超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
支持者が、増えていく。俺の力を信じる者が、俺の力に希望を抱く者が、俺の力こそが真に次元を導く強さだと思う者が。
それでいい、これでいい。それこそが、正しい選択だ。支持してくれるのなら、俺も立ち回り易くなる。多くの支持者がいる、それそのものが俺にとっての大きな利となる。
……なのに、理解してくれない者もいる。よく知らないというのなら、仕方がない。けど、知っている筈なのに、普段から近くにいるというのに、この力の強さを…この力があれば、これまでのように危険を背負わずとも済むという事を理解してもらえないのは…悲しいものだ。
「…どうして、分かってくれないんだ。どうしてそこまで、意固地になるんだ」
嘆息を吐くようにして、俺は言う。言葉は尽くした。目に見える形でも、証明をしている。だからこの力の有用性、強大さは、間違いなく伝わっている筈だ。
「それは、こちらの台詞です。どうしてそこまで、固執するんですか?」
そう言葉を返すのは、俺が心から信頼している相手の一人。俺は彼女の事をよく知っているし、彼女も俺の事をよく知っている。ずっと力を合わせてきた存在で…だからこそ俺は理解してほしい。俺の思いを、分かってほしい。
「これまでわたし達は、力を合わせ、支え合って苦難や困難も乗り越えてきました。脅威も退けてきました。そうでしょう?」
「ああ、勿論だ。一人では出来ない事も、皆となら出来た。皆がいたからこそ、強くいられた」
「なら、それは……」
「けどそれは、それが一番の力だったからだ。一番の強さだったからだ。その力以上のものがあるなら、より高位の強さがあるなら、そっちの方が良いに決まってるじゃないか。……俺は、守りたいんだよ。皆が傷付かずに、危険を冒さずに済むようにしたいだけなんだ」
彼女は続ける。俺も返す。彼女は知識が豊富で、聡明でもある。雑な言い方をすれば、俺より頭が良い。つまり、分かる筈なんだ。俺の考えてる事、進めたい事の正しさを。
「…ですが、その結果一人が重荷を、負担を背負うというのは、あまりにも……」
「ははっ、それなら心配ねぇよ。…俺はこれを、負担だなんて思わない。皆を守れるなら…安いものさ」
その言葉を聞いて、彼女は黙り込んだ。だが、納得してもらえた訳じゃないんだろう。納得したから反論を止めた…そういう目は、まだしていない。
けど別に、これは急ぐ事でもない。だから俺は、また後日話そうと伝えて、外へと出掛ける。
「……ってな感じで、中々分かってもらえなくてさ…はぁ、何で分かってくれないんだか…」
そうして俺が向かったのは、待ち合わせの場所。そこで待ち合わせていたあいつと会って、そのまま街を散歩するように歩く。特に目的は決めていない、のんびりとした時間を過ごす為に。
「まあ、ほら…理由はどうあれ、結構重要っていうか、一度何かをやってそれでお終い…なんていう、簡単な話じゃないんだろ?だったら、中々思うようにいかないのも、仕方ないんじゃないのか?」
「まあ、それはそうなんだが……」
それはそう、当たり前の事。とはいえそれを理解していたって、上手く進まずもやもやする気持ちは生まれる訳で、俺は軽く肩を落とす。それから、お前なら…と訊こうとして、その問いを飲み込む。
気にはなる。一体どう思っているか。賛成してくれているのか、それとも反対か。…けど、俺は訊かないと、こいつにだけは尋ねないと決めている。…しがらみも、立場も、思想も関係なく…こいつとは、気兼ねなしに話したいから。
「…ほんと、大変だよな。やる事も、苦労も多くて、身体も張らなくちゃいけなくて……なのに投げ出す事も、諦める事もなく、いつも全力で取り組んでる。…本当に、凄いし格好良いよ」
「な……っ!?ばっ、急にそんな事言うんじゃねぇよ…!…て、照れるだろうが……」
「あ…そ、その…悪い……」
「…別に、そこまで済まなそうにする事でも…ないだろ……」
そんな中でふと、かけられた言葉。それに思わず俺は顔が赤くなり、反射的に強めに…その後は恥ずかしさが強くなって、ごにょごにょと返す。
…これだから、困る。普段はそんな気遣い上手でもない癖に…というか、無自覚にこんな事を言うもんだから、不意打ちのように心の中へ入り込んでくる。身構える間もなく、すとん…と落ちる。…急に、いきなり言われるこっちの気持ちも知らないで。
だけど、思う。こいつは俺の調子を狂わせる、心を掻き乱すやつだが…同時に俺は、こいつといる時は、ただの一人でいられる。他の相手といる時が窮屈って訳じゃないが…やっぱり、何か違う。…いつからか、そう思うようになった。
「…こ、こほん。それより昨日テレビ見て知ったんだが、世の中には凄まじい誕生日の祝い方をする人がいるんだな」
「凄まじい誕生日の祝い方…?」
「あぁ。最新鋭可変戦闘機で暴動を鎮圧する程の歌を届けるっつー、とんでもない祝い方が……」
「いや見たのってアニメかよ……」
気不味くなってしまった数秒後、気を取り直す…というか、明らかに話を変えようとして発された言葉。その変な冗談に俺は軽く呆れ…だがその後、ふとある思いが浮かんで、言う。
「…ならよ、もし俺の誕生日だったとしたら、お前は来てくれるか?」
「えっ?…いや、俺戦闘機の操縦は……」
「違ぇよ、同じ事しろとは言ってねぇっての…はぁ、察し悪いなおい……」
「うっ…け、けどそういう事なら行くさ。呼んでくれるなら、な」
魔が差すように、ついちょっと口角を上げつつ言った俺だが、これじゃまるで来てほしいと言ってるみたいだと思い、少し恥ずかしくなる。しかも変な勘違いまでされた訳で、再び俺は呆れた気持ちに。
けど、それから改めて「行く」と言われる。別に呼びたくない理由なんてない。更に恥ずくなるから言わないが、来てくれるなら正直嬉しい。だから俺が、勿論呼ぶさと答えると…更に、答えてくれる。その表情に、にっとした明るい笑みを浮かべて。
「だったら、絶対行くよ。何があろうと、絶対に行く」
「何があろうとって、また大袈裟な…けど、それなら期待してるぜ?」
大袈裟でも、そんな言い方をされれば、悪い気はしない。だから俺も笑みを返して、そう言った。期待してると、待っていると。
あぁ、やっぱり俺は、こいつとの時間が好きだ。楽しくて、心が軽くなって…何より、温かい。何が起きても、こいつがいれば頑張れそうで…もしこいつも同じように思ってるなら、それは凄く…嬉しいと思う。
──だからこそ俺は、必ずや俺の意思を…望みを、果たす。俺が、俺の力で全て守る。それが出来ると、それが一番なんだと……認めさせる。
*
寝起きから早々にオリゼに泣かれかけた事から始まり、ここ最近の中でも特に色んな事があった…と思う一日が終わった。ネプテューヌ達が神次元に行った後、信次元では特に何もなく、向こうもアフィ魔Xの空中艦がやっぱりセブンスジーニア製らしいって事は分かって、協力は得られたものの、大きく何かが動いた…って事は特になかった。
それから、更に数日が経過。私達側の状況は変わらず、くろめ達側からの動きもなく…攻めあぐねたままの、停滞した現状が続いている。
「はい、イリゼ。昨日の分の情報、纏まったみたいよ」
「うん、ありがとアイエフ」
手渡されたタブレット端末を、お礼の言葉と共に受け取る。そこに表示されている数字、それに一件一件の詳しい情報へと、私は視線を走らせていく。
「…………」
「…に、しても…ほんと凄いわよね。凄いっていうか、まだちょっと信じられないっていうか…」
「わたしもです…オリゼさんの…女神様の力が、こんな事まで出来るなんて……」
その間、コンパとアイエフはそんなやり取りを口にする。コンパは女神の力が、とは言ったけど…女神である私からしても、最初は正直信じられなかった。
私が今見ているのは、目を覚ました人々の情報。それも、昏睡状態ではなく……死からの、蘇生の情報。
「…ねぇ、コンパ。医学の観点から言っても、やっぱり死んだ人が生き返るっていうのは、凄い…というより、あり得ない事なの?」
「勿論です。医学…というか、生物学?…になるのかもですけど、死んじゃうって事はつまり、機能がなくなる…って事なんです。移植手術が分かり易いと思うですけど、機能がなくなっちゃうと、もう『治す』じゃなくて、『変える』しかなくなるんです。それに、人の身体は全体で一つですから……」
「どこかが機能を失うと、それを必要としていた別の部位も動かなくなって、更にその影響で別の部位も…って感じに、連鎖的に駄目になっていっちゃう訳だね。だから逆に、対処が間に合えば……」
「はいです。間に合えば、何とかなるですし…間に合わなければ、傷がなくても、どんなに綺麗でも、もう駄目なんです。…悲しい言い方ですけど、死んじゃった人の身体は…『生物』から、『物』になってしまうですから……」
普段はほんわかしているコンパだけど、やっぱり専門である医療となれば話は別。コンパからの回答を聞いて…特に最後の部分を受けて、私は考える。
人…というか生物の身体は機械と違って、エネルギーが配給されなければその『機能』を維持出来ない。そして機能を維持出来なければ、コンパの言う生物から物に…生物『だったもの』になってしまう。だから治せないんだと…もう、治すの領域ではなくなってしまうんだという事らしい。
だったら、この場合は…オリゼの《女神化》以降挙がっている報告の人達はどうか。…そんなのは、言うまでもない。その人達の死が、始まりとなったあの日に起きた事な以上、あれからかなりの日が経っている以上、もう『物』になってしまっていた筈。つまり、それすらを…不可逆の状態にまで至ってしまっていた命すらを、オリゼは生き返らせたって事で……
「……あれ…?」
「……?どうしたのよ、イリゼ」
「…ねぇ、二人共。永眠、とか、死の淵から目覚める…みたいな表情はよくあるけど、あくまで死は『結果』…言い換えるなら不変の終着点であって、そこから変化する事のある『状態』ではないよね?」
「それは…まぁ、そうかもだけど……」
「えっと…イリゼちゃんは、何を言いたいです…?」
「うん。…だったら、さ…死の直後、『物』になる前の段階で生き返らせたのならともかく、完全に死んでしまった人…もう生命が終わった存在を生き返らせるのは、生き返らせる…って表現で合ってるのかな…?それって、死の直前の状態を引き継いだ、新しい『生』じゃないのかな…?」
それは、頭に浮かんだ疑問。生物というより、哲学の域であるようにも思える、死と再生における観点。
正直、言葉の綾な気もする。何を重視するか、どの視点で見るか、更に言うなら魂の概念をどう捉えるか…色んな要素で答えの変わる、絶対的な答えなんてない話なんじゃないかと、私自身思っている。
だけどそれでも、その上で、私の中ではその疑問が浮かんで、引っ掛かった。それに、私がこう思うのには、もう一つ理由がある。
(…遺体が残ってる人なら、まだ分かる。分かるっていうか、感覚的に『目を覚ました』とも思える。けど…報告に挙がってきた人の中には……)
これも悲しい事だけど、亡くなった人の中には、その原因が理由で、ちゃんとした遺体すら残らなかった人もいる。葬儀の方法も地域で違うから、もう残っていないという人も沢山いた。……けど、そんな人達すらも、蘇ったんだ。帰ってきたって報告があって、本当にその人は生者として存在していたんだ。それが事実であり…だからこそ、私は分からなくなる。これは本当に、生き返った、って事なのか…って。
「…中々、複雑な話ね。正直、個人的にはこういう思考をするのも嫌いじゃないけど……」
「はは…ごめんね二人共、急に変な話をしちゃって。理由はどうあれ死んだ人が生き返って、多くの人が家族や友達を取り戻せたんだから幸せに決まってるし、それ自体を否定するつもりは微塵も……」
疑問はあるけど、私はこうなって良かったと思ってる。良いに決まってる。何とも言えない空気にしてしまった私は、それを解消すべく気持ちを伝え……ていたところで、鳴り出したのは私の携帯端末。
二人に断りを入れ、私は席を立つ。移動しながら電話に出ると、それは教会の職員さんで…話を受けた私は、思わず目を瞬かせてしまっていた。
「あ、は、はい…すぐ行くと、伝えて下さい……」
「……イリゼちゃん?何か、あったですか?」
「あった、っていうか…ロムちゃんとラムちゃんが、ずぶ濡れのオリゼを連れて帰ってきたんだとか……」
『え?』
さっきの私の様に目をぱちくりとさせた後、「え?」と訊き返してくるコンパとアイエフ。でも別に、私は嘘を吐いていたり、過剰に端折って伝えたりした訳じゃない。あくまで事実を、そのまま二人に伝えただけ。
それでも二人は、目を丸くしてしまった。…だよね…そりゃ誰だってそうなるよね……。
「…と、いう訳で…ちょっとエントランスまで行ってくるね……」
私自身さっきまでとは違う何とも言えなさを抱きながら、部屋を出て廊下を進んで、エレベーターで下の階へ。エントランスに出たところで、オリゼとロムちゃん、ラムちゃんを探し……って、いた。
「ふぇ…ぐすっ、ひっく……」
「オリゼさん、よしよし…(なでなで)」
「もー、泣かないの。もーすぐイリゼちゃんが来てくれるから、ね?」
ものの数秒で発見した私が見たのは、エントランスの端っこで目に涙を溜めてしょぼくれているずぶ濡れのオリゼと、左右から背伸びをして頭を撫でてあげてるロムちゃんとラムちゃんの姿。……どうしよう、恥ずかしい…見た目同じだから、凄く恥ずかしい…。
「え、えっと…三人共ー…?」
「あ、イリゼちゃん!よーやく来たのね!」
「ほら、オリゼさん…イリゼさん、来たよ…?」
「ぁ……い、イリゼぇぇ…っ!」
「おわっ…よ、よしよーし……」
近付いて声をかければ、まず二人が気付いて、その後顔を上げたオリゼが私に泣き付いてくる。そのオリゼを受け止めた私は、取り敢えず軽く頭を撫でて…それから視線を二人の方へ。
「…二人は、今日行きたい場所があったオリゼに付き添ってくれたんだよね?それがどうして、ずぶ濡れに……?」
「えっとね、オリゼさんが行きたいばしょには、行けたの。それでね、かえりにしぜん公園に入ったの」
「そこでちょっとあそんでたんだけど、かわいいことりさんがいて、オリゼちゃんその子を追いかけちゃったの。それで、どぼーん」
「どぼーん?…え、まさか自然公園の中の川に…?」
『うん』
「あ、あー……」
こくん、と揃って頷く二人に、私が漏らす乾いた声。…何が悲しいって、「そんな馬鹿な…」とは思えない事なんだよね…オリゼならしそうっていうか、その光景が容易に想像出来るっていうか……。
「その…ごめんね。後、ありがとね?ここまでオリゼを連れてきて、しかも慰めてくれて」
「ぐしゅっ…わ、私…小鳥さん、ばっかり見てて…下、気付かなくて……」
「みたいだね…もう、分かってるだろうけど気を付けなきゃ駄目だよ?ほら、あーんして」
安心したのか、それとも情けなさからか、ぽろぽろ涙を流すオリゼの後頭部に付いた、水草か何か。それを取った私はハンカチでオリゼの顔を拭いて、それから取り出した飴を指で摘んでオリゼの口へ。それをしゃぶり、口の中でころころさせながら少しだけ表情が良くなるオリゼを見て、私は苦笑いし……って、よく見たらちょっと下着透けてる…!ちょっ、これ多分歩いて帰ってきたんだよね…!?じゃあ見られてるんじゃない…!?私と同じ見た目のオリゼが、ずぶ濡れでロムちゃんラムちゃんに手を引かれてる時点でかなり恥ずかしいけど、これひょっとしたら更に恥ずかしい事になってたんじゃないの……!?
「ほぇ…?イリゼさん、いつもあめさん、持ってるの…?」
「あ…うん。オリゼ、多少の事なら飴玉とかチョコとかしゃぶると泣き止んでくれるから、幾つかを…ね。…丁度後二つあるから、二人も食べる?」
「食べる〜!」
残り二つの飴を渡すと、二人は同じタイミングで口に入れて、ほっこりとした表情を浮かべる。
割と精神年齢が近いからか、ロムちゃんとラムちゃんは積極的にオリゼに接してきてくれる。第一印象は恐らく最悪で、その後も好印象を抱く機会は少なかっただろうから、前の旅みたいに敵視されたら悲しいな、と思っていたけど…要らぬ心配で済んで良かった。
「はふぅ……」
「あ、出てきたね。さっぱりした?」
「は、はい…で、でも…後でロムさんと、ラムさんに……」
「うん、お礼を言いに行こっか。…それで、なんだけど…さ」
それから私は連絡をくれた職員さんにもお礼を言った後、オリゼをオリゼの部屋に連れて行き、着替えを用意している間にシャワーを浴びてもらった。…まあ勿論、シャワーの時間の方がずっと長いんだけど…というのは追いといて、着替えた後のオリゼは流石に気分も落ち着いた様子。ならば、と私はオリゼに向き直り…言う。
「…オリゼは、あの力で…《女神化》の力で、人を生き返らせたんだよね?」
「……?…はい。女神…が、人の命を…幸せ、を…未来を奪って…そ、それが是とされる現実、なんて…間違って、います…から」
「…それは、どうやって?シェアエナジーの…シェアの、奇跡の力だって事は分かってるけど…よく分からないけど出来た、って訳じゃないでしょ?」
そう言って、私はオリゼを見つめる。オリゼからの、答えを求めて。
でしょ?…とは言ったものの、よく分からないけど出来た…の可能性もなくはない。その時不思議な事が起こった、じゃないけど、シェアが奇跡の力である以上、説明不能の事が起こってもおかしくはないから。
けれど、オリゼが示したのは否定じゃなかった。オリゼは私の目を見つめ返して…頷く。
「…だから、否定したんです。死んでしまった、人達の死を…昏睡したままという、現実を…生きている、と…目を覚ます、へと…か、改変したん…です」
「改変した…?…って、事は…世界の在り方そのものを、変化させたって事なの…?」
「い、いえ。変えたのは…一人、一人…です。そ、その為…に、一人一人が…本来の姿で、あるように…その人の話を、その人の家族や友達から…聞いた、んです」
「……!じゃあ、あれって……」
そこから、更にオリゼは話してくれた。世界そのものを奇跡で書き換えるより、一人一人に作用する方が、正確で確実なんだって。治すでも、変えるでもなく、そもそも『死』という結果や『昏睡』という状態そのものを否定しそうならなかった事に改変したんだって。
けれど、一人一人の方法は、遺体がなければ成立しない。完全にいなくなってしまった人となると、世界そのものを変えるしかなくなるから。……だから、聞いた話と、話してくれた人達の思いを形に変える事で、情報や思いという『無』を、生命という『有』に変える事で、遺体が残っていない人もあの日再誕させたのだと、オリゼは言った。
「…だ、だから…どっちの場合、も…生き返らせた、っていう表現は…少し違うかも、です。…ぁ、も、勿論一番分かり易い表現はそれだと思い、ます…!べ、別に私はイリゼの言った事を間違ってるって言いたい訳じゃなくて、そのっ……」
「あ…だ、大丈夫だよオリゼ。別に否定されたとか、そういう事は感じてないから。それに私自身、生き返らせた…っていう表現は、傍からだとそう見える…みたいなつもりで言ってた部分もあるし…」
「そ、それなら良かった、です……」
急に慌ててフォローしてくれるオリゼへ肩を竦めると、オリゼはほっとした顔で胸を撫で下ろす。
理屈は、分かった。どういう原理なのかは、理解出来た。…だけど、すっきりはしていない。分かったのに、全然すっきりしない。むしろ、私の心はもやもやしている。だって、それがその通りなら…起きたのが、オリゼの言った通りの事なら……
「……死んだ、ままじゃないの…?」
「…イリゼ……?」
「死を、昏睡を否定した結果、目を覚ました人達の事は分かる…けど、そうじゃない…完全にいなくなってしまった人の蘇生は…それは、蘇生じゃないよね…?オリゼが言った通り…聞いた話と、思いから…生み出して、いるだけだよね……?」
「…そう、ですよ…?」
「……っ…」
さっきも思った。生き返らせる、と言うと眠りから目覚めるように、死から目覚める…つまり、死んだ人がそのまま復活するみたいな印象になるけど、そもそも死者を蘇らせる事は、死の直前と同じ情報を持った、新たな存在を生み出す事とは違うのか、って。その時は、考え方次第だとも思ったけど…これは、違う。傍から見れば、確かな生き返りだとしても……本人からすれば、それは絶対に蘇生じゃない。だってオリゼ自身が言った通り、それは再誕だから。死んだ人はそのままで、その人とは違う存在が新たに存在を得た訳だから。
そう思うと、もやもやする。本当は生き返れてなんかいないと思うと、心が苦しくなる。…だけど、オリゼは表情を変えず、さも当然の事のようにそうだと言う。
「オリゼは、それで良いの…?…いや、勿論それすらも出来ない…多くの人を守れなかった私が、異を唱えるなんて間違ってる事だけど…けど、だけどさ…それじゃあ、死んだ人は…その人は……」
「……?家族や、友達の方は…皆、喜んで…いるん、ですよね…?あ、あの時、生を取り戻した人、再誕した人達も…苦しんでは、いないんですよね…?」
「そうだけど、そうだけども…っ!私が言いたいのは、死んじゃった人が……!」
「…イリゼ?し、死を迎えた、人は…もう、人じゃ…ありま、せんよ…?」
「……──っ!?」
──茫然と、した。心の中で渦巻くもやもやした気持ち、切なさで感情的になる私と、怪訝な顔で訊き返してくるオリゼ。オリゼの視点も別に間違ってなくて、オリゼに私は感謝するべき立場だって事は分かってるけど、それでも…相手がオリゼだからこそ、どこまでも人を思い慈しむもう一人の私だからこそ、死んでしまった人達への思いがまるで感じられないのが居心地悪くて、あまりにももやもやして……だけど、違った。根本的に…オリゼの価値観は、人の定義は、私が思っているのと…私の感じる思いと、違っていた。オリゼは、もう一人の私は……
「……っ!」
直後、再び鳴った私の携帯端末。その相手は、イストワールさん。
一体なんだろうか。心の中で暗雲の様になった気持ちを一度仕舞い込み、オリゼにイストワールさんからの連絡だと伝えて受ける私。そして、電話に出た私は知った。負のシェアの城を監視している国防軍からの報告である……ダークメガミの、出現を。
今回のパロディ解説
・「〜〜最新鋭可変戦闘機〜〜祝い方が……」
マクロスFrontierの第十二話、ファステスト・デリバリーにおける展開の事。ここまで豪華な誕生日というのもそうそうないでしょう。豪華というか、過激な…ですが。
・その時不思議な事が起こった
仮面ライダーBLACK RXにおける、代名詞的なナレーションの一つの事。とは言っても、実際にこの台詞が何度も使われた訳じゃないらしいですね。