超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
久し振りにわたしの視点だよ!本編的にはそこまで久し振りじゃないけど、コラボがあったから感覚的に久し振りな気がする、わたしの視点からスタートだよ!
…って、普段なら陽気に始めるところだけど…どんな時でもペースを崩さないこのねぷ子さんでも、流石に今回はそうもいかないんだよねぇ。というかむしろ、聞きたいものだね。空から自分と瓜二つの人が落ちてきて、しかもその人が「自分は未来のネプテューヌだ」って言ってきた場合に、自分のペースを維持出来る方法があるならねっ!
「という訳で、一旦バルコニーからいつもの部屋に戻ったわたし達だよ!」
「うん、それわたしの台詞だから!」
「うん、
「信次元の、わたしの発言ねっ!ややこしいから!ただでさえ人数が多いと活字媒体だから誰が喋ってるか分かり辛くなるのに、そんな事されたらいよいよ本気でよく分からなくなるからほんと止めて!?」
明後日の方向を見ながらわたしみたいな事を言い出すもう一人のわたしへ突っ込むわたし。…いや、当たり前だけどね!わたしみたいっていうかわたしそのものなんだから、ただただ当たり前の事なんだけどね!後この地の文もややこしい!
「うぅ…これまで『もう一人の私』って表現を何度もしてきたのに、よくイリゼはややこしくならなかったね…」
「え?あ、まぁ…私の場合、もう一人の私っていっても、言動は結構違うからね…」
「っていうかネプテューヌの場合は、既にもう一人のネプテューヌ…大きい方のネプテューヌとの経験があるんじゃないの?」
「そーそー、おっきいわたしとのやり取りを思い出せば余裕だって!ねー、ノワール〜」
「ねー、ノワール〜…じゃない!取り敢えず貴女は同意を求めるよりまず、さっきの事謝りなさいよね!」
「ごめんねごめんね〜」
「ちゃんと謝りなさいよね!?」
思い切りふざけた謝り方をした事でノワールから突っ込みを受けたもう一人のわたしは、期待通りだとばかりにふふんと笑う。むむぅ…流石わたし、ノワールの弄り方も熟知してる……。
「…で、実際どうなのでして?もう一人のネプテューヌの言う事も一理あると思うのですけど」
「いや、おっきいわたしは『おっきい』とか『大きい』とか、わたしと区別する表現があったでしょ?でもほら、こっちのわたしの場合は身長も変わらないし……」
「あ、じゃあ服で区別しておく?パーカーワンピのわたしと、ジャージワンピのわたし、みたいな感じにさ」
「ジャージワンピのお姉ちゃん…ちょ、ちょっと名前としては長いね…」
「…こほん。えーっとさ、そろそろ良いかな?一瞬で馴染んでる辺り、未来のネプテューヌ?…って事は間違いないみたいだけど…逆に言えば、私達はそれ以外の事が全然分からない訳だし、ね」
「あ……う、うん。それもそうだね」
あ、その服ジャージワンピって言うんだ…とちょっとした事をわたしが思っている中、一つ咳払いをしたイリゼがゆるっゆるな空気をリセット。言われたもう一人のわたしは一瞬毒気を抜かれたみたいになって…でも、その後は落ち着いた顔で、イリゼにこくんと頷いた。
「じゃあ…もうちょっとちゃんと、自己紹介をするね。わたしはネプテューヌ。今おっきいわたしの話が出たけど…わたしは人間じゃなくて、ちゃんと女神だよ。今ここにいるわたしと同じ、プラネテューヌの守護女神。だって…未来の時間軸の、ネプテューヌなんだからね」
全員を見回せる位置に移動してからの、改めての自己紹介をするもう一人のわたし。
別次元じゃなくて、別時間。別次元の同一人物じゃなくて、未来の世界にいるわたし。違う次元の事についてはもう慣れてるけど、別の時間軸とかその存在っていうのは完全に初めて……じゃ、ないか…まだよく分からない部分も多いけど、少なくとも『過去』の女神であるオリゼが今ここにいる訳だし…こほん。…とにかく未来の人と会うなんて未経験の事だから、何だか凄く不思議な感じ。
「未来のネプテューヌちゃん…でも、あんまりおっきくなってないのね。あ、もうせーちょーきじゃないの?」
「うーん、そういう問題じゃないと思うけどねー。ほら、女神な訳だし」
「おっきくなってたら、おっきいネプテューヌさんみたいだったのかな…?それとも、ネプギアちゃん、みたいだったのかな…?」
「う、うん…さらっと『成長したら妹みたいに』って言われるのはダメージあるね…はは……」
顔も背丈もわたしと同じ。そりゃ勿論、ちゃんと測ったら1㎜位は違うかもしれないけど、少なくともぱっと見で分かる外見の違いはなくて、それがロムちゃんやラムちゃんは残念な様子。…でも、そうだよね。二人はやっぱり「まだ小さい子達」として見られてる訳だし、大きくなりたいって気持ちがない訳ないし。
「…まあ、それはともかく、よ。わたしは…いや、わたし達は貴女に、確認しなきゃいけない事があるわ」
「…うん。何かな、ブラン」
二人の様子に肩を竦めていたブランは、それから声に真剣さを込めてもう一人のわたしへと視線を向ける。その様子を見たもう一人のわたしも、ブランへと向き直って…向かい合ったブランは、言う。
「…貴女が本当に未来から来たのか、というのはこの際置いておくわ。あくまで本当なんだとして…貴女は何故、ここに…今の時代に来たの?」
それは、一番基本の事。どうして未来から来たのっていう、一番基本で…一番大事な事への質問。そして、それを受けたもう一人のわたしは、わたし達皆を見て…頷く。
「…確かめに、来たんだ。凄く、凄く大切で、わたしが信じている事を…ここで、確かめる為に」
「…それ、って?」
「ごめんね、ネプギア。それは答えられないんだ。多分、答えると皆の考え方とか選択に、凄く影響を与えちゃうっていうか…『わたしからの情報』である事が、悪い先入観になっちゃうかもしれないから」
「悪い先入観…あぁ、確かにそれはそうですわね。何せ貴女は、『未来の』ネプテューヌなんですもの」
自分で言うのもあれだけど、わたしには似合わなそうな位真面目な顔で、穏やかな声で言ったもう一人のわたし。ネプギアからの質問には答えてくれなかったけど…それは、そうだよね。今ベールが言ったけど、未来のわたしは『これから起きる事』も知ってる訳で、それに関係する事を聞いちゃったら、「そうなるように行動すれば絶対正解なんだ」…って思っちゃうもんね。で、大概そういう事は「歴史が変わっちゃうから教えられない」ってなるのが定番で……って、あれ?
「…ね、ねぇもう一人のわたし。今思ったんだけど…未来の自分、過去の自分と会うのって、時間移動におけるタブーの一つじゃないの…?」
「……あっ、ああぁぁッ!?」
「えぇっ!?ちょっ、まさか忘れてたの!?うっかりでタブー犯しちゃったの!?」
「…なーんて、ね。そこは大丈夫だよ、もう一人のわたし。現に会ったって何も起きてないし、そもそも別次元の自分には会ってもセーフなのに、別時間の自分はアウトだなんて、変だと思わない?」
「い、言われてみると確かに……」
た、大変な事になっちゃったよ!?どどどどうしよう!?…と思ったわたしだけど、なんとそれはもう一人のわたしの演技。むー…同じわたしなのに、なんでこうもわたしが不利に……もしかして、未来のわたしも前に「過去のわたし」として同じ経験をしてるから、その分上手く立ち回れてるとか、そういう事…?
「…えっと、ならアタシも一つ質問なんですけど、それならこうしてアタシ達と会うのは良いんですか?…あ、今の自分同士で会ったら…って話じゃなくて、その前の事への質問なんですけど……」
「んと、未来には時間移動出来る技術があるとか、未来にあるのは滅びじゃないとかが、今ここで分かっちゃったけどいいの?って事?」
「あ、はい。そういう事です」
「それなら、問題ないよ。だって皆今、『まぁ、次元移動は出来るし、その内時間移動出来るようになってもおかしくないか』って思ってるだろうし…何があったって、何を知ったって、未来の為に、明日の為に頑張る気持ちは変わらないのがわたし達女神でしょ?」
そう言って、もう一人のわたしは肩を竦める。肩を竦めて、にこりと笑う。
…全く、言ってくれるよねぇもう一人のわたしは。何があっても気持ちは変わらないって、だからこれは知っても知らなくても関係ないだなんて、体の良い事言ってるけど、それって要はこっちに丸投げしてるだけだもん。…まあ、でも……
「そう言われたら、そりゃ勿論!…としか言えないよね、皆」
「ふふっ、確かにそうだね。どんな未来があろうと、それが良いものだろうと悪いものだろうと、私達のする事は変わらない。だって未来は来るのを待つものじゃなくて、自分達で掴むものなんだから」
「そうそう、イリゼの言う通り!けどさーもう一人のわたし。そういう言い方はズルいと思うなー」
『いや、ネプテューヌも普段からこういう事言ってるでしょ』
「ねぷぅ!?まさかの背中から撃たれた!?」
困っちゃうよねぇ、もう一人のわたしは。…なんて思っていたら、返ってきたのはノワールベールブラン、それにイリゼからのまさかの反論。くっ…皆なら分かってくれると思ったのに…!
「まあ、同じねぷてぬなんだからそう言われるよねって話だし」
「しかもピー子からの追撃…!」
「えっ……?」
『……?』
「…え、えと…ぴ、ピー助…?」
「えぇ…?いやぴぃ、恐竜じゃないんだけど……」
「あ、あはは〜。ピー子ってば可愛いからついからかいたくなっちゃってさー。ピー子、よしよ〜し」
「わっ、ちょっ…もう……!」
近寄るや否やもう一人のわたしにわしゃわしゃと頭を撫でられて、ピー子は振り解こうとする…けど、嫌がっているというよりただ恥ずかしがってるだけみたいで、隣のセイツもほんわかな顔。…と、いう事でわたしもわしゃわしゃをしにいきましたー。ダブルねぷねぷのわしゃわしゃを受けて赤くなるピー子、とっても可愛かったよっ!
「月日は経っても、本当に好きなものは変わらないものね〜」
「な、何温かい目で見てるのせーつぅぅ…!うぅぅ……」
「はいはい。…じゃあ、ネプテューヌ。わたしからも一つ質問させて。確かめるって事だけど、それはここ…信次元じゃなきゃ駄目な事なの?落ちてきた形だけど、最初からここに来ようとして来たの?」
「あ、うん。ここ、っていうか…この時、って言うべきなのかな。もっと前じゃなくて、もっと先じゃなくて、この時に…今に、わたしの確かめたいものはあるから」
「…そう。それならわたしからは後一つ提案で、折角だから未来の貴女と「あ、デート?してもいいけど、それならプリンダイカイ的デートしたいな〜」…さ、流石未来の存在ね…わたしの言いたかった事を分かり切ってるなんて……」
((それはそういう問題じゃない気がするけどなぁ…))
なんかもう、携帯端末片手に相手を手玉に取るギャルみたいな事を言うもう一人のわたしと、それが未来の存在というアドバンテージによるものなのかと感じているセイツに対し、色んな意味で苦笑いのわたし。同じくセイツの事をよく知ってるネプギアやピーシェも同じような顔をしていて、やっぱそうだよねぇとわたしはうんうん。
「でさでさ、他に何か質問はある?あ…未来から来た主人公女神だけど、何か質問ある?」
「何故スレタイ風に言い直したんですの…?…まあ、一先ず今はありませんわね」
「…あ、もう一人のお姉ちゃんって、なんて呼べばいいかな…?み、未来のお姉ちゃん…?」
「えー、それはちょっと…。…んー…まあでも、ここは分かり易くミラお姉ちゃん、ミラテューヌとか?逆にもう一人のわたしの方が、イマお姉ちゃん、イマテューヌって事でも良いけどさ」
「や、やだよイマテューヌって…というか今を基準に未来のわたしを区別するんじゃなくて、未来基準で今いるわたしを区別するっておかしくない…?」
「じゃ、じゃあ…えっと、ミラお姉ちゃん…?」
「うんっ、ネプの名を外すのは残念だけど、ミラお姉ちゃん自体はそんな悪い響きじゃないから問題なし!じゃ、これからはミラテューヌって事で一つ、宜しくね!」
びしっ、とVサインを作って言うもう一人のわたし…いやミラテューヌに、皆は軽く笑いながら肩を竦める。肩を竦めるのはともかく、どこに笑える要素があったのかはよく分からないけど…まぁ、いっか。
「ね、ミラテューヌ。取り敢えずミラテューヌは、わたし達の仲間…って事で良いんだよね?」
「もっちろん!というかこの主人公たるわたしが敵になる展開なんて……うん、原作シリーズの事を考えると、ちょこちょこあったね…」
「は、はは…あ、でも未来から来てるって事は、もしかしてネプ…もといミラテューヌは、女神化も普段通りにはいかないんじゃない?」
「あー……ま、まあそうだね。けどほら、頭脳労働なら問題ないし、そこで頼ってもらえれば……」
『頭脳労働で……?』
「酷い!ちょっ、どうなってるのさこの時代の皆はーっ!」
イリゼからの言葉に答えつつボケ(?)て、それへ皆が反応して、今度はミラテューヌの方から突っ込み(って言えるかな、これ…)を入れる。それは本当に、普段わたしが皆としてるやり取りで…本当に、不思議な気持ちだった。
だけど同時に、面白そうだなぁとも思う。だって、おっきいわたしともまた違う、未来のわたしがいるんだよ?わたし一人でも明るく楽しく面白い環境を量産出来るのに、それがもう一人いるんだよ?だったらそんなの、面白そうに決まってるよねっ!
「ミラテューヌ…未来の、ネプテューヌで…ミラテューヌ……」
「……?…あ、そっか。確かにネプテューヌとミラテューヌって、私達と似た様な関係だもんね」
「あ、もしかしてシンパシー?シンパシー感じちゃってる感じ?」
「ふぇっ!?あ、えと、えと…そ、そういう訳じゃ、ない…です…ごめんなさい……」
聞こえていたオリゼとイリゼの声に反応してみた私だけど、オリゼはびくっと肩を震わせた後、ちょっとイリゼの袖を摘みながらふるふると首を横に振る。…うーん、流石に昨日の今日じゃまだ仲良くお喋り、とはいかないのかな。けど性格が近そうなロムちゃんとはもう仲良しだし、これからこれから、だよね。
って感じで、ミラテューヌへの質問タイムはこれにて終了。いーすんに届いた声も未来のいーすん(この場合みらいーすんかな)からのものだったって判明して、その声から始まったイベントは取り敢えずお終い。となれば次は元々やるつもりだった、浮遊大陸の調査になって…ミラテューヌも来る事になった。
ミラテューヌ…未来から来たわたしが、何を確かめたいのかは分からない。くろめ、おっきいわたし、オリゼと考えてみたら、もう一人の○○って皆敵対する事になったり秘密があったりした訳だから、未来から来たわたしもまだ何かあるのかもしれない。でもおっきいわたしはおっきいわたしなりにくろめの事を思った、皆の為に出来る事をしていた訳だし、オリゼはずっと、自分の在り方を…女神の意志を貫いただけの事。そして今、おっきいわたしともオリゼとも、わたし達は仲間同士。だったらやっぱり、もう一人のわたしの事も疑う必要はないと思う。もし何かあっても、きっと話せば理解し合えると思う。だって…同じわたし、なんだから。
*
浮遊大陸に、わたしとピーシェが来るのは二回目。一度目は初めて信次元に来た時でもあり…目的はあいつの、あの女神としての誇りも信念もないレイから、女神としてぶつかり合うネプテューヌ達への横槍を阻止する為に降り立った。
あの時は正直、浮遊大陸をじっくり見る事は出来なかった。癪ではあるけどレイが強いのは間違いないし、現れる前だって、見逃さないように気を張っている必要があったから。
そういう意味じゃ、二度目になる今回は少し楽しみでもあった。どんな大陸で、どんな街並みなのか、気になっていたから。それに今回は、信次元の皆と行動を共に出来る。それもわたしとしては、内心楽しみだったんだけど……。
「漲る紫!ねぷパープル!」
「迸る紫!ねぷバイオレット!」
「駆け抜ける紫!ねぷウィステリア!」
「え、えっと…舞い上がる紫!ね、ねぷライラック!」
『四人揃って、ねぷフォースッ!』
昨日の続き、という事で調査作業が始まる一方、開けた場所でよく分からない事を始める女の子達もいた。というか、ネプテューヌ達だった。
確かにふざける事をしないネプテューヌなんて、ネプテューヌらしくないと思う。ふざけてる時のネプテューヌって心がきらきら輝いているし、そういうとこほんと素敵だと思うけど、なんで今感は拭えない。しかも今回はネプギアを巻き込んでるし、ポーズを取った直後に四人の後ろで爆発が起きてるし……
「って、はぁぁッ!?爆発!?なんで!?なんで本当に爆発起きてるのよッ!?」
「う、うわ…戦隊ヒーローものの演出を、実際にやる人がいるなんて…っていうかあれ、爆薬仕込んだの…?ち、違うよね…?」
突如起こった爆発と立ち昇る紫の煙(それぞれ微妙に色が違う)に、思わず全力で突っ込むわたし。他にもイリゼだったりノワールだったりが方々から突っ込んでいて…ってそりゃ当たり前よ!突っ込むわよ普通!ちょっ、本当に何をしてるの…!?
『いっえーいっ!大成功〜!』
「う、うぅ…皆さんお騒がせしてすみません……」
三人のネプテューヌはご機嫌にハイタッチを交わして、ネプギアは恥ずかしそうにしながらぺこぺこと周囲に頭を下げる。そして皆が呆れている中、ロムとラムはきゃっきゃと笑っていて……まさか、さっきの爆発って二人が魔法で…?
「…ねぇせーつ。みらてぬも信次元に滞在するんだよね?」
「そうじゃない?ここで確かめたいものがあるって話だし」
「……ねぷてぬが三人もいるって、この次元これから大丈夫かな…」
「…う、うん…そこは、まぁ……」
隣にいるピーシェからの、何とも言えない顔での発言。それにわたしは、悲しいかな、大丈夫だ…とは言えずに視線を背けて……この浮遊大陸よりも上空にある、城を見やる。
「…………」
「…せーつ?」
「…こんなもの作ってまで、そうまでして悪意をぶつけたいのかしらね…」
空高くに、ある種君臨するように浮遊している、負のシェアの城。女神だからこそ、見るだけで分かる。あれがどれだけ高度な力で、濃密なシェアエナジーで形成されているのかが。
こんなもの、あのレイであっても、協力者がいたとしても、容易に作れる筈がない。相当な準備や苦労が必要な筈で…ならそれはもう、ただの一過性の怒りや憎しみじゃない、執念や怨念とでも言うべきもの。心の表面に上がってきただけの感情じゃなく、心の根底に染み付いた感情でなければ、元から常軌を逸した力を持つレイが、こんな事をするものか。
(…って、そんな事は今更ね…根っこまで下らない逆恨みに染まってなきゃ、長い年月を経て復活なんてしないでしょうし、むしろあいつの事だから、自分の中で逆恨み煮詰めて膨張させてるってとこかしら。馬鹿馬鹿しい)
「…ぴぃは、もう一人の方…くろめって人の考えてる事が気になるな。皆の話じゃ、あの人ともまた違うものを目指してるみたいだけど…」
「…らしいわね。けど、あいつと手を組んで、ここまでやってきた事を思えば、目指そうとしてる先も碌なものじゃないわよきっと。同じ顔でも、うずめはたった一人で次元を、平和を望むモンスター達を守ろうとして、ウィードと出会ってからは互いに支え合って、心を通わせて…あぁもう、思い出すだけでドキドキしてくるわ……!」
「……一応言っておくけどさ、せーつ。多分今のせーつ、傍から見たらただの情緒不安定な人だよ?だってぴぃから見てもそうだし」
「うぐっ…(こ、これに関しては言い訳のしようがない……)」
今神次元に滞在している二人の心と、その繋がりの尊さにわたしが自分の肩を抱いていると、いつの間にやらピーシェは軽く引いてるレベルで冷めた顔。けど今言われた通り、ちょっと冷静になって言った事を思い出せば、ただわたしの発言の急転換具合がヤバいだけ。
ただこれのおかげ(?)で、一回頭がリセットはされた。だからわたしはピーシェと共にこの大陸内を見て回り…暫くしたところで、各々調査をしていたわたし達は集合した。
「セイツさん、ピーシェさん、お二人はどうでしたか?何か気になる事はありましたか?」
ネプギアからの、わたし達へ向けた質問。別次元の存在であるわたし達から見る事で、何か気付くものがあるんじゃないかという考えの下、わたし達は来たんだけど…わたし達は、残念ながらと首を横に振る。
「ごめんね、ねぷぎあ。正直、違和感とか気になる部分はなかった…」
「同じくよ。…ただでも、何かしら…ここはどこか安心感があるというか、良い街並みだなとは思うというか……」
「え?それって……」
見て回ってみても、「これは…」と思うところはなかった。ピーシェは完全にそうらしくて、わたしは何となく感じるものがあったけど…多分これは、違う。感じているといっても、この浮遊大陸そのものへの感覚で、負のシェアの城突入に繋がる事…では、ないと思う。
と、その旨を口にすると、イリゼが驚きの声を上げた。驚いて、それからもう一人のイリゼ…オリゼの方を見た。
「…イリゼ?」
「あ、うん。実は私もずっと、そういう感覚があったの。で、それをオリゼに話したんだけど…今のここは、今の浮遊大陸は、オリゼの守護していた国…オデッセフィアを再現した状態なんだって」
「そ、そうなの…?」
「は、はい…この大陸が、出来た…時点では、私の国と…違うもの、が…混ざった、状態でした…だ、だからあるべき姿へ…作り、直したんです……」
「…って、事は…ここは、遥か昔の街並みって事なのよね?…じゃあ、わたしが感じていたものって……」
心の中で、想起する。初めてわたしが目覚め、未来と平和を望む人達と共に戦ったのも、ずっと前の…昔の事。だから、なのかもしれない。外観は違っても、あの頃と今ここにある環境には近いものがあるから、わたしは安心感を抱いたんじゃないかと思う。
「そっか…だから、わたしは……」
「こ、ここは…どこも、私の自慢の…誇りの、場所です…多くの、人が…ひ、一人一人知恵を出し合って、力を合わせて…作っていった街の、再現…です、から……!」
「…ふふふっ。えぇ、そうね。わたしも素敵だと思うわ。貴女の守護した国も…それを誇りに思ってる、貴女の心も!」
「ぴぇぇ…っ!?」
ずいっと近付き手を握れば、可愛い声を出してビクつくオリゼ。うぅ、やっぱりこの子素敵だし可愛いわ…!しかもオリゼの心に触れてると心底安心するというか、もっと色々知りたくなるというか、そういうの含めてイリゼと負けず劣らずの感じが……
「いや、うん。オリゼがまた泣きそうになってるから、普通に止めてねセイツ」
「…こ、こほん。失礼したわ」
「そんな今になって澄まし顔したって…というか、ねぷてぬ達は?」
「あ、お姉ちゃん達でしたらもうすぐ……」
確かにそういえばネプテューヌ三人がいない。そう思って見回したところで、教会らしき施設の方からネプテューヌ達がやってきた。
そうして、三人にも何かあったかとわたし達は訊くけど、やっぱりその三人もこれといって収穫はなかった様子。けれど、ネプテューヌの内一人…ミラテューヌは、何か思うところがあるような顔。
「…みらてぬ?どうかした?」
「…うん。ここを見て回る中で、今のここの状況を聞いたよ。…で、聞いた上で一つだけ訊きたい事が、言いたい事があるんだけど…いい、かな?」
ここにいる全員を見回してからの、ミラテューヌの言葉。当然、それだけじゃ何を言いたいかなんて分からない。けれど、真面目な…本気で訊きたい事があるんだって事は、その目を見るだけですぐに分かった。すぐに伝わってきた。だから、わたし達はこくりと頷き…ミラテューヌは、言う。
「…ねぇ、皆。皆は、さ…くろめの事、今はどう思ってる?…倒す以外の道は……あると、思う?」
今回のパロディ解説
・「ごめんねごめんね〜」「ちゃんと謝りなさいよね!?」
お笑いコンビ、U字工事の代名詞的なギャグ(やり取り)のパロディ。許してちょんまげ、というのも考えましたが、最終的にこのパロディを選んだ私です。
・ピー助
ドラえもんシリーズに登場するキャラの一匹。突っ込みでも言われている通り、恐竜です。…前に私、本気でピーシェの呼び方をピー助と覚え違えてた時がありました…。
・プリンダイカイ
松本家の休日における、ロケコーナーの一つのパロディ。松本家メンバーでプリンダイカイ…と考えると違和感凄いですが、ネプテューヌ達なら自然ですね。