超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
──準備は、整った。計画も、支持も、用意も、十分と呼べる程にまでなった。こうなる事は分かっていたが、それが正しい事なんだから、こうなるのは当然の事でもあるが…それでもやはり、思い通りに整うのは嬉しい。
無論、全てが思い通りになった訳じゃない。俺の事をよく知っている、互いに信用し合っている筈の相手程、何故か賛同をしてくれず…それは正直、悲しかった。だが、話はした。話し合った。それでも分かってくれないのなら、仕方ない。言葉で分かってもらえないのなら、結果で納得をしてもらうしかない。
そう。準備が整ったのなら、後は行動するまで。躊躇いはない、迷いもない。何故ならこれは正しく、皆の為の事なのだから。…だから俺は、今日を…この日を始まりの日として…大切な日だからこそ、今日は充足した日にしたくて……期待を、していた。ずっと…ずっと。
「…………」
時は昼から夜へと変わり、少しずつその夜も更けていく。今日という日が、明日へと近付いていく。
俺は待っていた。あいつが来てくれるのを。約束を、したんだから。
(…何か、あったのかな……)
時間までは話していなかったから、それ自体は仕方ない。まだすぐには終わらないとはいえ、段々と日の変わる時間は近付いているんだから…そろそろ来てくれてもいいんしゃないかと、俺は思う。何度も思っている。
電話をすれば…とも思うが、電話をしたらまるで待ち侘びてるみたいだから恥ずいし、来るかどうかを疑っているみたいになるのも嫌だ。俺は来るって、来てくれるって、信じているんだから。
「…うん、そうだ。ひょっとしたら何か、仕込みをしてるのかもしれないしな。例えば…そう、それこそシルクハットと白マントの怪盗みたいに、盛大に…って、な訳ねぇか…うん、無茶な期待は止めておこうぜ俺……」
自分で自分のやり過ぎな想像に辟易とし、普通に待とうと思い直す。
その時ふと思ったのは、俺の力を持ってすれば…という考え。けど、すぐにそれは無しだと考え直す。…あいつは来る、きっと来るんだ。なのに、それを俺が、俺の力で歪めてしまえば…俺はあいつに、合わせる顔がなくなってしまう。
だから俺は、信じて待つ。きっと来る、必ず来る、俺との約束を守ってくれると、心から信じる。信じて、待って、待って、待って……
……だけど、あいつは来なかった。来ないまま、時間は過ぎていき……今日が昨日に、明日が今日になってしまった。
「……っ…なん、でだよ…約束、したじゃねぇか…来るって、来てくれるって…!」
悲しかった。悲しくて、悲しくて…やり切れない思いが、俺の中で駆け巡った。
嗚呼、結局そうなのか。あいつも皆と同じなのか。俺の側にはいてくれないのか。…そう思うと苦しく、辛く、やり切れない思いは増幅していき……次の瞬間、開かれる扉。
「……ッ!お、遅かったじゃねぇか!もう日は変わって……」
「…えぇ、そうですね。……今から、大事な話があるんです。ついてきて、頂けますか…?」
反射的に、喜びと不満の両方の気持ちが溢れ出た俺。…けど、違った。そこにいたのは、俺が待っていた相手ではなかった。
急速に萎んでいく心。今は一人にしてくれ、そう言いたくなったが…彼女が浮かべているのは、感情の読めない表情。これまで一度も見た事のなかった顔付きに、只事じゃないんだなと俺は察し…頷いた。
そうして俺が呼び出されたのは、外。それも単に外へ出たというだけでなく…やたら遠くへ、生活圏外へと連れ出される。…訳が、分からない。
「…どこまで行くんだ?話って言ってたが、単に話して終わるような事じゃないって訳か?」
「そういう事です。…これまで、多くの事がありましたね。些細な問題から大きな戦いまで、わたし達は多くの人と共に、力を合わせて乗り越えてきました」
「…そう、だったな」
行き着いたのは、洞窟の様な場所。ここで何かあったという事だろうか。そう思いながら入っていくと、彼女は俺の隣で語り始める。
「正直、かなり苦労もしました。皆さん、しっかりしているようで実は変な個性があったりしますし、割と無茶もしますし…。…ですが逆に、皆さんの強さや熱心さに助けられた事も、何度もあったと思います」
「…急に、どうしたんだ。いきなりそういう話をするなんて…余程の事か?」
「そう、ですね…わたしのとって一世一代の…とても、とても覚悟の必要となる事です」
神妙な声のまま続く話に、抱いた疑問は大きくなっていく。一世一代とまで言うという事は…彼女の命がかかっているのだろうか。もしそうなら、勿論止める…が、それにしたって何の事なのか分からない。
「…なぁ、ここに何があるんだ?それとも、何か起こるのか?何かあるなら、ちゃんと言ってくれ。言ってくれれば……」
俺も一緒に考える。…そう言おうとして、俺は気付く。どういう事情かは分からないが…これは、好都合かもしれないと。
「…俺が、何とかするさ。たとえどんな事だろうと…俺の力を以ってすれば、どうにか出来ない筈がないんだから」
「……それが、結論なんですね」
「…結論?」
「あくまでその力を、それを第一に…絶対のものだとするんですね…。他にも、多くの力が…それにも負けない筈の力がありながら、それだけを信じるんですね…」
そう言って、彼女は悲しそうな表情を浮かべる。結局そうなのか、変わらないのか…そう俺に伝えるように、どこか諦めたようにも聞こえる声で。
…流石にそれは、むっとした。俺の言葉を、考えを理解してくれないのは、残念ではあるけど仕方ない。でも、それはないだろう。俺の力を、皆の為にやろうとしている事をまるで悪い行いのように言うのは、余程の事なのだろうと思っていた俺の心を蔑ろにするような事を言うのは…仕方ないじゃ、済ませない。
「…いい加減に、してくれないか。どうしてそこまで、俺の力を否定する。どうしてそこまで、理解を拒む。何度もこの力の有用性は見せた筈だ。俺が私利私欲じゃなく、皆の…次元全体の為にやろうとしている事も話した筈だ。…あぁ、まさか…俺の力で完全無欠の世界になった時、自分の立場が…役目がなくなるんじゃないかと恐れてるのか?」
「…そう、思うのですか?それが、今の……」
「ははっ、冗談だよ。そんな卑屈な思考をするなんて思っちゃいない。…けど、念の為に言っておくよ。そんな心配をする事はない。俺の力は絶対だが、何もかもを俺がする、というのは流石に骨が折れるし…もしかしたら、役目だの仕事だのを気にする必要すらない世界すら、実現出来るかもしれない。ああ、そうだ…俺になら出来る。そう、そうだ。目標を限定する必要はない。何だって、どれだけだって、全て俺の思い通りになる筈さ」
我ながら少し性格の悪い言い方をしてしまったとは思う。けどそれも、売り言葉に買い言葉の範囲。それに…自分で言いながら、気が付いた。俺は皆が傷付かなくても済む世界を、次元全体を俺の力で守る事によって実現しようと考えていたが…何も、それで終わりにする必要はない。もっと良い世界に、もっと俺が思うような世界に変える事だって出来る筈だ。世の中そう都合良くはいかない…なんて事はない。それを出来る力が、俺にはあるんだから。
「……最後に、もう一度だけ訊きます。考えは、心は…変わらないんですね…」
「いい加減くどい…と、言いたいところだが…ちゃんと答えるよ。俺は変わらない。考えも、心も、変わる訳がない。だって俺の心も、力も、全部正しくて……」
洞窟の、最深部らしい所まで行き着いた。そういう場所に着いた事もあり、俺ははっきり言い切ろうと思った。
最後に嫌な気持ちで今日は…いや、昨日は終わってしまった。終わったのだから……ここからは、始まりだ。今日という日が、俺が世界を変える始まりの日だ。だから俺はその宣言も彼女にすべく、話しながら振り返り……
「──ごめんなさい」
「え……?」
聞こえたのは、後悔と悲しみに染まった声。その声が聞こえたと共に、彼女は俺の側まで迫り……何かが、掠めた。掠め、彼女は止まり……次の瞬間、力が抜ける。
「今、何をし…、……ッ!?」
直後、膝から崩れ落ちる俺の身体。何とか倒れるのは堪え、片膝を突く程度に抑えた俺だが…すぐに、気付く。力が抜けた?…そんなもんじゃない。俺の力が、俺の力の根源が……抉り取られるように、ごっそり無くなっている…ッ!
「一体…何を……」
生命力とでもいうべきものを大きく削られたような感覚の中、俺は何かが掠めた…何かをされた場所に触れる。
そこにあったのは、ただの切り傷。多分、何もせず放っておくのは良くない…が、まあ放っておいてもその内治るだろと思えるような、そんな軽傷。…明らかに、傷と影響が釣り合っていない。鉈か何かで胴を斬り裂かれた位でなきゃ、普通こうはならない。
困惑が広がる中で顔を上げれば…罪を認めた咎人の様な顔をした彼女がいた。その手にあるのは、赤紫の光を帯びた刀身と、暗い紫の柄を持つ、小さなナイフ。元々小柄…の域を少し超えている彼女が持ってもサイズとして不自然さがない、玩具の様な大きさのナイフ。……それを見て、俺は確信した。状況からではなく…その刃物から感じる、常軌を逸した力で、今の俺の状態を作り上げた元凶が何なのかを。
「…これが、わたしの答えです。わたしの使命を果たす為、この次元を守る為……何より、友として止めるのです。たとえそれが、このような方法だとしても」
「止め、る…?何故だ…俺は……」
理解が、出来ない。覚悟がある事は分かった。それが悲壮な思いである事も伝わってきた。…けど、次元を守る為…?俺の友として…?…だったら、するべき事は……
「……っ…?…皆…?」
半ば思考が混乱する中、俺はここに、俺達以外もいる事に気が付いた。それは丁度、ここに入る動線上だと死角になる場所で……そこにいたのは、信頼する三人の友。仲間であり、ライバルとも言える…そんな三人。
反射的に、俺は伝えようとした。彼女は少し錯乱している、と。だが…伝える前に、理解する。三人も、彼女側なんだと。
「……ごめんね、こんな方法を取るしかなくて」
「これは、あーし等に考えを変えさせられるだけの力が…そんな事をしなくてもいいんだって思わせられるだけの強さがなかったせい。…全部、あーし等の責任よ」
「だからこそ、その責任を取らせてもらいます。…仲間……いえ、友だからこそ…絶対に止めなきゃ、駄目なんです」
「だから、何を…、……っ、これは…まさか……」
三人は言う。彼女と同じ表情で、同じ声音で。そして三人は分かれ、俺を囲うように立ち……光が、走る。光は俺の周囲で集まり、俺を囲い…形に、結晶になっていく。
これを、俺は知っている。俺も皆とやった事がある。これは……封印だ。
「待て…待ってくれ…皆、どうして……っ!」
力が身体に絡み付く。俺から自由を奪っていく。普段なら、封印が形になる前に離れればいいだけだが…今の俺に、それだけの余力はない。一度封印の範囲から出るだけじゃなく、四人を振り切りここから逃げるだけの力がなければ、どうにもならない。
けど…何故だ、何故だ。どうしてここまでする。俺は皆を害する気なんてない。俺は正しい事を、この次元が良くなる事をしたいだけなんだ。なのに、なのに……っ!
「…勝手な事だと、納得してもらえる話じゃない事は分かっています。それでも、わたしは…わたし達は、お約束します。いつか必ず、その力が必要などではないと思える次元にすると。この封印を、終わりの為のものにはしないと。どれだけかかろうと、困難であろうと、必ず……」
聞こえる声は、少しずつ小さくなっていく。三層の力で編まれる封印が、外と中を遮断していく。聞こえる音も、見える姿も、感じられる力も…何もかも、遠く薄れて、霞んでいく。
最後に見えたのは、決意の籠った瞳と涙。あぁ、ああ…たったそれだけでも、伝わってくる。どれだけの思いと覚悟で、この選択をしたのかが。でも、だけど…それは俺も同じだ、同じなんだ。
もう、身体も満足に動かない。それでも俺は、心で叫ぶ。俺だってそうなんだと。俺だって本気だと、生半可な気持ちでやろうとなんてしていないと。
(俺は、俺は……ッ!)
意識も掠れていく。落ちるように、深い闇の中へと沈んでいく。
なんでだ。どうしてだ。今日は良い日になる筈だったんだ。あいつが来てくれて、きっと祝ってくれて…そうだ、皆だって来てくれたのかもしれない。良い日に、良い日になる筈だったんだ。…なのに、どうしてこうなった。俺が…俺が、やろうとした事が悪いのか?間違っていたのか…?
……いいや、違う。間違っている筈がない。間違っている筈が、悪い筈がないんだ。だって、俺は、俺は…ただ、皆を……っ!
*
「ふふん!現在わたし達は、プラネテューヌの生活圏外にいます!ウィードくんがわたし達に話して、さてどうしようとなった下りは…なんと、カットです!」
「なんで!?」
ばしーん!…と、何もない方向に向けてキメ顔をしつつ言うわたし。直後に飛んできたのは、ウィードくんの突っ込み。うんうん、いいよウィードくん!そういう読者さんの代弁をするような突っ込みも大事だからね!
「いや、代弁とかじゃなくて普通に俺の心からの叫びなんだけどな…。ほんと、なんで飛ばすんだよ…俺的には、かなり真剣な話として言ったんだぜ…?」
「分かってるよ。でもさ…わたし達なら、良いって言うに決まってるじゃん。そうは思わなかった?」
そう言って、わたしは後ろで手を組む。するとウィードくんはちょっと黙って…それから、「…まぁ、そんな気はしてたけど…」とわたしの言葉に頷いた。
「ね?ただ観光したい、って事なら少しは迷うけど、ウィードくんにとっては凄く確かめたい、大切な事なんでしょ?だから、わたし達に迷惑がかかるんじゃ…って思ってても、すぐには諦められなかった…違う?」
「…………」
「……あれ?ウィードくん…?」
「…どうしよううずめ…俺今、ネプテューヌが滅茶苦茶格好良く見えるんだが……」
「あ、あぁ…俺もだぜ、ウィード……」
「あ、そういう…ふっ、わたしは主人公だからね!可愛さ強さ美しさだけじゃなく、時には格好良さも兼ね備えるのさ!」
あれれ?反応がない…と思っていたら、どうやらウィードくんはわたしの格好良さに気が付いた様子。気分が良くてふふーん!…と胸を張ると、うずめやぷるるんはおぉー…!と賞賛の視線を向けてくれて……だけどネプギアやこんぱ、あいちゃんは苦笑い。
っと、そろそろ状況を説明しないとね。まずは最初に言った通り、今日わたし達はウィードくんから、こっちで確かめたい事があるって話を聞いたんだ。で、勿論それをわたし達はOKして、早速確かめる事になったの。だって、そうだよね。何かあるかもしれない…って事なら、一々計画立ててるより、さっさと行って確かめてきた方が良い筈だもん。…あ、さっさとっていうのは善は急げ的な意味であって、ウィードくんの確かめたい事を適当に済まそう、って事じゃないよ?…こほん。
それで、確かめる為のメンバーは、わたしとウィードくん、うずめとぷるるん、ネプギアとこんぱとあいちゃんの七人。ウィードくんがいるのは言うまでもないとして…うずめがいるのは、うずめの記憶の手がかりがあるかもっていうのと、この際うずめにも信次元を見てほしかったから。ぷるるんは、シンプルに来たいって言ってたからで…でもネプギアと同じく、何かあった時、具体的には複数のダークメガミに襲われても皆を守りつつ撃退出来るだけの戦力があった方が良かったから。そしてこんぱとあいちゃんは、この確かめる行為に人手が必要になるかもだからなんだよ。…ふー…地の文が長いと、わたしも読んでる皆も大変だよねぇ。
「…あ、因みにプラネテューヌの生活圏の方も大丈夫!ピー子とセイツが代わりに待機してくれてるし、二人のわたしや他の皆もいるからね!あ、でもイリゼはオリゼと一緒に別件で不在だよ!」
「ね、ねぷねぷ…?急にどうしたんです…?」
「伝え忘れてた事の補足かな。あ、イリゼの真似でもあるかも?」
「ねぷ子…さっきから全力でメタネタをぶっ込んできてるわね…」
あいちゃんからは呆れた目で見られてるけど、この位問題ナッシング。呆れられるのは、ボケる側として避けられない宿命だしね!
と、いう事でプラネタワーから暫く飛んで、ウィードくんの話から「この辺りだろう」と予想された地域に降りて、女神化を解いたのがついさっき。後は、ウィードくんの記憶を頼りに確かめたいものがある場所に…ってところなんだけど……
「…うーん…やっぱ、なんとなく違うな……」
歩く事数分。ウィードくんが呟いたのは、なんだか困ったような声。
「まぁ、この辺りは昔とは少し地形が違うらしいからね。けど、この辺りではあるんでしょ?」
「あ、あぁ…流石に間違ってる、って事はないと思う…」
「そういう時は、ゆっくり考えた方が分かるかもです。あ、抹茶味の飴ならあるですけど、食べるです?」
「や、大丈夫だ。…けど、落ち着けってのはその通りだよな…」
ぐるりと見回しながら歩くウィードくんに、こんぱとあいちゃんが声を掛ける。それにわたしはうんうんと頷いて……と、そこで引っ張られるわたしの袖。何だろうと思って振り返れば、引っ張っていたのはネプギア。
「どうしたの?…あっ…も、もしかしてお花を摘みたく……」
「ち、違うよ…!?…そうじゃなくて…ウィードさんは、記憶を頼りに今探してるんだよね?それって……」
あぁ、そっちか。…そう思ったわたしは、ネプギアの言葉にもこくりと返す。
ウィードくんは、信次元で確かめたいものがあるって言って、それは多分こんな場所だって教えてくれた。今は「こういう所の、ここだった筈」…みたいな思考で、探してると思う。……それはつまり、信次元を知ってるって事。プラネテューヌの地形を、ざっくりでも分かってるって事。
これから考えられる事は二つ。一つはどこかで、プラネテューヌの知識を得たって可能性。そして、もう一つは……ウィードくんが、元々は信次元の人間だったって事。
「…ウィードさんも、イリゼさんやミリオンアーサーさん達の様に、飛ばされて向こうの次元に行ってしまった…って事なのかな……」
「で、その衝撃で記憶を失っていた…とかかもな。…正直俺は、あり得ない話じゃないと思ってる」
「うん。でも、この辺りの地形って最近変わったとかじゃないよね?だから…うーん?…わたしとイリゼが、最初に向こうに行ったのと同じ時期にウィードくんも飛ばされた…って訳じゃないのかも…?」
その言い方だと、イリゼも別次元から信次元に来たみたいにも聞こえるなぁ…なんて思いながら、わたしは二人の言葉に返す。
うずめもこの事は考えていたみたいで…でも、ウィードくんにはまだ訊いてない様子。わたしも、もしかしてって思ってたけど…正直言うと、少し訊き辛い感じがある。だって、もしもウィードくんが信次元の人間なら、別に隠す理由はないと思うから。なのに話してくれないのは、話せない理由があるか、それに頭が回らない位確かめたい事で頭が一杯なのか……あ。…今思ったけど、ウィードくんが信次元出身じゃない事もあるか…信次元出身じゃないっていうか、ここが自分の知ってる次元か、よく似てるけど違う次元かまだ判別がつかないから、その事を話してない…とかもあるのかなぁ…。
「むむむ…こういう話なら、もっと頭を使うのが得意な面子を連れてくるべきだったよ…」
「だな…そういう話だと、俺達じゃな……」
「そ、そんな悲しい認識を今ここで話さなくても……」
がっくしとわたしとうずめが肩を落とすと、ネプギアは何とも言えない表情に。…なら、わたし達が頭脳労働得意に見える?とか訊こうかな…?……いや、やめとこ…皆で余計に悲しくなるだけだよ、これは…。
「ねぷちゃーん、ねぷぎあちゃーん、うずめちゃーん。着いたみたいだよ〜」
「っと、すみません皆さん!……って、あれ…?」
そんな感じのやり取りをしていたら、いつの間にか四人よりも少し遅れてしまっていたわたし達。ぶるるんに呼ばれて、小走りで合流したんだけど…そこでネプギアが上げた声。同じタイミングで、わたしもあれ?って気持ちになる。
皆が止まっていたのは、洞窟っぽい場所の前。あ、ここかな?とは思ったんだけど……少し離れたところに、もう一つ穴っぽい場所がある。穴っていうか、裂け目っていうか…とにかく、あっちは違うのかな…。
「…ウィード、ここなのか?」
「…正直言うと、自信がない。ここな気もするし、向こうにある方な気もするし…絶対どっちかだ、とも言い切れない…」
「あー、やっぱりなんだ……」
返答としてウィードくんが言ったのは、わたしがもしや…と思っていた回答。
さっきあいちゃんが言ってたけど、この辺りは昔地殻変動…っていうのがあって、その影響で穴とか洞窟っぽくなってる場所が他の地域より多いんだとか。で、いーすんは次元の繋がり調査で忙しいから、それっぽい場所が複数あった時に備えて、ちょこっと多い人数で来たんだよね。…うーん、一発で発見出来たら楽だったんだけど…仕方ないね。
「じゃ、取り敢えずこの二つを調べてみる?」
わたしの言葉に皆頷いてくれて、わたし達はぱぱっとチーム分け。ここはウィードくん、ネプギア、こんぱ、あいちゃんの四人が担当して、わたし、うずめ、ぷるるんは離れてる方。こっちを四人に任せてわたしとぷるるんは女神化をして、うずめを連れてぱーっと移動。降りて、また解除して、穴の中に入っていく。
「ぷるるーん、地面が脆くなってるかもだから気を付けてね〜」
「はーい、分かっ…わぁっ」
「え、いきなり!?」
「ううん〜、スリッパ脱げちゃった〜」
『あ、あー……』
えへへ…と頭を掻きながら、ぷるるんはけんけんで戻って脱げたスリッパを履き直す。…スリッパって、普通外に出る時は靴か何かに履き替えるものなんだけどね…。ズボラだから履き替えない、って話だけど…どこに行くにもスリッパっていうのは、最早逆にストロングスタイルだよ……。
「に、しても…ウィードくんは、何を確かめたいんだろうね…。見ればすぐに分かるようなもの、って言ってたけど……」
「うーん…こういう場所だからぁ…お宝とかかなぁ…?」
「お宝?化石とか、宝石みたいな石とか、果ては秘密基地に飾る事が出来る石像とか?」
「うんうん〜、そういうのがあったら楽しいよね〜」
「あははっ、ほんとにあったらね。ねぇねぇ、うずめは何があると思う?」
口調も考え方ものーんびりしたぷるるんだけど、別次元とはいえ同じプラネテューヌの女神だからか、わたしとはよく気が合う。だから一応転んだり天井が崩れたりみたいなハプニングに気を付けつつも、わたし達は楽しくお喋りをして、進みながらうずめにも訊く。…けど、それに対する反応は無。うずめは何も答えてくれない。
「…うずめ?」
「……あ…わ、悪いねぷっち…聞いてなかった…」
「う、うん。…うずめ、調子悪い?」
聞いてくれてなかったからって、怒るようなわたしじゃない。でも、うずめの表情は何か変で、具合が悪いんじゃないかと少し不安に。けどうずめは、そうじゃないって首を横に振る。
「そういう訳じゃないんだ…ただ、なんつーか…ここには、見覚えがあるような……」
「え?それって……」
「あ、や、待て…いや、ほんとそんな気がするだけっていうか……あ、あれ?…見覚え…?既視感…?…本当にこれは、そういうものなのか…?」
「う、うずめちゃん…大丈夫…?」
ウィードくんと違って、うずめは記憶を失ったまま。そのうずめが、見覚えがあるような気がする、っていうのは大きな事で…だけどわたしが更に訊こうとすると、うずめは頭を押さえて、ふらふらとその場で数歩よろめく。その表情は、明らかに動揺していて……わたしとぷるるんは、顔を見合わせる。
はっきりとは分からないけど、うずめは今混乱してる。そのうずめを、そのままにして進むなんて事は出来ない。
「…うずめ、一回戻ろう」
「……っ…や、大丈夫だ…まだ、奥まで……」
「駄目だよ、うずめちゃん。うずめちゃん今、全然大丈夫そうじゃないもん」
「…そう、だな…ごめん、二人共……」
さっきまでとは全然違う、真剣そうなぷるるんの声。その声にうずめは表情を曇らせて…だけど、わたし達の言葉に頷いてくれた。
そんなうずめを連れて、わたし達は一度外に。穴から出ると、うずめは大きく深呼吸。
「すぅ…はぁ……。…ほんと、悪い二人共…」
「んもう、大丈夫だってうずめ。うずめだって、わたしが調子悪そうだったら、同じ事言うでしょ?」
「そりゃ、そうだが…」
「そうだよ〜、うずめちゃん。ここは風が気持ち良いし、あそこの木の下でゆっくりしよ〜?」
「い、いや本格的に休まなきゃ駄目な位調子が悪い訳じゃないからな…?多分、少し休めば今度こそ……」
今度こそ行ける。うずめはそう言おうとした。わたしとしては休んでる、って言ってくれてもいいのに、あくまで行こうとする姿勢は、やっぱりうずめらしくて……だけどうずめがそう言おうとした直後、わたしは…ううん、わたし達は感じる。空から飛来する…ある気配を。
(これって…まさか……!)
反射的に振り返るわたし達。振り返り、見上げ……そして目にする。空から降りてくる、巨大な人型の存在を。その方に立つ…一人の少女を。
「……驚いた…まさか、ここで会うなんて…」
「…お前、は……」
聞こえてきたのは、本当に驚いたような声。驚いた声で、驚いた表情をしながら、わたし達を…ううん、わたし達の内の一人をじっと見ている。
対して、うずめも同じ顔をしていた。同じ顔で、同じような声音で、見上げていて……
「…そうか…お前は、お前が……」
「──あぁ。漸く会えたね…【俺】」
そうして遂に、邂逅した。天王星うずめと、暗黒星くろめ。わたしの、わたし達の知る……二人の、うずめが。
今回のパロディ解説
・シルクハットと白マントの怪盗
まじっく快斗の主人公、黒羽快斗の扮する怪盗、怪盗キッドの事。名探偵コナンでのシーンではなく、あくまでまじっく快斗でのワンシーンの事ですね。
・彼女は少し錯乱している
機動戦士ガンダムSEED destinyに登場するキャラの一人、レイ・ザ・バレルの台詞の一つのパロディ。しかしレイとは逆に、超ピンチでの発言となっております。
・「〜〜化石とか〜〜石像とか?」
ポケモンシリーズの一つ、ブリリアントダイアモンド・シャイニングパールの地下大洞窟のパロディ。折角なので、発売の少し前にパロネタに用いてみました。