超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第百六十六話 貫き切った意地

 格納庫での、ステマックスとの戦いをユニに任せ、私達は別ルートでブリッジへ向かう事となった。ユニなら大丈夫だって信じて、私達の目的を果たす為に。

 ステマックスは、足止めの為に現れた。という事は、この艦にアフィモウジャスもいる可能性が高い。それだけだと、断定には程遠いけど…少なくとも、実は二隻のどちらにもおらず、別の場所にいる…という線はなくなった筈。私達を騙す為に、わざとそういう発言をしたというのは…多分、ないと思う。根拠はないけど…そんな気がする。

 だから私達は、ブリッジへと向かう。アフィモウジャスを見つけ、空間の歪みを突破する方法を得る為に。

 

「ここを左です!」

 

 先頭を飛ぶのは、変わらずのネプギア。全員空中艦のデータは確認しているけど、一番ばっちり覚えているのは間違いなくネプギアだと思う。何せ私達と違って、ネプギアは楽しんでデータを見ていたんだから。

 

「…に、しても…さっきのステマックス以外、本当に何も邪魔がねぇな。絶対の自信があって、ブリッジかどこかで待ち構えてるって事か?」

「絶対の自信…はっ!まさか結界二十四層、魔力炉三機、猟犬代わりの悪霊、魍魎数十体、無数のトラップ、通路の一部は異界化されている…みたいな、そういうレベルの防備をブリッジ周辺に敷いてるとか…!」

「どこの魔術師よそれは…第一アフィモウジャスは魔術も魔法も使えないわよ。……多分…」

 

 ネプテューヌの方から聞こえてくる、ネプテューヌらしいふざけた発言。けれどそれは大きいネプテューヌの発言であって、ネプテューヌの発言ではない。…ネプテューヌである事には変わりないけど。

 それに対して、ノワールが突っ込む…けど、断言を避けた事により、その返しはふわっとしたものに。…とはいえ実際、アフィモウジャスが絶対魔法を使えないとは限らない。前に戦った時以上の人数で、ネプテューヌ達は新たな力も得ている…普通に考えれば圧倒的有利な状況ではあるけど、まだアフィモウジャスの力の全てを見られている訳じゃない以上、どんな力や隠し球があってもおかしくない、という思考は忘れちゃいけない。

 

「…その事ですけれど、アフィモウジャスはわざと…というより、邪魔をして艦内に被害が出るのを避けたいのではないかしら」

「どういう事?」

 

 そこでふと、落ち着いた声音でベールが言う。その発言にネプテューヌが返し、ベールはこくりと頷き続ける。

 

「単純な話ですわ。隔壁にしろ、迎撃設備にしろ、わたくし達に使ったところで破壊されて終わるだけ。壊され損になる事が見えている中で、あのアフィモウジャスが使おうとするかしら?」

「そうか…使っても壊されるだけ、損害が出るだけなら、アフィモウジャスはやるだけやってみる、より素通りさせる事になっても損害が出ないようにする事を選んでもおかしくないよね…」

 

 ベールの言葉で私は理解し、その問いかけに対する答えを出す。

 これまで…というか、こっちの協力者だと思っていた頃のやり取りから、アフィモウジャスがお金に貪欲である事は分かっている。そしてそれを踏まえて考えれば…十中八九、元はセブンスジーニアから買った物であろう空中艦が無駄に損傷するのを避けようとする、その為に私達を素通りさせているというのは、一理あるどころか自然な解釈とすら思える。それに…ある意味それは、合理的な判断とも言える。無駄な事はしない、無駄な損失は極力避ける。それは戦闘…いや争いにおける基本だから。

 

「…まあ、その通りなら好都合ね。素通りさせてくれるなら、こっちも消耗せずに行けるんだもの…!」

 

 素通りは向こうの損失もなくなるけど、今ネプテューヌが言った通り、こっちも戦闘行動をせずに進めるという事。邪魔をされれば、僅かでも時間や体力を消費する訳で…邪魔をしなかった事が、アフィモウジャスにとって吉と出るか凶と出るかは、これから次第。

 

「後は、真っ直ぐです!あの扉の先がブリッジです!」

「流石にあそこが開くかどうか、丁寧に立ち止まって確かめるのは馬鹿馬鹿しいわね…突破するわよ!」

 

 言うが早いかノワールは加速し、間合いへ入ると同時に連閃。三度振るわれた大剣は、閉まっていた扉を三角に斬り裂き…ノワールの膝蹴りによって、斬られた内側は穴となる。

 

「追いつめたわよ、アフィモウジャス!」

「今度は、にがさない…!」

 

 蹴り開けると同時に突っ込んだノワールに続き、自分達もとスピードを上げたロムちゃんラムちゃんが声を上げながらブリッジに飛び込む。

 三人を追う形で、私達も次々と中へ。最後に私がブリッジに入り…アフィモウジャスに、視線を向ける。

 ブリッジの中は、ある程度の広さがある。けどアフィモウジャスの事は、瞬時に分かった。大柄且つ、全身派手な姿をしたアフィモウジャスは、否が応でもすぐ目に入るから。

 

「…来たか、女神達よ」

 

 私から見てブリッジの奥。空中艦のフロントガラスから外を眺めるように、アフィモウジャスは立っていた。私達の声に、存在に呼応するように、ゆっくりとこちらへ振り向き…私達と、正対する。

 

「よく、不可視の我が艦を見つけたものじゃ。正直、撃たれた時は度肝を抜かれたわ」

「わたし達には、頼れる味方がいるのよ。だから、見つけられた」

「ほぅ…まあ、良い。今更どのようにして見つけたかなぞ、知ったところで意味がないのじゃからな」

 

 凛とした声で言葉を返すネプテューヌに、アフィモウジャスも落ち着き払った態度を見せる。

 先程のステマックスもそうだったけど、アフィモウジャスもまるで追い詰められている、という雰囲気がない。不可解な程に…それこそ何か、策があるんじゃないかと思わせる程に。

 

「逃げるでもなく、追い払おうとするでもなく、ここで待ってた訳か。そりゃ、観念するって事か?」

「ふん、まさか。…ステマックスが、従者として迎撃に出たのだ。ならば将軍たるワシは、堂々と待っているのが上に立つ者としての心意気というものだ。違うか?女神達よ」

「へぇ、伊達に将軍って呼ばれてる訳じゃないのね。私は誰よりも前で、力を示しながら戦う方が好きだけど…それもまた、上に立つ者の一つの在り方だっていうのは、認めるわ」

 

 将の心意気に触れて、従者たるステマックスも奮い立ったのか。それとも従者の覚悟を見て、将たるアフィモウジャスも従者に相応しい将であろうとしているのか。…どちらかは分からないし、どちらかとも限らない。けど…同じだ。今のアフィモウジャスも、ステマックスと同じように…一切油断がならない相手だ。

 だから、私達も手を抜かない。ちらり、と瞳を動かし目を見合わせて…対話を、始める。

 

「…アフィモウジャス。始めに言っておきますと、何もわたくし達は、貴方達を倒しに来た訳ではありませんわ」

「…で、あろうな。そのつもりなら、艦砲による一斉掃射をしておる筈じゃ」

「アフィモウジャスさん。わたし達に、協力してくれませんか?わたし達は、貴方達の協力を必要としています。協力してくれるのでしたら、わたし達も最大限の対価を用意するつもりです」

 

 最大限の対価。これは勿論、ネプギアの独断ではなく、私達が全体として決めた事。アフィ魔Xは善悪で言うなら、間違いなく悪だけど…これまで悪業をしてきたとしても、善行を…私達への協力をしてくれるなら、それ相応の対価があって然るべきだし、その決定を下せる立場に、私達はあるんだから。

 

「対価、か…その言葉が偽りではないという証拠はあるのか?」

「女神からの言葉である。それ以上の証拠が必要だろうか、アフィモウジャスよ」

「…ふっ、確かにそれはそうじゃ。だが、そんな話にワシが乗ると思うか?確かに女神の言葉は信用に値するが…それは同時に、襲撃者の言葉であり、敵の言葉でもあるのじゃからな」

 

 私の言葉に「確かにそうだ」と言いつつも、まだアフィモウジャスは乗ってこない。少なくとも、圧倒的不利を前に早々に諦めて、その最大限の対価を引き出そう…という気はないらしい。

 けど、それもまだ想定内。そう簡単に応じてくれるとは思っていなかったから…私達は、次の策に出る。

 

「やはり一筋縄ではいかないようですわね。…されど、それなら……これは、如何かしら」

「ぬ、ぬお……っ!?」

 

 流石はアフィモウジャス…というような響きを言葉に込めつつ、一歩前に出るベール。そしてベールは、くすりと笑い…ある紙を、人差し指と中指の二本で摘んで取り出す。……私達の中でも随一の豊かさを誇る、自身の胸の谷間から。

 

「あら、どこを見ているんですの?こちらですわよ?」

「は…っ!…ご、ごほん。それは…小切手か。だが、金額欄には何も書いていないではないか。今から双方納得する額を決めようという事か?」

「まさか。…アフィモウジャス、貴方の好きな数字を書くと良いですわ」

「……!」

 

 そう。ベールが出したのは、正式な小切手。それを手にベールが口にした言葉の意味は…言うまでもない。

 お金による交渉。早い話が買収。マジェコンヌさんの時も、犯罪組織の時も、くろめ達に対しても…これまでの脅威には、基本的に通用しない…通用すると思えもしなかった手段だけど、そもそも本来買収というのは、経済が存在する限り…その経済を用いた社会を利用している限りは、誰にだって多かれ少なかれ通用する方法。特にアフィモウジャスはお金への欲が強くて、こっちは…少なくとも各国の女神である皆は、それこそやろうと思えば幾らでもお金を用意出来るんだから、この手を打たない理由がない。

 とはいえ、これでもアフィモウジャスはすぐにはなびいてこない。当然だけど、まだ警戒しているのかもしれないし、迷っていて答えが出ない…という可能性もある。だから次は…私の出番。

 

「無論、この小切手は有効なものだ。罠を警戒しているのであれば、貴君が納得のいく方法をここで取り決めても良い。ここでの決定を、即正式なものとするだけの権限がある事は、貴君も分かっているだろう?」

「…本気であり、ここで決めた事を違えるつもりはない…そういう事か」

「当然だ。相手が誰であろうと、どこであろうと、自らの誇りに泥を塗るような話はしない。この心に…胸にある誇りに誓って、な」

「お、おおぉ……っ!」

 

 駆け引きはする。戦術の中で相手を嵌める事もある。けどこれは対話であり、私達は今アフィモウジャスを討つべき敵ではなく、協力者にもなり得る存在として見ている以上、姑息な嘘を吐いたりはしない。

 そして、その言葉と共に…胸に、という言葉を強調しながら、私は腕を組んだ。下から掬い上げるように腕を組み…胸を、載せる。言葉と共に、アフィモウジャスへ向けて胸を強調する。

 

「さぁ、どうしまして?」

「貴君はステマックスと共に、私達を欺き続けられただけの実力者だ。その実力に相応しい、賢明な判断を期待しよう」

「こ、これは…なんという…なんという……!」

 

 ベールもまた左腕を胸の下に回し、右腕を掴む事で、胸を載せる。私とベールはアイコンタクトを交わし、くすりと笑いながら肩を揺らし…揃って胸を弾ませる。

 何ともまぁアレな手段だけど…これも、策。公言する程金髪と巨乳が好きならば、こうしてそれも利用するまで。今はどっちも違うけど、女神化前ならベールは本当にドンピシャだし、私だって黄色に近い髪色をしているから、アフィモウジャスの好みに刺さらない筈がない。……アフィモウジャスの好みにだけじゃなく、ブランからの視線も今後ろから刺さってる気がするけど…い、今は気にしない。

 

「あぁ、勿論他に要求があるなら言って下さいな。そちらも考慮致しますわ」

「尤も、それも内容次第だけどね。…さあ、どうするアフィモウジャス」

 

 もう一度、胸を揺らす。正しさを説くでもなく、情に訴えるでもなく、欲望を刺激する。もっと要求しても良いのか、要求出来るのか…そう思わせて、暗に引き込む。

 こんな方法をとって恥ずかしくないのか。…そう言われたら、否定はし切れない。けれど女神の姿での高揚感が羞恥心を薄れさせているし、動揺する姿を見ると、少しテンションも上がる。流石に直接的な色仕掛けにまでは手を出さないつもりだけど…直接は触れず、下品さも感じさせずに如何に意思を揺さ振るのかが腕の見せどころ。

 これで折れるか、まだ折れないか、折れるにしても要求を上乗せしてくるか。薄く笑みを浮かべたまま胸の強調は続け、ベールとは別角度で見せつけ、唸るアフィモウジャスを見つめ続ける。そして……

 

「…ふ、ふふ…こんなにも美味しい話が、魅惑の提案が目の前にあるのだ、これを千載一遇の機会と言わずしてなんと言う……」

「でしたら、この話は……」

「うむ。このありがたい話……真っ向から、断らせてもらおうか」

 

──向けられた視線を、私達からの懐柔を跳ね除けるように、アフィモウジャスは言い切った。この話に、交渉による握手ではなく…あくまで敵として、矛を交える事を選ぶ。

 

「…一応、訊いても良い?この話を蹴る理由を」

「ステマックスは全力で、全霊で自分を貫こうとしているというのに、このワシがころっとなびいては将として、友として合わせる顔がないじゃろう。それに…まあ恐らく、後々ワシはこの話を受けなかった事を、惜しく思うじゃろうが…それでも男には、格好付けたい時があるものじゃ」

 

 そう言って、アフィモウジャスは大剣を構える。数は九対一。個々の戦力でも、私達の方が有利。それでもここで戦いを選ぶのは、格好付けようとするのは…決して、賢い選択じゃない。賢くはないけど……私はその選択に、その意思に、敬意を表したい。

 

「まさか、この戦力差で勝つ気じゃないでしょうね?」

「ふっ、世の中はいつ何が起こるか分からないもの。それに言うじゃろう?ピンチはチャンス、と」

「ピンチはチャンス、ね。…貴方があくまで、わたし達に勝とうと思っているなら…わたし達も、貴方を全力で倒すだけよ」

「このワシが美味い話を蹴ってまで選んだ戦いじゃ、むしろ手を抜かれては困る。…さあ、来るが良い女神達よ!アフィ魔Xの頭領、アフィモウジャス…その真価、見せてくれるッ!」

 

 ノワールとネプテューヌの言葉にそれぞれ答え、アフィモウジャスは口上を述べるが如く意気込む。

 本当に、ついさっきまで私とベールの胸をガン見していたロボットだとは思えない程の気迫。何か策があるからこれだけ自信の籠った言葉を言えるのか、意思の力だけで言ってのけているのかは、今も定かじゃないけど…これだけ圧倒的に有利なんだから、全力を出さなくても勝てる。…そう思っている人は、きっと誰もいない。

 それを示すように、ネプテューヌ達はネクストフォームを、ネプギア達はビヨンドフォームを解放。本気の姿、全力の姿をアフィモウジャスに見せ…構える。

 

「…覚悟は良いですか、アフィモウジャスさん」

「覚悟なぞ、とうに出来ておる。…どこからでも来い。来ないのならば、ワシから行くまで──」

 

 これで最後だと言うように、ネプギアが投げ掛ける。皆の新たな力を前にしても怖気付く事なく、アフィモウジャスは覇気を強める。

 もう、会話の…対話の時間は終わった。決裂した以上、力で以って目的を果たすまで。…そう、アフィモウジャスは考えていたんだろうけど……

 

「──残念。既に勝負は、終わっているわ」

「な……ッ!?」

 

……自ら動こうとした次の瞬間…否、アフィモウジャスが自分から動こうとしたその時点で、もうノワールはアフィモウジャスの後ろにいた。こちらが動かないと判断し、動こうとした時点で…ノワールは、行動を終えていた。

 速い、の領域を超えた、女神の目でもその動きを見切れない程の…文字通りの神速。その速さで以って、すれ違った後の様に背を向ける形でノワールはアフィモウジャスの背後にいて……驚きのあまり、アフィモウジャスがただ振り返ってしまった事により、本当に戦いは決着した。…その瞬間、私達が一気に肉薄し、それぞれの得物でアフィモウジャスの首を取った事で。

 

「……ッ!…くっ…陽動、だった…か……」

 

 長剣、大太刀、大槍、戦斧。四振りの刃が四方向からアフィモウジャスに間近まで迫り、更に周囲をビットが、魔法陣が包囲する。ネプギア、ロムちゃん、ラムちゃんも三方向に分かれて、それぞれビットと魔法陣を従える形でアフィモウジャスを狙える位置に立っている。

 完全な、包囲状態。更に言えば、ただ包囲しているだけじゃない。アフィモウジャスが、知っているかどうかは分からないけど…ネプテューヌ、ベール、ブランの能力で、仮にここからアフィモウジャスが反撃の一手を当てたとしても、間違いなく対応出来る。

 

「お望み通り、こちらも全身全霊で戦わせて頂きましたわ、アフィモウジャス」

「…容赦無いのぉ、お主達は…全く、これではそもそも戦いにすらなってないではないか…」

「そりゃ、多勢に無勢にも程があるからな。だが…こっちの方は、負けてなかったんじゃねぇのか?」

「ふん、慰められても居た堪れんだけじゃ。…ふー…認めるしかあるまい。この戦いは、ワシの負けじゃ。降参じゃ」

 

 ごとん、と大剣を落とし、残念そうに息を吐くアフィモウジャス。…ロボットが溜め息を吐くものかどうかはともかく…もうアフィモウジャスに、戦意はない。

 その姿を見て、皆も女神の姿に戻る。そして、視線を感じた私がちらりと後ろを見てみると…大きいネプテューヌが、「皆の者、よくやった!」…と言いそうな位のドヤ顔をしていた。…ネプテューヌ……。

 

「…さてと、それじゃあ改めて話をしましょ。アフィモウジャス、わたし達は貴方の命を取るつもりはないわ。わたし達が求めているのは、命じゃなくて協力よ」

「…協力、か。ワシ達に何を求める。それが分からねば、そもそも話になるまい」

「わたし達は、あの負のシェアの城に突入する方法が必要なんです。そして、アフィ魔Xは空間の歪みを突破する方法を持っている…又は、出入りする際空中艦が通れるように一部を解除してもらっている。…そうですよね?」

「然り。…だがそれはつまり、あやつ等を裏切れという事じゃろう?女神が、裏切りを唆すか」

 

 私達も武器を降ろし、改めて話す事を選ぶ。ネプギアが、私達の求めているものをアフィモウジャスに話し…それに対して、アフィモウジャスは答える。それは、裏切れという事か、と。

 否定は出来ない。アフィ魔Xとくろめ達がどういう関係性なのかは分からないけど、裏切り行為になる事には変わりないから。だから私達は沈黙を…沈黙という肯定を返し、アフィモウジャスも考え込むような様子を見せ……

 

「…将軍」

「……!ステマックス…」

「あ、ユニちゃん…」

「え、ユニそいつを連れてきたの?」

 

 沈黙の中、現れたのはステマックス…それに連れてきた様子のユニだった。二人が揃って現れた事で、ラムちゃんら目をぱちくりとさせ、私達も少し驚く。

 

「この様子だと…こっちも終わったみたいね。遅くなって悪かったわ」

「ううん、大丈夫!…ステマックスさんがいるって事は……」

「こっちも決着が付いて、それ以上争う理由がお互いなくなった、って訳よ」

「…無事…ではないにしろ、元気なようじゃな。…お主も負けたか、ステマックス」

「やはり負けたで御座る。完敗で御座るよ。…将軍は……」

「ワシは完敗どころか、瞬殺じゃ。それもバトルパートに入らず、イベントパートでそのまま負けた位の…な。…ステマックス…もう数人は足留めをしてほしかったぞ……」

「う…申し訳ないで御座る……」

「まあその分、良いものもばっちり見れたがな!ぐわっはっはっはっ!」

『…………』

 

 負けた事は惜しいと思いつつも、やれる事はした。後悔はない。そんな思いを共通させているような会話を交わす、アフィモウジャスとステマックスの二人。…かと思いきや、そんなちょっと清々しいやり取りの最後で、その雰囲気をぶち壊すアフィモウジャス。これには私達は勿論、ステマックスすら「えぇー……」って感じで……ブランとユニは、膝蹴りでも喰らわせそうな表情をしていた。

 

「…まあ、それはともかく、じゃ。…ネプテューヌよ」

「へっ?…あ、これはわたし…だよね?」

「うむ。今更ではあるが…感謝を伝えさせてほしい。我が友を救ってくれた事、その感謝を」

「あ……。…ううん、気にしないでよ。あの時は、まだステマックスが捕まるのは不味いな、って思ったからだし…仲間だったんだから、さ」

 

 恐ろしい視線に気付きもせず、暫くアフィモウジャスは笑っていて…それからふっと雰囲気が変わり、大きいネプテューヌの方を見た。見て、感謝を伝え…頭を、下げた。

 そのお礼に、大きいネプテューヌは笑って返す。最初、私は何の話か分からなかったけど…すぐに気が付いた。プラネテューヌのドームで、ステマックスが見つからなかった件…あれはあの時、大きいネプテューヌが脱出の手助けをしたんだって。

 

「…それに、お主にもどうやら感謝をしなくてはいけないようじゃな」

「…え、アタシ?…アタシ達に協力してほしいって、最初に持ちかけた件?」

「いいや、そうではなく……いや、これは言うのであれば、ステマックスからじゃな。尤もステマックスに、それだけの気概があるなら、じゃが」

「な……っ!?しょ、将軍!?今何故それを!?」

「…ステマックス?アタシに何か、言いたい事でもあるの?」

「あ……や、べ、別にその……」

「む?何じゃ、ないのか?ワシの勘違いか?」

「だから止めるで御座る将軍!将軍は後ろから拙者を刺すつもりで御座るか!?」

「…いや、なんだこのやり取り……」

 

 そこはかとなくからかっている雰囲気のあるアフィモウジャスに、思い切りテンパるステマックスで、確かにブランの言う通り、なんだこれ状態。一応…というかきっちりアフィ魔X側は負けているのに、余裕綽々っぷりが凄まじい。

 

「…ごほん。そろそろ話を戻させてもらうわよ。…アフィモウジャス、貴方は負けた。少なくともこれで、戦っても無駄だって事は分かった筈。だからその上で、訊くわ。さっきの話を飲んで、あくまで協力者の立場を得るか、それとも協力『させられる』立場になるか…二つに一つよ」

 

 ノワールも同じように感じていたのか、咳払いで脱線した話を途切れさせ、鋭い視線でアフィモウジャスを見やる。

 出来る事なら、前者を選んでほしい。けどその気がないなら、私達だって後者を選ぶ。アフィ魔Xは善良な組織ではなく、悪事を働いていた以上、絶対に説得か交渉で決めなきゃいけない訳じゃないんだから。

 その問いに対し、再び黙ったアフィモウジャス。けどそれは、答える気がない、という訳ではないらしく…すぐにまた、口を開く。

 

「…そうじゃな。今申した通り、お主等には恩もある。ワシ等とて別に、この次元を破壊したい訳ではない」

「…って、事は……」

「だがしかし、協力者になったとしても、無罪放免とはいかんのじゃろう?それでは困る、そんな話にほいほいと乗る訳にはいかん」

「…そうか…それは残念だ、アフィモウジャス」

 

 理解は示す。けどその上で、乗る事を否定する。それが、アフィモウジャスの答え。さっきと同じ…協力への拒絶。

 もしや、と声を上げたユニは、残念そうな表情を浮かべる。私も残念だ、と口にし…再び私達は、得物を向ける。交渉で解決出来ず、力の差を見せても尚変わらないというのなら…拘束するまで。そしてここからの問題は、如何にして突入手段を引き出すかになる。……そう、私達は思っていた。決着は一度着いたからこそ…ほんの少し、心に緩みが出来てしまっていた。

 

「むむ、これは万事休すかのぅ。…ならば最後に一つ、訊かせてもらおうか」

「なんでして?アフィモウジャス」

「お主等、勝った気でいるようじゃが……本当に何も、ワシ等に策がないと思っておるのか?」

『……──ッ!?』

 

 その瞬間、アフィモウジャスが「まだ策がある」と言わんばかりの言葉を口にした瞬間、ブリッジ内に響く警報。何をしたのかは分からない。けど警報が鳴り、ブリッジ内の各種モニターが同時に起動し……赤文字で、ある表示が表示される。──「自爆コード、起動。5:00」という、簡素な文章とカウントダウンが。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

 

『……はぁああああああああああッ!?自爆コードぉおおおおぉぉぉぉッ!?』

 

 数秒間の沈黙の後、絶叫する私達。見間違いじゃ!?見間違いなんじゃないの!?…と思ったけど、やっぱり表示されているのは自爆という言葉。それにカウントダウンは、時間が進み始めている。

 

「今じゃ!行くぞステマックス!」

「御意!」

「あ、こら!おねえちゃん、逃げちゃったよ!?」

「お、追わなきゃ…!」

「いや追ってる場合じゃねぇよ!あ、あいつ等ぁぁぁぁ…ッ!」

 

 絶叫の直後、アフィモウジャスはテンパる私達の包囲から突破。分かっていたのか、即座にステマックスもそれに続き…二人はブリッジのガラスに突進を掛け、そのまま身一つで脱出していく。

 

「じ、自爆って…流石のわたしでも、空中艦の自爆に飲み込まれたら多分死んじゃうよ!?跡形もなくなっちゃうよぉおおおお!ね、ネプギア!ネプギア止められない!?」

「あ、う、うん!…けど無理、多分無理ぃ!残り四分半位で自爆シークエンスの停止まで辿り着くのは無理だよぉ!」

「じゃあもう適当に数字打ち込むのよ!2887とかどう!?」

「お姉ちゃん!?それはむしろ、自爆システムを起動させる為のコードだよ!?」

「そ、そうだ…もしかしたら、修理された際に爆弾が取り除かれてる可能性も……」

「それは人造人間の話ですね!イリゼさんもしっかりして下さい!」

「ああぁもう離脱よ離脱!私達も逃げるしかないわ!」

 

 今まで色んな窮地を乗り越えてきた私達だけど、流れといい内容といい、今回のピンチは前代未聞過ぎて、全員で思いっ切りテンパってしまう。そうして五分という貴重な時間の内、一分弱をただわーきゃーする時間に費やしてしまい……最終的にノワールの鶴の一声で、私達も脱出を選択。アフィモウジャス達と同じようにブリッジのガラスを体当たりでぶち破り、外に出ると同時に離れていく。

 

「えぇぇっ!?み、皆今、さらっと全員で別々のガラス破って出なかった!?何その無駄な連携!?わたしも飛べたらやりたかった!」

「はっ…き、気が付いたらそうしていましたわ…というかこういう事を、昔もやった記憶が……」

「み、皆さん!さっきモニターで確認しましたが、爆風の範囲はかなり広いんです!ここじゃまだ危険なんです!」

「どんだけの爆薬を積んでるのよぉぉ…ッ!」

 

 恐らくは心からの叫びであろうユニの言葉を聞きながら、私達は飛行を続ける空中艦の側面を通って退避していく。ネプギアも正確な範囲までは見切れなかったらしいから、とにかく自爆の瞬間まで可能な限り逃げようと、私達は飛び続ける。

 

(自爆まで、恐らく後一分位…!流石にこの辺りまでくれば大丈夫だと思う……けど…!)

 

 もう、かなりの距離を取った。単に空中艦が撃沈して爆発するとかなら、まあまず巻き込まれないと思える位の距離にいる。

 でも、やられての爆発と、爆薬を用意しての自爆は別。加えて可能性の話で言えば、未知の技術を用いた自爆…って線もゼロじゃないから、最後の瞬間まで飛び続け、逃げ続ける。

 自爆に巻き込まれて女神全滅…なんてなったら、ほんとにもう洒落にならない。だから飛んで、逃げて、距離を取り続け、そして遂に五分が経ち、空中艦の自爆が……

 

『…………』

 

……自爆が…そろそろ五分は経ったと思うし、爆発が……流石に五分過ぎてる筈だし、閃光と共に空中艦が木っ端微塵に…………い、いや…うん、もうそろそろ十分位になるだろうから、どう考えたってもうカウントダウンがゼロに……

 

 

 

 

……………………あれ?

 

「……爆発、しない…わね…」

「しない、ね……」

「…というか、空中艦…消え始めてるわね……」

「消え始めてる、ね……」

 

 

「…………えっ、まさか騙された…?」

『…………』

 

 

 

 

 

 

『……あ…アフィモウジャスぅううううううううううぅぅぅぅッ!!!』

 

 大きいネプテューヌを抱えたネプテューヌと、言葉を交わす。爆発せず、飛行を続け、何なら再び不可視になりつつある空中艦を、淡々と私達は見つめて……ネプテューヌがある可能性を口にした数秒後、私達はまた絶叫した。

 その後はもう、言うまでもない。ふざけんなコラァ!舐めとるといてまうぞワレェ!…とばかりに空中艦がいた方向へと突進し、私達はやたらめったらに攻撃をしまくった。精製した武器も、射撃も、魔法も放ちまくり、全力で空を薙ぎ払った。だけど、相当な距離を取ってしまっていたが故に、「この辺りにいるんじゃないか」という、かなり当てずっぽうな攻撃しか出来ず…ラステイションの陸上艦も、既に遠くまで移動していたが故に……私達は、まんまとアフィ魔Xの二人に逃げられてしまうのだった。

 

 

 

 

 ブリッジのガラスを悉く割られ、格納庫のハッチの一つが破壊されながらも、航行能力には一切被害を受けておらず、光学迷彩も展開し直せるだけの状態であった為に、悠々と飛ぶ空中艦。その艦内には…外から戻ったアフィモウジャスと、ステマックスの姿があった。

 

「ぐわっはっはっはっはっはっ!まさか女神達も、ワシ等が飛び降りたと見せかけて、ステマックスの鉤爪で艦へとしがみ付き、こうしてまんまと逃げ果せるという高度な策は見抜けなかったようじゃなぁ!」

「いやぁ、流石将軍!鉤爪一つで二人纏めてしがみ付くという、正気の沙汰ではない策を実行出来る辺りも、色んな意味で凄まじいで御座るな!」

「賭けを避ければ小金持ちに、然るべき時に全力の賭けが出来れば大金持ちになれるのが世の中じゃからな!それにしても…ワシ等で女神達から、あの絶体絶命のピンチから突破したのじゃ!気分が良くて堪らんわ!」

 

 廊下中に響く程の笑い声を上げるアフィモウジャスに、それを讃えるステマックス。実際問題、脱出からこうして艦内へ戻るまでは大きな賭けであった為に、安心感もあってアフィモウジャスは大笑いしていた。

 しかし暫くアフィモウジャスに同調していたステマックスだが、その内に真面目な雰囲気となり、アフィモウジャスへと問いかける。

 

「…しかし、良かったので御座るか?詳しくは知らないで御座るが、かなり良い話を持ちかけられたので御座ろう?」

「うむ。じゃがなステマックスよ。金とは家族、夢、友達…それ等を守る為にあるのじゃ。つまり、ワシの夢やワシの友より金を取っては、本末転倒にしかならんじゃろう?」

「しょ、将軍…それは格言で御座るな…!きっとそれは、将軍の言葉として、後世に残るで御座るよ…!」

「ふっ…これはデンジャラスなじーさんの格言じゃ」

「あ……将軍の言葉でないので御座るね…」

 

 何故自分の言葉かのように他人の言葉を…と呆れるステマックスだが、アフィモウジャスは堂々としたまま。しかし、アフィモウジャスがそういう存在である事は分かっている為に、全く…とステマックスは肩を竦める。

 そこにあるのは、長年の友故の雰囲気。互いの事を理解しているからこその空気感であり……だからこそ、ステマックスは気付いた。アフィモウジャスの、雰囲気の変化を。

 

「…さて。ワシもお主も、意地は通せた。取引相手として、あやつ等にも筋は倒せた。ならば後は…ワシ等の思う、ワシ等のするべき事をする番じゃな。ステマックスよ、今から言う文章を、女神達に送ってもらえるか?」

「御意」

 

 真面目な声音で、そう話すアフィモウジャス。こくりと頷き、すぐにその準備を整えるステマックス。

 そして数分後、ステマックスより発信された一件のメール。そのメールに件名はなく──「空間の歪みと、三つの次元の繋がり…それを調べてみよ」という、一文だけが綴られていた。




今回のパロディ解説

・「〜〜結界二十四層〜〜異界化されている〜〜」
Fate/Zeroに登場するキャラの一人、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトの魔術工房の事。…爆破…は、出来ませんね。そうした場合、交渉の可能性がなくなりますし。

・2887
機動戦士ガンダムSEEDに登場するMSの一つ、イージスの自爆に必要なコードの事。これを入力した場合、五分どころか十秒位で爆発までしそうですね…。

・「〜〜修理された〜〜除かれている〜〜」、人造人間
DRAGON BALLに登場するキャラの一人、人造人間16号の事。イリゼもテンパれば変な事を言ったりします。何せ女神ですからね。

・デンジャラスなじーさん
デンジャラスじーさんシリーズの主人公、じーさんの事。これは大長編の話ですね。基本はギャグ盛り沢山の漫画ですが、大長編だととても素敵な話をしていると思います。
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