超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

188 / 234
第百五十六話 秘める意思

 それに気が付いたから変質したのか、変質したから気が付いたのか。変質したのか、本来の形になったのか。そもそもこれは、いつから俺の中にあったのか。…分からない。気になったって、調べる術がない。イストワールですら手詰まりとなってしまう事柄を、俺が突き止めるなんて土台無理な話というものだ。

 だが、何故あるのかは分からなくても、どう使えば良いのかは分かる。何をすれば、どうなるかも回数を重ねれば分析が出来る。…所謂、ブラックボックスというやつだ。大事なのはそれが使えるか、力になるかであって…使えるのであれば、どんなものかは二の次だ。それに、これが俺の中にある力な以上、不安に思う必要はない。

 あぁ、そうだ。俺に必要なのは、この力の理由を知る事じゃない。この力を理解し、把握し…俺の望む、絶対の力に変える事だ。

 

「……っ、ぅ…はぁ…はぁ……」

 

 椅子に深く背を預け、額に右手の甲を当てる。いつもこうだ。何度繰り返しても、試しても、これだけはどうにもならない。

 

「……ふ、ぅぅ…」

 

 ゆっくりと息を吐いて、呼吸を整える。それだけで何とかなる程楽じゃないが…やらないよりはマシというもの。それに、呼吸を整える理由は…他にもある。

 

(そろそろ、か…)

 

 多少なりとも具合が良くなってきたところで、俺は別室で待っている相談者を内線で呼ぶ。そして姿勢を直し、少しの間手元の書類を見ていたところで…部屋に人が入ってきた。

 

「失礼します。本日は我々にわざわざ時間を割いて下さり、ありがとうございます」

「ああ、そう畏まらなくても構わねぇよ。式典とかならともかく、俺達しかいないところでそれに気を遣っても、お互い無駄に疲れるだけだろ?」

「いえいえ、これが我々の敬意の表れですから」

 

 深々と頭を下げる彼等に、軽く肩を竦める。敬意を向けられるのは勿論嫌じゃないが…固いな、とも思う。

 

「…して、頼んだ品は……」

「勿論出来ているさ。…これで、間違いないだろ?」

「おぉぉ…!素晴らしい、正に完全な、完璧な元通り…!」

「どんな手を尽くそうと不可能だと思われたものを、この短期間でとは…!やはり貴女こそが、真の存在…!」

 

 俺が取り出したのは、ある作品。長い時間の中で劣化し、破損してしまったというこれを、俺は直した。俺の力で以って…壊れたこれを、『本来の状態』に、改変した。

…賞賛の声は、良い。賞賛を受けて、心地良いと思わない者はいない。そして、彼等は望みが叶い、俺もこの力の実験が出来る。互いに利を得られるのだから、それをしない理由がない。

 

「……うん?しかし、よくよく見ると若干サイズが違うような…」

「言われてみると、確かに…けど、そんな些末事気にするな。そもそもは壊れて修繕も不可能な状態だったんだ、それが修繕跡すらなく直ったってのに、これ以上何を望むってんだ?」

「それもそうか…ああ、そうだな…!」

 

 そうして、彼等は去っていく。余裕を持った笑みと振る舞いで、彼等を見送り…また、深く息を吐く。

 余裕があるように見せるのも、楽じゃない。そう呟きながら、先のある発言を思い出す。

 

(若干サイズが違う、か…まだだ、また実現されたものがズレる……)

 

 上手くいったと思っていた。今回こそ、完全だと。…だが、結果はこれだ。今回もまた、同じ事で躓いている。同じ結果だけが積み重なっている。

 

「……っ…けど、俺の支持者は…この力を支持する人間は増えている…出来る事も、増えている…。それに、彼も言っていた…些末事なら、いいじゃないか…真に為すべき事、望まれている事が出来るのなら、多少の事は…」

 

 心に立ち込めようとした暗雲を振り払い、俺は考え方を変える。

 確かに完璧な、完全な力ではない。だが完璧でなければ使えないという事でもない。必要なのは、俺の中での要求値を満たす力であり、それさえ満たせば後は実績を積むだけで良い。より支持者を増やし、俺の力を証明し、絶対であるとします事が出来れば…俺の願いは、果たされる。

 そうだ、この力は強い。この力は、他の凡ゆる力を凌駕し得る。そして俺は、俺なら、実現出来る筈だ。この力を以って…俺の望む、望み全てを。

 

 

 

 

 女神達による怒涛の攻撃、一体のモンスターに仕掛けるものとしては過剰以外の何物でもない飽和攻撃によって、突如現れたモンスターは討伐された。

…というのが、今映っている映像の結末。全くもって想定した通りの、当然の結果。

 

「ふぅん…ま、ただの雑魚にしては持ち堪えた方なんじゃない?」

「耐えたっつっても、最初以外はボコボコにされてただけだけどなー」

「あはっ、そりゃそうでしょ。一方的に勝つ私と違って、詰まらない奴を戦場に出したってねぇ?」

 

 面白みのない映像だ、とばかりに伸びをするクロワールに、へらへらと笑うレイ。…所詮モンスターとはいえ、勝ち目のない戦いに単独で行かされた挙句、こうも酷評されるのは哀れなものだね。

 

「詰まらない、という事はないさ。…ちゃんとシェアエナジーを、それによる再生能力を付与する事に成功したんだ。それを身を以って示してくれたあのモンスターには、賞賛の一つでも送ってあげたらどうだい?」

「送りたきゃ勝手に送れば?私は別に、そんな事どうだっていいし」

「それより、あいつ放置してて良いのか?どうせ消えるっつったって、それまでに調べられたら何かしら気付かれるんじゃねーのか?」

「問題ないさ。シェアエナジーな以上はすぐ霧散するし、シェアエナジーによる力だという事位は、既に気付いているだろうからね」

 

 今のクロワールの指摘はご尤もだが、その程度は織り込み済み。そもそもその問題があるなら、モンスター単独で向かわせる訳がない。

 

(…まあ、猛争モンスターの時点で出自はバレているようなものだけどね)

 

 言うまでもなく、あれはオレ達が送り込んだもの。オレ達が用意し、アフィ魔Xに浮遊大陸上空で投下させた、付与テストの為の個体。

 そしてそれは…犯罪神を参考にした、シェアエナジーを用いた再生能力の付与テストは、無事に成功。再生能力を得たところでモンスターはモンスター、女神相手じゃ元が余程強い種類でもない限り多少手間取るだけで終わり、そうでなくとも外部から無理矢理大量のシェアエナジーを纏わせた結果、アレと同じように寿命は僅かなものになったが…問題はない。所詮、モンスターなのだから。

 

「…後は、これを上手く転用出来るか、だ。転用も何も、モンスターへの付与は低コストでの実験に過ぎない訳だけどね」

「ま、モンスターじゃ受ける側としてのポテンシャル上限が低いもんな。…ところでよぉレイ、お前怪我の方はどうなんだ?」

「えー?まあ、完治まで十日とかー?」

「お前はどこの縮小能力持ちだよ…つか、適当に言ってんな?」

「はっ、当然でしょ。なんであんたに正直に答えなきゃいけない訳?」

 

 十日、か。それで完治してくれるのなら、ありがたいんだけどね…と、オレは思う。

 実際のところ、レイの回復具合がどの程度なのかは分からない。一見傷は塞がっているようだが、そう見えているだけの可能性が高い。そして、レイが正確な情報を教えてくれる可能性は限りなくゼロに近い以上は、多めに見積もっておくべきだろう。

 

(…全く、本当に…厄介なやつだよ、君は)

 

 不用意に敵に回してはいけない。初めて見た瞬間からそう感じた彼女は、これまで幾度となくその規格外の力を見せてきた。純粋な戦闘能力は勿論の事、次元の壁を破壊する事による強引な移動、完全ではないとはいえ女神のコピーを作り出す事を始めとする様々な能力と、このオレからしてもレイの力は強力無比以外の何物でもない。原初の女神すら、先の一件以外は『ただ強い』以外の力を見せていない事を考えれば、出来る事の幅では彼女以上と言えるかもしれない。

 だが、レイは仲間ではない。敵ではないというのも、あくまで今のところは…レイにとって、オレの力を利用する方が楽だ、という状況が続くまでの事だろう。利用するだけの価値がなくなれば、或いはオレが敵対する意思を見せれば、終わる関係。…けれど、それで良い。何ら問題ない。端からオレも、彼女を信用なんてしていない。何より…オレが望む世界に、彼女の様な悪は、何よりあってはならない存在だ。

 

「…レイ。君の力を持ってすれば、手負いであっても有象無象は薙ぎ払えるだろう。だが、万が一という事もある。完治しているのであれば良いけど、そうじゃないのなら……」

「…なら?勿体ぶらないで言ったらどうですー?」

「…頼むよ、レイ。ここまで来て、十分避けられた筈のミスでこれまでの事が水泡に帰すのは勘弁なんだ」

「あら、じゃあもっと前なら惨めに終わっても良かった訳?」

「レイ……」

「…ふん、言われなくても分かってるわよ。あのクソ女神は、しーっかりとぶっ潰さなきゃ気が済まないもの」

 

 鼻を鳴らし、忌々しげにレイは言う。…だろうなと、オレは思う。原理は分からないが、眉一つ動かさないまま、自分の攻撃を利用されてああもやられれば、恨みを抱かない筈がない。

 実際レイは、あそこでやられていた可能性も十分にあるだろう。だがまだ、レイにやられてもらっては困る。強大で、厄介で、それでもオレにはまだ必要な存在だからこそ……

 

「君の行き着くべき場所は、まだ先にある。…オレと、同じように…ね」

 

 オレは呟く。これがレイに聞こえたかどうかは、どうでも良い。聞こえようが、聞こえまいが…オレの為すべき事は、変わらないのだから。

 

 

 

 

 浮遊大陸に現れたモンスターの撃破に成功後、私達は帰還した。

 理由は、幾つかある。まずは、撃破出来たとはいえ、そのモンスターには不可解な点が…ただのモンスターとして終わらせる訳にはいかない要素があったから。次に、今回の調査で、「やはり浮遊大陸に目的の情報やその手掛かりはない」…という可能性が高まったから。これに関しては、オリゼの言った、「自分の国を再現した」という部分も大きい。現代にもまだない、オリゼにもそのままじゃ手の打ちようがない、歪んだ次元の壁への対処方法が、オリゼの時代にあるとも到底思えないから。

 それに、一先ず雰囲気は回復したとはいえ、ミラテューヌの言った件はまだ私達としての…全体としての答えが出ていない。そういう理由があるから、今日の調査は打ち切った。

 

「ふー…何だかんだ言っても、食事をすると落ち着くよね」

「ですね。確か食事って、円滑な話し合いをする上でも良いらしいですよ?」

「よく知っていますわね、ネプギアちゃん。それはランチョンテクニック、というものですわ」

「食事中は食事に意識が向いて思考が普段より疎かになる。加えて三大欲求が満たされて気分が良くなるという点から、相手の話を聞き入れ易くなる…というものね」

「でもこれ、今ブランが言った通り話し合いが円滑に進むというより、有り体に言えば安請け合いし易くなるって事だから、自分が何か頼まれる側の時は気を付けなきゃ駄目よ?」

 

 帰った私達は、食堂にてご飯中。人数が多いからそこかしこで色んな話題が出てきてるけど、その中でも気になったのは、ピーシェとネプギア、それにネプテューヌ以外の守護女神三人による会話。…因みに、こんな感じに色々な会話が聞こえてくるような環境でも、何か一つが気になると、それ絡みの声だけがよく聞こえるようになるのは、カクテルパーティー効果って言うんだよ?

 

「それにしてもセイツさん…それにイリゼさんも、あの場で蹴ってモンスターを移動させるなんて、あたしびっくりしちゃった」

「だね。最後の掌底もだけど、すっごく腰が入ってたよぉ、二人共っ」

「え、そ、そう?」

「ふふっ。わたしとイリゼの連携、見応えがあったでしょ?」

 

 なんて事を考えていたら、今度は私の名前を出す声が。それは第一期パーティー組のファルコムの発言で、それに鉄拳ちゃんがうんうんと頷く。

 あの場で蹴り…というか打撃を選んだのは、勿論吹っ飛ばす為。それを格闘技主体の戦闘スタイルを持つ鉄拳ちゃんに凄いと思われれば嬉しい訳で、私は照れる一方セイツは機嫌良く胸を張る。

 

「実際、見応えはあったわね。空中でも上手く姿勢を整えて打撃放てるのは、アタシ達普通の人間としては羨ましい限りよ」

「いや、ボクからすればシーシャさんも…というか、ここにいる人達は皆、普通の人間じゃないかな、と…。…そういえばMAGES.、飛行の魔法はあったりするの?」

「飛行の魔法、か。まあ、風の魔法で身体を浮かせる、大気へ作用する魔法で足場を作る等すれば、空中での活動も可能になるが…一瞬でも操作を誤れば転落しかねない魔法を常に制御し続けながら、慣れない空で戦闘行動をし続けるというのは、あまり現実的ではないだろうな。少なくとも、かなりの訓練は必要だろうさ」

「そういえば前に、飛べるからこそ選択肢が増えて、その分一つ一つに掛かる時間が減る…なんて話をネプギアにしたっけ。直感的に、或いは無意識に空中でも動ける訳じゃないなら、下手に飛ぼうとするよりも、飛ぶという『手段』で得られる『目的』を、別の手段で達成する方法を考えた方が着実だろうね」

 

 私とセイツの話から発展して、話題は空での行動の事へ。女神である私にとって、飛行はありふれた事だからあまり意識した事はないけど…皆からすれば、飛ぶ事自体が自分の常識、自分の普通から大きく離れた事なのかな…なんて思う。

 

「飛ぶ、というと…さっきのモンスターって、やっぱり『空』から来たんだよね?あの大きさで、普通にあそこまで歩いてきたなら、わたし達の誰も気が付かないなんて事になる訳がないし…」

「ぴょーんってとんできたんじゃないの?」

「そうそう、『飛ぶ』んじゃあなくて『跳ぶ』事で来たんだよ、きっと!」

「どこの海洋学者だにゅ。…けど、飛ぶようなモンスターにも見えなかったにゅ。脚力は凄かったにゅ?」

「ううん。見た目相応の力はあったけど、長距離の跳躍が出来る程ではなかったね」

 

 更に話は発展し、さっきの件へ。コネクトちゃんの発言に対し、ラムちゃんとREDが跳んできた、という可能性を挙げて、ブロッコリーからの問いに私が答える。

 跳んできた、というのはないと思う。飛行能力も、あるようには見えなかった。でも、上から現れた…降ってきた、というのは恐らく間違いない。それに、神次元の二人やネプテューヌ、ネプギアが見る限り、猛争モンスターではあるとの事。つまり……

 

「…負のシェアの城から、浮遊大陸に落としてきた?…いやいやいやそんな事したら回復能力があっても潰れるよ…しかも別に、城は真上にある訳じゃないし……」

「いきなり何を、と言いたいところだが…ふむ、確かに自力ではなく、何者かによって落とされたのなら、納得はいくな」

「何者か…別のモンスターが、運んできた…とかかしら」

「んー…小型のモンスターが大型モンスターにくっ付いて…ならともかく、あのサイズのモンスターを運ぶモンスターって、いるのかな…?」

 

 私がうっかり垂れ流した発言をマジェコンヌさんが受け取り、ニトロプラスが首を傾げる。それはどうなんだろう、とマベちゃんが返す。

 内容が内容だからか、気付けば皆がこの話題に参加。会議、っていう程しっかりしたものじゃないけど、その分発言はぽんぽんと出る。

 

「猛争モンスター?…というのは、神次元…で戦ったモンスターなのだろう?ならば、わたし達と同じく次元を超えてきた可能性をわたしは推すぞ」

「それじゃあ、あのモンスターは迷子さんだったです?それとも、誰かが送ってきたです?」

「いや…ひょっとしたらそんな大層な事じゃなくて、単にどこかの建物の屋上から飛び降りてきた、なんて事もあるんじゃないかしら。それはそれで、なら浮遊大陸に元からいたのか、という問題は残るけども…」

「んもう、夢がないなぁケイブは。わたしなら…そう、科学の力説を推すね!浮遊大陸までは、ジェットパックか何かで飛んで来たんだよ!空挺部隊ならぬ空挺モンスター!」

『いやいやいや…それは流石に……』

「えー、ない?別にZOIDS的なのじゃなくて、単に飛行メカを背負うか乗るかしてきたんじゃない?位の話だよ?」

 

 明らかに危険なモンスターに夢ってなんだろう…と思いつつ、私は皆と共にネプテューヌの言う可能性を否定。そりゃ確かに、ミリアサちゃんの言う可能性も現実味がある訳じゃないけど、どうして途中でモンスターが落ちなかったんだとか、モンスターが自分の判断で浮遊大陸に降りたのかとか、飛行メカ説は色々な方面で無理のある……

 

…………。

 

………………。

 

 

…………飛行メカ…?

 

『あ……』

 

 その瞬間、多分『それ』を知るメンバー全員の思考が一つになった。ネプテューヌの言う可能性は低い。けど、それそのものじゃなくて、モンスターを余裕で運ぶ事が出来るサイズを持ち、私達に気付かれない為の手段も持ち、くろめ達との繋がりのある組織の『艦』なら、あるじゃないか、って。

 

「…ねぇ、皆。あいつ等の足取りって、途絶えたままよね?」

「そうですわ、あいちゃん。行動を起こさなかったのか、起こせなかったのか…そう思っていましたけれど、こうなるとこの件のように、不可視の存在として何かしらの暗躍をしていた可能性も高いですわね。…勿論、予想通りなら、ですけれど」

「…壁の性質からして、向こうも壁を…少なくとも一部を解除しない限り、外との行き来は絶たれる筈。大きいネプテューヌ、クロワールって、移動させたい対象に応じて次元の扉のサイズを変えられたりするの?」

「え?うーん、変えられる…とは思うけど、確かあんまりにも大きい扉とかは作れなかった筈!…うん、そうだ、そうだよ。だって前、超巨大プリンを持って帰ろうとしたら、『そんなデカいもんが通る扉なんざ作れるか!』って言われたし」

『超巨大プリン…!?』

 

 腕を組みながら訊いたノワールに大きいネプテューヌが答えて、その中で出てきた超巨大プリン、というワードにネプテューヌとミラテューヌの二人が反応。…まぁ、それは置いとくにしても…そうなると、次元の扉じゃ移動させられない(そもそも内側からなら次元の扉で外に行けるのから謎)物の場合は、壁の一部を解除した上で、そこに不可視の存在を…空中艦を用いる事で、出入りさせている可能性が高い。

 どれも、物的証拠のない推測。だけどこの推測通りなら、全て合点がいく。不可視の空中艦を有する組織…アフィ魔Xによるものだったら、辻褄が合う。

 

「え、っと…あの、いまいち話が見えないんですけど……」

「あ…そっか、ゴッドイーターさん達はそうですよね。実はアフィ魔Xっていう、くろめ達に協力してる組織がありまして……」

 

 そういえばそうだった、とユニが第三期パーティー組やオリゼ達に説明する中、私は考える。もしも私達の考えた通りなら…アフィ魔Xが、突破口になるんじゃないか、と。

 

「…説得する、空中艦に忍び込む、気付かれないように尾行する…何かしらの手段を立てる事が出来れば、壁の内側に入る事も可能になるんじゃないかな?」

「でも…どうやって、見つけるの…?(もやもや)」

「問題はそこ、だよね…前はマーカーで場所を見つける事が出来たけど、今は完全に手掛かりなしだし……」

 

 全くもってその通りなロムちゃんの指摘に、私もネプギアと共にこくり、と頷く。見つける手段がないのに見つけた後の事を考えても取らぬ狸の皮算用な訳で、無駄な思考ではないにしろ、まず見つけられなきゃ意味がない。

 突入出来ない相手の本拠地に入る為の、見つけられない空中艦…何とももどかしい。もどかしいけど、考えるしかない。

 

「一先ずは、これまで以上に軍に城の監視を強化させて、見張るしかないわね。…尤も、分かり易く壁を解除する訳がないし、そんな事なら既にその報告が一度や二度上がってる筈だけど」

「それでも、やらないよりはマシだと思うわ。わたし達にも、出来る事があれば良いんだけど…」

 

 ブランとセイツの言葉を最後に、食事中での話し合いは終わる。ここからまた意見やアイデアの出が悪くなった事と、そもそも殆どの人はもう完食していた事から、更に話すなら別の機会に、まずは各々食器を片付けよう…って事になって、私もご馳走様、と手を合わせる。

 

「(…あれ?そういえば、さっきから全然オリゼの声を聞いてない気が…)…オリゼ、元気ない?」

「ふぇっ…?ど、どうしてですか…?」

 

 くるりと隣を振り向きオリゼを見れば、オリゼはいきなり話し掛けられた事で少しびっくりした様子。でも逆に言えばそれ位で、特に不調な様子はない。

 

「あ、ううん。静かだなぁと思っただけで、元気なら別に良いの」

「ぁ…げ、元気ですよ…?でも、その…人が一杯いたので、少しドキドキ…して…話も、よく…分からないものが、多くて…あ、後…その……」

 

 理由を聞いてみれば、それは納得の出来るもの。特に後者はオリゼの性格からして、二の足を踏んでしまうのも頷ける。

 だけどオリゼの口振りからすると、もう一つ理由があるらしい。何だろうと思って見ていると、私の視界にはオリゼの食器が、そこに残るピーマンが映って……

 

「…もしかして、苦い野菜と格闘を……?」

「う、うぅ……」

「あ、あはは…うん、分かる…苦いもんね、ピーマンって…。…食べられる…?」

「た、食べられ…ます…!わ、私は女神…です、から…っ!」

 

 そう言って、お箸でピーマンを摘むオリゼ。けどやっぱり躊躇いはあるみたいで、顔の前まで持ち上げてから動きが止まる。

 どうしたものか。残ってるとはいえ量は減ってるから、頑張って少しずつ食べてたんだと思うけど、この様子だとまだ時間がかかるかもしれない。…と、思っていたら、意外なところから援護射撃。

 

「あれ?オリゼさん、ピーマンにがてなの?」

「オリゼさんも、にがて…?(きょとん)」

「……!い、いえ…た、食べられ…ます…っ!」

『おぉー…!』

 

 それはテーブル越しに前へと来た、ロムちゃんとラムちゃんの声。二人のどこか仲間意識のある声を聞いたオリゼは、ぴくっと肩を震わせて…そらから意を決したように、ぱくりと一口。ある意味思い切りがいいようにも見える食べ方にロムちゃんとラムちゃんは感嘆混じりの声を上げ、オリゼはきゅっと目を瞑りながらも咀嚼を続けて…こくん、と嚥下。

 

「……ふふっ」

「は、ぅぅ…うぇ…?イリゼ…?ど、どうか…しましたか…?」

「んーん、何でもないよ(やっぱオリゼ、二人と精神年齢近いよね…とは言えないよねぇ)」

 

 思わず私が微笑んでしまうと、オリゼはきょとんとした顔で小首を傾げる。でも正直に言えばオリゼも良い気はしないだろうから、肩を竦めてはぐらかす。

 今日も…と振り返るにはまだ時間があるけど、今日も既に色々あった。やる事、考える事も多いし…くろめを倒す以外の道については、まだ纏まっていないまま。

 けど、これは呑気な考えかもしれないけど…思う。そういうやらなきゃいけない事の合間で、少しの時間でも…こうしてオリゼが、何でもない時間を皆と過ごせれば良いな、って。

 

 

 

 

「おーい、おっきいわたしー!」

 

 ちょっと食べ過ぎちゃったし、少し廊下を歩こうかな。…そう思ってプラネタワーをぽてぽてしてたら、後ろから聞こえた『自分の』声。

 

「こ、この声は…さては貴様、ミラテューヌだな!」

「な、何故バレた!」

「え、だって服違うし」

「だよねー」

 

 ばって振り向いたわたしと、後ろから小走りで来たわたしじゃないわたし…ミラテューヌは特に理由もなくふざけ合う。さっすが未来のちっちゃいわたし、ノリの良さは変わらないね!

 

「で、どうしたの?わたしに何か用事?」

「あ、うん。…もしかしたらあの時は、辛い決心をさせちゃったのかも…って」

「あの時?…あぁ……」

 

 一瞬分からなかったわたしだけど、すぐに気付く。ミラテューヌの言ってる事が、さっきの浮遊大陸での…わたしが皆に、お願いした事だな、って。

 

「…大丈夫だよ、未来のちっちゃいわたし。…そりゃ、確かに不安な事、怖い事もあるけど…わたしはちっちゃいわたし達も、くろめも、皆信じてるから。信じられるから、わたしは言ったんだよ」

「そっか…さっすがおっきいわたし!同じわたしなだけあって、信じる事にかけては激強だよね!」

「ふふーん、まあね!」

 

 にこーっと笑うミラテューヌを見て、わたしもふふんと胸を張る。…嘘なんか、吐いてない。不安でも、もしもを考えて怖くなっても…それでも信じられるから、大丈夫って思えるから、わたしは皆にお願いした。それがわたしの、正直な思い。

 

「…ね、ミラテューヌこそ大丈夫?」

「え?」

「貴女も、どうしてもって思いがあって訊いたんでしょ?でもあの時は、衝突…って程じゃないけど、皆がもやもやする気持ちになっちゃった。だから…後悔、してないかな…って」

 

 それからわたしは、ミラテューヌへと訊き返す。浮遊大陸での調査の時、わたしはわたし二人と一緒に動いてて、その時ミラテューヌから、「これまであった事を確認したいから教えて」って言われたから答えて…その結果があの質問に繋がった、そんな気がしたから…大丈夫?…って、訊き返した。

 それを訊いたミラテューヌは、意外だったみたいで目を丸くする。けど、すぐにまた笑顔になって…言った。

 

「だいじょーぶ。皆に大切な思い、大事な気持ちがあるみたいに…わたしにだって、これは譲れないって思いがあるから。それに…わたしだって女神だもん、女神のわたしが強いのは…もう、十分知ってるでしょ?」

「…あははっ、そうだったね。それじゃあ同じネプテューヌ同士、お互い頑張ろっか」

 

 そうしてわたしも、笑い返す。確かにわたしは知っていた。だからこれは、訊くまでもない事だったかな、って。

 未来のちっちゃいわたしが、何を確かめたいのかは分からない。でも、それはきっと大事な事なんだよ。わたしには分かる。だって、わたしもずっと大事な思いを胸に秘めていた…未来のちっちゃいわたしと同じ、ネプテューヌだもんねっ!




今回のパロディ解説

・「〜〜どこの縮小能力持ち〜〜」
BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS-に登場するキャラの一人、ジゲン(とその正体)の事。回復まで十日、に対してたので厳密にはアニメ版の話ですね。

・(〜〜厄介なやつだよ、君は)
機動戦士ガンダムSEEDに登場するキャラの一人、ラウ・ル・クルーゼの台詞の一つのパロディ。レイもくろめも今回はラスボス級のキャラのパロディをしているのです。

・「〜〜『飛ぶ』んじゃあなくて『跳ぶ』〜〜」、海洋学者
ジョジョシリーズに登場する主人公の一人、空条承太郎の台詞の一つのパロディ。四部での台詞ですね。内容としては元ネタの『観察』とはかけ離れている訳ですが。

・ZOIDS
動物(恐竜)型メカ玩具シリーズの事。念の為に書いておくと、前話で倒されたモンスターは、別にメカだったりはしません。勿論普通のモンスターでもありませんが。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。