超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
空間の歪みを用いた壁を突破する為、その手段を得る為に、女神達はアフィ魔Xへの強襲作戦を実行に移した。
実働部隊として動くのは、探知と接近を行う魔法使い及び戦闘艦を除けば、女神九人へ人間のネプテューヌを加えた十人。他の面々は、ここ最近の通りに各国で待機をしており…それはオリゼやイストワール、ミラテューヌも同じ事。
「さっき連絡が来たんだよね?じゃあ今は、絶賛空中艦の攻略中ってところかな?」
「はい。現在ユニさんがステマックスと交戦中、他の皆さんはブリッジに向けて進行中の様です(・ω・`)」
何があるか分からない。何かしらの要請があるかもしれない。そう考えオリゼとイストワールがイストワールの執務室で待機している中、一度席を外していたミラテューヌが戻ってくる。
「そっか…確認なんだけど、皆はもうネクストフォームを使えて、くろめと直接会ったのも、かなり前なんだよね?」
「そうですが…それが、どうかしましたか…?(・・?)」
「んーん、確認しただけ。…ゴールドサァドの皆の事もあるし、やっぱり……」
イストワールからの返答を受けたミラテューヌは、ふっと真面目な顔になってぶつぶつと呟く。しかしそれは独り言であり、よく聞こえなかった為オリゼとイストワールは首を傾げる。
「…ま、とにかく最後まで気を抜いちゃ駄目だよ?それとアフィモウジャスのマントは絶対真っ先に壊す事!じゃないともう一人のわたし達が、皆揃いも揃って賑やかしにしかならなくなるからね!」
「み、ミラテューヌさん…それはまた、独特というか反応に困るアドバイスですね……」
「な、なんでそれを…行く前、に…い、言わなかったんですか…?」
「ふっ、それはね…単に言えるシーンがなかったからだよ!」
自信満々に言い切るミラテューヌだが、そのどう考えても自信満々で言うような事ではない内容に、イストワールは呆れたような表情を浮かべる。オリゼもその発言にはぽかんとしており…当のミラテューヌは、満足そうな顔をしていた。
「ま、まぁそれはともかく、油断に関しては大丈夫だと思いますよ。結果的にとはいえ、どちらも一度優勢な状態から取り逃がしている訳ですし(´-ω-`)」
「そ、そうですね。ネプテューヌさん、達は…私が認めた、女神…です。その、皆さんが…ろ、ロボット相手に、遅れを取るなんて……」
「…オリゼ?」
「…い、イリゼ、も…皆、女神の務めを…果たして、いるのに…み、認めた、私が…こうして今日も、待っているだけ…なんて…ぐすっ……」
「ええぇ!?今の流れでそうなる!?」
気を取り直すように、話を戻したイストワール。彼女の言葉にオリゼも頷いていたが、そこから急転するオリゼの精神状態。思いもしなかった方向から落ち込むオリゼにイストワールもミラテューヌも仰天するが、それより今は、と泣きそうなオリゼを励ましていく。
待っているだけ…そう評したオリゼではあるが、別段何もしていない訳ではない。想定外の事態に備えて待機するというのも作戦行動においては必要な事であり、加えてセイツは毎日の様に教会の職員の手伝いやクエストなどをして人助けを、今の自分に出来る事を行っている。だが、オリゼは女神であり、これまではその力を以って今現在とは比べ物にならない程の事を行ってきたからこそ、今の自分が歯痒く、そして情けなく感じていた。
本来の自分なら、在るべき姿の自分であれば…そんな思いが、オリゼの心の中を渦巻く。しかしタチの悪い事に、知識や思考力は成熟している一方、精神だけが幼いままなのが人の姿の状態であるオリゼ。心は本来の自分ならと思う一方、頭はこうなってしまったのも自分の判断ミスであるのだと理解しているが為に、その理解が更なる自責の念を引き出し、負のスパイラルを生み出した結果が、今の泣きそうなオリゼなのだ。
「だ、大丈夫です!大丈夫ですよ、イリゼ様…!今は少し、身体を休めているだけ…あれだけの事をしたのですから、休息の時間があっても何もおかしな事はありません…!(>人<;)」
「そ、そうそう!それにほら、オリゼが自分を悪く言ったら、皆も、オリゼを信仰してくれてる人も、悲しい気持ちになるんじゃないかなっ!」
「…ぅ…イストワール…ミラ、テューヌさん…そ、そう…です、よね…人を、悲しませるなんて…そ、それこそ、女神のする事じゃ…ありま、せんっ……」
あわあわと二人がオリゼを励ましにかかると、その中の一言…人に纏わる言及を耳にした事で、オリゼはきゅっと両手を握り、気持ちを持ち直す。
女神の姿に戻る事が出来なくとも、その心は、本質は変わる事なく今も女神。人を思い、人に尽くす事こそが彼女の本質であるからこそ、人の事を思えばすぐに気持ちを持ち直す事が出来…幼い精神性は、ショックを受け易い一方、立ち直りも案外早いという側面を持つのである。
「……でも…」
『……?』
「…それ、でも…やっぱり…い、今のままは…嫌、なんです…」
元気を出してくれた事で、ほっとするイストワールとミラテューヌの二人。しかし、それからオリゼはぽつりと…それでも、と呟く。
それは、それが、オリゼの在り方。女神として、人の為を思い続けるのが、オリゼという女神。その言葉に、イストワールとミラテューヌは…原初の女神に生み出され、女神を支え続けてきたイストワールと、同じ女神…即ち同じ、人の思いから生まれた存在であるミラテューヌは、程度の差こそあれどちらもその思いがよく分かるからこそ…何も言わずに、ただ見つめていた。
*
格納庫に響くのは、幾つもの発砲音と金属音。高速で駆け巡るのは、アタシとステマックス。
「そこッ!」
「まだ、まだ…ッ!」
飛ぶんじゃなくて、走り高跳びの様にコンテナを跳び越えたアタシは、その裏のステマックスへと銃口を向けてトリガーを引く。
右手に握ったサブマシンガンからの射撃を、ステマックスはバックステップで回避。尚且つ反撃として大手裏剣を放ってくるけど、それをアタシは蹴り上げる事で弾き返す。
「くっ、まさか蹴りで対処するとは…某無限の正義を相手にしている気分で御座るな…!」
「そんな事言ってる余裕が、あるのかしらッ!」
両手にサブマシンガンを持ち、それを放ちながらアタシは積極的に距離を詰める。
本来それは、後衛でありガンナーたるアタシには合わない行動。けれどそれを奇策ではなく、能動的な戦術の一つとして実現させているのが、アタシのビヨンドフォームの力の一つで、実際ビヨンドフォームのアタシの接近戦能力は、完全な正気じゃなかったとはいえ、女神の姿のお姉ちゃんにも通用している。全ての面で上回れたとか、そういう事じゃないけど…まともな接近戦が出来た事は、紛れもない事実。
近距離でも力を発揮出来る、というのがこの力の強みで…だけど、それだけじゃない。
「……ッ!今で御座……何ッ!?」
攻めるアタシとは逆に、下がっていくステマックス。でもある瞬間、ステマックスは踏ん張るようにして一気に後ろへの動きを止めて、刀を振るってくる。
それは、接近するアタシへ向けたカウンター。アタシが接近戦の距離まで踏み込んでくる事を見越して、引き付けた上での進路上へ置くような一撃。
だけどアタシには、分かっていた。具体的な行動までは分からなくても、カウンターの可能性は浮かんでいた。だから、アタシは刃の当たる寸前で上に跳び…右手のサブマシンガンをその場で手放す。左手のサブマシンガンを上から放つ事で回避を引き出し、その先の地点へ右手で抜いたショットガンを撃ち込む。
「まだ、終わりじゃないわよッ!」
拡散する弾丸を避ける為に、ステマックスは大きく跳んだ。けど、無理に跳べば当然姿勢も崩れる訳で、そこへ今度こそアタシは接近。サブマシンガンもショットガンも手放して、手首から跳ね上げる形で二丁のハンドガンを構えて、至近距離から射撃をかける。
「サブマシンガン、ショットガンと来て、次はガン=カタで御座るか…!」
「だとしても、完全な我流だけど、ねッ!」
近距離射撃と共に、プロセッサのパーツも用いて打撃も仕掛ける。反撃を許さない為に、途切れさせる事なく攻撃を続ける。これはX.M.B.みたいな大物じゃなく、ハンドガンとプロセッサ自体を用いた近接戦だからこそ出来る、限界まで攻撃と攻撃の隙間を減らした連撃。
ただそれでも、ここまで防御と回避に徹していたステマックスは、僅かな合間を突いて反撃してくる。放ってきたのは挿し込むような斬撃で、アタシはそれを両腕にあるパーツで防ぎ…次の攻撃が来る前に後ろへ飛ぶ。下がりながら引き撃ちをかけて、そのまま距離をとっての射撃に戻る。アタシにとっての、本来の距離に。
「真正面から戦おうとした度胸と心意気は買うわ!だけど、少しでも長く足止めしたかったのなら…忍者らしく戦うべきだったわね、ステマックス!」
連射で牽制しながら、まず左手の火器をサブマシンガンに、続けて右手の火器をビームライフルに持ち帰る。高い連射性を持つサブマシンガンで防御を引き出し、一発一発が十分な威力を有するビームライフルでその防御諸共倒す事を狙う。
距離を自在に、相手や状況に合わせて柔軟且つ迅速に変えられる事もまた、今のアタシの強み。遠近どっちにも対応出来るって意味では、ネプギアもそうだけど…一つの武器で遠近両方に対応させてるネプギアよりも、今のアタシの方が手数も対応力も数段上。勿論、ビットを装備しているビヨンドフォームのネプギアの場合はまた別だけど…って、それは今は関係ないわね…!
(けど、油断はしない…少しでも早くお姉ちゃん達に合流する為にも、最後まで全力を尽くす…!)
ステマックスは短距離のステップを繰り返す事で避け、避け切れない分は大手裏剣を盾の様に使って、アタシの射撃を凌ぐ。だからアタシもトリガーを引きながら飛び回り、射撃の方向を変え続ける。
このまま撃ち続けて、ステマックスが対応し切れなくなるのを待つか。それともタイミングを見極め、そのタイミングで距離や火器を変える事で、対応を失敗させて射撃を通すか。けど今のステマックスの強い意思を考えれば、積極的に勝ちを狙う後者の方が……そう、思った時だった。
「…確かに、自ら忍ぶ事を放棄しておきながら、少しでも長く足止めをというのは、虫の良い話だったかもしれないで御座るな……されどッ!」
「な……っ!?」
サブマシンガンの連射を防ぎながら、不意にステマックスが発した言葉。さっきのアタシの言葉を認めるようなその発言には、何かを感じさせる響きがあって……次の瞬間、ステマックスはアタシの射線へ何かを放る。
一体何を放ったのか。それをアタシが確認するより早く、弾丸の一発がそれに当たり…直後、爆発。爆炎が広がり、ステマックスの姿が見えなくなる。
「……っ!やられた…!」
恐らくそれは、手投げの爆弾か爆薬。ステマックスが狙ったのは、その爆炎を利用した目眩し。至近距離で爆発すれば、自分もダメージを負うかもしれないのに、煙玉みたいな物を使わなかったのは(持ってなかった可能性を除けば)、多分射撃を受けている最中に使っても、煙が広がる前に連射である程度は散らされると踏んだから。…けど、それにしたって無茶をする。前も一人で乗り込んできたし、人見知りの癖に覚悟あり過ぎでしょ……。
…なんて事を考えながら、アタシは着地し、爆発後の煙が晴れるのを待つ。強引に晴れさせる事も出来なくはないけど…それは罠に自分から飛び込むようなもの。仮に罠がなかったとしても、地の利は向こうにある以上、警戒しておくに越した事はない。
(可能性としては、今の内にどこかのコンテナ裏に隠れてるか、コンテナはコンテナでも、アタシが煙を気にしている隙に横や後ろのコンテナにまで回り込んでるか、それとも……)
段々と晴れていく煙。ステマックスの居場所、次にステマックスがしてきそうな行動、その両方を予想して、神経を研ぎ澄ます。
前か、横か、後ろか。距離を詰めてくるか、遠隔攻撃を仕掛けてくるか、更に撹乱しようとしてくるか。思い付く限りの可能性を考える中で、煙は薄れ、その中に影が浮かんで……
「──一つ、教えておくで御座る。案外忍者は、隠れ潜んだりはしないので御座るよッ!」
(……!?アンタ…!)
薄れた煙を完全に払うようにして、影は…ステマックスは、突っ込んできた。それも、逃げも隠れもせず…真正面から。
アタシから見て前にいる可能性も、考えていた。けどそれは、何かしらの遮蔽物を隔てた上での可能性であって、まさかこんな真っ向からの攻撃を仕掛けてくるなんて思わなかった。だから思わず反応が遅れ、アタシはステマックスに迫られる。
「……っ…そりゃ、創作の世界の話でしょうが…ッ!」
「かもしれないで御座るな!しかし、ならばユニ殿は、拙者以外に実際の忍者……」
「えぇ、知ってるわよ実際の忍者…!仲間にいるんだからね…ッ!」
距離を詰められたアタシは何とか一歩下がって、ライフルもサブマシンガンも手放し、手首のハンドガンを跳ね上げる。その流れのまま両腕を交差させ、何とか刀の一撃を防ぐ。
その最中、ステマックスから投げ掛けられた言葉にアタシば返す。ステマックス自身、言ってる途中に気が付いたのか、問いは途中で止まっていた。
(出し惜しみはしない。けど、無理に無茶をする必要もない…ッ!)
攻撃を放ったステマックスの身体…装甲には、ダメージの痕が残っている。それは重傷じゃないにしても、さっきの爆発を多少なりとも受けてるって事。そんな選択をし、その上で変わる事なく果敢に攻めてくる相手なら…やっぱり、油断ならない。
前腕部に付けたままの大手裏剣を振るってきたステマックスに対し、アタシは敢えて刀からの圧力に負けたように倒れ込み、大手裏剣の刃を避けつつ素早く後転。ステマックスの次の攻撃が届く前に、距離を取る事を最優先する。近距離戦も出来るって言ったって、アタシの本分は遠距離戦で、近距離における知識や経験のアドバンテージは、ステマックスにある筈だから。勢いで押せる攻勢時ならともかく、守勢時に近接戦へ固執したら…逆転されかねない。
「負けないで御座るよ…勝てずとも、最後の一瞬まで、負けんで御座る…ッ!」
「悪いけど、アタシだって…意思の部分でだって、負けるつもりはないのよ…ッ!」
投げ放たれた苦無を撃ち落として、左手ハンドガンのグリップを離すと同時に戻ってきたサブマシンガンを掴んで、近付くステマックスへフルオートでの射撃をかける。そこからステマックスは弧を描くように、斜め前へ走る事で回り込もうとし、アタシは離していない右手のハンドガンで、回り込もうとする先を偏差射撃で狙い撃つ。
ステマックスは引かない。大きく離れて、物陰に隠れて立て直す…そんな事はもう考えていないとばかりに、刀と大手裏剣を駆使してアタシへ肉薄しようとしてくる。ヤケクソか、狙いがあっての事なのか…でもどっちだとしても、アタシがやる事は一つ。ステマックスがその気なら…アタシは絶対に、近付けさせない…!
「ぬ…ぉぉぉぉおおおおおおッ!」
ここまでの覚悟となると、ハンドガンの一発程度じゃ止まらないかもしれない。そう感じたアタシは敢えて、右手の射撃を僅かに外し…引き付けた上で、ステマックスが踏み込もうとした直後にアタシも跳躍。後ろに大きく跳んで、縮んだ距離のリセットを図る。
対するステマックスは、アタシが下がったからか、前に、上に跳ぶ。飛べないステマックスは撃たれても回避が出来ない…それを分かっているからか、既に大手裏剣を盾の様に構えてる。
確かにあの大手裏剣は、盾としても十分機能する位に頑丈。けど…ステマックスが跳んでいて、且つ防御をする気なら…グレネードが使える。ここまでは、出来る限り艦の被害を減らす為に使っていなかったけど、今なら気にせず使う事が出来る。そう判断したアタシは、右手をグレネードランチャーが格納されているパーツに伸ばし…次の瞬間、ステマックスは防御を解く。回避出来ない状況の中で…防御すらも、放棄する。
「…ところで、ユニ殿。この格納庫…少しばかり、暗くなったと思わないで御座るか?」
「…え?何を言って……」
「隙有りッ!忍法、影縫いッ!」
「……!」
まるで笠を外し、顔を見せるように大手裏剣の防御を解いたステマックス。直後、ステマックスは意味深な言葉を発し…次の瞬間、苦無を投げてくる。
しまった、今のはアタシの隙を作る言葉か。でも言われてみると確かに、少し暗くなったような…投げられた瞬間、アタシの頭にはそんな思考が走った。けど今すべきは、投げられた苦無に対処する事。けど今の段階からだと、もう狙って撃ち落とす事は出来ず…アタシは身体を逸らして回避。そこからすぐに、反撃のグレネードを放とうとして……
(…待った、影縫い…?それって…まさか……ッ!)
気付いてしまったが故の、そっちに意識が向いた結果の、一瞬の隙。その間に着地したステマックスは、刀の振り下ろしを放ってくる。それをアタシは、さっきと同じように腕のパーツで受けつつ、下がろうとして……アタシの予想が、当たってほしくない「もしかして」が、その通りだったと認識した。
──意図した通りに下がった右脚と、その場に留まっている左脚。上半身は動く。右脚も動く。だけど、左脚は…床に縫い付けられたように、動かない。
「……影縫い…そうだったわね…アンタ、影っぽいものも使えたんだったわね…!」
「ふっ…ユニ殿が爆炎と煙を見ている間に、ほんの少しだけ暗くなる煙を焚かせてもらったで御座る。どうやら、影縫い成功したのは片脚だけのようで御座るが…これでもう、距離は取れないで御座るよ?」
「ちっ…やってくれるじゃない……ッ!」
本当に忍法なのか、それとも科学技術なのか。けどどっちにしたって、左脚が碌に動かないのは事実。回避自体は成功したから、片脚だけで済んだのかもしれないけど…不味い。正直、かなり不味い。
力任せに押し返し、サブマシンガンの射撃を放つ。でもアタシは離れられないどころか、向きを変える事にも大きな制限が付いていて、ステマックスには逃げられてしまう。
(落ち着け、落ち着くのよアタシ。左脚は全く動かない?…いや違う、完全に床から離す事は出来ないけど、少し位なら動く。…『影』縫いだから、影があまり動かない範囲なら動かせるって事?…いや、とにかく…今考えるべきは、二つ……!)
両手共サブマシンガンのスタイルに切り替え、ステマックスの接近を拒絶しながら、アタシは考える。
考えるべきなのは、この状態で如何に戦うかと、影縫いの解除方法。もしこれが完全無欠の技なら、アタシ達が入ってきた時点でこれを用いた全員の足止めをしていた筈だし…そうしなかったって事は、きっとどこかに弱点がある筈…!
「こうして相手を策略に嵌める事もまた、忍者の戦法!悪く思ってくれても構わないで御座る!」
「悪く思うな、とは言わないのね…全く潔い…ッ!」
飛んでくる大手裏剣。この場から離れられないアタシは弾丸を撃ち込む事で軌道を逸らし、ステマックスへ撃ちまくる。片脚とはいえ動かないんじゃ、接近されたら致命的。何としても、接近を許す訳にはいかない。
でもそんなのステマックスだって分かってる訳で、ステマックスは距離を詰めようとする。負けないどころか、勝機の芽生えた接近戦へ持ち込もうと、格納庫内を駆け回る。
「ユニ殿!拙者は、拙者は…ユニ殿に、心から感謝しているで御座るッ!こんな拙者を気にかけてくれたユニ殿を、尊敬しているで御座る!だからこそ、だからこそ…手は、抜かんッ!」
「手抜きなんて…許す訳が、ないでしょうがぁぁッ!」
大手裏剣、苦無、それに自分自身と、武器や技術を駆使してステマックスは接近しようとする。多方向からの同時攻撃を、アタシは格納してある武器の大半を展開し、一斉射撃で弾幕を作り押し返す。
感謝している。尊敬している。そんな事を言い出したのは、勝機が見えたからか。勝てる訳ないと自分自身思ってる中で、それでもここまで食らい付いて、遂に勝機が見えたからこそ、感情のままの言葉が出たのか。…分からない、分からないけど……そんな言葉をぶつけられたら、何だかんだ勝ちそのものは揺るがないなんて思っていたアタシの心が、揺さぶられない訳がない。
(言ってくれるじゃないのよステマックス…!…あー、もうッ…負けたくないって思っちゃったじゃない!勝てるって最初から思ってた筈なのに、今アタシは本気で『負けるかも』って思っちゃったじゃないのよ…ッ!)
悔しい。腹立たしい。何より、これで本当に負けるだなんて……絶対に嫌だ。何が何でも勝ってやる。辛勝じゃなくて、最終的に何とか勝ちを拾ったとかじゃなくて…確信を持って、その確信通りに勝ってやる。
「安心召されよッ!手を抜かないというのは、軽んじていたという意味ではないで御座る!最後の一瞬まで、力を尽くすという意味で御座るからなッ!」
「アタシだって…軽んじちゃ、いないわよッ!」
燃え上がるアタシの闘志。遠くからちまちま大手裏剣で攻撃…なんてせず、接近を続けようとするステマックスを見て、更に闘志は熱くなる。熱くなって……直後に、気が付く。
どうして、ステマックスはこんなにも接近しようとしている?確かに今は、接近戦で勝ち目がある状態だけど…そもそもの目的は時間稼ぎ。そしてアタシから移動能力を奪った以上、無理に攻める必要はない。それこそ、落ち着いて考える余裕を与えない程度に、無難な遠隔攻撃を続ける方が安全な筈。
負けないじゃなくて、勝ちたいと思ったから?勝てるかもしれないから?だから、堅実さよりも優先している?…それは、あるかもしれない。無難な遠隔攻撃っていう、ある意味逃げの一手を選ぶ事で、気持ち的に負けて、アタシに状況を覆される…そういう展開を避ける為、って可能性もあるとは思う。…けど、そうじゃないとしたら?このままでも目的を果たせるだろうけど、敢えて攻めるじゃなくて……急いでカタをつけなきゃいけない程、
(…あぁ、そっか……)
撃つ場所を変えられない以上、高い連射性を持つ武器じゃなきゃどうやったって対抗出来ない。だからそのままアタシは両手にサブマシンガンを持ち、乱れ撃ちを続ける。それだって、ステマックスの動きを捉え切れてはいないけど…当たらなくたって、意味はある。
アタシはずっと狙っている。チャンスを…この勝負に決着を付けるべき瞬間を。
「ふんっ…ちょっと悔しいけど、ステマックス…アンタは、アタシが思っていた以上に強いわ。それに…ほんと、男気あるじゃない!」
「ユニ殿にそう言ってもらえるのは、本当に嬉しいで御座る。されどそれでも、拙者は……」
「当然よ!もしちょっとでも手を抜いてみなさい。その時アタシは…アンタに、失望するわ!」
「…本当に…全力でいくしか、全身全霊をぶつけるしかないで御座るなぁ!ユニ殿ッ!」
正面からの弾丸を、刀で斬り払うステマックス。そしてステマックスは、アタシの言葉に感化されたように…アタシの本心へ応えるように、見栄を張る。構えて、見据えて……真っ直ぐに突っ込んでくる。
これで決めると言っているかのような、乾坤一擲の意思が見て取れる、真正面からの突進。迎撃する為のアタシの射撃を捌き、最小限の動きで避けて、ステマックスは攻めてくる。多少のダメージは構わないとばかりに、何度弾丸が装甲を掠めても止まらず、アタシへの一撃だけを狙い続ける。
だからアタシも、最後まで撃った。撃って、撃って、ステマックスを止める為に、勝つ為に撃ち続けて…それでもステマックスは、止まらなかった。アタシが撃って、ステマックスが駆けて、その末に止まる事なく、ステマックスは刀がアタシに届く距離まで接近して…もうこうなったら、きっと弾が当たっても止まらない。そこまでの距離に来たから、射撃と接近という勝負において、ステマックスの勝利が確定したから……アタシは、左腕のプロセッサを全て解除する。プロセッサという形から、元のシェアエナジーの状態に戻す。──それによって、周囲に光を放ちながら。
「……──ッ!!」
アタシの手から放たれる、近くで見れば間違いなく眩い光。目が眩んだかどうかは分からない。でもアタシが左腕のプロセッサを解除した瞬間、光が放たれた瞬間、ステマックスは愕然としたように一瞬動きが鈍くなり……その隙に、アタシは背後へ回り込んだ。右脚と、自由に動くようになった左脚で、ステマックスの背後へと回り込み…右手で引き抜いたビームライフルの銃口を、背中に当てる。
「ばーん」
「……っ!」
「…なんて、ね。……これで王手よ、ステマックス」
ちょっとふざけて、からかうように擬音を一つ。それに肩を震わせたステマックスを見て、ちょっぴり笑って…それから、アタシは言う。これで勝負は、終わりだと。
認めるか、それとも悪足掻きをしてくるか。後者の可能性も考えて、あくまでアタシは本気の警戒を続ける中…ステマックスは、膝を突いた。降参だ、と言うように両手をゆっくりあげながら。
「…やっぱり、女神は…ユニ殿は、強いで御座るなぁ。はは…紛れもなく、完敗で御座る」
「ステマックスこそ、ほんとにやるじゃない。アタシに、女神に本気を出させた。この時点で、幾らでも胸を張れる事よ?」
「いやいや、本気と言ってもユニ殿は無傷。差は歴然で御座るよ。…にしても、初見で影縫いを見破られるとは……」
「まぁ、ね。『影』縫いなんだから、光に弱いのは当然の事でしょ?」
「…正確には、もっと複雑な術なので御座るが…その通り、ユニ殿が行ったのは有効な手段で御座る。それも含め…負けてしまったで、御座るなぁ…」
もう戦意はない、という事でアタシもライフルを下ろすと、ステマックスは振り向きながら腰を降ろして、格納庫の床に座り込む。悔しそうな…でも満足したようにも聞こえる、声を出して。
悔しさと、満足。…これは、両立するものだと思う。全力を尽くせたのなら、勝てないと思っていた相手に最後まで食らい付けたのなら、満足な気持ちも湧くと思うし…それでもやっぱり、負けたら悔しいものだから。全力を尽くした先の満足も、負ける悔しさも…アタシはよーく、知っている。
「…忍者とは、即ち影。影というのは、知られる事なく、気付かれる事なく、ひっそりと役目を果たすもの。…しかしその拙者が今は、光そのものたる女神の敵に回り、本気を引き出し大立ち回りを繰り広げた。…これは中々、快感で御座るな…ふふっ」
「なーに言ってんのよ。忍者とは即ち影って…じゃあやっぱり基本は隠れ潜むものじゃない。……ま、結構格好良かったんじゃない?アタシと戦っていた、忠義の忍者、ステマックスは」
「う……い、いい、今そういう事を言うのは止めてほしいで御座る…戦いが終わり、落ち着いてきたところで、そういう男心を翻弄するような言葉は、少しばかり刺激が……」
「ぷっ…やっぱ、そっちの方がらしいわよ、ステマックス」
折角だから、アタシも敬意を表して、これ位の言葉は送っても良いかも。…そう思って格好良い、忠義の忍者って言ったのに、当の本人…本ロボットはもう元のステマックスに戻っていたからか、途端にオドオドとし始めて…その締まらない感じに、アタシは思わず吹き出してしまう。
けど、これも含めてのステマックス。そう思ったアタシは手を差し出し、差し出されたステマックスは、一瞬固まった後アタシの手を掴んで…握手をするようにステマックスが立ち上がった事で、この戦いは終了した。アタシとステマックスの……ステマックスが、志と信念を貫く為の戦いが。
今回のパロディ解説
・某無限の正義
機動戦士ガンダムSEED destinyに登場するMSの一つ、インフィニットジャスティスの事。その場合、蹴り返すのは手裏剣ではなくビームブーメランですけどね。
・ガン=カタ
リベリオンという映画に登場する、銃を用いた近接格闘術及び、それをモチーフにした同様の格闘術の事。作中で言った通り、ユニは別に狙ってやっている訳ではないです。
・「〜〜影というのは〜〜快感で御座るな〜〜」
ゼルダの伝説 4つの剣+の漫画版に登場する、シャドウリンクの台詞の一つのパロディ。…別にこの後、ステマックスが死んだりはしませんよ?見ての通り、元気です。