超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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 前回の第十話にて完結した、三作コラボのあとがきは、次回の投稿までに活動報告は上げようと思います。楽しみにして下さっている方がいましたら、もう少しの間お待ち下さい。


第百五十三話 またもや来訪者…?

 意識を取り戻したもう一人の私は、人の姿のオリゼは、女神の姿の時とは180度違う…微塵も予想が付かないような、驚きの性格だった。ネプテューヌという前例(誕生したのはオリゼの方がずっと先だけど)があるとはいえ、威風堂々した、正に頂点に立つ存在であるような言動とは真逆の、びっくりする程気弱で幼い性格をしているだなんて、仰天以外の何物でもなかった。

 けど、だからって失望したとか、残念に思っただとかは、一切ない。驚きはしたけど、私のオリゼへ対する尊敬は、羨望は…かけがえのない存在だと思う気持ちは、微塵も変わってなんかいない。だって…もう一人の私は、オリゼは、どんな性格や状態だとしても、オリゼなんだから。

 

「オリゼ、起きてる?入っても大丈夫?」

 

 オリゼが目を覚ました日の翌日、起きた私は顔を洗って、それからすぐに隣の部屋…オリゼが使っている部屋へと向かった。

 その理由は、オリゼが元気かどうか確かめる為。目が覚めて以降、オリゼの具合が悪いような素振りは一切なかったけど…女神化が出来なくなっている(正しくは女神の姿が本来の姿な訳だけど)以上、不調になっている事は事実。一日経った事で何か起こっているかもしれないと思い、部屋の扉をノックした。

 

「(返事がない…まだ寝てるのかな…)入るよー、オリゼ。不味かったら言ってねー?」

 

 そう言ってから数秒後、反応がない事で私はドアノブに手を掛ける。昨日頼んでおいた通り、部屋に鍵はかかっていなくて、寝ているならば…と忍び足で部屋の中に。

 私の部屋と同じ作りになっているこの部屋の中は、昨日見たままだった。特に個性もない、用意したばかりそのものな状態で……

 

「すぅ…くぅ……」

 

 部屋の一角、ベットの上では、やっぱりオリゼが眠っていた。規則正しい寝息を立てて、ほんの少し身体を丸めて。

 そのオリゼの周囲…枕の左右に置かれているのは、昨日私が貸したぬいぐるみ達。どのぬいぐるみもオリゼの側を向いていて……正直、ちょっと可愛い。こういうと、自画自賛になっちゃうけど。

 

(でもほんと、不思議な気分だなぁ…自分と全く同じ顔の人が寝ている姿を見るだなんて……)

 

 自分の顔を見る事自体は鏡であったり写真であったりで幾らでも経験してるけど、そういう事とは訳が違う。

 更に言えば、私の場合はネプテューヌと大きいネプテューヌみたいな、別次元の同一人物…って訳でもない。私は複製体の私で、オリゼは私の元になった私で、そういう意味では別次元の同一人物よりも近いようにも、そうじゃないような気もしていた。

 

「どうしよう…具合悪そうではないけど、寝てるんじゃオリゼ自身にどうなのか訊けないし、だからって起こすのも……あ」

 

 偶々か、それとも私の気配を感じたのか、私が独り言を言っている最中に瞼をぴくりと震わせるオリゼ。そうしてオリゼは薄っすらと目を開け、もぞもぞとしながら起き、緩く一つ伸びをする。

 

「ふぁ、ぁ……」

「おはよ、オリゼ。ゆっくり眠れた?」

「あ、ふぁい……」

「そっか、それは良かった。具合はどう?」

「具合…?具合は……ふぇぇッ!?」

「うぇぇッ!?」

 

 ぽけーっとした顔で返答をするオリゼに対し私は膝を軽く曲げ、視線の高さを近付けて更に質問。それにもオリゼは答えて…くれるかと思いきや、返答の代わりに返ってきたのは驚愕の声。それに私もびっくりして、思わず軽く飛び退いてしまう。

 

「な、何!?オリゼどうしたの!?」

「あ、あわ、あわわわわ…!?」

「え、え……?」

「……ぁ…!」

 

 あわあわ言って目を白黒させるオリゼの様子に、私は困惑。ちょっと訳が分からな過ぎて、なんて言葉をかければいいのか私にはさっぱり分からない。でもその間に、オリゼは落ち着いた…というか、今の状況を理解したらしく……

 

「うぅ…ご、ごめんなさい、イリゼ……」

「う、うん…まあ昨日の今日だもんね、寝起きだったら驚くよね……」

 

 十数秒後、ベットの上では割座でしゅーんとしたオリゼの姿が出来上がっていた。

 

「えと、じゃあ改めて訊くけど…具合は大丈夫?」

「は、はい。至って健康、で……」

「……?」

「…め、女神なのに…女神の姿に戻れもしない、のに…健康、だなんて…ぐすっ……」

「あ、ちょっ、えぇっ!?自虐!?」

 

 健康です…と言いかけたところで現状を思い出したらしく、目に涙が溜まっていくオリゼ。分かる、女神化出来ないだなんて一大事だし、それで健康だなんて言うのは違うよね…という事なら、私だって頷ける。で、でも…だからって泣く…!?自分の言った事で即泣きそうになる…!?

 

「わ、私…まだ、やらなくちゃいけない、事…た、沢山っ、ある…のに…ふぇ……」

「だ、大丈夫!大丈夫だよオリゼ!えーっと…ほら、ネプテューヌ!ネプテューヌも前に一度似たような状態になって、でも力を取り戻した訳だから!前例がある以上、女神の中の女神であるオリゼが、出来ない筈はないよ!」

「…あ、ありがとうございます、イリゼ……です、よね…ひ、人の皆さんの為に…私が、いじけてなんか…いられ、ません…っ!」

 

 涙目どころかほんとに泣き出しそうだったオリゼに、私はかなり慌てながらも急いでフォロー。慌てたせいで何か某英雄王を讃える魔術師みたいな言い方をしてしまったけど、オリゼが気を持ち直してくれたみたいだから…まあ、良し。……なんか昨日も、似たようなやり取りした気がするけどね…!

 

「う、うん。その意気だよオリゼ。じゃあ、身支度してご飯に……あ」

「……?」

「ね、オリゼ。ご飯の前に会ってほしい子達がいるんだけど、いいかな?」

 

 自分も身支度の為に一度戻らないと…と思ったところで、ある事を思い付いた私動こうとしていた脚を止める。そして、きょとんとしているオリゼへ問い掛けて…一人ではなく、オリゼを連れて自分の部屋へ。

 

「あ、あの…会って、ほしい子…って……」

「うん。そろそろ起きると思うんだけど…ライヌちゃーん、るーちゃーん、起きてるー?」

 

 少し不安そうなオリゼと共に部屋へ入った私は、奥の部屋へと呼び掛ける。すると、その奥の部屋から小さな音が聞こえてきて…現れたのは、可愛い私の同居者達。

 

「ぬら〜!」

「ちるちる〜!」

「わわ……っ!」

 

 片やぴょこぴょこと跳ねて、片やぱたぱたと飛んで私の下へ来てくれたのは、ライヌちゃんとるーちゃん。オリゼはやっぱりそれに驚いて私の背に隠れちゃったけど…昨日寝ているライヌちゃん達を見ているからか、反射的に攻撃を…という事にはならなかった。…良かった……。

 

「おはよ、ライヌちゃん、るーちゃん。…私の後ろにいる人が、見える?」

「ぬら……!?…ぬ、ぬら…?」

「ちるーぅ…?」

 

 私を見つめるライヌちゃん達に声をかけ、ちょっと退けば、当然オリゼの顔が見えるようになる。するとまず、私以外の人がいると気付いたライヌちゃんがビクつき…けれどその後、ライヌちゃんもるーちゃんも揃って目を丸くした。まあ、それはそうだよね。だってライヌちゃん達からすれば、いきなり私が二人になったようなものだもん。

 

「えっとね、ライヌちゃん、るーちゃん。この人は、オリゼ。私そっくりだけど、私じゃなくて…あ、いや、私だよ?私ではあるんだけど……(うーん、複製体とか原初の女神とか言ってもさっぱりだろうし、これをどう説明したものか…)」

「ち、ちるー…ちる、ちるー…?」

「ふぇっ!?あ、わ、私はオリゼと言います…!…ぁ、ほ、ほんとはイリゼ、です…!け、けどイリゼもイリゼなので、私はオリゼ…と、いう事で……よ、よろぴくお願いしますっ!」

「ぬ、ぬらー…ぬらら、ぬらっ!」

 

 良い説明が思い付かず私が頭を捻っていると、その間にるーちゃんは不思議そうな顔をしつつもオリゼへ…私じゃない私へ話し掛ける。それを受けたオリゼは、あわあわしながらも(そして死語が混ざりながらも)何とかライヌちゃん達へ自己紹介。ぺこんっ、と大きく頭を下げる様子に、再びライヌちゃん達はきょとんとしていて……でも次の瞬間、ライヌちゃんは元気な声をオリゼに返した。

 これには凄く驚いた。だってライヌちゃんは、誰であっても初対面なら凄く怯えるから。でも私と同じ外見だからか、或いは外見だけじゃなく完全に「もう一人の私」だからか、オリゼに怯える様子はなく…それだけでも私はほっとした。ほっとしたし、嬉しかった。

 

「ぬーぬら、ぬららっ!」

「ちるちる、るちるっ!」

「わ、わっ…い、イリゼっ、この子達はなんて言っているんですか…?」

「うーんと…私も分からないけど、ライヌちゃんもるーちゃんも歓迎してくれてるみたいだね」

「そ、そうなんですか……ら、ライヌさん、るーさん、触っても…いい、ですか…?」

 

 全く同じ姿の私…ライヌちゃん達からすれば本当にもう一人の私なオリゼの事が気になるようで、ライヌちゃん達はオリゼへ積極的に話し掛ける。そして、言葉は分からないながらもオリゼへ興味を持ってくれている、好意的に見てくれてるみたいだと伝えると、オリゼはその場にしゃがみ込んで、触ってもいいかと問い掛けた。

 それを聞いたライヌちゃんとるーちゃんは、またきょとんとした顔をして…それからライヌは頭を差し出し(元々頭だけだけど)、るーちゃんもライヌちゃんの隣に降りてオリゼを待つ。撫でてもいいよ、という意思表示を受けたオリゼは、少しおっかなびっくりながらもライヌちゃん達に手で触れて……

 

「わぁ、わぁぁ……!い、イリゼ…!ぷにぷにです、ふわふわです…っ!」

「でしょ?ライヌちゃんはひんやりぷにぷにで、るーちゃんはふわふわもふもふでしょ?」

「は、はいっ!それにライヌさん、も…るーさん、も…か、可愛い、です…っ!と、とっても可愛いです……!」

 

 興奮の面持ちで撫でては感想を口にし、言ってはまた撫でるオリゼと、撫でられて心地良さそうにするライヌちゃんるーちゃん。何ともほっこりとする光景に、答えながら私は微笑む。

 全員が全員、私にとっては大切な存在。そのオリゼ達が、こんなにもすぐ仲良くなってくれた。それは凄く嬉しい事で…この調子で、皆ともオリゼが仲良くなれたらな、と思う。勿論今は、オリゼは皆の事を好意的に見てくれてるだろうし、皆も仲間だとは思ってくれてるだろうけど…『女神として』という部分を抜きにしても、オリゼには皆と仲良くなってほしいというのが、今私の中にある願いだった。

 

 

 

 

 起床から数時間後。今日はオリゼが目を覚ましたという事もあって、負のシェアの城とくろめ、レイに対する次の方針…いや、撃破に向けた本格的な会議を行う事になっている。

 けれどその前に、やる事が一つ。その「やる事」をする為に、今私達はプラネタワーの一角、別次元との交信や次元の扉を開く際の部屋へと来ていた。

 

「それでは、始めます(`・ω・´)」

「うん、いーすんふぁいとー!」

 

 ネプテューヌからの声援を受けて、イストワールさんは集中開始。数秒後、何もなかった空間は私達が見つめる中で少しずつ歪み始め…そうして出来上がった、次元同士を繋げる扉。そしてその中から、向こうからやってきたのは、セイツとピーシェ。

 

「よいしょ、っと。いすとわる、移動完了したよ」

「そのようですね。では、閉じるので触れてはいけませんよ?(´-ω-`)」

 

 くるり、と振り向いたピーシェが声を掛けたのは神次元のイストワールさんで、頷き合った二人のイストワールさんは、次元を繋ぐ扉を閉じる。…この時、もし扉に触れていたら……まあ、碌な事にならないのは間違いないよね…。

 

「ふぅ。信次元に来るのは二度目だけど、皆あれから元気にしてた?」

「もう、元気にしてた?…も何も、昨日だって交信したでしょ?」

「ふふっ、言ってみたかっただけよ。それにイリゼなら、突っ込んでくれると思ってたもの」

「突っ込みっていうか、これはただの訂正だけどね」

 

 調子の良い事言うなぁと思いつつも、ついつい私の口角は上がる。その相手、セイツも嬉しそうで、嬉しそうな表情を見るのもまた嬉しい。

 

「あっちは相変わらず仲良いねぇ。うぅ、わたしもデートをした身なのに…!」

「……ねぷぎあ、これまでも交信で聞いてはいたけど、あれからこっちは何もない感じ?」

「あ、はい。うずめさん達、海男さん達もお変わりないですか?」

「え、ちょっ…そんなさらっとスルーする…?ピー子もネプギアも、わたしの声は聞こえてるよね…?」

「ううん、聞こえてない」

「聞こえてるよねぇ!?聞こえてるからこその反応だよねぇそれ!」

 

 一方ネプテューヌ、ネプギア、ピーシェはといえば、トリオ漫才みたいな会話を展開中。聞こえてきた私とセイツは肩を竦めて……それからセイツの視線は、私の背後へ。

 

「…で、えっと…もしかして、イリゼの背後で固まってるのが……」

「うん。…オリゼ、分かってると思うけど、二人がセイツとピーシェだよ」

「は、はい……!」

 

 昨日の私達の時やライヌちゃん達の時と違って、怖がっていたり驚いていたりする訳じゃなさそうなものの、やっぱり緊張はしているらしいオリゼ。私が呼び掛けると、若干声を裏返らせながらもオリゼは出てきて…ぺこんと一礼。

 

「は、初めましてっ!わ、私はオリゼ、です…!えと…お二人の事は、イリゼから聞いていて…えと、だから…そ、その…あの……」

「……可愛いっ!」

「ひょえぇぇぇぇっ!?」

 

 手探り感溢れる、わたわた全開の自己紹介。見ているだけでほっこりとしそうなオリゼの自己紹介は、途中からどう言えばいいのか分からなくなったのか、言葉が続かなくなり……やはりというべきか何というか、次の瞬間セイツの感情が爆発した。

 可愛い!…というどストレートな言葉と共に、セイツはオリゼへ飛び込み抱き着く。当然その行動にオリゼは素っ頓狂な声を上げて目を白黒させるも、それで止まるセイツじゃない。

 

「可愛いっ、可愛いっ、何この子凄く可愛いわっ!この小動物的な言動もそうだけど、心よ心!この独特な、感情を隠そうともしない心の揺らめきが可愛くて可愛くて……あ、どうしよう。感動し過ぎたせいか、ちょっと涙すら出てきたわ…」

「そ、そんなに…?えと…よ、良かったね……?」

「よ、よよっ、良くないですぅぅっ!ぴぇっ、イストワールっ、イリゼぇぇ…っ!」

 

 うっきうきでセイツはオリゼを抱き締め、オリゼは私達に助けを求めてきて、ものの数秒で部屋の中はカオス状態。…うん、まぁ、何というか…セイツの事だから、こんな感じになる事は予想してたけど…まさかここまでとは……。

 

「はーい、オリゼ思いっ切りテンパってるから止めようねー……ってうわ、地味に抱き締める力強い…!」

「はぁ、これだから反対は困る…せーつ、このままだと普通に泣かしそうなんだけど?せーつはそれでいい訳?」

「はぅぅ、流石もう一人のイリゼだけあってセイツもほんと……はっ!?」

 

 加勢してくれたピーシェと二人で引き剥がそうとしていると、そのピーシェの指摘で我に返ったセイツは力を抜き、それで何とか救出に成功。とはいえオリゼは完全に涙目で、また私の背後に隠れてしまう。

 

「う、うぅぅ……」

「ご、ごめんなさいオリゼ…こほん。じゃあ改めて、デートを……」

『…………』

「…うん、流石に今は違うわよね。分かってるわ……」

 

 全員からの半眼を受け、分かっていると言いつつ引き下がるセイツ。本気で誘おうとしてたらどうしようと思ったけど、それこそ流石にそれはなかった。

 

「セイツがごめんね、オリゼ。でもセイツ、ほんとに良い人…というか、良い女神だから。ただちょっと…いやかなり個性的なだけで、ね?」

「は、はい…お二人、が…して、くれた事は分かってるので…だ、大丈夫…です…」

「……ふふっ。イリゼ、ちゃんと話せたみたいね」

「え?…あ……うんっ!」

 

 よしよしとオリゼの頭を撫でて慰めていると、掛けられたのはセイツからの穏やかな…安心したような声。

 こうして今、オリゼと普通に話せているのは、あの時セイツが私の気持ちを受け止めて、背中を押してくれたから。だから私は、ありがとうの思いも込めて…大きく、強く、頷いた。

 

「…うん。本当に、安心したわ。イリゼの事もそうだけど…オリゼ、貴女の心にも触れて分かったもの。貴女が尊敬出来る、女神だって」

「…当然、です…わ、私は…女神、です…から」

「えぇ。その言葉だけでも伝わってくるものがあるわ。それに…うん、貴女には安心感もある。よく分からないけど…やっぱり、同じ『イリゼ』だからかしらね。…凄く、ほっとするものがあるわ」

 

 さっきまでとは対照的な、落ち着いたセイツの表情と声。それにオリゼが、はっきりと目を見て言葉を返せば、今度はセイツが頷いて…何故かは分からない。分からないけど私も胸がぽかぽかとしてきた。ちらりと視線を動かせば、こちらを見ていたイストワールさんも微笑んでいて……

 

「このシーンで締めれば、今回は終始穏やかな話だったで終われるなぁ、と思う私だった」

「そうそうこういう終わり方も…って、勝手に地の文みたいな事言わないでくれる!?後まだ、今回はやるべき展開があるんだからね!?」

 

 シリアスだけでなくそれ以外の空気でもやろうと思えば壊せるネプテューヌ…その存在を忘れていた結果、特大の一撃を受けてしまう私だった。…油断した…油断してた……。

 

「ねぷてぬ……」

「お姉ちゃん……」

「う…でもさでもさ、イリゼも言った通りまだこの場面で終わりじゃないんだよ?だから尺的な事も考えて、わたしはボケをだね……」

「…まあ、この後に会議があるのは事実です。ネプテューヌさんの発言はともかくとして、そろそろ移動しますか?

(´・ω・`)」

「っと、それはそうだったわね。待たせちゃってごめんなさい、皆」

「んーん、気にしないで。…あ、それと…移動前に、一ついいかな?」

 

 今イストワールさんが言った通り、今回は神次元の二人を加えての会議の予定。確かにそれに遅れる訳にはいかないよね、と私達は部屋を出ようとして…そこでネプテューヌがわたし達を呼び止める。

 何だろう。そう思って、足を止める私達。そして全員が振り向いたところで、ネプテューヌはセイツとピーシェの方を見て…言った。

 

「…二人共、あの時…わたし達がオリゼと戦っている間、レイを足止めしていてくれて、ありがとね」

「ねぷてぬ…でも、それは……」

「うん、交信でも前に一回言ったけど、ちゃんと直接会って言いたかったんだ。ネプギアやイリゼ達とは違って、あの後二人が帰るまでの間には言えなかったからね」

「そっか…なら、どう致しましてよ、ネプテューヌ」

「…だね。じゃあ、ぴぃからも改めて言おうかな。…やるじゃん、ねぷてぬ」

 

 二人からの返答を聞いて、ネプテューヌはにっと笑う。それを聞いていたわたしとネプギア、イストワールは微笑み合う。

 あの後、私達と違ってネプテューヌ達守護女神の四人は気絶してしまったから、神次元へと戻った二人と言葉を交わす事は出来なかった。でも今言った通り、交信でも感謝は伝えてる訳で…それでも直接会ってお礼を言いたかったんだって言うネプテューヌは、やっぱり「らしいなぁ」と思った。

 

「じゃ、わたしからはそれだけだよ!会議室にレッツゴー!」

 

 言いたい事は済んだ、とばかりに先を行くネプテューヌに続き、私達も部屋を出る。昨日はあの後ノワール達もプラネタワーで泊まったから、多分もう皆集まっている筈。

 

「…あ、あの、イリゼ。セイツ、さん…って…何だか凄い、女神…ですね……」

「あはは、でしょ?」

「そ、それに…その……」

「その……?」

「…や、やっぱ何でもない、です……」

「……?」

 

 色々思う事があったのか、セイツについて私に話してくれるオリゼ。何を言いかけたのかは分からないけど…まあ多分、最初のハグとか誘いかけたデートに関して対応に困った、とかじゃないのかなぁと思う。…ほんと、多分だけど。

 

「皆さん、お待たせしました」

「やっときたわね。…セイツさん、ピーシェさん、今日は宜しくお願いします」

「オリゼさん、チョーシはどう?」

「オリゼさん、元気…?(じー)」

 

 そうして会議室に入った私達は席に着き、会議を開始。まずは現状の確認と、今までで得られた情報のピックアップを行い、そこから本題へ…負のシェアの城の攻略と、くろめ及びレイの撃破に向けた話に入った。…入りは、したけど……

 

『…………』

 

 決して十分意見が出たという訳でもないのに、会議室は沈黙状態に入ってしまう。行き詰まった状態になってしまう。

 何がそうさせているのか。…それは、負のシェアの城、その周囲に発生している空間の歪み。これを何とか出来ないんじゃ、その先の事を話しても実行に移せない訳で…でも、その空間の歪みをどうにかする手段を私達は持ち合わせていない。ネプテューヌのネクストフォームは浮遊大陸の時同様、手段として数えるにはあまりにも懸念事項が多過ぎるし、そもそもその浮遊大陸の時だって、最終的には向こうから解除をしたってだけ。三人寄れば文殊の知恵と言うし、今回は神次元の二人にも参加してもらってるけど…やっぱり、出てこないものは出てこない。

 

「うーん…これってさ、策でどうにかするんじゃなくて、よくあるアイテムとか解除イベントとかで何とかするパターンなんじゃない?お城繋がりな某死の城とか、某VRMMOの世界樹とか」

「確かに、RPGの定番的展開ではありますわね。…後者はそもそもクリア出来ないようになっていたようなものですけど」

「うん、何真面目な顔してゲームの話してるのよ貴女達は……」

「まあ、あの歪みを外部にある装置で発生させているなら、それを破壊する事で解除出来るんでしょうけど…これら、そうだったら良い…の域を出ない話ね」

 

 ノワールが突っ込み、ブランが一つの可能性を上げるもすぐにそれを自分で否定。今ブランが言ったように、「もしかしたら」って案やアイデアは幾つか出てはきたけど、どれも実現不可能だったり、根拠のない想像レベルだったりするから、今のところ「それを一先ずやってみよう」となったアイデアは一つもない。

 それに、仮にそういうアイデアが出てきたとしても、試しにやってみた結果、そこでは成功したものの、すぐにその手段への対策を立てられてしまい、駄目になった…ってなったらそれでお終い。相手の本陣に突入出来ないという、戦い以前の問題はあまりにも大きく……完全に話が止まってしまったからか、そこでピーシェがある提案を口にした。

 

「あの、さ…浮遊大陸での情報収集は、まだ途中なんだよね?なら、ぴぃ達が行ってみても良い?」

「それは…違う次元の、違う経験をしてしたピーシェさん達だからこそ気付けるもの、感じられるものがあるかもしれない、って事ですか?」

「うん、そういう事。これも、『かもしれない』レベルの話だけどね」

「けど、試す価値はあるよね。そうでなくても、広い分情報収集には人手が沢山欲しい訳だし。…オリゼも、どう?」

「わ、私ですか?も、勿論ですっ!行き、ます…!」

「なら、このままここにいても時間ばっかり過ぎちゃうし、早速行こうよ!善は急げ、ってね!」

 

 いやそんな勢い任せで…と言いたいところだけど、確かに今のまま話していても、何か良い案が浮かぶ可能性は低い。なら昨日途中で終わってしまった(というか、皆が気を遣ってくれた)情報収集を再開しつつ、今ピーシェが言った事を試してみる方が時間の使い方的には有益な訳で、ネプテューヌの提案に皆が首肯。そして、じゃあ行こうかという雰囲気になったところで……それは起こった。

 

「……え、え?Σ('◉⌓◉’)」

「ほぇ…?い、イストワール…ど、どうか…しま、したか……?」

「…あ、あの…いきなり何を言い出すんだ、と思うかもしれませんが……バルコニーへ出て、という声が頭の中に…(・・;)」

『え?』

 

 それはイストワールさんからの、唐突な…尚且つ奇妙な発言。イストワールさんは困惑した表情をしていて…でも、私達はそれ以上に困惑している。何せ、全く意味が分からないから。

 

「い、いーすんさん…まさか、幻聴ですか……?」

「そ、そんな筈は…というか、これは…似ているんです。次元間での交信を行う際の、感覚に……( ´△`)」

「それ、って…どこかの次元から、その次元のイストワールがコンタクトを取ろうとしてるって事じゃないの…?」

 

 顎に親指と曲げた人差し指を当てて言うセイツの発言に、確かに…という空気が広がっていく。それだって予想の域を出ない話だけど、幻聴や気のせいでないのなら、それ以外は思い付かない。

 そして、これを確かめる手段は二つ。一つはイストワールさんが、今の声を頼りに発生源を探してみるというもので…もう一つは、実際にバルコニーへと出てみる事。どっちが手早く、現実的かと言えば……そんなの、後者に決まってる。

 

「わたしいちばーん!…でも、何もないよ?」

「うん、プラネテューヌがよく見えるだけ…」

「イストワール、他に何か聞こえませんの?」

「いえ…聞こえたのは、それだけで……(。-_-。)」

「…となると、別の建物のバルコニーって事?いやでも……」

 

 考え込みながらベールやブランがイストワールさんと話す中、私はゆっくりとバルコニー内を見回してみるけど、やっぱりそれらしきものは何もない。

 なら、これはどういう事?まさかほんとに、幻聴とか別の建物だったパターン?私もそう、頭の中で考え始めて……でもその内に、聞こえてくる。どこかから、何かの音が。いや…何かの、声が。

 

「な、何この流れていってるみたいな声…しかもこの声、ぴぃ聞き覚えがあるような……」

「わたしも…って、あ…あぁっ!?え、えぇっ!?」

「へ?な、何よセイツ。急に変な声を出して…って、あれ?皆…?なんで見上げて……」

「な、何でも何も上!上だよお姉ちゃん!」

「上?…ああ、バルコニーに出ろって、そこから見える空に何か……って、はぁああああぁぁッ!?いや、ちょっ…のわぁああああぁぁぁぁッ!?」

 

 初めに「それ」に気付いたのはセイツ。聞こえる声の発生源を理解した私達も次々と上を見上げていき、最後となってしまったのはノワール。しかも勘違いした様子のノワールは、何気ない感じで見上げて…次の瞬間、絶叫した。

 でも、それはそうだよね。だって、上っていうのは……上から物体が、いや人が落ちてきたんだから。そして本当に運の悪い事に…その落ちてきた人は、ノワールに直撃。どすーんっ!…と大きな音を立てて…その人は、叫ぶノワールを押し潰す。

 

「痛たたた…うぅ、これってわたしの宿命なのかなぁ……」

 

 普通ならどう考えても大怪我になる転落事故(?)ながら、割とすぐに声を出して起き上がるその人。落下してきたその人を見て…私達は、目を見開く。

 それは、その人は、女の子だった。左右に跳ねた、明るい薄紫の髪と、澄んだ紫色の瞳を持つ、見るからに快活そうな女の子。…いや、女の子というか…その人は、どうみても……

 

「わ…わたしぃいいいいっ!?こ、ここに来て…また新たなわたしの登場!?」

「おー、早速会えたねわたし!それに皆も、元気ー?」

「げ、元気ーって……え、お姉ちゃん…?別次元の、お姉ちゃんって事…?」

 

……ネプテューヌである。どう見ても、これはネプテューヌなのである。パーカーワンピじゃなくて、似た色合いの別の服を着てはいるけど、大きいネプテューヌみたいに体格の差がある訳じゃない、完全に瓜二つなもう一人のネプテューヌが、何故か落ちてきた転落者。

 当然特に驚いているのは、同じネプテューヌと、その妹であるネプギアの二人。そして、ネプテューヌの発言にはあっけらかんと返したもう一人のネプテューヌは、ネプギアの発言を聞いたところでにやっと笑って……言った。

 

「ちっちっちー、違うんだなぁネプギア。確かに、ある意味そうなのかもしれないけど、わたしはネプテューヌはネプテューヌでも、ただのネプテューヌじゃなく……」

 

 

 

 

 

 

「──未来の時間軸から来た、未来のお姉ちゃんなのさっ!」




今回のパロディ解説

・某英雄王を讃える魔術師
Fateシリーズに突如するキャラの一人、遠坂時臣の事。王の中の王ならぬ、女神の中の女神…まあ、そういうイリゼも女神な訳ですけどね。

・某死の城
ドラゴンクエストⅣに登場するダンジョンの一つ、デスキャッスルの事。…勿論負のシェアの城はデスキャッスルのパロディじゃないですよ?関係ないですからね?

・某VRMMOの世界樹
ソードアート・オンラインにおける作中ゲームの一つ、ALOの世界樹の事。必要なイベントを満たしてない云々は、作中で語られていた推測ですね。
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