超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第百五十五話 倒す道、違う道

 昨日に続いての、浮遊大陸の調査。でも今日は昨日目を覚ましたオリゼさん、神次元から来てくれてピーシェさんとセイツさん、そして未来から来たというお姉ちゃん…ミラお姉ちゃんも参加して、昨日より多い人数で負のシェアの城へ突入する方法がないか、その手掛かりを探してみた。

 わたしはパーティーの皆さんと共に、昨日発見した図書館を調べてみた。そこには色々な本が…絵本から図鑑、小説や参考書まで一通りあって、機械に関係する本みたいな、個人的に気になる本もあった。…でも、結論から言うと、ここにも手掛かりになりそうな本はなかった。どれも古い、けど古ぼけてはいない普通の本ばかりで、『ここにも手掛かりはなさそう』という事しか分からなかった。

 その後一度集合してピーシェさん達にも聞いてみたけど、お二人も特別何かを感じられたりはしなかったみたいで(セイツさんはまた別のものを感じた様子)、もしかすると完全に成果なし、この浮遊大陸に手掛かりは一切ない…そんな結果になってしまうかもしれないと、思った時だった。もう一人のお姉ちゃんや、ミラお姉ちゃんが、ある事を皆に訊いたのは。

 

「……それ、は…ど、どういう事…です、か…?」

 

 くろめさんを、倒す以外の道があると思うか。…その思いもしなかった問い掛けに、わたし達は皆が驚いて…最初に言葉を返したのは、オリゼさんだった。

 気弱そうな、相手の反応や思っている事を凄く気にしていそうな、オリゼさんの話し方。けどどこか、今の言葉にはその表面的な印象とは違う…女神の姿の雰囲気にも似たものがあって……ミラお姉ちゃんは、オリゼさんの方を向く。

 

「言葉通りの意味だよ。今ゲイムギョウ界には、くろめっていう脅威がある。それは絶対に放置出来ない事だし、くろめのしてる事が悪くないだなんて言わないよ?…けど、皆も知ってるでしょ?くろめはただ悪い事をしてるとか、犯罪神みたいにただただ次元を滅ぼそうとしてる訳じゃないって事は」

「それは……うん」

 

 再びの問い掛けに、わたしは頷く。確かにそうだから。くろめさんが良い事をしてるとは思わないけど…悪意で、自分の為に誰かを傷付けたり誰かから奪ったりしたくて、ここまでの事をしてきた訳じゃない…これまでわたし達へ語ってきた言葉から、そう感じる事は出来たから。

 それに、大きいお姉ちゃんの言葉、思いもある。くろめさんを信じる事は、今のままじゃ出来ないけど…大きいお姉ちゃんの事は、信じられる。

 

「…だから、訊いてみたいと思ったの。今の、ここまでくろめと戦ってきた上での、皆の気持ちを」

「アタシ達の気持ち、ですか……」

「…そういう事なら、ぴぃ達は黙ってた方が良いかな。少なくともここまでは、無関係…じゃなくても、それについてはっきりと意見を言える程、言葉や戦いを交わした訳じゃないから」

 

 小さく肩を竦めたピーシェさんの言葉に、パーティーメンバーの皆さん、黄金の第三勢力(ゴールドサァド)の皆さんも頷く。

 どう思っているのか。わたし達は、どんな気持ちなのか。…何が何でも倒したい訳じゃない。止めるのは勿論だけど、敵として討つ事だけが道じゃない。それがわたしの気持ち……と、いえばそうだけど、それだけじゃ駄目なような気もする。なんていうか、これはくろめさんに対して云々というより、わたしの基本方針というか…多分他の人だったとしても同じように思う事だから、今のミラお姉ちゃんの問いに対する答えとしては、不十分なんじゃないかと思う。

 

「…ねぇ、ミラテューヌ。それは、未来にとって必要な事だから訊いているの?これから起こる事において、それをどう思っているか、どう考えるかが重要になるから、だから……」

「…ノーコメント、でも良いかな?……ごめんね」

「そう。…まあ、そうね。少なくとも、倒すしか道がない、とは思っていないわ。私達は、憎しみや恨みで戦っている訳じゃないもの」

「ですわね。わたくし達女神の戦う理由は、人の為であり、国の為であり、次元の為。大切なのは、そこですわ」

「…けど、倒すべき理由は十分にあって、それ以外の道を選ぶ必要が現状希薄である事も事実よ。理由はどうあれ…くろめは、敵だもの」

 

 もしかして、と尋ねるイリゼさんにミラお姉ちゃんは謝って、それを聞いたノワールさん、ベールさん、ブランさんがそれぞれ答える。

…そう、そうなんだ。どんな理由があったとしても、現実としてくろめさんは敵。それも無駄に人を傷付ける事を避けてたとかじゃなくて、むしろ「必要な事」「仕方のない事」と自分の中で許容しているような節もあって…それは絶対に許しちゃいけないと、わたしは思う。人の命、人の日々はその人のもので、それを奪ったり傷付けたりしていい理由なんて……

 

「…あ、あの…えっと……」

「……?ロムちゃん、どうかしたの?」

 

 その時不意に、声を上げたのはロムちゃん。皆の視線はロムちゃんに集まって、ミラお姉ちゃんがどうしたのと尋ねて…ロムちゃんは、こくんと頷く。

 

「わたし、わからないの…(ふるふる)」

『分からない?』

「ちょっと前から、考えてたの。おっきいネプテューヌさんは、ネプテューヌさんとおんなじで、おもしろくていい人。イリゼさんと、オリゼさんは、ちがうかんじだけど…おんなじかんじも、するの」

「あ、うん。それわたしも思うわ。イリゼちゃんとオリゼさんって、ちがうけどいっしょなかんじもあるのよね」

「うん。…なのに、どうしてうずめさんと、くろめさんは、あんなに違うの…?」

 

 少し不安げに、でもしっかりした声でロムちゃんは語る。お姉ちゃんと大きいお姉ちゃん、イリゼさんとオリゼさんは、おんなじだって。違うけど同じ、違うけど一緒っていうのは、何だか深い感じの見方で…でも、話の本筋はそこじゃない。

 なのに、どうしてうずめさんとくろめさんは違うのか。…そう、ロムちゃんは皆へと言った。これまで、深くは考えてみなかった事を。

 

「…そりゃ、うずめさんとは全然違う経験をしてきたから、とかじゃないの?或いはそもそも、同一人物なら性格も同じ…っていうのは、別に確定している事でもないし……」

「けど、おっきいネプテューヌさんは、女神じゃなくて、ネプテューヌさんとはぜんぜんちがうことをしてきてるよ…?ほかの人たちはみんな、おんなじだよ…?」

「……そう、ね…うん、確かに『前例』においてはその通りよ。まだ偶々の可能性もあるとは思うけど…違ってもおかしくない、って考えで片付けちゃうのは、それを思えば早計なのかも…」

「わたしはロムちゃんが言ってるの、だいじなことだと思うわ!ネプギア、ネプギアはどう思う?」

「わ、わたし?わたしは……」

 

 ロムちゃんからの返しを受けたユニちゃんは、小さく頷いてから考え込む。それからラムちゃんの発言が続いて、皆の視線がわたしの方に。

 どう、って言われても、わたしの中にはまだはっきりした答えがない。どうしてうずめさん、くろめさんだけ違うのかって言う話も、「言われてみたら確かに…」っていう段階から進んでない。…分からない。今のわたしの考えを正直に言うなら、少し情けないけどそれ以外なくて……でも、考えや意見じゃなくて、思っている事だったら…一つ、ある。

 

「…わたしは、うずめさんと、大きいお姉ちゃんを信じてる…かな。くろめさんの事は、まだ分からない事も多いから、こうだって事は言えないけど…うずめさんの優しさも、大きいお姉ちゃんのくろめさんへ対する思いも、それは本当のもの、心から信じられるものだって思ってる。……って、これじゃ回答になってないよね…あはは…」

「…ううん、それでいいと思うよネプギア。わたしも同じだから。くろめが悪い事をしてるのは、それを止めようとしないのは、くろめがそういう存在だから…なんかじゃ、ないと思う。くろめはおっきいわたしが大切に思ってる、もう一人のうずめだもん。だから……わたしは、ただ倒してお終い…は、やだな」

 

 共に過ごして、戦って、力を合わせたうずめさんや大きいお姉ちゃんの事なら、分かる。二人の事なら、信じられる。…そんな、迷いなく言える思いをわたしは言って…それに、お姉ちゃんは頷いてくれた。

 わたしの言っている事も、お姉ちゃんの言っている事も、論理的じゃない。それは分かってる。でもこれが、わたしの思っている事だから。これがわたしの、真っ直ぐな思いで……

 

「…ねぇ、皆。皆の言う事も分かるけど…忘れてないかしら?…そのくろめは、あいつと…レイと手を組んでるんだって」

 

 何となくだけど、ミラお姉ちゃんの発言で生まれた困惑の雰囲気が、少しずつ変わっていったような…そう思っている、時だった。静かな声で…でもどこか冷めた瞳をしたセイツさんが、一歩前へと出てきたのは。

 

「さっきピーシェが言った通り、わたしはくろめに対して皆程知らない。けど、わたしはレイの事なら知っている。どうしようもない、救いようのない…吐き気を催す邪悪だって事を、ここにいる誰よりも知っている」

「…せーつ……」

「…悪いわね、ピーシェ。けどこれは、わたしにとって譲れない事よ。…だからわたしは、そのレイと手を組むような彼女の事を、もしかしたら…なんて思えない。自分の身勝手で人を苦しめて、異を唱える者を力で黙らせて、挙句逆恨みで全てを滅ぼそうとするような存在と手を組んでる時点で…ね」

 

…その言葉に、静まり返る。深い怒りと嫌悪の籠った…だけど憎しみは感じない、ある意味で本当に純粋な「許せない」という感情を乗せて話すセイツさんの声から感じるのは、確かな重み。

 神次元における大昔。わたし達の知らない少し前。そして今と、セイツさんは三度レイと戦っている。だから分かるんだろうし、わたしはセイツさんの言葉を否定出来ない。だってわたしもセイツさんも、同じだから。方向性が逆なだけで、『思いと経験』を基に語っている事には違いないから。

 

「…なら、セイツはくろめの事を、倒す以外の道を、考えられない?」

「…別に、皆の思いを踏み躙ってまで倒したいとは思ってないわ。けど、わたしはネプギアやネプテューヌの様には考えられない。少なくとも今は、それ以外を見出せない。…それが、わたしの考えよ」

 

 一度言葉を締めたセイツさんにミラお姉ちゃんが訊いて、それにセイツさんが返して…ミラお姉ちゃんは、頷いた。それも分かるって、間違ってなんかいないって、そう答えるみたいに。

 そうしてまた、静かになる。静かになって…次に口を開いたのは、オリゼさん。

 

「…み、ミラテューヌ、さん…一つ、訊きたい事が…あり、ます」

「…何、かな」

「どうして、その『別の道』、を…あ、あるかどうか、訊く…んですか…?」

「それは…さっきも言ったけど、答えるのは……」

「…なら…き、訊き方を…変え、ます…。人に、仇成す…あんな出来損ないに…滅ぼす以外の道が、その価値が…あると、思っているんですか…?」

 

 答えられない、そう返そうとしたミラお姉ちゃんへオリゼさんが発したのは、女神の姿を思わせる、冷たい言い方。ただ倒すという訳じゃない…その存在を、在り方を否定するのだという、オリゼさんの…原初の女神の発する意思。

 

「…え、えっと…い、イリゼ!イリゼはどうかなっ?」

「わ、私?…私は、その…オリゼの言う事に、一理あると思う。…いや、勿論私達の知らない、くろめへの見方ががらっと変わる真実があるかもしれない事は否定しないよ?大きいネプテューヌやうずめの事は、私だって信じてるし…。…でも、逆に言えば…それが見えていない今のまま、考えるとするなら、やっぱり……」

 

 少しずつ広がる、剣呑な雰囲気。それに慌てた様子でお姉ちゃんがイリゼさんに話を振るけど…イリゼがしたのは、オリゼさんの発言の肯定。今のまま、という条件付きだとしても、普段は寛容で、信じる事を大切にしているイリゼさんが、そういう発言をするのは凄く驚きで…振ったお姉ちゃん自身、目を見開いていた。…そんな事を言うなんて、って言ってるみたいに。

 

「…意外ね。人である大きいネプテューヌの思いまで、貴女が否定するなんて」

「そ、そういう訳じゃ…ない、です。お、大きい、ネプテューヌさんの思いは、凄く尊いものだと…そう思える、大きいネプテューヌさんの、心は…女神として、守らなくちゃいけないと…思って、います。だから、こそ…その、大きいネプテューヌさんの心を、苦しめる…利用する、あの出来損ないを、私は……」

「ちょ、ちょっと待って!そういう事なら大丈夫!確かに、苦しいところはあるけど、協力してたのはわたしの意思だから!わたしに出来る事がある思って、これまでしてただけだから!」

「…一つ宜しくて?セイツさん。先程の貴女の発言、レイに対する認識はこれまでに見受けられた彼女の言動からして、間違っているという事はないと思いますわ。…けれど、その彼女と手を組んでいるから、同類…或いは似たようなものだと決め付けるのは、些か短絡的ではないかしら」

「確かに、それ単体なら短絡的と言われても仕方ないわ。けど現に、彼女は幾つもの厄災を起こしている。これがある以上、短絡的なんかじゃないとわたしは思うわ。…ま、実は操られてるとか、レイが作り出した偽者だったって事ならまた話は変わってくるけど、そんなもしもを言い出したらキリがないでしょう?」

「…可能性を捨てる事は、女神として良い選択だとは思わないわ。けど、事実としてくろめがレイと共に行っているのは悪行。それに対しての可能性は…それこそ大きいネプテューヌが、辛うじて根拠たり得るラインを超えてる位…。現状では、それが妥当な見方なのかもしれないわね…」

 

 腕を組んだノワールさんが尋ねて、オリゼさんが返答して。ベールさんが質問をして、セイツさんが答えて。それからブランさんが静かに呟き、ぽつりぽつりと言葉が続く。

 気付けば空気は、凄く重い。明るく話したかったって訳じゃないけど、心の中に雲がかかるような…そんな雰囲気。そして……

 

「ぅ…ちがう、の…わたしは、そういうこと…言いたかったんじゃ、なくて…ふぇ……」

「あ、ろ、ロムちゃん…す、ストップ!すとーっぷ!ロムちゃんだいじょうぶ、だいじょうぶだから…ね?」

 

 わたしは気付けていなかった。いつの間にか、ロムちゃんがおろおろしていて、辛そうな顔をしていた事に。ラムちゃんの制止を求める声で、わたしも皆もやっと気付いて…重い空気は、気不味い空気に。

 

「……ごめんなさい。少し、感情的になってたわ」

「う、ううん。これはセイツが謝る事じゃないよ。皆、それぞれに意見はあって当然だし、ごめんなさいはむしろいきなりこういう話を切り出したわたしが言うべきだっていうか……」

 

 これ以上はいけない。皆がそう思った事で取り敢えず中断にはなったけど、だからってすぐ空気が良くなる…って訳じゃない。

 これまでにも、意見が上手く合わなかったり、打開策が見えてこなかったりで話し合い中に空気が重くなる事はあった。けどこれは、今話していた事は、そういう中々意見が合わない、打開策を出せない焦りや苛立ちからくる重さじゃない。これはどうしても、信じるとかもしかしたらとかの心の話になってきちゃうから、考えのぶつかり合いが意見じゃなくてその人そのものの衝突みたいになってしまって…だから、しこりの様なものが心に残る。

 

(…セイツさんやオリゼさんの言う事も、尤もだよね…。けど、セイツさんがレイを介して信用ならないと思うように、わたしは大きいお姉ちゃんを介して可能性は捨てられないと思ってる。わたしはオリゼさん程、非情にはなれない。……これは、話し合って解決する事、なのかな…)

 

 選択肢は自分で作り出せるものだけど、道は一つしか選べない。どうするかは、皆で決めなくちゃいけない。でもやっぱりこれは心の問題だから、どっちが正しいって話じゃないから、話し合って解決するかどうかも分からなくて……

 

「…その、さ。皆、これってさ、未来の女神のわたし…ミラテューヌの質問で始まった話だけど、わたしの思いを…くろめへの気持ちを知ってるから、ここまで拗れちゃってる部分…あるよね?だから…一つだけ、一つだけお願いがあるの」

 

 さっきのロムちゃんの様に、不意に声を上げたのは大きいお姉ちゃんだった。

 お願いがある。そう言う大きいお姉ちゃんの言葉に、わたし達は視線を送る。そうして皆からの注目を受けた大きいお姉ちゃんは、言った。

 

「わたしは、くろめの事を…くろめを止められる可能性は、ほんのちょっぴりでもきっとある事を、信じてる。だけど、わたしに止める力はない。わたしだけじゃ、止められない。だから…わたしの事は、気にしないで。皆は、女神様として…皆が信じる事をして。…皆は、女神様だもん。立派で、格好良い、女神様達だもん。だからきっと、その皆が信じる道を進めば…わたしの感じてる、くろめへの可能性が間違いじゃなかったなら…大丈夫だって、思えるから」

 

……それは、真っ直ぐな思いだった。純粋な、信じる気持ちだった。わたし達の事も、くろめさんの事も信じる…大きいお姉ちゃんの示した、大きいお姉ちゃんの在り方だった。

 その言葉に、わたしは息を飲んだ。凄いと思ったっていうのもあるけど、一番はそれじゃない。一番の理由は…その言葉の裏に、覚悟も感じたから。自分の思った通りに、願った通りにいかなかったとしても、それを真正面から受け止める…そんな覚悟も秘められていたような、気がしたから。

 

「…それで良いの?おっきいわたし」

「うん。わたしは、皆程強くないけど…信じる気持ちだったら、負けてないからね」

 

 ミラお姉ちゃんからの言葉に頷いて、大きいお姉ちゃんはにこっと笑う。それは作り笑いじゃない、心からの笑みで…何だか少し、肩の力が抜けた気がする。どの道を選ぶのか、全員で話して決められるのか、それが不安だったけど…こうして信頼してくれる人がいるなら、ちゃんと選択を…最後は皆が納得出来る道を、選べそうだって思うから。

…けどすぐに、これは少し間違いだなって気付いた。ちょっと見回せば、分かる。わたし達の選択を信じてくれる、必要なら言葉でも力でも手を貸してくれる人達は…ここだけでも、沢山いるんだ。

 

「…流石ネプテューヌ、と言うしかないわね。ちゃんと自分の思いを伝えた上で、空気まで変えちゃうなんて」

「…そういうとこだけは、真似しよう思っても出来ないっていうか…本当に凄いよ、ねぷてぬは……」

「…お?なんか今、賞賛を受けた気がする!というか尊敬してる的な事言ったよね、ね?」

「別にー。っていうか、少なくともそういうすぐ調子乗る感じは、ぴぃの知ってるねぷてぬと同じでやっぱり反面教師にしなきゃなぁって思ってるから」

「平然と酷い!」

 

 真顔で切り返したピーシェさんの言葉に大きいお姉ちゃんはショックを受けて、聞こえていたわたし達は苦笑い。…けど、ほんとそうだと思う。無意識か、狙ってかは分からないけど、空気を好転させる力で言えば…やっぱり、お姉ちゃんが飛び抜けてるから。

 

「…ロムちゃん、さっきは気付いてあげられなくてごめんね。でもロムちゃんの言った事は、本当に大事な話だって、わたし思うな」

「ネプギアちゃん…うん、ありがとね…?(こくこく)」

「うんうん。ネプギアの言うとーりよ!」

「実際、感心出来る視点だったしね。…で…えっと、これからどうしますか?調査を再開します…?」

「んー…取り敢えず今回の話はこの辺りで終わっとこーよ。今日のOE、終了のポーズ!びしっ!」

「な、なんで某生徒会のアニメ風に終わらせようとしてるの…?しかもユニが言ってるのはそういう事じゃ……」

 

 それからわたしが駆け寄って声を掛ければ、ロムちゃんはこくりと頷いてくれる。もう気にしてない…って訳じゃないみたいだけど、いつもの元気は取り戻している。

 さっきの大きいお姉ちゃんの言葉と、続くピーシェさんとのやり取りで、パーティーの空気は回復済み。お姉ちゃんのボケとイリゼさんの突っ込みでは普通の笑いも溢れて、問題は解決してないにしろ、悪い流れはしっかりと断ち切る事が出来……

 

「……え?」

 

──そう、思った時だった。どすん、という大きい音がして……一体のモンスターが、現れたのは。

 

 

 

 

 それぞれに思うところ、重視するものがあって、話は重苦しいものになってしまった。内容が内容だけに仕方ない部分もあるけど、きっとそれは誰も望んでいない事で…それを打開してくれた大きいネプテューヌには、感謝してる。

 真っ直ぐな思いの籠った言葉と、そこからの緩いやり取りのおかげで、直った雰囲気。でも、それはすぐに壊された。予想外の、呼んでもいないお客によって。

 

「あれ、って……」

「猛争、モンスター…?」

 

 音のした方向にいたのは、狼の様な外見をした、大型モンスターだった。

 けれど、似た外見を持つ従来の…私の知るモンスターとは違う。禍々しい雰囲気を持つそのモンスターを見て、ミラテューヌとピーシェが呟きを漏らし…モンスターの目も、こちらを向く。

 

「…けど、何か違うような……」

「っていうか…あのモンスター、翼もないのに空から降りてこなかった?え、まさかわたしと同じで別次元から落ちて……」

 

 更に呟くピーシェ。一方大きいネプテューヌは現れ方が気になった様子で、確かに砂煙が舞い上がってる事と、足音が聞こえなかった事からして、空から落ちてきた可能性が高い……と、そう思った次の瞬間、モンスターの姿が消える。……いや、違う。モンスターが、一気にこちらへ仕掛けてくる。

 

「……──ッ!オリゼッ!」

 

 そのモンスターが襲いかかったのは、オリゼだった。疑問が多いせいで反応の遅れてしまった私達は、モンスターの攻撃を止められず…オリゼがいた場所を、駆け抜ける。私の近くにいたオリゼが、そこからいなくなる。

 背筋が凍り付くようだった。頭が真っ白になりかけた。すぐに戻った思考で、私は全身から嫌な汗が吹き出るのを感じながら、振り向きもう一人の私の名前を呼んで……直後、私の望んだその声が耳へと届く。

 

「だ、大丈夫…です……!」

 

 聞こえた声は、オリゼがいた場所は、私が視線を向けた方向よりも少し左。勢いを殺した後のような姿勢から立ち上がるオリゼの身体には、擦り傷一つなく……もしかして、突進を受け流した…?

 

「…いや、それよりも…よくも、オリゼを……ッ!」

 

 無事だったとはいえ、込み上げるのは「よくも」という思い。反転し、再びこちらを向くモンスターを睨みながら、私は女神化し…地を蹴る。

 

「皆、下がって!あのモンスター、何かおかしいわ!」

 

 同じく女神化したノワールの声が聞こえる中、私は突進。迎え撃つようにモンスターが振り抜いた右前脚の爪を潜るような形で避け、懐から斬り上げを仕掛ける。振り抜いた刃は、モンスターが下がるよりも早く顔を捉え、私から見て右の目の下を斬り裂き……

 

(……!?回復、した……?)

 

 その直後、私は見た。私の長剣の斬っ先に裂かれた顔が、瞬時に回復していくのを。傷が、塞がっていくのを。

 しかも、それだけじゃない。肉薄した事で感じたのは、傷が塞がる瞬間見えたのは…負のシェアエナジー。

 

「何ぼさっとしてんだイリゼ!」

「……っ!ごめん…!」

「…何か、ありましたの?」

「こいつ、回復能力があるみたい…!それも、シェアエナジー絡みの…!」

 

 ブランの声が聞こえたのと、モンスターの牙が私を貫こうとしたのはほぼ同時。咄嗟にしゃがみ、後転からの跳躍で下がると、ベールとブランがモンスターを牽制してくれて、その横で私は構え直す。

 

「おねえちゃん!ここじゃわたしたち戦いづらい!」

「もっと、広くないと…!」

「手掛かりはなくても、ここには価値のありそうな物が多いですし、もっと平原や森の方へ引き剥がした方が…!」

 

 聞こえてくる、ユニ達の声。確かにここは建造物が多い訳で、範囲攻撃に長けるロムちゃんやラムちゃんは力を発揮し辛い環境。ユニの言う観点においても、街からは離した方が良い。

 けど問題になるのは、奴の回復能力。碌に痛がったり怯んだりする様子もなく反撃してきた事を考えると、ただダメージを与える事での追い立ては難しくて……

 

「イリゼッ!」

「……!そっか、それなら……!」

 

 ならばと近接戦が主体のネプテューヌ達が仕掛ける中、上空に上がっていたセイツからの声が届いた。そしてその声で、私はセイツの意図を直感的に理解した。

 再び突進する私。ネプテューヌ達からの攻撃を受けながらも暴れるモンスターは、私を視認した事で反撃の体勢を取る。さっきの事を意識してか、後脚で踏ん張りながら待ち構える。…私が、狙っていた通りに。

 だから私は、上段斬りを一発放つ。敢えて受け止め切れそうな位の力で振るって、腕で防御させ…直後に、全力のサマーソルトキックをモンスターの胴へと叩き込む。

 

「どういう理由で現れたのかは知らないが……」

「牙を剥くというのなら…容赦しないッ!」

 

 宙に上がったモンスター。呻きのような叫びを上げるも、まだその目は爛々と輝き蹴り上げた私を睨み付ける。

 でもそれは愚の骨頂。私が蹴り上げた先にいるのはふっと笑みを浮かべたセイツ。セイツはモンスターが迫る中、空で一回転を掛け…触れる寸前で加速すると、モンスターの背に強烈な回し蹴りを打ち付ける。芯で捉え、モンスターを斜め下…街の外側へと蹴り落とす。

 私とセイツによる、蹴りの連撃。それだけでも結構なダメージにはなっていると思うけど、回復能力が打撃にも対応しているのかは謎。けど、どっちでも良い。私達の狙いは、ダメージを与える事ではないから。

 

「吹き…飛べッ!」

 

 今一度地を蹴った私は、落ちていくモンスターに向かって飛ぶ。長剣を左手に持ち替え、右腕を引きながら三度目の肉薄を掛け……肘の後ろで圧縮したシェアエナジーを、解放。そのエネルギーを力に変えて、脇腹に捻りを加えた掌底を放つ。

 その向きは、更に外側。落ちてきた際の力も乗ったモンスターは吹っ飛んで…そうして落ちたのは、開けた場所。街の外ではなくとも…十分、全員が立ち回れる地点。

 

「超次元ならぬ、信次元ツインブースト…なんて、ね」

「よーしっ!ぴぃもいっくよー!」

 

 そう言えばあの必殺技みたいになったな、と私が小声で呟く中、私の横を高速で駆け抜けたピーシェがモンスターに追撃。私達女神による攻撃が次々とモンスターを襲い、その攻撃はモンスターの反撃を、移動すらも許さない。

 明らかに、回復能力があったとしてもオーバーキルな女神の猛攻。それによって、恐らくは致命傷を立て続けに受けたモンスターは、最終的に雄叫びを上げる事も出来ずに倒れ、そのまま消滅。そして、先制攻撃こそ取られたとはいえ…私達の、完全勝利で戦いは終わる。

 

「…終わってみれば、呆気ないわね。まあ、多勢に無勢にも程がある…って話だけど」

「うん…でも、あのモンスター…どうして……」

 

 消えていくモンスターを見やりながら、ネプテューヌとネプギアが言葉を漏らす。

 私達は、勝った。完全勝利で終わった。…でも、すっきりした終わり方にはならなかった。当然、良かった良かったで終わる訳がない。何せ…今現れたモンスターは、本来ならば持ち得ない筈の力を、能力をその身に秘めていたんだから。




今回のパロディ解説

・「〜〜吐き気を催す邪悪〜〜」
ジョジョの奇妙な冒険第五部、黄金の風に登場するキャラの一人、ブローノ・ブチャラティの名台詞の一つのパロディ。割と使おうと思えば使えそうな言葉ですね、これは。

・「〜〜今日の生徒会、終了のポーズ!びしっ!」、某生徒会
生徒会の一存シリーズ及び、そのアニメ一期における特徴的なフレーズのパロディ。アニメのネタを原作がネタにし、更にそれを私がパロディさせて頂きました。

・ツインブースト
イナズマイレブンシリーズに登場する必殺技の一つの事。えぇはい、超次元ではなくここは信次元です。…最後掌底をしているので、サッカーだったらハンドですね。
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