超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第百七十三話 偽りの神が残したもの

 倒したと思ったプロトダーク。そのプロトダークが起き上がり、わたし達の動きを阻んだ。くろめの前に立ち塞がり、その大火力でわたし達を下がらせ…くろめを連れて、離脱を図った。

 最初プロトダークが起き上がったのを、わたしは単にタフだから…耐久力の面でも、他のダークメガミを上回っているから、というだけだと思った。…けれど、違う。逃走を続けるプロトダークは、わたし達の追撃を受けても止まらず、斬り裂かれ、撃ち抜かれ、砕かれその身が崩れていっても、止まる事なくくろめを守り、飛び続けた。最後には翼を、飛ぶ為に必要な力を失って、漸く落ちたけど…それでも立ち上がり、くろめを守る盾となって、わたし達に牙を剥いた。

──執念。何があっても、何が何でも、果たすべき使命を…思いを貫く。そんな意思が、プロトダークを動かしている…わたしには、そう見えていた。

 

「まだ、耐えますの…!?」

「どこぞの狼の王並みにしぶといやつだな…!」

 

 ネプギア達女神候補生の援護を受けて肉薄したベールとブランは、ネクストフォームで形状の変わった得物をそれぞれプロトダークの首元に食い込ませ、抉り取るように振り抜く。ダメージがない訳がない。軽傷で済む筈がない。なのにプロトダークは…もう指が五本揃ってもいない手で二人を振り払い、迎撃のエネルギー刃で押し返す。

 

「もう殆ど死に体なんだから、無視したいところ…だけど…ッ!」

「意地でも喰らい付いてきそうよねぇ……!」

 

 元々は、突破するだけでも一苦労なダークメガミの迎撃。攻防一体な刃の雨。けれど今は、残る部位で集中的に放ったとしても追い打ちを阻むので手一杯。結果二人が下がりつつ迎撃を引き付けた事でノワールが一気に接近し、袈裟懸けの様に肩部から胸部を深く斬り裂く。初めはあった装甲も多くが割れるか砕けるかしていて、元の堅牢さは見る影もない。

 そこへ追撃をかけたぷるるんは、伸ばした蛇腹剣の斬っ先をノワールが斬り裂いた場所へと突き立て、蛇腹越しに電撃の魔法を流し込む。余程の電撃なのか、斬り裂かれた場所は火を吹き、プロトダークの巨体がびくりと揺れ……それでも、痛々しさのある咆哮を上げて右腕部の掌をぷるるんに向ける。必殺の威力を持つビームを放とうとする。

 

「させない、っての!」

「お姉ちゃん、いける!?」

 

 それを妨害したのは、ユニちゃんの放ったグレネード弾。爆発によって狙いはずれ、光芒はぷるるんの横を通り過ぎる。全身ボロボロ、支える脚部も片方がなくなっているプロトダークには自分の攻撃すら負荷が大きいようで、撃った直後にプロトダークの身体はよろめく。直後にネプギアがビットを残る脚へと集中させ、M.P.B.Lとの同時斉射を膝部へと撃ち込む事で、更にプロトダークの姿勢を崩す。

 さっきノワールが言った通り、もうプロトダークは放っておいてもその内力尽きると思える程の満身創痍。けれど完全に力尽きるまで、僅かにでも動ける限りは食らい付く…そんな気迫を、わたし達はずっと感じている。執念…つまり思いという力の強さを、わたし達は深く知っている。

 だからわたし達は、今目の前にいる存在を全力で倒すと決めた。そしてわたしは、ネプギアからの言葉に頷く。倒す為の準備は…もう、整った。

 

「結局どういう存在なのかを、わたし達は知らない。けれど、最後の最後まで阻むというのなら…今度こそ、ここで沈んでもらうわ。信次元を、守る為にッ!」

 

 ネクストフォームの…凡ゆる防御を、凡ゆる存在を斬り裂き無に帰す力を纏った大太刀を構え、わたしは突進。皆が攻撃している間に、わたしはこの力を溜めていた。この力と共に放つ攻撃なら、確実にプロトダークを撃破出来る。そんな確信が、わたしにはある。

 当然プロトダークだって、ただでやられる訳はない。最後の力を振り絞るように刃を、右腕の拳を放ってくる。でも…力を溜めていたのは、わたしだけじゃない。

 

「ロムちゃん!せー…のッ!」

「えぇい……ッ!」

 

 わたしは真っ直ぐに、一切の回避行動を取らずに進む。当然迎撃は飛んでくるけど、わたしの前に現れた魔法陣が、ロムちゃんとラムちゃんの防御が全てを阻んで防ぐ。ビヨンドフォームの二人が使う、二人合わせて八つの魔法陣。その内四つが重なった障壁は迎撃の刃をものともしない。

 止まらないわたし達に対して、次に迫るのはプロトダークの右腕。打撃か、それとも砲撃か。何れにせよ、その威力はエネルギー刃とは段違いで…直後、ロムちゃんとラムちゃんがわたしの背後から左右に出る。二人は左右から出ると共に、残りの四つの魔法陣もわたしの背後から頭上に移る。

 防御に使われていた魔法陣は、四段重ね。対して今前に出た四つは一体となった、一つの大きな魔法陣で…放たれるのは、青白い閃光。輝く魔力の奔流は真正面から右腕を貫き…一気に、プロトダークの右腕が凍結していく。凍結し、割れ、崩れていく。

 

「ネプテューヌちゃん!後は……」

「おねがい、します……っ!」

「えぇ、決めてみせるわッ!」

 

 援護してくれた二人の言葉にわたしは答え、更に加速する。もう迎撃は脅威じゃない。各所に射出部位があるとはいえ、完全な固定武装である以上は近付けばわたしへ集中砲火を向けられない。既に多くの射出部位が潰れているから、両翼も右脚も失われているから、プロトダークに残された選択肢は今や隙だらけの迎撃を放つ事だけ。そして、そんな迎撃をわたしは振り切り……戦いを、終わらせる。

 

「これで終わりよッ!デルタ…スラッシュッ!」

 

 一切速度を落とさず、プロトダークの胸部…懐へと飛び込みながら、わたしは三連撃。斬撃でデルタを描きながら、ビクトリィーにはない三連の刃を叩き込み、プロトダークの胸部を強かに斬り裂く。

 確実に倒す事を目的とした、わたしの大技。でも、ただの大技じゃない。刀身に、斬撃に乗せたのは破壊の果て、消滅の力であり…刃は、斬り裂く。消し飛ばす。プロトダークの中にあった、残り僅かな力の全てを。

 

「…■…■■…■、■……」

 

 斬り裂き、跳ぶようにして下がったわたし。これまでは何度も、どんな攻撃を受けても一度起き上がって以降は止まる事のなかったプロトダークが遂にその動きを止め、形容の出来ない微かな呻き声が半壊した頭部から漏れる。そして、次の瞬間…プロトダークは、倒れる。力尽きるように。崩れ去るように。

 地響きと砂煙を上げながら、倒れ伏すプロトダークの巨体。その衝撃で凍結していた右腕は完全に粉々になり、ぼろぼろだった巨体が更に砕け……もう、動かない。今度こそ、動きはしない。

 

「…終わった、みたいだな」

「漸く、ね。…とはいえ……」

「さっきの例がある以上、警戒は解けませんわね…」

 

 ゆっくりと高度を落としながら、わたし達はネクストフォームを、ネプギア達はビヨンドフォームを解除。やっと倒せたんだから、すぐにくろめを追いたいところだけど…ノワールやベールの言う通り、さっきと同じ轍は踏みたくない。それに……

 

(今からだと、追っても無駄かもしれないわね…)

 

 執念としか言いようのないしぶとさで食らい付かれた結果、わたし達は思った以上に足止めをされてしまった。まだ戦えるだけの余裕はあるけど、見失ってる以上は余裕があっても仕方ない。

 

「…あの、どうしますか…?取り敢えず、プロトダークの消滅を確認するのが最優先ですけど、うずめさんやウィードさん達の事もありますし……」

「…そうね。特にうずめは心配だし、ここは戻って……」

 

 全体に向けたネプギアの言葉に、わたしは頷く。ウィードくんの方はこんぱ達がいるから大丈夫だと思うけど、追撃前にシェアエナジー切れで女神化が解けてしまったうずめは多分今一人。今回の件、うずめはかなりショックを受けていたし、見つかる可能性の低いくろめよりまずはうずめの事を…とわたしが言いかけた時、空からわたし達を呼ぶ声が聞こえた。

 

「皆ー!」

「この声は…あら、セイツちゃん……と、うずめちゃん?」

「ついでに、オレもいるよ」

 

 見上げたわたし達の方へ降りてくるのは、セイツ。倒れてるとはいえまだプロトダークがいるからか、セイツの降下はゆっくりで…両手でうずめを抱えている。そのうずめも、何かを持っている。

…と、思ったけど…違った。うずめが抱えているのは、何かじゃなくて…海男。

 

「…ふふっ。なんか、だんご3兄弟みたいねぇ」

「あぁ…お三人の顔が団子に、セイツさんとうずめさんの身体を串に見立てたら、って事ですか?…そ、そんなにそれっぽく見えるでしょうか…」

「え、いきなりプルルートとネプギアは何の話を…?…って、いうのは置いといて…戦いは、終わったみたいね。間に合わなくてごめんなさい」

「大丈夫よ。…セイツが来たのは、増援の為?」

「ううん。…あぁいや、勿論加勢するつもりもあったけど…来たのは、海男に頼まれたからよ」

「少し、気になる事があってね」

 

 意外な理由に目を瞬かせると、海男がこくりと首肯。そして海男は、末端から消滅し始めているプロトダークへと視線を送る(うずめの方は、セイツがこっちに来るまでで合流したんだとか)。

 

「…皆。あいつは…くろめは、どうなったんだ…?」

「すみません…くろめさんには、逃げられてしまいました……」

「そっか……」

 

 ふるふるとネプギアが首を横に振ると、うずめは一言ただぽつり。分かってはいたけど、やっぱりうずめは元気がなくて…気不味さの中、プロトダークを見ていた海男は言う。セイツに対し、降りてほしい…と。

 

「降りる、って…あのダークメガミの前に?」

「あぁ、頼めるかな」

 

 海男からの言葉に頷いて、セイツは更に降下。それに付いていく形で、わたし達も高度を落としていく。

 

(…そういえば…普段だったら、すぐにフォローなり何なりしてるわよね……)

 

 その中でふと気になったのは、海男の様子。気の利いた言葉に定評のある海男が、付き合いの長いうずめの今の状態を見て何も言わない、というのは少し違和感があって…それ程までに、海男の言う「気になる事」は大きいのかとわたしは思う。

 そうしてセイツは着地し、うずめも海男を離す。そうして浮遊状態になった海男はプロトダークの方へ向かっていって……

 

「あ、う、海男さん…!?」

「ちょっ、あぶないわよ!?」

「…いや、大丈夫だよ」

 

 もう消滅が始まってるとはいえ、一度倒し損ねているわたし達は当然海男のその行動に驚き、ロムちゃんとラムちゃんが止めに入る。

 けれど海男は、落ち着いた声音で大丈夫だと言う。そうは言っても海男に戦闘能力はない筈で、万が一の事を考えれば大丈夫な訳がないんだけど…海男の声音からは、確信を感じる。大丈夫だと分かってる…そんな響きが、海男の声音にはあった。

 

「…………」

「…海男……?」

 

 宙を泳ぐようにして、海男はプロトダークの上に。うずめも追ってプロトダークに乗り、後ろから海男に声をかける。

 

「…なぁ、海男…海男が気になってたのって……」

 

 わたし達も、軽く飛んで二人が見える位置へ。海男は脚から登り、腰と腹部を通り、胸部にまで行き着いたところで、そのプロトダークの胸部へと触れる。

 その後ろからうずめがかける、海男への問い。でも、海男はそれに答えず触れたままで…数秒後、海男の方から問いを返す。

 

「…うずめ。君は、このダークメガミに対して、何か感じるものや、思うところはあるかい?」

「この、ダークメガミに…?…そりゃ、なんつーか…はっきり言えるものがあるか、って言ったら、正直ないな……」

 

 感じるもの、思うところ。それが、強さや知性といったものを指していてる訳じゃない事はわたしも分かった。けどそれ以上の事は分からなくて、わたしもうずめと同じ感想。

 それを聞いた海男は、「そうか…」とだけ呟いて、また視線をプロトダークへ。その反応はなんというか、ある程度予想通りだった、と言っているようで……でも、うずめの言葉には続きがあった。

 

「…けど、こいつの咆哮は…どれも、なんかの叫びに…感情の籠った声みたいにも聞こえたな…声みたいって言っても、内容は全く分からねぇけどよ…」

「…感情、か…うん、そうかもしれないね…」

 

 あまり自信なさそうに、きっと頭でごちゃごちゃ考えて出したものじゃない、感じたままの言葉を口にしたうずめ。それが海男の求めていた言葉かどうかは分からない。でもどこか、その言葉に海男は納得したような表情を浮かべて……そして、降りる。その前にもう一度だけ、プロトダークの胸部を見つめて。

 

「…海男さん。海男さんは、結局何を…?…と、いうか…倒しちゃって良かったんですよね…?」

「当然だよ、ゆにっち。このダークメガミは、君達の…信次元にとっての、敵だったんだから。…だから、これで良いのさ」

 

 さっきのセイツからの問いに、海男は肯定を返した。でも、殆ど何もしていない。したのは、プロトダークに触れた事だけで…なのに何故か、海男が浮かべているのはいつも通りの、落ち着いた雰囲気を感じる真顔。

 

「いや、でも…直接調べたい事があるから来たんじゃ…?…それに、そもそも…このプロトダークに対して、海男さんが調べたい事って一体……」

「プロトダーク、か…。…なに、気にする事ではないよ。ただ、少し…オレにも馳せたい思いがあった。それだけだからね」

 

 ネプギアの言葉にも、海男は普段の調子で返す。もうプロトダークの消滅は大分進んでいて、その身の多くが光の粒子となって、空に消えていっている。

 

(…このプロトダークに、ウィードくんを見た時のくろめに、海男…やっぱり、この戦いはこれまでのものとは違う。…なら、女神として…わたしとして、出来る事は……)

 

 脅威として認識していた、プロトダークを倒す事は出来た。でもくろめには逃げられてしまった。想定していなかった遭遇戦の結果としては、悪くないものだけど……今の戦闘で見たもの、感じたものから、ある思いが広がっていく。これまではまだ小さくて、わたし自身迷いもあった思いが、確かに強くなっていく。

 ただ勝てば、ただ倒せば良い訳じゃない。それじゃきっと、信次元を守る事は出来ても、皆が幸せになる、最高のハッピーエンドには行き着かない。…最後の一欠片になって、それも光になって天に昇っていったプロトダークを、最後の最後までくろめを守る為に戦った存在を見ながら、わたしはそう思っていた。

 

 

 

 

 プロトダークに守られ、プロトダークを失い、単身逃げ…くろめは、負のシェアの城へと帰還した。

 身体的には、ほぼ無傷。しかし、精神的には……そんな状態の彼女を迎えたのは、同じく一度出ていたレイ。

 

「随分時間がかかったじゃない。…あ、何かあった?」

 

 相も変わらずの様子で呼びかけるレイだが、くろめは無言。何も言わずに彼女の横を通り過ぎようとして…それをレイは、ぴくりと眉を動かしながら手で制する。

 

「ちょっとぉ?私、今質問したんですけどー?もしかして、耳遠くなった?」

「…あぁ、あったよ。そっちこそ、何かあったんじゃないのか」

「あ、分っかるー?私、ちょーっと白髪女神のよりウザい方と遊んであげてたのよねぇ。けど白髪女神のじゃない方が食ってかかってくるし、キモい絆ごっこでしょうもないものも見せられるしで、途中まで気分良かったのに散々よ。はー、とことんウザいわね、あいつ等」

 

 半分は単純に無視された事による腹いせとして、もう半分はくろめの様子から只ならぬ事があったのだろうと見抜いた結果として、レイはくろめを問い詰める。

 しかしくろめもまた、レイに何かあったのだろうと感じていた。そしてその旨を訊き返す形でレイに問うと、レイはやれやれと肩を竦めながら自分のしてきた事を語る。その口調は、やはり彼女らしいもので……だがそこでふと、くろめは違和感を抱く。

 

「(無傷、という事は恐らく一方的に勝ったかまともに戦わなかったかのどちらかだ…だが、あれだけの恨みを抱いていたレイが、原初の女神を討てたのならもっと上機嫌になっている筈。…と、いう事は……)…まさか、レイ……」

「何よ?…あぁそうだ、あんたが造りっ放しにしてたダークメガミの素体の一つ、使わせてもらったから。けど別に良いわよね?ずーっと使ってない、死蔵状態のものだった訳だし」

 

 くろめの頭に思い浮かぶ、一つの可能性。まさか、とくろめは訊こうとするが、レイはくろめからの問いになど興味ないとばかりに別の話をし始める。それも、さも当然のように事後承諾を求めるという、それ単体でも身勝手と言えるものであり……

 

「……っ…いい加減に…いい加減にしろ、レイッ!」

「…あ?何よ、急にキレちゃって」

 

 次の瞬間、傷心だったくろめの怒りが爆発する。これまではレイの理不尽な物言いにも落ち着いた態度で返していたくろめが、初めて明確な怒りを見せる。

 

「君だって分かっているだろうが…!オレ達には、戦力的な余裕なんてない…!どれだけ事が進んでいようと、必要な時に必要なだけの戦力がなければ、結局は頓挫するのと同じ事だ…ッ!」

「いやだから、何急にキレてる訳?おーちーつーいーて〜?」

「…何が落ち着いて、だ。君が国を持っていた時も、神次元で少し前に力を取り戻したって時も、原初の女神にしてやられた時も…それだけ大層な力を持っていながら、君だって敗北を重ねているだろう?…残念ながら、それでも呑気にしていられる程、オレは図太い神経をしていないんだよ」

「…へぇ…言うじゃない。向こうの女神共を潰す前に、あんたでキル数を一つ稼がせてくれる訳?」

「冗談じゃない。…オレはもう、止まる気はないんだ…ずっと、あの時からずっと止まる気はなかった…けれどもう、本当に…彼女の為にも、止まる事は許されない……だから…ッ!」

 

 依然として煽る態度のレイに対し、くろめが返す皮肉の言葉。それによって嘲る表情だったレイの顔付きは変わり、冷ややかな目でくろめを見返す。

 されど、くろめの皮肉は続かない。レイの問いを否定すると、思いを吐き出すような言葉を紡ぎ…そして、レイに摑みかかる。掴み、言う。

 

「これ以上、勝手な事はするなレイ…ッ!君という戦力は貴重だ、君の存在無しにオレの大望が果たされる望みは薄いだろう…!それでも…邪魔される位なら、お前のせいでこれまでしてきた事が潰える位なら…この関係も、これまでだ……ッ!」

 

 その身だけでも強力無比な力を有するレイと、強大な力を持つとはいえ、今すぐ戦いとなれば勝ち目など皆無に等しいくろめ。そのくろめがレイに掴みかかり、場合によっては手を切るとまで彼女に言い切る。

 それは、感情に後押しされての言葉だが、決して思考を、思慮を置き去りにした発言ではない。レイもそれを見抜いており…だからこそ、彼女も言葉を返す。

 

「……ぷっ…くくっ、あははははははッ!ほんっと、追い詰められて必死になってる感凄いわね!しかも私の存在無しに…って、自分で言ってて恥ずかしくない訳?あぁ、恥ずかしくないから言えるのよねぇ。今の発言は私が浅はかだったわ、ごめんなさぁ〜い」

「……っ、レイ…ッ!」

「…けどまぁ、良いわ。あんたの面白くもない余裕ぶった態度よりは、今の必死そうな姿の方が見てて面白かったし…果たしてみなさいよ、あんたみたいな奴が目指す大望を。それが出来るんなら、ね」

 

 ぐにゃりと口元を歪め、掴むくろめを見下ろしながら、心底からの嘲笑で以ってレイは答えた。その言葉が示しているのは…まだ手を切るつもりはないという、彼女の意図。

 当然その中に、自らの行いを反省するなどという感情も、和解し積極的に協力しようなどという気持ちもない。しかしそんな事はくろめも分かっており、同時にくろめとて同じ事。あくまでこれまでの、仲間と呼ぶにはあまりにも冷めた関係が続くのだという事であり…くろめは、レイから離れる。

 

「ギリギリになれば、彼女達も気付くだろう。そんな中でこちらから門を開けば、罠があると分かっていても、後がない彼女達は突っ込んでくる。そしてオレ達は、万全な状態で迎え撃ち、全て予定通りに終わらせる。…実に簡単な最終決戦さ」

「はっ、楽しみねぇ。気付いたらもう追い詰められてて、最後のチャンスを絶対に無駄にしない〜、みたいな事を考えてやってきたあいつ等をぶっ潰して、絶望の底に落とせるんだもの」

 

 どこか枯れたような笑みを浮かべてくろめは言い、にやにやとした表情のままでレイは返す。そうして今度こそレイと別れたくろめは、一人廊下を進み……心の中で、呟くのだった。

 

(終わらせる…終わらせて、果たすんだ。示すんだ。オレの正しさを。オレの歩んできた道、してきた事、払った犠牲……その全てが、間違ってなんかいなかったって事を)




今回のパロディ解説

・どこぞの狼の王
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズに登場するMSの一つ、ガンダム・バルバトスルプスレクスの事。最終決戦の、ダインスレイヴを受けても尚戦う姿の事ですね。

・だんご3兄弟
童謡及び、その中に登場するキャラ達の事。セイツが身体の前でうずめを、うずめが胸元に海男を…という形で抱えているので、だんご3兄弟…に見えるかもしれません。
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