と言っても、ノワール達は今それぞれの国だけど)はうんうんと頷く。結局大きいネプテューヌに頼らざるを得ない状況になってしまいはしたけれど…だからって、頼り切るつもりなんてない。…まぁ、そうは言っても一応とはいえ突破の可能性のあるネプテューヌと違って、私が出来る事なんて本当に限られてるんだけど…。
「分かってるって。でもほら、目標は高くしておくに越した事はないでしょ?」
「まー、それは確かにね。目指せ、Sランククリア!」
「おー!」
『Sランククリアって……』
よく分からない目標に向けて拳を突き上げるWネプテューヌに、それに呆れる私とネプギア。イストワールさんも苦笑いをしていて…それからこほん、と咳払い。
「彼女が一体どのようにして大きいネプテューヌさんを招くのか、それは安全な手段なのか…それすらも今は分かっていません。ですのでネプテューヌさんの言った通り、決してご無理はなさらないように
o(`ω´ )o」
「そうだよ、大きいネプテューヌ。それに大きいネプテューヌには、確かめたい事があるんでしょ?ならまずは、それを大切にしなくっちゃ」
「んもう、だから分かってるって。…迷って、中途半端な事だけしたんじゃ、きっと後悔する結果にしかならないもんね」
今さっきネプテューヌが言ったし、直前にイストワールさんも言ったし、しつこいかなとは思うけど、それでもやっぱり一人に任せるというのは心配なもの。…一人で云々、というと私もあんまり人の事は言えないんだけど…そう思う心は意識して止められるようなものじゃないんだから、仕方ない。
でも、私も皆ももう任せるって、そうするって決めた。だから行く事そのものは否定しないし…信じてもいる。大きいネプテューヌが無事に、大きいネプテューヌの思いを果たせる事を。そして、一番は大きいネプテューヌの無事と、その思いが果たされる事であって、壁の事は後回しにしてくれてもいいと、そう思っている。…当たり前だよね。だって大きいネプテューヌは、自分から危険な事に挑んでくれているんだから。
「大きいお姉ちゃん。くろめさんと……」
「…うん。精一杯、話してくるよ」
ネプギアと大きいネプテューヌ。二人はこくりと頷き合う。次に大きいネプテューヌは、私達の事をじっと見つめ…その瞳に、私達も頷きを返す。
指定された時間がやってきたとはいえ、まだその瞬間までは少しある。だからこうして話していたのであり…だけどそこへは大きいネプテューヌ一人で行かなきゃいけない以上、のんびりしていられる訳でもない。今分かっている事の確認は出来たんだから…後は信じて、送り出すのみ。
「ネプギア、皆に連絡お願い出来る?わたしは先に、おっきいわたしを連れて行くからさ」
「うん、任せて」
言うが早いか二人のネプテューヌは外へ。ネプギアは今から行くという事を各国の皆へ伝える為にNギアを出し…私もまた、通信をかける。インカムを耳に嵌め、先日同様のインカムを渡したもう一人の私へと。
少し時間が経ってから、通信に応えてくれるもう一人の私。一通り使い方は伝えたとはいえ、やっぱり現代の科学技術にはまだ慣れないらしく、その声には若干のぎこちなさが……って、違う違う。
「もう一人の私。理解してくれてるとは思うけど……」
「ああ。ネプテューヌ君に望みがあるという事であれば、それを第一とするのが女神というもの。台無しになどはしないさ」
インカム越しにもう一人の私とやり取りを交わしながら、私はイストワールさんにアイコンタクトを送り、それから外へ。
向かうのは、予め決めておいたポイント。メッセージじゃ大きいネプテューヌに一人で来るよう言っていたし、勿論指定された場所とこれから行く地点はそこそこ離れてはいるけど…一人で来るよう指定されたからといって、本当にその通りにする理由はない。
「ふー……」
目立たないよう低空飛行で向かいながら、私は意識を切り替えるように、ゆっくりと吐息を吐いていく。
くろめの目的は、大きいネプテューヌが言った通り引き戻そうという事なのか、それとも別に何かあるのか。それは分からないし、ただ話すだけというのであれば、私達だって安易に攻撃したりはしない。
けれどそうじゃないのなら、大きいネプテューヌを傷付けようとしてくるのなら、私達だって容赦はしない。この危険な役を買って出てくれた大きいネプテューヌの為に。大きいネプテューヌの思いが、果たせるように。
*
「…………」
今いるのは、くろめからのメッセージで指定された場所。指定された時間までは、後数分で…勿論、緊張はしてる。
(うぅ…こういうのって、苦手かも……)
つい振り向いて、ちっちゃいわたしやネプギア達がいる場所を見たくなる…けど、そんな事をしたら、そっちに隠れてるよってくろめ達へ教えるようなもの。それにそもそも、こういう待ち方をするのなんて初めてで…やっぱりわたし的には、自分からガンガン動く方が性に合ってるよぉぉ……。
「…って、こういう待ち方に慣れてる方が特殊か…はは……」
こんな刑事ドラマみたいな展開、誰だって慣れてる訳がない。そう気付いたわたしは一人でちょっと苦笑いして…小さく一つ深呼吸。皆はわたしの思いを優先して、って言ってくれたけど、そう言ってくれる皆だからこそ、わたしも全力て力になりたい。
(もうすぐ、くろめが言ってた時間になる…くろめには、この壁を維持したまま突破する手段があるって事なのかな…?それとも……)
携帯端末の時計を見て、その瞬間への集中力を高めていく。ドキドキする心を落ち着かせて、その時を待つ。
どういう方法かは分からない。だけどきっと、メッセージそのものは嘘じゃない。そう思って、そう信じて、わたしは待ち……そして遂に、その瞬間が訪れる。
「…………」
「………………」
「……………………あ、あれ?」
その時間になった。訪れる…っていうか、訪れた。けど、何にも起こらない。こう、異空間に繋がるゲートが現れたりとか、空から光が放たれたりとか、RPGパートからADVパートに移るとか、そういう感じのが一切合切起きなくて、わたしの周りは完全にシーン状態。
「え、あれ?ここだよね?時間もあってるよね?ちょっ、誰か説明プリー……」
取り敢えず見回して見るわたし。でもほんとに、どこにも何にも起こってない。何にもイベントが起きてくれない。それがあんまりにも訳分からないものだから、わたしは一回インカムで確認しようとして…そこで漸く気付いた。わたしの左手が、空間の歪みに飲み込まれている事に。
「わぁああああああッ!?ちょぉッ!?い、いきなりピンチ!?これちっちゃいわたしに続いて、わたしも左腕失う展開!?いや、流石のわたしでもそれは勘弁…って、これ……」
もう前腕の半分辺りまで飲み込んでる歪みを見て慌てに慌てたわたしは、大騒ぎしながら腕をぶんぶん。すると歪みもそれに合わせて動くものだから、降っても移動しても全然それから逃れられない。え、ちょっ、これ…腕どころか全身持ってかれるパターンじゃない!?ヤバいよヤバいよリアルガチで洒落にならないよ!?い、イヤァアアアア!
……と、ほんとにもう慌てたわたしなんだけど…よくよく見たら、その歪みはわたしにとって見慣れた…クロちゃんが作る、次元を超える為の扉と同じ歪み。つまり、これって……
(…あ、不味い)
そうわたしが気付いたのとほぼ同時に、一気に広がる空間の歪み。緊急事態だと悟った皆の声が聞こえるけど、わたしに返答をする余裕はなくて…気付けばわたしはその歪みに、扉の中に飲み込まれる。
いつもの感覚。次元を超える時の、上手く言葉に出来ない感覚。それが終わって、目を開けると……そこはもう、浮遊大陸の中。
「…皆、聞こえる?…って、やっぱ通信は出来ないか…。……と、いうか…もしかして…」
繋がらない通信。駄目かぁと思って視線を落とせば、そこにあるのは無事な腕と、握ったままだった小さな機械。
これは、発見されたコンテナの中に入っていたもの。メッセージには、これも持ってくるよう指示があって、何なんだろうと思ってたんだけど…今なら分かる。多分これは、目印。クロちゃんがわたしを…わたしだけをこっちへ引き込む為に、目印になるものが必要だったんだと思う。
「……ここにいる、って訳ね…」
わたしがいたのは、地下空間の通路。目の前には扉があって、入ってこいと言っている感じ。うーん…これもいいけど、折角だからわたしは目の前のじゃなくて、この赤い扉を選ぶぜ!
……と、普段ならふざけるわたしだけど、流石に今はそんな事してる場合じゃない。それにそもそも、今はわたし一人だし。…だからわたしはもう一度小さく深呼吸をして…扉を開ける。
「…来たよ、くろめ」
「うん。待っていたよ、ねぷっち」
静かにかけたわたしの言葉に、暗い部屋の真ん中…そこに立つくろめが、にこりと笑って返してくる。
多分ここは、わたしも入った事のない部屋。何かある気もするけど、暗いせいでよく分からなくて、見えるのはくろめと……何か、物凄く息が上がっているクロちゃん。
「…え、と…クロちゃんは、マラソンでもしてきたの…?」
「はぁ…はぁ…ち、違ぇよ馬鹿…こいつの、せいだっての……」
「くろめの…?」
「もうどうせ、ここを覆ってる存在の事は…ある程度、分かってるんだろ…?…あれを超える扉を作るのは…俺だって、キッツいんだよ……」
そう言ってクロちゃんが恨めしそうにくろめを睨むと、くろめはわたしの方を見て肩を竦める。…うん、これはアレだね…クロちゃん、性格に難はあるけどああ見えて常識はしっかりあるタイプだから、もしかすると意外なところで苦労してるのかも…。
「嬉しいよ、ねぷっち。オレのメッセージに、応えてくれて」
「…大歓迎、って言ってたからね」
いつものように穏やかな、くろめの言葉。でも、同じように穏やかな言葉でも、感じる雰囲気がうずめとは違う。
「当然じゃないか、オレとねぷっちの仲なんだから。ねぷっちなら、いつだって大歓迎だよ?」
「そういう事なら、ここへ入れないようにしてるのも解いてほしいんだけど…駄目かな?」
「それは、これからの話次第かな。…ねぷっちとは、あれからずっと話したいと思っていたんだ」
「そっか…わたしもね、もう一回くろめと話を…くろめの思いを、確かめたいと思ってたんだ」
そうだと思っていた。くろめはきっとそう言うって、そんな気がしていた。
わたしは話がしたいと思っていて、くろめも同じように思っている。…でも、これは話し合いで解決出来る…って事じゃない。その可能性は、確かにあるのかもしれないけど…わたしだって、分かってる。話し合いで解決するのは、戦って勝敗を決めるよりも、大変で難しい事なんだって。
「…ねぇ、くろめ。やっぱり、止める気はないの?許されるとか、引き返せるとか、そういう事じゃなくて…くろめは、止めてはくれないの?」
「悪いけど、それはねぷっちの言葉であっても聞けないよ。それに、そう言われただけで止める程、オレが生半可な気持ちでいると思うのかい?」
その問い掛けに、わたしは首を横に振る。訊いてはみたけど、ほんの少し期待はしたけど…分かってた。くろめにだって、強い思いが…そう簡単には譲れない意思があるんだって事は。
「だったら…聞かせてよ、くろめ。くろめの目的を、願いを…こうまでして、果たしたい思いを」
「うん?言っていなかったかな?オレはこの次元をもっと……」
「わたしが訊いてるのは、そういう事じゃないよ。…分かってるでしょ?くろめだって」
じっとくろめの目を見つめて、わたしは言う。これが、わたしの確かめたい事。わたしがちゃんと知りたい…くろめの、曖昧じゃない本当の思い。
くろめもわたしを、じっと見つめ返してくる。そのまま数秒、わたしもくろめも黙っていて…それからくろめは、吐息を漏らす。仕方ない、と諦めたようにも、確かにそうだ、と納得したようにも思える風に。
「…そうだね。この段階まできて、それでもまだちゃんと言わないというのは、確かにねぷっちに対して不誠実というものだ。ちゃんと話すとするよ」
この段階…少し含みのある言葉を混じらせながらも、くろめはわたしに頷いてくれた。それだけでも、わたしはほっとした。くろめがわたしに、ちゃんと話そうとしてくれる事に。でも…本番は、ここから。
目を逸らさずに、わたしは心を引き締める。くろめの言葉を…そこに籠る思いを、ちゃんと全部聞く為に。
「…ねぷっち。もう一人のねぷっちも、ぎあっち達も…今の女神は、皆大したものだ。実力も、精神性も、余程捻くれているか意固地な人間でもない限り、誰だってそれは認めるところだろう。オレだって、そう思っている」
「…くろめ…?急に、何の話を……」
「それは女神のねぷっち達一人一人の気質もあるだろうけど…『女神』という存在そのものの性質も、少なからずあるんだろうね。あのレイだって、ああ見えて凄いものだ。力は言わずもがなだけど、彼女の精神は凄まじい。普通ならば…いや、常識の外にいる存在ですら、あれだけの力を持って尚正気を保つ事なんて困難を極めるだろうに、彼女は平然と『自分』を保っている。それが出来るのなんて、それこそ彼女位だろうさ」
真面目な声音で話し始めてくれたくろめ…だけど、その内容はわたしが思っていたのとは全然違う。くろめが口にしているのは、全部自分以外の事で…その意味が、わたしには全然分からない。
「自分で言うのもアレだけど、本当に女神というものは凄い。そしてその女神による統治を国の、世の形とした点において、大昔の人々もまた賢いと言えるだろう。それは、今もこうして次元が保たれている事からも事実で……」
「くろめ…!…だから、くろめは…一体何の話を……」
「──だけど、それにも限界はある。どれだけの強さがあっても、どれだけ強靭な心を持っていても、信用信頼を受けていても…女神にだって、出来ない事はある。手の届かない瞬間がある」
わたしが訊いたのはくろめの事。なのにくろめはずっと自分以外の事を話していて、意図も理由も分からなくて…くろめは本当は、わたしを煙に巻こうとしてるんじゃないか…そんな思いにさえなった。
でも、わたしが言葉を被せて遮ろうとした次の瞬間、くろめの語るトーンが変わる。低く、静かで…それでいてこれまで以上に真剣そうな、そんな声に。
「守護女神と女神候補生、それぞれの新たな力…あれも凄い。ただの強さの範疇に留まらない力が、凄くない筈がない。…けれどそれでも、未だ単独の強さじゃ恐らくレイの方が上だろう。新たな力、新たな強さを得ても尚、女神のねぷっち達には届かない場所がある。そして、原初の女神…彼女だってそうだ。原初の女神の強さは最早訳が分からない、それこそ理解の及ばない領域だけど…所詮は、ただ単に強いというだけに過ぎない。ただの強さで何とかなるのは、単純な敵や単純な悪でしかないんだよ。…ねぷっちだって、それは分かるだろう?」
「…分かるよ、それ位わたしにも分かる…でも、それが…それを今、くろめが話す理由は……」
「…オレは、それが嫌だ。限界があるのは、仕方のない事かもしれない。当たり前の事かもしれない。だから代わりに、仲間と力を合わせるんだという事なら…オレだって同意だ。現にこれまでだって、オレはねぷっちやクロワールに手を貸してもらってきたんだからね」
女神にだって出来ない事が、叶わない事があるとくろめは言う。それが嫌なんだって、くろめは続ける。無理な事を無理だと諦めたくないから、力を合わせる…それはちっちゃいわたし達が大切にしてる事で、わたしもこれまでしてきた事で、くろめもそれは認めてる。…認めてるのに…何か、違う。ちっちゃいわたし達が言う、力を合わせるとは…何かが違う、そんな気がする。
「でも…それでも届かなかったら?それでも足りなかったら?頑張って、力を振り絞って、それでも尚目指すべきところに届かなかったとしたら、守れなかったとしたら……それはどうしようもなく、悲しくて、辛くて、やり切れない思いになる…そうだとオレは思うんだ。思うし…そんな思いをするのは、真っ平御免だ。誰だって、そんな思いはしたくないだろう」
「それは…そう、だけど……」
「…なら、どうする?常日頃、もしもに備えた準備をしておく?もっと多くの仲間を増やす?それとも最初から、高望みはしない?夢も希望も捨ててしまう?…どれもオレは、良い方法だとは思えない。足りない分を補うだけじゃ、結局もっと大きな脅威を前に潰れてしまう。妥協し、下ばかりを見るようにするなんて、諦める事と何ら変わらない。…必要なのは、そんなものじゃない。本当に必要なのは…敵を、脅威を排除する力じゃなくて……世界を変え得る、変えてしまえるだけの力だ」
「……っ…まさか、それって…」
その言葉と共に、くろめは胸の前で右手を握る。意思の強さを表すように、強く固く。
世界を変える力。普通そんな事を言い出したらまずその人の事を心配するし、次に「新世界の神になる」とか言い出すんじゃないかって思いもする。…だけど、わたしは知っている。それが根拠もない言葉じゃなくて…くろめにとっては、十分現実的と言えるような言葉なんだって。
「ああ、そうだよねぷっち。オレにはその力がある。そう出来るだけの可能性を持った、ただの力とは一線を画する…オレだけの力が、ここにある」
「…くろめは、それで世の中を良くしたいって…平和にしたいって…そういう、事なの…?」
言い切ったくろめは、首肯する。その通りだって、そうだって。…けど、それなら…だったら……
「…分からない…分からないよ、くろめ…なら、そうすれば良いじゃん…言った通りに、すれば良いじゃん…!なのに、なんで…こんな事を…こんな、皆を苦しめるような事を……!」
「…オレの力は、現実を改変出来る。けど、何か一つを…世界の在り方そのものには触れない改変ではなく、世界そのものを変えるような改変には、それ相応の準備が、環境が必要でね。レイと協力しているのも、それが大きいし…今の信次元の在りようを、確かめる必要があったんだよ。間違った選択をした先にある今の信次元が、今も間違い続けているのか、正しさを理解出来る状態にまでなったのかを。一体どこまで変えるべきなのかを。だって、そうだろう?仮に世界を変えたとしても…土台が腐っていたら、すぐに崩れてしまうんだから」
世界を良くしたい、平和にしたい。そう思うのは、その為に行動出来るのは、凄く凄く立派な事。それを自然に考えられる、そうしようと頑張れるちっちゃいわたし達の事を、わたしは本当に尊敬してる。わたしがくろめにこれまで協力してきたのも、それを本気で思ってるんだろうと思ったからで……分かる、伝わってくる。今くろめが語った事、そこに籠った思いは、全部嘘なんかじゃないんだって。本当に、本気なんだって。
だけど、くろめは言う。これまでしてきた事、やってきた事、全部が確かめる行為なんだって。世界を変えた時、理想とした形になってくれるか…今のこの次元がそうなるような在り方をしてるのか、それを確認する為の事なんだって。
あぁ、本当に…本当に、くろめから悪意は感じない。ちっとも、これっぽっちも、欠片もない。それが、くろめの信念からくる思いなんだって、行動もそれに沿ってやってきたんだって……嫌って程に、伝わってくる。
「ねぷっちからすれば、無茶苦茶な言葉に聞こえるのかもしれないね。けど、ねぷっちも知っているだろう?それが、荒唐無稽な言葉じゃないって事は。ねぷっちも、感じてはいるだろう?オレなら、決して不可能なんかじゃないって事は」
「…くろめ……」
ほんの少し頬を緩めて、けれどすぐにまたわたしを見つめて、くろめは言う。その言葉の裏に、くろめは込めてくる。自分なら、それは荒唐無稽じゃないんだと。自分なら、出来るんだと。
これで、オレからの回答は終わりだ。そう言うように、くろめは一度言葉を切った。言葉を切って、一歩前に出て、そして……
「…だから、戻ってきてくれないかな、ねぷっち。オレは、ねぷっちに戻ってきてほしい。能力でもなく、立場でもなく…オレを理解し、オレを利害抜きに応援してくれる……そんな存在が、オレには必要なんだ」
くろめは、開いた右手をわたしに向けて差し出した。この手を取ってほしい、また自分に力を貸してほしいと、そんな思いを言葉に込めて。
目的は、思いは、願いは…よく、分かった。くろめ自身から、確かめる事が出来た。くろめが本気で、わたしを思ってくれてる事も…伝わってきた。…だから、わたしは──。
今回のパロディ解説
・折角だからわたしは〜〜選ぶぜ!
デスクリムゾンの主人公、越前康介の代名詞的な台詞のパロディ。こんな時でも機会あらば冗談を仕込もうとする…それがネプテューヌなのだと思う私です。
・新世界の神
DEATH NOTEの主人公、夜神月の代名詞的な台詞の一つ(の一部)の事。…まあ、神というか女神ですね。そしてデスノートの場合は、それこそ『脅威を排除する力』ですね。