超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第百六十七話 調べてみなきゃ、言ってみなきゃ

 戦闘には、勝った。突入までも、十中八九アフィ魔Xの予想を超える形で出来ていた筈だし、当然ミスだってなかった。成功は既に確定している…誇張抜きに、それ位言えるような状態にまで私達は至って……だけど、最後の最後でやられた。まんまと騙され、私達は目的としていた一切の成果を上げられる事なく、アフィモウジャスとステマックスに逃げられてしまった。

 なまじ最後に至るまで想定通りに上手くいって、ずっと圧倒的有利だったからこそ、気が緩んでいたのか。言葉の通り、アフィモウジャス達がピンチの中でチャンスを見出したという事か。何れにせよ、あの時はアフィモウジャス達の方が上手で…あの後、アフィ魔Xの空中艦は見つかっていない。見つけた方法はバレていないにしろ、警戒はされているだろうし…条約の関係で、四大陸の外に逃げられているなら、もう見つけようがない。

 協力を取り付ける事も、捕縛する事も、逃げたと見せかけて潜んでいる事も出来ず、逃げられた。再度の接触に繋がるような何かも、出来ていない。それが、事実。…だけど…じゃあ、結論として作戦は失敗かといえば……それは、違う。

 

「おかえりー、皆。アフィ魔Xには逃げられちゃったって事だけど……」

「あー、もう!まだ腹立たしいわ…!あんな手に、まんまと騙されるなんて…!」

「上手い事、偽の警報と表示を出しやがって…完全に乗せられて、踊らされたわね……」

「…物凄い悔しいんだね…はは……」

 

 プラネタワーに戻った私達は、待っていたミラテューヌ達に迎えられる。…けど、今のノワールとブランの発言からも分かる通り、私達はまだちょっと気が立っている。

 いや、分かってるよ?騙されたのも、逃げる隙を与えてしまったのも、誰の責任かといえばそれは勿論私達だし、嘘やはったりだって立派な戦術。特に私の場合、相手に勘違いさせて自分に都合の良い行動や判断をさせる…っていうのは戦闘中によくやる手だから、これに文句を言ったらどの口が言うんだ…って話になる。…けど、けどさ…ああも騙されたら、文句の一つや二つは言いたくなるって…。

 

「気持ちは分かりますが、過ぎてしまった事は仕方ありません。それに…逃げられたとはいえ、何も得られなかった訳ではないんですよね?(´・ω・`)」

「それは、まあ…そうなんですけど……」

 

 そんな私達を宥めるような、イストワールさんの言葉。それにユニは頷いて…自分の携帯端末を見せる。

 そこに表示されているのは、一件のメール。書かれているのは、「空間の歪みと、三つの次元の繋がり…それを調べてみよ」…という、何とも気になる文章で…送り主は、ステマックス。つまりこれは、ステマックスが…アフィ魔Xが、私達を騙して逃げた後に、送ってきたメールという事。

 

「空間の、歪み…え、えっと…それは、あれ…です、よね…?それ、で…み、三つの次元、というのは……」

「信次元、神次元…それに、うずめ達のいた次元だろうね。…なんで、こんなメールを……」

 

 画面上の文章を見て言うオリゼに私は頷き、それから腕を組む。

 このメールの、意味は分かる。けど、意図が…動機が分からない。何故アフィモウジャス達は逃げたのに、私達への協力を拒んだのに、こんな何かを教えようとするみたいなメールを送ってきたのか。

 

「…わたし達の目的は、アフィモウジャスさんに話しましたし…突入に繋がる何かが、調べる事で分かる…って事でしょうか……」

「えー、でもあいつらはわたしたちをだまして逃げたのよ?これもウソなんじゃないの?」

「きょうりょく、してくれないんじゃ…なかったの…?(きょとん)」

「何か企んでいる…とも考えられますわね。普通に協力する気があるのでしたら、向こうから交渉の条件に対してもっと言及してきたでしょうし…」

 

 ネプギアの言う事も分かる。というか、私も最初はそう思った。…けど、それは直前の行為と合致しない。協力を蹴っておきながら、私達の求めていた事に繋がる情報を教えてくれるというのは、行動として理解が出来ない。むしろ罠か何かと考える方が、経緯としては自然な訳で……

 

「あの…!…調べるだけ、調べてみませんか……?」

 

…けど、全体としてそういう雰囲気になる中で、ユニは言う。疑うばかりでなく、この情報…アフィ魔Xの行動の中にある、可能性にも目を向けてみないか、と。

 

「ベールさんの言う事も尤もだと思います。でも、こんな事をしても疑われるのは向こうも分かり切った事の筈。罠を張っているなら、協力する素振りを見せて、その中でこの情報を明かした方が、信用だって得られ易いに決まってます。でも、二人は一度アタシ達からの協力を蹴って、アタシ達を欺いてから、この情報を送ってきた。…だったらこれは、ただアタシ達を嵌めようとしてるとか、そういう事ではないんじゃないかって…そう、思うんです」

「…んー…うん、そうだね。わたしはユニちゃんの言ってる事、間違ってないと思うな。っていうか、こんな意味深なメール、怪しいから無視!…なんて物語でする事じゃないって!ただの迷惑メールならまだしもさ」

「わたしもユニちゃんにさんせー!わたしは仲間だったから知ってるけど、ステマックスって結構義理堅い性格だし、なんだかんだ言ってもアフィモウジャスはそのステマックスが仕えてる将軍なんだから、あの流れから何回も騙してきたりはしないと思うな。何せわたし、感謝されてますから!恩人ですからっ!」

 

 根拠のない希望的観測ではなく、客観的視点に基づいた可能性の提示。それを聞いたネプテューヌは右手の人差し指を頬に当て、大きいネプテューヌと共に賛成の意思を皆へと示す。…ネプテューヌの方はメタい事を言ってるし、大きいネプテューヌも最終的に自画自賛へ繋げてるから、微妙に説得力がないんだけど……でも、確かにそうだ。企みがあって、それに嵌めたいのなら、先に信用を得られそうな行動を取る方が良いに決まってる。裏の裏をかく為に、敢えてそれに反する行動を…と考えられなくもないけど、それは流石に回りくどい。裏の裏はつまり表で、表に当たる普通の方法…協力したフリをして騙すという手段の方が、手っ取り早くて上手くいく確率も高い以上は、わざわざ回りくどい手を使う意味がないと、私も思う。……って、自分で考えておいてアレだけど、裏の裏とか持ち出すと、むしろこんがらがるかも…。

 

「…そうね。あんな形で騙しておいて何を、とも思うけど…これ以外、私達が得られたものはないのも事実。プラスの可能性に賭けるのも、悪くはなさそうな気がしてきたわ」

「お姉ちゃん…皆さん…あ、ありがとうございます…!」

「ユニちゃん、わたしも最初から同じ気持ちだよ。だって、だって…ロボットは、機械は嘘を吐かないもん…!嘘を吐かれたと感じる事があっても、それはちゃんと、答えを得られる訊き方をしなかっただけ…!それが、機械ってものだもん…!」

「……あ、うん…そうね…」

「あれ!?対応が淡白!?」

 

 友達で、仲間で、ライバルでもあるネプギアからの、熱い賛同。…かと思いきや、実際には熱いメカオタ発言で、当然ユニから返ってきたのは呆れ気味の反応。それは普通の機械の話であって、アフィ魔Xの二人みたいにどう考えても感情がある感じのロボットには通用しない考えじゃないかなぁ…とか私は思った訳だけど、当の本人は呆れられてる理由に全く気付いていないらしく、結果皆がネプギアに苦笑。

 ただまぁ、少しずつ雰囲気は変わっていった。怪しいという見方から、真意は定かじゃないにしても、何かしら意図や理由はありそうという見方に変わっていき…ユニの言う通り、一先ず調べるだけ調べてみよう、そんな結論に私達は行き着く。

 

「では、次元の繋がり…という事ですし、まずはわたしが調べてみます。必要に応じて、神次元のわたしにも協力を求めたいと思います(´・∀・`)」

「宜しくお願いします、イストワールさん。…アフィ魔Xの方は、どうしようか?」

「それは続けるべきだと思うわ。まだ調べた結果がわたし達の利になるかどうかは分からない…というかそもそも、何が分かるのかも定かじゃないんだもの」

「あ、それはそうか…調べた結果が、歪みの突破に繋がれば良いんだけど……」

 

 何があるかは分からないけど、期待はしたい。空間の歪み、その突破へと繋がってほしい。これが今ある唯一の希望であり…私達が動いた結果得られた可能性でもあるんだから。

 

「ともかく皆、今回の作戦お疲れ様。いーすんの事だから調べるのに三日はかかると思うし、それまでゆっくり休もー!」

『おー!』

「おー、じゃない。ネプテューヌは普通に女神の仕事があるし、ミラテューヌは待機してたんだから、休むも何もないでしょうが」

「って事は、わたしは休んでて良いんだね!やたー!」

「…まぁ、貴女は結局のところ、別次元からの皆さん同様善意で協力して下さってる訳ですし、休みたいという事でしたら止められませんわね」

「う…どうしようオリゼぇ、ちゃんとした返しをされたちゃったよぉ…!これ以上ない位ご尤もな返しだから、『あっ、はい…』としか答えられないよぉ……!」

「えっ、ふぇぇ…!?あ、え、えと…べ、ベール、さん…っ!大きい、ネプテューヌ 、さんに…謝って、下さい…っ!」

「な、何故そうなるんですの!?」

 

 どう考えたって非はないのに、オリゼに謝るよう詰められて、目を白黒させるベール。これには振った大きいネプテューヌもびっくりしていて、「あ、や、オリゼー…?そこまで本気にしなくても良いんだよ…?」と後ろから言っているんだけど…そこは何よりも人の事を思うオリゼ。言っている内にどんどんエンジンがかかっていき、なんだかもう最終的には「謝らねば斬る…!」…とまで言いそうな雰囲気に。つっかえつっかえの喋り方なのに雰囲気だけは剣呑なものだから、そのちぐはぐさが変な恐ろしさを醸し出し…私達の制止と説得が届くまで、中々に混沌とした空気感が私達を包んでいた。

 

 

 

 

 空中艦の発見と、突入の成功。そして紆余曲折の末に逃げられてしまった事と、けれど可能性ある情報を得られた事…不可視の空中艦に纏わる事のあらましを、俺達は定期交信でイリゼ達から聞いた。

 直接その場にいた訳じゃなければ、アフィ魔Xの事もよく知らない俺には、その情報を送った真意なんて分からない。でもきっと、調べてみようという結論は間違っちゃいないと思う。だって…何もしなきゃ、何も分からないんだから。

 

「うずめちゃん〜、ほんとにいいの〜?」

「だからいいって。そりゃ確かに、奇抜な格好に見えるかもしれないが…ってか俺自身、最初は替えが碌にないからこういう格好になるのを仕方なく受け入れてた部分もあるが、今となっちゃこういう格好の方がしっかり来るんだよ。それにこっちののわっちだって、結構大胆な格好だろ?」

「うーん…でもぉ、ちょっとイケナイ人みたいだしぃ……」

「ぶ……っ!?ぷ、ぷるっち!?ぷるっちは俺の服装、そんな風に思ってたのか!?」

 

…で、定期交信を終えた今、俺はうずめ、それにプルルートと一緒にいる。一体二人が何の話をしているかというと…どうもプルルートは、うずめの傷んだ服を直してあげようと思っていたらしい。

 確かにうずめの服装は、上も下もダメージ仕様になっている。多少直されてはいるが、服飾的な直し方っていうよりは、取り敢えず機能を維持しようって程度の直し方で、女の子としてそれはどうなんだ…と俺も思う。……イケナイ人みたいかどうかは…ま、まぁノーコメントで…。

 

「ほら〜、ウィードくんも、変な目で見てるよ〜?」

「んなぁ……ッ!?」

「ちょッ!?い、いや違う違う!俺はイケナイ服って表現に対して考えてたのであって、そういう意味で見てた訳じゃねぇって!」

「……?そういう意味って、どういう意味?」

「うっ…そ、それは……」

 

 純粋そうな目と声音で訊いてくるプルルートだが、その問いは今の俺にとって刃物のよう。うずめからも睨まれてるし、ものの数秒で俺はピンチ。…こ、こんなほわっとした調子で、俺もうずめも纏めて翻弄するなんて…狙ってやってるなら普通に恐ろしいし、無自覚だとしてもそれはそれで怖ぇ……。

 

「じー……」

「えぇ、と…そ、そうだ。もしうずめの服を直すなら、プルルートはどんなアレンジをしたりするんだ…?」

「ほぇ?うーんとねぇ、あんまり大きくは変えないかなぁ。うずめちゃんは格好良いから、服はシンプルな方が似合うと思うの〜」

「…そ、そうか?俺、シンプルな服装の方が格好良いか?」

「うん〜。だよね〜、ウィードくん」

「だな。滅茶苦茶凝ってて格好良い服もあるけど、うずめなら着飾らない格好良さが出せると思うぞ」

「そ、そっか…そっかそっか〜、まあ俺は元が格好良いからな〜!」

 

 のほほんとした、なのに逃げるのは許してくれそうにない黒ならぬ赤紫の眼差しに捕まった俺は、苦し紛れに話を逸らす。

 それは我ながら、バレバレだと思うような雑な逸らし方。けどプルルートには効いたようで(やっぱ無自覚に言ってたのか…)、胸の前で指を絡めながら直す場合のプランを話してくれる。しかも、これはいける…!…と同調すると、うずめも機嫌を良くしてくれて……凄ぇ…苦し紛れでもやっぱ、やってみなきゃ分からないものってあるんだな…。

 

「……まぁ、少し位なら着飾る…っていうか、お洒落しても良いと思うし、格好良いだけがうずめの魅力でもないと思うんだけど、な…」

「ん?なんだよウィード、ごにょごにょ言って…」

「や、ただの独り言だ、気にするな。…けど、三日後…か……」

「三日後?あ、向こうのいすっちが調査するのにかかる…と、思う時間か」

 

 思わず口にした呟きを俺は誤魔化し、交信で聞いた話を思い出す。

 三日というのは、未来から来たらしいネプテューヌ…ミラテューヌの発言だが、実際それ位はかかりそうなんだとか。つまりもう調べ始めてたとしても、判明するのは明後日以降。これを長いと見るか、短いと見るかは人それぞれだが…何れにせよ、待つしかないのは事実だろう。

 

「仮に三日で分かったとして、それが突破に直結する事で、そのまま突入して、一気に決着…ってなったら、後数日で終わるんだよな…」

「まあ、そうだな。全部都合良く進めば、だけどよ」

 

 ネプテューヌ達とくろめ達はこれまでにも何度も直接の接触をしていて、けどくろめ側に戦闘の意思がなかったり、想定外の事が起きたりして、今に至るまで決着はついていない。

 でも突破の手段が出来れば、遂にネプテューヌ達が、別の目的ではなく純粋に決着をつける為の突入が出来るようになって…それで、終わるのかもしれない。勝って、信次元に平和が戻るのかもしれない。

 そしてもしそうなれば、それは間違いなく喜ばれるだろう。皆安堵出来るし、こっちの次元の皆だってほっとするだろうし、勿論俺は皆を応援している。そもそも皆の頑張りや思いを知っている以上、応援しないなんて事は……

 

「…ウィード、やっぱりなんか考え事してるんじゃねぇのか?」

「え?…表情に出てた……?」

 

 いつの間にか、少し俯く形になっていた俺。その俺の顔を、身を屈める事で下から軽く見上げる姿勢になっていたうずめが、じぃー…っとその橙色の瞳で見ていて…気付けば俺は、見透かされていた。

 やっぱり…っていうのは、さっき俺が独り言として処理した発言の事だろう。それとこれとは違うが……俺の中に、思うところがあるのは事実。それは多分、隠そうと思えば隠せる事だけど…うずめは俺を心配もしている。だったら…隠すのは、違うよな。

 

「…いや、さ…一回俺は、信次元で…信次元に行って、確かめたい事があるんだよ」

「確かめたい事?」

「あぁ。出来ればこの戦いが終わる前に確かめたいって思ってたんだが、迷惑はかけたくないし、決着がついてからでも…って、これまでは考えてたんだよ。けど、いざ決着が目前なのかもって思うと、やっぱりその前に確かめたい…って思っちゃってさ…」

「そういう事だったのか…まあ、確かにそりゃ迷うよな……」

 

 そう言って俺が頬を掻くと、うずめも「確かになぁ…」と腕を組む。責任感の強いうずめなら、そういう反応をするだろうな…というのは、俺も想像が出来ていた。

 多分、確かめに行く時間はこれまでにもあったと思う。それこそ空中艦の発見方法が思い付くまでは、何もない日が続いていたりもしたらしいし。けどそれは、結果的に何もなかっただけで、俺が行った日に何かが起こる可能性は十分にあった。そして俺の確かめたいものがあるのは、恐らくモンスターも出てくる場所で…そこに行きたいと言えば、間違いなく誰かがついてきてくれる。…だからこそ、行くに行けなかった。ついてきてもらったばっかりに、生活圏に何かあった時間に合わなくなったり、一緒に何かに巻き込まれたりしたら、俺は悔やんでも悔やみ切れなくなるから。

 

「…けどやっぱ、優先すべきは皆と信次元の事だからな。今の話は気にしないでくれ」

「…そうか?ウィードがそう言うなら、いいけどよ…」

 

 確かめたい思いはある。でも別に…というか多分、急がなきゃ出来ない事じゃない。だから俺はいいんだと言い、うずめも理由が理由だからか変に食い下がったりする事はなく……

 

「んー…ねぷちゃん達なら、良いよっていうと思うけどなぁ…」

 

 けれど代わりに、裁縫の話が出てきたからか、部屋にあるぬいぐるみのちょっとしたほつれを直していたプルルートが、直す作業をしながら言った。別に良いんじゃないか、って。

 

「…まぁ、俺もそうだとは思うよ?けど、だからこそ何かあったら申し訳ないっていうか、折角の善意が仇になる事は避けたいっていうか……」

「でもでもぉ、ウィードくんは、終わる前に確かめたいって思ってるでしょ?なら、後になってそれを知ったら、今度はねぷちゃん達がしゅんとしちゃうんじゃないかなぁ」

「それは……」

 

 のんびりとした、プルルートの言葉。けどその緩さとは裏腹に、プルルートの言葉は俺の考えていなかった部分を突いていて…言葉に詰まる。

 きっと…いや、間違いなくそうだ。もし後から知ったら、気を遣わせてごめん…と、ネプテューヌ達は思う。黙ってりゃ何とかなるかもだが、隠し続けるのだって楽じゃない。けどじゃあ、行くのが正しいのかといえば…一概にそうだった訳でもない筈だ。

 

「ねぷちゃん達は皆優しいんだから、そういう事は気にしなくても良いって、あたしは思うなぁ〜」

「うー…むむ……」

「それも、確かにそうだな…けどさぷるっち。何かあったら困るのは事実だし…何かあったら、絶対ウィードが気にするぜ?流石にそこを、根拠はないけど多分何もないだろうから大丈夫だろ、で済ませる訳にはいかないだろ?」

「うん〜、それはあたしも分かってるよ〜」

「あ、そうなのか。…だから、んー……話すだけ話してみたらどうだ?」

「へ?…あ……」

 

 プルルートの言う事も一理ある。けどうずめが言ってくれた事も、間違ってない。俺が気にするだけならともかく、実害が出る可能性だってあるんだから。

 どっちにしたってリスクや悩む部分がある。だから俺は答えを出せず…その中で、うずめが言った。話すだけ話したらどうだ、と。それは何とも普通な、単純な事で…だけどそれを失念していた俺は、はっとする。

 

「ウィード、明日の事なんて誰にも分からねぇよ。ただ今を楽しく…ってばかりにゃいかねぇが、今見えてるものを見て、今出来る事をするしかねぇ。だったら話すだけ話してみて、それで決めた方が良いんじゃないのか?少なくとも、そうすりゃ今確かめるのを止めにしたとしても、一人で決めるよりは納得出来ると思うぜ?」

「……そう、だな…そりゃそうだ、結果はやってみなきゃ分からないもんな…」

 

 目新しい事を言われた訳じゃない。けど、分からないのに決め付けるのは…ってのは、アフィ魔Xからの情報の扱いをどうするか聞いた時、俺も思った事じゃないか。さっきだって、やるだけやってみたら案外上手くいった…って経験をしたばかりじゃないか。なのにもう忘れていた俺は、何というか…まだまだだなぁ……。

 

「…よし、ならそうしてみるか。ありがとなうずめ、プルルート」

「気にすんなって。元は俺が訊いた話だしよ」

「うんうん、気にすんな、だよ〜。あたしだって、女神様なんだから〜」

「だとしても、だよ。…うん、やっぱ人に話すと、それだけでも違うよな。……二人共女神だけど」

 

 これだってそうだ。うずめに訊かれて、話したからこの結論が出たんだ。話してなかったら、勝手に決めて勝手に「今はいいや」ってしてたのかもしれないんだから。

 そうして俺は、信次元の皆に話してみる事、それに出来れば決着の前に確かめてみたいと伝える事を心に決めた。…ほんと、何事もやる前から決め付けたりとかはするべきじゃないな。そう、そうなんだ。確たる理由があるならいいが…そうでもないのに自分だけで、自分と同じ考えの人達だけで決めたものは…狭い視野の答えにしかならないんだ、きっと。

 

 

 

 

 信次元の空に浮かぶ、負のシェアエナジーが凝縮した城。浮遊城たるその中では、珍しくある人物が気分の良さそうな声を出していた。

 

「あー、やっぱ身体は資本よねぇ。言う事聞かない身体なんてこの上なくムカつくし、案外健康って大事だわ。それに、雑魚共にとっちゃ文字通り『資本』にもなるんだろうしね〜」

「レイお前…言ってる事は正しいのに、言い方のせいで台無しだな…しかも最後の発言のせいで尚更台無しじゃねぇか……」

「……クロワール。君はほんと、歪んでいるようでその実かなり常識的だね」

「うっせ、それとこれとは別の話だってーの」

 

 へらへらと語るレイにクロワールが呆れ混じりの言葉を返し、それをくろめが軽く茶化す。茶化されたクロワールは、口を尖らせ言い返す。

…と、一見軽く流しているようなくろめだったが、内心では喜んでいた。いつそうなったのかは分からないが、自陣の最大戦力が完治した様子なのだから、それを良いニュースと受け取るのは当然だろう。

 

「って訳でぇ、私近い内にちょーっと遊んでくるから。別に構わないわよねぇ?あんたとしても、私の腕が鈍ってたら困るでしょ?…ま、少し休んでただけで鈍るような雑魚と私は違うんですけども」

「…相変わらず鋭いね、君は。あぁ、構わないよレイ。オレも今の内に…全てを終わらせる前に、少しやっておきたい事があるからね」

「へぇ……」

 

 珍しく何か釘を刺す事もなく、自分と同じような事を言うくろめに、レイはぴくりと眉を動かす。しかしその「やっておきたい事」に興味はないのか、レイはそれ以上訊く事をせず…それだけで、会話は終わる。

 別の次元である以上、同じと表現するのは些か正しくないのかもしれない。だがくろめとレイが、互いに何かしようとしていると知った時…それは奇しくも、神次元でウィードが自分の思いを信次元の面々に話そうと決めたのと同じ時であった。




今回のパロディ解説

・黒ならぬ赤紫の眼差し
ポケモンシリーズに登場する技の一つ、くろいまなざしのパロディ。その後うずめもウィードをじーっと見てるので、こちらは橙の眼差し、ですかね。

・「ウィード、明日の事〜〜今を楽しく〜〜」
ルパン三世シリーズの主人公、ルパン三世の台詞の一つのパロディ。これは現在放送中の、最新シリーズでのルパンの台詞の一つ…のパロディです。
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