超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
それが、何なのかは分からない。真の力とでもいうのか、あれこそが原初の女神の本来の姿とでもいう事なのか。…唯一分かる事は、それが予想も推測も、一切合切が及ばない……どうにもならない領域の力だという事だけ。
浮遊大陸の落下を止められ、レイを理解の出来ない…事象の改変としか思えない方法で以って一方的にダメージを与え、ダークメガミも、一度に掃討し、クロワールの力も……オレの妄想能力すらも、封殺された。…オレの、オレだけの、力すらも。
万事休す…そう思いたくはなかったが、認めたくはなかったが、あの状況を覆す手段なんて、一つも思い付かなかった。どうにもならないとすら、思えてしまった。……不意にその力が、その状態が途切れるまでは。
「…まさか、こんな形で入る事になるとはね……」
クロワールの開いた扉を用いて一度次元の狭間へと離脱し、そこから改めて移動し…オレ達は、新たな拠点である負のシェアエナジーの城へと入った。
本来ならば浮遊大陸タリを落とした後、そのままここへ来る筈だった。結果如何に関わらず、その予定だった。ここを破壊されてしまえば、オレ達は信次元での拠点を失う訳で……これを不幸中の幸いと言うのだろう。
「…………」
……そんな訳が、あるか。漸くここまで来たんだ。王手を決め、最後の段階へと移行し、やっとオレの果たすべき使命が目前に見えてくる…そんな瞬間に、なる筈だったんだ。なのに、結果はこれだ。盤石の体制を取るべく展開したダークメガミは全て撃滅され、レイすらもあの力の前では押し切られる事が証明され…オレも、見せ付けられた。原初の女神との間にある……差を。
あれが相当な負担を免れず、長時間の使用は原初の女神であっても叶わない程の技だったからなのか、それともそもそも不完全なり未完成なりの技で、あのタイミングで遂に上手くいかなくなったのか、それとも別の理由かは分からない。だが…あのままだったなら、オレは終わっていたんだ。未だに何故現れたのかもはっきりしていない、引っ掻き回し続けてきた原初の女神に、結局何も出来ず終わっていただなんて……
「あの、クソ女神ぃ…審判…?裁き…?私が楽しみにしていた事を、くっだらない理由で邪魔しておきながら…調子に乗るのも、いい加減にしろってのよ……」
「…レイ?君は何を……」
「何…?これが、モッヂボールでもしてるように見えますかぁ……?」
ふつふつと怒りが煮え立つ中、聞こえてきたのはレイの声。てっきり自らの怪我を癒していると思っていたレイは、腹部を押さえながらもこちらに歩いてきていて…だが、今のレイの怪我は、ほいほいと出歩けるような状態じゃない。
「何故よりにもよってそんな競技を…いや、それはいい。幾ら君でも、それは重傷な筈だよ。…他ならない、君自身の攻撃による怪我なんだからね」
「だから、何だってのよ…それより、あれは…あいつも今は、間違いなく消耗してるわ…私と同じか、或いは…それ以上に、ね。だからさっさと、あのクソ女神に地獄を……」
「(レイ以上に…?…という事は、やっぱり……)…何れにしろ、君もかなり消耗している事は事実だ。こっちは今いるダークメガミを一気に失ったのに対し、さっきも言った通り、向こうはまだねぷっち達が十全の状態。そんな目に見えている不利へ、君を行かせる事は出来ないね。それに大陸落としがあんな形で塞がれたのは、致命的な程の問題だ。そんな中で、好き勝手動かれるのは困……」
次の瞬間、宙に浮き、壁へと打ち付けられるオレの身体。目の前には、瞳に憎悪を浮かべたレイの姿。オレの身体を浮かせたのは……オレの首を掴んだ、レイの右腕。
「ぁ、ぐ……ッ!」
「誰に、命令してんのよ…?あんたも、調子に乗り過ぎじゃない…?まさか、忘れた訳じゃあないわよねぇ…?」
「……っ…あ、あぁ…勿論、忘れてはいないさ…君がいなければ、君という強大な存在に力を貸してもらえなければ…オレはここまで来る事なんか出来なかった……」
オレの首を絞める腕に籠る力。それは重傷を負った身だとは思えない程に強く…やはりレイもまた、女神として規格外の存在なのだと再認識をさせられる。
「はっ…そう思ってるなら、もっと然るべき態度があるわよねぇ…?」
「そう、だね…以後、気を付けると…するよ……」
締め上げる腕の力が強くなる。それは少なくとも、仲間に対して振るうような、脅しで使うような力じゃない。…だが、それも当然といえば当然の事。レイはオレを仲間だとは思っていないだろうし…脅しでも、ないんだろう。
じわじわ広がるような苦痛を感じつつも、オレは頷く。するとレイの力は、一瞬更に強くなり…そして、落とされる。手を離され、雑に。
「げほっ、げほっ…けど、何れにせよ…まずは回復を優先した方が良いと、オレは思うよ…?そもそも、君は…相手が消耗しているところを狙わなくたって勝てる、比肩する者のいない存在だろう…?」
「……ふん、あんたの言葉は薄っぺらいのよ。あんたの理想とやらと、同じようにね…」
上半身だけを起き上がらせ、薄く笑みを浮かべて言えば、レイは鼻を鳴らして立ち去っていく。答えは得られなかったが…恐らく、傷が癒えるまでは安静にしていてくれるだろう。レイ自身、今感情的に動くのが得策じゃない事位、分かっている筈なんだから。
(……あぁ、感謝しているさ、レイ。君の力ありきだった事は、紛れも無い事実だ。だから…そうやって、いつまでもやっていればいい。信念も守りたいものもない、どこまでも自分本位にしか考えられない、哀れな女神としてね…)
馴れ合うつもりなんて、毛頭ない。あくまで利害の一致から手を組んでいるだけで、その一致にしたって最終目標は違う以上、最後には出し抜く必要がある。そしてそれを、オレは悪いと思わない。そもそもレイは悪であり…いつまでも悪をのさばらせる訳にはいかないんだから。
「…ふ、ふふ…いいさ、構わないよ…正しいのはオレだ、オレこそが正しいんだ…それは、揺るぎない絶対の真実なんだから……」
壁に背を付け、天井を見上げて、オレは言う。オレの障害となる者、オレの道を間違っていると言う者、オレの正しさを理解出来ない者…その全ての存在へと向かって。
この結果は、痛手なんてものじゃない。だが…同時に証明もされた。シェアエナジーは、シェアの力は、凡ゆる法則、凡ゆる現実を超え、世界を在るべき姿に変えられるのだと。これは収穫だ。これだけはやってみなければ分からない、自分の力を信じるしかないと思っていた部分が、試す前に証明されたのだから…これだけは、原初の女神にも感謝をしようと思う。だからこそオレは、原初の女神であろうと恨みはしない。
ここにあるのは、最後の詰めの為に用意した負のシェアの城。こちらにはまだ、次元を超えられるクロワールと、規格外のレイがいる。そして何より、このオレの力がある限り……負ける、筈がない。
*
もう一人の私は、絶対の存在だ。誰かに落とされる事などない、約束された勝利の女神だと、勝手に思っていた。…だって、それ程の力を、強さを見てきたんだから。結果が、それを示してきたんだから。その上で、それすら大した事ないと思える程の現象を次々と見せられたら…そう思わずにいる方が無理というもの。誰だって、そう思うに決まっている。
……そんなもう一人の私が、その絶対性を失った。揺るがないと思っていた力が途切れ、一度も解く事のなかった女神化すら解け、もう一人の私が落ちていった。それは信じられない光景で…だから不安で、不安で不安で仕方なかった。幻想が消えてしまうように、もう一人の私も消えていってしまうんじゃないか…って。
「うぅ…うぅぅ……」
「お、落ち着きなよイリゼ…気持ちは分かるけど、出産を待つお父さんみたいになってるよ…?」
落ちていくもう一人の私が何とか墜落する前に何とか間に合った私は、そのままもう一人の私を抱えてすぐさまプラネタワーへと帰還した。意識のないもう一人の私を、イストワールさんに診てもらう為に。
うろうろ。うろうろうろ。うろうろうろうろ。ネプテューヌには妙な例えをされてしまった気がするけど…落ち着いてなんかいられない。
「ううぅぅ…だって怪我は擦り傷一つなかったんだよ…?X20A並みに被弾ゼロだったのに急に倒れるなんてそんなのおかしいしどう考えたって想定外の何かが起きたって事だしでももう一人の私はあんなに余裕たっぷりっていうかそれこそ別次元の何かみたいでブツブツ……」
「いや、句読点句読点…わたし達女神基準でも非常識な力をあれだけ見せたもう一人の貴女なんだから、きっと大丈夫な筈……」
「ブランもそう言いはするけど、確かにそうだとも思うけど、やっぱり私は落ち着けない。ある意味外傷はないからこそ、怪我ならそれがどう考えても絶命してしまうようなレベルだったとしても、持ち堪えられるのが女神だと知っているからこそ、そうじゃない理由で意識を失ったもう一人の私が心配でならない。」
「……え、いやそれ地の文じゃない!?地の文よねぇ!?これまでも時々、地の文っていうか考えている事をそのまま口にしちゃったりする事はあったけど、今回のはちょっと重症過ぎない!?」
「完全に奇行キャラになってしまっていますわね、イリゼ……」
何かすっごい色々言われてると思って見てみれば、皆が私に向けていたのは心配とドン引きの混じった視線。でもそれについてどうこう言うだけの余裕も私にはなくて、同じ場所を何度も何度もうろうろぐるぐる。何十周かは分からないけど、後から知ればきっと自分で自分に唖然とする程私は回り続け……そうして遂に、扉が開く。もう一人の私と、イストワールさんがいる部屋の。
「……!イストワールさん、もう一人の私はっ!?」
「わわっ!?ち、近いですイリゼさん……Σ(・□・;)」
「あ……ご、ごめんなさい…」
逸る気持ちを抑え…切れずに、出てくるや否やイストワールさんに詰め寄ってしまう私。びっくりした顔をされて、我に返った私だけど…うん、いけない…流石にこれは、少し落ち着かないとまともに話も聞けそうにないよ…。
「…しかし、その思いは理解しています。ですので…まず、結論から言いましょうか(´-ω-`)」
「は、はい…!」
落ち着いた声音で返してくれたイストワールさんに、私は一つ、力強く首肯。それを見たイストワールさんも、私へと頷いてくれて…それから、言う。
「……ご安心を、イリゼさん。イリゼ様の命に、別状はありません(´・∀・`)」
「……っ!…よ、良かったぁぁ……」
「わっ、とと…んもう、しっかりしなきゃ駄目だよイリゼ」
表情を緩め、大丈夫だと言ってくれたイストワールさんの言葉を聞いた瞬間、安堵感からふっと力が抜けてしまう。危うく床に座り込みかけた私を、ネプテューヌが後ろから抱えてくれて…うぅ、いけない…ほんとに私、調子がおかしな事になってる…。
「あはは…でも、それならわたしも安心です。急に倒れて、びっくりしちゃいましたし…」
「うんうん。きゅーにでんち切れ〜、ってかんじだったわよね」
「つかれちゃったのかな…?」
私が自分を省みる中、皆からもほっとしたような声が聞こえてくる。皆ももう一人の私を心配してくれていたんだ…そう思うと嬉しくて、私も表情が自然と緩んでいきそうになる。
…けど、すぐに気付く。一度は表情を緩めてくれたイストワールさんだけど、手放しに喜んでいる…と思える程ではない事に。
「…あの、イストワールさん。中に、入っても大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。…ただ、残念ながら…まだ意識は、戻っていません(-_-)」
もう一人の私が私にとっての家族であるように…というか、イストワールさんもまたもう一人の私に創り出された存在だし、呼び方からもイストワールさんがもう一人の私へ敬意を払っている事は伝わっている。なのに喜んでいないという事は、何かあるんじゃないか…そう思った私が訊くと、イストワールさんはその「手放しでは喜べない」理由を言った。
再び心の中に生まれる不安。それを抱きながら部屋の中へと入ると…そこには、いた。ベットで寝ている、私と全く同じ顔をした…人の姿の、もう一人の私が。
「意識が戻っていない…その理由は、はっきりしているのでして?」
「はい。…順を追って、説明します(´・ω・)」
命に別状はないと言ってくれた。けれどもう一人の私の意識はないまま。喜べるけど喜べないその状況を前に、イストワールさんは皆を見回す。
勿論それに、異を唱える人はいない。だって私も、皆も、気になっていたから。もう一人の私が行使した力…あれは一体、なんだったのかが。
「…イストワールさん。もう一人のイリゼさんが使ったのは、アタシ達のビヨンドフォームや、お姉ちゃん達のネクストフォームに当たるような力…だったんですか?」
「いえ。イリゼ様が行使したのは、皆さんの新たな力とは全く別のものです。そしてイリゼ様はそれを…《女神化》、と呼んでいました(。-∀-)」
『…女神化……?』
「ええ、皆さんの疑問はご尤もです。女神化といえば、皆さんが女神の姿になる事を指すものですからね。…しかしこの言葉、通称とはいえおかしいとは思いませんか?皆さん女神にとっては、女神の身体こそが本来の姿で、今の姿は謂わば仮の姿なのですから(・ω・`)」
切り出す形で質問をしたユニと、それに答えるイストワールさん。言われてみればその通り、私達の本来の姿の事を考えれば、女神化と女神化解除ではなく、人間化と人間化解除こそが正しい表現。人間状態の方がシェアエナジーの消費が少ない分、平時は「何もなければ人の姿でいて、必要に応じて女神の姿になる(戻る)」というスタイルを取っているから、女神化…っていう表現をしているのかな、と今少し考えてみたけど…変というのは、確かにそう。
「この言葉…皆さんにとって馴染みのある方の女神化というのは、イリゼ様が統治していた頃にはなかった表現なんです。皆さんもご存知の通り、基本的にイリゼ様は女神の姿のまま活動していましたから
(。・ω・。)」
「それはまた非効率…と言いたいところだけど、常にシェアエナジーを湯水の様に使って戦ってたし、そもそも節約する必要もなかったって訳ね。…私もそれ位のシェア率を目標にしないと…」
「流石はノワールさん、向上心に溢れていますね。…こほん。そんなイリゼ様が、皆さんに見せた姿を《女神化》という名を付けたのは何故か。…それは文字通り、女神…凡ゆる願いを叶え、凡ゆる奇跡を自在に行使し、凡ゆる不幸を幸福へ変える…一切の誇張なく、それを可能とする力であったからです( ̄  ̄)」
「凡ゆる願いを、凡ゆる奇跡をって…そんな力が……」
ある訳ない。…ネプギアはきっと、そう言おうとしたんだと思う。だけど、言わなかった。だって現に…それが本当だと理解するには十分な程の現象を、私達は見てきたんだから。
窓の外へと視線を向ける。見える空、その一角にあるのは負のシェアの城と…今も尚浮遊を続ける、もう一人の私が意識を失った今でも落ちる事なく空にある、浮遊大陸。…間違いない。もう一人の私が行使したのは…そういう、力なんだ。
「い、いやでも条件とか、デメリットとかはあるんだよね?そんなの普通に使えたらほんともうチート以外の何物でもないし、妄想を現実にするうずめの力のほぼ上位互換だよ?オリキャラが原作キャラの上位互換能力持っちゃうとか、絶対良い顔されないやつだよ…?」
「どこを気にしているんですかネプテューヌさん…しかし、その指摘は正しいです
( ー̀ωー́)゙ウンウン」
「あ、だよねー。特に作者さんのページで『安易に原作の強キャラを超える力の持ち主を出したり云々』って書いてる以上、それはやっちゃいけないよねー」
「あっ、ロムちゃん。イストワールさん、ロムちゃんのまねしてるよ」
「ほんとだ…イストワールさん、わたしといっしょ…(うんうん)」
でも、それだけの事をノーコスト・ノーリスクで出来るものなのか。…というちゃんとした指摘をネプテューヌがした…と思いきや、そこに続いたのはやっぱりネプテューヌだとばかりのメタ発言。しかもイストワールさんの顔文字にロムちゃんラムちゃんが反応した事で、何とも緩い空気になってしまい…そこでブランが軌道修正。
「はいはい、脱線するからその話はまた後でね。…イストワール、続けてくれる?」
「あ、はい…。…言うまでもないと思いますが、わたしが正しいと言ったのは、条件やデメリットがある…という部分です。まず条件として、誰でも出来る訳ではありません。明確な基準がある訳ではないですが…イリゼ様と同等、即ちシェア率100%且つ一人一人の信仰心も深い…と言えるレベルでなければ、そもそも出来ないか、出来ても不完全なものになってしまうかでしょう( ˘ω˘ )」
シェア率100%。条件の一つに過ぎないような(実際そうなんだろうけど)言い方をするイストワールさんだけど、この時点でもう困難なんてレベルじゃない。勿論どういう基準、どういう条件で算出するかにもよるけど…それでもシェア率100%っていうのは、その時代の人全てに信仰されているって状態なんだから。
でも同時に、そういう条件があるなら、あれだけの力を行使出来るのもある程度納得はいく。シェア率100%の時点で奇跡みたいなものなんだから、それを実現出来る女神であれば、奇跡を自ら自在に行使出来てもおかしくはない…ような、気もする。
「その上で、《女神化》は膨大な量のシェアエナジーを消費します。仮にその姿になれたとしても、並みの女神がやろうものなら、瞬く間にシェアエナジーが枯渇し、力が解けるどころか身体も消滅してしまう…という事になりかねません(´ー`)」
「成る程…けれどシェアエナジーの量は、基本的にシェア率に比例するもの。十全に使える状態であれば、消耗に関しても問題ない…とは言わずとも、まともに扱えるだけのシェアエナジー量もある筈、という事ですわね」
「そういう事です。そして、今のイリゼ様の状況は…恐らく、条件面で不完全な状態となってしまっていたのが原因でしょう
(ーー;)」
イストワールさんの説明は続く。私はそれに感謝しながら訊く事を続ける。これまでの色んな事もそうだけど…イストワールさんがいてくれなかったら、これを知るのにも相当な時間がきっと掛かっていただろうから。
「不完全…ですか?アタシ達には、あれでも十分過ぎる程に行使出来ていたように見えましたけど…」
「はい、ですから『条件面で』不完全だったのかもしれない、という事です。どうやら今のイリゼ様は、何らかの形でオデッセフィア…イリゼ様のいる、本来の時代との繋がりを有し、それによってシェアエナジーを確保しているようなんです。なので、量の面は問題ない訳ですが…繋がりがあると言っても、現代にオデッセフィアはなく、現代に『シェア率100%』という環境もありません。そして《女神化》は信次元…世界そのものに干渉するが故に、その本来ならば起こり得ない状況での行使が負荷となり、倒れてしまったのだと、わたしは見ています(´・ω・`)」
それが自分の見解だと言って、イストワールさんは締め括る。行使そのものは出来ても、普通ならない環境、状況下で使った結果こうなってしまったんじゃないか、と。
その説明もまた、理解出来る。だけど、不安にもなる。もしその通りならば、それが甚大な負荷だったんだとしたら……
「…意識は、戻りますよね…?もう一人の私が、このまま目覚めないなんて…そんな事は、ありませんよね……?」
『イリゼ(さん・ちゃん)……』
つい、そのまま口を衝いてしまう不安の言葉。皆に心配をかけてしまい、申し訳ない…情けない気持ちになる私。…だけど、イストワールさんは笑ってくれる。私を安心させるように、私の事をじっと見つめ…言ってくれる。
「…もしも、現代においてイリゼ様が、歴史以外では全く知られていない…完全に過去の女神となっていたら、最悪の事も考えられたでしょう。しかし…現代にも、『オリジンハート』という女神を認知し、信仰する人間もいるという環境は出来ていた。イリゼ様の行動により、イリゼ様という『女神』への感謝や信仰の思いを抱ける土壌が、既に今の信次元にはあった。…そのおかげで、最悪の場合は回避出来た…わたしはそう、思っています(⌒▽⌒)」
「…それ、って……」
それを聞いて、心の中がきゅっとなる。でもそれは、辛さや苦しさからくるものじゃない。これは、この思いは……
(そ、っか…私が…私の存在が、もう一人の私の助けになったんだ…私が女神として、これまでしてきた事が…もう一人の私を、助けられたんだ……っ!)
もう一人の私…ずっとそう表現してきたし、そう思ってもいるけど、私ともう一人の私は全然違う。力も、背負ってきたものも、信念も違って…だから私にとってもう一人の私はかけがえのない、絶対に失いたくない存在だとしても、もう一人の私にとって私は、いなくても別に問題ない存在なんじゃないかって…そんな思いも、心のどこかにはあった。
だけど、そうじゃなかった。思いもしなかった形とはいえ、私がもう一人の私を助ける事が出来た。それが嬉しくて、嬉しくて、何だか涙が出てきてしまいそうで…だけど私は目元を拭い、笑顔を見せる。ここで泣いたら…もっと皆に、気を遣わせちゃうから。
「それなら…それなら、良かったです…!そっか、そっか…そっか……っ!」
「…わたしも、良かったです。イリゼ様の事もそうですが…イリゼさんにも、安心をしてもらえたんですから」
「イストワールさん…。……イストワール、さん…?」
嬉しくてつい、何度も「そっか」と言ってしまう私に、イストワールさんはそのまま微笑んでいてくれる。その優しいイストワールさんに、姉同然のイストワールさんに、私の心はじーんとして……だけど、心に余裕が出来たからか…私は気付いた。気付く事が出来た。微笑むイストワールさんの顔には…どこか、陰りがある事に。
「…あの、イストワールさん…イストワールさんも、何か…あったんですか…?」
「…そう、見えますか……?」
返された問いに、私は頷く。…いや、違う。皆も頷く。どのタイミングからかは分からないけど、皆もイストワールさんの陰りに気付いたみたいで…私達の肯定を受けたイストワールさんは、数秒沈黙。それから心を決めたかのように、イストワールさんは言う。言おうとする。
「…先程、理解し切れていない…と言ったのを覚えていますか?」
「…はい」
「あれは…《女神化》について分かったのは、その先程なんです。それも、調べた結果分かったのではなく…不意に、思い出したように、それがわたしの「記録」の中に浮かび上がったんです。…忘れる筈のない、本来忘却などあってはならない筈の、わたしの記録に」
「…それは、どういう……」
「わたしにも、まだ分かりません。ですが、もしかすると……」
何かを、分からないなりに考えを言おうとしたイストワールさん。だけどそれは、そのタイミングでイストワールさんへと繋がった連絡により遮られる。
それは通信機や携帯端末による、普通の連絡ではなく、別次元からの…別次元のイストワールさんからの連絡。急に何だろうと思いつつも、私達は目を見合わせ、一旦こちらを優先させようという考えで一致。そしてイストワールさんが連絡に出ると、相手は神次元のイストワールさんで……
「た、たた、大変ですっ!緊急事態ですっ!うずめさん、それにウィードさんのお二人が、あちらの次元で、大変な事に……ッ!(><)」
もう一人の私は、きっと大丈夫だ。きっと、ちゃんと目覚めてくれる筈だ。…開口一番、交信が始まった直後に神次元のイストワールさんが発したのは…私の中にあった、そんな安堵感を一瞬にして吹き飛ばすような言葉だった。
今回のパロディ解説
・モッヂボール
ギャグマンガ日和シリーズに登場する、あるスポーツの事。こういうシーンは、どんなネタ(パロディ)にするかを色々考えられて楽しい部分があったりします。
・X20A
機動戦士ガンダムSEED destinyに登場するMSの一つ、ストライクフリーダムの事。そうです、被弾ゼロです。ネプテューヌ達との決戦で苦肉の自傷防御はしてますけどね。