超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第百六十二話 確かな光明

 再生能力を持ったダークメガミの出現以降、くろめ達からの動きはない。けどこれは恐らく…いや間違いなく、また何か状況を一変させるような策の準備をしているに違いない。大きなダメージを負っている筈の、レイの回復を優先している可能性もある。

 本来ならば、今の内に攻めなきゃいけない。後手に回る側が有利な事なんて、せいぜい後手から余裕で巻き返した場合に、相手へ大きな精神的ダメージを与えられる位。だから無理や無茶に繋がらないのなら、出来る限り先手を取るべきで…けれどそれを阻むのが、歪みの壁。こちらからは手出しが(ほぼ)出来ない、絶対の防御。

 そしてその防御を突破する為の、その内側へ突入する為の可能性が、アフィ魔Xの空中艦。とはいえ空中艦も空中艦でフルステルスを搭載しているが故に、見つけるのは困難を極める。そんな歯痒い日々が、件のダークメガミ出現からも続いて……けれどそれが今日、転機を迎える。

 

「…こほん。それじゃあ、説明を始めるわね」

 

 いつものように、私達が集まったのは会議室。今日は神次元に戻っていたセイツとピーシェが説明の為に来ていて、プラネテューヌ以外の三ヶ国とも画面越しに繋がっている。

 これから話すのは、アフィ魔Xの空中艦を見つけ出す方法。説明役を務めるのはセイツだけど、何もセイツがそれを編み出した訳じゃない。そのシステムを構築したアノネデスさんという人物は、「流石にくたくただから説明は任せたわ。ゆっっくり寝るから、何かあっても呼ぶのは明後日以降にして頂戴」…と言って、セイツに説明を任せたんだとか。

 

「まず、昨日完成した空中艦探索システムだけど…有り体に言えば、これは電波じゃなくて魔力波を使った目標と探知よ」

「はいはーい!これ、わたしたちがキョーリョクしたのよ!」

「わたしもラムちゃんも、がんばった(ふんす)」

 

 説明がスタートしたところで、早速ロムちゃんとラムちゃんが胸を張る。これがネプテューヌだったら「はいはい、その話は後でね」と返されていたところだろうけど、ロムちゃんとラムちゃんの場合は皆ほっこり。ブランも「話の邪魔をしないの」と言いつつも、二人の頭を撫でていて、それに嬉しそうにする二人の姿で更にほっこり。

 

「ふふっ。ろむもらむも、最後まで張り切ってやってたもんね」

「そうでしたか…ピーシェさん、セイツさん。数時間とはいえ、そちらにお二人が行った際、見ていて下さりありがとうございます」

「あ…う、ううん。…ぴぃ的に、二人は友達だし…別に見てあげてたとか、そういう意識は……」

「…………」

「…あっ、ちょっ…何温かい目してるのせーつ…!そんな目してないで、せーつは説明してよ説明…!」

 

 ミナさんからの言葉に、少しもにょもちょとした声で答えるピーシェ。けれどセイツからの視線に気付いたピーシェは顔を赤くして、こっちを見るなとばかりに両手を振る。そしてその様子に、私達は三度ほっこりとし…それから話は元に戻る。

 

「じゃあ、戻るとして…この魔力波レーダーは探知に用いるのが魔力ってだけで、原理は普通のレーダーと変わらないものよ。だから使い方も同じだし、通常の設備をそのまま魔力波レーダーに活用出来る…らしいわ」

「そのまま…?待って下さい。そのままも何も、魔力を探知出来る設備なんて、少なくともうちにはありませんよ…?」

 

 恐らくは渡されたのであろう資料を片手に話すセイツの説明が進んだところで、質問と共にネプギアが手を挙げる。

 確かにその通り。魔法国家であるルウィーや、魔法を技術として軍事に取り入れているリーンボックスはともかくとして、プラネテューヌやラステイションにそういう設備があるという話は聞いた事がない。…けど、セイツの表情を見る限り、それは十分分かってる様子。

 

「安心して、ネプギア。確かに飛ばすのは魔力だけど、それを機械で受信出来るようにするのよ。…と、いうよりレーダーで受信出来るような魔力波を放つ…というべきかしら?」

 

 そう言って、セイツは視線を画面越しのルウィー組へ。それを受けたルウィー組の一人、ブランは無言でこくりと頷く。

 

「作られたプログラムに合わせて調整されたレーダー、それで捉える事の出来る術式の魔力波よ。術式構築にはわたしも関わってるから、間違いないわ」

「科学と魔法の連携技術でしたら、リーンボックスも大いに協力出来ましたのに…っと、失礼。話を進めて下さいな」

「えぇ。だからアノネデスの作ったプログラムと、レーダーの調整、それに魔力波を放つ魔法使い…これが揃えば、各国のレーダー施設や艦船での探索が可能になる筈よ」

 

 探索が可能になる。それが明言された瞬間、ふっ…と雰囲気が引き締まる。…当然だ。現状打つ手なしで、手をこまねいているしかなかった歪みの壁突破への道が、遂に見えてきたようなものなんだから。

 

「とはいえ、制約もあるわ。作ってもらった術式は急造のものだから並みの魔法使いには使えないらしいし、広範囲へ継続的に魔力波を放つとなれば、魔法使いの負担も大きくなるから、条件に合うのは一流の魔法使いだけよ。レーダーは魔法使い一人一人に合わせた調整もする必要があるみたいだから、難易度や負荷を人数で補う…って事も無理らしいし」

「あ、それとあのねですが、プログラムも突貫で作ったから、プログラム方面に精通してる人をその場に用意しておいた方がいい…とも言っていたような…」

「ふむ…となると入念な準備と確認が必要になりそうね。魔法に関しては……」

「ブラン…っていうか、ルウィーに頼るしかないよね。……あ、でもネプギアはどう?出来るかな?」

「わ、わたし?…えっと…わたしはちゃんと魔法の勉強してる訳じゃないから、多分術式云々のところで躓いちゃうかな…」

 

 腕を組んで呟くノワールと、くるりとネプギアの方を向くネプテューヌ。そこでブランが、「うちからの派遣は勿論するわ。これは信次元全体で対応すべき事だもの」…と意思を伝え、探索方法に関する概要的な説明は終了。でもそのプログラムのインストール(と、安全に使用出来るかの確認)とレーダーの調整、それに魔法使いの選出と具体的な探索計画等々、実行に移す上でやらなくちゃいけない事は沢山あるから、今日から早速…とはならない。…それに……

 

「…確認なんだけど、その方法で見つけ出す場合、位置を捕捉し続けるには魔力波レーダーで探知し続ける必要がある…んだよね?」

「それは…そうね。発見した瞬間マーキング出来る訳じゃないし、何らかの方法でマーキングしたら、気付かれる可能性が大きいもの」

「なら…実行する前に、決めておかなきゃいけないよね?見つけた後、私達はどうするのかを」

 

 セイツからの回答を受けて、私は皆へ問い掛けと共に視線を送る。

 アフィ魔Xの空中艦を見つけるのは、撃破をしたいからじゃない。歪みの壁を突破する足掛かり、手段として見ているからであって、対話で協力を取り付けるか、何らかの方法で潜入して負のシェアの城へ行くのを待つか、或いは力尽くで従わせるか…どんな方法を取るにしろ、これを決めずして実行は出来ない。

 

「はっ…これはまた、会議だけで一話が終わってしまう気配……!」

「ねぷてぬ、茶化さない」

「…イリゼの言う通りですわね。魔法使いの負担を考えれば、発見後即行動に移れる状態を作るのが必須。そして負のシェアの城への突入という目的から考えれば、空中艦を大破させるような手段は取れませんわね」

 

 確かにそうだ、と思いながら私達は考える。これまでに考えていなかったのは、捕捉方法次第で出来る事も変わってくると考えていたから。例えをあげるなら、ある程度の場所は分かっても正確な位置までは分からない…という事なら、面の攻撃なり何なりで場所を特定していただろうし、そうなると即戦闘になるのは間違いないから、気付かれないように潜入…という手は難しくなる。

 そういう理由で決められてなかったし、捕捉方法がはっきりした今は、打てる手も見えてくるから私達は考え……暫しの沈黙の末、ユニがすっと手を挙げた。

 

「…あの。アタシ達で内部に突入する、というのはどうでしょう?」

「突入?…って事はまず、戦闘を…?」

「ううん。ある程度艦で近付いたところで、比較的防備の薄そうな所を狙って突入するのよ。言葉や取り引きで協力を得られるか、実力行使に出るしかないか…どっちも可能性がある以上、どっちの道もあり得る行動の方が良いと思うんです。それに場合によっては、返り討ちになった…と見せかけて、数人が潜伏したままアフィ魔Xが歪みの壁の内側に行くのを待つって事も出来ますし」

 

 訊き返したネプギアへまず回答した後、ユニは全体に向けて説明を続ける。明確な目的が決まっていない…というより、本来の目的へ向けた手段としてアフィ魔Xを見る以上は、柔軟性のあるプランの方が良いんじゃないか、と。

 

「先手を取って、一気に突入…やる事としては単純だけど、中々良さそうね。向こうはやり過ごす為に、ある程度までなら私達や艦が近付いても攻撃はしてこないでしょうし」

「ステルスを利用して接近して、一気に突入して、内側から攻略する…よし、決めた!これを逆ブリッツ作戦と呼ぼう!」

「いやネプテューヌ、その場合ステルスを使うのは攻める側…ってそうか、だから逆なんだ……」

「イリゼさん…?突っ込むところが違いますからね…?(; ̄ェ ̄)」

「あ…あはは、すみません……」

 

 逆だから間違ってないのか、と納得して私だけど、イストワールさんから呆れ混じりの指摘を受けて軽く赤面。…うん、ですよね…突っ込むべきはいきなりパロディ混じりの作戦名を付けだした事であって、その内容ではないですよね……。

 

「…とにかく、ユニの提案はどう?私はこれ、良いと思うわ」

「わたくしも良いと思いますわ。一気に艦内へ入ってしまえば、艦載機の迎撃も封じる事が出来ますしね」

 

 ノワールの問いかけにまずベールが首肯して、皆もそれに続いていく。ユニの提案は、突入後がやや漠然としてとも言えるけど…そもそも対アフィ魔Xにおけるゴール地点は複数ある…というか決まっていない訳だから、どうやったって多少は出たとこ勝負になる。なら下手にきっちり決めるよりも、このままの方が結果的には良い方に転がるかもしれない…と、私も賛成の意思を示しながら思っていた。

 

「全会一致のようだね。それじゃあ僕は、早速送られてきたプログラムを軍の方に回すとしよう。余分なものまで入っていないか確認もしないといけないしね」

「ちょっとケイ、それを二人の聞こえるところで言うんじゃないわよ…」

「あ、ううん…それはむしろ必要な事だと思う。だって作ったのあのねですだし…特にのわるの心の安全の為に、しっかり調べた方が良いよ」

「え、な、何よそれ……そう言われると、むしろ怖くなるんだけど…!?」

 

 そうして今回の話は終了。一応まだ、魔力波による探索をいつから行うかを始めとする、具体的な計画は決まっていないけど…これに関しては、レーダーの調整だったり魔法使いの選出だったりが済まなきゃ決められない事だから、それが済み次第…という事に。

 

「ねーねーおねえちゃん、これってわたしたちの力、ひつよー?」

「わたしたち、できるよ…?」

「えぇ、二人なら出来る事よ。…けど、わたし達は空中艦に突入する役目がある。だから頑張るのは、その後よ」

「お姉様。探索を行わせる部隊や艦船の数によっては、軍全体の行動計画を再編成しなくてはいけないのでは?」

「ですわね。それはわたくしから話を通しますわ」

 

 全体としての話が終わったという事で、会話は各々の国でのものに移行。すぐに接続を切らないのは、別件で何か話したい事がある人がいるかもしれないから…。

 

「セイツ、ピーシェ。二人共、ありがとね」

「あら、どうしたのイリゼ」

「この件だよ。ここまで進んだ経緯を聞いたけど…これは、二人が動いてくれてなかったら、もっと時間がかかってたか、下手すれば魔法で探す…っていう発想自体が生まれてなかったかもしれないもん」

「ふふっ。どう致しまして。…と言いたいところだけど、進捗を聞きに行ったのは単に気になったからだし、魔法に関してはわたしというよりピーシェが大元の切っ掛けなんだから、わたしに対するお礼なんていらないわ」

「や、それを言うならぴぃだって偶々言った事が切っ掛けになったってだけだし…だからぴぃも、お礼は大丈夫」

「二人共…けど、お礼の言葉位は受け取ってよ。何にせよ、私…ううん。私達は、感謝してるんだから」

 

 分かる。懸命に考えて考えて、思い付く限りの事をして、その結果行き着いた…とかならともかく、気になったから行って、偶々言った言葉が切っ掛けになったって事なら、私だって「感謝されるような事じゃ…」と思うから。

 でも、感謝の言葉にコストは要らない。だから私は、感謝を出し惜しむ必要なんてないと思う。勿論、感謝してもいないのにお礼を言うのは軽薄な行動だけど…私は二人に、感謝の気持ちを抱いている。それを伝えちゃいけない理由なんて、ないよね。

 

「…あ、そういえばこの件って、そっちのマジェコンヌも協力してくれたんだっけ?いやぁ、まさかそっちのマジェコンヌに借りが出来る日が来るなんてね…」

「あー、そういえばねぷてぬへの伝言があるんだった」

「え、伝言?」

「うん。これは貸しにしておいてやる。だから返しに来るがいい。具体的には、茄子の購入という形でな。…だって」

「ゲェーっ!やだよ、絶対やだ!っていうかなんでわたしだけ!?貸しになるのはわたし達皆でしょ!?」

 

 茄子の話を持ち出された事で途端に青い顔をするネプテューヌに、私達は揃って苦笑い。わたしだけの借りじゃないよね!?…とばかりにネプテューヌが視線を向けると、ノワールもベールもブランも瞬く間に接続を切り、真っ暗になった画面を見て固まるネプテューヌの姿に、今度は苦笑どころか声を上げて笑ってしまう。

 常日頃からよくふざけるネプテューヌだけど、狙ってないところでも笑いを生み出す事が出来るのもまたネプテューヌ。加えて今は、手をこまねいてばかりだった現状に変化が、突破の兆しが見えている。だからこその笑いって部分もあるんじゃないかと、私は思う。

 とはいえ、まだ兆しが見えただけ。上手くいくかどうかは分からないし、多くの人の協力を受けてやってるからこそ…頑張って、必ず成功させないとだよね。

 

 

 

 

「…って感じで、皆元気だぜ?こっちの環境…って言ったって、教会の中にいる事が多いけど…にも、慣れてきたみたいだし」

 

 次元越しに伝えられる、皆が元気だって報告。それを伝えてくれたのはうずめで、今はうずめとウィードくんの二人と交信中。ちっちゃいわたし達は今会議中だから、ここにいるのはそこに参加してない人達だよっ!

 

「しかし、こちらの人々は本当に大したものだね。女神の皆だけでなく、他の子達もオレ達を見ても平然としているなんて」

「あー、うん。そっちの皆は、慣れてる…って程じゃなくても、『喋るモンスター』を初めて見た訳じゃないもんね」

 

 そう言って肩を竦める(…肩?魚類に肩?ヒレを手みたいにしてる海男だけど…魚類系モンスターに肩…?…まあいいや)海男の言葉に、ちっちゃいわたし…ではなくミラテューヌが言葉を返す。あれ、なんでそこでミラテューヌ?…と思ったわたしだけど…そもそもミラテューヌは未来から来たって言ってるんだから、その辺りを知ってても当然だよね。

 

「しかし、話には聞いてたが未来のネプテューヌ…全然変わらないんだな」

「ま、女神だからね。あれあれ、ひょっとしておっきいわたしみたいなグラマーおねーさんになってるのを期待してた?んもー、男の子なんだから〜」

「…ウィード、お前……」

「ウィードくん……」

「ちょぉっ!?俺何も言ってないんですが!?」

 

 容赦ないミラテューヌの弄りに、わたしとうずめの乗っかりで、ウィードくんは大ダメージ。あ、いやでもうずめはわざとじゃないのかも。うずめって、結構純粋なところあるし。

 

「変わらないといえば、もう一人のいりっちもじゃないかな?君はのわっち達の様な、別次元の同一人物ではないんだろう?」

「あ、は、はいっ!そうでひゅ!」

『……でひゅ?』

「…ぁ、あぅぅ……」

 

 と、そこで海男が話を変えるように呼び掛けたのは、こっち側のもう一人の参加者であるオリゼ。イリゼやいーすんがいないからか、画面に映るギリギリの位置でほぼ見てるだけだったオリゼは、急に呼び掛けられたからか噛んじゃって…わたし達が目をぱちくりさせる中、オリゼの顔はかぁぁ…って真っ赤に。…こう、人の姿のオリゼって、凄く庇護欲を唆られるよね。

…あ、因みにミラテューヌもオリゼも、うずめ達とお互い会ってみたいって事で今回は参加したんだー。

 

「おっと、すまないねいり…もとい、おりっち。舌や頬の裏は噛んでいないかい?」

「おー、流石海男…そういう方面でのフォローをすぐ出来る辺り、紳士感溢れてるよね…」

「はは、これはオレが驚かせてしまったようなものなんだ。だから、気にかけるのは当然の事さ」

「…ほんと、見習いたくなる位の紳士だな……」

 

 そこから海男が口にした発言に、ミラテューヌもウィードくんも感嘆混じりの声を漏らす。でもそう言われても、海男は胸を張ったり変に卑下したりもせず、ただ軽く微笑んでるだけで……見た目がコミカル過ぎるせいでキワモノっぽく見えるけど、精神面はほぼ完璧だよね、海男って…。

 

「…まあ、何にせよ空中艦の発見が上手くいって、そこから突入に繋がれば、いよいよ…ってか、今度こそ決戦になる訳だよな。この次元中どころか別次元も、過去や未来まで巻き込んだ戦いが、終わるかもしれねぇって訳だ」

「…そうだね。その為に、皆頑張っているんだし」

「あぁ。だからよ、その時は俺も行くって伝えてくれ。ねぷっち達には借りを作ってばっかりだし、どこでどう道を踏み外したのか知らねぇが、敵には俺じゃない俺もいるみたいだし…そんな中で傍観なんて、俺には出来ねぇよ」

 

 上手くいけば…だけど、確かにそれはそう。そこを目指して、平和を取り戻す為に、皆はここまで戦ってきたんだから。

 そしてその時は、自分も力になりたいとうずめは言う。借りを作りっぱなしだから、もう一人の自分が関わってるから…どっちもうずめらしい理由で、多分それを聞いたら皆、駄目だなんて言わないと思う。皆はすっごく強いけど、向こうにはダークメガミだっているし、何よりレイもいるんだから。それにうずめは、実際に一緒に戦ってきた仲間でもあるし。

 

(……あれ…?…ダーク、メガミ……)

 

 そこでふと、ある事を思い出すわたし。思い出したのは…負のシェアの城の中で、ダークメガミに取り込まれそうになった事。

 正直あれは恐ろしかったし、懐かしい…なんて思う事じゃない。でもどうしてか、思い出した。あの時、ダークメガミはマジェコンヌが融合したやつと同じ、不完全って感じの見た目をしていて、でもあのダークメガミが特別製、みたいな事をくろめは言っていなくて……

 

「おっきいわたしー?おーい、どしたのー?」

「へ…?あ…ごめんごめん。ちょっと思考がフライアウェイしちゃってて」

「そっかー。じゃ、取り敢えず話す事、話したい事は終わった訳だけど…どうする?」

「…え、今のルー語っぽいのはスルーなのか…?そしてよく、タイムラグなしで理解出来たなねぷっち…」

「…うずめ、偶々だろうけど、うずめの今の発言もちょっとルー語っぽくなってるぞ……」

 

 こっちを見て訊いてくるミラテューヌの言葉に、わたしはううんと首を横に振る。勿論今考えてたのは、どうでも良い事じゃないけど…わたし自身もまだ纏まってない、もやーっとしてる事を話しても、上手く伝わらないだろうしね。

 

「じゃ、さっき言った事頼むぜ。…って言っても、ねぷっち達には次の時に改めて言うつもりだけどな」

「うん、任せて!うずめの言葉…この女神の命に代えても、伝えるから…っ!」

「いや、そんな決死の覚悟が必要になる事じゃねぇって…おりっちも、また今度話そうぜ?そっちが嫌じゃなきゃ、だけどさ」

「あ…は、はい。…そ、その…あの…が、頑張り…ます…っ!」

「ははは、ほんと無理しないようにな。…俺からも、改めて頼む。くろめに纏わる事で、また何かあれば教えてくれ」

 

 ぺこんっ、と頭を下げたオリゼの様子にウィードくんが肩を竦めて…その後真面目な顔で、わたし達に言った。…うずめの側にいつもいるウィードくんだからか、違う理由があるのか、それは分からないけど…表情からも声からも、それが本気の、心からの思いだって事はちゃーんと伝わっている。だからそれに、しっかりと頷いて…三人との交信は、終了した。

 

「ふー……あっ、そういえば折角だし、エビフライとか向こうの子も画面の前に呼んでもらえば良かったなぁ…。…ミラテューヌ、貴女は…っていうか、未来でも皆との交流はある?」

「え?うん、そりゃあね。騒動が済んだらそれ切りの関係なんて、寂しいでしょ?」

「だよねぇ」

 

 別に深い理由はない…っていうか、軽い気持ちではわたしは訊いて、ミラテューヌも軽い感じで答えてくれて、だよねぇってわたしが返して……それから、沈黙。…まぁ、今のはわたしの返し方にも理由があるんだけど…そうなった理由は、もう一つ。

 

「…………」

「……えー、っと…」

 

 じっ…とミラテューヌを見るオリゼと、その視線に気不味そうな顔をしているミラテューヌ。こうなっているのは、勿論浮遊大陸で話した一件が元。交信の前は、まだ「こういう事話そうね〜」…的な会話が出来てたから、誤魔化せてたんだけど…今はもう、そうもいかない。

 

(どうしよう…別にどっちも、相手を嫌ってる訳じゃないと思うけど……)

 

 これは思いの食い違いが理由になってる事だから、まあまあ仲良くしようよ、って言ったって解決しない。というかそもそも、どっちかが間違ってるって話でもないし、だからこその気不味い雰囲気。…う、うーん…何か、何かいい話は……あ、そうだ…!

 

「そ、そういえばさミラテューヌ。オリゼ、未来じゃ力を取り戻せてるんだよね?というか、どれ位で取り戻せるかって、話せたりする?」

「あ…あー、っと…それは……」

「……え?…ちょ、ま、まさか……」

 

 取り敢えず話を変えよう、と思ってオリゼも興味を持ちそうな事を訊いてみたわたしだけど、何故かミラテューヌは言い辛そう。

 まさか、オリゼは取り戻せないのか。だから言うに言えないのか。そう思ったわたしは焦って、オリゼもびくっと肩を震わせて…けどそういう訳じゃないと、ミラテューヌはぶんぶん首を振る。

 

「そ、そういう事じゃないの!そういう事じゃなくて……あの、さ。漫画とかアニメの時間遡行でもよくある事だけど…わたしが知ってる事と、今起こってる事って、全部が全部同じじゃないの」

「あ…そっか、だから……」

 

 頬を掻きながら話すミラテューヌの言葉に、わたしは納得。パラレルワールドとか、世界線とか、表現は色々あるけど大概の作品は「自分が知ってるのと同じ過去」に行ける訳じゃないし、全く同じ過去なんだとしたら、ミラテューヌは決まった行動しか絶対に取れない…っていうか、朝起きたり夜寝たりする時間がほんの一秒違うだけでも、『違う過去』になる訳なんだから…本当にその通りになるかどうかも分からない事を、軽々しく言ったりは出来ないよね。

 

「ごめん、答え辛い事訊いちゃって…オリゼもごめんね。もしかしたら分かるのかも、ってぬか喜びさせちゃったでしょ?」

「うぇ…!?い、いやっ、そんな事ない、です…っ!む、むしろ私こそ、気を遣わせちゃってごめんなさい…!め、女神なのに気を遣わせちゃって、しかもごめんなさいまで言わせて…ほ、ほんとにごめんなさい……」

「いやいやいやそれこそオリゼが謝る事じゃないよ!?だ、だよねミラテューヌ!」

「う、うん!わたしだって、不安がらせちゃってごめんね…!それとその…未来はどうだ、って事は言えないけど…わたし個人としては、大丈夫だって思うから!」

 

 絶対悪くない、何なら振り回されただけなのに、物凄く申し訳なさそうにするオリゼ。それに慌ててわたしはフォローし、わたしが振ったミラテューヌもうんうんと首肯をしてくれる。

 けど、それだけじゃなかった。ミラテューヌは、知ってる事じゃなくて、思いとしてオリゼに「大丈夫」だと言って…言葉を続ける。

 

「…オリゼ、確かに今は女神の力が使えない状態だって事だけど…気持ちは、思いは、ちゃんと今も女神でしょ?自分の信じてるものは、ちっとも揺らいでなんていないでしょ?…それは、あそこで話して伝わってきたもん。だから…きっと、大丈夫だよ」

「…………」

「…オリゼ?」

「……と、当然…です…っ!…私は、女神…です、から…!」

 

 いつものように途切れ途切れの…けれどはっきりした、女神の時と変わらない思いが伝わってくる、オリゼの言葉。それを聞いたミラテューヌは、「ね?」ってにっこり笑顔を浮かべて…オリゼも、それにちょっぴりとだけど表情を緩める。

 まさか、こういう流れになるとは思わなかった。完全に、振る話を間違えたと思った。だけど結果的には、悪くない流れになって……これなら、大丈夫かもしれない。思いは違って、それは中々相容れないものだったとしても…険悪なばかりの間にはきっとならない。…そんな気がした、わたしだった。




今回のパロディ解決

・ブリッツ
機動戦士ガンダムSEEDに登場するMSの一つ、ブリッツの事。ブリッツは自身のステルス能力で要塞へ侵入した訳ですから、逆ブリッツ作戦なのです。

・ルー語
タレント、ルー大柴こと大島亨さんの、特徴的な喋り方の事。その後のうずめの台詞は、意図しない内にルー語っぽくなってしまいました。
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