超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
国防軍から教会に届いた、ダークメガミ出現の報告。その報告を受けた私はオリゼとの会話を切り上げ、教えてくれたイストワールさんからの話だけを伝えて部屋を飛び出した。
走りながらインカムを耳に嵌め、バルコニーのある部屋に入り、バルコニーに出ると同時に女神化。国防軍の砲火を突破したダークメガミを迎撃する為、負のシェアの城がある方向へと向けて飛ぶ。
「イストワールさん。ネプテューヌとネプギアはもう行ってるんですよね?」
「はい。確認されたダークメガミは一体のみ、これまでの事を考えればお三人で問題ないとは思いますが……」
「…イストワールさん?」
「…送られてきた映像を見る限り、どうもこれまでのダークメガミとは何か違うようです。ネプテューヌさん達にもお伝えしますが、お気を付けて( ̄^ ̄)ゞ」
音声だけのやり取りだから意味はない…けど私は頷き、加速。
何か違う。全く具体性のない、曖昧模糊な表現だけど、そのダークメガミは国防軍とは殆ど戦闘せずに高高度を駆け抜けていってしまったらしいから、参考になる情報が少ないのも仕方のない事。むしろ何か違う(から、気を付けた方が良い)と分かっているだけでも、これから戦う身としてはありがたい。
(何か違う…見た事ない装備をしてるとかの、一目で分かる違いじゃないって事だよね……)
あまりにも情報がないから今推測するのは困難とはいえ、一体どういう事なのか、と考える私。
けど、よくよく考えたら変な話。映像から分かるのは外見と、後はせいぜい飛行能力位で、となれば『何か違う』なんていう、曖昧な表現はしない筈。だって、映像な以上は一時停止するなり、拡大するなりして、じっくり見る事が出来るんだから。
でもそう考えると、逆に思想の方向性も定まってくる。例えば、ダークメガミの各部に拡大してもよく分からない程の、微細な変化があったんだとしたら?その微細な変化が全体に起こっているなら、何か変だとは分かるけど、はっきりこうだとは言えない…即ち、さっきのイストワールさんみたいな表現に至ってもおかしくない。
「拡大しても分からない、でも何か違うのは分かる、全身に渡るような変化……け、毛が生えたとか…?…いやいやいや……」
流石にそれはないだろう、と私は否定し頭を振る。どこぞの内紛を想定したカウンター機や月の名前を冠した機体ならともかく、ダークメガミに毛を…それも頭部どころか全身から生やすなんて全く意味が分からない。
と、そんな思考をしていた中で、見えてきたのは更に立つ二人の存在…ネプテューヌと、ネプギアの姿。視認した私は、すぐに二人の名前を呼ぼうとして…けれど、気付く。何故二人が、前進ではなくその場に留まっていたのかに。
(……っ!そうか、そういう事か……)
二人を見つけた数秒後、見えたのは観測されたダークメガミ。まだ距離があるせいで、はっきりとは見えないけど…確かにあれは、これまで戦ってきたダークメガミとは違う。あれは何かを、纏っている。
「…ネプテューヌ、ネプギア」
「……!来たわね、イリゼ」
滞空する二人の横まで行って、私は静かに声を掛ける。こちらを向いた二人と視線を交わして、瞬時に手早く意思疎通を図る。
盾を装備したダークメガミは、こちらへと接近を続けている。私達を狙っているのか、街が狙いなのか、それとも別のものかは不明。けど、向こうから近付いてくるのなら…ここで、迎え撃つだけ。
「あのダークメガミは、ここで止める…行くわよ、二人共ッ!」
「うんッ!」
「あぁッ!」
更に接近するダークメガミを前に、ネプテューヌが発した言葉。それに私とネプギアは応え、私達は右手に得物を掴み、散開する。ネプギアはM.P.B.Lの銃口を向け、私とネプテューヌは左右前方に分かれ…交戦を、開始する。
(撃ってきた…やはり、狙いは私達か……ッ!)
先制攻撃として放たれる、掌底部からの光芒。狙われたネプテューヌは左にロールをかけながら回避し、その間に私は更に接近。
次の攻撃は、ネプギアからのビームの照射。光がダークメガミの頭部へ突き刺さるとほぼ同時にダークメガミの各部からエネルギー刃が飛び始め、その中を翼を三次元機動重視に可変させた私は突っ込んでいく。
「如何に強力な迎撃であろうと…ッ!」
長剣を右手で持ち、左腕に中型の盾を精製した私は、手足の先まで神経を巡らせ、最速且つ最小限の動きで迎撃を避けて距離を詰める。
ダークメガミは大きいからこそ、自在に動いて迎撃を浴びせるという事が出来ない。それを埋める為に迎撃の手数を増やしているとはいっても、戦闘艦同様穴はある。そしてその穴を、一瞬一瞬で生まれる迎撃の隙間を突く力と、見切るだけの対ダークメガミ経験が…私には、ある…ッ!
「貰った…ッ!」
光芒を避けたネプテューヌも迎撃の範囲に入った事で、分散する迎撃の刃。私に向かう迎撃が薄れたその瞬間、私は温存していた盾を構え、一気に迎撃を正面突破。複数の迎撃を立て続けに受けた盾は砕け散り…けれど肉薄した私は、ダークメガミの腋をすり抜ける形で肘関節部に一撃与えて駆け抜ける。
斬り落とす程の、深い一撃にはなっていない。でも私の手にあるのは、確かな感触。最初の一撃としては、十分なダメージ。
とはいえ、所詮は一撃。まだ撃破には程遠い。だから私は左脚を横蹴りの要領で振り出す事によって急反転し、即座に次の攻撃へ……
「……──ッ!」
そう、振り向いた私は目にした。たった今私が斬り裂いた場所に、ダークメガミが纏っていた『何か』が集まり、急速にその傷を、損傷を直していく。
私は目を見開いた。けれど愕然とはしなかった。…何故なら、予想はしていたから。それを目にした時点で、肉薄した瞬間の感覚で…浮遊大陸で戦ったモンスターと、同じものだと感じていたから。
「ネプテューヌ、ネプギア!このダークメガミは……」
「えぇ、そうみたいね…ッ!」
周囲を飛ぶ形で迎撃を避けながら、私の声に答えるネプテューヌ。二撃目を一度中止し下がりながら上を見れば、やはり頭部も直っている。試しに短剣を精製し、迎撃の射出部位の一つに投げてみれば、短剣は狙い通りに当たった…ものの、やはりそこも修復される。
(…これは、厄介な組み合わせだ……)
今回後衛を担うネプギアは連射能力より一発の威力を重視した単射で仕掛け、私とネプテューヌはネプギアが撃ち易いよう注意を引きつつ隙あらば突撃。光弾を、刃をダークメガミに食い込ませ…だけどそれ等は、全て瞬く間に直ってしまう。
瞬時の再生能力。それは大概厄介なものだけど、それを有する存在が大型であればある程、その厄介さは増していく。対大型の基本である「ダメージの積み重ね」が再生能力持ちには通用せず、再生能力への対処となる「回復される前に削り切る」も相手の大きさによって難易度が変わる以上、再生能力のある大型というのは、突破口を補完し合っていると言っても過言じゃない。それもこのダークメガミが持つ巨体と再生の速さを考えると、その巨体すら真っ向から斬り裂くような、超大口径のビームで薙ぎ払う…或いは絨毯爆撃レベルの飽和攻撃で、無理矢理削り取る…そんな強引な手段でもなければ、どれだけ攻撃しても無に帰して終わる。
……いや、違う。もう一つの対処として、ガス欠を起こさせるというのもある。生物だろうと機械だろうと普通は一切の消費をせず何かをするというのは出来ない訳で、しかもそれが再生なんていうものとなれば、消耗としてはかなり激しい筈。つまり、このままここに引き止め、再生をさせ続ければ、どこかでエネルギー切れになって再生しなくなる可能性も、あるのは事実。
「…けどそれは、最終手段だ。初めからその類いの持久戦に持ち込むのは、戦術としても、女神としても…上策じゃない…ッ!」
真正面から迫るエネルギー刃を叩き斬り、それまで付かず離れずの位置にいた私はより積極的な攻撃に転じる。派手に、激しく動く事であくまで注意を引きつつも、ダークメガミとの距離を詰めていく。
相手のエネルギー切れまで耐えるという策は、当然こっちも相当な消耗を強いられる。つまりその後何かあった場合の対応力が低減する訳で、それは可能ならば避けるべき事。それに…私は女神。守護者として、指導者として、人々に安心感を与える為には…もっと積極的でなくてはいけない。
「ちょっ、イリゼ…!急に仕掛けていってるけど、何か案でも浮かんだの?」
「まあ、ね。幾ら再生能力があると言ったって、ダークメガミの人に近い外見をしていて、人と同じような挙動で動く点は変わってない…つまり、物理的な弱点や急所だってそう変わってはいない筈でしょ…ッ!」
「あぁ、つまり具体的なプランがある訳じゃないのね…ッ!」
無理矢理な突破で届くギリギリの距離から、私は精製した大剣を投擲。投げ放つ瞬間圧縮シェアエナジーの爆発も上乗せする事で威力と速度を加算し、狙う先はダークメガミの首部。狙い通り迎撃の刃は難なく斬り裂き届いたものの、ダークメガミが横に動いた事によって、大剣は首部を浅く斬っただけ。…厳密に言えば、大剣的にはかなり深く斬っているけど…ダークメガミの巨体からすれば、深い一撃には至っていない。
そこで合流してきたのはネプテューヌ。二人で迎撃の刃を斬り払いながら、私達は軽く会話を交わす。
「…けど、イリゼの言う通りよ。そうよね?ネプギア」
「え?あ、うん!確かに動きや戦い方も大きく変わってる感じはないし、活動する為に重要な部分と、無くなった場合に不都合はあっても活動そのものが出来なくなる訳じゃない部分に分かれてる点は同じな筈…!」
「だから、これまで通り重要な部分さえ潰せば……」
「潰せれば、でしょ?…迎撃能力まで再生するんじゃ、そっちを先に潰して、重い一撃を与える…っての出来ないわよ?」
インカムを介してネプギアとも話す中、待った、というように言うネプテューヌの瞳は冷静。こういう時、普段と打って変わって冷静になる、落ち着いて状況を考えてくれるのはやっぱり助かるし、ネプテューヌの指摘は至極当然のもの。これまでは迎撃の射出部位をある程度潰して、大技を当て易くした上で撃破に進んでいたんだから、これまでと同じ方法で撃破するのは無理がある。
となると、考えるべき策は二種類。一つは、これまでとは違う方法で迎撃能力を奪う作戦。もう一つは、迎撃を無視、或いは無効化して重要部位を狙う作戦。ただ、どちらにせよ言葉で言う程容易に思い付くような事じゃ……
「ネプギア、大出力のビームで焼いて再生出来ないようにしたりは出来ない?」
「ううん、駄目!多分ビームでもなんでも、そこが欠損したら…穴になったらその時点で再生しちゃうんだと思う!」
「穴……あ、それだ!」
『え?』
一度無理矢理な突進を仕掛けたのは、私の中で気合を入れ直す為。その勢いのまま致命傷を与えられれば御の字だったけど、駄目だった以上は一度下がり、しっかり策を練る方が賢明。…そう思ってネプテューヌと分かれ、距離を開けていく中、インカム越しに聞こえた二人の会話。そのやり取り…もっと言えばネプギアの返答を聞いた瞬間、私はある策を思い付き…それを二人へ端的に伝える。
「それは…また、凄く単純な策ね」
「けど、試す価値はあるかも。駄目そうなら、すぐに止めれば良いんだし」
「えぇ、それは確かにね。…だから、乗ったわイリゼ!」
凛とした、ネプテューヌの声。続く形でネプギアも応じてくれて、早速私達は行動に移す。
「今度はわたしとお姉ちゃんで注意を引きます!」
「うん、任せたよッ!」
手始めに、私はダークメガミの迎撃が届く範囲から離脱。逆にネプギアが今いる距離から踏み込んで行って、姉妹でダークメガミの注意を引き付けてくれる。
(…さて、どうする。両手で持つ事を考えれば、あまり多くは…いや……)
離脱したところで一つ深呼吸し、思考。どう進めるかを考え…決めると同時に、準備開始。
左の掌を上に向けて、そこでシェアエナジーを圧縮した杭を精製。普段より大量に、かなりの量を込めて一本一本作っていき、これ以上は持てないなという数になったところで、それ等を纏めて左腕で、左の脇に抱えてもう一本精製。長剣と入れ替える形でその一本も持ち、両腕の杭をしっかりと持って準備完了。ネプテューヌとネプギア、それぞれに両腕の掌底部ビームを放っているダークメガミを見据え……再びその迎撃へ踏み込む。
「ネプギア!」
「うん!」
私が動いたのを見て、真正面に回り込むネプテューヌと、ビームによる薙ぎ払いをかけるネプギア。目立つよう立ち回る二人とは別方向から私は接近し、二人へ集中させている分薄くなった迎撃を回避行動だけて駆け抜け、私は後方からダークメガミの左肩部へ。そこにある射出部位からの刃を、半身になるような動きで躱し…その流れから一回転すると共に、右手の杭を投げ放つ。
「まずは、一つ目…ッ!」
遠心力を乗せて放った杭は、一直線にダークメガミの左肩部へ。狙い違わず杭は駆け抜け、射出部位の一つへ突き刺さる。
それを視認すると共に、私は左側へと急降下。左腕の杭の束から一本引き抜き、今度は左前腕部にある射出部位へと杭を飛ばす。
「よし、次……ッ!」
急降下からダークメガミの前方へ。エクスブレイドの射出と射撃で二人が上へと注意を誘導している間に私はまた二本を投げ放ち、腰部と大腿部、それぞれの射出部位の一つへ杭を叩き込んでいく。
慌てる事はしない。無駄な事のしていられない策だからこそ、一本ずつ確実に当てていく。同時に僅かな隙でネプテューヌ、ネプギアとアイコンタクトを交わし、次の誘導と攻撃へ。
「ネプギア、まだ行ける?」
「勿論!まだまだ余裕、だよッ!」
「ふふっ。そうみたい、ねッ!」
射撃でエネルギー刃を撃ち抜き、より近くへと斬り込んでいくネプギアの姿。それにネプテューヌは小さく笑い、挟撃するように迎撃を斬り払いなから突っ込んでいく。言葉の通り、二人の動きにはまだ余裕があり…声からも、私への「心配するな」という思いが感じられる。
だから私は、焦る事なく進められた。次第にダークメガミの注意は私へ向くようになっていったけど、ならばと二人は更に激しく動く事で、作戦の進行で動き易くなった事で、強引に私から注意を逸らしていく。そうして私が、ダークメガミの脇腹部分の射出部分へと杭を放った事で…残る杭は、後一本に。
(…どうする、追加で杭を精製するか…?…ううん、ここは……)
短気は損気、と残り一本の杭を右手で掴みながら一度後退をかける私。これが最後の一本だけど、用意したのはあくまで「一度に持てる分」というだけだったから、私の頭には追加の杭を作るかどうかの選択が浮かぶ。
けどすぐに、私はこれを最後にする事を選択。理由は直感。何本あればいい、という明確なラインがないからこそ、私は本能と経験が導く直感を信用する。
そして、私が最後の突撃をかけるべく、全身からの加速をかけた次の瞬間…私に迫る、ダークメガミの腕。
「しまっ…イリゼさんッ!」
開かれた手と、掌底部に輝く光。背後にいた私へ向けて振り向くというのは流石に予想外で、ネプギアも切羽詰まった声を上げる。…けど、私にはいけるという確信があった。それがあったから……にぃ、っと笑う。
「ううん…大丈夫ッ!」
このままだと光芒に頭から突っ込む形となる。その状況下で私は一切動じる事なく、両脚を前に振り出し、同時に翼を姿勢制御重視へ可変。更に振り出した足の裏に当たる形で圧縮シェアエナジーの解放を行う事により一気に私は減速し、もう一つ用意した圧縮シェアエナジーを身体の右側で解放させる事によって右へとスライド。直後、放たれた光芒が一瞬前まで私のいた場所を駆け抜け…されと紙一重で、でも完全に避けた私はスライド時の勢いを利用し横回転。完全には減速し切らなかった事で、僅かに残った力を用いて私は回転しながら腕部の外側を進み……裏拳の如く、前腕部の射出部位へと最後の一本を突き立てる。
「…さぁ、準備は整った。仕留めさせてもらうぞ、ダークメガミッ!」
そう高らかに叫んだ私は、翼を最初の形態に戻しつつ腕部を蹴ってダークメガミの正面へ。同時に、私の声に応じる形でネプテューヌは巨大なシェアエナジーの剣を作り出し、ネプギアはM.P.B.Lにシェアエナジーを収束させる。当然、ダークメガミは撃ち落とそうとエネルギー刃による攻撃を続け……けれどその密度は、一目瞭然な程に低いものへと変わっていた。……当然だ。私がそうさせたんだから。
迎撃の射出部位をただ破壊するのではなく、杭を刺したままにする事で、再生出来ない状態にする。それこそが、私の考えた策。何とも単純な…けどこうして、有効性が証明された作戦。
この為に、普段よりずっと霧散までの時間が長くなるように、私は多くのシェアエナジーを杭に込めた。ただ刺してるだけな以上、抜かれれば再生もされてしまうけど…ダークメガミは巨大だからこそ、戦いながら杭を…ダークメガミからすれば棒手裏剣程度の物を一本一本引き抜くのは困難となる。…長所と短所は表裏一体。巨体故に厄介な部分もあれば…巨体故に有効な手もあるという事。
「いくわよネプギアッ!はぁああああぁぁッ!」
「マルチプル…ビームランチャーッ!」
空で輝く二つの光。高密度の光芒が真っ直ぐに駆け抜け、巨大なシェアエナジーの剣が振り抜かれる。
迎撃のエネルギー刃を吹き飛ばしながら駆け抜けたマルチプルビームランチャーはダークメガミの頭部の大部分を吹き飛ばし、エネルギー刃を避け切ると共に振り抜かれた32式エクスブレイドはダークメガミの両脚部、両の大腿部前面を一太刀で以って立て続けに斬り裂く。
頭部を吹き飛ばされ、両脚部を斬り裂かれた事で大きく姿勢を崩すダークメガミ。そこへ突進をかける私は周囲に剣を、通常とは違う仕様で形成した剣を精製し、胸部へ向けてそれ等を射出。狙う、というよりもう闇雲に放っているだけのような残る迎撃を全て避け、右手を後ろへ引き付ける。その掌に、強くシェアエナジーを圧縮させて。
「空虚なる偽神よ、沈み光に還るが良いッ!天舞捌式・彼岸花ッ!」
突き刺さり、陣を作るシェアエナジーの剣。その中央、中心点へと私は右手を、掌底を放ち…剣群の解放に合わせ、掌底先のシェアエナジーを解放。不可視の爆発、その全てが同時にダークメガミの胸部で起こり…陣の内側に、ぶつかり合う爆発が生み出すより大きな力が、力の猛威が暴れ狂う。
それを押し留める為の、上側への拡散を封じる為の、右手の掌底。全力で、力の限りで掛かる負荷を押し返し……押し留め切った末、上への道を塞がれた力は、その全てが残る唯一の道へと、ダークメガミの胸部へと襲いかかり喰らい付く。爆ぜ、穿ち、吹き飛ばし……装甲諸共その内側を、抉り取る。
「……っ…!」
多大な負荷で、腕に走る痛み。かなりの力技な以上、これは避けられない負荷で…けれどその分、効果は絶大。私がゆっくりと腕を下ろす中、動きの止まったダークメガミは落下していき…地上に墜落。その衝撃で、その巨体は更に傷付き……もう再生は、していない。ぴくりとも動かないまま、巨体な身体が消え始め…耳に届く、二人の声。
「やったわね、イリゼ」
「お疲れ、お姉ちゃん。イリゼさんも、お疲れ様です」
聞こえた声に振り向いて、私はこくりと首肯を返す。…ふぅ、ぅ…そういう作戦を選んだからとはいえ、今回の戦闘はシェアエナジーの消耗が多めだった…これは別の次元だったら、配給量の問題でもっと厳しくなってたかも…。
「…けど、まさかダークメガミが再生能力を有してくるなんてね…取り敢えず今回は、対処手段も見つかったとはいえ……」
「厄介さは、これまでより数段上だね。今回と同じ倒し方をするなら、刺したままにするものを幾つも用意しなきゃだし…再生持ちのダークメガミに慣れたとしても、一体辺りにかかる時間はあまり短縮されそうにないのもネック、かな…」
考え込むような表情を見せるネプテューヌに、私はもう一度首肯する。後者は大きな問題だし、前者もこっち側に某黄金の宝物庫的な力を持つ人がいない以上、実際に準備しようとすると中々面倒。
今回は無事倒せたし、戦いそのものはギリギリの勝利だった…って訳でもない。けど、言ってしまえばダークメガミは量産型。今回も所詮一体を倒したに過ぎないし、何体も同時に相手にしなきゃいけない事だってこれまでにあった。…つまり、もし今後これまでと同じように、再生能力持ちのダークメガミが現れるのなら…正直、不味い。
(射出部位を潰すのは、大技を当てる為の準備。つまり、こっちは削れるなら削ってもいい訳で…なら、もっと少ない破壊数で準備を整えられるようにする?…いや、駄目だ。そういう考え方は、焦ってのミスに繋がる。だったら…そうだ、最初から軍と協力して、初っ端から戦闘艦に腕や脚を吹っ飛ばしてもらう……のは、そもそも戦闘に軍が参加出来る状況にならなきゃ叶わないんだから、それを頼りにするのは楽観的過ぎる……)
「…あー、イリゼ?わたしが言い出した事だけど…ちょっと深刻に考え過ぎ、よ」
「うぇ?あ、ひょっとぉ…!」
今後に備えて、策は練っておかないといけない。そう思って思考を巡らせていた私だけど…次の瞬間、私は頬を掴まれる。それも両頬を、一遍に。
「イリゼ、勝って兜の緒を締めよなんて言葉もあるけど、勝って早々にその顔をするんじゃ、誰かいた時不安がるわよ?」
「ひょっ、らからってひっぴゃらないれよぉぉ…!」
「だよね。再生能力のあるダークメガミとは今回初めて戦った訳ですし、これから戦う中で別の弱点が見つかったりする可能性もあるって、わたしは思います」
「ひやひょうらけどもぉ…って、ねふぎぁもとめれって…!」
むにゅむにゅと頬を弄り続けるネプテューヌ。ネプギアも何故かそっちは完全に放置していて、結構な時間弄られる私。ひ、酷い…二人共言ってる事には一理あるけど、だからってこんなやらなくても良いじゃん…!
「うぅ…まだ頬に引っ張られてる感覚が残ってる…」
「良い感触だったわよ、イリゼ」
「そんな感想要らないよ…!…まぁ、取り敢えずは戻ろうか…」
ふっと笑うネプテューヌに私は肩を落とし、でも一先ずは思考を切り替え帰る事を選択。位置の関係もあって先にネプテューヌとネプギアが動き出し、その二人に続く形で私も動く。
オリゼの件に、くろめの件に、歪みの壁の件に、再生能力の件。ここのところ頭を悩ませるものが多くて、しかもどれも解決には難航していて、全くもって困るところ。ある程度進んでいるものもあるとはいえ、逆にこの件みたいに始まったばかりのものもあるし、全部一気に解決…とはいかずとも、一つずつ解決してほしいと私は思……
「……あれ…?」
……そう、私が思っていた時、ふっと頭に思い浮かんだ。ダークメガミを倒すという、対処面の思考ばかりが先行していて気が付かなかった、もう一つの事を。
「……?イリゼさん、どうかしました?」
「あの、さ…ダークメガミって、多分負のシェアの城から出てきたんだよね…?」
「それは、そうですね」
「ダークメガミって、多分空中艦の中には入らないよね…?」
「あー…まあ、そうね。ロボットみたいに分離とか出来ないなら、だけど」
怪訝な顔をしつつも、それぞれに頷いてくれる二人。そんな二人に向けて、私はその思い浮かんだもう一つの事を……言う。
「だったら、さ…今倒したダークメガミって、あの歪みの壁を解除しないまま、すり抜けるようにして出てきた事じゃないの……?」
今回のパロディ解説
・内紛を想定したカウンター機
機動戦士ガンダム00に登場するMSの一つ、ガンダムナドレの事。(髪の)毛のあるロボットといえば、まずこれが思い浮かびます。自分もだ、という人も多いかと思います。
・月の名前を冠した機体
コードギアスシリーズに登場するKMFの一つ(二つ)、月下(指揮官機)及び斬月の事。私の場合、ナドレの次に思い付いたのがこの機体ですね。
・某黄金の宝物庫
Fateシリーズに登場するキャラの一人、ギルガメッシュの宝具の一つ、