超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

202 / 234
第百七十話 憎悪の猛争

 わたし達は、お姉ちゃん、うずめさん、プルルートさんと分かれて、二つある穴の内の一つ、洞窟の方を調べていた。

 洞窟の方は…はっきり言うなら、特に何の変哲もない普通の洞窟。ウィードさんが確かめたいものは、見れば分かるって言っていたけど…探す事が出来た範囲じゃ、何もなかった。

 そんな中で入った、くろめさんとダークメガミの襲来の連絡。急いでわたし達は来た道を引き返したけど、運悪くその道中で複数のモンスターと遭遇してしまって、すぐにお姉ちゃんの所に行く事が出来なかった。何とか戦闘前に間に合った後は、再生能力のあるダークメガミを相手に、前の戦闘の経験を活かして立ち回る事が出来たけれど……そんな中で、ウィードさんが現れた。コンパさん、アイエフさんと一緒に…戦場となった、この場所に。

 

(一体、何が……ッ!)

 

 迎撃の刃を避けながら、M.P.B.Lで射撃を放つ。プルルートさんを援護する為に、ダークメガミを邪魔する為の光弾を撃つ。

 お三人がこっちに来た事は分かった。会話も一応聞こえてはいる。でも、ダークメガミは攻撃の手を緩める様子が一切ないから、わたしもプルルートさんも詳しい状況が分からない。

 けど、声だけでも伝わってくる。…くろめさんが、これまでにない程の憎悪を滾らせている事は。

 

「くっ…下がって皆ッ!打撃やビームはともかく、エネルギー刃はどうしようもないわッ!」

「う、うん!皆、うずめが防御してるから、その間に…って、こっちを見てる…!?」

 

 一瞬の間にちらりと見れば、お姉ちゃんはネクストフォームでプロトダークに突撃を仕掛けている。聞こえる声からして、お姉ちゃんは皆さんが戦闘の余波に巻き込まれないようプロトダークの注意を引き付けている真っ最中。でもうずめさんの声からすると、プロトダークの狙いはお姉ちゃんじゃないみたいで……多分、狙われているのはうずめさんとウィードさん。

 出来る事なら、わたしも向こうの助けに行きたい。でも危険なのは、こっちのダークメガミだって同じ。

 

「壊してもすぐ再生するし、喋らなければ顔も動かないし、おまけにこの感覚…ほんと、気が乗らない戦いだわ……ッ!」

 

 次に聞こえたのは、プルルートさんの不快そうな声。プルルートさんは蛇腹剣を上手く使う事で線での攻撃を仕掛けたり、突き出す形で伸ばして迎撃の刃を貫きながら射出武器を破壊したりと、何度も攻撃を当てている…けど、今のところ与えたダメージは全て再生されてしまっていて、正直に言えば攻めあぐねている。前の戦闘で、再生をさせずに迎撃の射出部位を破壊していく手段は分かったけど…攻撃の主体が近接戦とビーム射撃なわたしと、同じく主体が蛇腹剣による近〜中距離格闘と電撃系魔法らしいプルルートさんじゃ、中々その手段を取る事が出来ない。

 だから、ダークメガミの注意を引き付けたり、足止めしたりする事は出来ても、撃破に近付いている感覚がない。それがないから、心は焦りそうになって…だけど、それじゃないけない。攻めあぐねてる今だからこそ、落ち着いて頭を働かせないと…!

 

「…ねぇ、ねぷぎあちゃん…こいつ、切り刻んだらどうなるかしら」

「そうですね、切り刻んだら……って、えぇぇっ!?ぷ、プルルートさん!?」

 

 そんな中で、プルルートさんからかけられる声。迎撃を凌ぎながら、わたしはそれに答えようとして…びっくりした。いきなりそんな事を言われたら、びっくりするに決まってる。それにプルルートさんの場合、心の…女神としての在り方の件もある訳だから、わたしは不安になって…けれどわたしの不安が伝わったように、近付いてきたプルルートさんは首を横に振る。

 

「あぁ、違うわねぷぎあちゃん。あいつ、普通に傷付けただけじゃすぐ再生しちゃうでしょ?なら、斬り落としたり、ねぷぎあちゃんのビームで灰にしちゃったらどうなるのかしら?」

「あ、そういう…。…分かりません、けど…この再生能力が、わたしの知ってる通りのものなら…そういう攻撃でも、致命傷クラスじゃなきゃ回復されてしまうかもしれません…!」

 

 周囲に展開された蛇腹剣に守ってもらい、わたしが照射ビームで牽制をしながら、わたし達は言葉を交わす。

 実際のところは分からない。けど、これは間違いなくシェアエナジーによる再生で、犯罪神の有していたものも同じとすれば…最悪、腕や脚を斬り落としても再生するかもしれない。勿論そうじゃない可能性もあるけど…極めて近い前例がある以上は、それを意識した方が良い。

 

「そう…なら、どうしたものかしら…ねッ!」

 

 じゃあ仕方ない。そう言うようにプルルートさんは蛇腹剣を引き戻し、迎撃の刃を斬り裂きながら突撃していく。わたしも左へと旋回をかけて、挟み込むように動きながら考える。

 今わたし達に求められているのは、素早くダークメガミを倒して、お姉ちゃん達の援護に行く事。その為に必要になるのは、再生を妨害する手段か、迎撃諸共飲み込むような大火力且つ広範囲の攻撃で…前者は難しいけど、後者は出来ない事もない。わたしのビヨンドフォームの最大火力なら、準備に時間はかかるけど、撃破出来る可能性も……

 

(…いや、待った…そもそもこれは、わたしとプルルートさんで戦う事が必須なの…?お姉ちゃんがプロトダークの相手を選んだのは、必須な理由があったから…?)

 

……ううん、違う。少なくとも、わたしの分かる範囲で言えば、そんな事はない。そこの割り振りを変えても、目的の達成さえ出来れば問題ない筈。

 そしてビヨンドフォームで考えるなら、手数が大きく増えて、擬似的な物量攻撃も出来るわたしの力は、プロトダークの足止めにも通用する。逆にお姉ちゃんの力は…もしかしたら、再生を封じられるのかもしれない。見た限りだと、お姉ちゃんの力はただ斬るんじゃなくて、消滅させる…初めからなかったようにしてしまうみたいだから、もしその通りの力が発揮出来るんだとしたら、再生だってしない筈。だって再生は「直す」であって、「作り出す」じゃないんだから。

 

「…よし。プルルートさん!」

「ねぷぎあちゃん?…あぁ、その顔…何か考えがあるのね…!」

 

 振り向き、一目で察してくれたプルルートさんへ端的に伝え、わたしはビヨンドフォーム解放。姿が変わると同時に接続したままの大型ビット四基とM.P.B.Lで五門同時斉射をかけて、頭部を攻撃。破損で迎撃の勢いが一瞬緩んだその隙に大型四基と小型八基、計十二基全てをわたしは射出する。

 

「お姉ちゃんッ!」

「え、ね、ネプギア…!?」

「お姉ちゃんのネクストフォームと、わたしのビヨンドフォームなら、逆の相手をした方が良いッ!違うッ!?」

「あ…そ、そうね!分かったわ!でも……」

「分かってる!これを見て、楽観視なんて出来ないよ…ッ!」

 

 ビットで迎撃の射出部位を潰し、再生までの僅かな間でわたしはお姉ちゃんの下へ。M.P.B.Lの連射でプロトダークを牽制しながらお姉ちゃんと合流し、食い気味の言葉で一気にお姉ちゃんから了解を得る。理解してもらった、っていうより勢いで押し切った感があるけど…というかそれを狙ったけど…のんびり話し合ってる時間はないんだから、これで良い。

 お姉ちゃんがダークメガミの方へ向かい、わたしはビットを呼び寄せる。改めて見たプロトダークの動きは…一言で言えば、猛威そのもの。凄まじい勢いで退避するウィードさん達と、守ろうとするうずめさんを狙っていて…生半可な攻撃じゃ、多分注意を引く事も出来ない。

 

(だったら、まずは……!)

 

 一度わたしは迎撃範囲から出て、小型ビットを大型ビットに合体させる。その状態で大型四基をわたしの前に展開し、円を描くように回転させ、力場を形成。そこに照射モードのビームを撃ち込み…より大出力の光芒を放つ。

 狙うのは、プロトダークの脚部。装甲で覆えない膝部を潰して、動きを止める……ッ!

 

「貰っ……、──なッ!?」

 

 今わたしがいたのは、プロトダークから見えない位置。なのに、プロトダークはビームを躱す。放った偏差射撃を、飛び越えるように前転しながらの機動で躱し…逆にわたしへ向けて、掌底部からの砲撃を撃ち込んでくる。咄嗟にビットを散開させ、わたしも急上昇をかける事でそれの回避には成功したけど…プロトダークも翼を広げる事で勢いを殺し、何事もなかったかのようにうずめさん達への攻撃を続ける。

 

(絶対、今のは死角に入ってた…じゃあ、プロトダークは直感的に避けたって事……?)

「薙ぎ払えッ、プロトダークッ!もう全部壊しちまえッ!」

 

 幾らわたしよりずっと小さくて速度も出るとはいえ、ビットの耐久性は高くないし、動きも基本は直線の組み合わせになるから、ただ飛ばすだけじゃ迎撃に潰される。それでもごり押しが主体のダークメガミタイプなら、わたしや数基のビットで注意を引きつつ別のビットで攻防の穴を突き、そっちに対応とするなら今度はわたし自身が攻撃を撃ち込む、って戦法で少しずつ削っていけると思ったけど…死角からの攻撃に平然と対応するってなると、わたしの想定は崩れ去る。

 でも、だからって諦めるつもりはない。想定した戦法が通じないなら、別の方法を探すまで。そう考えて、わたしはプロトダークの前に回り…聞こえてくるのは、くろめさんの激しい怒号。

 

「くろめさんッ!何が、何がそこまで貴女を……うぁっ…!」

「邪魔…なんだよッ!」

 

 飛ばしたままのビットをプロセッサに戻して、M.P.B.Lと左の二基、右の二基でそれぞれ別の場所を、三点を狙う。すると狙い通り、携行装備のプロトダークは防御ではなく回避を選び、その上でまた掌底部からの砲撃を返してくる。横にスライドするような動きでわたしも避けて、再び三点狙いの攻撃をかける。

 くろめさんの怒りをぶつけてくるような、プロトダークの猛攻。プロトダーク自体の強さもそうだけど…その怒りを放つような勢いが、ひしひしと感じる憎悪の感情が恐ろしい。

 

「うずめ…!俺は……」

「五月蝿いッ!もっとだ…もっとやれるだろうが、プロトダークッ!!」

 

 伝えたい事がある。…そんな響きのウィードさんの言葉も拒絶して、くろめさんは攻撃をさせ続ける。勝つ為でも、わたし達の戦力を削る為でもなく…ただその怒りをぶつける為だけに、プロトダークという力を振るう。…今のくろめさんは、わたしの目には…そうとしか見えなかった。

 

「そうだ、撃ち抜けぇええええぇぇッ!」

「……っ!ほ、にゃ、にゃあぁぁぁぁ……ッ!」

 

 三点狙いの攻撃は、的確に撃てれば回避を誘発出来る…けど、そもそもわたしは精密射撃が得意な訳じゃないから、毎回的確に狙える訳じゃなくて…何度目かの攻撃をした瞬間、プロトダークは強行突破を掛けてきた。ズレた攻撃を装甲やエネルギー刃の射出部位で受けて、突っ込んで、わたしを退かせる。そして両掌底部からの光芒を同時に放ち……うずめさんを、その先にあるウィードさん達諸共消し飛ばそうとする。

 放たれた光芒を前に、うずめさんはシェアエナジーを用いたエネルギーシールド…ぐるぐるシールドを展開。真正面から受け止め、力を拡散させている……けど、一目で分かった。これは、防ぎ切れるかどうか分からないって。

 

(不味い…!ここは攻撃にビームを撃ち込んで、こっちからも威力の減衰を……)

 

 光芒に向け、M.P.B.Lの銃口を向けるわたし。すぐにわたしは撃ち込もうとして…でも、気付く。今取れる選択肢は、それだけじゃないと。

 うずめさん達の安全を考えるなら、このまま撃つのが一番堅実。けど、それ以外にも出来る事は…ううん。今だからこそ、やれる事が……あるッ!

 

「……ッ!はぁああぁぁぁぁッ!」

 

 光芒へ向けていたM.P.B.Lを振り、その遠心力で勢いを付けつつわたしは飛ぶ。これまでは踏み込み過ぎないようにしていた迎撃の中へと突進をかけ…再びわたしはプロトダークの真正面に躍り出る。一気にわたしは、プロトダークの眼前に迫る。

 プロトダークは、離れようとしない。だって今は、うずめさんの防御を打ち破ろうとビームの照射をしていたんだから。何が何でも潰せって、そうくろめさんから命令されているんだから。理由はよく分からないけど、このプロトダークは他のダークメガミより頭が回って、指示も細かく聞けるみたいで…だからこそ、自分の身を守るという本能的な反応より、指示を優先するかもしれないってわたしは思っていた。そして、眼前に飛び込んだわたしはビット全基を展開し…フルバースト。M.P.B.Lは照射で、ビットは充填してあるエネルギーを全て使うつもりで連射をかけて、頭部を破壊していく。

 

「……っ…!ぎあっち、お前……ッ!」

(よし…!これで、後は……ッ!)

 

 やっぱりプロトダークは命令に従う事を優先していた。くろめさんは怒りが先行していて、わたしへの注意が疎かになっていた。それが噛み合った事で、成功した攻撃。

 でも、これで沈黙するとは限らない。だからわたしはビットを回収しながらM.P.B.Lの刀身にビームを纏わせ、斬撃での完全破壊を狙った。狙おうとした。……けど、その時だった。

 

「…ぐっ…きゃあぁああああぁぁぁぁッ!」

「な……っ!?嘘っ、なんでまだ……ぐぅぅ…ッ!」

 

 斬りかかろうとした瞬間に聞こえた、うずめさんの悲鳴。反射的に振り返ると、そこには押し切られて地面に叩き付けられるうずめさんの姿があって…ビームは、うずめさん達への攻撃は止まっていなかった。それでも逸れはしたみたいで、ウィードさん達は無事だったけど、頭部に近距離からの一斉射を受けても尚プロトダークは止まらず…次の瞬間、わたしに放たれる右の拳。咄嗟に構えた防御諸共、わたしも吹き飛ばされ…揺れる視界の中で見えたのは、ズタボロになった外装の内側で光る、プロトダークの鋭い眼光。

 

(あの、光…もしかして…ダークメガミって、やっぱり……)

「ふ、ふふ…ひやりとさせてくれたねぎあっち…だが、そんな程度じゃプロトダークは止まらない…そうだろう?プロトダーク…!」

 

 受け止め切れずに飛ばされたわたしへ迫る、追撃の刃。わたしは身体を捻り、歯を食い縛る事で強引に姿勢を立て直して回避行動を取る。撃ちながら下がって、うずめさんの下まで降りる。

 

「うずめさん、大丈夫ですか…!?」

「う、ぅ…ウィード、達は…?」

「もうかなり遠くまで離脱出来ました。多少の猛争モンスターなら、コンパさんとアイエフさんが迎撃してくれると…うずめさん、来ますッ!」

 

 ずっと真正面から受け止めてた上で吹き飛ばされたからか、うずめさんはわたしよりも消耗している。けどもう、ウィードさん達は離脱が出来た。だから後は、わたし達が突破さえされなければ……そこまで思ったところで、またプロトダークの光芒が迫る。わたし達はそれを左右へ飛ぶ事で避け、うずめさんとアイコンタクトを交わし、二人でプロトダークを相手取る。…けど……

 

「【俺】はオレの残り滓だろうがッ!記憶もない、オレと違ってどうせ一人じゃちっぽけなものしか守れないような、そんな存在だっただろうがッ!なのに、なんで…なんで、お前がぁ…ッ!」

「……っ、ぅ…うずめだって…うずめ、だって…!」

 

 飛びかかるように、押し潰す勢いでプロトダークはうずめさんを攻め立てる。くろめさんも、恨みに染まった言葉を叩き付ける。

 対するうずめさんの動きは鈍い。さっきまでは防御に徹してたから気が付かなかったけど…今のうずめさんは、動きの精彩さを欠いている。…何か迷いを、抱えてるみたいに。

 

(…こうなったら……)

 

 わたしが視界に捉えたのは、くろめさんの姿。ここまでは、わたしが一人で引き付けてたからやるにやれなかったけど…今なら、くろめさんを狙える。プロトダークに指示を出してる、くろめさん自身を狙う事が出来る。

 仮に攻撃が成功して、倒せたとして、それでプロトダークが行動を止めるとは限らない。むしろ指示を失って暴走するのかもしれない。けどこのまま戦っても、今のうずめさんじゃ危ないし…何より今なら、さっき怒りが先行してるって証明された今だったら、倒せるのかもしれない。そのもしかしたらは、あまりにも大きくて……

 

「今よぉ、ねぷちゃんッ!」

「えぇ、喰らいなさいッ!」

 

 その瞬間、ある光景がわたしの視界の端に映った。プルルートさんが展開した蛇腹剣を鞭の様にしてダークメガミの左手首を捉え、迎撃の刃を全て避け斬り肉薄をかけたお姉ちゃんが、ダークメガミの左肩から先を一刀の下に両断したのは。

 けれどそれは、ただ斬ったんじゃない。ネクストフォームの能力で以って、その部分の存在ごと斬ったんだ。その証拠に、斬られた場所だけじゃなくその周辺までもが一瞬でそこから消滅し…ダークメガミは、隻腕になる。

 

「(……ッ!今だ、狙うんだったら…)今しかない……ッ!」

 

 肩から先を完全に斬り落とされた瞬間、流石のくろめさんも視線が向こう側に逸れる。プロトダークも、向こうに目をやった…気がする。ほんの僅かな時間だろうけど…わたしとくろめさんとの間に、戦闘の空白がこの瞬間生まれる。

 だからわたしは、突っ込んだ。射撃はせず、全力でくろめさんに突っ込んでいく。急接近からの一撃、それを叩き込む為に全力全開で飛んで……くろめさんが気付いた時、わたしはもう目前にまで迫っていた。

 

「……ッ!」

「これで…この、一撃で…ッ!」

 

 肉薄された事に表情を歪ませながらも、下がろうとするくろめさん。それよりずっと早い速度で迫ったわたしはM.P.B.Lを振り上げ、その勢いのままにくろめさんへと刃を振り抜き……そして、空振る。

 

「……っ、踏み込みが足らなかったね、ぎあっ……いや違う、これは……ッ!」

 

 触れる事なく終わった斬撃を前に、くろめさんの表情が余裕を取り戻す……けど、すぐに気が付く。今の斬撃は、わたしの全力を込めた一撃だったけど…本命の攻撃ではない事に。

 わたしは、避けられる事も予想していた。それも予想した上で、踏み込み振り抜き…避けられた瞬間に、肩側の大型二基を稼動。砲口を前に向け、ビームソードを出力した状態でくろめさんへと向けて打ち出す。ダーツの様に飛ぶそれも、くろめさんは身体を捻る事で躱してきたけと…既にわたしは腰側の大型二基、大型に搭載している小型四基に、肩側の大型二基から切り離した同じく四基…計十基をわたしの頭上に展開済み。速度を優先する為に包囲は出来なかったけど…今の状態からなら、きっと当たる。一発でも当たれば、そのダメージを起点に畳み掛けていける筈。

 

「くろめさん…ッ!ここで、貴女を……ッ!」

 

 両方の目でしっかりと捉え、わたしは見据える。くろめさんは、目を見開く。

…迷いは、なかった。ミラお姉ちゃんや大きいお姉ちゃんの言っていた事もあるけど…まずは倒さないと、力尽くで止めないと、最終的に選ぶのがどんな道でもそこへ進む事は出来ない…そんな気が、していたから。だからわたしは十基のビットへ指示を出し、咆哮からは光が輝き……

 

「──■ッ、■■■■■■ーーーーッ!!」

「な、ぁ……ッ!?」

 

 攻撃が届く、ビームがくろめさんの身体を撃つ、その寸前だった。本当に、後ちょっとのところだった。…言葉の形を持たない唸りと共に、プロトダークが飛び込んできたのは。伸ばされた腕部がわたしとくろめさんの間へ滑り込み、十基全ての攻撃を受け止めたのは。

 何発かは装甲に阻まれ、何発かは表面を焼き、残りの何発かはエネルギー刃の射出部位を撃ち抜き壊す。…けど、くろめさんには届かない。全て防がれ…後一歩だったチャンスを、覆される。

 

「…やるじゃないか…流石はプロトダークだ…。だが君はまだ、オレの言った事を…果たしていない…さぁ、やれッ!」

 

 さっき見開かれた目が、わたしへ対してなのか、プロトダークへ対してなのかは分からない。でも少なくとも、もうくろめさんに退く素振りなんかなくて…プロトダークも、それに応えて裏拳を放つ。それ自体が巨大な武器そのものな腕を振って、強引にわたしを退かせる。

…不味い。ここまで狙った事が、何度も失敗している。わたしがいない間に何かあって、その結果うずめさんの心が乱れてるなら、どういう事かちゃんと聞いて連携を考えたいけど…今は、そんな余裕もない。

 

(やっぱり、最初の予定通りあっちのダークメガミの撃破を待つ…?確かにそれが堅実、堅実だけど……)

 

 真っ先にビットを退避させて、わたしも撃ちながら下がる。ここまでの戦闘で、エネルギー刃の射出部位もある程度壊せている筈だけど…プロトダークの勢いは変わらない。変わらないし止まらない。それにうずめさんも、最初からずっと狙われたまま。

 

「う、くっ…こ、のっ…うぁぁ……ッ!」

「うずめさん…!」

「はぁ、はぁ…ぎあっち…うずめ、このままじゃ……」

「まさか……」

 

 多少の攻撃ではびくともせず、ダメージを無視して苛烈に仕掛け続けるプロトダークと、シールドを多用して何とか凌いでいるうずめさん。動きにいつも程の精彩さがないうずめさんは、回避ではなく防御で凌ぐのが精一杯みたいで…でもうずめさんの女神化は、時間が限られている。それもシェアエナジーを使った防御を使い続けてる分、きっといつも以上に消費が早くて…見えたのは、焦燥の顔。それが意味するのは…このままじゃ、二人で持ち堪える戦いも出来なくなるって事。

 

(……けど、それが…それが、なんだ…ッ!わたしはまだ、戦える…うずめさんだってきっと、今すぐ女神化が解けちゃう訳じゃない…だったらまだ…何も思い付かなくて、打つ手が全部なくなるまでは…まだ……ッ!)

 

 そうしてわたしは気が付いた。何度も狙いが失敗して、思考が後ろ向きになり始めてたって。心が二の足を踏んでたって。…そう気付いたから、わたしは自分を奮い立てる。自分で自分を叱り付ける。

 同時に闘志も燃え上がる。負けるもんかっていう闘志と…くろめさんへ対する、訳が分からない、いい加減にしろっていう怒りの炎が。それは二の足を踏んでいたわたし自身への怒りと合わさって、それがわたしの力になる。…少し、ビヨンドフォームの影響も出てる気がするけど…まだいい、まだ構わない。

 

「…うずめさん、出来る範囲でいいので援護をお願いします。わたしが、プロトダークを…くろめさんを……ッ!」

 

 もう何度目かの、わたし達へと向けられる砲口。これまでは全部避けてたけど…今度は捩じ伏せてやる。何度も狙いを外されてきたんだから、今度はこっちが覆してやる。…そんな闘志を心に燃やして、わたしはM.P.B.Lを構え直す。

…でも…わたしは忘れていた。激しい戦闘と、訳の分からない事の連続で。恐らくくろめさんも失念していた。その怒りに、憎しみに囚われて。だから分からなかったし…気付かなかった。戦闘が始まってから……ううん、お姉ちゃん達とくろめさんが遭遇してから、どれだけの時間が経ったのかが。

 

『……──ッ!?』

 

 照射の直前、プロトダークの背中に撃ち込まれた光芒。わたしでもない、うずめさんでもない、この場の誰からでもない攻撃に、プロトダークの攻撃は止まり、わたし達は反射的にその光芒が来た方を見る。

 でも…分かってた。その光芒は、シェアエナジーを浴びていたから。シェアエナジーの、狙撃だったから。そんな事をするのは、出来るのは、一人しかいなくて……視線を向け、目を凝らした先。そこにいたのは…X.M.B.をこっちに向けた、ユニちゃんだった。

 けれど、それだけじゃなかった。わたしがユニちゃんの姿を見つけて、見回した時…ロムちゃんやラムちゃん、ノワールさんやベールさんやブランさん…各国から駆け付けてくれた皆の姿も、そこにはあった。




今回のパロディ解説

・「〜〜もう全部壊しちまえッ!」
ポケットモンスター ソード・シールドに登場するキャラの一人、サイトウの台詞の一つのパロディ。くろめは…何でしょう。強いて言うなら、悪・格闘タイプ……?

・「〜〜踏み込みが足らなかったね〜〜」
スパロボシリーズにおける、モブキャラ(兵士)の台詞の一つのパロディ。実際ネプギアは(空中ですが)踏み込んでますからね。その後はビットでの追撃ですが。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。